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2021年12月10日

JALと本学の社会連携授業がスタート!学生が地域活性化のプラン提案へ(11/10)

 日本航空(JAL)と本学の社会連携授業が11月16日(火)、現代生活学科の授業「実践キャリアデザイン」でスタートしました。JALの地域活性化に関する取り組みを授業で取り上げ、学生がJALの強みを活かす地域活性化の新規事業を提案します。JALからは講師役などで産学連携部人財開発グループマネジャーの猪田京子氏ら4人が参加。最終プレゼンテーションを12月14日と同21日の2回に分けて行います。猪田氏は授業のなかで「ワクワクするような提案を楽しみにしています」と学生たちに語り掛けました。

JAL本社(グーグルマップから)

課題は「地域活性化の新規事業」

課題が提示されました!

 キックオフ授業は、10日午前10時55分から本学日野キャンパス4館411教室で行われ、JALからは猪田氏のほか、産学連携部人財開発グループ長の石田智代氏とマネージャの塩崎雅子氏、企画グループ長の粟賀仁也氏が参加しました。グループワーク(GW)に先立ち、猪田氏がJALについて▼SDGsの取り組みやESG経営▼コロナ禍での航空会社の対応▼地域活性化の取り組み▼同社の強み、大切にしている価値-などを紹介。その上で、学生が取り組むグループワークについて「10年後のJALを見据えた地域活性化の新規事業を提案してください」と課題を提示するとともに、「提案はSDGsと関連性のある内容を意識してください」と補足しました。

SDGsの目標達成や事業構造転換に必要

 それによると、猪田氏は「地域活性化は日本航空にとって、ESG戦略の重要な柱の一つ」と位置付けた上で、「ESG経営を通して、SDGsの目標達成に向け努力している」と強調しました。併せて、「2011年から10年間地域活性化に取り組んできた。これまでは地域貢献・社会貢献・地域プロモーションが取り組みの中心だったが、昨年から新たに、地域での活動を永続的なものとするために事業化という手法も視野に地域の皆様と施策を展開している」と紹介しています。

 加えて、新型コロナウイルス感染拡大で世界的に航空需要が低迷するなか、コロナ禍を教訓に「航空収入のみに頼らない事業拡大の取り組みを今まさに行っている」と力を込めました。そのために積極的に取り組む分野として、地域事業やマイレージ関連などを挙げています。

SDGs達成への取組

CAの地方配置や大学生の「青空留学」を実現

JALの資料を食い入るように閲覧する学生

 具体的には、2020年11月に各地の地域課題の解決方法を地域と一緒に検討・実行する専門部署として「地域事業本部」を設立。地域事業本部や全国の支社・支店の社員に加えて、客室乗務員(CA)を「JALふるさとアンバサダー」・「JALふるさと応援隊」として任命し、地域の魅力を発掘したり、課題解決に取り組む活動を開始しました。このうち、実際に地方に移住する「JALふるさとアンバサダー」は全国に約20人を配置。乗務と兼務しながら地域活性化に取り組む「JALふるさと応援隊」は約1,000人を発令しました。いずれも客室乗務員から社内公募で選ばれました。

 また、猪田氏は提案内容に対して「日本航空は、地域の課題を発掘し、その課題を解決することで、永続的なヒト・モノの流動の創出に努めている。地域活性化を考える際はこの観点を忘れないでほしい」と期待を表明しました。これを受け、現在進行形で進めているJALの地域活性化の取り組みを説明。例えば、人流をつくる旅行商品は「密にならない旅」や「おこもり旅」、そしてワーケーションにフィットした商品など…を紹介。ウィズ・コロナ時代における新たな旅のスタイルでもある「JALオンライントリップ」のほか、JAL社員と大学生が農家や漁師を訪れ、フィールドワークを通して生産者の課題解決を共に行う共創プログラム「青空留学」なども例示しました。

猪田氏がJALの取り組みを説明

JALにしかできない新規事業を

石田氏はGWで学生と意見交換

 グループワークは、1チーム4~5人単位の14チームに分かれ、最終プレゼンに向け議論を深めます。猪田氏はグループワークに取り組む考え方やヒントを整理、学生にこう語り掛けました。

 「まず10年後の社会を予想してください。それはどの地域の課題解決に取り組みたいのか。どこか特定の地域を限定して提案しても構わないし、日本全国を全体として地域活性化のプロジェクトを提案するのでも構わない。JALならではの価値、JALにしかできないような地域活性化の新規事業を提案してください」

 「今までに誰かが取り組んでいるような事業ではない、何か新しいものを提案してください。地域の人がハッピーになる、そしてJALもハッピーになる、お互いがWin-Winになる内容を期待しています」

GWで学生に語り掛ける塩崎氏

現代生活学科の71人が履修

 社会連携授業の指導教授は、文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)です。対象は、生活科学部現代生活学科の2年生。今年度は71人が履修しました。

深澤晶久教授の話

 本科目に於いては、例年後半にグループワークを取り入れていましたが、今までは架空のテーマでの取り組みにとどまっていました。本年は、大学全体でも社会連携の強化が示されており、初めて企業さんにお越しいただき、リアルなテーマでの授業となりました。現代生活学科では、地域連携や地域再生も大切な学びの軸、2年生で取り組む本テーマが、その後の専門科目での学びに繋がるストーリーを創りました。JAL様には、事前準備を含め、全面的なご支援をいただいています。12月のプレゼンが今から楽しみです。 

深澤教授
2021年12月10日

学生が企業のサステナビリティを考えました!丸井グループと社会連携授業を実施(11/6)

 社会課題に対する企業の取り組みを考える「実践ウェルビーイングプログラム」が11月6日(土)、東京都中野区のMスクエアで開かれました。丸井グループ(東京都中野区)と本学の初めての社会連携授業として行われ、丸井グループ社員と学生がチームを組んで先進事例を研究。3チームに分かれて、気になる企業のサステナビリティ活動や特徴を発表しました。

 ウェルビーイングは、直訳すると「幸福、安寧、福利」です。1948年の「世界保健機関(WHO)憲章」の前文で提唱され、近年ではSDGsのゴール3にもWell-beingが登場します。日本企業の間でも、事業を通じて社会課題を解決するWell-beingに関心が高まってきました。また、ウェルビーイングに通ずるサステナビリティ、SDGsについても、多くの企業が取り組みを加速させています。

サステナビリティと企業経営

 プログラムは午前10時半、丸井グループサステナビリティ部の関崎陽子部長の基調講演でスタート。関崎部長は、丸井グループが目指す企業経営のミッション(使命)について、「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創る」と説明しました。

丸井Gの企業経営ミッションを関崎部長が講演

社員と学生でグループワーク

 午前11時からは3チームに分かれてグループワークです。具体的には、学生らが事前に調べた▼好きな企業やブランド、商品、サービス▼その企業が取り組む社会課題の解決▼それに対する共感や気付き-を一人一人が報告。その上で、丸井グループ社員を進行役に、企業が今後取り組むべき社会課題を約1時間にわたり話し合いました。

1班

丸井G社員の川瀬さん
真剣な学生の表情
学生は積極的に発言しました
1班の事例研究

2班

丸井G社員の大熊さん
メモを取る学生
学生も雰囲気に慣れてきました
2班の事例研究

3班

丸井G社員の吉良さん
各学生が発表
全員で理解を深める
3班の事例研究

今後取り組むべき社会課題を発表

 正午には、グループワークの結果を、3チームの学生が発表。企業が取り組むべき社会課題について理解を深めました。

1班の発表
2班の発表
3班の発表

9月にキックオフミーティング

 実践ウェルビーイングプロジェクトの指導教授は、文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)です。「これからの時代・社会における新しい幸せの形」をテーマに9月16~17日にキックオフミーティング、第1回のプログラムは「日経ウェルビーイングシンポジウム」の視聴を行いました。今回の第2回プログラムには、1~3年23人が参加しました。

丸井Gの皆さんと学生が一緒に

深澤晶久教授の話

 ポスト「東京2020」の取り組みとして、有志による「JWP(実践ウェルビーイング)研究会」を本年9月に立ち上げました。狙いとしては、
①コロナ禍にあって様々な制限を受け、大学生としての幅広い活動が出来ていない学生のための成果外キャリア教育プログラムとして位置づけ、学生たちに学びの機会を提供する。
②2050年責任世代として期待される学生には、2030年がゴールである「SDGs」のその先、言い換えれば「SDGsのその先」に視点を持てる「一歩先を考えられる学生」へと成長して欲しい。
この2点を軸として活動をスタートしました。

 今回の丸井グループ様とのコラボセッションは、その大きな柱であり、既にサスティナビリテ経営の先導者として社会を牽引され、さらにウェルビーイング経営にも先駆的に取り組まれている企業の活動から学びを深めたいと考え、ご依頼を申し上げ実現したものです。教室での学びにとどまらず、企業様からライブでお話しをうかがい、さらには直接ワークショップで気付きを深めること、学生にとっては、とても貴重な機会となりました。全面的にご支援をいただいた丸井グループ様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

深澤晶久教授
2021年12月8日

オクトーバーフェストが10月に開催されました!日野市や十日町市の住民と学生が交流を深めました(10/2~16)

 深まる多摩の秋を地域の人々で楽しむ「オクトーバーフェスト2021」が、10月2日から16日まで東京都日野市豊田の市立カワセミハウスで開かれました。同フェスト実行委員会の主軸として、本学生活科学部の学生が本部企画・会場運営に参加。3日(日)の「オリジナルテラリウムづくり」や16日(土)の「布川ファーマーズマーケット」などの連続イベントを通して、地元日野市や新潟県十日町市の住民らと交流の場を創出しました。

会場のカワセミハウス

 オクトーバーフェストは、ドイツ発祥のビールのお祭りです。カワセミハウスで行うオクトーバーフェストは、日野発祥のクラフトビール「豊田ビール」を楽しみ、地域がつながるお祭りとして、生活科学部現代生活学科須賀ゼミの学生が発案し、2017年から実施してきました。地域の団体による模擬店・展示、多世代が交流する趣向を凝らしたワークショップなどを例年行っています。

学生が本部企画を運営

学生が本部企画を運営

 今年のフェストは、コロナ禍の影響を受け、初めて2週間のロングラン開催となりました。期間中、本学は▼「日野市のオリジナル地図をつくろう!」をテーマに、まち街歩きマップづくり(3日、10日)▼「ビンの中の小さな日野のまち」と称して、ガラス容器の中で小さな自然を表現して楽しむテラリウムづくり(3日)▼交流のある新潟県十日町市布川地区の新米や新鮮野菜を販売する「布川ファーマーズマーケット」(16日)-などの本部企画を実施。生活科学部現代生活学科の須賀由紀子教授のゼミ学生らが、揃いのカワセミハウス・ポロシャツに身を包み、今年のフェストのために学生がデザイン・制作したオリジナルバンダナを着けて、テラリウムづくりや米・野菜の販売ブースなどを担当しました。

