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2024年12月13日

女性がたのしく活躍できる社会をめざそう!サニーサイドアップグループの次原悦子氏をお招きして特別講義が行われました。 

10月21日に「メディアプロデュース論」(担当:生活科学部現代生活学科 行実洋一教授)と「女性社会論b」の合同授業が行われました。株式会社サニーサイドアップグループの代表取締役社長である次原悦子氏をお迎えしての特別講義です。高校生のときから働いて今に至る経緯、PRという仕事のたのしさ、そして女性がもっと活躍していくためにはなど多岐に渡る話題を、ユーモアを交えてお話くださいました。

女子高生で社長に!

PR会社で働いていた母親が独立し、仕事を手伝うよう誘われたことが始まりです。17歳でサニーサイドアップグループの前身となる会社を立ち上げることになり、当時高校生だった次原氏が社長に就任。
「なので、女性起業家!と紹介されることもあるのですが、自分から始めたのとは少し違うんです」と経緯を話されました。
周りの友人たちが大学生活を楽しんでいるのを見て、うらやましいなと思うこともあったそう。
とはいえ「仕事をすることがたのしくて仕方なかった」と言います。「どんな小さな仕事でも世の中に参画しているということが嬉しかったんです」と語りました。

会社は少しずつ大きくなっていき、2008年に上場。今ではグループ全体で450名のメンバーを抱える企業に。
2023年度は過去最高益を記録しています。掲げるスローガンは「たのしいさわぎをおこしたい」。PRの力で人の心を動かし、世の中の空気を変えることで、明るい明日を創り出したいという想いがこめられています。

PR・コミュニケーションの力で人の心を動かす

「私たちはさまざまなニュースの裏にいます」と次原氏。
「ひとりでも多くの生活者にそのモノやコトを知ってもらい、その上でアクションを起こしてもらうことで、世の中の空気を変えること」がPR・コミュニケーションの力だと思います。知ったことにより、欲しい、食べたい、やってみたいと思ってもらうことが大事なのです。
「伝えるだけじゃなく、その人をどう動かすのかを考える仕事」と話しました。

「広告とPRの違いは、伝達の方法」だと言います。
広告は自分で自分たちの商品やサービスをアピールすること。PRは誰か他の人に良さを伝えてもらうことです。
例えばSNSのインフルエンサーや、テレビ番組の特集など、企業が直接働きかけるのではなく、第三者目線で情報を拡散してもらう方法です。
「信頼できる誰かに言われたら信憑性があると感じますよね。情報だけでは人は動かない時代。自ら情報を拡散したくなるようなストーリーを作ることが大事になっています」と語りました。

「PRはアイデア勝負で世の中を大きく変える可能性を持っている」と次原氏。
立ちあげたばかりの会社が小さかったときは、予算がないなかアイデアを出していたと言います。
現在、大企業を相手にするようになってからも、この考えを念頭に仕事をしていると話しました。

女性が活躍することで経済が回る

現在、次原氏は日本経済団体連合会(経団連)のダイバーシティ推進委員会委員長を務められています。
日本企業全体の女性社長の割合は8.3%。上場企業だけでみると0.8%しかいません。
次原氏は「そのうちの一人というのは光栄なことでもあるけれど、海外からみるとジョークを越えてホラーと言われます」とユーモアを交えて表現されました。

次原氏は、購買を決定する割合は女性が7割と言われていることを紹介し、女性が活躍することで経済が動くことを強調されました。
経団連は、2030年までに日本企業の役員に占める女性比率を30%以上にすることを目標に掲げています。
次原氏は「イギリスの大学教授に、女性役員30%をクリアしている会社は確実に成長していると言われました。感情だけが理由ではない、データサイエンスなんだよ、と」と語りました。

働く女性としての「失敗」

上場企業の女性社長として活躍する次原氏は、周りの女性社員を勇気づけるためにも、熱心に仕事に励んでいたと語ります。
しかし「大きな失敗」も経験されました。
2人の子どもを持つ次原氏ですが、一人目の出産は当日まで出社し働いて、2日後には病室でミーティング、その2週間後には完全復帰。海外出張に行ったりと慌ただしく過ごしていたと言います。

