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2024年3月5日

「『学び』から考えるウェルビーイング」JWP(実践ウェルビーイング・プロジェクト)のメンバーが参加

2月10日(土)、実践ウェルビーイングプロジェクト(JWP)の1年生から3年生のメンバー9人が、ユームテクノロジージャパン株式会社を訪問し、「『学び』から考えるウェルビーイング」と題したワークショップに参加しました。

――最新のラーニングプラットフォームを活用したワークショップ

文学部国文学科の深澤晶久教授が2021年に立ち上げた正課外のプログラム「実践ウェルビーイングプロジェクト(以下、JWP)」。有志の学生たちがさまざまな活動を通してウェルビーイングについて学んでおり、2月10日(土)は2023年度の活動の締めくくりとして、ユームテクノロジージャパン株式会社を訪問。「『学び』から考えるウェルビーイング」と題したワークショップに参加しました。

講師を務めてくださったのは、最新のテクノロジーを駆使したオンライン学習プラットフォームを展開するユームテクノロジージャパン株式会社のラーニングエバンジェリストで、人材開発コンサルティング事業や学習の研究を手掛ける株式会社ラーニングシフトの代表でもある小仁聡氏。ワークショップは、ユームテクノロジージャパンが提供するラーニングプラットフォーム「UMU」を活用して進められました。

――学ぶことの重要性と、ウェルビーイングとの関係を考察

最初に学生たちが向き合ったテーマは「なぜ学ぶことが⼤切か?」。学生たちが事前に答えたアンケートの結果を共有しつつ、「学び」をどう捉えるか、小仁氏はさまざまな視点を提示していきます。日本でも大ヒットしたビジネス書「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」を紹介すると、人生戦略は「教育・仕事・引退」といった3つのステージから、マルチステージへとシフトしていると説明。「⽣産性資産」「活⼒資産」「変⾝資産」を意識的に身につけることの意義や、予測不可能な事態が起きる社会が「VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)」から「BANI(Brittle、Anxious、Non-Linear、Incomprehensible)」へと変化していることに触れ、創造的なリスキリングの重要性を指摘しました。

続くテーマは、「何を学習するとよいのか?」。「ウェルビーイング」という言葉はWHO(世界保健機関)や、2015年の国連サミットで採択されたSDGs、OECD(経済協⼒開発機構)のEducation2030プロジェクトが提⽰した「ラーニング‧コンパス2030」で取り上げられています。小仁氏はそのうちの「ラーニング‧コンパス2030」に注目。⾃律的学習⼒を磨くことが⼤切だとし、リフレクションにより学びの動機の源となるビジョンを明確にすることで、現状とのギャップを埋めようとする内発的動機、いわゆるクリエイティブ‧テンションを高められると語りました。

さらに小仁氏は、学びに意欲的な割合が幸せな活躍層に多いという調査結果を引用。幸せな活躍につながる5つの学びの特性についても解説しました。

なお学生には、その都度気付いたこと、その気づきから次に起こすアクションを並べて書き込める「ブリッジングシート」が配られ、このシートに書き込み行う時間も適宜設けられました。書き込んだ内容は、いくつかのグループに分かれてお互いに共有。これがさらなる気づきを喚起している様子でした。

また、講義の合間にはグループワークも。「学びとウェルビーイングの関係を考える」というテーマの議論では、「学びはウェルビーイングを目指すためのツールである」「学びはウェルビーイングに向かうまでのプロセスである」「学びとウェルビーイングは豊かな生活を築く両輪である」など、ウェルビーイングを考察するにあたり有用な意見が各グループから出されました。

――学びとウェルビーイングからつながるキャリア形成の道

最後のテーマは「どのようにして学びキャリアを形成するか?」。ラーニングコンパスでも提唱されている⾏動モデル「AAR(Anticipation、Action、Reflection)」や、意志的キャリア形成の4要素「VITM(Vector、Image、Trial、Meaning)」の説示に、熱心に耳を傾ける学生たち。最後に、今回のワークショップを通して自分の思考がどのように変化したのか、それぞれが自分の言葉で言語化することにチャレンジしました。

「学びは勉強であり、面白くないものだと考えていたが、人と関わり自分を高めて人生を豊かにするための行為すべてが学びだと考えるようになった。学び続けることが生き続けることだと知り、今後は自身の強みを見つけながら積極的に多くの活動に取り組みたいと思うようになった」「学びは単なる興味の探究だと考えていたが、探究の過程にもさまざまな手段があると考えられるようになった。今後はAARサイクルや自律的学習を日常で実践していきたい」などと今回のワークショップを振り返った学生たち。学びという視点からウェルビーイングを考えることを通して、今後のキャリア形成における重要なヒントも持ち帰りました。

2024年度もJWPは新たな取り組みを続けていきます。

◆参加学生のコメント

  • 小仁さんのお話から、学びとはそもそも何を指すのか、ウェルビーイングとの関係性も含め、幅広く「学び」を捉え直すことができました。AARサイクルや自律的学習など具体的な取り組み方も知ることができたので、ぜひ実践したいと思います。
  • ウェルビーイングを「社会的に心も体も健康で生きがいがある状態」と捉えると、学びはウェルビーイングの手段なのだと感じました。また、JWPの活動を通して、体験を言語化して人と話すといった社会的な経験、さらにはそれを継続することも学びだと理解できました。
  • 日々の気づきをそのままで終わらせず、そこからアクションを起こすことが大切だと知りました。特に印象的だったのが、幸せな活躍につながる5つの学びです。その中の一つであるソーシャル・ラーニングは、これまでの経験から私自身もその重要性を実感しています。だからこそ、今一度自分の周りにはどのような人がいるかまとめてみたいと思いました。
  • 「学び」を実践し続けてきた小仁さんだからこそ語れる内容だと感じました。私ももっと自身の学びを深め、いつか小仁さんのように堂々と学びについて語れるようになりたいです。
  • 現代社会に参戦できる人材を育成するために必要なのは、ひたすら問題を解く学習だけではないと知りました。今回のワークショップで学んだことを、日常生活に活かしていこうと思います。
  • 自分の気づきを他者と共有することがさらなる学びにつながるというのは、新しい発見でした。また、その学びからアクションを起こすことを習慣化することが、自分自身の成長につながると知りました。また、ウェルビーイングを実現するためのプロセスが学びであるという考えも印象に残りました。自分がなりたい姿を描いてこそ、やりたいことが明確になるということを学べました。
  • 今回のワークショップを通して、「学習」というものの捉え方がガラッと変わりました。自分が成し遂げたい姿を想像して行動することで学びの視野は格段に広がり、小さな気づきや関心を大切にすることが豊かな生活につながるのだと気づきました。これまで「学習」とウェルビーイングのつながりを考えることはありませんでしたが、ウェルビーイングな人生に「学習」というプロセスが密接に関わっていることを実感しました。
  • 大学で受講した教員採用試験対策講座で教育時事を学んだ際、教育とウェルビーイングの関連性が注目されているということはさらっと学びましたが、今回、小仁さんのお話を伺い、あらためて教育とウェルビーイングについて考える一歩を踏み出せたと感じています。「人間は寝ている間以外は常に学んでいる」という言葉をお聞きして、目標をもって常日頃から生活したいと考えるようになりました。

◆ユームテクノロジージャパン株式会社/株式会社ラーニングシフト 小仁聡氏のコメント

経済産業省が提唱する「社会人基礎力」、それを養うための「リフレクション」を軸に、小学校から社会人までさまざまな層のリーダーシッププログラムで使用しているメソッドを取り入れながら、「『学び』から考えるウェルビーイング」という新たな視点で企画したのがこのワークショップです。

今回、実践女子大学の学生の皆さんとお会いして驚いたのは、その意欲の高さです。ワークショップ内では、気づきとそこから得られる次のアクションを「ブリッジングシート」に書き込んでいただきましたが、皆さん、びっしりとたくさん書き込みをされていて大変驚きました。これまで、ほかのキャリア講座などでもこのブリッジングシートを導入してきましたが、これほどたくさん書き込んでいる例はあまり見受けられません。正課外であるJWPの活動に自主的に取り組んでいるだけあり、考える力を身につけている学生さんが多いと感じました。

