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2023年7月19日

世界一のホスピタリティの秘訣は?「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。

6月8日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。テーマパーク開園当初の様子や、初の女性管理職としての奮闘ぶりをざっくばらんにお話くださいました。学生たちは世界に誇れるホスピタリティの秘訣に触れる機会になりました。

テーマパーク開園時の苦労は?

授業の冒頭の出欠確認に、この日は仕掛けがありました。
出欠管理システムで当たりが出た2名の学生には東京ディズニーランドの記念グッズが。学生たちからは歓声が上がり、授業のやる気も高まりました。

今回進行を担当したグループの学生

進行役の学生たちも、ミニーのカチューシャを付けてゲストを紹介いたしました。

永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
オリエンタルランドも当時は男社会。
希望していたグランド・サーキット(アトラクション)には女性を採用できないと言われ、シアター型のアトラクションに配属になったと話します。
「徐々に女性も働けるようになっていきました」と言い、今ではカヌーを漕ぐ力仕事のアトラクションにも、女性が多く採用されていると話します。

東京ディズニーランド開園当時、テーマパークは日本人にとって初体験。
ピクニック気分でお弁当を持参してしまう人も多く、持ち込み禁止が来場者へ浸透するには5年ほどかかったと言います。アトラクションキャストだった永嶋氏も何度もゲストにお願いをしたと笑いを交えて話されました。

男性社会に負けずに管理職に

1998年に管理職研修を受け、管理職試験に最初に受かった女性となりました。
1990年代は修学旅行先として選ばれるようになり、永嶋氏は営業部として教育委員会や文科省の方々との交渉にあたります。
「上層部の方は、テーマパークは遊ぶところというイメージがあり、修学旅行にふさわしくないと思われていました」と、イメージを変えるために奔走されたと語りました。

ここで永嶋氏は一つの言葉を提示。
「オールドボーイズネットワークって知っていますか?」男性中心の組織内の独特の文化や仕事の進め方、人間関係を指す言葉です。
民間企業は変化してきているものの「地方や公共機関などでは、まだ古い体質が蔓延っている」と永嶋氏。
実は永嶋氏も管理職試験を1度落ちていると話します。「自分より年下の男性が受かっていて納得できなかった」と話し、「女性の先駆者がおらず、管理者の経験や知識を聞けませんでした」と苦労を語りました。

ただ、元から執行役員になろうと思っていたわけではないと言います。
永嶋氏は「目の前のことが楽しくて、ただ頑張っていたら周りがさらにいろんな仕事を任せてくれるようになっていきました」と笑って語りました。

ゲストもキャストも楽しいハピネスの循環

2000年代、TVCMで「夢が叶う場所」を謳い、東京ディズニーランドは「夢の国」と呼ばれるように。
2010年代になると、ゲストとキャストが共に楽しむ、魅力のある場所へ成長していきます。エリアに合わせた挨拶や、掃除のキャストが落ち葉などで絵を描くなどのアイデアは、キャストの発案。
「ゲストにハピネスをお届けする」という理念を自発的に行っているのです。

キャスト研修に接客マニュアルはなく、安全第一に行動するという基準のみ。
東京ディズニーリゾートのホスピタリティは世界一と称されますが、その背景には「人間力」があると話します。
丁寧な対応やもてなしにゲストは喜び、その様子を見てキャストは嬉しくなり、モチベーションがさらにあがる。
これを永嶋氏は「ハピネスの循環」と語ります。

当たり前のことをしっかりやる「人間力」

ただ「お褒めの言葉もたくさんもらいますが、実はクレームもたくさんもらいます」。
クレームは賛辞の数よりも2桁ほど多いとのこと。そのなかで最も多いのが、キャストのぞんざいな行動。ゲストの目を見て話さなかった、笑顔がなかったなど、ぞんざいな扱いをされたと感じてしまうのです。
しっかり挨拶をして、ルールを守り、仲間を思いやり自分も楽しめる環境作りをすること。当たり前のことかもしれませんが、この当たり前ができる「人間力」が、世界一のホスピタリティを支えています。

「今の東京ディズニーリゾートを見ているとなんでも最初から成功しているように見えるかもしれませんが、そんなことないんです」と永嶋氏。
いろんな失敗や経験をしながら今の姿が築き上げられていったと話します。
「皆さんがこれから社会に出て、いろんな“はじめて”に遭遇すると思います。これまでの話のいいとこ取りをして、人生の参考にしてください」と講演を終えました。

部下を育てるのが管理職の仕事

講演後に学生はグループで感想を語り合い、質問の時間に。
「営業部のときに考えて成功した仕掛けはありますか」という質問には、「実は自分で考えた作戦はあまりないんです」と意外な回答が。
「部下の考えたことを形にして、世の中に広げていくことが管理職の仕事」と話し、部下のアイデアを工夫した体験を話されました。

授業の最後には進行担当のグループの学生からお礼の言葉がありました。
「東京ディズニーリゾートには小さい頃から行っていて身近でした。キャストの方が自ら行動して楽しませてくれていたのが分かって嬉しかったです。勉強になることがたくさんありました、本日はありがとうございました」。
最後は皆で記念撮影をして和やかに授業は終了し、その後、永嶋氏を囲んでアフタートーク会が開催されました。

担当教員からのメッセージ

永嶋様に初めてお会いしたのは、私が企業時代、しかも労組委員長の時でした。当日からアグレッシブな永嶋さんのお姿は印象的でした。以来、四半世紀、様々な場面でお世話になりました。今回も、私の願いが叶い、本授業のゲストにお招きすることが出来ました。今回の永嶋さまのお話しを聞く学生たちの姿は、真剣そのものです。学生にとっても身近な企業であり、その関心の高さが窺われました。永嶋さんが醸し出される雰囲気と、学生たちの反応、すでに「ハピネスの循環」が起こっていると実感した瞬間でした。永嶋様には、心から感謝申し上げます。

2023年7月10日

ディズニーにもっと行きたくなる!「キャリアデザイン」の授業で東京ディズニーランドのスペシャルイベントを考える夢の課題が出されました。

3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月6日に東京ディズニーリゾートの運営を行う株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の横山政司氏をお迎えし、コラボセッションが行われました。学生たちは閑散期の集客に有効なイベントを考える課題に挑戦します。学生たちも大好きな東京ディズニーランドのイベントを企画するという夢のような課題に、皆真剣ながらも楽しそうに取り組んでいました。

季節のイベントを開発

「今日の出欠確認は仕掛けがあります」と深澤教授。
出欠管理システムが当たり付きになっていて、当たった2名の学生に東京ディズニーランドのグッズがプレゼントされ、学生たちから歓声が上がりました。


授業もディズニーの魔法にかかり和やかになったところで、本日のゲストである横山氏が登壇されました。

横山氏は1991年オリエンタルランドに入社。
最初は運営部に配属されました。その後、経理部やテーマパーク戦略部、人事部、フード本部などを歴任。2023年からマーケティング本部マーケティング開発部長に就任されました。
「皆さんがイメージしやすいのは、パークでやっているスペシャルイベントです」と横山氏。
クリスマスやハロウィンなど季節ごとに変わるイベントの企画・開発をしています。

現場の声を聴いてまずは試す!