 このうち、テラリウムづくりは3日午後1時から行われ、30代から60代まで親子連れを含む日野市民延べ14人が参加しました。コロナ禍の中で参加者は予約制をとり、屋外テントの専用スペースで、本学学生が参加者に寄り添い、心温まる制作の場を創り出しました。

無印良品も協力

 テラリウムづくりでは、イオンモール多摩平の森(日野市豊田)に店舗を構える無印良品から、テラリウムづくりに適した手頃なガラス容器の商品提供や、フォトスポットの設置などの協力を得ました。

 店長の竹内健太さんによると、同社では地域の課題解決に関する取り組みやイベント開催への協力を積極的に進めており、日野市地域協働課を介して、本フェストへのマッチングが実現したとのこと。本学学生とテラリウムづくりの企画を進めて地域のつながりを盛り上げることができ、竹内店長は、「これからも、こうした地域貢献活動に積極的に協力していきたい」などと語りました。

無印良品も販売に協力

学科を超えた連携も

 これに先立ち、地域への愛着を育む日野市オリジナル地図づくりを3日午前11時から実施しています。参加者それぞれが、自分の好きな商店やお気に入りのスポット、苦い思い出もある場所などを市内の地図に落とし込み、自分だけのまち歩きマップを作成しました。多世代で地域のことを話題に交流するのが狙いです。生活環境学科のスタジオMKラボが、マップづくりにデザイン協力しました。

新潟の米や野菜を販売して地域をつなぐ

布川ファーマーズマーケット

 また、16日(土)の「布川ファーマーズマーケット」には、須賀ゼミが都市農村の支え合いをテーマに交流している新潟県十日町市松之山布川地区の住民4人が、この日の朝に布川地区を車で出発して、3時間半かけてカワセミハウスに来場。同地区で採れた新米魚沼産コシヒカリや朝採りの新鮮野菜を会場に持ち込み、午後1時から販売しました。

 用意された新米は、いずれも雪深い同地区の山の清水を利用した棚田の特別栽培米「山里布川米」です。学生が、1㎏入り・2㎏入り・3㎏入りそれぞれの個数を考えて事前に手配し、合わせて100㎏分の米を、「黒川かわせみサロン」のお母さん方と一緒に販売して、わずか35分で完売しました。一方の新鮮野菜は、かぐらなんばん、モロッコ、糸うりなどの珍しい野菜の他、旬の里芋やさつまいもなど約30種類。布川の「ゆったりクラブ」のお母さん方が育て、大地の滋養いっぱいの野菜で、販売を待ち望んでいた来場者が、先を争って購入していました。

35分で完売

布川住民とギャラリートーク

ギャラリートーク

 直売に続き、布川地区の自然や住民の暮らしぶりなどを写真で紹介するギャラリートークが、午後2時から同じ会場で行われました。布川地区を2回訪れたという須賀ゼミの学生2人が司会を務め、小野塚建治さんら布川地区からの住民4人と対談。現地で学生が撮影した思い出の写真をもとに、同地区の魅力や住民の温かさなどを振り返りました。

小野塚建治さんの話

 実践女子大学の学生さんが、十日町市布川地区を訪れるようになって5~6年になります。「布川地区の高齢化の様子が知りたい」というのが、きっかけでした。昨年はコロナ禍で無理でしたが、彼女たちは安価に利用できるバスでやって来ては、長い人で1週間ほど、土日だけの滞在という人もいますが、村の施設や農道の草刈りなどを率先して手伝ってくれています。コロナ禍前は、地区の夏祭りも盛り上げてくれました。

 学生さんが「田植えや稲刈りを是非やりたい」というので、私の家の棚田で昔ながらの旧コシヒカリの品種を使った希少な米作りをしてもらっています。田植えや稲刈りはもちろん、畔の草刈り、天日干しまで学生さんがします。150kgぐらいの収量がありますが、その一部は「まつむすめ」という名前で実践女子大の常磐祭でも販売されています。

 学生さんが「田植えや稲刈りを是非やりたい」というので、私の家の棚田で昔ながらの旧コシヒカリの品種を使った希少な米作りをしてもらっています。田植えや稲刈りはもちろん、畔の草刈り、天日干しまで学生さんがします。150kgぐらいの収量がありますが、その一部は「まつむすめ」という名前で実践女子大の常磐祭でも販売されています。

 高齢化が進んだ地区に若い人が来るというのは、華があっていいものです。在学中だけでなく卒業してからも来てくれる方もいます。実践女子大学の学生さんは、すっかり布川地区に溶け込んでくれていて、今では地区になくてはならない存在となりました。

フェストを盛り上げた仲間と

須賀由紀子教授の話

 オクトーバーフェストは、カワセミハウスが地域の居場所のハブ拠点として開設された2017年から、本学学生の発案がきっかけで行われ、今年で4回目の実施となりました。地域の様々な方がつながり、知り合うお祭りです。

 学生は、このお祭りに、当日の「お手伝い」で参加するのではありません。企画をゼロから考えて、カワセミハウス協議会に提案して了承していただき、その後、オクトーバーフェスト実行委員会が立ち上がり、準備を進めていきます。今年度は、実行委員会副委員長として、須賀ゼミ4年の三須葉月さんが中心となり、須賀ゼミ3年生および4年生の有志が、約半年かけて、コロナ禍の中でも安全にできる内容を工夫し、2週間のプログラムを見事にやり遂げました。告知チラシやプログラム・リーフレット、4m幅の横断幕の制作などもすべて学生が手掛け、地区内の掲示板やポスティング、イオンモール多摩平の森での紹介なども行いました。

 今年はコロナ禍ということで、企画には大変苦労しました。緊急事態宣言が続き、本当に開催できるのかという不安な思いの中で、学生たちはよく頑張ったと思います。豊田ビールが必須のアイテムですが、生ビールの販売はできません。瓶でのお持ち帰り販売に限定し、日野市が始めた「日野デリカー」に依頼して、特別に「豊田ビールに合うおつまみ販売」を取り入れました。また、2週間のプログラムのフィナーレには、須賀ゼミとスタジオMKラボでコラボレーションして、「キャンドル点灯式」を実施。「素晴らしい点灯式で、本当に感動しました」というメールを、地域の方からいただきました。

小径にキャンドルを配置
夕暮れにキャンドルの灯りが映えます
2021年12月8日

学生が闘牛場で実践オリジナル開発の「マスク」「金平糖」を販売!岩手県久慈市と社会連携プロジェクト(10/17)

本学の学生が10月17日(日)、岩手県久慈市山形町の「平庭高原闘牛場」会場で、自らパッケージデザインを手掛けた「マスク」と「金平糖」を販売しました。久慈市と本学の社会連携プロジェクトとして行われ、闘牛場で行う「実践女子大オリジナルグッズ」販売は初の試み。闘牛見物を楽しみに訪れた来場者に、本学と久慈市の絆をアピールしました。

英文学科の3人がデザイン・販売

闘牛場でグッズ販売に奮闘したのは、公募で選ばれた文学部英文学科3年の川島梨楠さんと常盤優佳さん、徳山瑠奈さんです。3人は、久慈市と本学が今年度取り組んだ新商品開発に学生ボランティアとして参加。今回開発した「マスク」と「金平糖」のパッケージデザインを担当しました。

英文学科の3人を遠藤久慈市長が激励

凍える寒さのなか奮闘

平庭高原闘牛場

当日の販売は、11時の大会開始を前に、午前8時半には入り口付近に入場待ちができたため、開始時間を繰り上げてスタート。3人は揃いのピンク色の実践女子大学法被に身を包み、約6時間、マスクと金平糖の販売に声を枯らしました。ただ、外は生憎、気温4度という東京では考えられない寒さに加え、正午には降り出した雨がみぞれに変わるような悪天候。寒さに震えながらの3人の頑張りが光りました。

秋の「もみじ場所」で販売

また、実践グッズ販売が行われた闘牛大会は、年4回定期開催される大会のうち、10月に開催される「もみじ場所」です。同闘牛大会は東北唯一の闘牛大会として知られ、久慈市の観光行事として定着しています。今回、闘牛場入口付近に本学独自の売り場が設けられ、17日の1日だけでマスク100個、金平糖300個の完売を目指しました。

 このうち、マスクは男女兼用で、黒の布地の中に小さく描いた赤い牛の絵柄をワンポイントにあつらえました。また金平糖は、容器のガラス小瓶に牛の絵柄を描き、オレンジ、ピンク、黄の3色の絵柄を用意。価格はマスクが700円、金平糖が800円(いずれも税込)です。

本学オリジナルの「マスク」と「金平糖」

柵内でアピールするサプライズ

柵内を練り歩き本学をアピール

闘牛主催者から嬉しいサプライズもありました。普段は関係者以外許されない闘牛場の柵内に入り、本学グッズを宣伝することを認めてくれたのです。午後12時半すぎ、3人は市職員4人とともに意気揚々と闘牛場内を一周。大学名やグッズ名を連呼して練り歩き、980人近い観衆から拍手喝采を浴びました。

 また、遠藤穣一久慈市長も闘牛場に駆け付け、グッズ販売で奮闘する3人を激励しました。

SNSでグッズや大会を発信

このほか、学生はグッズ販売を契機にSNSによる情報発信も試みています。Instagramに「jissen.togyu」のアカウントを9月中旬に開設。久慈市の情報発信や闘牛大会の広報活動に取り組みました。目標100人のフォロワー数に対し、最終的に105人を獲得、関係者を喜ばせました。

 本学と岩手県久慈市は2019年2月、包括的連携協力協定を締結しました。この協定の一環として秦英貴学長特別顧問と学長室が中心となり、本学職員と久慈市役所職員が闘牛場での実践オリジナルグッズの販売を企画しました。

〔「闘牛場で実践グッズ販売」プロジェクトの流れ〕

08月02日キックオフミーティング。学生ボランティア3人に対する趣旨説明や自己紹介
08月06日久慈市役所とZOOMミーティング。新商品候補の検討
08月20日新商品候補の製造現場を見学
08月30日久慈市役所とZOOMミーティング。新商品を「マスク」と「金平糖」に決定
10月16日現地入り。闘牛場を下見。
10月17日大会当日
アイデアを練る学生3人
久慈市職員とZOOMミーティング
新商品に「マスク」と「金平糖」を決定

2021年11月11日

オリエンタルランドと連携授業が実現しました!学生が客単価向上策を提案(6/29)