OECDの「ラーニング‧コンパス2030」でもウェルビーイングという目標を目指す姿が描かれているように、学びとウェルビーイングは切り離せない関係にあります。学びは人生を豊かにしてくれるもの――。今回のワークショップでお伝えしたこと、すべてを実践する必要はありませんが、どれも試して損のないことばかりです。どれか一つでも、学生の皆さんの新たなアクションにつながれば幸いです。

担当教員からのメッセージ

2023年度のJWP(実践ウェルビーイングプロジェクト)の締めくくりとして、私が企業時代にお世話になったユームテクノロジー社の小仁さんにお願いして最先端の学びを実感できるワークショップを実施いただきました。

「学び」そのものがウェルビーイングである。「学び」は、日々の授業は勿論、あらゆる体験・経験などが学びであり、どれだけ主体的に取り組めるかで、ウェルビーイングの質やレベルが変わってくる。そんな思いから、今年度のファイナルプログラムにいたしました。

小仁様には、本当に素晴らしいプログラムを構築いただき、心から感謝申し上げます。
この学びを、2024年度のJWP(実践ウェルビーイングプロジェクト)の活動に繋げていきたいと思います。

文学部国文学科 深澤晶久教授

2024年3月5日

JWP(実践ウェルビーイング・プロジェクト)の4年生メンバーが資生堂グローバルイノベーションセンターを訪問(1/30)

1月30日(火)、実践ウェルビーイングプロジェクト(JWP)のメンバーが深澤晶久教授とともに株式会社資生堂の複合体験施設「資生堂グローバルイノベーションセンター(以下、S/PARK)」を訪問。資生堂のウェルビーイングへの取り組みについてレクチャーを受け、施設を見学しました。JWPの活動の一環として資生堂グローバルイノベーションセンターに訪れるのは、昨年10月に続いて2回目となります。

 ※前回の資生堂グローバルイノベーションセンターへの訪問記事はこちら

――ウェルビーイングという言葉が生まれる以前から、ウェルネス領域に取り組んできた資生堂

2021年、文学部国文学科の深澤晶久教授が立ち上げた正課外のプログラム「実践ウェルビーイングプロジェクト(以下、JWP)」。有志の学生たちがさまざまな活動を通してウェルビーイングについて学んでおり、S/PARKの訪問は昨年10月に続いて2回目。今回は、JWP発足時からのメンバーでプロジェクトの中心的な役割を担ってきた4年生5名が参加しました。

まずは、資生堂の中田美奈子さんによるレクチャーからスタート。資生堂が2019年にオープンしたS/PARKのコンセプトやウェルビーイングへの取り組みについて解説いただきました。かねてより、日本発のビューティカンパニーとしてウェルネスへの展開を推し進めてきた資生堂。ウェルビーイングという言葉が一般化する前から、ウェルネスという合言葉のもとウェルビーイングを体現してきたという説明に、学生たちは大いに感銘を受けた様子でした。

「S/PARKは、“美のひらめきと出会う場所”。『都市型オープンラボ』として多くの研究員が勤務する資生堂最先端の研究施設であると同時に、お客さまと研究員のコミュニケーションを通じて、ビューティイノベーションや新たな価値を創造する場でもあります」と中田さん。社員しか立ち入ることができない一般開放エリア以外のワークプレイスも動画でご紹介いただき、学生たちは最先端のウェルネスオフィスの設備に驚きの声を挙げていました。

――「S/PARK Cafe」でランチ。「S/PARK Beauty Bar」や「S/PARK Museum」も見学

レクチャーの後は、毎日の気分や体調に合わせておいしくて健康的な食事を楽しめる「S/PARK Cafe」でランチタイム。“野菜中心の”という意味の“ベジセントリック”をコンセプトにしたこのカフェにも、ウェルビーイングを実践する資生堂ならではの考え方が生かされています。学生たちは旬の食材がふんだんに使われた彩り鮮やかなランチプレートを味わい、体の内側から“美”をサポートしたいという資生堂の思いに触れました。

さらに、ランチのあとは、パーソナライズスキンケアサービスや貴重な化粧体験が楽しめる「S/PARK Beauty Bar」、入場無料の体験型ミュージアム「S/PARK Museum」などを見学。視覚や嗅覚、触覚といった五感を通して、あらためて資生堂が考えるウェルビーイングについて考察を深めました。

◆参加学生のコメント

「ウェルビーイングには確固たる定義がないからこそ、“美”というウェルビーイングの新たな視点が得られて多くの学びがありました」(人間社会学部人間社会学科4年 竹川 歩)

「S/PARKの3階、4階には、他社の方々とのコラボレーションする際に利用できるホールやラボを備えていると伺い、企業間には競争だけでなく、お互いに技術を持ち寄ってより良い製品を作るという姿勢も必要だと感じました」(人間社会学部人間社会学科4年 福田 悠乃)

「ウェルビーイングという言葉が一般的になる前から、気付けばウェルビーイングを実践していたというお話をお聞きし、大変感銘を受けました。資生堂とのご縁をつないでくださった深澤先生にも感謝申し上げます」(人間社会学部現代社会学科4年 牛尾 恋々)

「S/PARKはとてもきれいな施設で驚きました。ワークプレイスにはジャングルジムや、居住区間を再現したスペースもあると動画でご紹介いただき、一つの製品を作り上げるには研究はもちろんのこと、環境も重要なのだと感じました」(人間社会学部現代社会学科4年 遠藤 美和)

「研究所というと堅いイメージがありますが、S/PARKは低層階が一般の方々にも開放されていて、社会とのつながりを大切にしているところが素晴らしいと思いました。」(人間社会学部現代社会学科4年 齋藤 由佳)

2023年11月6日

JWP(実践ウェルビーイング・プロジェクト) 資生堂グローバルイノベーションセンター視察研修を行いました。

2023年度のJWP(実践ウェルビーイング・プロジェクト)活動(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の第一弾として、10月28日(土)に、1~4年生のメンバー18名とともに、横浜みなとみらいエリアにある「資生堂グローバルイノベーションセンター」を視察してきました。

◆美から考えるウェルビーイング

今回のテーマは「美から考えるウェルビーイング」とし、株式会社資生堂の中田美奈子さん、山名淳さんから「資生堂の目指すウェルネス・ビューティー」と題して特別講義をいただいた後、資生堂グローバルイノベーションセンター内にあるS/PARK Museum、S/PARK Studioなどを見学させていただきました。

たまたまハロウィンの季節限定特別イベントである「セカンドスキンメイク」の体験にも参加させていただき、最後は
資生堂パーラーの S/PARK Cafeでのランチと、盛りだくさんのプログラムを体験してきました。

爽やかな秋晴れの土曜日の午前中、まさに「ウェルビーイングなひととき」を過ごすことが出来、ビューティーという視点からウェルビーイングを考える大切な機会となりました。

今年度のJWP活動には、「美」「幸福学」「デザイン思考」そして「学びの型」の4つの視点からウェルビーイングを考えるプログラムが組み込まれています。

◆参加した学生のアンケートより

本日S/PARKを視察させていただき、資生堂さんのこれまでと、今後どんな方向を向いているのかを学ぶことが出来ました。私たちの親世代が使う化粧品のイメージで、手の届かない存在と考えていましたが、私たちが今考えているwell-beingをBeautyと心の健康の面から考えていて、繋がる部分を感じることができて嬉しかったです。また、環境との共存の為の活動も行っており、well-beingに向けた活動がとても進んでいる素晴らしい企業だと感じました。私も、生活における様々な面からwell-beingを考えていきたいです。
今回見学や資料で見せていただいたS/PARK内もとても印象的でした。常に新しいアイデアが浮かびそうな心が弾んだりリラックス出来る環境が創られていて、仕事を全力で楽しむことができる素敵な場所でした。私は理系でも無ければ「美」の知識はまだほぼ0なのですが、それでもここで働きたいと思うような素敵な体験をすることが出来ました。素晴らしい機会とお話をありがとうございました。(人間社会学部2年)

