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2023年6月16日

「キャリアデザイン」の授業で日本経済新聞社の村山氏による今の日本経済や企業を学ぶ講演が行われました。

5月16日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の村山浩一氏をお迎えし、「今、働くこと」を考えるための講演が行われました。実際に日経新聞に掲載された記事を引用しながら、企業の昔と今の違いや経済に関することを、学生たちにも分かりやすく話されました。

これからの時代をどう乗り越える?

村山氏は新卒で日経新聞に入社して以来、経済や経営に関わる記事を1000本以上執筆してきました。実践女子大学の前理事長のインタビュー記事も書いたことがあるとのこと。学生向け討論番組「日経カレッジ・ラボ」の制作に携わっていたこともあり、番組には深澤教授も出演されています。現在は教育事業ユニットのシニア・コンテンツ・プロデューサーとして、教育研修コンテンツを開発されています。

村山氏の話は、AGC株式会社(以下、AGC)のCMから始まりました。AGCは歴史のある大手ガラス製造会社でしたが、ガラス以外も扱う素材ソリューション会社へ社名とともに変革を遂げました。これには「両利きの経営」への意志が感じられると言います。両利きの経営とは、既存の事業を深掘りするとともに新たな事業を開発すること。「日本企業は、新たな事業の開発をすることは苦手なのですが、これからの時代を生き残るためには必要とされています」

産業界をみる上で、世界情勢も注視する必要があります。「今の世界を象徴するキーワードは”分断”だと思います」と村山氏。ロシアのウクライナ侵攻などに象徴されるように、世界的に対立が大きくなっています。同時にグローバル化は急速に広がり、日本企業も対立の影響を受けています。分断は政治だけでなく、経済においても重要なポイントなのです。「この分断をどう乗り越えていくか、どう新しい世界を作っていくかが大きな課題です」

日本に会社はいくつある?

次に村山氏は「日本の上場企業は何社あるでしょう」と問いかけました。学生たちは「100?」「1万社?」と答えるなか、正解は約4,000社。「では日本に会社は何社あるでしょうか」と再度問いかけが。「10万社?」「5万社?」と答えが出ましたが、正解はなんと400万社。99%以上が中小企業です。「皆さんの中にも、中小企業に就職する方もいると思います。たくさんの中小企業が活躍して、日本の経済が成り立っているんだなということを分かっていただければと思います」と村山氏は語りかけました。

「皆さんはどんな企業に就職したいですか」という問いかけには「メーカー系」や「金融」と答える学生がいました。ここで示されたのが、世界の時価総額上位企業の記事。1989年には世界上位20位のうち日本企業は14社ありましたが、2019年では41位でようやく出てきます。数十年経てば業績や世界の評価は大きく変わるのです。「皆さんが現役で働いている間にも、順位が大きく変わる可能性があります」と、大手企業だからといって、ずっと安泰だとは限らないことを伝えました。

お給料はどのくらい?

話は年収の話題へ。「皆さん社会人になったらどのくらいの年収がほしいですか?」と聞かれ、「500万円」「困らない程度に」「600万円くらい」という回答が出ました。日本の給与平均は443万円。ただ正社員では508万円ですが、非正規雇用だと197万円と大きな開きがあります。「学生で、希望の会社に入れなかったらアルバイトでもいいと言う方がいるけれど、私は、できれば正社員でどこかの企業に入ったほうが良いと思っています」と伝えました。

これから就活する学生たちに一番身近な話題として、採用の話も。採用側からの観点として、データサイエンスやAI、ITの知識を持っていることに期待が集まっているという記事には、「特に今の時代を反映している」と話されました。

メディアリテラシーを身に付けよう

最後はメディアとの付き合い方。「メディアリテラシーはどの業界で働いても重要です」。なぜならどんな情報もメディアを通して知ることになるからです。特にビジネスの話題には日経新聞は最適で、読者のうち課長クラス以上の役職に就いている人が45%を占めています。日経新聞で得た情報は、取引先との話題や企画案作りにも活用されています。

村山氏は「今日紹介したなかで、少し興味を持った記事もあるんじゃないかと思います」と語りかけ、「新聞は難しいというイメージがあるかもしれないけれど、興味を持ったものから読んでみると良いと思います」と話しました。

就活にも情報をうまく活用して

講演が終わると学生たちはグループで感想などを話し合い、質問をまとめました。質疑応答では就活やビジネスに関わる質問が飛び出しました。「中小企業やスタートアップの会社の情報をどうみつけていけば良いでしょうか」という質問には、「日経新聞を含む、メディアを見てみましょう。メディアに載るということは、取材したくなる企業ということ。そのなかで気になる企業を自分で調べるといい」と話し、「上場企業でも、今は社長の決算会見や株主総会の様子などの動画が無料で見られる時代です。こういった会見はとても貴重で、企業がどちらの方向を向いて動いているのかが分かる。ぜひ活用してほしいと思います」とアドバイスしました。

村山氏は「これからも勉強や就活に励んでください」と話し授業は終了しました。経済や経営者のニュースの最前線を知る村山氏のお話は、学生たちにも刺激になるものでした。

担当教員からのメッセージ

毎年ご支援をいただいている村山様には、極めて旬な経済や企業に関わるお話しをいただいています。グローバルレベルで日々変化を続けている経済界にアンテナを立てることは、就活のみならず、これからの社会を支える大学生にとっても極めて大切なことであることを気づかせて下さいます。情報をどこから集め、そして峻別する力がより求められる大学生にとって、大変学びの深いお話しをいただきました。この場を借りて心から感謝申し上げます。

2023年6月16日

「国際理解とキャリア形成」の授業で元資生堂海外支社社長の海外キャリアと挑戦することの大切さについて講演が行われました。

5月9日に共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社タイキ営業本部長の藤井恵一氏をお招きし講演が行われました。株式会社資生堂(以下、資生堂)で勤務していた際の幅広い海外経験を中心にお話しされ、学生たちはグローバルキャリアを改めて考える授業となりました。

広告に惹かれて資生堂へ

大学時代は勉強にサークルにアルバイトにと学生生活を謳歌した藤井氏。今でもつながっている友人がおり、「振り返ると、ネットワークを作るという考えの土台になった時期でした」と語りました。就活の時には広告やエンターテイメントビジネスに興味があったと言います。資生堂には、当時の広告がとてもかっこよく、惹かれたので面接を受けたと話しました。

1983年に入社。最初の仕事は北九州や長岡の支社での営業でした。現場での仕事は充分経験した頃、自分のキャリアについて考えるように。本社での勤務や海外勤務に興味が出て、海外派遣制度や別部門へのジョブチャレンジ制度へ応募などを積極的に行ったといいます。結局その時に海外へ行くことは叶わなかったものの、「アクションを取ったことで色んな人が自分を見てくれてつながりができ、その後本社のマーケティング部門へ行くことができました」と経験を語りました。