東京ディズニーリゾートの運営会社「オリエンタルランド」と本学の夢のコラボレーションが、文学部国文学科の深澤晶久教授が担当する共通教育科目「キャリアデザイン」で実現しました。東京ディズニーランドや東京ディズニーシーの課題解決を提案するPBL授業の最終プレゼンテーションが6月29日(火)に行われ、課題で与えられた客単価の最大化プランを発表。3学部6学科の3~4年生45人が、9チームに分かれて多彩でユニークなプランを競い合いました。

課題は、講師を務めた同社フード本部フード統括部の横山政司部長から与えられました。具体的には「パーク内でのフード客単価を『最大化』させる施策を提案せよ」です。横山部長は6月8日(火)の課題提示に際して、▼面白いこと▼説得力があること▼情熱にあふれていること-を、学生が行う提案内容やプレゼンに求めました。

「月間フードランキング」など提案-2班

ディズニーオタクに景品ランダム化作戦-1班

モバイルオーダーを導入-3班

「売り子販売」を提案-9班

待ち時間を楽しむコンセプトメニュー-4班

和食のおにぎり販売-5班

自販機で待ち時間活用-7班

フードも屋外広告を-6班

コイン配布やプリクラ機設置-8班

熱のこもった9チームのプレゼンに対し、横山部長は「月間フードランキング」などを提案した2班の発表を最優秀と認定しました。また、学生間の投票で最も評価が高かったのは、9班の「売り子販売」でした。

横山政司・オリエンタルランドフード本部フード統括部長の話

各チームとも発表ギリギリまで詰めて提案してくれました。その熱量は私のところにも十分に伝わってきました。最後まで諦めず、より良いものを追求して提案することは、仕事する上でも、すごく大事な姿勢です。

 プレゼンテーションも、どのチームも工夫を凝らしており、すごく分かりやすいものでした。自分たちのプレゼン力に自信を持ってください。

 その上で、皆さんが一層成長するために必要と思うことを4点挙げます。
1点目は提案の説得力です。現状分析をしっかり行った上で、一番ポイントになる課題を抽出し、解決案を探るべきです。説得力を高めるために、現状分析をしっかりやりましょう。

 2点目は、課題の本質を捉える事です。1店舗の客単価だけ上がっても、他の店舗の客単価が下がり、全体の客単価も下がれば、ミッション達成とは言えません。その辺の視点が、もう少し欲しかったと思います。

 3点目は、提案の一貫性です。チームで役割分担して作ったパーツを1つに結合した時に、全体の一貫性があるか、論理が通っているかを忘れずにチェックして下さい。

 4点目は、全員が意見を言えるチーム作りです。一部の人の意見だけでプランを作るとスムーズに進みますが、抜け穴も多くなります。様々な価値観の人が意見を出し合ったプランは、時間はかかりますが、抜け穴が塞がれ、実行段階でスムーズに進みます。全員が意見を出し合えるようなチームづくりを心掛けてください。

講師の横山政司部長
深澤晶久教授

深澤晶久教授の話

学生にとって極めて関心の高いオリエンタルランド社との連携授業は、当科目にとっても、大切な時間となっています。特に本年度は、今までにないリアルなテーマであり、学生にとってのハードルは上がったものの、深く企業や、仕事のことを考察する時間となりました。

 横山様には、プレゼンテーション当日まで、幾度となくアドバイスをいただき、仕事の厳しさも学ばせていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。就職活動を目前に控えた学生にとって、働くこととは、仕事とは、そして企業とは、一人一人が自らと向き合い、どこまで深く考えられるかが重要であることに気づいて貰えればと考えています。

2021年11月4日

東京五輪開幕日の一面紙面を学生が模擬制作!スポニチとの社会連携授業が集大成を迎えました(7/13)

2021年7月23日開幕の東京オリンピック2020を受け、開幕日当日のスポニチ一面紙面を学生が模擬制作する授業の最終プレゼンテーションが7月13日(火)、本学渋谷キャンパスで行われました。スポーツニッポン新聞社と本学の社会連携事業として行われ、実際にスポーツニッポン新聞社の輪転機で刷り上がった模擬紙面を使い、5チームが一面紙面の出来栄えを競いました。東京オリンピック2020も無事閉幕、4年間続いた名物授業は今回で一応の集大成を迎えました。

最終プレゼンは、1チーム4~5人の5チームが、「アメリカ」「南ヨーロッパ」などのチームごとにスポニチ一面の模擬紙面を発表しました。これを受け、スポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員が紙面の出来栄えに講評を加えていきました。ちなみに、アメリカや南ヨーロッパなどのチーム名は、履修者に関心のある国をアンケート集計した結果をもとに、チーム分けをしています。

参加国の公式ユニホームに注目-1班

東京五輪開幕、ユニホームの金を探せ!
=TGCオシャレ番長はどこの国?=
-世界の有名ブランドが終結!目が離せない-

参加国の公式ユニホームにスポットを当てたのは、1班のプレゼンです。新聞各社が有名デザイナーに依頼して公式ユニホームの小論を書いてもらうほど、公式ユニホームは注目されており、1班の着眼点は高く評価されました。

 それによると、1班は各国の公式ユニホームを制作したブランド会社をそれぞれ調査。公式ユニホームの制作メーカーが、フランスはラコステ、アメリカはラルフローレン、イタリアはアルマーニなど各国を代表する有名ブランドであることを紙面で伝えました。ちなみに、日本のフォーマルウエアはAOKIホールディングス、カジュアルウエアはアシックスです。

 同班は、東京開催を意識したとみられるデザインにも、着目しました。例えば、スウェーデンは自国ブランドのH&Mから日本のユニクロに変更したほか、イタリア選手団の公式ジャケットの内襟には、日本の伝統的な寺院の図柄の上にイタリア国家の歌詞が印刷されているなどのエピソードも紹介しました。

ジェンダーと絡めてみては?

1班

これに対し、藤山氏は、1班が作成した紙面について「見出しも『おしゃれ番長』はかっこいい。また、東京五輪コレクションはとっても面白かった」と感想を述べています。

 その上で、色彩豊かな他国のユニホームに対し、「日本は日の丸ということで、どうしても赤と白ばっかりで、上に赤か、下に赤かという、ただそれだけなので、毎回同じような形にどうしてもなってしまう」と批評しました。というのも、「日本は女性がスカート、男性はスパッツという固定観念があるからだ」と言います。これに関連し、藤山氏は「海外はほとんどジェンダーの時代だ。ユニホームが男女で統一されている国もある。ジェンダーの問題と公式ユニホームを絡めた視点で書くと面白いかもしれない」などとアドバイスを送りました。

新競技「スケートボード」に注目-2班

竜飛鳳舞、華麗な技で世界へ
=東京五輪新競技「スケートボード」から目が離せない=
-パーク男子部門はスノボメダリスト”二刀流”平野歩夢に注目-

2班は、5グループの中で唯一、競技そのものをテーマに取り上げました。東京大会から正式採用された新競技「スケートボード」に注目。新競技の魅力を伝える紙面づくりを試みました。

 それによると、同班はスケートボードの魅力を1940年代アメリカ西海岸発祥の歴史まで遡ってひも解き、現在ではスポーツのみならず、若者にはファッションとしても受け入れられていると紹介しています。

 その上で、スケートボード競技に特有な用語などを丁寧に解説。競技には男女とも「ストリート」と「パーク」の2種類あることや、その採点方法などを紹介したほか、空中で時計回りに一回転半する「バックサイド540」など注目の大技についても、説明を加えました。

 また、メダル有望の日本選手も挙げています。具体的には▼ストリート男子は、堀米雄斗選手▼ストリート女子は、19歳の西村碧莉(あおり)選手▼パーク男子は、冬季五輪種目スノーボードの銀メダリストでもある平野歩夢選手-を挙げました。

2班の紙面

インパクトある見出しに驚き

2班

プレゼンを受け、藤山氏が驚いたと学生に語り掛けたのは、見出しの「竜飛鳳舞」でした。非常にインパクトがあり、藤山氏も「スケートボードを中国語にすると、この言葉になるのか?と一瞬、間違ったほど」だったとか。藤山氏が「こんな難しい言葉をよく知っていたね」と水を向けると、学生は「スケートボードに合うような、かっこいい単語をメンバーで一生懸命探し、ぴったりの単語を見つました」と胸を張りました。

【東京五輪2020を振り返って】

日本選手は、4種目で金3銀1銅1と期待以上の活躍を見せました。男子ストリートの堀米雄斗選手は学生も予想した通りの金。女子ストリートは、西矢椛(もみじ)選手が史上最年少の金、中山楓奈(ふうな)選手が銅。女子パークは四十住さくら選手と開心那(ひらき・ここな)選手が金銀と表彰台のワン・ツーを占めました。一方、学生期待の西村碧莉選手は8位。平野歩選手は14位で残念ながら決勝進出はなりませんでした。

五輪と生理、遅れた日本のピル事情-3班

五輪と生理、知らなかったピル事情
=北京五輪出場時にピル服用、使用期間が短く体重増加、結果出せず知識不足を後悔=

いかにも「女子大生らしいテーマ」と評されたのが、3班のプレゼンです。同班は「生理でも絶対休めないオリンピックのアスリート達はどう向き合っているのか」という問題意識から議論をスタート。アスリートの生理対策、とりわけ欧米に比べて遅れた日本のピル事情に注目しました。

 それによると、学生たちは日本のアスリートのピル使用率は2%にすぎないのに対し、欧米のアスリートは83%に達していると指摘しています。欧米に比べ格段に少ない上、生理やピルに関する知識や理解も不足しているのが実情と問題提起しました。

 具体的ケースとして、大会時にピルを使用していたという元競泳日本代表の伊藤華英選手を取り上げました。同選手は2008年の北京オリンピック大会の際、ピルの使用法を誤り、思うような結果を残せなかったからです。

 逆に、ピルを正しく使用すれば、多くの効能があるとも学生は強調します。例えば、元アルペンスキーの花岡萌選手です。花岡選手は、ピルで生理のタイミングをコントロールすることに成功。競技生活のここぞという時に集中することができたと学生たちは紹介しました。

 その上で、学生たちは、ピルの使用は産婦人科で相談する必要があると結論付けています。自分の体に合った対処法を医師と見つけていくことこそが、最も重要と考えたからです。

3班の紙面

「指導者」が問題?