美から考えるウェルビーイングに繋げることができました。資生堂は、常に時代にあった「美」「ビューティー」を追求しているのだと分かりました。そこから時代や環境によって「美のあり方」が変わるのだと考えました。また、ハロウィンイベントでは女性だけでなく男性もメイクをしていて、すごく印象に残りました。その関係もあるのか、体験してる子供の中に男の子もいたので、化粧=女(性、の子)という印象は徐々に変わっていくと思いました。そうすることで美からのウェルビーイングの可能性はより広がると思います。
見学では、たくさんの化粧品をみてとても心躍りました。メイク初心者の私は化粧品を買い物中に眺めるだけの時間も好きで、なぜ好きなのかが「遊び心を忘れてないから」だということが見学してわかり、その展示がとても印象に残りました。
化粧品だけでなく、人からの意見を取り入れるための部屋(環境)づくり、バランスを考えた食事など資生堂が考え、取り組んでいる美について学ぶことができてよかったです。はじめは美と聞くと女性の印象が強かったですが、今回の視察から新たな発見ができました。貴重な経験ができて本当によかったです。(人間社会学部1年)

担当教員からのメッセージ

約15名でスタートしたJWP(実践ウェルビーイング・プロジェクト)の活動も、3年目の今年は、1~4年生あわせて40名の学生が参加してくれる大型プロジェクトへと成長してきました。授業でもゼミ活動でもない、あくまでも有志の学生から構成される取り組みであるので、参加している学生は、主体性に溢れ、好奇心旺盛で、そしてキャリアデザインに前向きな学生ばかりです。

今回は、私自身が所属していた資生堂の新しい研究施設、世界に開かれた、まさにオープンイノベーションな環境の中で、歴史の大切さと新しい時代に立ち向かう企業の姿勢を限りなく感じられる空間での視察は、まさにウェルビーイングを考えるのに相応しいスペースでした。

この活動を通じ、一人ひとりの学生がウェルビーイングを考えるきっかけを掴み、21世紀を先導する人間として飽くなき成長を続けてくれることを期待したいと思います。

最後になりましたが、我々を快く受け入れて下さった、資生堂の中田美奈子さんと山名淳さんに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

文学部国文学科 深澤晶久教授

※頬には、当日実施していた「セカンドスキンメイク™」で
 ハロウィンのイラストを体験しました。

2023年9月13日

2023年度「キャリア開発実践論」が行われました(8/26~28)

どんな時代にあっても社会で活躍し、リーダーシップを発揮できる人材に成長して欲しいと願い実施してきたキャリア教育科目「キャリア開発実践論」が、クロスウェーブ府中において行われました。本学のキャリア教育科目を代表する授業として、企業の管理職レベルの内容を大学の正規科目にアレンジした特別な講座は今年度8年目を迎え、過去最多である27名の学生が参加しました。これまで、140名を超える学生が巣立っています。

◆過去最多の27名が参加

8年目となる今年は、大学3年生23名、大学4年生4名の合わせて27名が履修し、過去最多となりました。やはりこの授業の醍醐味は、リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏(元スターバックスコーヒージャパンCEO)と同社共同代表の鷲見健司氏とともに、とことん議論を尽くすことに最大の意義を見出すことであり、今年も講師と学生、学生と学生の熱い議論が3日間続きました。

本講座は事前に課題図書が3冊提示されており、学生たちは夏休み期間に相当な事前学習に取り組んだ上で講座当日に臨んでいます。

◆自分自身と向き合う

学部・学科・学年の異なるグループに分かれた学生たち。まずはチームビルディングとして自分たちの共通点を元にチーム名を決め、この講座で得たいことを発表しました。その後、岩田氏より「ミッション」についての講義を受けます。「ミッション」を考えることは、これからの人生でとても大切な軸となります。とことん自らと向き合い、ミッションを考える学生の姿は真剣そのものでした。

◆先輩交流会

初日の夜には、過去の本講座履修生をゲストに行う先輩交流会が行われ、今年も第1期生から7期生まで20名がクロスウェーブ府中に集まりました。
実際に働いている先輩方の話が聞けるということで、学生からは就職活動についての相談や、現在の仕事のやりがいなどの質問をして盛り上がりました。また、社会で活躍されている卒業生にとっても、鷲見氏・岩田氏や卒業生同士が交流できる機会となっています。後半はクイズ大会が開かれ、2時間半の交流会はあっという間に終了しました。

◆実践を用いて学びをアウトプット

2日目は再び岩田氏より「リーダーシップ」を学んだ後、鷲見氏より「ファシリテーション」について実践を用いて学びました。まず、学生たちはグループ毎に“ミーティングルール”を決めます。そのルールを共通認識として、それぞれ役割を変えながら、チームディスカッションを合計5回行いました。自身のファシリテーション力を発揮するだけでなく、チーム全員がそれぞれの役割を全うしながら、難しい課題に対しても積極的に意見を出し合い、話し合いを進めていく様子が印象的でした。学生からは、「普段はファシリテーターよりもサポートに回ることが多かったが、実際にやってみたら自信がついた」、「ついつい自分が仕切りがちになってしまうが、いろいろな役割を経験してみて、それぞれのふるまい方が学べたので良かった」など、実践したからこその感想が出ました。

◆ミッションステートメントとアクション宣言

最終日は、「リーダーシップ」と「ファシリテーション」を具体的にどう発揮するかを踏まえて考えた一人一人の「ミッションステートメント」をチームで共有しました。3日間という短い時間の間に自身と向き合い、ミッションを考えた学生たちからは、「考えたミッションに対して他者からコメントをもらい、自信を持つことができた」という気付きを得た半面、「具体的な行動をいれることが難しかった」という感想が出ました。これに対し岩田氏より、「見ていると、ミッションよりも行動指針(バリュー)に近いものがありました。そういったものについては、これからどのような場面で活かしていきたいのかをイメージできるとより具体性が出るので、ミッションにすることができると思います。是非これからどんどんブラッシュアップしていってください」というフィードバックが送られました。そして、学生たちは3日間の学びや気づきから作った「アクション宣言」を行い、終了となりました。

最後に深澤教授より、「出会いを大切にしてほしい」というお話しがありました。講師の岩田氏・鷲見氏はもちろん、卒業生や、チームのメンバーと共に過ごした3日間とそのご縁を胸に、今後の学生生活を送ってほしいというメッセージが送られました。

岩田松雄氏より

今年度も希望者が多く、通常より多くの受講生が参加していただきました。「ミッション」・「リーダーシップ」・「ファシリテーション」・「プレゼンテーション」等の授業は大企業の部長研修とほぼ同じ内容です。しかしながら受講生の皆さんは、しっかり自分の頭で考え、チーム内で討議をして、3日間で多くのことを学ばれておられるようです。合宿での様々なグループ討議を通じ、チームメンバー同士が日を追って強い絆で結ばれ、一生の財産になっているのではと感じます。最終日、自己のミッションなどの決意表明を発表するのですが、例年のことながら、とても内容が素晴らしくいつも感動します。我々講師も毎回多くの刺激を受けています。

鷲見健司氏より

合宿形式に戻った去年から2回で、のべ45名の先輩が講座に足を運び、受講者と触れ合ってくださいました。有難い限りです。「大学の価値は卒業生が決める」という深澤先生の言葉に倣えば、先輩方こそが本講座の価値を教えてくれています。そしてまた、今年も受講者27名の若い力が、私に未来への希望を感じさせてくれました。
「社会を変える、世界を変える」フューチャーリーダーたちの成長に少しでも関わらせていただくことができたことを大変嬉しく、光栄に思います。

深澤晶久教授より

キャリア開発実践論は8年目、今年は過去最高の27名の精鋭たちが、クロスウェーブ府中に集結しました。
岩田様、鷲見様からの数々のご示唆をいただき、また、熱心なアドバイスもあり、3日間で大きく成長した姿には、頼もしさすら感じました。
そして、今年も、過去履修して下さった先輩も20名が駆けつけて下さり、懇親会まで開催することが出来ました。

2022年11月8日

社会連携授業「JAL社員と考えるSDGs」3チームの最終発表が行われました!

