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2021年6月11日

「社会人に求められるものとは」を考察!!サントリーHDの社会連携授業で 新人研修計画を提案します(6/4)

企業の課題解決に学生がチャレンジする社会連携授業が6月4日(金)、オンラインで開催されました。サントリーホールディングス株式会社と本学が行う連携授業は、今年度が初めてとなります。

新型コロナウイルス感染拡大(コロナ禍)に伴い政治経済・社会情勢が激変するなか、「社会人やビジネスパーソンに求められるものは何か」を学生が考察。これを踏まえ、サントリーHDの新入社員向け研修計画を提案します。7月2日(火)に最終プレゼンテーションが行われます。

サントリーの新人研修計画を提案へ

授業のキックオフに際して、サントリーHDから今回の社会連携授業の具体的課題が示されました。「会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められるものは何なのか、結論を発表して下さい」と「それを踏まえ、これからサントリーに入社してくる社員に対する具体的な研修計画を提案してください」の2つです。サントリーHDで行われている実際の研修内容に拘泥することなく、学生目線の斬新で自由な発想が期待されています。
 
 サントリーHDキャリアサポート室長の斎藤誠二さんと同キャリア開発部新人研修担当の宮崎優さんが、社会連携授業のパイロット役を務めるほか、同キャリア開発部課長の阿部優子さんが次回以降、オブザーバー参加します。斎藤さんは、この日の授業でミッションの趣旨や、具体的な研修計画を提案するまでの展開ステップなどを説明。「仕事はアイデア勝負ではありません。課題の本質をみなで深く議論することが重要です」と学生に語り掛けました。

東京・お台場のオフィス
サントリーHDの魅力を説明する宮崎さん

新入生17人が挑戦

授業は、新入生を対象に昨年度新設された前期カリキュラム「実践プロジェクトa」の一環として行われました。指導教授は、本学文学部国文学科(キャリア教育担当)の深澤晶久教授です。今年度は1年生17人が履修。1グループ4~5人の4班に分かれて、グループ単位で課題解決に取り組みます。
 
 前期カリキュラム「実践プロジェクトa」の中で企業と行う社会連携授業は、近畿日本ツーリスト首都圏に続いての開催となります。「一般社団法人フューチャースキルズプロジェト(FSP)研究会」が監修する初年次教育プログラム「主体性講座」をベースに組み立てられており、同講座は「学生の主体性を引き出し、これからの大学での学び方を学ぶ」授業として本学のキャリア教育に活用されています。

深澤晶久教授の話

「実践プロジェクトa」の授業も後半戦に入ります。後半ご支援いただけるのはサントリーホールディングス様です。学生にとってもとても身近な企業、学生の中には、サントリーさんの飲料など商品に関するお題を想定していた学生も多く、サントリーホールディングス様からの課題は、とても難しいと思います。しかし、このテーマを考えていくことは、学生が大学時代に何に意識して学びを深めておけば、社会人として通用するかの事前研究でもあるわけです。
言い換えれば、これからの4年間、「いかにして学ぶかを学べる」ということになる、とても貴重なお題であると感じています。学生の挑戦に期待したいと思います。

2021年6月7日

新聞記事から最新の就職トレンドを読み解く!「日本経済新聞」と社会連携授業を行いました(5/18)

新聞の経済記事から最新の就職トレンドを読み解く社会連携授業が18日(火)、「日本経済新聞」の村山浩一氏を講師に招いてオンラインで行われました。村山氏は、新型コロナウイルス感染拡大(コロナ禍)も踏まえて、企業のアップツーデートな採用事情を紹介。学歴フィルターなど本学学生に関心が高いテーマも取り上げ、企業の採用行動を解説しました。

社会連携授業は、文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が担当する共通科目「キャリアデザイン」の中で実現しました。日本経済新聞社と本学の社会連携授業は、今年度で3回目となります。対象は学部を問わず3~4年生。今年度は、3学部6学科の45人が履修しています。
 
 講師の村山氏は、日本経済新聞社人材教育事業ユニット部長の役職にあり、早稲田大学の非常勤講師も務めています。この日の講義は「人生100年時代の『働く』を考える」。3年生の就職活動がこれから本格化するという今のタイミングを狙い、①今はどんな時代?②企業の今昔③私たちの給料④変わりゆく採用市場⑤メディアテラシー-の5テーマについて分析や解説を行いました。時折、ZOOMのチャット機能も駆使しながら学生たちの反応を確認、双方向による授業が試みられました。

ZOOMで講義する村山氏

ESや自己PR動画にAI判定も

「優秀な学生 争奪早まる=内定率、昨年上回る-コロナ下 就活解禁」(2021年3月2日朝刊)
 
 記事は、2022年春卒業予定の大学生らに対する企業の会社説明会が3月1日、解禁されたことを受けたものです。村山氏は同記事をもとに、今年度の就職活動の特徴を解説。最近注目を集めている選考手法を取り上げ、「リファラル採用やジョブ型採用、AI判定、このあたりが今年度の就職戦線でもキーワードになっているのではないか」と語りました。
 
 このうち、リファラル採用は今、産業界で広がっており、東急リバブルなどが採用。社員に有望な知人や後輩を紹介してもらう制度です。また、ジョブ型採用はKDDIなどが採用していると述べました。ジョブ型採用は仕事に対して専門的技能を持つ人を採用します。

他方、AI判定補助は、野村證券などが採用していると紹介しました。エントリーシート(ES)や学生の自己PR動画などをAIが解析、選考をサポート補助するのが特徴です。村山氏によると、実は「AIで判定すると、ESの合否判定は1秒で、瞬間で分かる」とか。以前、さるネット企業に聞いた話だそうです。そのせいか、実際はかなりAIで合否判定する企業が増えているにも関わらず、その場合でも「社員を介さずに、機械で合否判定していると分かると(受験生には)感じが悪いでしょう?」と言い、「表向きは『AIと社員が総合的に判定しました』と言い訳をする企業もある」と明かしました。

企業が「新卒採用」の機会を大切にする訳は?