これに対し、藤山氏は「皆さんが最初と言いますか…」と、3班が女性アスリートと生理の問題を取り上げた意義を評価しつつ、この問題に関する日本の現状を解説しました。具体的には、「日本はとても遅れている」と指摘した上で、「女性アスリートからは指導者に何も言えないし、指導者も何もしない」というお寒い現状を説明。その原因を「監督やコーチ、トレーナーとか、いわゆる指導者が、圧倒的に男性が多い」ことに求めました。

 このため、日本に限らず世界的にも、この問題に関する限り「男性の指導者は、ほとんど(女性アスリートの)役に立っていない」と批判。この結果、女性アスリートとしては「何も指導者に相談できないし、正しい選択ができなくなっている」と嘆じました。

3班

「性的ハラスメント問題」にメス-4班

4班の紙面

性的画像問題からアスリートを守れ
=「性的写真を撮られていると感じたことがある」=
-元オリンピアン田中琴乃さん-

4班は、「今スポーツ界を揺るがす大問題」となっている性的ハラスメントを取り上げました。学生は盗撮のほか性的写真のネット投稿などの「ユニホームによる性的ハラスメント問題」について、女子大生の目線から主張を展開。スポーツジャーナリズムの視点から規制の提案なども行いました。

 性的ハラスメントは、演技・競技中に撮影された写真を性的に切り取ることで選手に不快感を与えることです。それによると、4班は性的ハラスメントの現状を知るため、当事者である選手側とメディアの双方に取材を試みました。

 このうち、選手の立場からは、新体操団体の田中琴乃さんが取材に応じ、「性的な写真を撮られていると感じたことがある」などと語りました。田中さんは、2008年北京五輪と2012年ロンドン五輪の新体操団体の日本代表です。併せて、大会での撮影の規制の緩さにも苦言を呈しています。

 他方、メディア側からは、スポーツニッポン新聞社写真映像部の高橋雄二カメラマンが、学生からの取材に応じました。具体的には、選手を写真撮影する際に規制があるかなどの問い掛けに対し、「撮影許可を得るため取材申請書を提出する必要はあるが、報道機関として表現の自由は担保されている」と強調。ただ。「まれに、カメラマンの中にも性的な写真を狙っている人がいないとは言えない」と私見を述べています。

 その上で、学生たちは、独自の解決案を提案しています。具体的には、大会組織委員会の対策に加えて▼報道写真を保存・スクリーンショットすることができないアプリやHPサイトの作成▼性的な意図を入れない写真掲載を誓約書提出で義務付け▼美しい写真を撮ったカメラマンに対する表彰-などの実現を求めました。

記事の現場取材を称賛

4班のプレゼンに対し、藤山氏が最も評価したのは、4班の記事がきちんと現場取材を踏まえて書かれた点でした。具体的には、体操協会や水泳連盟、スポニチの写真部に対して、それぞれ質問状を提出。その回答を踏まえて記事を執筆しています。他チームは、記事の情報源がネット情報中心なのに比べ、藤山氏は「5グループの中で、実際に質問して答えをもらうという手順を踏んだのは、ここだけだ」と語り、同班の真摯な取材姿勢を称えました。

【東京五輪2020を振り返って】

 競技大会本番では、ドイツ体操女子選手が足首まで覆うタイプのユニホーム「ユニタード」を着用したことで注目を集めました。ドイツ体操協会によると、「女性アスリートが性的対象にされることへの抗議」のため採用したと言います。大会組織委員会は2021年3月、競技会場の入場者に対し、「アスリート等への性的ハラスメントとの疑念を生じさせる写真、映像を記録、送信もしくは作成すること」を禁止。さらに違反した場合は強制退場もありうると決定していました。規制強化の背景には、日本でも女性アスリートの競技中のテレビ映像から、無断で画像をキャプチャーして淫らな言葉とともにアダルトサイトに投稿したとして2021年5月、自営業の男性が警視庁に逮捕されたことも考慮されました。

4班

応援アプリで「無観客」観戦にフィット-5班

5班の紙面

「ステピク」アプリが繋ぐ応援の輪
=遠くからでも気持ちは届く=
-五輪会場で声援できなくても”同志”と一緒に-

新たにオリンピック応援アプリ「ステピク」を開発、自宅から東京五輪を楽しむ応援方法を提案したのは5班です。おりしも東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、7月8日に五輪競技の「無観客」開催を決定。図らずも応援アプリを活用する同班の提案が、どのチームにもまして、「タイミング的にベストフィットな提案」と評価されました。

 それによると、応援アプリに搭載する機能は、アバターやチャット、応援ソングの設定など。このうち、アバター機能は自分のアバターをネット空間につくり、このアバターを介して選手を応援可能にします。自分のアバターは、自分の顔写真を取り込み作成するほか、参加国のユニホームと着せ替えを実現。また、アクセサリーとしてメダルも着用可能にします。

 メダルは、「金メダル」や「銀メダル」、「銅メダル」に分け、試合観戦で獲得した合計ポイント総数に応じて貰えます。このうち、金メダルはスポンサー企業からのオリジナルプレゼント付きとします。

 また、チャット機能は、五輪会場で声援できないサポーターに対し、SNSを介して他のサポーターと会話する機会を提供します。応援ソングは、チャットの投票機能を使い、オンライン観戦中を聴く音楽を選べるようにしました。

架空の話と思わせない出来栄え!

これに対して、藤山氏は完成した5班の紙面の出来栄えについて「これがまったく架空のものだと全然気が付かなかった。それぐらい本当にある話として原稿を読ませてもらった」と完成度の高さに舌を巻きました。さらに、ポイント付与や金メダル獲得という同班のアイデアを「発想として面白い。とても読者の興味を引く内容になっている」と称賛しています。

【東京五輪2020を振り返って】

 東京五輪2020の開幕式は、23日午後8時から東京都新宿区の国立競技場で、無観客で開催されました。このため、翌24日のスポニチ紙面はもとより五輪の話題一色です。一面と裏一面をぶち抜き、開会式のパノラマ写真とともに、こう読者に呼び掛けています。

5班

東京五輪、上を向いて歩こう。
=1年延期 歓声なき開会式=
-こんなときだからこそ、スポーツの持つ力に希望を託したい。-

では、23日開会式当日のスポニチ朝刊の一面は、実際のところ、どうだったのでしょうか。本連携授業の歴代の履修学生が、毎年工夫を凝らした紙面づくりを試みた開会式当日朝刊の一面模擬紙面のことです。リアルの紙面の一面トップは?それは「日本の男子サッカーが1次リーグA組初戦で南アフリカと対戦、1-0で勝利した」という記事でした。

久保 黄金の左だ!
=森保J白星好発進=
-五輪日本最年少弾「決めるとしたら自分だと」-

160人が履修

オリパラを盛り上げるための4年間に幕

スポーツニッポン新聞社と本学の連携授業は、2~3年生が対象のキャリア教育科目「国際理解とキャリア形成」のなかで実施されてきました。指導教授は、文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)です。今年度で4回目であり、160人が履修しています。東京オリンピック2020も無事閉幕、4年間続いた名物授業も、今回の授業でめでたくフィナーレとなりました。

最後に記念撮影

スポーツニッポン新聞社・藤山健二編集委員の話

今回のプレゼンテーションは4年間の集大成にふさわしい作品ばかりで、改めて学生たちの持つ創造力と可能性に感心させられました。最初にこの授業のお話をいただいた時は〝女子学生とスポーツ新聞〟という意外なコラボが果たしてうまくいくのかどうか心配しましたが、実際に出来上がった紙面は私たちの想像をはるかに超えるものでした。

 グループのみんなで力を合わせて作り上げた原稿や見出しを弊社の専門記者が本物と同じようにレイアウトして刷り上げ、それを初めて目にした学生たちから大きな歓声が上がった時には、私も肩の荷が下りたような気がしました。コロナ禍での東京五輪・パラリンピックは生涯忘れられない思い出になったと思います。その思い出の中に、自分たちが作り上げた素晴らしい紙面も一緒に残しておいていただければ幸いです。4年間、ありがとうございました。

藤山編集委員
いつも的確なコメントに感謝
深澤教授

深澤晶久教授の話

2018年から4年にわたり、スポーツニッポン新聞社様にサポートをいただきました。スポーツ新聞という、どちらかと言えば女子大生からは距離のあったメディアとのコラボレーションということでありましたが、ベテラン記者藤山様、そして矢野俊哉・ビジネス開発局営業第二部長様をはじめとしたスポーツニッポン新聞社様の全面的ご支援のおかけで、オリンピック・パラリンピック連携講座の顔ともなる、素晴らしい授業を展開することが出来ました。

 オリンピック・パラリンピックを通じて多様性の理解や受容、そして思いがけない事態となった大会の延期下における考察など、極めて貴重な学びの時間となりました。とりわけ学生たちの姿からは、最終的な成果物として、世界に一枚しかないスポーツニッポン新聞の一面を手にできたことが、充実感に繋がったものと考えています。この場を借りてスポーツニッポン新聞社様関係各位に感謝申し上げます。

2021年11月2日

アパホテルと本学の社会連携授業が実現!元谷拓専務が独自の「自己表現法」を講演しました(10/6)

アパホテル専務取締役の元谷拓氏を特別講師に招いた社会連携授業が10月6日(水)、髙瀨真理子・短期大学部日本語コミュニケーション学科教授などが担当する「自己表現法」の授業のなかで実現しました。題して「自己表現やコミュニケーションの工夫が学べるトーク力とプレゼン術」。「出会って3分で『次もまた会いたい人』になる」や「自己紹介は3秒スピーチ」…さらには「自分らしさと自分の重要な武器を整備する」等々。独特ながらもインパクト抜群の「元谷メソッド」が、本人により惜しみなく学生に伝授されました。

お菓子もカレーも、旺盛なサービス精神

講師の元谷専務

講師の元谷氏は、どこまでも人を楽しませるのが好きな人でした。旺盛なサービス精神は、学生が相手でも健在。100分の授業時間中、有名パティシエのお菓子を配り、母親のサイン入り色紙を配り、ストラップ、自著本…、そして自身がプロデュースした自慢のアパカレーも。「実践女子大で(授業で)お菓子配った人いますかね。出入り禁止になりますかね」などと楽しそうに話しながら、ひとときも学生を飽きさせませんでした。

 元谷氏が、授業の中で垣間見せた自由で縛られない発想、そして圧倒的なユーモアセンス。それは元谷家のDNAなのかも知れません。というのも、母親はテレビでお馴染み、派手な帽子がトレードマークのアパ社長の元谷芙美子氏だからです。次男の拓氏によると、芙美子氏は「否定的なことを言われても、その切り返しが実にうまい」のだとか。かつて、毒舌で有名なテレビタレントにテレビ番組出演中、「誰がこんなババア連れてきた」と暴言を吐かれても、「(私は)ババアじゃないわ。アパよ」とすかさず切り返したエピソードも明かしてくれました。

講義を能動的に観察する学生も

他方、学生たちの授業に取り組む態度も見事でした。多くの学生が、元谷氏の講義を契機にこれまでの自分の自己表現を省みたのは当然として、その間に、逆に元谷氏の言葉や一挙手一投足を細かく観察する学生もいました。