日本航空株式会社産学連携部の方々をお招きし、「SDGsの観点から考える新しい機内食サービス」を考え提案する全3回の授業が、いよいよ最終回を迎えました。これまでチームで取り組んできたグループワークを企画にまとめ、JAL社員の皆様にプレゼンテーションしフィードバックを頂くという貴重な場。3チームはどんな企画を提案したのでしょうか? 緊張しながらのプレゼンテーション、Q&A、JAL社員の方々からのフィードバックで盛り上がる、貴重なまとめの授業となりました。

食品ロスをなくす機内食を提案(チーム3年生)

最初のプレゼンは、チーム3年生でした。
食品ロスを減らすことを目的とし、国際線のビジネスクラス以上をターゲットとした絞り込んだ提案内容に、教室に集まった全員が引き込まれました。

現在、日本航空株式会社の中でどれだけの食品ロスが生まれているのか、JALグループ国際線輸送実績のデータをわかりやすく提示した上で、
①完全に事前予約制にする、
②食材の地産地消、郷土料理提供、
③機内食を体験できるレストラン
という3つの企画が示されました。

③のレストランには機内食で余った食材を利用し、コロナ禍でも飛行機の旅を食で楽しむことができ、それは将来の飛行機の利用につながるというシナジーが盛り込まれていました。

発表後、他チームの学生からは、「完全予約制のフローが具体的でわかりやすい」という感想が。
またJAL社員からのフィードバックでは、「レストランの場所はどこを想定しているかなど、企画を具体化することでよりいろいろなものが見えてくる」おもしろさを語っていただきました。

各都道府県の食材を活用しよう!~目指せ地産地消~(チームAの4乗)

続いて発表したのは、2年生のチームAの4乗。
JALグループの最重要課題として掲げられている環境、人、地域社会に注目し、その具体的な解決策として規格外野菜の活用と食品廃棄の削減(余った機内食の有効活用)を取り上げました。

それをまとめる形で提案された企画は、47都道府県の特産品を使用したメニューです。北海道、関西、九州、海外など、テーマにあわせて具体的なメニューがおいしそうなイラストとともに視覚化され、他チームの学生からは「食べてみたい」という率直な感想が寄せられました。企画の最後には、現場のスタッフのモチベーションとなる「ジャパンSDGsアワード獲得」という具体的な目標も。
フィードバックでは、日本の課題解決につなげたいという意志を乗客に伝えることが必要であること、パンフレットなどでストーリーを語る方法についてご紹介いただきました。

『目指せ!世界一のサステナブル』現代~将来のニーズに合わせた機内食の提案(チームにんじん)

最後は1年生と3年生混合のチームにんじんが登壇。
提案の目標を「JALグループの ESG 経営 の取り組みをもとに、廃棄量削減、地域活性によりSDGs 達成に貢献する」と掲げ、食品ロスとプラスチックごみ削減を具体的な目標に定めました。

JALの機内食に対する乗客の口コミや現在提供中のメニューを分析した上で提案したのは、
①完全予約制、
②1プレート和食、
③容器をBPM(竹パルプモールド容器)にする
という3つの企画でした。

特に機内食のチョイスを入力しないとチケット予約ができない新しい仕組みや、食材調達で『JALふるさとプロジェクト』と協業する点には、JAL社員の皆様も関心を示していました。
フィードバックでは、近年外国人に日本のお弁当が注目されていることや、過去の機内食で外国人におふくろの味が人気だった事例が紹介され、1プレート和食への期待が膨らみました。

チームのがんばりを称え、JALの皆様から表彰状が進呈されました

3チームの提案が無事終わり、塩崎さんより「みなさん、ここまでがんばってくれて本当に嬉しいです」という心のこもった講評が。
「この嬉しい気持ちを示すために、みなさんに表彰状をお贈りしたいと思います」という言葉に、学生達に驚きの表情が浮かびました。
各チームの賞はこちらです。

3年生チーム:グッドチャレンジ賞
「難しい課題に、果敢に挑戦したことを称えます」

1年生チーム:JAL想い賞
「JALによりよい会社になってほしいという気持ちが伝わりました」

チームにんじん:サステナビリティ賞
「未来志向で持続可能な機内食という企画を強く感じました」

チームごとに表彰を行い、賞状とプレゼントを手渡すひとときに学生達の笑顔がこぼれました。
こうしたあたたかいねぎらいの前には、緊張したプレゼンテーションや大変だった準備も昇華されそうです。
たくさんの情報を集め、それを吟味し、課題を解決する企画にまとめあげ、クライアントの前で発表したこの授業は、これから社会で活躍する際に役立つ大切な経験になったことでしょう。

2022年9月29日

実践プロジェクトb「人と社会の活性化を促すアート・デザイン」学生達が練り上げた企画の数々が発表されました

実践女子大学と長岡造形大学の2大学が連携し、産学協同で社会をよりよい方向へ進めるアート・デザインを探求する「実践プロジェクトb」。K.UNOさんとリクルートさんにご協力を頂き、「新しい時代のブライダルジュエリー」を考える授業も、いよいよ最終発表を迎えました。学生達はブライダルジュエリーを取り巻く課題を様々な角度から考え、魅力的な企画にまとめあげました。

長岡造形大学では、パッケージなどの実物を制作して持参する学生も

最終発表はこれまでの授業と同様に両大学をリモートでつないで行われ、離れていてもオンライン上で共通のテーマについて考え、一緒に歩んできた仲間達が集合しました。発表を前に学生達が緊張した表情を浮かべる中、K.UNOの青木氏、リクルートの米田氏の「みなさんの発表を楽しみにしていました」というあたたかい言葉で始まりました。

プレゼンテーションの口火を切ったのは、長岡造形大学です。約10分の持ち時間で、全14のチームが順番に壇上へ。8枚の花びらをリフォームしなくともパートナーや子と分けて絆を受け継ぐことができるジュエリーや、結婚記念日を食べられるパンで祝うリングパンなど、次々と個性的な企画が発表されました。家族から譲り受けたパールのネックレスをリメイクするジュエリーは、夫婦だけでなく親子の絆も大切にする視点が盛り込まれていました。

中には企画のパッケージや絵本、ウェルカムボードなどを、実際に造って持参した学生も。画面越しに実物をみた学生達から、歓声が上りました。ブランド名やロゴ、スライドに添えられたイラストなども細部までしっかりデザインされ、完成度の高さを感じさせました。

実践女子大学では、課題の解決にフォーカスした様々な切り口の企画を発表

続いて登場したのは、実践女子大学の5チームです。インテリアチームからは、ジュエリーBOXをインテリアと組み合わせる画期的な企画が発表されました。リビング、ダイニング、ベッドルームそれぞれで、夫婦の絆の象徴であるブライダルジュエリーを活かす新しいインテリアが印象的でした。ツアーチームは夫婦旅行とジュエリーを組み合わせた企画を発表。夫婦で採取した砂金でつくるブライダルジュエリーなど、結婚数年後に設定した旅行を夫婦の絆につなげる工夫が各所に詰め込まれていました。

このほかにも夫婦の記念日の星座が天井に映し出される「ジュエリープラネタリウム」、シングルでも推しと結婚できる「ヲタ活ジュエリー」、指輪をつけられない人でも夫婦が過ごした時間を可視化するインテリアアイテム「シャドウラグストーン」、ブライダルジュエリーを中心に「夫婦のエピソードを描いた絵本」など、次々と魅力的な企画が披露されました。

いずれのチームも企業が直面する課題をどう捉え、その解決には何が必要かというロジックをグラフなどの図表をまじえてしっかり説明し、企画の説得力を強化していたのが印象的でした。