次いで、村山氏は国内の22歳人口の減少に触れつつ、企業の「新卒採用の見通し」を説明しました。21年卒と22年卒の新卒採用について「変わらず採用したいという企業が最も多い」と指摘した上で、22歳人口の減少以外に企業が新卒採用を大切にしたい理由をチャットで学生に問い掛けました。

(学生1)「若い人たちを即戦力だと考える企業が少ないから」
(学生2)「若いアイデア、新しい考え方を取り入れたい」
(学生3)「管理職に就く人を育てる」
(学生4)「長く続くために」
(学生5)「良い人材を早めに確保する」
(村山氏)「いいですね。全部正解です。ありがとうございました」

期待通りの回答が得られたからでしょうか。村山氏は、学生の回答を一通り検討した上で、おもむろに自ら用意した回答を学生たちに示しました。「DXを強化するため」と「過去の採用氷河期を企業が今、反省しているため」の2つです。

 このうち、村山氏はデジタルトランスフォーメーション(DX)の強化について、「人工知能(AI)やデジタル化など事業を進めるには、いろんな技術が必要。だから人材が必要になる」と説明しました。「柔軟な発想の若い人を確保したい」という理由からで、学生たちの指摘と重なります。

他方、村山氏はもう一つの理由は「過去の反省」だと言います。というのも、1997年は旧山一證券や都市銀行だった旧北海道拓殖銀行が破綻した年ですが、企業はこの金融不況で、こぞって新卒採用を手控えたからです。あまつさえ、2008年には全世界にリーマンショックによる不況が広がり、企業は以前にも増して新卒採用に後ろ向きになります。この結果、企業の年次構成はいびつになり、長年にわたり、その後遺症に悩まされました。これを教訓に、例え今回のコロナ禍のような経営が苦しい状況にあっても、企業は「できれば安定的に採用し、年次構成がいびつになるのを防ぎたいと思っている」と語りました。
 
「年次構成がいびつになっただけではありません。ある年度、文系の新卒採用を見送った大手企業がありました。取材すると、翌年の採用は難しかったと言います。口コミで『あそこは業績が悪くて採用しないよ』と学生の間に広がってしまったからです」(村山浩一氏談)

トヨタの「学校推薦」廃止、衝撃走る!

「トヨタ、学校推薦を廃止=新卒の技術系、自由応募に」(2020年11月21日朝刊)

 他方、採用をめぐっては、村山氏は日本経済新聞の記事から学生が見逃してはならないとする別のニュースも紹介しています。日本を代表する企業のトヨタ自動車が、2022年春採用から学校推薦を廃止するという2020年11月21日の日経新聞記事です。「理系向けの話だが、(文系の)皆さんにも回り回って関係してくる」と指摘しています。

(村山氏)「トヨタ自動車が理系の技術職の採用にあたり学校推薦を廃止した。その狙いはなぜだと思うか」
(学生1)「アイデアを採り入れたい。チャレンジ精神を大切にしたい」
(村山氏)「あ、いいですね」
(学生2)「多様な人材。人材の幅を広げたい」
(村山氏)「あ、いいですね。いいですね」
(学生3)「毎年、学校で選ぶと、同じような人材が集まってしまう」
(村山氏)「あ、これは素晴らしいな」

日本を代表するトヨタ自動車が、技術者の採用にあたり学校推薦を廃止するというニュースは、産業界で大きな話題となりました。各大学から、例えば東京大学から何人、東京工業大学から何人、京都大学から何人と技術者を採る従来のやり方は、採用が楽だったのは確かですが、それを止めるというからです。

 「皆さんは、(CASE ケース)(※)という言葉を聞いたことがありますか。この数年の間に自動車産業に大変革期をもたらすといわれるキーワードです。自動運転や脱炭素のガソリンエンジン廃止などで、自動車の概念が大きく変わろうとしています。そんな大変革の時代には多様な人材が欲しい。学校推薦だと一定の優秀な人材は当然集められますが、同じような人材が集まってしまうからです。今まで受験してくれなかったような大学の学生にも受けてほしい。そういう理由で、面倒だけれども自由応募にして、多様な人材を集めたいということです。これでいうと、技術系の人ばかりの話ではないですよね。想像つきますよね」(村山浩一氏談)

「学歴フィルター」は存在するか?

続いて、学校推薦の話題に関連し、村山氏は「『学歴フィルター』は、日本の採用試験にあると思うか?と、学生さんから時々聞かれます」と語りました。

(学生達)「ある」「ある」……。「ある」
(村山氏)「全員が『ある』かなあ?答えてくれた人は、全員が『ある』でした」

そう語った村山氏は、学歴フィルターに関して民間企業が数年前に行った調査を紹介しました。それによると、「フィルターを何らかの条件で掛けていますか?」という問いに対して、約半分の企業が「掛けている」と回答したそうです。その中で、最も多かったのが「学部や学科、専攻で区別している」や「学校名で区別をしている」だったとか。この限りにおいて、学歴フィルターはあると言えるのですが、村山氏の見解は「学歴フィルターはあるといえばあるが、ないといえばない」という、分かりにくいものでした。
 
 というのも、村山氏は学歴フィルターを掛ける理由について「採用の効率性のためだ」と説明しました。採用試験は、企業にとり1円の儲けにもならず、コストだけがかさむとあって効率化を図りたいというわけです。その意味で「企業説明会である程度、学歴フィルターを掛けることはあります」と述べました。

他方、半分の意味で「ない」と説明したのは、「だからと言って、『この学校から採用しない』とか、『この学校からだけ採りたい』というのは、普通、有り得ない」からだと言います。その意味で「いろんな学校から学生を採りたい。だから、企業にすればどんどん受けてほしいのです」と強調しました。加えて、「採用実績のない大学でも、いい人がいたら採りたい。いい人とは、(その企業に)カルチャーフィットする人」とした上で、「そんな人がいたら学校名に関わらず採りたいというのが、今の企業の動き」と続けました。

ES読まれず学校名だけで不合格?

村山氏の学歴フィルターに関する解説に対して、別途、学生からも質問がありました。「エントリーシート(ES)を読まれずに、学歴フィルターだけで不合格になることは、今でもあるのでしょうか」。就活生なら誰もが知りたい「直球」質問です。

 村山氏の回答はこうです。「全く読まずに捨てるということはないです」。ただ、「社員がESを見ずに、AIだけで合否を判定している会社はある」というファクトを前提にした上で、村山氏が聞いた話として「AIで必要なキーワード、不要なワードがあると、経験則的に自分の会社にフィットしないという判定ができてしまう」と指摘しました。

人間がESを見ると、どうしても好みを生じるのは避けられません。例えば、ESが達筆な手書きだと内容までよく見えてしまう、といった類です。このため、「人間だと、どうしてもえこひいきが入ってしまうが、AIだとそれがない。そこでAIで合否を判定する会社がある」というわけです。