憧れのフランス駐在!異文化に「浸る」こと

海外への憧れは残っていたものの、本社勤務はとにかく多忙。
海外勤務の夢は半ばあきらめていたとき、突然フランスへ異動の辞令が来ました。
ヨーロッパの薬事法規制に対応したり、子会社のフランス、イタリア、ドイツなどと本社の商品・マーケティング戦略について意見交換したり、どう売上や知名度を拡大するかを考える日々でした。加えて、フランスに設立した子会社の社長まで任されましたが、結果的に不採算事業からの撤退ということで会社清算を担当。最後の1年間は弁護士と打合わせ、取引先との契約打切り商談、従業員の解雇などつらい日々でしたが、後々この経験が活かせることになったと話しました。

憧れの海外生活でしたが、英語もフランス語もほぼできないまま始まったといいます。英語は大量の書類を読み慣れていき、ヨーロッパ人とも英語でコミュニケーション。英語だけに集中し、フランス語は結局できないままと話しました。

海外旅行と海外生活の違いは異文化に「触れる」ことと「浸る」ことだと言います。異文化のなかに入って生活することで行動の背景も理解できるようになっていきます。
「例えばフランスでは日照時間が短いため、晴れていれば冬でもテラス席に座ります。日焼け止めよりも焼けたい願望が強かった」と話し、身近な行動からも日本との違いを感じたと話しました。「それが分かることでコミュニケーションの内容や仕方も変わってくる」と言います。
また、「日本人なら、歴史や文化などもっと日本のことを勉強しておくべきだったと思いました」と反省点も語りました。

ついに海外支社の社長へ

その後本社へ戻り国際マーケティング部のグループリーダーを任されます。ヨーロッパやアジア、アメリカなど各現地の子会社と連携を取るなかで、海外販売会社のトップに興味を持つようになりました。海外の会社の社長という立場からは何が見えるのか、自分なら何が出来るのか考えるようになり、国際事業の役員へ思い切って直訴します。念願叶い、カナダの子会社の社長に就任しました。

赴任してすぐ取り組んだのは社長として何を考えているのか、何を目指しているのかビジョンを従業員にシェアすることでした。「製品ではなく夢を売る」というスローガンを共有し、次のステージを目指しトロントやバンクーバーなど大都市で大々的なプロモーションを展開し、売上拡大を図りました。また、SDGsの先駆けとなるCSR活動への取組や、東日本大震災の写真展をカナダで行うなどの活動も積極的に行いました。英語も再度学びなおし、週2回家庭教師に文法と会話を習ったり、初めてTOEICを受験しました。

社長を経験し、ポジションの難しさを改めて痛感したと言います。
日本と違い海外では部下の責任と権限が明快であるため、一度部下に業務を託したら、部下の責任と権限のもとで業務を遂行しており、ある程度の期間をみないと進捗状況を把握することができず、フラストレーションが溜まることもありました。しかし何かがあればすべて自分が責任を負うという重責もあります。一方で提案次第では会社全体を動かせるパワーがあることも実感。「日本では経験できないことができ、非常に楽しかったです」と話しました。

「凡事徹底」と「最大の挑戦」を

57歳のとき「もうこの会社ではやりきった」という思いが出てきます。まだ貢献できる会社やワクワクできる仕事があるはずだという考えが湧き出て、転職を決意。縁があって化粧品OEMメーカーの株式会社タイキに入社しました。現在も自社ブランドの開発・マーケティング・販売や取引先のPB開発に携わっています。

最後に学生たちへ、人が真似できないほど物事を一生懸命にやること、挑戦することの大切さを伝えました。
「やり方を変えれば結果も変わってきますし、チャンスもでてきます。そのチャンスに向かってどれだけ高くジャンプできるか、出会いを大切にしながらぜひチャレンジしてください」とメッセージを伝えました。

ネットワークを作り好奇心を持って

講演が終わると、学生から質問が飛び交いました。
「自分から主体的にキャリアアップしていたように感じましたが、そのモチベーションは何ですか」という質問には、藤井氏は「新しいこと、面白いことにチャレンジしたい、次は何が出来るかという好奇心が根底にありました」と回答。
これからオーストラリアにワーキングホリデーに行くという学生には、今の会社でも資生堂時代のつながりが活きていることを伝え、「海外に行ったら向こうの人とネットワークを作っておきましょう。いつか思いがけないところでつながるかもしれません」と、アドバイスされました。

最後には藤井氏から化粧品の試供品が学生たちにプレゼントされ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。学生たちにとって海外で活躍するための前向きな力を学ぶ、貴重な講演となりました。

担当教員からのメッセージ

今から約30年前に、同じ職場でお目にかかった藤井さん、その頃の仕事は国内のブランドマーケティングでした。その後、藤井さんは海外中心のお仕事に、私は労働組合と人事、全く畑は別になりましたが、ブランドマーケッター時代に苦楽を共にしたことが、今でも藤井さんとのご縁を繋いでくれているわけです。私の印象は、仕事ぶりも身のこなしも、“かっこいい人”、今でも化粧品業界で活躍されている姿は、素晴らしいと思います。毎年のご支援に心から感謝申し上げます。

2023年6月15日

ファーストペンギンになろう!「キャリアデザイン」の授業で元日経新聞の記者が講演を行い失敗を恐れず行動する大切さを話されました。

5月9日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、元株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の大村泰氏が招かれ講演が行われました。大村氏は在職中の多くのインタビューの中から学生たちへ伝えたい名言を集めてきてくださいました。講演の中でこれからの時代の情報の扱い方や、失敗を恐れず行動をしていくことの大切さを語られました。

深澤教授とは部活の友人

大村氏は、深澤教授の高校時代の同級生。二人は野球部で、共に白球を追った仲です。
大村氏は日本経済新聞社で数々の業務に就かれた後、日経メディアマーケティングの代表取締役社長を務められ、2023年3月に日経を退職したばかり。退職を機に、第二のキャリアデザインを考えているところと言います。
また、学生の前で講演をされるのは今回が初めて。「今日が第二のキャリアのデビュー戦です」と講演を始められました。

大村氏の子どもの頃の夢は小説家。書く仕事がしたくて新聞記者を目指し、日経新聞に入社しました。最初は記者ではなく記事の編集をする整理部に配属になりました。入社後は失敗と挫折の連続だったと言います。しかし最後は先輩が助けてくれたと感慨深く話されました。

「今日、新聞を読んだひとはいますか」大村氏の問いかけに手を挙げた学生はゼロ。学生たちは無料のニュースサイトやテレビ、SNSなどから情報を得ているという回答に。若い世代が新聞を読む機会が減っているのが新聞業界の課題です。

若者たちに贈る「名言集」

今回大村氏は、学生たちに伝えたい言葉として、インタビューした多くの成功者の言葉のなかから選りすぐりの「名言集」を持ってきてくださいました。最初は「ファーストペンギン」。財界の重鎮、小林喜光氏の言葉です。ファーストペンギンとは、群れの中から真っ先に海に飛び込んでいくペンギンのこと。転じて、勇気と主体性を持って行動する先導者のことを意味します。「企業文化もファーストペンギンが出ると変わっていく」と大村氏は語りました。