▼「元谷さん自身の話の仕方や構成が本当に上手で、内容に引き込まれた。話をするだけでなく、持ってきていただいたプレゼントの数々を出すタイミングも上手いなと思った。内容的にはとても関心のある内容だったが、実物やテキストを適度に織り交ぜることで、さらに聞き手に興味を持たせるような内容だった」(反町瞬音さん)

▼「お話の途中での元谷さんの気配りも印象に残っています。それは、落ちている筆箱を見つけて拾っていたことです。お話している最中では気付きにくいのにもかかわらず、それに気付くところが素晴らしいと思いました。そのようなちょっとした気配りが自分の好印象にもなるし、相手から興味を持ってもらえるのだと気付きました」(西田清香さん)

後日、学生が提出した授業の感想です。いかがでしょうか。とりわけ、これら2人の学生の観察眼は秀逸です。元谷氏の言葉を理解するのに必死な「受け身な自分」がいる傍ら、その自分と元谷氏のやり取りを客観的に観察するもう一人の「能動的な自分」が、感想文の行間から感じられるからです。いわゆるメタ認知能力の高さがうかがえます。自分自身が行っている行動や思考そのものを認知の対象として、自分自身を客観的に認識する能力のことですが、髙瀨教授によると、「メタ認知能力の涵養は、前期の授業から一貫して重視してきた」とのことでした。

気が付けば机の上はプレゼントの山

「自己紹介は3秒で」に驚き

講義の合間にアパカレーもPR

学生は、この日の特別授業から実に多くのことを学びました。とりわけ、「自己紹介は3秒スピーチ」「話は面白くて短い方がいい」というプレゼン術は、多くの学生の共感や驚愕を集めたようです。例えば、

▼「いい印象を与えたいがために自分の趣味や好きなことをたくさん話していた。しかし聞く側になると、たくさん話している人ほど印象が薄かったり、印象を覚えていないことが多いのに気付いた」(田倉葵さん)
▼「自己紹介は相手を惹きつけるためにあり、自分を知ってもらうためではない。3秒という短い時間に相手の興味を引く一言が必要」(小高千晴さん)

 「そもそも自己紹介は何のためにあるのか」。元谷氏のシンプルな問い掛けは、学生の先入観を180度転換させるのに十分でした。

人よりずば抜けた武器を整備せよ!

また、「人より、ずば抜けたものがあるといい」というアドバイスを挙げた学生もいました。元谷氏は大学に通いながら専門学校にも通学。いわゆるダブルスクールで宅地建物取引士の資格を大学1年生時、当時としては国内最年少で取得しました。元谷氏は、自分の重要な武器を整備する意味を十分理解しており、その大切さを自らの体験を踏まえて学生に丁寧に説きました。例えば、

▼「元谷さんが宅建を大学1年で取ったように、人よりずば抜けたものがあるといいと仰っていた。私は今のところそれがないので、自分が得意なものや資格を見つけ、就活でこの人は他の人と違うなと思えるようにしたい」(鈴木梨音さん)
▼「私が最も最優先にすべきことは、自分の強味を見つけることだと思った。他の人と同じような強味では、面接などで自分を説明する時に相手に良い印象を与えられない」(齊藤紗佳さん)

 宅建の資格を取得したのは、元谷氏が「誰にも負けないものを学生時代に取りたかったから」と言います。この結果、「自分にしか話せない経験や知識を手に入れることが重要」と強調する元谷氏のアドバイスは、1年後に本格的な就職シーズンを迎える学生にとり、何よりの刺激となりました。

色紙に母親アパ社長の教え
教室の授業風景

「自己表現力」をさらに磨く

「自己表現法」の授業は、短期大学部日本語コミュニケーション学科の1年生を対象に、同学科の髙瀨教授のほか、大塚みさ教授、佐藤辰雄教授、西脇智子准教授が担当する必修科目です。前期に履修する「実践入門セミナー」や「日本語表現法」などで培った自己表現力をベースに、就職に向けた実践力をブラッシュアップすることを目指しました。

参加者全員の集合写真
担当の髙瀨教授

髙瀨真理子教授の話

元谷氏の講義を受け、後日、学生それぞれが面接に欠かせない自己紹介トークを考え、お互いに発表し合う機会を持ちました。例年に比べて、学生それぞれの自己アピール力が格段にレベルアップしていました。
元谷氏には、多忙のところ本科目で講義をしていただき、心より御礼申し上げます。

2021年9月15日

「人権意識」や「誠実・素直さ」を養う新人研修などを提案!サントリーHDと初めて社会連携授業が実現しました(7/2)

サントリーホールディングス株式会社の新入社員向け研修を本学の学生が提案する課題解決型授業(PBL)の最終プレゼンテーションが、7月2日(金)に行われました。本学とサントリーHDが協力して行う社会連携授業が、キャリア教育科目「実践プロジェクトa」において、今年度初めて実現しました。プレゼンでは、多様性や人権を意識したオーストラリア研修のほか、「誠実・素直さ」を養う研修、「デジタルデトックス」研修、「自らの仕事に価値を見出す」研修などが学生から提案されました。

最終プレゼンは1時間半にわたって行われ、4チームが登壇。「人権×新人研修」(4班)、「社会人としての心を育てる」(1班)、「現代の私たちが考える新人研修」(2班)、「『やってみなはれ』を育てる!~新入社員研修計画~」(3班)の順に各班がユニークな提案を発表しました。具体的な課題は、あらかじめサントリーHDから与えられており、各班は「会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められるものは何なのか、結論を発表して下さい」「それを踏まえ、これからサントリーに入社してくる社員に対する具体的な研修計画を提案してください」の2テーマに沿い、新人研修の意義や内容に関する議論を深めました。

豪研修で多様性を学ぶ

4班

このうち、人権に着目して、オーストラリア研修を通じた多様性を認める新人研修を提案したのは、4班です。同班は、企業人・社会人に求められる資質を▼協調力=コミュニケーション能力(発信力、受け取る力)▼対応力=明るく前向きな思考、理解力▼プラスα精神=求められたこと以上のことをする力▼物事を多角的に見る力-の4つにあると強調。サントリーHDの企業理念の「人と響き合う」「自然と響き合う」の精神を踏まえて、人権の多様性を受け入れられる人材づくりを提唱しました。

それによると、オーストラリア研修は障がい者やLGBTなどの人々と2回にわたり、現地で交流します。それぞれ一週間の研修期間中、ヒアリングやフィールドワークを行い、参加者同士でグループワークを実施。オーストラリアと日本の違いを見つけてもらい、プレゼンテーションをしてもらう予定です。海外交流を踏まえて、サントリーならではの新規ビジネスを提案してもらうきっかけづくりを狙いました。

ビフォー・アフター表に感心

こうした学生の提案に対し、サントリーHDからキャリアサポート室長の斎藤誠二氏、同キャリア開発部課長の阿部優子氏、同キャリア開発部新人研修担当の宮崎優さんが、各班のプレゼンを論評しました。

 4班の提案に対しても、例えば、阿部課長は、企業理念を発展させて人権に着眼した点について「やはり企業理念は、『何のために企業があるのか』『私たちは何のために事業をやっているのか』というところで、すごくこれから大事になる。ここに着目されたのは素晴らしい」などと評価。また、宮崎さんは新人研修の効果をビフォー・アフターの表に整理した点に注目し、「私も新人研修の担当。なので、研修を通して新人がどのように変わっていくのかということを強く考えてくれた点が一番いいなと思った」などと語りました。

 他方、課題や改善点も指摘されています。研修にもビジネス合理性が必要と注文したのは斎藤室長です。オーストラリア研修について「多様性の理由だけでオーストラリアに全員連れて行くことはできない。国内の研修でやるのに比べて多分30倍はお金がかかるし、当然リスクもある」と語り、「私だったら国内に世界中から来ている留学生を呼んで来て、そことセッションをやるかもしれない」などと話しました。

「誠実・素直さ」を養う研修を絶賛

さらに、サントリーHDをして「今までいろんな大学で、このテーマも授業でやってきたが、こういう研修方針を提案したのは実践女子大が初めてではないか」と高い評価を受けた提案が続きました。企業・社会人に求められるゴールに誠実さや素直さを掲げ、それらを養うための新人研修を行うと提案した1班です。同班が強調した誠実さ・素直さを養う研修方針は、グループ全体で社員4万人のメガ企業・サントリーHDの人事部や研修担当をして「すごくいい。本当にこの研修方針は来年から、うちのテーマにしたいぐらいだ」とうならせました。

それによると、同班は新人研修の目的を「社会人としての心を育てる」ためにあると強調。企業人・社会人に求められる資質(ゴール)に▼誠実・素直さ▼他者への理解・個性の尊重▼実践力-を挙げました。

 このうち、誠実さや素直さは、仕事を早く覚えたり、自分の考えばかりに固執して失敗したりしないため、また上司や同僚と良好な関係を築くため重要と指摘しています。

 そのためには、「自分の発言に責任を持つ」とともに、「言い訳や嘘を言わない」ことが大切と強調。自分の研修目標を発表する「宣言大会」を通して、「新人にプレッシャーをかけて自分を律する」とともに、「責任感を自覚させ、研修期間中、その目標を毎日意識するように促すことで、気持ちを持続させる」としました。

 併せて、「新入社員は先輩を見て学ぶ」と語り、上司に対しても誠実さや素直さを求めています。このほか、研修期間を3か月。費用は約5500万円と試算しました。

1班

「実践女子大ならでは」と評価

1班のプレゼンは総じてサントリーHDから高評価を受けており、例えば、阿部課長は「求められる力というのを整理して、それをどう研修につなげるかというところを、しっかりグループの中で考えてくれたということがすごく伝わってきた」などと発表の良かった点を挙げています。

 また、宮崎さんは「上司にも誠実さや素直さが必要という指摘は、非常に重要なポイントではないか」などと問題提起。斎藤室長も「プレゼン内容が、どう実施するかのHOWに流れちゃったのが、ちょっともったいなかった。しかし、そのHOWの説明も、いいところがたくさんあって、もしかしたらこれは実践女子大ならではの素晴らしさかもしれない。ここをさらにMUSTで深堀りしたら、もっと素晴らしいものになっていた可能性がある」などと1班のプレゼンを振り返りました。

デジタルデトックスを研修コンセプトに

2班

これに対し、2班は近年のSNSの普及により若者のコミュニケーション力の低下が気になるとして「デジタルデトックス」を新人研修のコンセプトに掲げました。デジタルデトックスとは、SNSやスマートフォン、コンピューターといったデジタル機器の使用から意識的に距離を置き、自然に触れたり自分と向き合ったりして、精神的・肉体的な疲労をリフレッシュしようとする試みです。