ただ、この場合でも「AIでも人間でも、読まずに(学歴フィルターだけで)『この学生はいらないから不合格にする』という、そんな失礼な会社は聞いたことがない」と言います。仮に学歴フィルターを掛けるとしても、例えば、大学や研究室に自社の採用活動を行う社員のリクルーターを指して、「あなたの大学にはリクルーターを派遣します。あなたの大学には派遣しません」というぐらいのレベルだとか。いずれにしても、リクルーターの派遣の有無とは関係なく、「企業カルチャーにフィットする学生が受験に来れば、企業は採用したいということです」と繰り返しました。

採用は4%増、業種でばらつきも

日本経済新聞社が集計した企業の2022年春新卒採用計画によると、大卒の採用計画人数は、21年春の実績見込み比で4.4%増となりました。村山氏は、同データに基づき、新卒で来春卒業する今の4年生の採用動向について「企業の採用意欲は強いが、業種によりばらつきがある」と指摘します。

 その上で、村山氏は「今、アルファベットのK字回復と言われているのをご存じでしょうか」と学生たちに問い掛けました。Kとは二極化です。例えば、IT企業や電機、自動車は業績好調なのに対し、交通やホテル、観光業界は業績が非常に厳しい。いわば「非常に業績がいい業界と、そうでない業界がK字型の二極化が進んでいる」というわけです。 

では、航空会社や鉄道会社、ホテル、観光などコロナ禍の直撃を受けた業種を志望する学生はどう就職活動を進めればいいのでしょうか。村山氏は、「コロナ禍の厳しい企業の経営環境は、学生に責任はない」と強調するとともに、こうした採用が止まっている業種を目指していた学生に対し、「気持ちを切り替えて、それ以外のところで、一旦まずは頑張っていただくのが大事だ」とアドバイスしました。
 
 村山氏はまた、本学の学生に対しても、こうアドバイスしています。「複数の会社を受験すると思うが、実践女子大からまったく採用実績のない会社ばかりを受験するのは得策ではない。実践女子大からそこそこ採用実績のある会社も混ぜて受験するのが、必須になる」と語りました。

※ 独ダイムラーが発表した中長期戦略の中で、同社CEOのディーター・ツェッチェ氏が提唱した造語。Connected(コネクティッド化)、Autonomous(自動運転化)、Shared/Service(シェア/サービス化)、Electric(電動化)の4つの頭文字をとり、100年に一度の大変革の時代を迎えている自動車産業界の動向を象徴するキーワードになっている。

深澤晶久教授の話

研究室でZOOMホストを務める深澤教授

日本経済新聞社の村山様からは、毎年貴重なお話しをいただいています。私も、就職活動を控える3~4年生に対し、「新聞を読みなさい、とりわけ日本経済新聞は就活に役に立ちます」と発言することがよくあります。しかし、ただ、新聞を眺めれば良いというわけではなく、多くの記事の中から、世の中のトレンドを読んだり、自分にとって必要な記事を探したりと、その“読み方”が大切なのだと思います。村山さんのお話しを聞いた学生の皆さんに私が伝えたいことは、記事の読み方、言い換えれば“読解力”の重要性に気づいて欲しいということです。今年も刺激的な数多くのお話しをいただきました。このお話しの中から、一人ひとりの学生が、何を読み解くか、引き続きフォローしたいと考えます。村山様に心から感謝申し上げます。

2021年5月27日

新ブランド「BAUM」に至るグローバルキャリア形成の軌跡!資生堂と社会連携授業を行いました(5/18)

グローバルビジネスの最前線で活躍する人材にキャリア形成を学ぶ社会連携授業が18日(火)、オンラインで行われました。資生堂と本学の社会連携授業として実施され、今年度で8回目となります。

講師は昨年度に続き、同社バウム・グローバル・ブランド・ユニットの林順子さんが登壇。林さんは、資生堂が海外展開を視野に入れた新ブランド「BAUM(バウム)」立ち上げに至る自身のグローバルキャリアを紹介するとともに、学生たちに「挑戦は必ず挫折を伴う。痛い失敗をすればするほど、その後の人生がより豊かになる」と、エールを送りました。

社会連携授業は、本学の学部を問わず2年生以上が対象の共通科目「国際理解とキャリア形成」のセッションの一つとして実現しました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が指導教授です。今年度は3年生17人、2年生9人の26人が受講しています。

講師の林さんは、2007年3月に関西外国語大学を卒業し、同年4月に資生堂に入社。今年で入社14年目となります。かつて資生堂の人事部にいた深澤教授とは、林さんが就職活動で資生堂を受験した際、深澤先生が林さんの面接官だったという、ご縁だそうです。林さんは、バウム・グローバル・ブランド・ユニットの現職に至る自身のグローバルキャリア形成の軌跡を、「大学生」「見知らぬ土地での出会いと気付き」「グローバルマーケットでの奮闘」の3つのフェイズに分けて紹介してくれました。

ZOOMで講義する林順子さん

あなたの人生のテーマは何?~大学生時代

林さんは授業の中で、自身の大学時代を「挫折と挑戦を絶えず繰り返し続けるという私の人生のテーマの礎を築いた」と振り返りました。彼女のグローバルキャリアとの関わりでいえば、外国語学部英米語学科専攻という環境に加えて、イギリスに短期留学したという経験も影響。「将来いずれかは海外に携われる仕事がしたいと漠然と考えていた」といいます。

 ただ、英米語学科という環境は、林さんにとり、あまり居心地のいいものではありませんでした。というのは、一緒に学ぶ学友の英語力やコミュニケーション能力がすこぶる高く、「帰国子女もいるようなクラスで学友と一緒に授業を受けるたび、自分の英語力とスキルの低さが恥ずかしくなった。いつしか、自分の殻に閉じこもり、努力することを止めてしまった」と自身を省みました。挫折といっていい、ほろ苦い経験でした。

 しかし、一つの新たな挑戦が彼女を奮い立たせます。アラビア語習得への挑戦です。アラビア語の習得は、英語と違い、「学友も自分も1からのスタート。英語では帰国子女と間で埋めきれない経験の差があったが、アラビア語なら自分の努力で、いくらでもカバーできる」と考えたそうです。アラビア語を学ぶ学生は、語学が専門の関西外国語大にあっても1学年で20~30人程度だったとか。林さんは「アラビア語を学ぶクラスで1番いい成績を取る」という目標を自らに課し、アラビア語の習得に熱中しました。「それからは自分に課したノルマをこなすのが楽しくなり、経験ではなく自分の努力でカバーができ始めたので、やればやるほど上達した」と語りました。

「努力でカバーできるものを自分で見つけ、自分の短所を知り尽くして補う方法を考えて、それを長所まで伸ばせば、それが自分の個性になる。そう、何となく考え始めたのが大学時代だった」(林順子さん談)