横山氏は仕事のポリシーとして3つのことを大切にしていると話します。
1つ目は「現場のリアリティ」。
現場の声を聴くことが何より重要と言います。「人事部にいたときも、良かれと思って制度を改正しても、実は現場は望んでいないということもありました」と横山氏は語ります。

2つ目は「外から情報を得る」こと。
オリエンタルランドはチームワークがいい会社とした上で「チームワークがいいということは悪いことではないが、関心がチーム内に向きがち」と話します。意識して外の情報を得ることの大事さも話しました。

3つ目は「試してみよう!」。
仕事や企画は完璧に仕上げたくなってしまいますが、完璧にするには時間がかかります。
横山氏は「今は世の中の変化が早いので、完璧を目指して仕上げているとその間に環境が変わってしまっている可能性もあります」と言い、5~6割の出来でも、いったん上司に企画を出したり自分で動いてみたりすることが大事だと話しました。

課題発表!若者が閑散期にも東京ディズニーランドに来たくなるイベントとは?

話はスペシャルイベントについて。東京ディズニーリゾートでは年間を大きく5つの期間に分けてイベントを考えています。
4~6月が「春」。ゴールデンウィークは来園者が多いですが、全体的に集客が落ち着きます。
7~8月の「夏」は夏休みで繁忙期。ただ、最近は猛暑の影響もあり以前よりは落ち着いていると言います。
9~10月の「秋」はハロウィン。仮装してディズニーパークを楽しめるといまや一番人気のイベントです。
11~12月は「クリスマス」。こちらもイベントムードを楽しみに多くのゲストが来園します。
そして1~3月の「冬」は寒さもあり一番集客が弱い時期です。「春と冬の時期の集客をなんとかしたいと思っています」と横山氏。

ここで課題の発表です。
テーマは「ヤングアダルト層(19~34歳)に向けた2026年の冬と春のイベントを考える」です。
「1~3月の冬の時期と4~6月の春の時期に、最低1回ずつ東京ディズニーランドに来てもらえるイベントをそれぞれ提案してください」と提示されました。

コロナ禍以降、徐々に来園者も戻っていますがヤングアダルト層の回復が鈍いというのも現在の課題。
現在東京ディズニーランドのチケット代は1万円近い日もありますが「このイベントを行なっていたら、自分はお金払って絶対に行く!という自信を持った提案をしてください」と横山氏。
「感動する提案を待っています、頑張ってください」と学生たちの提案に期待を寄せました。

自分たちの企画が実現するかも!?

2026年は3年後。
今とどう状況が変わっているのか、顧客はどう行動変容しているか、想定しなくてはなりません。
難しい課題ですが「2025年まではすでに企画が決まっていますが、2026年はまだなので、皆さんの案がパークで実現するかもしれません」と横山氏が話されると、学生たちもやる気満々。
さっそく積極的にグループディスカッションが行われました。

「アトラクションをモチーフにするのは?」「待ち時間が長いのがネックだから、パークを歩き回れるイベントは?」など案が飛び交っていました。
「イベントは女性メインになりがち」や「ヤングアダルト層はディズニーシーへ行くイメージがある。自分や周りもそう」と分析する学生も。
「ランドでもちょっと大人っぽいイベントはどうだろう」「キャラクターに絶対に会えたら私は行きたい」など、まずは自分の興味から発生したイベント案も出ていました。
「ディズニーのどこが好きか改めて調べよう」「ディズニーで何にお金を使う?」など、さまざまな視点からイベントを考え始めていました。
学生たちは中間提案を経て、ひと月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

オリエンタルランドの横山様には、毎年、本授業にご支援をいただいています。履修しているのは3年生が中心、そろそろインターンシップを経て就職活動も本格化していきます。企業分析の視点を一歩掘り下げてみることが出来ればという思いで、毎年様々なテーマをご準備いただいています。学生にとっては、身近な企業ではありますが、企業としての努力は並大抵のものではありません。普段のゲストの立場ではなく、社員目線で企業の戦略を考えて欲しい、そんな思いも込めて今年のテーマもご用意いただきました。今までにない難しさもあると思いますが、この授業を通して一皮むけて欲しい、そんな願いもあります。7月初旬の提案を期待したいと思います。

2023年7月10日

新しいミュージアムグッズを考えよう!「実践キャリアプランニング」の授業で印刷博物館とのコラボ授業が行われました。

5月26日に国文学科「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、印刷博物館の皆さまをお迎えしてコラボ授業が行われました。印刷の歴史や文化の価値を伝える企業博物館。さらに多くの人に知ってもらえるよう、学生たちは新しいミュージアムグッズを考える課題に取り組みます。

印刷博物館ってどんなところ?

印刷博物館は凸版印刷株式会社が運営する企業博物館です。
2000年に開館。100周年事業の一環として設立されました。本社ビルのミュージアム棟にあります。
企業博物館と言えば社歴や代表的な商品を紹介するのが一般的。ただ印刷博物館は「企業博物館でありながら企業色をかなり薄めています」と式氏。
印刷産業というものが文化の形成にどう貢献してきたのか、印刷の歴史を紹介する公共文化施設の役割を持っています。

奈良時代のものから最新の印刷技術のものまで、さまざまな種類の印刷物を7万点ほど所蔵し、印刷の日本史や世界史、技術の進化などを紹介。
また、活版印刷を体験できる印刷工房も併設され、カードやレターセットなどを作れるワークショップも開催されています。

式氏は「デジタル化の時代の中、印刷業界は斜陽と言われていますが、社会や文化の発展に大きく貢献してきた印刷の役割や意義を、次世代に伝えていくことがミッションです」と語りました。

企画展は博物館の花形

企画展の開催時は来館者が一番増える時期。全体の来場者数の50%が企画展来場者です。
年1回、3ヵ月ほど毎年趣向を凝らし、さまざまな側面から印刷文化を深堀する企画を展開しています。
ヴァチカン教皇庁図書館の貴重な写本の展覧会や地図と印刷の歴史、武士と印刷の関わりなども。2018年に行った「天文学と印刷」の企画展は話題を呼びました。

来館者の多くは20~40代の女性が多く、歴史やデザインを学ぶ大学生が多いのも特徴です。
また企業博物館という特徴からビジネスマンもコンスタントに来館します。ただ、企画展の期間は客層も一変。
「地図と印刷」の企画展では40~50代男性が圧倒的に多く、遠方からの人も。
企画展の特徴により来場者層は変わるのです。来館のきっかけは、やはりSNSやWebサイトで企画や印刷博物館に興味を持つ人が多く、式氏は「重要な窓口になっています」と話しました。

ミュージアムショップの商品開発に挑戦!

いよいよ石橋氏から今回の課題の発表です。
課題は、印刷博物館の「新しいミュージアムショップグッズの開発」です。
「普通お店では『ヒット商品を考えてください』というものが多いと思いますが、ミュージアムショップではちょっと違う」と石橋氏。
印刷博物館は展示品を通じて印刷の価値を伝えることがミッション。ミュージアムショップの商品も、印刷のエッセンスや面白さが伝わるものが重要になります。

博物館は場所が固定されており、来ていただくことが前提になります。遠方で来場できない人やそもそも印刷に興味がない人への訴求が課題です。
そこでミュージアムグッズをお土産として未来場者に渡すことで認知が広がったり、商品の話題性によって興味関心を集めたりということが求められるのです。

ミュージアムグッズについて知ろう

次に前原氏から印刷博物館ではどんなミュージアムグッズがあったかの紹介がありました。
定番のポストカードやクリアファイルの他、収蔵物や展示関連の書籍などがスタンダード。収蔵物の一部がプリントされたTシャツやマスキングテープや、活版の活字を再現したコーヒーシュガーなどオリジナルグッズも多数あります。
最近ではガチャガチャで販売したアクリルキーホルダーも人気を博しました。
さらには紙や活字を厳選し、職員が手作りで作るレターセットやカードも。
時間はかかりますが、名入れレターセットなどは贈り物として人気です。

グッズの売り上げも企画展関連商品が50%を占めます。
しかし、SNSで話題を呼んだ商品は企画展期間以外でも継続して売れることも。「天文学と印刷」の企画展の図録はSNSで話題になり、重版されました。
石橋氏は「商品自体が話題性を呼びさえすれば、博物館を飛び越えて人々に伝えることができる」と話しました。

実際に商品化も夢じゃない!?