今回の取り組みをどう

すべての発表が終了し、最後にご協力いただいた2つの企業からコメントをいただきました。今回の取り組みを仕事に活かすヒントも合わせて紹介されました。

青木氏:「近年『モノからコトへ』と価値の転換が謳われますが、私たちのオーダーメイドジュエリーの世界では、コト(想い)をモノに込めて表現することが一般的です。ところが今日はそういった観点だけではない、ブライダルジュエリーの幅や可能性を広げる企画が多く、みなさんの発表を通してたくさんの気づきがありました。結婚やブライダルジュエリーに初めて触れる学生ならではの、新鮮な視点を感じることができました。

みなさんの企画に『幸せの時間をより長く楽しむ』、結婚を点ではなく線でとらえる発想が多かった点もその一つです。今日プレゼンテーションいただいた提案や考え方を、今後の商品開発にうまく活かしていきたいと考えています」

米田氏:「今日ここで発表していただいた企画を、みなさんが社会人になった時、自分はどう実現するか改めて考えていただけたらうれしいです。そこに学生のときには気づかなかった、新たな学びが生まれることでしょう。
ビジネスの企画には、再現性・汎用性・新規性という3つの要素が必要です。また魅力ある企画にするためには、①対象を変える、②付加価値をつける、③価値を変えずに伝えることを変えるという視点が役に立ちます。ぜひ会社で企画の仕事をする際は、ぜひ思い出してみてください。
現代の日本では、結婚式や披露宴も減っています。婚姻届けを出したご夫婦の40%しか結婚式を挙げないという調査データもあります。ブライダルジュエリーや結婚式は『夫婦が立ち戻れる場所』という価値を持っています。ゼクシイに携わる者として、できれば多くの人にその価値を再確認してほしいと思います」

4月からスタートし、約半年間に渡ってまとめあげた企画は、どれもブライダルジュエリーの本質を探究した姿勢が現れていました。今回の取り組みは、学生達にとってビジネスの課題を解決する企画の在り方を、深く考えるきっかけになったことでしょう。

2022年9月28日

スポーツニッポン新聞社との社会連携でこれからのオリンピック・パラリンピックの在り方を学生たちがプレゼンする授業が行われました。

2021年に行われた東京オリンピック・パラリンピック2020大会から一年。これからのオリンピックはどうなるかを考える授業が7月19日(火)に渋谷キャンパスにて行われました。ひと月前には有森裕子氏の講演を聞き、改めてオリンピックのレガシーについて考えました。この日は全6班が「オリンピックの明日」についてプレゼンします。開催規模や時期、参加国やジェンダー問題など、これからのオリンピックはどうあるべきかを発表しました。こちらは共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の、スポーツニッポン新聞社との社会連携授業です。この授業の様子は7月27日付のスポーツニッポン本紙にも掲載されました。

ジェンダー平等を実現するには?

1班目のテーマは「スポーツにおける男女平等」です。現在のオリンピックは男女にこだわりすぎているのではないかと指摘。東京大会では競泳や卓球など男女混合種目が増えました。ただ、サッカーなど混合が難しい競技もあることを問題点として挙げました。また女性のスポーツは先進国しか進んでいないことも懸念点として着目。宗教や国の経済事情など女性選手がうまれにくい環境も多くあります。そこで、 IOCが各国を指導することを提案。政治的な思惑とは外れたIOCであれば、男女平等の理念を広められるのではと期待をかけました。

発表の終わりにはスポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員からの講評がありました。藤山氏は、東京大会で混合種目が増えた点に着目したことに感心されていました。唯一男女の区別がない競技として馬術を紹介し、「これから混合種目はさらに増えるだろう」と述べました。IOCが今後様々な種目にプッシュしていくべきだという考えにも賛成していました。

開催時期はスポーツの秋に!

次の班は開催時期や規模、開催地の決定の仕方について提案。時期は気候が良くスポーツがしやすい秋に据えます。開催地は、一般投票をするシステムをプラスすることを提案しました。各国のプレゼンのあとに、全世界の人がネット投票できる仕組みです。決定から参加することでさらに興味を持ってもらえる効果を狙います。参加国は、貧困地域も含めすべての国から参加できるように働きかけます。2016年から導入された難民選手団の人数や出場種目を拡大するなどを提案しました。

藤山氏は「具体的な例が出てきて面白かった」と感想を伝えました。その上で、秋開催の難しさには現在のオリンピックの問題があることを教えてくれました。現在のオリンピックの最大のスポンサーはアメリカのメディアです。視聴率を取るために、他にスポーツの大会のない夏に行うことが、オリンピック憲章にも記載されているのです。スポーツそのものより利権が重視されている大きな問題です。ただ、全世界的に気温が高くなっている昨今「改善していかなくてはいけない」と藤山氏は語りました。

国対抗の意識を減らしてより自由なオリンピックに

3班目は、有森裕子氏の講演を聞き学んだ「オリンピックは国対抗ではなく個人戦である」という点にフォーカスしました。入場を国ごとではなく競技ごとにしたり、国旗や国歌の使い方を改めたりするなどの案が出ました。また、現在の報道は自国選手のメダルの数や国旗を背負った写真など、観客が国対抗だと思ってしまう在り方であるという点を指摘。「ガンバレニッポン」など国を背負わせるメディアの伝え方を改め、選手個人の戦いにフォーカスしたものにすることを提案しました。そうすることで選手のプレッシャーを減らし、LGBTQなども公表しやすくなる効果があると繋げました。

藤山氏も「おっしゃる通り変えていかないといけない」と大きく頷きました。IOCはむしろ国ごとで競わせようとする風潮があるため、それに流されないよう「メディアに携わるものとして、叱られた気分です」と笑いを交えながら述べました。

SNSで選手もみんなも発信しよう!

4班目は、大会が終わった後の振り返りが少ないのではないかという問題点に着目。解決方法として、大会後もSNSを利用し選手や著名人などに積極的に投稿してもらうことを提案しました。2つ目の問題として、特に日本人選手の自己肯定感が低いことを挙げました。選手に国を背負わせるような報道を改め、選手自身も楽しみ良心を感じてもらえる発信をすることが大事だと述べました。さらに、オリンピックの初心である「五輪休戦決議」を思い出し、競技以外のところでも国や選手同士が交流を深めることを提案。争いの多い現代だからこそ、異文化理解やジェンダーなど多様性を受け入れるきっかけになる大会にすることを目指すことを提案しました。

藤山氏からは「SNSでの発信は今後盛り上がっていくと思います」との同意の意見が。これまで選手個人の発信はあまり望ましく思われていませんでしたが、これからはどんどん選手も発信していくべきだと語りました。「そのためには、選手の意識を変えなくてはいけない、オリンピックは個人の戦いなのだということを選手にも共有していく必要がある」と述べました。

もっと多くの人が参加できるオリンピックへ

5班は、オリンピックのモットーに注目。「より速く、より高く、より強く」は男性寄りの考えではないか?と問題提起しました。現代に合わせて「より美しく、共に感動を」と加えることで、女性や後進国も参加することの意味を与えると提案。一人ひとりが目に見えない壁をなくす意識付けが大事であると述べました。性別で試技の場を分けることを廃止し、ホルモン測定値で出場可能とすることで、トランスジェンダーの選手も葛藤なく参加できるようにします。また、オリンピックとパラリンピックは同時開催を提案。別々だとパラリンピックの時期に薄れてしまう関心を集めたままにします。さらに開催地の負担を減らすため、複数国で同時開催という案も出しました。競技ごとに適した場所で行えるため、選手の負担も減るとプレゼンしました。

藤山氏も「男性中心の時代のモットーだったので、変更は良い案ですね」と感想を述べました。オリパラの同時開催や、開催国を分けることもとても具体的で面白かったと語りました。また、経済的にも環境的にも、近い将来複数国での開催は実現するのではないかとも述べました。

一点集中をやめて地方も活性化

6班目は開催地の問題に注目し、一都市で開催することの問題点を取り上げました。全世界から人が集まることで街は混雑し交通は混乱します。そこで開催を国全体で行うことを提案。競技ごとに分散することで、人の集中を防ぎ混乱を防ぎます。また、地方でも競技を行うことで、地方住民も親近感を持って楽しむことができ、観光客も増えるため地域活性化につなげることができます。会場は新設せず、すでにある施設をオリンピック用に改修し利用。費用を抑えられるだけでなく、地方の会場のバリアフリー化を進め、老朽化の防止にもなると提案しました。