妊娠や出産を経ても仕事と両立できることをと示したかったからですが、女性社員は「あなたのようになりたくない」と会社を離れてしまいました。
大変ショックを覚えたと話します。
「頑張っているところを見せるのではなく、それぞれ違うライフステージにいる女性誰もが、働きやすい環境を作らないとと思い直しました」そこでさまざまな福利厚生や制度を整備。
現在は女性が働きやすい会社として世界的にも評価が広まっています。

熱意を持ってアクションを起こそう

講義の最後には質疑応答が行われました。
「結婚した際に苗字を変えることに疑問を感じましたか」という質問には「当時は抵抗なかったのですが、会社が大きくなるにつれビジネスの名前と本名が違うとで不便なことが多かったのは事実。」と自身の経験を話され、選択的夫婦別姓への議論が進むことを望まれました。
また「若い女性であるがゆえに、時に正当に評価されないことがあるかもしれませんが、ビジネスの場でどのように信頼を得てきましたか」という質問には、「人は頼られることが嬉しい。若い子が熱意をもってアクションを起こす姿を見ると応援したくなるもの。みんなも思いがあれば、アクションを起こしてみてください。きっと誠意を持って力になってくれる大人たちとつながれると思います」とエールを送りました。

担当教員のメッセージ

以前からテレビや新聞・雑誌といったメディア業界でしばしば耳にし、話題となってきた会社が「サニーサイドアップグループ」です。いわゆる大手広告代理店とはひと味違った、「クレバー」なPR・コミュニケーション手法を展開する会社として、かなりの注目を集めてきました。
今回、その会社のトップのお話をお聞きして、その訳が分かり納得しました。
卓越した女性経営者ならではの視点や、真摯でユニークな物事への取り組み、そして人間味ある経営方針などが、そうしたオリジナルな良さを生み出していたのだと改めて感じさせられました。
学生の皆さんからすれば、次原社長は遙か遠い星かもしれませんが、将来を照らす希望の星だと思って、多くを学んで欲しい講演でした。

2024年12月6日

作業着が可愛い50年代ファッションに!「常磐祭」にてアップサイクルした衣装のファッションショーを行いました。 

11月9日、10日に日野キャンパスで行われた学園祭「常磐祭」で、滝澤愛准教授(生活科学部 生活環境学科)のゼミ生たちがファッションショーを行いました。多摩都市モノレールの廃棄処分となる使用済みの制服などを素材に利用し、50年代ファッションに見事にアップサイクルを実現。多くのお客様に見守られながら、学生たちは堂々とランウェイを歩いていました。

50年代をテーマにアップサイクル

素材を提供してくださったのは瀧定名古屋株式会社、ひの市民リサイクルショップ回転市場の万願寺店、そして多摩都市モノレール株式会社です。廃棄予定の制服・作業着や生地などを使い、ファッションショーに向けて4月から取り組んできました。

今年のテーマは「50’sPOP We have more fun!」と題し、50年代ファッションをモチーフに服を制作。
オードリー・ヘプバーンやグレース・ケリーが有名なこの時代、ウエストをきゅっと絞りボリュームのあるスカートが生み出す「8ライン」が特徴のスタイルです。

50年代のデザインをコラージュしたイメージボードを作成し、それぞれデザイン画の案を作成しました。
ファッションショーに出すデザインは全員で意見を出し合いながら選抜。作りたい服のイメージを形にしていきます。本格的な服の制作は夏休み前から取り掛かり、約4ヵ月をかけて作り上げました。

ファッションショーでは学生自らモデルに

出来上がったデザインは、レトロでシックでありながら華やかさのある服たち。元が制服や作業着とは思えないものに生まれ変わりました。
ボリュームのあるスカートや膨らませた袖などはかわいらしく、落ち着いた色の組み合わせや体の沿ったラインの服は上品さも感じさせます。
服に合わせたヘアメイクも自分たちで行いました。大き目のリボンをつけ、髪も巻いてボリュームを出すなど50年代風にアレンジ。
いつもとは違う装いに、学生とは思えない大人っぽさを醸し出していました。

当日は何度も綿密にリハーサルを行いました。
ライトに当たりしっかりと前を向いて歩くモデルウォークは、滝澤准教授が自ら指導。
進行表は秒刻みで、プロのファッションショーさながらのリハーサルでした。

全身見てもらいたい!