「とはいえ何かを作るということは非常に難しいです」と石橋氏。
そこで3つの視点を紹介されました。

誰のためにつくるのか「Whom」、
何をつくるのか「What」、
どこで売るか「Where」です。

石橋氏は「売る場所は印刷博物館に限らなくてもいいと思う」と言い、「なぜその商品が必要なのか、その商品があることでどういった人たちにどういった形で印刷文化を伝えることができるのかを、考えていただきたいと思います」と話しました。

最後に式氏から、昨年の同授業について言及がありました。
昨年は、来館者を増やす施策という課題に学生たちが挑みました。中で提案があった近隣施設とのコラボレーション案と館内撮影解禁の案は、実際に実現しています。
「架空のグッズを考えてくださいということではありません。素敵な案は採用される可能性がありますよということをお伝えしておきます」と、学生たちの企画に期待を寄せました。

講演後、学生たちは早速グループディスカッションを開始。6月末に最終プレゼンに臨みます。

担当教員からのメッセージ

本学と包括連携協定を締結させていただいたことをきっかけに、昨年からこのコラボ講座のご支援をいただいています。今年もグループの代表者や有志が、印刷博物館を見学。印刷博物館の皆様に、とても丁寧にご説明をいただき、印刷博物館の意義などについてレクチャーを受けさせていただきました。今年のお題はグッズ開発、これから2週間のグループワークを経て、プレゼンテーションに臨みます。学生たちの豊かな発想、そしてチームワークに期待したいと思います。今年度も、お題の構築、視察などにご尽力いただいた印刷博物館の皆さんには、心から感謝申し上げます。

2023年7月10日

東京諸島の“宝”とは?「実践プロジェクトa」の授業で近畿日本ツーリストの課題への最終プレゼンが行われました。

6月2日に1年生対象「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、近畿日本ツーリスト株式会社の課題へ企画提案をする最終プレゼンが行われました。課題は「東京諸島を、若者が必ず一度は行きたくなる聖地にする」。グループごとに担当する島が割り振られ、30名の1年生が、それぞれの島の魅力を『宝』として探し出します。1年生で、プレゼンテーションが初めての学生も多い中、レベルの高い発表が行われました。

中間プレゼンで練り直し

今回の発表の前に、学生たちは5月19日にプレゼンに臨んでいました。
中間提案を行い、質疑応答やフィードバックをもらって最終プレゼンに向け再考するための機会です。それぞれのグループは、担当の島の宝として名産や景観を紹介、プレゼンしました。若者がどういうときに旅行に行きたくなるかも市場調査し、『癒し』や『SNS映え』をメインにするグループも多くありました。

6グループすべての中間プレゼンが終わった後、小宮氏と橘氏から全体講評がありました。
まず小宮氏からは「本当に担当の島が素敵だなと思っていますか?」と問い掛けが。
「その島でしかできないことや独自の仕掛けが必要」と言い、現在のプレゼンでは観光地の紹介に偏っているのではと厳しい指摘を受けていました。

4つの目で見てみよう!

続いて橘氏はまず、企画の立て方のコツとして、
「全体を見る『鳥の目』、注目する『虫の目』、時流を読む『魚の目』、疑ってみる『コウモリの目』」を紹介しました。

市場調査をしたうえで、ストロングポイントに注目し、トレンドに合っているかをみて、時には逆張りのアイデアをぶつけてみる。良い企画にはすべての視点が大切だと話します。
「6島とも自然があり海がきれいです。その中でその島にしかないものは何かを考えてみてください」と話しました。
「体験する人の感情が分かるような企画を楽しみにしています」と最終プレゼンに期待を寄せました。

講評後はさっそくグループで案を練り直します。
「リピーターを増やすにはどうしたらいいかな」「思い出になるものは?」など再度検討。
授業を見ていた過去にこの講座を受講していた先輩方も駆けつけてくれてアドバイスをします。橘氏と小宮氏も各チームを周り、細かくフィードバックしてくださいました。

“宝”を活かしてアピール!

2週間後の6月2日。
いよいよ最終プレゼンの日です。この日は東京諸島観光連盟の照沼氏もご参加下さいました。

最初の発表は新島グループ。
毎日の仕事に疲れた女性をターゲットに、新島の宝である海とガラスで癒しのツアーをプレゼンしました。
新島の周辺の海はサーフィンやシュノーケリングなどそれぞれに合ったスポットがあり、どの目的でも楽しめます。さらに新島一周クルージングの旅を用意。
船上で足湯なども楽しめ、参加者には新島ガラスのブレスレットをプレゼントし、思い出にしてもらう企画です。
橘氏からも「島一周クルージングはとても面白い、やってみたいですね」と感嘆の言葉がありました。

八丈島グループは人気コーヒーチェーンであるスターバックスコーヒーとのコラボを提案。
ターゲットを流行好きな大学生に定め、空港などで八丈島の特産品を使った新作フラペチーノを販売する企画です。
特産品は八丈レモン、ジャージー牛乳、明日葉、パッションフルーツを用意。SNSに写真を投稿してもらうことで宣伝効果も狙います。
小宮氏も「ツアーではなく企業コラボという提案は面白い切り口」と感心されていました。

本当に行きたくなるプレゼン

伊豆大島グループは、春に開催される「椿まつり」期間中に映画祭を開催することを提案。
屋外でも過ごしやすい伊豆大島の春に、映画を楽しんでもらうと同時に、伝統の祭りにも親しんでもらおうという企画です。
特産品が食べられる屋台なども出店し、地域住民と観光客がつながる仕掛けです。
橘氏は具体的な交流方法について質問。学生は「椿まつりの中に地元の人が紹介や説明する交流イベントがあるので、映画祭きっかけで行った若者も気軽に参加できるようになると思います」と回答しました。

SNSでアンケートを実施したのは三宅島グループです。
若者が旅行先に島を選ばない理由は島自体を知らないこと、魅力が分からないことが理由と考え、知ってもらえるきっかけ作りに企画を特化。若者の目に留まるポスターやSNSでの宣伝方法を考えました。
島の方に直接連絡を取り、おすすめポイントや星空の写真を提供してもらって宣伝動画を作成しました。
小宮氏は実際に島の方に連絡を取った行動力を賞賛。「実際に島に行きたくなりましたか?」と問われた学生たちは、大きく頷いていました。

自分を見つめる旅

デジタルデトックスをテーマに選んだのは神津島グループ。
参加者はスマホの電源を切り、使い捨てのフィルムカメラを渡されます。
癒されたい人は星空保護区に認定された素晴らしい星空の下で星見ピラティスをしたり、アクティブに動きたい人は赤崎遊歩道で透明度の高い海を堪能したり。
思い出を写した写真は旅行後に特設サイトに投稿してもらい、参加者全員でアルバムを作れる仕組みも考えました。
「デジタルデトックスは良い視点。癒しと刺激という相反する価値観があるのも良かったです」と橘氏は感想を話されました。