見知らぬ土地での出会い気付き~中国ビジネス時代

入社後は、北海道の販売拠点に3年間配属されました。北海道時代のいつのころからか、学生時代から憧れていた「世界とつながる仕事をしてみたい」という気持ちが少しずつ強くなっていったと語りました。衝動は抑えがたく、社内の公募異動公募制度のジョブチャレンジに応募。見事合格、研修生として中国に1年間派遣されることが決まりました。

 中国ビジネス部門に2010年に異動。2011年に研修生として北京に派遣されます。それ以前に訪中経験はなく、中国語も当時全く話せませんでした。「シンプルに全く自分の知らない新しい価値観の土地を見てみたい。これから伸びていくと言われていた中国市場を自分の目で見て、肌で体感してみたい」という希望に満ち溢れていました。

訪中後、資生堂チャイナの日本人社長の「ローカル感あふれる中国の現地を見たほうがいい」という方針から、いずれも日本人ゼロという黒竜江省ハルビン市や上海市に近い江蘇省無錫市のオフィスに林さん1人で、2か月間ずつ滞在しました。もはや「中国語は話せません」で済むはずもなく、猛烈に勉強。その時にできた中国人の友人は今でもやり取りをする無二の存在であると話しました。

グローバルマーケットでの奮闘

帰国後は再び中国市場に向けた商品開発に携わります。ほどなく、これまでのキャリアを活かせる新分野への挑戦を決意。日本や中国を含むグローバルマーケットで取り扱うブランドの仕事を目指しました。こうして、大学時代から夢見てきたグローバルな世界とのやり取りが、ようやく現実のものとなりました。

 しかし、夢にまで見たグローバルマーケットの現実は「言葉の響きはいいが、単なるカオスマーケット」と甘くはありませんでした。理想と現実のギャップに苦しみ、痛い目に何度も遭いまくったと述懐します。その結果、グローバルマーケットとの向き合い方を、経験を通じて学んだと振り返りました。

 「世界に自分と同じ考えの人はいない。言葉も思想も価値観も異なる。そういう彼ら彼女らとコミュニケーションを取るには、同じ一つのことを伝えるのも、いろんな手法があるし、いろんな伝え方を考えていかなければいけない。また、自分が考えていることがすべてが正しいわけではなく『そういう捉え方もあるのか』と自分の価値観も少しずつ幅が広がっていった」(林順子さん談)。

 グローバルマーケットを相手に奮闘する日々は5年間続きました。この間、できないことの連続で、落ち込むことが9割だったとか。しかし、残りの1割で、小さくても自分の中でできることや、仲間の助けを借りながらもできることをちょっとずつ増やし、周囲の信頼を勝ち取っていきました。

 林さんの次の挑戦が目前に迫っていました。「新しいブランドの立ち上げにプロジェクトメンバーとして参画したい」。2019年夏、現在に至る新ブランド「バウム」を立ち上げるプロジェクトメンバーに加わります。2020年1月、バウム・グローバル・ブランド・ユニットが発足。資生堂としても、高付加価値・高価格帯のプレステージ分野では、30年以上の空白を埋める新商品・ブランドとなりました。

 「一つは、挫折と挑戦を繰り返して人生の礎を築いてきた。二つ目は、自分の短所とか長所をいろんな経験から知り、時には落ち込み、時にはそれをポジティブに言い換え、いろんな経験を重ねることによって、それが蓄積されて自分の個性になっていった。それを人に誇れるまでに昇華させることが重要だったと思う」

 「一つ目と二つ目の連続という経験を通じて、『自分の中でのできること』を積み重ねた。後は運の要素が大きかったと思う。運をたぐり寄せるのも自分の実力の一つ。いろんなことを頑張っていれば、必ず誰かが見ていて、その人が思わぬところで、いいきっかけをポンとくれる。そういう幸運が重なり合った結果、自分が夢見ていたグローバルマーケットで戦うブランドの担当者という今の私がある」(林順子さん談)

渋谷SSで会える「バウム」の世界

さて、林さんが丹精込めて育てた新ブランド「バウム」を、皆さんはご存じでしょうか?ブランドメッセージは、「樹木がくれる美しい世界の始まり」。洗顔や化粧水やルームフレグランスなどのスキン、マインドブランドであり、「樹木由来の天然香料を中心に調合した香り」が、森林浴のような心地良さとともに、心身の調和をもたらしてくれます。

 林さんは現在、店舗・カウンターに関するあらゆるものに携わっています。中国の建築家「ネリー&フー」社とコラボレーションして店舗デザインを担当しているかと思えば、店頭体験プランの構築やスタッフの応対プラン、コスチューム開発も林さんの仕事です。また、住友林業株式会社とコラボして店舗で育てたオーク(なら)の苗木を原産地・東北地方の森林を開拓して植樹するというサステナブルな(持続可能な)取り組みも展開。ネリー&フーの凝った店舗設計も、カリモク家具の職人芸と協業することで実現しました。

 何はともあれ、実際に手に取り自分の目で確かめてみるのが一番です。本学の近くでは渋谷駅直結の複合施設型超高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」6階のビューティフロアに「BAUM」があります。「学生の皆さん、是非、通学途中を利用して、バウムにお立ち寄りください」と、林さんからの伝言でした。

新ブランド「BAUM(独:樹木)」は、樹木の恵み
新ブランド「BAUM(独:樹木)」は、樹木の恵み

学生へのメッセージ

林さんは、最後にZOOM越しに学生たちに向かい、「あなたの人生のテーマとは何か」と改めて呼び掛け、講義を締め括りました。

 「私の人生のテーマ『挫折と挑戦』は、バウムとの取り組みを通じて少し変わった。今は『挫折と美しい未来への挑戦』になった。私たちが住んでいる地球にバウムを通じて恩返しができればいい。将来にわたり、美しい地球が循環していくために今できることを最大限やることが、私の人生のテーマではないかと思う」

 「自分の好きなことや興味のあることを是非見つけてほしい。見つけられなければ、今自分がやっていることを誰よりも熱心に取り組んでみてはどうか。レベルを誰よりも高いところに持っていけば、その先に必ず見える景色がある」

 「挑戦するからには挫折する時が必ずある。でも挫折をしないと成長はない。痛い失敗をすればするほど、その後の人生がより豊かになると自分に言い聞かせることだ。ネガティブになることも多い。しかし、今の経験が先の将来につながると思うことが、いつしか挫折があってよかったと思える日が来る」