「ラストマン」というのは最終責任者という意味で、最後の責任を取るリーダーのこと。どんな活動でもリーダーは必要です。そのなかで、ただ選ばれるのではなく自分で考え行動し責任を取れるリーダーになってほしいと大村氏は話しました。

中外製薬会長の言葉は「失敗を恐れるな」でした。「日本は失敗に厳しいですが、アメリカでは失敗すればヒーローになる」と言い、チャレンジ精神の大事さを伝えました。モルガン・スタンレー証券のアドバイザー、ロバート・フェルドマンの言葉は「いでよ異端児」。「チームワークを大切にするなかで、挑戦のためには異端児もいなくてはいけない」と話しました。

メディアをどう使い分けるか

ニュースの影響力の大きさを示す事件として、大村氏は2016年のアメリカ大統領選について触れました。当時世論はクリントン氏の圧倒的有利と思われていましたが、結果はトランプ氏の勝利。これには共和党寄りのメディアFOXTVの報道が大きく寄与していると言われています。また、AIはSNSなど含めビッグデータの解析からトランプ氏勝利を予想していたと言います。

これからの時代、情報をどう扱うかは大きな問題です。
そこで大村氏は「上手にメディアを使い分けることが大切」と言います。例えば物事について詳しく知りたいとき、ネットニュースだけではなく新聞がどう書いているかを読むことを勧めました。新聞各社がそれぞれどのように報じているか、それは本当なのかを疑う姿勢を持つことで「自分なりの立ち位置というのが分かるようになります」と話します。また、1対1の対話力を磨くことも大切。「名言は1対1で話しているときに出てきます」と話しました。

AIとどう付き合っていく?

現在話題の「chatGPT」に関しても話されました。「すごく大事な問題で、いろいろ考えなくてはいけない」と語りました。「インターネットのように、世の中を変えてきたものというのは必ず浸透します。間違いなく、10年後や20年後の将来には当たり前の技術になっている」と言います。AIに仕事が奪われるという未来予測もある中で、では何に気を付けていけばいいのでしょうか。

AIにできないことは、判断することや新しく何かを生み出すことです。「これからは自分たちに何が出来るかを考えていく時代になるでしょう」と、自分で考え判断する大切さを伝えました。

失敗を失敗のままにしない

講演後、学生たちはグループディスカッションを経て大村氏への質疑応答が行われました。「名言の中で失敗を恐れるなとあったが、どうしても失敗を怖がってしまう。どうしたら一歩進めますか」という質問には「失敗するかもと立ちすくむのではなく、失敗した場合のリスクをどう乗り越えていけるか考えることだと思います。経験者に聞いたり調べたり、失敗を失敗のままにせず、どう立ち上がるかだと思います」と回答しました。

「情報をどのように取捨選択すればいいでしょうか」という質問には、「新聞を読むのが良いと思います。新聞は記者が現場に行き、一次情報にあたって取材しています。裏付けが取れた情報しか載りません」と、新聞の情報の正確性を伝えました。また「週に1回でも新聞の1面だけでも読むと、今何が起こっているかが分かる」と、新聞を利用することを勧めていました。

最後に大村氏は「今回の授業で一番伝えたかった言葉はファーストペンギンです」と話しました。「最初に手を挙げて発言することや、一番に教室に入って準備することもそう」と、先陣を切る勇気を持つことの重要さを再度伝えました。

学生たちにとっても、失敗しても挑戦することの大切さを学んだ講演となりました。

担当教員からのメッセージ

大村氏と初めて会ったのは高校1年の時、以来約半世紀が経とうとしています。しかし、今でも時々会う大切な仲間の一人、やはり社会で大切なのは人脈であることを改めて感じています。大村さんが会社を離れると聞いてお目にかかった時に、私の夢は大学生に自分の経験や生き様を伝えることだと聞き、今回の舞台をご用意させていただきました。豊かな経験に基づく珠玉の言葉の数々に、大村さんのキャリアの年輪の厚さを感じました。

2023年6月15日

何のために働く?「女性とキャリア形成」の授業で元スターバックスCEOによる講演が行われました。

5月11日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に、元スターバックスコーヒージャパン株式会社CEOの岩田松雄氏をお招きし「ミッション」についての講演が行われました。現在は株式会社リーダーシップコンサルティング代表として、多くのリーダーを育成されている岩田氏。変化の多い現代を生き抜くための力の養い方や、使命としての「ミッション」の大切さを話されました。

変化の大きい時代の力の付け方とは

進行は担当のグループ(CUBE)が行う授業スタイルです。
司会の学生から紹介され、岩田氏の講演が始まりました。
岩田氏はまず講演の聞き方のコツとして、「最後に必ず一つ質問しようと思って聞くこと」を紹介しました。岩田氏が大学生のころから40年間実践している聞き方です。集中して話を聞くようになり、分からないこと引っかかることをそのままにしない姿勢が身に付きます。学生も就活のセミナーなどでも実践できる方法です。今回の講演も質疑応答の時間が設けられます。「なんでも聞いて下さい」と気さくに話されました。

今回進行を担当したグループの学生

最初に示されたのは「VUCA」という言葉。VUCAとは将来何が起こるか予測困難な状態のこと。現代はVUCAの時代と話します。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、なにがきっかけで世界が変わるか分からない時代です。

このVUCAの時代に必要なことは、3つ。
1つめの「視座を高める」は自分が他の人の立場だったときを考え、俯瞰して物事をみることです。
2つめは「視野を広げる」こと。知らないことを知ることです。検索で物事を調べようとしても、自分の興味のあることしか調べません。「意識的に知らないことに興味を持っていくことは大事」と言います。
3つめは物事や情報をどう受け取るか「視点を鍛える」こと。これらには学び続ける力が必要です。「卒業するためだけの学力ではなく、自分の基礎を作るために学ぶことが大切」と話しました。

企業は世の中を良くするためにある!