最後の小笠原諸島グループは「自分探しの旅」と題し、将来に悩んでいる大学生をターゲットに、「遊び×インターンシップ」が融合したツアーを提案しました。
夏休み期間に2週間ほど滞在し、自分の興味を持った仕事を体験できる仕組みです。
ウェルカムイベントでは島内を巡る宝探しを行い、特産品や地元のことを学べる工夫も。
宝探しに必要なクイズは地元の小学生に考えてもらい、地元の人にも積極的に関わってもらう仕掛けを考えました。
小宮氏からも「地元の小学生に参加してもらうというのがいい。ロジックもとてもしっかりしていて聞きやすかったです」と感想をいただきました。

自分自身の“宝”を見つけて

発表後には照沼氏からも感想をいただきました。
「自分もいろいろな企画を作っていますが、頭が固かったなと。とても刺激になりました」と話し、島の魅力を再認識されたことを話しました。「プレゼンをきっかけに興味を持ち、島に行ってくれたら嬉しいです」と語りました。

最後は優秀賞と特別賞の発表です。
「どのグループも良い発表で、予想以上の出来でした。差はわずかです」と橘氏。
そのなかで優秀賞は小笠原諸島グループでした。「地元との交流とインターンというコラボの発想が素晴らしかった。若者がこのツアーに行ってどう変化するかが考えられていました」と授賞理由が述べられました。
特別賞は「企業との掛け算に可能性を感じた」と八丈島グループに贈られました。

橘氏は「今回の発表で、各島の特徴は全然違うんだと分かったと思う」と話し、「島は皆さん自身です」と語りました。
「皆さんの中にもそれぞれ違う宝がある。自分の強みって何だろうと問いかけ、自分自身にいろんな企画をぶつけてみてください」とエールを送りました。

担当教員からのメッセージ

1年生に対象を絞って行われている「実践プロジェクトa」も、今年は4年目を迎えます。コロナ禍で行われた2020年から近畿日本ツーリスト様には継続してご支援いただいています。毎年、テーマも変えていただき、1年生が真剣に取り組んでいる授業です。「大学生の学び方を変える」という狙いに向け、一般社団法人FSP研究会が構築した本プログラムは、全国約20大学で同時進行中の授業です。また、本学の講座には、過去履修してくれた学生たちがSAとして参加してくれており、自身の経験を通じて後輩へのアドバイスも行ってくれています。コラボいただいている企業、先輩、そして履修している学生が一体となって展開している講座は、年々グレードアップされており、本授業を履修している学生の成長には凄まじいものがあります。毎年ご支援いただいている近畿日本ツーリストの橘さん、小宮さんには、心から感謝申し上げます。

2023年7月7日

オンラインで留学体験!「国際理解とキャリア形成」の授業でアンジェラス留学とのコラボ授業が行われました。

6月6日に共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で株式会社アンジェラス留学(以下、アンジェラス留学)の中根なゆた氏をお迎えしてのコラボセッションが行われました。中根氏のお話のほか、フィリピン・セブ島とオンラインでつないで、実際に留学の授業も体験。また留学を経験された本学卒業生の斎藤遙紀さんのお話や、学生総合支援センターの内田雄介次長の「ミドル世代の留学」のお話も伺いました。たくさんの国際交流の経験を聞く体験型授業。学生も興味深々で参加していました。

留学が人生のターニングポイントに

学生は2グループに分かれ留学体験と、中根氏のお話を交互に伺いました。
中根氏はフェンシングをやっていたことをきっかけに、大学時代にフランスに1年留学。大学時代はいつか海外で働きたいと思っていたと言います。
株式会社資生堂に入社して6年後パリの事業所に配属になりました。このチャンスは大学時代にフランスに留学していたから巡ってきたと言います。「留学が私のターニングポイントになりました」と中根氏は話します。
その後、中根氏の父が創業されたアンジェラス留学へ入社。「私の一番の思いは、悩める大学生を応援したい」と中根氏。大学時代に留学することが大事だと痛感したと言い、大学生のキャリア形成を応援したいと話します。

留学と旅行の違いは、学校に行くか行かないか。1週間でも2週間でも現地の学校に通って勉強すれば立派に履歴書に書ける「留学」です。
留学時期も毎週月曜開始で出来るため、個人留学にも柔軟に対応が可能と言います。

卒業生による生の留学体験

続いて齋藤さんも交えて留学についての経験が話されました。
斎藤さんは2018年にセブ島に留学し、2019年に本学を卒業。現在はカナダのアパレル会社に就職しバンクーバーで活躍しています。
なぜ留学したかと問われると「大学3年生の時にグローバルキャリアデザインというキャリア科目を履修していた時、ゲストとしてお越しいただいた中根さんのお話しをお聞きしたことがきっかけで留学に興味を持ちました。CAにも興味があり、英語力を伸ばしたかった」と話されました。
現在のカナダでの仕事について聞かれると「職場にはいろんな人種の方がいて、バックグラウンドや考え方が違うので意見の衝突も多い」と言います。
「皆主張が強いので大変だけれど、だからこそ皆で思いやりをもって協力しています」と多様な価値観のなかで働く大変さと楽しさを語ってくれました。

「セブ島に留学した時は全く英語がしゃべれずに悔しかった」と話す齋藤さん。「勉強してカナダに行ってから、英語で通じ合えるとこんなに嬉しいんだなと思いました」と体験を語ります。
「日本から外に出てみるといろんな考えや価値観に触れられる。やりたいことがまだ見つからない人は、ぜひ留学していろんな経験をして欲しいと思います」と話しました。

オンラインでセブ島へ留学!

別室のパソコンはセブ島の講師の方とつながっています。学生たちは3~4人に分かれてそれぞれオンライン留学を体験しました。
つながると講師の方が「Hi!How are you?」と気さくに話しかけてきてくれます。学生たちは緊張しながらも自己紹介をしていきました。
挨拶を終えると、英語の模擬授業が始まります。

画像が表していることを英文で説明したり、英単語の意味を問われたり。
恐る恐る答えていた学生も「good!」と褒められると、笑顔で返事をしていました。
講師の方は、学生が分からないときはゆっくり問題を言ってくれたり発音を直されたり、学生たちが答えられるまで丁寧に受け答えしてくださいました。

半年間の「ミドル世代の留学」

再び教室に全員がそろうと、最後に本学の職員である内田次長にマイクが渡されました。
2022年10月から2023年3月まで半年間、東南アジアに留学していた経験を語ってくれました。自分の仕事の枠や価値観を広げようと考えた内田次長は大学職員を辞めてでも海外に出ようと考えていましたが、そのことを話すとなんと大学側から海外研修を勧められたと言います。
そこで英語力の獲得と、東南アジアに海外インターンシップ先の企業を開拓するミッションが託されました。

最初は英語ができなかったので、必死に勉強したといいます。
TOEICの点数向上を指標として学習した結果、半年間で300点UPを実現したそうです。ただ、英語学習では「はじめの1か月で簡単な英語でコミュニケーションが取れるようになると、他の単語を覚えなくなり英語力が伸びなくなった」と歳を取ってからの勉強の難しさも語りました。
そこで他国の生徒や先生と旅行に行ったり、地元の人と友人になったりと、教室外で英語を学習する機会を確保。「留学先では日本人同士で行動するのではなく、英語を話す機会を自らが作っていくかが大事」と話します。

英語力の向上を実現した後には、最後の1か月間を利用し、タイやカンボジア、ベトナム、韓国で27の企業等を周り、海外インターンシップ先候補の団体とネットワークづくりを行いました。

内田次長は「これからのグローバル人材、必要な要素は語学力ではなくマインド」と話します。
東南アジアでの企業の交渉は、どちらも英語がノンネイティブでの会話でした。言葉ではなく、目の前の課題や相手に真摯に向き合い、お互いに理解しあおうとする力が大切だと感じたと言います。
「まずは結果を考えず、一歩を踏み出してみるマインドが重要。皆さんには何事にもチャレンジして活躍していってもらいたいと思います」と語りました。