藤山氏からは「中身があってとても良い案」と感心の言葉が。東京大会で利用された国立競技場は、1600億円かけ新設され、維持費に年間24億円かかると言われています。現状は大きな赤字であるためどう運営していくかが注目されています。このような事態を避けるため、2030年に誘致中の冬季オリンピック札幌大会は、札幌だけでなく北海道全域で行われる予定であることを教えてくれました。

今回をきっかけにもっとオリンピックについて知ってほしい

6組の班のプレゼンを終えて、藤山氏からの総評をいただきました。「すべての班を聞いて、皆さんの関心はジェンダーの公平性のことなのだなと感じました」と感想を述べました。そして、オリンピック憲章に個人の戦いであると記載されていることが学生たちにとって衝撃であったように、この事実をもっと広めるべきだと語りました。「そのためには、まず選手の意識改革も大事。選手がまだオリンピックを国対抗と思っている」と問題点も述べました。こういった考えを広めるためにも「みなさんがSNSで発信してもらえればいいと思います」と伝えました。そして「せっかくオリンピックについてここまで考えたのだから、より深く知るきっかけにしてください」と語りました。

また、プレゼンの様子を撮影してくれていた亀山氏にもコメントをいただきました。亀山氏はスポーツが大好きで、スポーツニッポン新聞社へ入社。しかし大学卒業からコロナ禍が始まり、コロナ禍ではスポーツは不要不急と言われ苦しい思いをしたと言います。「皆が好きな娯楽についても、今後どういった付き合い方をしていくかという観点を持つのも面白いと思います」とメッセージを伝えました。また、就活にあたり自分の意見を持ち、周りの人たちの意見を取り入れる柔軟性を持つようエールを送りました。

東京大会の残した<レガシー>とは

最後に深澤教授の総括がありました。深澤教授は東京大会の準備・運営を行う組織委員会の「文化・教育委員」の一員でした。前回の東京大会は、戦後の復興の象徴として、建物などハード面を強化した大会でした。今回の東京2020大会は、未来を担う若者たちの心に残るソフト面を重視した大会を目指していました。そのため全国810の大学・短大と連携協定を締結し、オリンピック・パラリンピック教育の推進や醸成に取り組みました。しかし、大会後に組織委員会に報告書を提出したのは実践女子大学を入れてわずか数校。「開催の延期や無観客開催など、各大学で盛り上げることが難しかったことが窺われます。」と深澤教授は語ります。東京2020大会が終わってから1年。新型コロナウイルスという思いもよらない感染症の影響を受けた異例の大会でしたが、次の世代に何をつなぐか、何が残ったのか考えることが大事だと述べました。なぜなら、「きっとまた東京でオリンピックは行われます」。今回の大会について授業を行ったことや、大学で取り組んだことをレガシーとして受け継ぎ、その時に改めて考えるきっかけにしてほしいと語り授業は終了しました。

2022年9月26日

「キャリア開発実践論」が3年ぶりに対面で開催されました(9月10日〜12日)

どんな時代にあっても社会で活躍し、リーダーシップを発揮できる、そのような人間に成長して欲しいと願い実施してきたキャリア教育科目「キャリア開発実践論」が3年ぶりにクロスウェーブ府中において行われました。企業の管理職レベルの内容を大学の正規科目にアレンジした特別な講座は、本学のキャリア教育科目を代表する授業として、今年は7年目、130名を超える学生が巣立っています。

3年ぶりにリアルで

7年目となる今年の授業は、ここ2年間新型コロナウイルスの影響を受け、オンラインでの実施とならざるを得ませんでしたが、待ちに待った対面での実施が復活しました。やはりこの授業の醍醐味は、リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏(元スターバックスコーヒージャパンCEO)と同社共同代表の鷲見健司氏とともに、とことん議論を尽くすことに最大の意義を見出すことであり、今年も講師と学生、学生と学生の熱い議論が3日間続きました。

本講座は事前に課題図書が3冊提示されており、学生たちは夏休み期間に相当な事前学習に取り組んだ上で講座当日に臨んでいます。

初日は、岩田氏の講義を踏まえての「ミッション」を中心に展開されました。「ミッション」を考えることは、就職活動のみならず、これからの人生でとても大切な軸となります。とことん自らと向き合い、ミッションを考える学生の姿は真剣そのものでした。

その後は、「リーダーシップ」を考えた後、鷲見氏の導きにより「ファシリテーション」を徹底的に学ぶこととなります。VUCAの時代の中で、多様化する人々の価値観を踏まえ、組織を構成するメンバーの英知を結集するためのコミュニケーションとして、ファシリテーションの重要性は今後さらに高まるものと考えています。

最終日は、2日間学んだことを基本に、「リーダーシップ」と「ファシリテーション」を具体的にどう発揮するか、そして一人一人の「ミッションステートメント」を構築するとともに、行動宣言として発表して、終了となりました。

今年、岩田氏や鷲見氏が大切にした点は、上記の内容に加え、当たり前のように使われている言葉の意味の正しい理解という視点でありました。企業の管理職レベルでも誤った使い方がなされている事例を、分かりやすく解説いただきました。まさに生きた授業が3日間にわたって展開されました。

先輩交流会

例年行われてきた、過去の本講座受講生を囲んでの先輩交流会。ついに大規模での実施が実現出来ました。過去の第1期生から6期生まで総勢25名が参加。履修している学生が今年は13名でしたので、その倍にも上る卒業生が駆けつけてくれました。

コロナ禍で、縦のつながりが作りにくかったこともあり、先輩との交流会は大いに盛り上がりました。先輩からは、社会人として仕事のやりがいや、悩んだこと、そしてこの講座の思い出など、学生からは、就職活動についての相談や、今取り組んでおくべきことなどのアドバイスなど、その内容は多岐にわたりました。後半は、岩田氏・鷲見氏に関するクイズ大会も開かれ、1時間半の交流会はあっという間に終了しました。今後、さらに規模を拡大することで、卒業生同士の人的ネットワーク構築の場へと進化させていきたいと考えています。

参加学生の声

・この3日間は、まるで「私の人生のミーティング」を行えたような気持ちでした。岩田様、鷲見様、諸先輩方、そして受講者同士、とても素敵な出会いの場もいただきました。

・人と向き合うこと、自分のやりたいことと向き合うこと、自分の強みの活かし方、人として徳を積むことの大切さ、一歩前へ踏み出すこと、上げだしたらきりがないほど学びが得られた合宿でした。

・3日間を通して感じたこと、それは「もっと自分に自信をもって良い」ということでした。講座の前と後とで、明らかに意識に変化がありました。

・3日間、ここまで成長した13人のメンバーが、4か月後の報告会で、さらにどこまで成長しているか、今から楽しみですし、何より自分自身が成長を遂げて報告出来るよう頑張ります。

卒業生の声

・私は、キャリア開発実践論を通して考えた「軸」が就職先を決める際の判断基準になりました。後輩の皆さんの成長を期待し、応援しています。(2021年卒YK)

・普段なかなか大学生や大学の同期と会うこともなかったので、とても新鮮であり、貴重な時間となりました。(2021年SF)

・後輩との会話を通して、自分自身のキャリアを振り返るきっかけとなりました。社会人となり、目の前の仕事に忙殺されていたこともあり、再び、自分自身のミッションを思い出すきっかけとなりました。(2017年卒MY)

就活は大切なことではありますが、あくまでも通過点です。思い詰めず、でも妥協はせず、自分らしく頑張って欲しいと思います。(2019年卒RA)

・この取り組みがもっともっとつながって社会や会社を変えるようになれることを期待します。私もその力になりたいと思います。(2017年卒SK)