 「人生のテーマはどんなことでもOK。ただし、人に話せるように自分の中で明確な言語化をしておけば、今後、就職活動などにも有益になる」(林順子さん談)

深澤教授は研究室からZOOM発信

深澤晶久教授の話

思い起こせば今から15年前、林さんとの出会いは資生堂での採用活動、約20,000名の応募者の中から選ばれた精鋭の一人でした。営業での仕事、中国での経験、そして新しいブランドのローンチと、彼女のキャリアは挑戦の連続、素晴らしい活躍ぶりに触れ、本当に嬉しく思います。学生には、林さんのお話しから、何ごとにも主体性を発揮し、失敗してもなお挑戦を続けるチャレンジ精神を学び、これからの学生生活、そしてそれに続く社会人生活でも活かして欲しいと願います。

2021年5月21日

現役編集者が学生に文章術を指南、書いた原稿を日経新聞に投稿!「日経HR」と初の社会連携授業を行いました(5/14)

現役編集者から就職活動や実社会で役立つ文章術を学ぶキャリア教育授業が14日(金)、オンラインで開催されました。授業で学生が作成した原稿を日本経済新聞の「未来面」に投稿、31日付日経朝刊への掲載を目指します。同新聞グループの人材サービス会社「日経HR」と初めて行う社会連携授業として実現しました。同社コンテンツ開発室の渡辺茂晃氏を講師に招き、学生たちが就職活動のエントリーシート(ES)作成にも応用できる文章の書き方などの手ほどきを受けました。

履修生の6割が、投稿で腕試し

授業は、文学部国文学科2年生が対象の授業「実践キャリアプランニング」の一環として実施されました。同学部の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が指導教授です。今年度63人が履修しています。

 授業で扱う「未来面」への投稿テーマには、「新型コロナが私たちに気づかせたものとは?」が採用されました。田中陽・日本経済新聞編集委員が、未来面の新シリーズ「本当に大切なことは何か」の第1回テーマとして提示したお題です。新型コロナウイルス感染拡大に伴う田中編集委員の問題提起に対し、課題解決につながる学生のアイデアが試されており、アイデアを400字以内にまとめて投稿します。締切は20日(木)正午まで。渡辺氏が講義のほか、希望者に対する原稿の個別添削も行いました。履修生の6割が腕試しに投稿する予定です。

学生にZOOMでレクチャーする渡辺氏

新聞の文章テクニックをESに応用してみては?

逆三角形スタイルをESに応用

このうち、14日の授業は、20日の投稿に先立ち、渡辺氏がESを例に「読まれる文章」の書き方をレクチャーしました。ESは「最後まで読まれるとは限らない」とした上で、読んでもらうためには「相手が忙しい人を想定して文章を書くといい」と強調。新聞のように、大事なことや言いたいことを先に書く逆三角形の文章スタイルをESに応用することをアドバイスしました。

 具体的には、文章の構成を見出し(結論)、リード(全体の要旨)、本文(リードをさらに説明)、背景説明の順に並べ、「どこで切られても、ある程度の事は分かる構成」にするよう提案しています。
加えて、社会人に求められる文章のポイントとして①主語と述語を正しく対応②修飾語と被修飾語は出来るだけ近くに③1文は短く、言いたいことは1つに-など9項目の文章テクニックを紹介。これらを駆使して「誤解を招かない」「読みやすい」「説得力がある」といえる文章を目指すよう求めました。

採用担当者が「途中で飽きてしまわない文章を」

その上で、ES定番の設問「学生時代に力を入れたこと」を例に取り上げ、学生が実際に書いた回答の添削例を紹介。「同じ語尾の繰り返し」「冒頭の一文が長すぎる」などとそれぞれテンポの悪さ、誤解の招きやすさを指摘するとともに、結論を冒頭に移すよう求めました。渡辺氏は、その理由を「企業の採用担当者は皆忙しいし、(ESで同じ設問に対する回答の)たくさんの文章をずっと読む。いくら読み進めても聞いている答えが出てこないと、途中で疲れて飽きてしまい、それ以上はもう読まない」と述べています。

 日経電子版の「未来面」は、日本が抱える課題を企業と読者が議論しながら深める紙面です。日本を代表する経営者らが、自らの問題意識に基づき課題を提示。課題解決につながるアイデアを読者から募集します。優秀アイデアに採用されると、日経電子版で10人、紙面で3人の原稿が掲載されます。

9つの文章テクニックを手ほどき
緊急事態宣言の再延長で研究室からZOOM

深澤晶久教授の話

ネット社会の中で生きてきた大学生たちに、改めて“言葉”の大切さを感じてもらいたい、相手の立場に思いを馳せながら、自分の思いを如何に伝えるか、なかなか直接会えない今、その重要性がクローズアップされていることを感じて、文章術のプロである渡辺さまにお願いして実現した授業です。就職活動のみならず、これからの大学での授業でも、社会人になってからも必ず役に立つ大切な学びであると思います。

2021年4月26日

大学発!地方創生「新たな観光資源の魅力を磨き上げ、地方創生の礎に」近畿日本ツーリスト首都圏との今年度の社会連携授業がスタート!(4/23)

「観光」の力で観光需要の回復・地域経済の活性化を。Withコロナ時代で観光産業が多大な影響を受けているなか、今後、失われた観光需要を回復していくためには、地域に眠る観光資源を磨き上げ、より一層地域の魅力を高める必要があります。2020年度からスタートした「1年生を対象とした主体性講座」は、昨年のワーケーションに続き、地方創生をテーマに4月23日(金)開始されました。学生たちは、アイデアを出し合いながら近畿日本ツーリスト首都圏(東京都新宿区)へ5月21日の最終プレゼンテーションを行います。

教室の真剣な日常が戻ってきました!