岩田氏は新卒社員として日産自動車株式会社に入社。当時から経営に興味があり、アメリカへ社内留学し経営理論を学びます。帰国後日本コカ・コーラ株式会社や株式会社アトラス、株式会社タカラ、株式会社イオンフォレストなど名だたる企業の社長や役員を歴任されました。社長に就任してから、これからは企業価値の時代になると気付き、働く姿勢や「何のために働くのか」が大事になると感じたと言います。

そこで大事なのが「ミッション」です。
ミッションとは企業の存在理由。
岩田さんは、企業とは「商品やサービスなど企業活動を通し、世の中を良くするためにある」と言います。企業は利益を出さなければ存続できませんが、利益はあくまでも手段であることを忘れてはならないと強調されました。

ではなぜミッションが大事なのでしょう。
「社会は大きく変化しています。すべての変化に対応したマニュアルは作れない。指針となるものがミッション」と岩田氏。
現在は多様性の時代です。様々な価値観を持った人たちが同じ方向を向くのは難しいことですが、ミッションがあれば共通のゴールになるのです。「就活のときも、その企業のミッションを一緒に実現したいと思える会社を探されたらいいと思います」と語りました。

自分の「ミッション」を見つけよう

ミッションは企業だけではなく、個人にも。
「自分が、好きで得意で人のために役に立つことをヒントに、自分の使命を考えていってください」と話しました。好きなことは情熱を持って取り組み、継続できることです。継続して続けていると、それは得意になり、のちに人の役に立ちます。

「好きなことが分からない、という時はまずは目の前のことを一生懸命やること」と話しました。
例としてお茶汲みをされている姿に岩田さんが出会われたことをきっかけに、その後岩田さんの社長秘書になった人の話をされました。お茶を出すタイミング、温度、好きな銘柄などをお客様に合わせ提供するという気配りを岩田さんが見ていて、秘書に登用したという話です。どんな仕事でも手を抜かず取り組むことで、サポートを得られたりチャンスをつかんだりできるのです。

小さな成功体験が自信につながる

講演後に学生たちはグループで意見交換し、質問を考えました。
質疑応答の時間に進行役の学生が挙手を促すと、多くの学生が手を挙げました。
「岩田さんのミッションはなんですか」という質問には
「リーダーを育てること。日本に良い経営者を増やしたい」と話し、
「もっと言えば、目の前にいる人を元気にしたい。この講演を聞いてくれた皆さんのやる気をちょっとでも起こせたら、今日のミッションは達成です」と語りました。

次の学生は「挫折したときはどうすればいいでしょうか」と質問。
岩田氏は「自分の価値を信じること。倒れてもいいけれど、指だけでも動かしてみる。落ち込んでいる自分に落ち込まないこと」と、やる気を失わないことの大切さを伝えました。
「そのためには小さな成功を積み重ね、自分をほめることです。経験だけではなく実績を積み重ねることが自信になります」。

最後に司会の学生から「頑張りは必ず誰かが見ているから、アルバイトや学業なども一生懸命取り組んでいきたいと思いました。素晴らしい講演をありがとうございました」と感想とお礼の言葉がありました。

これから社会に出る学生たちにとって「何のために働くのか」という根本的なテーマを考えるきっかけとなる講演でした。

担当教員からのメッセージ

岩田様には、本講座のみならず、キャリア開発実践論、キャリアデザインなど、数多くの授業においてご講演をいただいています。そして、その際は、決して大学生向けの内容ではなく、日頃、岩田さんが主たる相手として時を共にされている企業トップや経営層、管理職に話されていることを本学の学生に語って下さっています。学生にはややレベルが高いのではないかと思いましたが、本学の学生は、岩田さんのお話しに真剣に耳を傾けており、また、岩田さんが、語り掛けて下さる言葉が素晴らしく、きっと5年後10年後まで学生一人ひとのキャリア形成に大きく関わる内容として届いてくれていると感じます。岩田様には、改めて心から感謝申し上げます。

2023年2月21日

「実践キャリアプランニング」の授業でロレアル パリとのコラボが行われ学生たちは「人権問題に配慮したCM」について発表しました。

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、食生活科学科の学生と、ロレアル パリとのコラボが行われました。学生たちは出された課題「人権問題を意識し配慮の足りた広告を作るために大切なこと」をプレゼンしました。プレゼンでは実際に使用されたCMを例にとり、発表後には菊池氏や山下氏からフィードバックがありました。プレゼンは2週にわたって行われ、この日は後半の9グループが発表を行いました。

人権問題についての意識とは

トップバッターの1班は肌色問題から人種について考えました。
大手食品会社のアニメCMでは選手の肌が実際より白いことが問題になりました。
クレヨンなどの「肌色」は2000年頃から、多人種の肌色の固定概念をなくすため「うすだいだい」と呼ばれています。肌の色の固定概念をなくすことが大切であるとまとめました。


菊池氏は
「肌色という固定概念を植え付けられていたなと気付かされました」と話しました。

次の14班は、飲料と異業種のコラボCMを紹介。
さまざまな人種が出演しており、家政夫が男性です。対して脱毛の車内広告は若い女性のみが起用されていることを指摘。性別や年齢にとらわれない広告を作成するためには、第三者からの視点も必要と提案しました。


山下氏は
「脱毛のモデルが若い女性ばかりと気付かされました。脱毛は恥ずかしくないという意識改革も必要」と共感しました。

洗濯洗剤のCMにおける男女差を取り上げた8班は、悪臭の原因は男性から、主婦が洗濯という偏見に言及しました。
対してあるブランドのCMは男性俳優を起用し、固定概念を覆していると評価。男女差別がなくならないのは受け手が無知だからとし、視野を広げて自分から関心を持つことが大切と訴えました。

菊池氏も
「(評価されたCMは)男性も共感を呼びやすい作り。男性の家事需要に合わせている」と着眼点の良さを褒めていました。

性差別をどう解消するか

15班は大手化粧品会社のCMを紹介。
結婚や若く見られるなど、年齢で女性の価値を決めてしまっていると取れるCM例をだし、「メイクは人の価値ではなく自分の個性を作るもの」と伝えました。
女性はメイクをしなくてはならないという固定概念を覆すために男性を広告に起用するなど、異なる価値観を取り入れることが大切だとしました。


山下氏は
「時代として可愛いという価値観ではなく、自分に似合うものはなにかという方向に進んでいる」と共感を示されました。

16班は昔と今のおむつのCMを比較。
40年前は女性が家事と育児の対象となっていましたが、最近のあるCMでは男性が起用され育児する姿を見せています。男女の固定概念にとらわれず、家事や育児も女性だけではなく両者に向けることを伝えました。


菊池氏は
「赤ちゃんのために男性がおむつを選んでもいいという発信をしている例。素敵な例を見つけてくれた」と感心されました。

5班もおむつCMを取り上げました。
母親のワンオペ育児を連想させるCMを批判を受けた例として提示。経済力の差を感じてしまうため有名タレントは使われづらい育児関連商品のCMには女性が起用されることが多いのですが、ある製品では男性タレントを起用しイメージを変えたことにも言及しました。


山下氏も
「タレントも含めどんどん男性を出していくべき」と共感されました。

ジェンダー問題を意識した広告

11班はインフラのCMを取り上げました。
男性が家事や育児を行い、女性が働いている描写があり、性別のイメージで固定しないことが配慮と考察しました。
悪い例として挙げられたCMでは「脱毛をしていないと良くないことが起こる」というネガティブなメッセージングが問題に。「広告で性別に対する偏見を覆すこともできる」とポジティブなメッセージを伝えることが大切と提案しました。