 サントリーHDは、同班の提案について「こういうテーマを出すと、どうしてもHOWのプレゼンテーションがメインになってしまう。ところが、このグループだけは、何をしたいのか、何故なのかというところを相当に議論した気配があり、そのバランス、ボリュームが半々ぐらいで、すごくいい」と高評価を与えました。

 それによると、同班は「現代の私たちが考える新人研修」をテーマに新人研修を構築しました。企業人・社会人に求められる資質として▼主体性▼協調性▼コミュニケーション力▼ビジネスマナー▼柔軟性▼想像力-の6つを挙げ、それぞれのキーワードに求められる要素を「こういうものが必要なのかと誰が見てもイメージできる」までにブレイクダウンした上で詳述しています。

 例えば、主体性について「自分の意思や判断にそって責任を持って行動すること」と「自らの行動がもたらす結果に責任を持つこと」などと説明。それをサントリーHDに当てはめて「やってみなはれ精神や挑戦を続けるという日々新たなことに臨んでいくなか、主体性がなければただの思いつきの行動になる。そうならないために必要な力」などと解説しています。

 その上で、2泊3日の合宿研修を提案しました。1日目の講義に続いて、2日目は山梨県内のサントリー3工場を見学、3日目は富士山に清掃登山を行うとしています。

富士清掃登山を激賞

2班のプレゼンに対し、宮崎さんと阿部課長は、「私たちの今回のテーマには『今、企業人・社会人を取り巻く環境を踏まえて』という視点もあった。このグループは必要な資質だけでなく、ちゃんと環境も考えてくれた」「企業人・社会人に求められるスキルを、ちゃんと言葉化している。その言葉化のクオリティがとても高い」とそれぞれ高評価を与えました。斎藤室長も「主体性とか協調性とかコミュニケーション力というと、誰もが思わず頷いてしまうけれども、本当はどういうことなのか。何を意味しているのか。このグループはそこを相当議論した気配があって、それを具体的に書き込んでいる」と宮崎さんと阿部課長の称賛に同調しています。

 このほか、富士山の清掃登山という提案も、サントリーHDの皆さんの心に刺さったようです。例えば、斎藤室長は「富士山に登るだけでなく清掃活動するというのは素晴らしい提案」と激賞。「これはもう『人と自然と響きあう』というサントリーの基本的な企業コンセプトにもかなうし、本当にこれ取り組んでみようかと思うぐらい。山頂まで行かなくても、途中まででいいので」などと語っています。

完成度が最も高い提案

最後の発表は、3班です。同班の提案は「研修提案という意味でのプレゼンテーションの完成度がかなり高い。おそらく4つのプレゼンのなかで、一番高いのではないか」とサントリーHDが瞠目する内容のものとなりました。

 それによると、同班は、最近の若者の傾向を「給料のため、そんなに頑張らなくても構わない」という若者が多いと分析しています。その上で、社会人に求められる能力を▼対人感受力=相手の考えや気持ち考える力▼成長力=失敗しても解決策を逃げずに見つける力▼やりきる力=目標を設定し継続する力▼論理的思考力=解決の糸口を必ず見つける力-の4つにあると指摘しています。

 具体的には、5週間の新人研修を提案。ビジネスマナー研修(一週目)やサントリーについて学ぶ研修(二週目)、新入社員による商品プレゼン(三週目)などを通じて、「自らの仕事に価値を見い出し、責任を持って取り組める人材を育てる」ことを求めました。これらの研修を行うことで、「環境にも配慮できる 優秀な人材が育成され、世界を視野に活躍できると思う。このように積み重ねることで、世界を視野にした事業拡大、SDGsにも配慮できる人材育成が可能になる」などと、未来のサントリー像を描きました。

3班

「自らの仕事に価値を見出す」に共感

3班のプレゼンに対し、宮崎さんや阿部課長は「自らの仕事に価値を見出す」という仕事観に注目。宮崎さんは「仕事は給料のためで人並みに頑張る程度で構わないという人が多い」という表現を取り上げ、「結構、新入社員研修とかで学生気分が抜けていない人がいる。そこもちゃんと冒頭に書いてもらった」と指摘。宮崎さんも「仕事を通して社会に影響するという崇高な目的をセットした点には、すごく共感を覚えた」などと語りました

 また、阿部課長や斎藤室長は、研修体系を各週ごとにテーマと目的、施策と整理した点を評価。それぞれ「各週のテーマが明確で、それぞれの目的を達成するため、施策に落とし込むというスタイルに説得力があった」「具体的な研修提案が、1週目、2週目という形で、非常によくまとまっていた。何のためにということも含めて、完成度が高い」などと振り返りました。

 その上で、斎藤室長は惜しむらくはと改善点も指摘しています。プレゼンの2ページ目や3ページ目の「社会を取り巻く環境」や「社会人に求められる能力」などの分析について、「ここをもっと掘り下げていたら、さらに説得力のある素晴らしいものになったのではないか。この後のHOWにすぐに入ってしまって、このHOWの完成度が高いだけに、もったいなかった」と語りました。

新入生17人が挑戦

サントリーHDの皆さんと一緒に

同授業の指導教授は、本学文学部国文学科(キャリア教育担当)の深澤晶久教授です。新入生を対象に昨年度新設された前期カリキュラム「実践プロジェクトa」の一環として行われ、今年度は1年生17人が履修しました。

 「一般社団法人フューチャースキルズプロジェト(FSP)研究会」が監修する初年次教育プログラム「主体性講座」をベースに組み立てられており、1グループ4~5人の4班がグループ単位で課題解決に取り組みました。

深澤晶久教授の話

サントリーホールディングス様からの課題は、とてもレベルの高いお題であったと振り返っています。
 しかし、サントリーホールディングス齋藤さん、阿部さん、宮崎さんの厳しくも愛情あふれるアドバイスやご指摘をいただき、学生の提案内容は、とても高く評価いただけるものに仕上がりました。ご支援に改めて心から御礼申し上げたいと思います。
 そして、学生たちは、極めて短期間であったものの、この授業の目指すゴールである「主体性を磨くこと」に向けて、大きく成長してくれたと振り返っています。このテーマを考えていくことは、学生が大学時代に何に意識して学びを深めておけば、社会人として通用するかの事前研究でもあるわけです。言い換えれば、これからの4年間、「いかにして学ぶかを学べる」ということになる、とても貴重なお題であると感じています。学生の真摯な取り組みに敬意を表したいと思います。

指導教授の深澤先生
2021年7月29日

コロナ禍時代の新コスメ製品を学生が提案!資生堂ジャパンと社会連携授業で最終プレゼンを行いました(6/18、6/25)

ニューノーマル時代にふさわしい資生堂の新製品を学生が考えるPBL(課題解決型)授業の最終プレゼンテーションが、資生堂ジャパン株式会社(東京都港区)と本学の社会連携授業として開催されました。同社プレミアムブランド事業本部の渡部卓明氏を特別講師に招聘(しょうへい)。12チームの学生がコスメ新製品のアイデアを競い、新型コロナウイルス感染拡大(コロナ禍)を契機に化粧品業界が直面する窮状の課題解決を目指しました。

 資生堂ジャパンとの社会連携授業は、大学2年生が対象の共通科目「実践キャリアプランニング」のなかで実現しました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が指導教授です。今年度は62人が履修しています。
 最終プレゼンは、6月18日と同25日の2回に分けて実施、6チームずつ発表しました。最終プレゼンに先立ち、各チームは渡部氏から「ニューノーマル時代のメーキャップ商品を開発し、その販売促進計画を考えなさい」という課題を与えられており、1チームが5~6人が約6分間、コロナ禍時代のコスメ課題解決に向けた提案を行いました。

資生堂ジャパンの渡部さん

コロナが生んだ「ニューノーマル時代」とは?-「マスクの時代」、なぜか「ジェンダーレス?」

 ただ、プレゼンを終えても、学生がホッとする暇(いとま)はありませんでした。渡部氏との質疑応答が引き続き行われ、資生堂の現役ビジネスパーソンが学生のプレゼンの弱点や矛盾点を鋭く質したからです。答えに窮した学生が立ち往生する場面も、一度や二度ではありませんでした。

【10グループ】

 そんな質疑応答の真剣勝負は、12チームのトップを切り発表した10グループのプレゼンでスタートしました。10グループは、ニューノーマル時代をマスクの時代と捉え、マスクによるメイク崩れを防ぐティントタイプのリップ「餅紅」を提案しました。学生との質疑応答の中で、渡部氏の関心は学生が考えるニューノーマル時代の定義に向けられます。

(渡部)「ニューノーマル時代を、マスクの時代と決めたのはなぜ?」
(学生)「コロナ禍になり、外に出るのにマスクが手放せないようになり、それで外出の機会が少なくなったのが、ニューノーマル時代だから」
(渡部)「今、国の政策もあり、どんどんマスクが普及している。感染が抑えられて、マスクがいらなくなったら、どうするの?」
(学生)「もちろん、マスクのある時代にも対応できると思うし、マスクのない時代にも落ちにくいリップは需要があると思う」
(渡部)「最後の質問です。マスクをしているのに、なぜ口紅を付けないといけないの?リップを付けないといけないの?しかも色付きで?」
(学生)「マスクをしていても外す瞬間はある。例えば、食事の時間。やはり、せっかく化粧をしたのに、ご飯で外した時に、すごく(化粧が)べろべろになっていたら、みんな嫌だと思う。そんなマスクを外した時も、きれいな顔になっていたいという意味です」

10班

 渡部氏は、10グループのプレゼンを「非常にシンプルに論理が組み立てられている」「楽しい提案」などと評価しつつも、改めて提案の意義を問い直します。それは「この新製品のリップを使うことをお客さんは何を喜んでくれるの。化粧が落ちないことや、ずれないことが、本当に嬉しい事なの。それって、いつも夏になると必ず言われることじゃない?」。その上で、学生が考えるニューノーマル時代の意義についても、「新しい時代や生活習慣が生まれて来ることをどう捉えるか。これからのビジネスチャンスとして、みんなが気付かないところにも、もう少し考察というか、観察を集中させると、もっと違うアイデアが出て来たような気がする」と論評しました。

【9グループ】

 10グループだけではありません。各チームが提案の土台とした「ニューノーマル時代」の捉え方は、質疑応答の中でも、とりわけ重きが置かれ、丁寧な検証が加えられました。このうち、ニューノーマル時代を「ジェンダーレスの時代」と定義して異彩を放ったのが9グループです。彼女らのプレゼンは、提案内容に加えて、ジェンダーレスの内容も議論されました。

 具体的には、9グループの提案は、ニューノーマル時代を「コロナとの共生」や「ジェンダーレス」な時代と定義したところに、他グループとの大きな違いがありました。加えて、その具体化に向け、9グループはアイシャドウとチーク、リップが一体化した3ウェイのマルチユースコスメを提案しています。衛生面や大きさの使いやすさに加えて、価格帯、男女関係なく手に取ってもらえるような配慮することで、「ニューノーマル時代にマッチしたメーキャップ製品を目指した」と説明しました。

