社会連携プログラム
SOCIAL COOPERATION PROGRAM
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2023年11月21日

社会がより良くなるためには?「グローバルキャリアデザイン」の授業でILEC理事長による講演が行われました。

10月20日に、3年生対象の共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、公益社団法人教育文化協会(ILEC)理事長の相原康伸氏による講演が行われました。雇用や教育の問題、女性活躍について、日本と世界との関係など幅広い内容について語られました。理想を語ること、対話することの大切さについて学生たちは改めて学ぶ機会となりました。

労働と健康

相原氏はまず、コロナ禍が世の中を変容させたことについて触れました。
「健康について嫌というほど意識する日々でした」と話し、世界保健機構(WHO)が出した健康についての定義を紹介しました。
1つは病気にかからないことだけが健康ではない、ということ。身体だけでなく精神も健康であることは大事なことです。
もう1つは社会的にも健康であること。「社会にも健康があるということは、私も大変新鮮な感覚でした」と相原氏。
では、社会が健康であるとはどういうことかについて考える上で、たくさんのヒントになることを相原氏は話していきました。

相原氏は日本労働組合総連合会(連合)の前事務局長。
連合とは日本の労働組合の中央組織で、政府や各経済団体に対し労働法制や労働環境の改善を訴求する役割を担っています。
企業側は労働組合から協議の申し出があった時は受けなければならないと法律で決まっています。

ただし、組合側の求めが全て達成されるわけではありませんが、徹底した話し合いで、企業・労働組合双方が納得し得る内容で決定していく必要があります。法律から変えなくてはならない内容の場合は、労働者の代表として政府に提言も行う大きな役割をされておりました。

貧困の連鎖を止めるには

現在は国際的な労働や教育に対して様々な国で活動されている相原氏は「皆さんがこれから社会に出る上で必ず素養として身に付けておかなくてはいけないのが、異文化に対する普遍的な敬愛です」と言います。
多様な文化を受け入れ仲間として活動する意識を持っておくべきだと語りました。

ネパールやスリランカなど発展途上国は貧困問題が深刻です。
相原氏は子どもたちが教育とスキルを身に付けることで、その貧困から脱する手助けをされています。
「重要なのは身に付けるだけではなく、雇用されるところまでサポートすること」と相原氏。
雇用されれば税や保険料を払い社会を支える立場になります。貧困の連鎖を止めるには雇用が重要ということ。
「これは日本も無関係ではありません」と、話は日本社会について移っていきました。

女性が社会で活躍するために

現在の日本は人口が減少しています。
高齢化は欧米諸国の4倍速で進み、若い世代は経済的不安から子どもが持てないというのが現状です。
また、ひとり親家庭の貧困率や進学率は、一般家庭と大きな格差があります。特に女性と男性の賃金格差は顕著で、母子家庭と父子家庭の年収は倍近く違いがあります。この男女の格差はどこから出るのでしょうか。
役職や仕事内容、評価だけでは説明できない差が存在してしまっています。「少し格好つけた言い方ですが、私たちの役目は、一人ひとりの可能性を拓くこと」と相原氏は語ります。
こういった問題に対する対策を果断に進め「経済的な困難を取り除くことで可能性を拓くことにもつながる」と話しました。

社会では共働きがメジャーになってきています。
ただ、日本では女性が社会進出することで出生率が下がる、という考えがまだ根深く、女性の権利が向上し労働環境が良くなることに対して誤解があると相原氏は話します。
この誤解を正すには、まず集団のトップは男性であるという思い込みをなくさなくてはなりません。
ここで相原氏は学生たちに中学校の生徒会長の男女比について質問を投げかけました。
7:3の比率で手を挙げる学生が多い中、正解は8:2。「このバイアス(偏見)は難敵です」と、自分たちがこの偏見を変えるという意識を持つことの大切さを話しました。
「どんなライフステージでも当たり前にキャリアを積み上げて行ける社会をつくるために、実践女子大学で学んだ知見は大いに役立つはず。皆さんには大いに期待しています」と力強く仰いました。

今の世界と日本

今、世界ではロシアとウクライナの情勢やパレスチナ紛争などが起こり、国際的に困難な状況にあります。
世の中の秩序が安定してこそ経済を伸ばしていける状況になりますが、今のままでは相当な困難が伴います。「逆を言えば、だからこそ日本の社会が変革し、現実を理想に近づけていく必要がある」と話します。
「青臭い議論、大いに結構」と、理想を語る大切さを伝えました。

そのために大切なのは当事者だけでなく他の人はどうだろうかと考え、よりよい社会に向けた「ソーシャルダイアログ(社会対話)」が重要であると話しました。
相手に意志を伝え相手のことを分かろうとすること。
そのことで喜びが広がり社会につながっていく。「相手の幸せが自分の幸せのように感じられる社会に、というのが私の理想です」と、相原氏は講演を締めくくられました。

理想を持ち行動しよう

授業の最後には学生から質問がありました。
「理想を言うことが大切だという話がありましたが、理想を言うのは難しいことです。理想を発言する方法は?」という問いに、相原氏は「まずは、自分の中に理想があるかどうか。その理想を自分の仕事に落とし込んで、自分に近づけること」と回答されました。学生たちも理想を掲げ、対話することの重要性を再度考える機会となった講演でした。

担当教員からのメッセージ

毎年、高い視座、広い視野の大切さを、シャープな語り口で学生に届けて下さる相原様、今年は、例年に増して広く世界を見つめることの大切さを説いて下さいました。そして、社会が変わらないと嘆くばかりでなく、まずは投票行動など、身近で、誰もが出来るところから行動することの大切さもお話しして下さいました。
「Think Global Act Local」常に世界を意識しつつ行動する事、これからの21世紀を生き抜くためには、その重要度が増していることを強く感じるお話しでした。
毎年貴重なお話しをありがとうございます。心から感謝申し上げます。

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