菊池氏は良い例に上がった企業は、大手の優良企業であるとし「就活を考えるなかで、企業がどうマーケティングしているかみるといいと思います」と助言も出ました。

4班は大手百貨店が賛否両論を受けたCMを例に挙げました。
日本での女性の生きづらさを訴えた広告でしたが、食品を顔に投げつけられても笑っているのは我慢させられているように見えるなど批判も浴びたCMです。「人権問題を意識するあまり逆に配慮が足りないと思われてしまうこともある」と広告の難しさを伝えました。


山下氏は
「賛否両論あるCMを挙げたのは勇気あり、考えさせられました」と語りました。

ラストの10班はLGBTQに着目。
マッチングアプリの広告は男女のみを描いており、恋愛=男女という認識が根深いことを伝えました。
また、大手アパレルが作成した女性カップルの日常を描いたCMを紹介。このCMには批判的な意見も多かったと紹介しました。しかし「今以上に大きな声で発信していくことが大切」と偏見をなくすことの重要さを伝えました。

菊池氏は
「やるなら批判があってももっとやるべきという意見はその通りだと思う」と学生たちのまっすぐな気持ちに感嘆しました。

人権問題に取り組んでいける社会人に

2週にわたったプレゼンも終了。
最後にこの日のロレアル パリ賞が発表されました。選ばれたのはLGBTQを取り上げた10班でした。
学生たちも各班に点数を付けており、後日学生間賞も決まります。

最後に菊池氏から総評をいただきました。
「マーケティングのことを考えてもらえればと思っての課題でしたが、どの発表もとても面白かったです。皆さんも、提示された悪い例のようにならないように頑張っていきましょう」とこれからの時代を生きる学生にエールを送りました。

深澤教授の話

ロレアル・パリ様には、今年度、初めてご支援をいただきました。私自身も食物科学専攻のクラスを担当するのも初めてということで、テーマ設定に悩んでいたところ、ロレアル・パリ様とのご縁をいただき、素晴らしい内容を構築いただきました。まずは、Voice Up Japan様にご協力いただいたStand UPにフォーカスした講義をいただき、ジェンダーや平等、社会での活躍の話をいただきつつ、ストリートハラスメントについて学ばせていただきました。その後は、ロレアル・パリの菊池様、山下様にお越しいただき、ジェンダー論×マーケティングについて、昨今のinclusivityに焦点を当て、ジェンダーやセクシュアリティ、人種を意識したマーケティングについての講義とグループディスカッションそしてプレゼンテーションセッションに繋がる内容となりました。食物科学専攻の学生さんの学びとは、一見遠いようで、実際に取り組んでみると、かなり強い結びつきを発見出来たことも事実であり、大変貴重な学びの場となりました。ロレアル・パリ様には、この場を借りて心から感謝申し上げます。

2023年2月21日

ロレアル パリ様をお迎えし、企業の課題を一緒に考える特別コラボセッション。学生達から様々な解決策が発表されました

ビジネスの最前線で活躍する方々をお迎えし、企業が直面する様々な課題を知り、その解決策を探る特別コラボセッション。ロレアル パリ様をお迎えした授業のまとめは、学生達のプレゼンテーションです。ジェンダーや人種などの人権意識が高まる中で、これからの広告はどうあるべきなのでしょうか。その未来像を考えました。

前半9グループのプレゼンテーションでは、様々な広告表現に注目

まとめの授業では、グループごとに前半と後半に分かれてプレゼンテーションを行いました。ロレアル パリからは、菊池氏と山下氏が同席。それぞれのグループの発表に対して、様々な角度から評価コメントがありました。

①グループ7
おもちゃ業界が育む“ジェンダーフリー”

子供用玩具を通して小さい頃からジェンダーの刷り込みが行われている事例を紹介。
自由にカスタマイズできる着せ替え人形を例に、ジェンダーにとらわれずに自由に遊べる世界の重要性を指摘。

菊池氏
「おもちゃという着眼点はおもしろいですね。買う人(親)と使う人(子ども)が違うおもちゃはジェンダーの刷り込みが起こりやすいですが、おもちゃから変えることで新しい循環が創れそうです」

②グループ6
化粧品でみる人権問題

メイク=女性という縛りを改善した、近年の化粧品広告事例を紹介。
人権問題を意識した広告は「~らしさ」などの固定概念を取り入れない、商品の特徴や良さを伝えるキャッチフレーズが大切。

菊池氏
「メイク≠女性という社会の意識は広がっています。化粧品ブランドの取り組みに、今後も注目するとおもしろいと思いますよ」

③グループ12
ジェンダーバイアスに目を向ける

家事=母親という表現になっているTVCMをいくつか紹介。
性別や年齢に関係なく、家族が家事を分担することの大切さを強調。

菊池氏
「広告には必ず意味がある。企業の視点で『なぜこの広告を創ったのか』と考えると、また違ったことがみえてくると思います」

④グループ3
人権問題を意識した配慮の足りる広告とは

洗剤とハンドクリームの広告に注目。
webサイト上のアンケートの対象が女性のみという商品と、性別や年齢を問わない広告に変えた商品を対比。広告は性別や年齢ではなく、使用するタイミングや季節感の訴求が大切。

山下氏
「アンケートの対象に注目したのがすごいですね。昔からある製品は、過去から現在までの広告の変遷をたどると新たな発見がありますよ」

⑤グループ18
洗濯・柔軟剤広告

最近は洗濯≠女性という広告が増えているが、柔軟剤はまだ女性の商品というイメージが強い。韓国のブランドを例に挙げ、男性=消臭、女性=フローラルではない広告の可能性を紹介。

山下氏
「韓国の事例への着眼点は素晴らしい。洗剤のCMに若いイケメンばかり登場するのは主婦層に訴求するためなのかなど、広告の意図も考えるとおもしろいですよ」

⑥グループ2
人権意識ない広告

肌の色の扱い方で炎上した中国の洗剤の広告を紹介。
具体的な改善点を通じて、差別につながらない広告に大切なことを検討。

山下氏
「人種以外にも、不美人を美人にするなどの容姿の差別もありますよね。差別とはなにか、深く考えることが大切だと思います」

⑦グループ17
人種差別について

米国大手アパレルメーカーを中心に、これまで炎上した広告を例に人種差別にならない表現を考えた。広告に多様な人が登場する重要性を指摘。

菊池氏
「国内の大手アパレルメーカーには、時代の流れに合わせてビジネスと倫理の両輪を上手く回しているところがあるので、広告表現に注目するといろいろな学びに出会えます」

⑧グループ13
人権問題と広告

男性もメイクをすることを前提にした韓国化粧品の広告と、母親が料理をする食品メーカーの広告を対比し、世の中に浸透しているジェンダーのイメージの改善が必要なことを強調。

菊池氏
「韓国では男性の20%がBBクリームを使用していますが、日本はまだ一桁。男性メイクをどう伸ばすかが課題になっています」

⑨グループ9
人権問題について考える

1970年代の美容広告のモデルを様々な人種のLGBTQ+に入れ替え、現代風に再現する広告を例に、先入観を失くして多様性を意識することを指摘。

山下氏
「先入観を無くすのは難しいことですよね。育児は夫婦がやるものでも『旦那がオムツを変えて“くれた”』と言ってしまう。先入観にとらわれず、自信を持って生きられる社会が大切ですね」