岩田松雄氏の話

コロナ禍にあって、受講生たちは入学以来ほとんど登校することもなく、人と接する機会が極端に少なくなってしまいました。研修中チームメンバーにランチを誘ってもらっただけで嬉しくて涙を流す人までいました。今回3年ぶりに(感染症対策を徹底した上で)合宿という濃密な時間を過ごし、薄れていた人と人とのつながりを感じてもらったと思います。ファシリテーション、リーダーシップ、働き方改革などの研修を通じて討議やプレゼンすることにより、自信もついたのではないかと思います。今後就職や人生を考える上で、家族や周りの人に自分の強みについて色々ヒアリングをし、自分のミッションを“脳みそがちぎれる”ほど考えてもらったことで、しっかり自身を内省できたと思います。また企業側も卒のない受け答えよりも、自分のミッションを情熱を持って語ってくれるような人を採用したいと思っています。さらにこの講座の卒業生は退職する方も少ないと聞いています。懇親会には多くのOGの方も参加して、有意義なアドバイスを送ってくれています。この研修を受けたというだけで何か仲間意識のようなものが広がっているようです。今後ともさらにより良い研修にしていきたいと思っています。

鷲見健司氏の話

受講生の互いを認め、高め合い成長する姿と以下のような言葉に、コロナ禍に奪われていた、学びの場の持つ大切な価値を痛感しました。

・初めて会う仲間と様々に語り合えて胸いっぱいの気持ちになりました

・参加者でお互いの意見を共有して議論しあう場が多くあり、とても濃い時間を過ごしました

・合宿形式ということで、他の学生と一緒に過ごす時間が長く、学校で行う授業では実現が難しいぐらい深くディスカッションすることができて、とても良い経験になりました

・正直、合宿に対して少し苦手意識があり、初めは参加を躊躇っていたのですが、3日間を通して、目標の『ここでしか得られない財産を得る』事ができ、本当に参加して良かったなと思います

・今まで、サークルや部活動に所属していないことや、オンライン授業の影響により学内の友人と深く関わることがなかったです。自分をさらけ出して友人とぶつかり合える貴重な経験ができ嬉しかったです

7年間を振り返って

深澤教授のお話し

超一流の講師陣の下、超一流の環境で学ぶことで、実践女子大学生のトップランナーとして社会に飛び立ち、さらに社会の先導者を目指してもらいたいという思いで実施してきた本講座も7年目を迎えました。3年ぶりに対面で行えたこともあり、岩田講師、鷲見講師の熱い指導を頂いたり、休憩時間などには、個別にアドバイスをいただく学生の姿も見られました。一つひとつの言葉の意味といった本質的な部分も、改めて貴重な学びとなりました。また、初日夜間の「先輩交流会」には、なんと25名の卒業生が参加してくれました。後輩思いの卒業生の優しさを感じるとともに、やはりこの講座の印象が、社会に出てからも決して色褪せていないことを感じる場面でもありました。この場を借りて、岩田様、鷲見様に心から感謝申し上げます。

2022年9月5日

2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」最終回に、サントリーホールディングス株式会社顧問の福本さんをお迎えしました!

様々な分野で活躍し、輝かしいキャリアを築いてきた講師の方をお招きするリレー講座もいよいよ最終回となりました。6回目となる授業は、サントリーホールディングス株式会社顧問の福本さんです。
福本さんには昨年もご講演をいただきましたが、その時に聴講した学生から多くの質問が寄せられ嬉しい驚きだったというエピソードから始まった90分。「私は何のために働くのか」を軸としながら、社会人としてキャリアを積み重ねていくヒントをたくさん紹介してくださいました。

創業から100年以上受け継がれる、「やってみなはれ」精神

今世紀に入ってから世界中に市場を拡大しているサントリーは、2兆3000億円の売上(2021年度)を持つ大企業。現在はお酒や飲料だけでなく、外食、健康食品、花、そしてハーゲンダッツアイスクリームなど、幅広い事業を行っています。サントリーは創業以来、「やってみなはれ」と「利益三分主義」という2つの精神を軸に、長い歴史を作ってきました。

創業は1899年の大阪。ぶどう酒を製造する鳥居商店から始まりました。1907年に甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」を発売し、外国人や上流階級に支持され大成功を収めました。最近ではプレミアムモルツのヒットやハイボールブームを成功させたサントリーには、今に至るまで、上述の「やってみなはれ」「利益三分主義」という創業精神が貫かれています。

「やってみなはれは、現状に満足せず常に成長を続けようとする挑戦。そして利益三分主義は、近江商人の三方よしに通じる精神で、高品質な商品やサービスの提供だけでなく、真に豊かな社会の実現を目指すこと。創業から100年以上経っても、私が勤めたサントリーにはこの精神が受け継がれています」

就活は、みなさんが企業を選ぶ場でもある

大学では文学部だった福本さんは、ご自身の就活を「志無し、業界希望無し」だったと振り返ります。様々な企業の説明会に参加する中で、印象に残ったのがサントリーでした。

「私が社会人になったのは、男女雇用機会均等法が施行される前で、男女の給与に大きな差があった時代。4大卒の女性はなかなか採用されませんでした。ところがサントリーの説明会には若い女性社員がいて、ウィットに富んでいて珍しかったんです。サントリー商品をよく知らず、第一志望でもなかったんですが、人事の楽しそうな雰囲気に惹かれて面接を受け、入社しました。

5年くらい働くかという軽い気持ちでの就活でしたが(笑)、自分はこれをやりましたと言える仕事がしたいと思っていました。そこで女性を戦力とする会社を探していたんです」

福本さんはご自身の経験を踏まえ、就活に挑む学生たちに自分に合った企業を選ぶヒントを紹介してくださいました。

「説明会で会った社員の印象と組織風土は、重なることが多いんです。みなさんたくさんの説明会に参加されると思いますが、そこにいる社員を観察することで、企業を深く理解できると思います。就活は学生のみなさんが選ばれる場であると同時に、みなさんが企業を選ぶ場でもあります。ぜひ萎縮せず、自分に合った企業を選んでほしいですね」

1人のプロとして、仕事に挑む姿勢とは

新人の福本さんは人事に配属され、研修担当に。入社6年目で目標とするロールモデルが社内にいないことに気づき、仕事の幅を広げて強みをつくるために社内留学制度に手を挙げ、2年間の教育を受けました。その後、広報に異動しサントリーホールの担当になります。

「広報は記者に情報を発信し、記事にしてもらう仕事。クラシックも芸術もあまりわからなかった私は記者とコミュニケーションがとれず、1年間まともな仕事にならず本当に悩みました。ある時、PR会社の女性社長から『貴女、今のままだと次の仕事はない。会社もつぶれるわよ』と言われ、勇気を出して記者の人間関係に入り込んでいったんです。するとだんだんと話を聞いてくれる人が増えました」

その後、結婚・出産をした福本さんは、3年間の育休を取得。早くから育休制度があったサントリーでは、お互いかばい合う社風があったそうです。育児と仕事を両立しながら広報として奔走したウィスキー博物館は、ご自身のレガシーになったと福本さんは当時を語ります。

2008年に支配人としてサントリーホールに戻ったとき、300人の大所帯になっていました。前任者と違い自分は強いリーダーシップを発揮するタイプではない福本さんは、みんなの意見を聞きながら3~5年先のパーパスを作り上げます。このとき「リーダーシップのかたちはひとつではない」と気づき、この経験がその後の福本さんの軸となりました。そして入社33年目の2015年には、サントリーホールディングスの役員に就任。会社の理念を事業に反映させる立場として、サステナビリティの実現に挑みました。

講義のまとめとして、
福本さんは女性が仕事で活躍するために役立つ心構えを強調しました。

① 目の前にある自分の仕事を楽しむ
② 努力を惜しまず熱中する
③ 人との関係を大切にする

「みなさんが社会人になると、様々な仕事を経験すると思いますが、どんなときもどんな姿勢で挑むかが大切です。好きなことなら夢中になる、人よりも努力する、まわりに応援しようと思ってもらえる。みなさんが1人のプロとしてキャリアを形成していく中で、ぜひこの3つを意識してほしいと思います」