盛りだくさんの内容だった授業はこれにて終了。
学生たちは、留学や海外生活を身近に体験する貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

私が株式会社資生堂の人事部で、採用の責任者であった時に、中根さんをお迎えしました。その後、中根さんが父上の会社に転職された後は、私が担当しているキャリア教育科目に毎年ゲストとしてお越しいただき、留学を中心にキャリア形成のお話しをしていただいています。親身に相談に乗っていただくことがきっかけで、中根さんにお世話になって海外留学に出かけた学生は、約50人を数えます。長いご縁には、本当に感謝です。
この国際理解とキャリア形成の授業においては、特に留学や海外での業務の夢を持つ学生も多く、中根さんのお話しには、とても関心深く授業に参加してくれています。昨年からは、セブ島とオンラインで結んでの模擬体験までアレンジしていただいています。そして、今年は、キャリアの授業において中根さんのお話しがきっかけで、なんと海外で仕事をされている齋藤さんや、内田さんの経験談まで含めて、盛りだくさんの内容となりました。様々な準備をして下さった中根さんに心から感謝申し上げます。

2023年7月3日

「国際理解とキャリア形成」の授業で資生堂のブランド担当者が人生のテーマを考えるきっかけになる講演を行いました。

5月23日に共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に株式会社資生堂(以下、資生堂)の林順子氏をお招きし、グローバルキャリア形成についての講演が行われました。『BAUM』というグローバルブランドの担当者として活躍されている林氏。これまでの軌跡と、人生のテーマについて貴重な経験をお話頂きました。

幅広いマーケティングの仕事

講演は、林氏が手掛けるブランド「BAUM」のルームフレグランスやオーデコロンをグループごとに回し、学生たちは実際に香りを体験しながら、リラックスしたムードで始まりました。

林氏は関西出身。ドラマで見た英語を使う仕事に憧れて関西外国語大学に入学しました。在学中イギリスに短期留学を経験し、2007年に資生堂に入社します。このときの人事部の採用責任者が深澤教授でした。

初めての配属先は行ったこともなかった北海道。3年間営業職を経験しました。2011年、中国へ1年間出向。中国語もまったく話せない状態だったと言い「発音などは気にせずとにかく話して覚えていきました」と言います。
その後日本に戻ってからは中国の専用ブランドの開発に携わり、2020年からはグローバルブランド『BAUM』のローンチから関わっています。

マーケティングの仕事は幅広く、商品開発や、広告素材の開発のみならず、ストアデザイン等ブランドに係る様々な要素があると言います。
「市場の状況やコンシューマーのニーズ、ブランドイメージ等を総合的に考え、コンシューマーにとってより豊かなライフスタイルや価値を届けることが仕事です」と話しました。

あなたの人生のテーマは?

林氏は「人生のテーマを決めている人はいますか?」と問いかけました。

何人かの学生が手を挙げるのを見て、
「テーマがあると人生に深みが出ると思っているので、今回の話を単純に聞くだけではなく、考えるきっかけにしてもらえたらと思います」と語りました。例えば将来について考えるとき「漠然と○○になりたいと思うのではなく、5年後10年後にどうなっていたいのかを考え、書いたり話したり言語化することが大事」と話しました。

林氏自身は、
「やらない後悔よりやる後悔の方が、その後の成長につながる」が信念と話します。
大学時代、堂々と自分を表現できている人たちを目の当たりにし、挫折を味わったと言います。しかし、このままだと後悔だけが残ると思い直し、一念発起。経験ではなく努力でカバーできると思った新しい言語(アラビア語)を授業選択し、絶対にトップの成績を取るという目標を立てました。その結果やればやるほど楽しいと思うようになり、長所を伸ばせば個性になると思うようになったと言います。
「挫折と挑戦を繰り返す、自分の人生の礎になった経験だと思います」と話しました。

「グローバル」とは多様な価値観や文化が形成される世界

BAUMは日本以外の中国でも展開されているブランドです。そのため日本人だけでなく、日々さまざまな国の人とコミュニケーションを取ると言います。
「日本語以外でのコミュニケーションの時には、できる限りシンプルにわかりやすく伝えていくことを心掛けるようにしています」と林氏。

「グローバルというとかっこいいイメージがあるかもしれませんが、多様な価値観や文化が交差するところなんです」と林氏。多種多様な人々とコミュニケーションをとるため、1つのことを説明するにも伝え方に工夫が必要です。これまでの思考プロセスでは通用せず、そこでも理想と現実のギャップを感じたと言います。

まずはやってみる!そのあと内省し言語化する

ただ、「できないこと」が山ほどある中で「半歩先にあるできること」を積み重ねていくことによって、少しずつ変わっていったと話します。
「私自身は高いスキルを持っているわけではなかったですが、できることを少しずつ積み重ねていった結果、振り返ったらキャリアができていました」と話しました。いま自分にスキルが足りないと思っている学生にも、目の前のことを積み重ねることで活躍できる方法もあると語り掛けました。

「自分の短所をカバーするためにどうするのかを、自分自身と対話しながら考えることで、長所を個性に昇華できる」と林氏。
自分の好きなことや興味のあることを見つけてまずはやってみること、見つけられなかったら目の前のことに誰よりも取り組むことの大切さを語りました。そして「取り組んだらそれで終わらせず、言語化することが大事です」と話し、「皆さんの人生が、より豊かにより深くなるお手伝いになる授業になっていればと思います」と講演を終えました。

学生たちも将来を考えるきっかけになった講演

講演後、学生たちはグループで感想を話し合い、林氏に伝えました。
「自分は挫折も挑戦もまだ数が少なく未熟だと思いました。思いを言語化して、自分の軸を持っていきたい」と語った学生には、
「自分の考えを人前で発言することはとても難しいことです。言語化していくことを頑張ってやっていってください」とエールを送りました。

まだどんな仕事がしたいか決まっていないけれど、海外に興味があるという学生は「怖がらずに踏み込んでいきたいと思います」と宣言。林氏は「夢を実現するためには今日から何が出来るか、明日はどうするかアクションプランを考えてみると良いですよ」と具体的なアドバイスをされました。

学生たちにとって、これからの人生を良くしていくためのテーマを考えてみる授業となりました。

担当教員からのメッセージ

林さんに初めてお会いしたのは、彼女がまだ大学生の頃でした。以来15年の歳月が流れたことになりますが、毎年お会いするたびにその輝きを増しているお姿には、感動します。目の前のことに精一杯挑戦してきたそのキャリアが物語っています。ご自身の軸をしっかりと持ち、卓越した行動力をいかんなく発揮されて、さらなるご活躍を心から期待したいと思います。人生のテーマを有し、とにかく恐れることなく行動することの大切さは、学生にとって、本当に大切なメッセージとなりました。来年も、楽しみにお待ちしています。ありがとうございました。

2023年7月3日

ベトナムフェスに証券会社が出展!学生たちが内容やプロモーションを考えイベントに参加しました。

現代社会学科の篠﨑香織教授のゼミ(演習ⅡA・Jクラス)でアイザワ証券株式会社(以下、アイザワ証券)とコラボし、学生たちがベトナムフェスティバルへの出展内容を考案しました。ベトナム株や証券会社の認知度アップのためターゲティングから始まり、プロモーションや運営まで体験。学生たちは授業を通し、マーケティングだけでなく投資やベトナムについても身近に感じる機会になりました。

ベトナムってどんなところ?