ロレアル パリ賞が発表され、受賞グループには素敵なプレゼントが

前半9グループのプレゼンテーションが終わり、ロレアル パリのお二人はロレアルパリ賞の選定へ。
栄えある受賞に輝いたのは、グループ3でした。
お二人によれば、評価のポイントは家事の先にあるハンドクリームに注目したことと、webサイトのアンケートデータという細かい部分に気づいたこと。グループの5人には、ロレアル パリ製品のヘアオイルとウォータートリートメントのセットが贈られ、歓声が上りました。

2023年2月21日

「実践キャリアプランニング」でロレアル パリによるエシカルマーケティングについて学ぶコラボ授業が行われました。

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、食生活科学科の学生が、先週に引き続きロレアル パリの菊池氏による講義を受けました。先週はストリートハラスメントに立ち向かう5Dの講義でしたが、今回のテーマはマーケティング。学生たちはマーケティングの流れを学び、エシカルマーケティングに大切な要素について考え、後日プレゼンに挑戦します。

マーケティングってどんな仕事?

菊池氏は「マーケティングとはなんでしょう」とまずは学生たちに問いかけました。
辞書を引くとマーケティングとは、製品、サービス、流通、お客様に届けるための一連の体系的な市場活動のこと。「つまり、全部ですね」と菊池氏。
製品を作るところから届けるところまで、すべての活動がマーケティングです。

マーケティングの流れとしては、
1.市場の分析をする
 ↓
2.消費者の分析をする
 ↓
3.コミュニケーションの立案をする
 ↓
4.販売戦略を立案する
 ↓
5.販売し反応をもとに再度1に戻る、といったサイクルです。

なかでも3の過程での「消費者インサイト」の深堀が特に大切。
製品を届けるターゲットを定め、どういうコンセプトなどで広告を作るかを考える上で、消費者の「やりたいこと」と「やりたいけどできないこと」を明らかにすることは重要です。これが分かれば消費者の悩みを解決する、より消費者に響く広告が作ることができるからです。

広告を作って終わりなのではなく、その後販売時期や店舗、SNSやメディアの展開方法などを考えるのもマーケティングの仕事。それには競合他社の動きも見つつ、できるだけ良い時期や方法を見極めなくてはなりません。さらに発売したあとには消費者の反応などを蓄積し、次の市場分析につなげていくのです。

現代におけるエシカルマーケティングの重要さ

「最近では倫理的に広告を作るということがキーワードになっています」と菊池氏は言います。「エシカルマーケティング」とも言われ、社会的責任や環境問題などに対する価値観に基づいたマーケティング方法のことです。いくつか企業名も挙げ実例が示されました。

環境問題に力を入れているアパレル企業では、リサイクル素材の製品を製造したり買い物袋を廃止したりしており、またあるバス用品メーカーでは動物実験反対のメッセージが入ったショッパーの提供などを行いました。

人種問題では、BLMをきっかけに「白=美しい」という潜在的な刷り込みをやめようという運動が始まっており日本でも現在「美白」という文句は使われなくなってきています。
スポーツ用品メーカーもBLMに共鳴した選手を広告に起用し、大きなムーブメントになりました。このほか、セクシャリティに関する広告の実例なども紹介されました。

エシカルマーケティングに大切な要素ってなんだろう?

「ただ、よく考えてみるとこれはどうなんだろうと思う、配慮できていない広告もたくさんあります」と菊池氏。
ここでいよいよ課題発表です。

課題は
「人権問題を意識し、配慮の足りる広告を作るために大切なことを理解する」。

学生たちはグループワークで人権問題に配慮した広告、できていない広告を集め、人権問題を意識した広告を作るために大切な要素を探します。
その上で、配慮が足りていない広告をどうすればよくなるのかを考え、プレゼンします。
難しい課題ですが「自分が最近買った製品など身近なところから考えていってみてください」と菊池氏からアドバイスがありました。
学生たちはこれからグループワークを経て、12月に最終プレゼンに臨みます。

2023年2月3日

博報堂とJR東日本とのコラボ授業で、学生たちが見つけた「スローな渋谷」のプレゼンが行われました。

人間社会学科「フィールドワーク論」(担当:原田 謙教授)の授業で、12月7日(水)に株式会社博報堂 ミライの事業室とJR東日本 東京感動線によるプロジェクト「Slow Platform 渋谷駅0番線」とのコラボ授業が行われました。企業の皆さんを前に、学生たちはフィールドワークを通して見つけた「スローな渋谷」の発表を行い、新たに発見した渋谷の魅力をプレゼンしました。

渋谷が隠し持つのどかな側面

Aチームはいつもにぎわっている渋谷だからこそ、ほっとできる場所も多くある意外性に着目。人が集中する渋谷は休息できない場所というイメージが強くありますが、一方で風通しがよく緑の多いところも。ゆっくりでき雰囲気がよく落ち着く場所として、「代々木公園」「金王八幡宮」「茶亭 羽當」などが挙げられました。そのなかで、実践女子大学の最上階から見る夜景も紹介。渋谷キャンパスの周りには超高層の建物が少ないため、夜には東京タワーなどの美しい夜景を眺めることができます。

学生ならではの視点に、質疑応答では「ネオンはビジーな印象だけど、夜景になるとスローになるのが面白い」という感想が。発表した学生は「友達と一緒にきれいだねという会話があって、その会話自体がスローな時間だなと思った」という、実体験を話してくれました。まさに日常に寄り添うスローな渋谷の発見です。

ふとした瞬間の癒しを渋谷で

Bチームは派手な広告や、夜でも明るいネオンなど「見て感じる」ストレスを取り上げました。映え重視の食事も、食べにくかったり価格は高いのに量が少なかったりとストレスに感じるためビジーだと捉えました。ただ、子どもたちの元気な姿や、ふと見えた夕陽など見て感じる癒しもあると考えました。心安らぐ場所としてレトロな蕎麦屋「朝日屋」や「鍋島松濤公園」などが挙げられました。面白い視点としてマンションの壁画も。落書き防止目的の壁画ですが、まるで幼稚園のような明るい色調は安心感があり「見て感じる癒し」としてスローに挙げられました。

博報堂の方からは
「映え重視も窮屈に感じるという視点が意外でした」や「情報過多な世の中で、発信側はつい映えを意識してしまうけれど、情報の少ないところに魅力を感じるのだなと気付いた」という感想をいただきました。

渋谷の“ほっと”なスペース

Cチームは、満員電車など身体的距離は近くても、みんな無関心で心理的距離の遠いこともストレスに感じるといった視点がありました。ただ、町中で手をつないだ親子など人の温かみを感じる瞬間はスローであることに気付くなどの発見も。そこで渋谷の繁華街から足を伸ばしリラックスできる空間を探しました。「ログロード代官山」やカフェとギャラリーが併設された「Lurf MUSEUM」「zenta coffee」などアートと融合した場所が紹介されました。