ファッションショーに臨む学生に話を聞きました。

ゼミ長・矢島さん
「スケジュール管理やポスターの作成などを主導し、ゼミを引っ張ってきました。50年代をテーマにというのはゼミの全員で意見を出し合って決めました。シルエットがふわっとして今の時代でも可愛いと感じられるデザインだったからです。
使った布はすべてリサイクルのものです。私は多摩モノレールさんの制服のジャケットをアレンジし、回転市場さんのウェディングベールを使って華やかな服に仕立てました。アクセントのリボンはスカート一着丸々使っています。
今回はショルダーバッグなどの物販も行いますが、ひとつの商品ができるまでに素材を提供してくださる方、縫製を行ってくれる方、デザインを調整してくれる方などが関わってくださいました。多くの人が協力するからこそ、一つの商品が出来上がるんだと実感できたのは大きな学びだったと思っています」

多摩都市モノレールの制服をアレンジした学生
「多摩モノレールさんのズボンを裁断し、スカートにしました。制服なのでズボンの腰回りのサイズを調整できるようになっており、それを活かして服を作成しました。切ったズボンの足部分は、スカートの後ろの生地に足して変化を付けています。一番苦労しましたが、後ろを振り向いた時にふわっと可愛らしいシルエットになるようにしました。
膨らました袖も、中に芯となるボーンをつけ立体感のある仕上がりにしたので、そこがポイントです。生地によってデザイン画通りに作るのは難しいこともあるのですが、袖はデザイン通りにできたので良かったなと思っています。
ファッションショーはとても緊張しますが、アクセサリーも含めぎりぎりまで頑張って自分たちで作ったので、全身楽しめてもらえたらなという気持ちです」

アップサイクルを実感できるショーに

時間にはお客様であっという間に満席に。
学生たちは堂々とランウェイを歩き、大きな拍手に包まれ幕を下ろしました。
会場には多摩都市モノレールの社員の方々も駆けつけてくださいました。

多摩都市モノレール社員の方

「制服や作業服は日頃から破損などで交換をするため、廃棄が多く出ます。十分に使い古されていればよいのですが、人事異動などでまだまだ使えるものが返却されることもあります。もったいないと考えていたところに今回のお話をいただき、当社沿線地域にあります実践女子大学の学生の皆さんにも貢献でき嬉しい思いです。」

「提供したスラックスがスカートになっているなど大胆に変わっており、そういったアイデアはなかなか出てこないため、新鮮でした。アップサイクルと聞いても最初はイメージが沸かなかったですが、今日見て驚きました。形も全然違う、新たな付加価値がついた全く別の商品に変わるのだなと実感できました。」

バッグなどの物販も

ファッションショーの合間には商品も販売。
こちらも多摩都市モノレールの制服を使って、ポシェットやショルダーバッグなどを学生たちがデザインしました。
縫製は福祉施設「名古屋市身体障害者福祉連合会第一ワークス・第一デイサービス」に就労する障がい者の方たちが行いました。

ポシェットをデザインした学生
「肩ひもをネクタイで作成しました。ネクタイを切らずに1本分使ったのはポイントです。子どもでも使いやすく、ユニセックスで使えるようにと大きすぎず小さすぎないものを意識しました。
ファッションショーの服の制作と並行してデザインを作り、サンプルとデザイン画を送って縫製してもらいました。出来上がった商品を見たときはとても嬉しかったです。自分たちでサンプル1つ作るのにもとても時間がかかったので、感謝の気持ちがありました」

こちらの商品は11月16日に多摩都市モノレールが主催する「多摩モノまつり2024」でも展示販売されました。

担当教員よりメッセージ

環境汚染産業として全産業のワースト2位であるファッション産業。学生の皆さんは、ともするとファッションのキラキラとした表層の部分にしか目を向けてしかこなかったかもしれません。しかし世界中のファッション企業が、業界が抱えるその大きな問題に対して今や「マスト」として取り組んでいるサスティナブルやエシカル、そしてアップサイクルなファッションを、学生の内から企業の方々、福祉施設の利用者の皆様と連携して実践出来たことは大変いい経験と実学に繋がったのではないかと思います。今回の経験を踏まえ、更に実践の場を広げていけたら、と考えています。