授業は4月から始まりました。まずはベトナムを知るところから。ベトナムはどこにあるか、文化や料理は、人口は、著名な企業は、などベトナムの基礎知識を知りイメージを広げていきます。ベトナムのGDP成長率は東南アジア諸国の中でも高く、いま勢いのある国のひとつです。国際化も進み日本企業も多く進出しています。輸出拠点として発展し、所得も向上し国内消費も拡大中です。ただ世界で見るとベトナムはまだまだ小さいマーケット。今後の成長が期待されている市場なのです。

証券会社がなぜベトナムフェスに?

今年は日越外交関係樹立50周年。記念事業として6月にベトナムフェスティバルが開催されます。そのベトナムフェスにアイザワ証券が出展します。アイザワ証券は日本株だけでなくアジア株や投資信託など豊富な商品を取り扱う証券会社です。特に強みなのがベトナム株。長期で資産形成できる投資先としてベトナム株を知ってもらいたいものの、認知度アップはまだ道半ばです。

そこでベトナムフェスに出展し、アイザワ証券とベトナム株の認知拡大を狙います。投資家が参加するのではなく、ベトナムに興味がある人たちへのアピールが目的です。実はアイザワ証券も、投資目的ではない一般的なイベントに出展するのは初めて。学生たちは、社員の方と一丸になり、ブースにより多くの人に足を運んでもらえる施策を考えました。

告知は、Twitterのアイザワ証券公式アカウントから学生が発信しプロモーション。ベトナムの魅力やイベント出展情報など、グループごとにそれぞれターゲットを決めて作成しました。ブース内の催しものは、サイコロを振って出た目に応じて当たりのプレゼントを考案。どんなプレゼントや雰囲気であれば参加したいと思えるか、ブースに興味を持ってもらえるかを考えました。

フェスティバルを通してアイザワ証券を身近に

いよいよフェスティバル当日の6月3日。天気も心配されましたが雨はやみ、会場は多くの人でにぎわっていました。学生たちはブースの前で声を出して集客をしたりプレゼントを渡したり、社員の皆さんと協力して運営していました。

3グループの学生たちは「ターゲットは30代のビジネスマン。アイザワ証券の顧客層を意識して、当たりにはベトナムコーヒーを用意しました」「お子さん連れのプレゼントはお菓子。子どもたちに配る風船には、アイザワ証券のロゴをプリントして宣伝してもらうようにしました」と工夫した点を教えてくれました。

5グループではサイコロのデザインを担当。「ブースに集客するためにサイコロは大きく、カラフルに。来てもらえるだけでなく、もっと知ってもらいたいと思ってもらえるためにどうすればいいか考えました」と、QRコードのシールを配ることを提案。こちらは読み取るとアイザワ証券のデジタルパンフレットが表示されます。

ベトナムについても、学生たちは元々詳しくない状態からのスタートでした。「最初はベトナムについてほとんど知らなくて、どんなイメージと聞かれてもイメージすらないような状態でした。今回の授業を経て身近に感じられるようになりました」「ベトナムはバイクのイメージが強かったですが、地下鉄がたくさん利用されているというのを知れたのが驚きでした」と授業を通じ、だいぶ距離が縮まった様子でした。

証券会社をより身近に

証券会社や投資も遠い存在でしたが、今回で関心を持ったという学生が多数。「将来は投資をやったほうがいいのかなと興味を持ちました」という声が多く聞かれました。「証券会社も日本国内だけの取引のイメージでしたが、海外にも多く市場があってベトナムにもあるんだなと知りました」「投資は自分には関係ない難しいことだと思ってたけど、初心者でも意外と始めやすいんだと知りました」と、情報を知ったことで身近に感じた学生も多くいます。

5グループのある学生は「母が銀行員で、株などについての話も聞いていたので私は身近に感じていたところもありました。若い人に証券や投資について知ってもらうには、触れる機会や学ぶ機会をもっと増やすといいと思います」と話し、親しむことの大切さを話してくれました。

アイザワ証券の社員の方も「おかげ様でたくさんの人に来ていただきました」と仰います。「Twitterでのプロモーションも反響は大きく、一番多いものだと100件ほどいいねがつきました。いままでの当社のツイートではそこまでの反応はなかったので」と学生の考えたプロモーションに感心していました。

授業としてはイベント出展がゴールではありません。篠崎先生から「どんなお店にお客がきているのか、どのようにお客を呼び寄せているかなど会場の市場調査もしてもらっています」と課題も出ていました。今回のイベントも、学生たちが実地でマーケティングを学べる、貴重な経験となりました。

担当教員からのメッセージ

 これまで4年生の就職活動先をみてきて金融というと銀行系が多かったので、2年生の段階で証券会社と社会連携ができるのはとても良い機会になると思いました。
 今回の集客企画では、ゼミ生は自分たちの考えをかたちにしてその効果を検証することができ、その過程で、ひとくちに「顧客」といっても、取引き前の潜在顧客からリピーターまでいることを実感することができました。そして、それぞれの顧客に異なる対応が必要であるという気づきを得ることができました。
 プロジェクト中は、毎週アイザワ証券の社員さんがグループごとに1名ついてフォローをしてくださったので、スムーズにグループワークができました。学生の証券会社や金融商品に対する心理的距離がかなり縮まったと思います。二カ月間大変お世話になりました。

2023年6月30日

カルビーの環境への取組って知ってた?「実践プロジェクトa」でカルビーの環境対策の認知度アップを考えるコラボ授業が行われました。

「実践プロジェクトa」(担当:髙橋 裕樹特任教授)の授業で、6月5日にカルビー株式会社(以下、カルビー)の荒木友紀氏をお招きしたコラボ授業が行われました。カルビーのSDGsへの取組を伺い、その認知度アップできる施策を考えます。学生たちはグループワークを重ね、後日プレゼンテーションに臨みます。

健康への思いから設立されたカルビー

実は荒木氏は中学・高校からの実践女子の卒業生。大学では生活科学部で学び、10年間実践女子で学んだ先輩です。1999年に卒業し、食に関する企業に興味を持ったところからブルドッグソース株式会社に入社。2004年にカルビー株式会社に入社されました。マーケティングに携わり、主にスナック菓子のブランディングや商品設計を行っています。

カルビーの社名の由来は「カルシウム+ビタミンB1」。健康食品づくりへの思いが託されています。最初のヒット商品はかっぱえびせん。来年60周年を迎えるロングセラーです。誕生当初はアメリカ産の小麦粉が大変安い時代で、未利用だった小エビと共に活かしてできた商品です。「自然の恵みを活かすこと」を大切にしており、原料は自然素材を使い、農工一体で取り組んでいることが特徴。特に主力商品であるポテトチップスの原料となるじゃがいもは、加工用の国産じゃがいもの約60%をカルビーが使用しています。
商品作りだけでなく土づくりから品種改良まで、じゃがいもに関わるすべてのプロセスに関わり、徹底した品質管理を行っています。

地球の未来のためにできること

カルビーの環境への取組として、2030年までにプラスチック容器を50%環境に配慮した素材にすることを目標にしています。
2050年には100%を目指しており、「大変な目標だと思いましたが、ここまでしないと貢献ができないと考え、全社で取り組んでいます」と荒木氏。
パッケージのインクを植物性由来のバイオマスインキを利用したり、包材の研究を進め薄膜化したりとCO2削減に取り組んでいます。

またカルビーでは国内全体のパーム油の使用量の約5%を占めており、大変多くの油を使っています。パーム油はアブラヤシからとれる油でインドネシアやマレーシアで産出されますが、森林伐採や児童労働が問題になっています。カルビーは、こうした社会問題に配慮した認証パーム油への切り替えを進めており、パッケージにも認証マークを表示しています。
【認証パーム油に関する動画】
https://www.calbee.co.jp/sustainability/

認知度が低いのが課題…

荒木氏は「SDGsの認知者の2人に1人が、SDGsに取り組む企業を応援したいという結果がでています」と話します。そのためカルビーも環境ラベルで取組への消費者の納得を得たい反面、まだまだ認知度が低いのが課題です。
店頭やCM、Webサイトなどでアピールしていますが、なかなか浸透していません。学生たちに知っているかを問いかけても、認証マークを知らなかった学生も多くいました。
「入社前にいろいろ調べているだろう内定者からも、知らなかったという声がたくさん聞かれました」と荒木氏。

認証マークを得られる原料は、通常のものよりも値段が高いのがネック。「原料のコストは上がっているんですが、なかなかそれを知られておらず、価値が伝わっていないということが課題」と荒木氏は話します。

環境への取組を知ってもらうには?