今年度授業のキックオフに当たり、「『観光』の力で、神奈川県・埼玉県・千葉県の市町村を選び、観光需要の回復・地域経済の活性化を解決せよ!」という課題が提示されました。観光事業者と、交通、漁業、農業、地場産業などの多様な事業者が連携して、非日常の体験や特別感のあるツアーのプランを造成し、観光庁の公募事業への提案を目指して取り組みます。

橘次長からミッションが提示されました

講師で、地域交流事業を担当する近畿日本ツーリスト首都圏の橘清志次長は、この日の授業でミッションの趣旨、事業プランやツアープランの立て方などを説明。新たな旅のスタイルを普及・定着させていくことが注目されるなか、「皆さんの力で社会を良くしていくことが出来る。新たな出会いと感動を創造し、笑顔あふれる社会の実現に一緒にチャレンジしていきましょう」と学生に呼び掛けました。

授業は、本学文学部国文学科の深澤晶久教授(全学キャリア教育担当)が指導する前期カリキュラム「実践プロジェクトa」で実現しました。新入生を対象に昨年度新設された科目で、今年度は1年生17人が履修。1グループ4~5人の4グループに分かれて、グループ単位でミッションに取り組みます。

近畿日本ツーリスト首都圏との社会連携授業は、今年度で2年目になりました。「一般社団法人フューチャースキルズプロジェト(FSP)研究会」が監修する初年次教育プログラム「主体性講座」をベースにしており、「学生の主体性を引き出し、これからの大学での学び方を学ぶ」授業プログラムとして本学のキャリア教育に定着しています。

グループの議論が始まりました

深澤晶久教授の話

「企業が、日頃課題としていることをテーマに行うリアリティ溢れる産学連携PBL授業であり、今年も積極性に溢れる1年生17名が集いました。まず前半は、昨年に引き続き近畿日本ツーリスト首都圏様にご協力いただいています。この日の授業では、お題として提示されたテーマのハードルの高さに驚きつつ、学生たちは、早速チームに分かれてディスカッションが行われました。修羅場体験から引き出される大いなる成長に期待したいと思います」

2021年4月14日

スポーツニッポン新聞社と今年度の社会連携授業スタート!お題は「オリパラ開幕日の一面紙面」(4/13)

スポニチの一面模擬紙面を学生が考える本学キャリア教育恒例の社会連携授業が4月13日(火)、2021年度の検討をスタートさせました。7月13日の最終プレゼンテーションに向け、学生が5チームに分かれ、渾身のアイデアを競います。

検討のキックオフに伴い、講師でスポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員から、今年度のテーマ「2021年7月23日のスポニチの1面を考えてください」が与えられました。新型コロナウイルスの感染拡大(コロナ禍)で1年延期された「2020東京オリンピック・パラリンピック」開幕日に焦点を当てたお題です。藤山編集委員は、テーマ出しに際して「コロナウイルスで大変な世の中ですが、皆さんの力で明るい紙面を作っていただけることを期待します」と学生に呼び掛けました。

スポニチ紙面を使い講義する藤山講師

授業は、渋谷キャンパス704教室で行われました。藤山編集委員にとり2年ぶりの対面授業です。昨年度と違いZOOM画面に向かってではなく、教室のホワイトボードを背に学生らに向かって教壇に着席。履修する学生26人に対し、マスク越しに紙面作成に必要な東京オリンピック・パラリンピックの予備知識を講義しました。

社会連携授業を説明するスポニチの藤山編集委員

本学とスポーツニッポン新聞社の社会連携授業は、今年度で4年連続となりました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が担当する「国際理解とキャリア形成」のなかで実施しています。大学2~3年生が対象のキャリア教育共通科目です。

 5チームは、1チームが5~6人。履修者に関心のある国をアンケート集計した結果をベースに学部・学科の垣根を越えてチーム分けされています。今年度は「アジア・オセアニア」「アメリカⅠ」「アメリカⅡ」「ヨーロッパⅠ」「ヨーロッパⅡ」の5チームでミッションに取り組みます。

深澤晶久教授の話

毎年、学生の関心の高い科目で、今年も定員の3倍の希望者の中から選抜されました。この授業は、スポーツニッポン新聞社様とのコラボで進行する「オリンピック・パラリンピック連携講座」と、“机上の世界一周旅行”と称してレクチャーやゲスト講演で組み立てられる「国際情勢をまなぶ講座」の2つの柱で構築されています。
 新型コロナウイルスの影響で、グローバル化も「東京2020」も大きな影響を受けました。そのような時代の変化も見据えつつ、学生の主体性を磨き上げるというゴールに向かって動き出しました。毎年感じる学生の成長の姿を、今年はリアルにみられることがとても楽しみです。

2年ぶりに教室にリアルが戻ってきました

スポニチ Sponichi Annexにも掲載されました

2020年11月4日

Holiday Card Exchange Project 2020をオンライン開催しました!

 NPO法人グローバルプロジェクト推進機構(JEARN)からの要請により本学短期大学部が主催する「世界のお友達とホリデーカードを交換しよう!—Holiday Card Exchange Project 2020」の第1回ワークショップを、11月8日(日)にオンラインで開催しました。




このワークショップは、世界の子どもたちがホリデーカードを交換し合うことにより、自国と他国との文化を相互に学び、異文化コミュニケーションへの興味を育てるとともに国際的視野を養い、そして世界の人々の多様性を学ぶことを目的とするもので、本学での開催は2016年度から5年目となり、2020年度は教育プロジェクト「グローバル・シティズンシップ教育への取り組み」の一環として行いました。
 今年のパートナー校は、アメリカ、スロベニア、台湾、ロシアの学校です。例年は大学に子供たちと保護者の方々をお招きし、学生たちが企画と運営、そして当日のファシリテータを務めていましたが、今年はこれをオンラインで開催しました。

 第1回目のワークショップでは①パートナー校の国・地域の地理、文化、ことば等についてのクイズ大会、②日本文化の紹介、③日本文化への関心を深めるためのパフォーマンス、④海外の学校に送るホリデーカード(年賀状)の作り方アドバイスなどの活動が行われました。③では舞台実演家のただじゅんさんによる皿回しや獅子舞が披露され、子供たちがとても喜んでくれました。司会の学生によるインタビューでは「獅子はなぜ赤いの?」「獅子の性別は?」「獅子はどのくらい重いの?」など気になる質問を行い、解説を聞きながらさらに日本文化への関心を深めることができました。
 また、サプライズ出演の台湾の先生から英語でメッセージをいただく場面もありました。

 16名の短期大学部生たちは、10月から毎週Zoomミーティングを行って準備を進め、チラシの作成、事務局の仕事、当日の司会、撮影、スライド作成、カード見本作成などを担当しました。直前のリハーサルを経て、前日の夜までZoomで「チーム自主練」を重ねて臨んだ本番は、どの学生からも会心の笑みがこぼれていました。事後アンケートでは、「自分の中で色々成長することができた」「企画を一から立ち上げて計画し考えて発表する大変さを学んだ」「みんなでイベントを成功させるために一丸となってチームとして成し遂げることの素晴らしさを学んだ」といった感想と次回イベントへの意気込みが寄せられました。
 参加してくださった方からも、「獅子舞は、画面越しだったのに夢中で鑑賞できた」「説明担当の学生さんはお姉さんみたいで、親しみやすく、こどもたちに理解してもらえるような話し方がよかった」「スロベニアに大変興味を持ちました」などの好意的な感想をいただき、スタッフ一同ほっと胸をなどおろしています。

