2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第五回に、元(株)資生堂執行役員常務の関根さんをお迎えしました!
様々な分野で活躍し、輝かしいキャリアを築いてきた講師の方をお招きするリレー講座の第五回は元(株)資生堂執行役員常務を務めた関根さんです。
「皆様にとって仕事とは?」という問いかけで始まった授業では、資生堂に入社した関根さんがどんな壁にぶつかり、それをどう乗り越えてきたかというエピソードを軸とし、学生達が社会人として活躍しキャリアを形成していくためのヒントがたくさん盛り込まれていました。途中、美しい立ち姿や座り姿のコツを学ぶ時間も設けられ、学生からは歓声が上がっていました。
商品を「売らない」ビューティーコンサルタントとして
1972年にビューティーコンサルタントとして資生堂に入社した関根さん。学生時代に尊敬する先生と出会い、将来の夢は教師になることでしたが、御父様が寝たきりになったことで大学進学を諦めざるを得ず、就職を決めたそうです。「初任給が高い会社」を探す中で、出会ったのが資生堂でした。
入社したばかりの関根さんが担当したのは、スーパーなどに設けられた不定期の特設会場で、通りかかった人に化粧品を紹介・販売する仕事。高度経済成長を背景にした厳しいノルマは、なかなか達成できませんでした。
「毎日終礼で各自の売上を報告するんですが、ノルマの1割しか売れない日もありました。自分が目標を達成できなければ、チームの誰かが足りない分をカバーしなくてはなりません。毎日がプレッシャーでした」
悩んだ関根さんがたどり着いたのは、なんと「売らない」ことでした。いくらノルマを達成できても押し売りはやりたくなかった関根さんは、「商品を売る」から「商品を利用したお客様の喜び」にシフトしました。
「お客様に声を掛ける際、最初に『売りません』と言った上で、商品を体験していただいたんです。『押し売りされないなら…』と商品を試したお客様の美しさを、資生堂の商品で引き出すことで、自然と購入につながっていったんです」
多くのお客様から支持された関根さんは、着実に売り上げを伸ばしていきました。ここで関根さんが学んだのは、自分達はお客様のためにあるということでした。働くのは上司や会社の評価を得るためではなく、お客様の喜びのため、信頼を得ること仕事の本質をつかんだ関根さんは、実績を積み重ねていきました。
40年以上在籍する中で、様々な仕事を経験
その後、関係会社に出向し、そこで女性初の本部長に任命されました。さらに宇都宮支社の支社長、大阪支店支店長を経て、50歳のときに国際マーケティング部へ。ドイツ人上司のもとで、グローバル人材に囲まれながら働き、各国を飛び回りました。
「上司に私の配属理由を聞いたら『人事考課に自分の意見が言える。グローバル人材の第一要件を満たしていた』と言われました。意見を言わない日本人の中で、関根さんはものおじしないという評価だったようです」
英語がそれほど得意ではなかったという関根さんは、NYで行った30分の英語スピーチに秘書にルビを振ってもらうこともあったそうです。国際事業部での経験は、英語やグローバルビジネスに本気で取り組むきっかけになったと当時を振り返りました。
そして2012年に資生堂の執行役員に就任、2014年には執行役員常務、顧問を務めた関根さんは、2018年に独立し、(株)Bマインドを設立しました。現在は女性活躍、プラス志向講師として全国で活躍しています。
目の前に現れた壁は、困難であると同時にチャンス
関根さんはこれから社会に出る学生達に、チャレンジ精神の大切さを強調しました。
「お給料をもらう以上、会社では興味のない仕事もやらなくてはなりません。時には不本意な異動もあるでしょう。でも目の前の課題を『やりたくない』と思う前に、それをチャレンジととらえてほしいんです。勇気を出して新しい環境に飛び込むと、新しいものが見え、自分に足りないものがわかります。ぶつかった壁から逃げず、立ち向かうことが自分を成長させる経験になります。
仕事もプライベートも輝くための要件として①自分の強みを知る・磨く、②チャレンジ精神(失敗を恐れない)、③主体的であること、④タフな精神力を意識することがポイントだと関根さんは語ります。そして持続的な幸せという意味のwell-beingに役立つポジティブ思考を紹介しました。ポジティブ思考は物事を良い方に考えることではなく、つらく苦しい中で希望や解決策を探す思考と、探し出した光に向かって進んでいく強い精神のことです。それには目の前の壁そのものに価値を見出し、試練として受け止め、困難を突破して成長する「ブレークスルー思考」が役に立つといいます。
「人生は選択と挑戦の連続といえます。選択で大事なのは、ポジティブな思考と視点。挑戦で大事なのは、自分の強みと課題が一致していることです。そのためには自分の強みや得意分野を磨いておくのは、とても役に立ちます。
人生はアップダウンの連続といえます。チャレンジして失敗しても、それは貴重な経験ととらえればいいんです。みなさんには逆境を楽しみ、苦しいときほど笑うタフな精神力を身に付けていただきたいですね」
と締めくくりました。
well-beingにつながる具体的な手法で、輝く未来を創っていく
大きな拍手で終了した講演の後は、質疑応答の時間となりました。「自分に似合うメイクを教えてほしい」という質問には、質問した学生の長所を活かす具体的なメイクアドバイスがあり、みな真剣に聞き入っていました。また「プレゼンテーションで意識すべきことは?」という問いには、「ミスなく語るよりも、聴衆の目をみて心から湧き上がる自分の言葉で語ることが大切」と強調しました。
関根さんが紹介してくださった、キャリアを①今、やらなければいけないこと(must)、②今できること(can)、③やりたいこと(will)の3つでとらえる視点は、社会で活躍する際、自分を客観的に振り返る上で役に立つ視点になりそうです。仕事だけではなくプライベートも輝くwell-beingを実現する具体的な手法の数々は、学生の心に強く響いたようです。
深澤教授の話
女性とキャリア形成、5人目のゲストは、元資生堂執行役員常務の関根近子様でした。私が資生堂勤務時代には大変お世話になった方で、久しぶりにお目にかかりましたが、さらにパワーアップされておられるお姿に感動いたしました。全身から溢れるオーラに加え、ポジティブ思考のお話しに学生は魅了されていました。
60名を超える学生が教室でお聞きしているのに、学生一人ひとりと会話をされておられることを感じる、その雰囲気づくりがとても印象的でした。
やはり、こうして対面で、ゲストの姿から感じる「想い」を浴びることが大切であることを改めて感じました。この場を借りて関根様に心から感謝申し上げます。