ここで課題の発表です。
テーマは「カルビーの環境への取組をお客様へ伝えるコミュニケーションを考える」。
考えるコツとして
「誰が(Who)」
「何を(What)」
「どのようにして(How)」
を土台に考えていくことが紹介されました。

このなかで特に大切なのは「誰が(Who)」。ポテトチップスの主な購買層はファミリー層です。学生世代の若者はあまり買わなくなっているそうです。あえて若い層の方々をメインにご購入いただけるようにするのか、現状の購買層に向けて発信するのか、ターゲットを決めることは重要です。

実は同様の課題は、昨年カルビー社内の若手社員にも出されたといい、「なかなか社内の人間でも難しい課題です」と荒木氏。「ぜひ自由な発想で取り組んでください」と学生の発表に期待を寄せました。

誰にどうやって認知度を上げる?

学生たちは早速3つのグループに分かれディスカッションを始めました。
「若者をターゲットにするならショート動画がいい」
「インフルエンサーは?」
などSNSを活用することを考えるグループや、
「興味があることは自分で調べるけど、関心がなければ見て終わるだけになりがち」
「興味を持ってもらうには向こうから知ってる?とアピールしてくれるといい」と方法を考えるグループも。

最後に3グループそれぞれの方向性を発表しました。
1グループのターゲットは若者。SNSやQRコードを利用してアピール。
購入者も環境取り組んだのだ、と参加が分かる仕掛けを考えます。

2グループは小学生を対象にします。
カルビー主催でコンクールを行い作文などで広く伝える案が出ていました。ゲーム配信などのイベントのスポンサーとなり、ポスターやCMで若者にも訴求。
若者の中でも健康意識が高い層に訴えることを提案しました。

3グループは中学生以上のスマートフォンを使う学生をターゲットに設定しました。
SNSなどで短い動画を流します。キャラクターを作りキャッチーな内容を流して認知度アップを狙います。

学生たちはグループワークを経て案を練り上げ、1ヵ月後に最終プレゼンに臨みます。

2023年6月23日

「未来フォーラム」のメンバーと直接交流!学生たちが企業の方々とグループ対話する特別授業が行われました。

5月30日に3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で「未来フォーラム」の皆さまをお迎えし、学生たちとのグループ対話が実施されました。実際に社会で働く方々との貴重な交流の機会です。学生たちは名刺交換のやり方から、働くやりがいや入社のきっかけなど、直接お話を伺える特別な時間となりました。

労働組合の集まりである「未来フォーラム」

この日の教室は熱気に満ちていました。学生のほか14労組30名の方が参加され、教室も2部屋用意。14のグループにそれぞれの企業の方が着席されています。学生たちはこれから1回15分ずつ、計4グループを回り企業の方とグループ対話を行います。

初めに、代表幹事を務めるセイコーエプソン労働組合の品川友執行委員長から「未来フォーラム」について紹介がありました。
未来フォーラムとは「業種の枠を超え、理念に共感する労組の集まり」です。小売業、サービス業、メーカーなど「ここまで業種の幅が広いのは珍しい」と話します。
現在は27労組が参加し「人のために、社会のために、未来のために」という理念のもと、自分たちの会社と社会を良いものにするために活動されています。
品川氏は「ここにいるメンバーにも率直に、真摯に話すようにお願いしていますので、遠慮せず質問をぶつけてください」と挨拶され、グループ対話が始まりました。

学生たちはこの日に備え特別に大学サイドで用意した名刺を用意し、質問も考えてきました。仕事に対する本音を聞けるまたとない機会です。学生たちは緊張しつつも前のめりに、たくさんの質問を企業の方々に問いかけていました。
※今後のインターンシップなど社会人と出会うことも増えると考え、学生総合支援センターに支援いただき、毎年、この授業の履修学生のために名刺を用意しています。

その企業を選んだ理由は?

多くの学生が気になるのは、やはり「その企業に入社しようと思った理由」です。

商業施設に加え金融サービスなどを展開する株式会社丸井グループの方は
「もともと商業施設が好き。街づくりにも携われる面白さもあった」と回答。
反対に、電機メーカーのアルプスアルパイン株式会社の方は「自分の手でモノを作りたかった」と語り、
「モノを作る会社はたくさんある。細かいものから形のないものまで。自分は何がやりたいか知ることが大切」と話しました。

住宅設備機器メーカーTOTO株式会社の方は、「一緒に働きたい人で選んだ」と言います。
面接やインターンで担当してくれた社員の雰囲気や話しやすさが決め手のひとつとなったと話しました。

株式会社資生堂の方は
「他者貢献が自分のなかで大事。自分の立場で役に立つことができる」ことがやりがいと答えていました。

いま企業が取り組んでいることや工夫

普段の生活では気付かない各企業のこだわりを直接聞けるのもメリットです。
プリンタメーカーのセイコーエプソン株式会社が業界をリードする企業として力を入れているのは、環境に配慮すること。特にインクを捨てるとき、水質や土壌に影響の出ないものを研究していると話しました。

スーパーマーケットを展開するサミット株式会社では、店ごとに買い物時にストレスがない配置を考えたり、総菜の味付けは老若男女誰でも美味しく食べられるようにこだわったり「楽しい買い物体験」を実現しています。

自己分析と企業選択…どう結び付ける?

ある学生は「自己分析と企業選択がまだ結び付かない」という悩みを話していました。
IT企業のBIPROGY株式会社の方は、「いろんな業界の人の話を聞く」ことをおすすめ。
セイコーエプソン株式会社の方も「企業説明会を聞きまくり、ワクワクしない、違和感をあるところを削っていく」という消去法を提案していました。

面接のコツを聞かれた給湯機メーカーの株式会社ノーリツの方は
「一緒に働きたいのは、前向きで元気なひと。学歴も見るが人柄で選ぶ」だろうと元気に面接に臨むことをアドバイスされていました。

何を軸に企業を決める?

何を基準に企業を選べばいいか、というのは多くの学生が抱える悩みです。
漢方薬品メーカー株式会社ツムラの方は「働きやすさを考えたほうが良い」と助言。これから女性が活躍する社会になるのは間違いないと言い、女性の管理職割合や育休の取得率など情報を確認することは重要と話しました。

近畿日本ツーリスト株式会社の方も、有休を時間単位で取得できるなど、福利厚生が充実していることが入社理由のひとつと話し、「福利厚生や制度は確認しておくといい」と話しました。

ただ、BIPROGY株式会社の方は「福利厚生より雰囲気を重視」と、制度が整っていても社風が自分に合うか合わないかは大切だと話しました。社内の雰囲気を知るには、インターンやOG訪問など直接会社の中を見る機会を増やすように助言しました。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の方は「やりがいを日々感じながら仕事するのは難しい」と言い、働く時間をいかにストレスのない充実したものにするか、何を基準に働きやすさを決めるかを考えることをアドバイスしました。

学び続けていこう!