 第2回イベントは2020年12月20日(日)に渋谷常磐祭のLive配信として実施します。海外から届いたホリデーカードの紹介、パートナー校(アメリカ、スロベニア、台湾、ロシア)を含めた世界中の文化を知るためのパフォーマンスをとおして学びを深めるワークショップを実施する予定です。




2020年5月4日

メディア授業紹介 スポーツニッポン新聞社と連携し紙面の一面づくり 企業連携授業「国際理解とキャリア形成」(2020/5/26)

 新型コロナウイルスの感染拡大(コロナ禍)に伴い、大学生活も例年とは様変わりしました。緊急事態宣言こそ5月25日に解除されたものの、今年4月に入学した新入生の中にはまだ一度もキャンパスに足を運んだことのない一年生もいます。こうした苦境が続く中、教職員は対面に見劣りしない質の高いメディア(遠隔)授業の実現に工夫を凝らしています。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育)が指導する「国際理解とキャリア形成」授業もその講義の一つです。スポーツニッポン新聞社と産学連携で行う「スポニチ紙面の模擬一面づくり」に挑戦する異色の授業で、5月26日(火)に渋谷キャンパスで行われたリモート授業を紹介します。

同授業は、大学2年生の共通科目として行われ、他のマスコミから取材を受けることもある人気授業です。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えて、「オリンピックイヤーのとある日のスポニチ新聞一面を学生がつくる」をコンセプトに、今年度は23人が受講しています。

 渋谷キャンパス503号室。3時限目のその授業は午後1時15分すぎに始まりました。

「過去のオリンピックで都道府県別金メダル累計獲得数の第三位は東京都の8個です。では第一位は?」(答え:北海道と愛知県の9個)
「パラリンピックが始まったのは、どの大会から?」(答え:1964年の東京大会から)

 スポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員がマイクに向かい、紙面作成に必要なオリンピック・パラリンピックの基礎知識についてパワーポイントを使いよどみなく説明していきました。藤山編集委員は、記者として過去のオリンピック取材の経験も豊富で、また、本授業を担当して今年で3年目となる、いわばベテラン。一点を除いては、昨年や一昨年と変わらぬ授業風景が繰り返されました。

その一点とは…。教室に学生の姿がありません。
この日、深澤教授や藤山編集委員がマイクで話し掛けていたのは、ビデオ会議「ZOOM」で映し出された画面上の学生たちでした。ほとんどが自宅におり、講師が時折、講義のマイクから目線を上げて503教室のどこを見渡しても、本来そこにいるべき講義に熱心に聴き入る学生たちの姿はありません。

慣れぬ遠隔授業が時折、予期せぬトラブルを引き起こしては授業の進行を妨げます。この日も突然、マイクのハウリング音が503教室に響き渡りました。授業はしばし中断。「音が反響してしまって、よく聞こえないです」という学生の声が解消されるまで、音量調整や代替マイクの使用など舞台裏の対処も、今までとは質が異なります。事前に90分間の遠隔授業のシミュレーションを重ねたとはいえ、やはり対面授業とは勝手が違います。

遠隔授業に戸惑いながらも、リモート授業を対面授業に近づけようという工夫が凝らされました。「ブレークアウトセッション」というZOOM機能の活用もその一つです。

 ブレークアウトセッションは、ZOOMのオンライン会議で使える便利な機能の一つで、参加者同士を小グループに分けて個別にグループワークを行うことができます。もともと同授業では、受講者の関心のある国をアンケートで集めたものをベースにチーム別に「アジア」や「アメリカ」、「ヨーロッパ」などの小グループに分けて、スポニチ新聞の模擬紙面の出来栄えをチーム間で競い合ってきました。参加者がどこかに場所を確保して対面で行うミーティングを、ブレークアウトセッションというウェブ上で実現したというわけです。

 この日、藤山編集委員からスポニチ新聞一面紙面づくりに関して、具体的な課題が学生に示されました。コロナ禍で1年延びた2020東京オリンピック・パラリンピックを受け、「2021年7月23日開幕日のスポニチ一面紙面を制作せよ」というミッションです。最低でも、リード(前文)10字×20行と本文10字×100行に加えて、10×20行の雑感1~2本の記事が必要となります。本職の運動部記者でも取材や執筆に骨の折れる分量です。

 締め切りとプレゼンテーション日は、それぞれ6月30日と7月14日。学生たちの多角的な視点と紙面のアイデアが試されています。

2019年12月23日

エシカル消費でSDGs実現へ エシカル消費を学びました

 

 社会や環境を意識した消費行動として注目される「エシカル消費」の理解を深める授業が11月26日(火)、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花氏を講師に招いて、本学日野キャンパスで行われました。生活科学部生活環境学科の大川知子准教授が担当する「消費科学」(後期2単位)の一環で、同科目を選択した4年生25人が聴講。国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の実践の一つとして期待されているエシカル消費の意義や仕組みを学びました。
 演題は「私たちの選択が未来を変える~エシカル消費のすすめ~」。末吉講師は、TBS系列の「日立 世界ふしぎ発見!」の元ミステリーハンター(レポーター)で、“秘境班”メンバーとして世界中を旅しました。その旅の一つで登ったのが、アフリカ・キリマンジャロ山でした。その際、目の当たりにした地球温暖化による山頂の氷河の融解。これが、末吉講師が環境問題に目覚めるきっかけとなり、やがてフェアトレードと邂逅。そして2015年のエシカル協会を立ち上げにつながり、今日の活動に至るパーソナル・ストーリーを語りました。

エシカル消費でSDGs実現へ

では、そもそもエシカル消費とは何でしょう。一般的に「地域の活性化、雇用なども含む、人や社会、地球環境に配慮した消費やサービスのこと」を指すといわれていますが、末吉講師は、エシカル消費はさらに多面的であり、「モノの過去、現在、未来を考えて消費をすること」「ストーリー、物語があること」「モノの背景が分かること」と指摘しています。

 末吉講師は聴講する学生に語り掛けます。「皆さんはもう、SDGs(持続可能な開発目標)を学びましたか」。SDGsは全世界の人々が2030年までに達成すべき目標として17個の目標を掲げていますが、このうち12番目の「つくる責任つかう責任」の達成に「エシカル消費はものすごくいい、有効な手段である」と強調しています。