キャリアは「目の前の仕事にベストを尽くす」ことから始まる

続く質疑応答では「モチベーションを維持する方法は?」という質問に、「新しい仕事はもがき苦しむほど大きくステップアップできる」と回答。「仕事ができる人とは?」という問いに対しては、「言われたことだけではなく、一歩先を見て動ける人。自分のアウトプットを受け取る、まわりの人のことも考えられる人ですね」と答えてくださいました。

いまと社会環境は大きく違いますが、大企業で輝かしいキャリアを築いてきた福本さんにも就活や新しい仕事に挑む苦労があったのは、これから社会で活躍する学生達にとって新鮮な共通点だったのではないでしょうか。サントリーの「やってみなはれ」精神を体現し、「目の前の仕事を軽んじることなく、ベストを尽くして挑む」ことで実績を残した福本さんの講義は、学生達の未来を支えるひとつの軸になることでしょう。

深澤教授の話

今年度の女性とキャリア形成6人目のゲスト、最後を飾っていただいた福本様は、昨年度に引き続きのご登壇となりました。ソフトな語り口がとても印象的ですが、ご自身のお話しからは、真面目に目の前の仕事に取り組む大切さや、やはり人間関係を何よりも大切にされてきた数々のエピソードをお聞かせいただきました。最後に、感じたこと、それはサントリー様の社員の方の、会社を愛する心の強さです。今の時代“愛社精神”という言葉はあまり登場しなくなりましたが、やはり、会社と社員のエンゲージメントを大切にされていることは、企業の成長には欠かせないものだと考えます。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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2022年8月3日

2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第五回に、元(株)資生堂執行役員常務の関根さんをお迎えしました!

様々な分野で活躍し、輝かしいキャリアを築いてきた講師の方をお招きするリレー講座の第五回は元(株)資生堂執行役員常務を務めた関根さんです。
「皆様にとって仕事とは?」という問いかけで始まった授業では、資生堂に入社した関根さんがどんな壁にぶつかり、それをどう乗り越えてきたかというエピソードを軸とし、学生達が社会人として活躍しキャリアを形成していくためのヒントがたくさん盛り込まれていました。途中、美しい立ち姿や座り姿のコツを学ぶ時間も設けられ、学生からは歓声が上がっていました。

商品を「売らない」ビューティーコンサルタントとして

1972年にビューティーコンサルタントとして資生堂に入社した関根さん。学生時代に尊敬する先生と出会い、将来の夢は教師になることでしたが、御父様が寝たきりになったことで大学進学を諦めざるを得ず、就職を決めたそうです。「初任給が高い会社」を探す中で、出会ったのが資生堂でした。
入社したばかりの関根さんが担当したのは、スーパーなどに設けられた不定期の特設会場で、通りかかった人に化粧品を紹介・販売する仕事。高度経済成長を背景にした厳しいノルマは、なかなか達成できませんでした。

「毎日終礼で各自の売上を報告するんですが、ノルマの1割しか売れない日もありました。自分が目標を達成できなければ、チームの誰かが足りない分をカバーしなくてはなりません。毎日がプレッシャーでした」

悩んだ関根さんがたどり着いたのは、なんと「売らない」ことでした。いくらノルマを達成できても押し売りはやりたくなかった関根さんは、「商品を売る」から「商品を利用したお客様の喜び」にシフトしました。
「お客様に声を掛ける際、最初に『売りません』と言った上で、商品を体験していただいたんです。『押し売りされないなら…』と商品を試したお客様の美しさを、資生堂の商品で引き出すことで、自然と購入につながっていったんです」

多くのお客様から支持された関根さんは、着実に売り上げを伸ばしていきました。ここで関根さんが学んだのは、自分達はお客様のためにあるということでした。働くのは上司や会社の評価を得るためではなく、お客様の喜びのため、信頼を得ること仕事の本質をつかんだ関根さんは、実績を積み重ねていきました。

40年以上在籍する中で、様々な仕事を経験

その後、関係会社に出向し、そこで女性初の本部長に任命されました。さらに宇都宮支社の支社長、大阪支店支店長を経て、50歳のときに国際マーケティング部へ。ドイツ人上司のもとで、グローバル人材に囲まれながら働き、各国を飛び回りました。

「上司に私の配属理由を聞いたら『人事考課に自分の意見が言える。グローバル人材の第一要件を満たしていた』と言われました。意見を言わない日本人の中で、関根さんはものおじしないという評価だったようです」

英語がそれほど得意ではなかったという関根さんは、NYで行った30分の英語スピーチに秘書にルビを振ってもらうこともあったそうです。国際事業部での経験は、英語やグローバルビジネスに本気で取り組むきっかけになったと当時を振り返りました。

そして2012年に資生堂の執行役員に就任、2014年には執行役員常務、顧問を務めた関根さんは、2018年に独立し、(株)Bマインドを設立しました。現在は女性活躍、プラス志向講師として全国で活躍しています。

目の前に現れた壁は、困難であると同時にチャンス

関根さんはこれから社会に出る学生達に、チャレンジ精神の大切さを強調しました。

「お給料をもらう以上、会社では興味のない仕事もやらなくてはなりません。時には不本意な異動もあるでしょう。でも目の前の課題を『やりたくない』と思う前に、それをチャレンジととらえてほしいんです。勇気を出して新しい環境に飛び込むと、新しいものが見え、自分に足りないものがわかります。ぶつかった壁から逃げず、立ち向かうことが自分を成長させる経験になります。

仕事もプライベートも輝くための要件として①自分の強みを知る・磨く、②チャレンジ精神(失敗を恐れない)、③主体的であること、④タフな精神力を意識することがポイントだと関根さんは語ります。そして持続的な幸せという意味のwell-beingに役立つポジティブ思考を紹介しました。ポジティブ思考は物事を良い方に考えることではなく、つらく苦しい中で希望や解決策を探す思考と、探し出した光に向かって進んでいく強い精神のことです。それには目の前の壁そのものに価値を見出し、試練として受け止め、困難を突破して成長する「ブレークスルー思考」が役に立つといいます。

「人生は選択と挑戦の連続といえます。選択で大事なのは、ポジティブな思考と視点。挑戦で大事なのは、自分の強みと課題が一致していることです。そのためには自分の強みや得意分野を磨いておくのは、とても役に立ちます。

人生はアップダウンの連続といえます。チャレンジして失敗しても、それは貴重な経験ととらえればいいんです。みなさんには逆境を楽しみ、苦しいときほど笑うタフな精神力を身に付けていただきたいですね」
と締めくくりました。

well-beingにつながる具体的な手法で、輝く未来を創っていく

大きな拍手で終了した講演の後は、質疑応答の時間となりました。「自分に似合うメイクを教えてほしい」という質問には、質問した学生の長所を活かす具体的なメイクアドバイスがあり、みな真剣に聞き入っていました。また「プレゼンテーションで意識すべきことは?」という問いには、「ミスなく語るよりも、聴衆の目をみて心から湧き上がる自分の言葉で語ることが大切」と強調しました。

関根さんが紹介してくださった、キャリアを①今、やらなければいけないこと(must)、②今できること(can)、③やりたいこと(will)の3つでとらえる視点は、社会で活躍する際、自分を客観的に振り返る上で役に立つ視点になりそうです。仕事だけではなくプライベートも輝くwell-beingを実現する具体的な手法の数々は、学生の心に強く響いたようです。

深澤教授の話

女性とキャリア形成、5人目のゲストは、元資生堂執行役員常務の関根近子様でした。私が資生堂勤務時代には大変お世話になった方で、久しぶりにお目にかかりましたが、さらにパワーアップされておられるお姿に感動いたしました。全身から溢れるオーラに加え、ポジティブ思考のお話しに学生は魅了されていました。
60名を超える学生が教室でお聞きしているのに、学生一人ひとりと会話をされておられることを感じる、その雰囲気づくりがとても印象的でした。
やはり、こうして対面で、ゲストの姿から感じる「想い」を浴びることが大切であることを改めて感じました。この場を借りて関根様に心から感謝申し上げます。