 その際ですが、学生らはニューノーマル時代をジェンダーレスと規定した理由を「男性がコスメに手を伸ばす製品を考えたかった。そこで男性のメイクは今後減ることはなく、むしろ増えるはずと考え、ニューノーマル時代をジェンダーレスと考えた」と問題提起しています。

9班

 これに対し、渡部氏は学生のニューノーマル時代に対する捉え方を「コロナ流行のパンデミックがもたらした生活環境、生活習慣の変化と単純に捉えるべきではない」と論評しました。併せて、「『新たな常識が発生する時代がこれからやってくるよ』『その中の一つに、ジェンダーレスもあるよ』みたいな流れをつくり、説明すべきだったのでは?」と指摘。その上で、「これからのメーキャップの流行の中で、お客さんに受け入れてもらうとか、しかも男性も使っていくようなニューノーマル時代が、本当にトレンドになるのか。もう少し考えてみることが、皆さんのアイデアを深めていくことになる」と続けました。

カオスな提案内容をバッサリ!-「不思議ちゃん?」や「一体どっち?」

 プレゼンの提案内容についても、容赦ない渡部氏のチェックが入ります。内容がテンコ盛りすぎて相反する要素が混在するプレゼンのほか、メーキャップ製品なのかスキンケア製品か途中で分からなくなった提案、いつしかマスク販売に傾いたメーキャップ製品…。いずれも渡部氏により、カオスな提案の整理・検証が行われました。

【2グループ】

 このうち、内容にトレードオフな要素を盛り込みすぎ、「不思議ちゃん」と称されたのは、2グループでした。2グループは、時短メイクとして「塗って剥がせるアイシャドウ」を提案しています。お湯で流せてメイク落とし不要、細く書きやすいペン型の採用などの時短テクニックを提唱しました。

2班

 翻って、渡部氏から「不思議ちゃん」と指摘された部分は、顧客ターゲットや販促計画、ユニセックスのパッケージに関する説明でした。というのも、ターゲットを大学生から若い社会人とするならば、現実は「大学生活と社会人生活は、明らかな変化がある」からです。また、販促計画も「ECサイト中心としながら、ドラッグストアやバラエティーショップの売り場が大事」などと強調。加えて、パッケージも「男性も手に取りやすいものにする」と強調したことが、「『女性にとって化粧とは』を全体のトーンとしていたはずなのに、そこにいきなり男性モードが入ってきちゃう不思議さ」と指摘されてしまいました。

 渡部氏によると、同グループのプレゼンの不思議さは「相反する要素がいくつか、ぐしゃと、一つの中に入っているため、あれ?って思ってしまう」ことが原因とか。このため、「(相反する要素を)どっちか一つに決め、決めた方に必要なことだけをまとめて、もう一回プレゼンテーションをまとめ直した方がいい」と助言を受けました。そうすれば「本当に塗って剥がすアイシャドーが必要なのかどうかという本質が、もう少しクリアになると思う」とアドバイスを受けています。

【11グループ】

 また、「提案したのは、メーキャップ製品かスキンケア製品かどちらなの?」と問われたのは、11グループでした。11グループは、マスクによる肌荒れを防ぐ保湿効果のある製品として、スティックタイプとチューブタイプの2種類の製品展開を提案していました。これが「メーキャップ製品の開発が課題のはずが、結論として出てきたのはスキンケア製品ではないか」と受け止められ、説明を求められました。

 学生の答えは、「どちらも兼ね備えているが、保湿をメインとしているのでスキンケア製品と捉えて欲しい」というものでした。渡部氏は、そうであるなら「どこかで『これからのメーキャップのあり様はこのように変わる』という説明を入れないと、論理破綻を起こす」と指摘しています。

 加えて、プレゼンで製品計画のスライド中にあった「沢山の声」についても、渡部氏は「これは誰の声?」と質問。「私たちグループの中の声です」という学生の返答に「周りの人とか、友達に聞いてみなかったの?」と畳み掛けました。渡部氏が言いたかったのは、「(製品企画で)一番大切な、お客様が何を求めているのかというところが、自分たちの欲しいものを列挙しただけで終わっている」という趣旨のようです。

11班

【12グループ】

 同様に、12グループにも二者選択な質問が向けられました。「提案の中にメーキャップとマスクの2つの製品が出てくるが、この企画でどちらが今より売れるようになると思う?」。12グループはアイシャドウとマスクを一体的に扱い、「襲色目(おしいろめ)」で個性を出すメーキャップ製品を提案していました。渡部氏が教室の学生に挙手で意見を求めたところ、「メイクでなくマスク」という声が大勢。渡部氏は「マスク用品屋さんが喜ぶ提案だとは思うが、メーキャップが売れる理由がちょっと見つからない」と論評しました。

12班

 内実を明かせば、学生たちは「他のグループとの違いを、どうしても出したかった」のだとか。「『マスクも一緒に』というアイデアが出た途端、飛びついてしまった」と言います。渡部氏は「着眼点は面白いが…」としながらも、「結果が、私が期待していたものとマッチしていなかった」と残念がりました。

プロの創造力も大いに刺激!-「サボリーノ」の再来?自分受けメイク?

 もちろん、渡部氏のようなプロの感性や創造力をいたく刺激したプレゼンもありました。時短メイクの金字塔「サボリーノ」の再来を彷彿させる製品の提唱や、コロナ禍時代だからこその「自分受けメイク」の提案などです。

【6グループ】

 それによると、渡部氏をして「右側の脳みそを刺激してくれた」と評価された提案は、6グループの時短メイク「ペーストアイシャドウ」です。6グループは「タトゥーシールみたいにサッと貼れるアイメイクがあればいい」と考え、同製品を考案。渡部氏から「時短コスメのサボリーノのようになる可能性がある」と高評価を受けました。

 サボリーノは、「サボってもキレイでいられる」を実現する時短コスメブランドです。例えば、2015年に誕生した朝用マスク「目ざまシート」は、寝起き肌に60秒貼るだけで「洗顔+スキンケア+保湿下地」を完了することができます。

 このため、ペーストアイシャドウも「テレワークとかオンライン会話の前にペタッと貼り、完璧でなくても化粧している印象を、画面を通じて相手に与えられるなら、この製品のアイデアが活きる余地がある」と渡部氏から評価されました。実際、学生のアイデアがヒントとなり、「サボリーノは朝にマスクをぺたって顔に貼るだけ。これと同じぐらいインパクトのあるものができないか」という自身の創造力を駆りたてられたと明かしました。

6班

【8グループ】

 他方、8グループは、「良い思い出にいいティントを」をテーマに「自分受けメイク」を楽しむティントの新製品を提案しました。コロナ禍で化粧品全体の売上高が大きく落ち込むなか、それでも8割がマスク着用時もリップを付けているというデータに着目。外出自粛要請時もリップを付ける理由のトップが「自分が楽しむため」である事実を重視したといいます。

8班

 ただ、プレゼンの内容は、第三者に理解してもらうには、いささか難解すぎたようです。渡部氏は「『良い思い出』と『ティント』、『自分受けメイク』を楽しむお客さんの意識の繋がりが理解できない」と繰り返し尋ね、学生と質疑を重ねました。ようやく「何となく想像できる世界で言うと」と断りながら指摘したのは、「とりあえず自分が楽しんでメイクをするみたいな世界があるのは、何となく想像できた。(だとすれば)そこに徹底的にこだわる気持ちがあるのであれば、それはそれで一つのビジネスチャンスだ」という見解でした。

 「やはり、いい思い出を目指すのか、あるいは自分受けの何か新しいメーキャップを徹底的に考えるのか、その切り口の曖昧さがプレゼンで露呈した」と渡部氏は語りました。その結果、8グループのプレゼンを「見た目には非常に斬新だけれども、よくよく考えてみると、今一つビジネスとして成立するかどうか、ちょっと考えなくちゃいけない、危険なにおいのするプレゼンテーションでした」と論評しました。

「SNSは本当に万能?」-販促計画の効果を検証!企業コラボにも盲点あり

 新製品コスメの提案ばかりではありません。各チームとも、新製品の販売促進計画にも工夫を凝らしています。コロナ禍で実店舗販売が思うにまかせないなか、いずれのチームもSNSやECショップなどオンライン手段をフルに動員したのが特徴です。

 ただ、今回は販促手段として各チームが当然視するSNS活用について、その在り方が議論されました。実際、12グループのうち11グループが販売宣伝手段にSNS活用を盛り込んでいました。渡部氏は、今どきの学生の「常識」にも懐疑の目を向け、「みんなツイッターを使えば必ず情報は拡散できるみたいなことを言うが、本当にそうなの?すべて無視されてしまうツイッターもあるのではないか?」などと問い掛けました。

【5グループ】

 例えば、5グループです。5グループはZOOM映えを意識したマルチパレットやリップの製品化を提唱していました。しかし、改めて「通信販売、ネット販売をする理由は何か?」と問い直されました。

 学生らが、知恵を絞った答えは次のようなものでした。「現在、実店舗での売り上げが減っている。なぜ実店舗での売り上げが減っているかを考えたら、あまり人と接触したくないからだと思う。接触せずに購入してもらえるのが、ネット販売と考えた」。いささか無難な返答に、渡部氏もすかさず畳み掛けます。「皆さんは、化粧品を購入する時に試さずに買えるの?」。思わぬ問い返しに、学生らは顔を突き合わせて、しばらく鳩首会談。「今はテスターなどが使えないところが増えてきているので、製品などをインターネットで買うことが多い」などと、何とか切り返しました。

5班の2人
5班の3人

 渡部氏は、課題提示に際して「頭がちぎれるくらい考えなければいけない」と学生に呼び掛けていました。渡部氏は、このような質疑を経て「何となくみんなが考えたアイデアの奥底にあるストーリーが、ようやく浮かび出てきた」などと説明。「そういうところの互換関係みたいなことがきちんと整理されていないと、なぜこの方法を採るべきなのかということが、伝わってこない」などとアドバイスしました。

【4グループ】

 販売促進計画の企業コラボも、渡部氏の厳しいチェックを受けました。。その対象の一つが、4グループが提案する、まつ毛の超カールキープ製品「ラッシュアップJJ」の販促計画です。同グループは、製品のターゲット層に定めた10代~20代に対する販促の一環として、テーマパーク「サンリオピューロランド」(東京都多摩市)とコラボレーションを計画していました。