質疑応答ではJRの方から「知らない施設ばかりでした。元々知っていたんですか?」という質問が。
学生は歩いていて偶然見つけ、新たな発見であったことを伝えました。
また「アートがあることはどういう心地よさにつながるのか」という質問には「普段あまりアートに触れる機会がないので、知らない世界に気軽に触れられる面白さや楽しさがありました」と回答しました。

原田先生からも「渋谷には多くの美術館がありますが、メジャーなところではないのも面白いですね」とコメントがありました。

渋谷における「ゆったり時間」と「ひとり空間」

Dチームは、自分のペースで歩けない忙しなさや夜の治安の悪さなど緊迫感をビジーとして挙げました。ただ人混みにはネガティブなイメージがありますが、フリーマーケットや街中華など活気があり人とのコミュニケーションを取れるところはスローな時間を過ごせるという発見も。自分のことに集中できる場所をスローと捉え「エビスグリーンガーデン」や「ログロード代官山」などが紹介されました。「猿楽古代住居跡公園」では子どもたちの声が響いていたスローな雰囲気を伝えました。

発表後には「一人の時間でも、子どもの声や人との関わり、人の気配を感じることもスローなのだなと気付かされました」という感想が聞かれました。学生からは「街では子どもの楽しそうな声はなかなか聞かないので、都会であることを忘れられると感じました」と素直な意見がありました。

落ち着ける「幸せな孤独」

Eチームは都会では多くのひとがイヤホンをして音楽を聴き、ひとり空間を作ることに着目。スローには「音楽」も大切な要素として取り入れました。またおいしいものを食べる「食」もリフレッシュすることの一つ。それらを含んだ、一人の時間を自分のために使える場所を探しました。中古レコードショップ「ウルトラシブヤ」、銭湯の「さかえ湯」、「山下伏見稲荷大明神」などレトロで昔から変わらない場所を中心に紹介しました。

質疑応答では「惹きつけるタイトルですね」と「幸せな孤独」という言葉選びに感嘆の声が。また、「レトロなものがスローに感じるのはなぜでしょう」という問いも。
学生は、中古レコードショップにあるジュークボックスに触れ「効率重視の世の中で、手間をかけ自分が選択することは余裕があることと思った」と回答がありました。

渋谷のスローな過ごし方とは

最後に企業の皆さんから総評をいただきました。
博報堂の方からは「場所だけではなく、渋谷をスローに過ごすための知恵を教えてもらいました」との感想をくださいました。
JRの方からは「率直な感想として、紹介された場所に行きたいなと思いました。それぞれ視覚以外にも、聴覚や嗅覚など様々な角度からスローを考えてもらえて、自分の解釈も広がりました」と伝えてくださいました。

今回学生たちが紹介したところは、今後マップなどにまとめられる予定です。

2023年1月27日

実践女子学園高等学校でサントリーの輿石優子氏による講演を実施しました

12月20日(火)に、サントリーホールディングスのサステナビリティ推進部の輿石優子氏による高校生全校生徒に向けた講演が行われました。「身近な事例を通してSDGsと向き合う」と題し、サントリーのペットボトルリサイクルの取り組みを中心に話されました。生徒たちは第一線で活躍する女性のお話を聞く貴重な機会となり、「ペットボトルは資源」という新しい考えを学びました。

サステナビリティとは?

今、世界的に注目されているSDGsとは2015年に国連で採択された17の目標のこと。世界すべての人が日本の水準の生活をした場合、地球は2.8個必要であるという計算があります。輿石氏はSDGsの概念の表す「ウェディングケーキモデル」を紹介しました。一番上の小さな層が経済、二段目が社会、一番下の大きな層は自然や環境を表します。「社会や経済は、自然があってこそ」と輿石氏は語ります。

サントリーの「天然水」は、南アルプスや阿蘇などに水源をもち、地域それぞれの水を使っています。サントリーでは、「天然水」を含むさまざまな製品に使う水を守るため、20年前から良質な地下水を育む森を守る活動を、全国21カ所の「サントリー 天然水の森」で続けています。持続可能な世界を守る取り組みのひとつです。

受け継がれる「やってみなはれ」精神!サントリーってどんな会社?

清涼飲料水で有名なサントリーは、生徒たちにも身近な企業です。事業の55%は、お茶やコーヒー飲料から炭酸やミネラルウォーターなどの清涼飲料水を取り扱っています。残りの3割はお酒。さらには健康食品や外食事業も手掛けています。珍しいところでは自然界には存在しない「ブルーローズ」の研究・開発など、飲み物に限らず幅広い事業を展開しています。

サントリーは1899年創業。豊かな生活文化の創造に向けて、創業者鳥井信治郎が、洋酒の製造販売をしたことから生まれた会社です。鳥井の有名な口癖が「やってみなはれ」。現状に満足せず新しいことに取り組み続けるチャレンジ精神は、サントリーにいまも受け継がれています。

輿石氏は2000年にサントリーに入社。大学で日本美術史を専攻していた輿石氏は、日本美術を中心に収蔵している「サントリー美術館」の存在を知ります。サントリーが文化芸術に造形が深い企業ということに興味を持ち、さらに「やってみなはれ」精神を知り「入ったら自分もいろんなことができるかもと思い入社しました」と話しました。

身近なペットボトルについて考えてみよう

輿石氏から「ペットボトルって脱炭素のためにも良くないんじゃないかと思っている人はどれくらいいますか?」と生徒たちに問いかけられると、生徒たちから複数手が上がりました。プラスチックの原料は石油で、一言でプラスチックと言っても、構成する化学成分の違いにより性質が異なります。そのなかでPETと呼ばれるものがペットボトルになります。

次に「ペットボトルを見て、何か気付くことはありませんか?」と輿石氏。日本のペットボトルは、無色透明で本体には印刷がされていません。これは、リサイクルしやすいよう飲料メーカーの間で自主基準を作り守っているためです。日本のペットボトルは96.7%という高い回収率を誇ります。さらにリサイクル率は88.5%と、欧米に比べると倍近くリサイクルしています。(2020年実績)

使用済みペットボトルからはペットボトルの他に、食品トレーや繊維など、様々なものに生まれ変わりますが、多くの場合、その後は同じものに生まれ変わりません。しかしながら、ペットボトルは何度も繰り返しペットボトルになる「水平リサイクル」が可能のため、新しい資源を使わずに済むという利点があります。「使用済みペットボトルからペットボトルに生まれ変わることを「ボトルtoボトル」リサイクルといいます。皆さんにも、ボトルは資源と覚えていただければと思います」と輿石氏は語りました。

ペットボトルは資源!ゴミにしないためには?