グループ対話の時間はあっという間に終了し、企業の皆さんから感想を頂きました。

「学び続ける姿勢に刺激をもらいました。大学を卒業しても、自分のキャリアを考えるという勉強が続いていく。今日は自分のキャリアを振り返るきっかけになりました。一緒に学び続けていきましょう」と話される方も。

品川氏も「社会に出たら誰も正解を教えてくれません。自分の気持ちに向かい合い、自分で決めていくことが大事。それが正解だった時にやりがいが出ます」と話し、
「これから皆さんが社会に出て、共に働けることを楽しみにしています」とエールを送りました。

最後には学生からの感想も。
「働いて楽しかったこと、つらかったことなど経験を聞けて良かった」や
「どんな業界がありどんな企業がどんな仕事をしているのかまだまだ分からないと思います。今後の就職活動などでも苦しいことや悩むこともあると思うが、今日聞いたことを参考に頑張ろうと思います」
と前向きな感想がありました。

授業時間後も多くの学生が残り、まだまだ話足りないと対話が続いていました。
学生たちにとって多くの刺激となる貴重な機会となった授業でした。

担当教員からのメッセージ

私自身が企業勤務時代に労働組合専従の経験があったこともご縁で、毎年、「未来フォーラム様」に、この授業にお越しいただいています。
毎年感じることは、労組役員の皆さん、特に「未来フォーラム」に所属している皆さんの熱量の大きさです。誰よりも社員に寄り添い、そして会社の発展を望む、これからの労働組合の方向性を指し示しておられると思います。
多様性の時代の中で、労組役員の方のご苦労は大変なものがあると思いますが、こうした皆さんが活躍されている企業で働けることは幸せだと思います。
学生も名刺交換からスタートした社員の方との真剣勝負、企業の説明会ではなく、働き甲斐ややりがいなどを直接お聞き出来る貴重な時間となりました。
毎年、本当に多くの方にご支援いただいていること、心から感謝申し上げます。

2023年6月22日

外資と日本企業の違いは?「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。

5月25日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、本学卒業生であり、客員教授でもあるSBI金融経済研究所株式会社の政井貴子氏をお迎えし、講演が行われました。外資系、日本企業、公的機関などさまざまな組織に在籍されていた豊富な経験をお話下さいました。

なぜ「女性活躍推進」なの?

この授業は学生たちが司会となり進行します。
学生から紹介を受け、政井氏がはじめに話されたことは「なぜ女性活躍を推進するのか」ということでした。
「なぜこんなに女性活躍についてうるさく言うのか、疑問に思う人もいるかもしれません。まずは背景をご説明していきます」と講演は始まりました。

今回進行を担当したグループの学生

女性の社会進出は世界的な課題です。1940年代の世界大戦以後、男女差別をなくしていこうとする動きが起こっていきました。日本でも1970年代から女性の参政権や解放運動などの動きが起こります。
しかし現代も日本はジェンダーギャップ指数では低迷。性別による分担意識や慣行をどう変えるか、女性が仕事をしたときの平等性をどう保つか、課題はまだ山積しています。

ただ、教育面では男女差が少なくなってきており、男女の役割分担意識も年齢が若くなるにつれ薄れています。
政井氏は「問題意識を持つ人は増えています。世の中の向きは少しずつ変ってきている」と伝えました。

外資系企業で20年活躍

「皆さんに覚えていていただきたいのは、仕事とは毎日生きていくなかで、楽しい、良かったと思える日を一年に何回かでも作るためにするんです」
と政井氏。
仕事のために生きていくわけではなく、一人ひとりが豊かな人生を送るために仕事はあります。社会に出てつらいことや悩みがあったときは「不幸になるために仕事をするのではない」ということを思い出してもらいたいと政井氏は強調しました。

政井氏は本学を卒業後、外資系企業に就職します。カナダ系の企業で、社員はほぼ外国人。書類も会話もほぼ英語です。社員の国籍もさまざまで、仕事をするなかで多様性が身に付き「外国の方々との交渉はとても上手になりました」と話します。

次に勤めたのもフランス系の外資系企業。ただ、こちらは日本に昔から根付いている大企業だったため日本人も多く、日本語で仕事をしていたと言います。「一言で外資系といっても幅があるので、外資系の企業を視野に入れる場合は、実態をしっかりと調べるといいと思います」とアドバイスをされました。

女性役員としての意識変化

外資系で20年ほど勤め、英語力やコミュニケーション力が身についた反面、日本企業では、当然学ぶであろう慣習などを全く知らなかったと政井氏は話します。例えばメールの挨拶、書類の文面のマナーなど。指摘された政井氏はショックを受け、「日本人としてちゃんとした社会人にならなければ」と日本企業へ転職します。

現SBI新生銀行に部長職として就任するも「最初は全然うまくいかなかった」と話します。日本人同士の仕事は交渉の仕方も外資の時とは違いました。また「今振り返ると女性の扱いが全然違った」と言います。外資企業では男女格差の少ない社内環境でしたが、比べると日本企業ではやはりギャップがあったと話しました。

しかしさまざまなチャレンジをすることでキャリアを積み、初の女性役員へ昇進。職務のかたわら、若い有能な女性役員候補たちと役員をつなげるパイプ役を、自分から積極的に担いました。役員になったことで自由度も上がり、やれることの幅も広がったと言います。
仕事を行うだけではなく「自分がどう価値を還元できるかを考えるようになりました」と話しました。

後悔のないように人生を豊かにしよう

2016年日本銀行へ。内閣府や省庁に就職された方と知り合いになる機会が増えました。女性問題や国際問題に関心がある人たちが多く圧倒されたと言います。学生時代は社会貢献意識が高いわけではなかったという政井氏は「皆さんの時点で、まだ目的がぼんやりしていても大丈夫です」と力強く仰いました。今の時点で目標がなくても落ち込まず、目の前のことをやってみることを勧めました。そうすると仕事が自分に向いている、向いていないということに気付いていけるようになると言います。
「ただ、努力は必要です」と言い、今でも英語は勉強していると話しました。

現在、政井氏は母親の介護で同居していると話し、
「プライベートも含めて選択を迫られる時、自分の優先度を決め、後悔しない選択をすることが重要」と語り掛けました。

「最悪だと思った出来事が、振り返ってみると転機になっていたこともあるので、常に前向きに考えて人生を豊かに過ごしてください」と講演を終えられました。

視野を広く持って前向きに

講演後、学生たちはグループごとに感想や質問などを話し合い、質疑応答が行われました。
「ポジティブになれるコツや活力は?」という質問には、
「気持ちが暗くなっているともったいない。人に話してみるなど気分転換は大事。人に話すと違う角度からの意見をもらえることもあります。聞いてくれる友人や家族に感謝することも重要ですね」と回答しました。

最後に司会進行をした学生からお礼と感謝の言葉がありました。
「日本企業だけでは分からないこともたくさんあり、もっと視野を広く持とうという気付きになりました。今つらいと思ったことも、あとで良いことにつながるかもと思えて心が軽くなりました」と伝えられ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。

女性活躍や将来の就職先などについて、学生たちも具体的にイメージできるようになった講演でした。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には第一回目からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿は真剣そのもの、政井様も本当にフランクに学生の視点でお話し下さり、アットホームな雰囲気も含めて大変貴重な時間になっています。一方、政井様のキャリアは、変化の連続。金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。なかなか先の見通せない時代を生きる学生たちにとっては、大きな勇気をいただくメッセージを沢山いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。