 サンリオコラボの是非を学生と検討するに当たり、渡部氏は自らのサンリオ体験を学生に紹介。それによると、サンリオピューロランドのファン層は、「ラッシュアップJJが顧客層として想定する10代~20代ではない」。その上で「キティちゃんのファンを総称してキティナーというが、調べると40代~50代が多い。皆さんがターゲットとする10代~20代とは少し違うのでは?」と続けます。渡部氏によると、「単純にこうしたコラボで強いのは、ゲームとのコラボが断トツ」なのだとか。「そこを、あえてサンリオとコラボするというところに何か意味があるなら、そこをもっと狙いとして深掘りしていかないと販促計画としては滑ってしまう」と注文しました。

4班

【7グループ】

 一方、販促計画の内容で評価が高かったのは、7グループの計画です。7グループは「フレッシュ、プロテクトタイプ」と銘打ち、ミストで化粧仕上げを行う新製品を提案しました。販売促進計画も、販売前と販売後分け、販売前に行うインスタグラムやLINE、ツイッター。販売後もインフルエンサー活用のほか、LINE広告や公式インスタグラム・ツイッターなどのSNSを使った抽選プレゼントを行うとアピールしています。

7班

 翻って、7グループのプレゼンは、販売促進計画の説明にスライド6枚を使うほど、力を入れているのが特徴です。ただ、渡部氏は同グループのプレゼンを「一個一個のピースというか、要素がうまく組み立てられている」と評価しつつも、SNS活用に限れば「皆さんは、インスタグラムとかLINEで宣伝するというが、見たくなるインスタ、見たいと思わないインスタとかあるのではないの?」と問題提起。その上で、「普通にスルーされちゃうインスタと、そうでないインスタとの違いを少し研究してみてはどうか」と注文しました。

 また、7グループの販促計画は、インスタグラムやLINE、ツイッターなどをフル活用するSNSの種類の多彩さも特徴です。渡部氏はSNSの数の多さについても触れ、「やはり、特性の違いを意識した活用をすべきではないか。そういう視点を持って考えれば、もう一段か二段、いいアイデアが盛り込まれたプレゼンになる」とアドバイスしました。

「エッセンスが存在」「メイクの新たな意味が感じられた」-最優秀の資生堂賞

 最優秀の資生堂賞は、こうした白熱した議論を経て、18日のプレゼン前半は1グループ、25日の後半は3グループに贈られました。渡部氏によると、1グループは、そのプレゼンが「普通に聞くと、ちょっとつまんない提案ではあった」。しかしながら、「その中に何かエッセンスが存在していて、そこを資料の中に盛り込んでいた」と言い、評価できると語りました。
 これに対し、3グループのプレゼンは「提案としてしっかりしていた」点が、高評価につながりました。加えて、「全般を通して、これからの新しい時代をどう想定しているかが感じられ、コロナ禍のなか、メーキャップをする新たな意味に何かしら手を入れようとする行動が感じられた」などのプラス評価も考慮されました。

【1グループ】

 このうち、1グループはマスカラやリップティント、メイクキープミストを提案しています。それぞれ▼マスカラは、フィルムタイプでカールキープされるがお湯で落ちる▼リップティントは、保湿成分配合でマスクをしていても落ちず、付かない▼メイクキープミストは、マスクによる崩れ防止や乾燥・肌荒れ防止-などが特徴です。

 渡部氏は、1グループの提案に「皆さんのプレゼンには、気付いているかどうか分からないが、新しい問題の発生と、それに対してビジネスチャンスがあるということに、ちゃんと触れている」と他グループにはない評価を与えました。というのも、「コロナ禍でメーキャップをしなくなれば、それを放置すれば、化粧品業界は潰れてしまう」と強調。「やはり別の形でメーキャップをするためのモチベーションとか意味を、お客さんに与えていく必要がある」と続けました。

 また、渡部氏が提案に対して「新しいモチベーションを作り出すトライを感じた」ことも、学生には幸いしたようです。学生は、今回の評価に「おうちの中やリモートでは、メイクが濃くても画面上だと相手には分からない。そういうところで出来るメイクを楽しんでもらいたいと提案した」と振り返ります。余談ながら、これは8グループが提案した「自分受けを楽しむメーキャップ」と、どこか相通じるアイデアともいえます。

1班

【3グループ】

 一方、3グループが提案したのが、男性向け化粧品の展開です。例えば資生堂の調査などによると、メンズメイク未経験者の約9割が「してみたい」(20~50代男性)と考えており、女性も約9割が「メンズメイクに抵抗なし」と回答しています。同チームの提案は、こうしたメンズメイクに関する最近の男女の意識の変化に注目。それをベースに提案を組み立てたといえます。

3班

 それによると、質疑応答の際に議論されたのが、男性がメイクをする意味でした。例えば、渡部氏は「なぜ男性がメーキャップ製品に興味を持ち、(女性からみても)使わないといけないと思うか」などと学生に問い掛けています。学生が「メイクの意味は、人との関係性の中で存在する自分の自己表現だから」と返答すると、すかさず渡部氏も「メーキャップは、人と人との関係の中で存在していることに意味がある」などと語り、学生の意見に同意。「おそらくニューノーマル時代は、人間関係が変化する中で、自分がどう表現すればいいかを模索しなければならない時代だ」などと自説を展開しました。

 続けて、渡部氏はプレゼンの構成の変更を学生に提案します。即ち、「メイクによる効果を列挙したスライドを、メンズメイク未経験者の9割がメイクをしたいとする円グラフのスライドの直後に持ってきてはどうか」。その上で、「(入れ替えた後で)すべてのストーリーを考えてごらん」と提案しました。それで、どんな効果が期待できるのか。渡部氏は「具体的に、どういう製品にしなければならないか、すべてが変わってくる」などと語り、「もっと皆さんのアイデアに張りが出てきたり、思わぬ考えや新しい発見が出てきたり。そんな違ったアピールができそうな感じがした」と強調しました。

集合写真①
集合写真②

資生堂・渡部卓明氏の話

 皆さんが、これから社会に出てマーケッティングとか、そういった仕事をする素晴らしさは、何か一人のアイデアが、組織の中の隣に座っている人とか、同じグループで働いている人たちを動かし始めることにあります。そして、グループの意思が部門の意思となり、それがやがて事業本部だとか、会社の意思になり、だんだん世の中に広まっていく。最終的には、たった一人が考えたことが、数十万、数百万の生活者とか影響を与えていく仕事に、これから皆さんは携わるチャンスがあるわけです。これは素晴らしい機会だと思います。是非、これから学ぶ時間が数年間あると思いますが、大学の時間を使っていただいて、社会でまた楽しい経験ができるように頑張っていただきたいと思います。

深澤晶久教授の話

例年、本授業の後半では、企業にご尽力いただき、PBL型のワークショップを実施しています。今年は、例年に比べ、学生の授業への取り組み意欲の高さを感じたことから、よりリアルなテーマに挑んでもらいました。結果としては、私の期待を上回るアウトプットがあり、充実した授業となりました。対面でスタートし、途中オンラインに切り替わり、そして終盤、再び対面と、目まぐるしく環境は変わりましたが、学生達は、その期待に見事に応えてくれたと振り返っています。そして、何より、資生堂渡部氏の鋭いフィードバックもあり、学生が対応に苦慮する場面もありましたが、渡部氏が、学生ではなく、資生堂の社員のように応対してくれたことに感謝するコメントも多く、授業のためのPBLではなく、いわばインターンシップレベルの内容で実施出来たと思います。資生堂の渡部様に、心から感謝いたします。

深澤先生も対面授業で熱がこもる

2021年6月18日

株式会社オリエンタルランドとの社会連携授業がスタートしました!東京ディズニーリゾートの課題解決に学生が挑戦します(6/8)

 東京ディズニーリゾートの運営会社「オリエンタルランド」と本学がタイアップした社会連携授業が6月8日(火)、スタートしました。本学の8チームが同社の課題解決に挑戦します。講師の横山政司・同社フード本部フード統括部長は、ZOOM画面を通して「感動する提案を待っています」と学生たちへの期待感を表明。最終プレゼンテーションは、6月29日(火)に行われます。

課題は、フード客単価の「最大化」

 授業のキックオフに際して、横山部長はオリエンタルランドのミッションを学生たちに提示しました。「パーク内でのフード客単価を『最大化』させる施策を提案せよ」がそれです。背景には、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、2011年3月の東日本大震災、2019年秋の台風15号・19号被害など、近年の災害リスクの増大があります。感染症や地震、豪雨など入園者数に与えるリスクが増すなか、同社には入園者数よりも客単価アップを重視する戦略への転換が求められています。

 同社フード事業の2018年度売り上げは763億円。2018年度外食上場企業売上高ランキング(フードビジネス総合研究所調べ)と比較すると、同ランキングの20位以内に入り、餃子の王将の王将フードサービス、カッパ寿司のカッパ・クリエイト、ケンタッキーフライドチキンの日本KFCホールディングスなど、外食大手と売上高で肩を並べます。テーマパークビジネスの飲食部門が、上場する外食産業と比肩する売上高を誇ること自体に、まず驚かされます。

評価ポイントは、「面白いこと」

 横山部長から、提案の評価のポイントとして「面白いこと」、「説得力があること」、「情熱にあふれていること」の3つが提示されました。「説得力があること」や「情熱にあふれていること」は、プレゼンで企画を通す上で言わずもがなの条件ですが、「面白くなければならない」という条件は、かなりハードルが高いといえます。

 というのも、横山部長は、同社のフード部門は「客単価アップに関しては、これまで実現可能なものはすべて実現してきた」と語ったうえで、「我々が考えたことがない提案」とハイレベルな期待を求めているからです。また、「ヒントはフード業界以外にあるかも」と、幅広い業界に視野を広げて提案を検討することも求めています。

オリエンタルランドのオフィス外観

 社会連携授業は、文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が担当する共通科目「キャリアデザイン」の中で実現しました。対象は学部を問わず3~4年生。今年度は、3学部6学科の45人が履修しています。

 講師の横山氏は、1991年に同社入社。今年度で入社30年目になります。これまでテーマパーク戦略、経営戦略、採用等のマネージャーなどを歴任し、2015年から人事部長も務めました。この日のキックオフ授業の講義は「オリエンタルランド課題解決プログラム」。学生がミッションのグループ討議を開始するのに先立ち、オリエンタルランドの概要や歴史、フード事業の現状、これまでの客単価アップに向けた取り組みなどが説明されました。

講師の横山部長

深澤晶久教授の話

 毎年、この授業にご支援をいただいていますが、今年は、さらにリアルな経営課題への挑戦の機会をいただきました。新型コロナウイルスの影響を大きく受けたオリエンタルランド社にとって、今後の継続的な発展を取り戻すためにも極めて重要な経営課題の一つであると考えます。いよいよインターンシップも始まるこのタイミングでの企業課題解決に向けての授業は、学生にとって極めてタイムリーであり、深く企業を研究することの必要性を体現できるものと考えます。