サントリーでは「プラスチック基本方針」を定め、2030年までに全世界のサントリーグループで出す飲料のペットボトルのすべてをリサイクルボトルか、植物由来資源のボトルに置き換えるという目標を掲げています。2021年度では、流通している37%にリサイクルボトルが使用されています。

ペットボトルを捨てる際はラベルとキャップを「はずす」、中を「すすぐ」、「つぶす」が大事と生徒たちに語り掛けました。特に「はずす」は、キャップやラベルはPETではないため外す必要があること、外すことで輸送の積載量が変わることが理由に挙げられました。「ぜひ皆さんもご協力お願いします」と話し、講演は終了しました。

世界で活躍する女性になるために

最後に生徒たちから質疑応答がありました。高校3年生の生徒は「世界で活躍し貢献する女性になるために心掛けるべきことはなんですか」という質問。輿石氏は「物事の裏側になにがあるか、原因や理由を理解しようとすること。相手の立場に立って考えることで自分の考えも深まります」と回答されました。

「伊右衛門のラベルの裏におみくじがありますが、大吉しかないですか?」という質問も。輿石氏からは「大吉以外にもあると思います。おみくじもラベルをはがしてもらう取り組みの一つなので、見てもらえてとても嬉しいです」と回答がありました。

最後に生徒代表から「サントリーが生活文化や世界に貢献している企業であることを知り、ペットボトルが資源という考えを学べました」と講演の感想を述べました。企業の第一線で活躍する女性の貴重なお話を聞く機会となり、生徒たちにも刺激になった講演でした。

2023年1月24日

「実践キャリアプランニング」の授業でロレアル パリによるストリートハラスメントに立ち向かうトレーニング講義が行われました。

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、食生活科学科の学生が日本ロレアル株式会社のブランドであるロレアル パリとのコラボ授業を受けました。公共の場でのハラスメントに対しどう立ち向かうか、どう被害者に寄り添うべきかというセンシティブな内容に、学生たちも真剣に耳を傾けていました。学生たちは、企業が社会的責任に対しどう取り組んでいるか、企業の幅広い活動について学ぶ機会になりました。

女性を応援し続けるロレアル パリ

菊池裕貴氏は、2014年に日本ロレアルに入社。メイベリン ニューヨークというブランドでネイルやリップ、マスカラなどの開発、マーケティングに携わり2021年からはロレアル パリのブランドディレクターを務めています。ロレアル パリは、1909年発祥のブランドで、髪の毛を染めるヘアカラーから出発しました。日本ロレアルはイヴ・サンローラン・ボーテやシュウ ウエムラ、メイベリン ニューヨークなど数々の人気ブランドを抱えていますが、なかでもロレアル パリは100年以上変わらずヘアカラーやヘアオイルなどを取り扱っています。

掲げているスローガンは「あなたにはその価値があるから」。50年前から変わっていません。ブランドのマニフェストは時代に合わせ10年ほどで変わるのが一般的なところ、ずっと変わらずに女性の価値や自分らしい生き方を応援し続けています。

ストリートハラスメントって?

「日本は、残念ながら女性が生きにくいと正直思っています」と菊池氏。「これをどうにか変えていくために固定観念を打破し、女性の活躍をサポートするブランドになっていきたいと強く思っています」と語りました。

その一環として行われているのが「STAND UPプロジェクト」です。女性をとりまくストリートセクシャルハラスメントに対して立ち向かうためのプロジェクトで、世界各国で行われています。ストリートハラスメントとは公共の場でのハラスメントのこと。電車や飲み会の場、また家族のなかでの会話も該当します。こういった行為に立ち会った「傍観者」の立場に対しトレーニングを行い、ハラスメントを減らしていこうとするトレーニングをロレアルは一般社団法人Voice Up Japanと協力し行っています。

目をそらしてしまいがちなストリートハラスメント

続いてVoice Up Japanの佐野エレナ氏が登壇し「5Dアクション」についての講義が始まりました。ハラスメントを受けた人のなかで、誰かが介入したことで状況が改善したと答えたのは86%に上ります。「どんな形であれ誰かが介入してくれたら状況がよくなったと思えた人の割合は多いので、あまり不安にならずぜひ皆さん実践していただけたら」と佐野氏は語り掛けます。

不自然な身体の接触、お酌の強要、ストーキング行為…直接的な言葉をかけられるだけではなく、じっと見つめられるのもハラスメント行為にあたります。ハラスメントを受けた影響は、その場での不快感だけでなく長期的に残ります。自尊心を傷つけられ、うつやPTSDになったり、被害を受けた場所が怖くて近づけず行動制限を受けたり。日常生活が変えられてしまうのです。

「5Dアクション」を知りどう行動できるか考えよう

そういった場面に立ち会ったときにどう介入するか。学生たちはその方法として「5Dアクション」を学びました。物を落とすなどして気をそらす「Distract」、店員や責任者などに協力を求める「Delegate」、録画や録音して証拠を記録する「Document」、あとから被害者をケアする「Delay」、直接行動する「Direct」。「どんな行為ならできそうだなと思いますか」と佐野氏は学生に問いかけ、「Distract」や「Delay」なら行動できそうと学生も多く手を挙げました。

佐野氏は飲み会での先輩の発言や満員電車などさまざまなシチュエーションを想定し、自分に何ができるか学生たちに考えさせました。「自分の10分で、その人の一生が変わるかもしれません」と佐野氏。声を掛けるなど小さいと思える行動でも介入できると言います。また佐野氏は大切なこととして「ハラスメントは受けた人のせいではない」ということを強調します。自分がハラスメントの被害を受けた場合も「決してあなたのせいではありません」と伝えました。

学生たちも5Dアクションに前向きに

学生たちからは感想や意見がたくさん集まりました。「痴漢され自分も助けてほしいと思ったことがあるので、今後見かけたら見て見ぬふりはしたくない」「自分に何ができるか難しいが、どれかを実践してみたい」「一人では難しいが友達と一緒ならできるかも」といった前向きな意見が多数。実際に助けられた経験がある学生も。ストーカー被害に遭い、いまでも影響を受けていることを打ち明けてくれた学生もいました。

質問も多くありました。「お酒の場では自分もアルコールが入っていて行動は難しいのでは」「満員電車では自分も身動きできない」などの意見には「見てましたよという視線を送るだけでも有効です」と回答がありました。「自分がハラスメントを受けているときに助けてもらう方法は?」という質問には「アピールすることができればベストですが、一番は自分を守ることが最優先。あとから誰かに打ち明けてケアをする方法もあります」と伝えました。

学生たちの心に響く講義

ハラスメントは自分が加害者にもなりえます。例えば友達が誰かに付きまとわれた経験を話したとして「しょうがない」「可愛いからだよ」という言葉はその友達に原因があったことになり、二次加害につながってしまいます。またハラスメントは外見では嫌がっているか分からないことも。介入していいのか判断が難しいこともありますが「ちょっとしたことでも勇気を出してみるということは重要だと思います」と語られ、講義は終了しました。