 実際、企業に限らず政府(消費者庁や環境省など)や地方自治体(長野県や徳島県など)でもエシカル消費の普及を目指す動きが始まっており、2021年からの中学校、2022年からの高校の新学習指導要領に基づく教科書にはエシカル消費の話題が登場します。「5年後にはガラリと違う世の中になっている」という末吉講師が願う未来は、あながち過大な期待とはいえなくなっています。

 ところで、そもそもエシカル消費はなぜ必要とされるのでしょうか。末吉講師は「消費者が求める製品の安さの背景には、弱い立場にある途上国の生産者の犠牲があるかもしれないからだ」と語ります。

背景に途上国の劣悪な労働環境

グローバル化が進んだ今日、毎日消費する製品を誰が、どこで、どうやって、どのように作っているのか、ほとんど分かりません。洋服の原料のコットン、チョコレートの原料のカカオ、そしてサッカーボール…。多くは途上国で作られていますが、その生産背景に労働搾取や児童労働、環境破壊といった深刻な問題が潜んでいたとしても、製品から背後の見えない問題は分かりません。このため、私たちは知らない間に、日常の消費を通じて、こうした人権侵害や環境破壊に加担しているかもしれないと末吉講師は言います。

 2013年4月、バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落し、1,100人以上の工場労働者が犠牲になりました。ファッション史上最悪の汚点と語り継がれていますが、この工場では劣悪な労働環境の中で主に、安いからと先進国の消費者が好んで購入するファストファッションや、世界展開する欧米や日本のアパレルブランドの商品がつくられていました。

社会を変える、企業に声届ける

では私たちに社会の課題解決で何ができるのでしょう。とりわけ、学生には-。末吉講師は「消費者としての力を発揮しながら、一人ひとりが声をあげよう、企業に届けよう。それが社会を変革する最も強力な手段です」と訴えます。

 末吉講師によると、自分が出すゴミを一年間ノートに記録し続けた女子大生たちがいた、といいます。プラスチックのゴミがすごく多かったそうです。そして彼女たちは書き出すだけでなく行動を起こし、スーパーや店に声を届けました。「プラスチックのモノはできるだけ買いたくありません。だから代えてください」と訴えました。

 大手スーパーのイオンはフェアトレードの商品を販売するリーディングカンパニーともいえる存在ですが、その取り組みはたった一人の主婦の声から始まりました。

 また、末吉講師は教室の学生に向け、こう続けました。「皆さん、日々の暮らし、学校生活を通じて社会に変革を起こして下さい。皆さん一人ひとりその力を持っています」。

 「ファエトレード大学」という制度があるそうです。英国では170大学以上が認証を受けており、日本では2018年2月の静岡文化芸術大学が国内認定第1号で、2019年10月の札幌学院大学と北星学園大学の同時認定が第2号で続きました。

 国際基督教大学(ICU)は同窓会オリジナルグッズにフェアトレード認証コットンを使ったオリジナルグッズとブックカバーをつくり、毎年大人気ですごい売れ行きといいます。

 広がり始めたエシカル消費。とはいえ、末吉講師が壁にぶち当たり活動をやめようと思ったことは一度や二度ではなかったといいます。そのたび、自らを奮い立たせたのが、パタゴニア創設者イヴォン・シュイナード氏から贈られた言葉だったそうです。「活動を今やめてしまったら、あなたも問題の一部になる」。末吉講師は授業の締め括りとして「仲間がいると、いろんなことがしやすい。1人の百歩よりも100人の一歩が世界を変える」と語り、90分間の講演を結びました。

2019年11月15日

実践女子大学×丸山珈琲「五感で学ぶキャリア教育」(2019/11/15)

 共通教育キャリア科目である実践キャリアプランニング文学部英文学科2年生のクラス(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)において、さる11月15日から12月20日までの5回にわたり、丸山珈琲様と連携した産学連携のプログラムを実施致しました。この授業は本学の特徴的な科目の一つで全学必修に位置付けられており、授業の後半では、「社会人基礎力演習」と題したPBL課題解決型ワークショップを展開しています。

深澤教授説明の様子
授業の様子

今回は、丸山珈琲様にご協力いただき、2019年11月に渋谷スクランブルスクエアに初出店されたタイミングをとらえ、「渋谷女子にスペシャルティコーヒーバッグ広めよう! 渋谷店を活用したPR施策ならびにコーヒーバッグに絡めて渋谷店全体のPR施策を考えよ」をテーマに5回にわたり進めました。

 11月15日のコラボ一回目の授業、学生たちが教室に入り感じたのはコーヒーの香りが漂う雰囲気でした。これは丸山珈琲様の担当者の方が、「やはり丸山珈琲のことを考えていただくには、本物を味わってもらう必要がある」とのお考えから、普段は店頭でお客様に提供しているコーヒーを実際に準備いただき、なんとこの授業はコーヒーのテイスティングからスタートしたのです。

 以降、グループディスカッション2回、プレゼンテーション2回の授業を通して、11チームに分かれた学生たちは、視覚(実際に店舗や商品を見て)、聴覚(社員の方からのお話しやアドバイスをお聞きして)、嗅覚(本物のコーヒーの香りを嗅いで)、味覚(本物のコーヒーを飲みながら)、触覚(実際に販売されているスペシャルティコーヒーバッグを触ってみて)、まさに五感をフル回転させながら課題解決に向けて議論を重ねました。
 2週にわたったプレゼンテーションについては、丸山社長自らにお越しいただき、丸山賞の発表と全チームへのフィードバック、そして最終回には「変化」をキーワードに、「世の中の変化に常に関心を持つだけでなく、自らの変化にも気づく必要がある」という大変に貴重なメッセージをいただいて授業は終了しました。

学生のコメント

  • 短い時間で議論し、プレゼンまで行うことはとても大変でしたが、様々な意見を聞けたことや、プレゼンについては他のチームの手法から学ぶことが多かった。
  • 協調性の大切さ、チームワークとコミュニケーション、物事の本質をどう捉えるかなど、沢山の学びがあった。
    そして何より実際の企業の事例で研究できたことがありがたかった。
  • 社長のお話しの中で「自分が変化する」というお言葉がとても印象に残りました。

深澤教授のコメント

「五感で学ぶキャリア教育」という新しいコンセプトのもと、学生たちは社会人として要求される、課題解決力、企画力、情報収集力、チームビルディング、プレゼンテーション能力などを短期間ながら集中的に学ぶ貴重な機会になりました。ご協力いただきました丸山社長をはじめ、丸山珈琲様の関係者の皆様に、心から感謝いたします。