2024年12月5日

「つながる市」で地域に土着化を目指そう!須賀ゼミで無印良品とイベントコラボのオリエンテーションが行われました。

現代生活学科 須賀由紀子教授のゼミで、10月22日に株式会社良品計画(以下、良品計画)との産学連携プロジェクトが開始しました。有名生活雑貨ブランド「無印良品」のフォルテ八王子店とコラボし、12月に地域に密着したイベントを開催します。良品計画が目指す「土着化」とはどういうことかオリエンテーションを受けたあと、さっそくイベントへ向けアイデア出しが行われました。

無印良品のものづくりへのこだわり

最初に良品計画の八王子ブロックマネージャーである藤崎央佳氏から無印良品について説明がありました。
無印良品は1980年創業。
「ワケあって安い」というコンセプトのもと港区青山に1号店を出すと、たちまち好評を得ます。いまでは世界に1200以上の店舗を構える大企業です。
無印良品の商品は、「これがいい」ではなく「これでいい」、をキャッチコピーにしています。「ただし、自信に満ちたこれでいい、です」と藤崎氏。
仕方なく選ぶのではなく、質の高さと安さを両立し、積極的に選んでもらえる商品づくりを目指しています。

無印良品のモノが手に取りやすい価格なのは「3つのわけ」があるから。
素材の選択、工程の点検、包装の簡略化を徹底しコストカット、生活の基本となる日用品のほか、家具や化粧品、家や宿泊施設まで幅広く展開しています。

地域のニーズに応える店舗

ここからはフォルテ八王子店の店長加納聖人氏が、無印良品の郊外店舗の在り方について話されました。
フォルテ八王子店はスーパーに併設された店舗で広さは約600坪。小学校の体育館より大きく「全速力で走ると疲れるくらい」と言います。
その店舗入り口とレジ横の休憩スペースが、今回のイベントスペースです。

2021年から、良品計画は「100年後のより良い未来の実現に向けて」をスローガンに掲げ、感じの良い暮らしと社会を実現するための取り組みを開始しました。
その使命は大きく2つあります。
ひとつは誰もが手に取りやすい商品販売。
もうひとつは地域へ良いインパクトを与えることです。
「全国津々浦々どこでも同じく必要なものが手に入ることも大切ですが、その地域に住んでいるお客様のニーズに応えてサービスや商品を提供することを大事にしています」と加納氏。
そのためには買い物だけでなく、店舗が地域に巻き込まれ人々の暮らしの場になることが大切なのです。

つながる市を通じて地域を知る

続いて、MUJIキャラバンで日本中のモノ・食づくりの産地を巡った長谷川浩史氏が、無印良品の目指す「土着化」について説明されました。
土着化とは「その土地になくてはならない存在になること」と言います。
店舗と人が信頼され、その土地の生活になじむことが土着化です。土着化で大切なのが、その土地にしかないものや歴史を伝えられる存在になること。
新しいものをつくるより、元々ある「役に立つ」ものを再発見することを重要視しています。

地域の役に立ち愛される店舗になること、そして地域のものや歴史を再発見すること。
この2つの考えから行われているイベントが「つながる市」です。
つながる市のコンセプトは「ヒトとつながる、マチをつなげる」。地域の特産品を購入したり、ワークショップを通して歴史や文化を学んだりできるイベントです。
「地元にこんなモノ・コト・ヒトがあったんだ、と気付いてもらえるきっかけを作ることを目指しています」と長谷川氏は話しました。

この地域にしかないモノや人は?

学生たちが参加するつながる市の開催時期は12月中旬。
そこでテーマは「クリスマス×つながる市」。
学生は3班に分かれ、それぞれ店舗やワークショップのブースを出します。どんなお店とコラボするか、どう宣伝するかも学生たちが考えていきます。
とはいえあと2ヶ月で準備するのはなかなか大変。

そこで長谷川氏からヒントとしていくつかお店の紹介がありました。
多摩市唯一のワイナリーや、都市型農業を実践しているハチミツ農家などに学生たちも興味津々。
「皆さんが知らない活動をしている人はたくさんいます」と長谷川氏。「ぜひその地域らしいものを見つけてください」と学生たちに期待をされました。

どんなイベントにする?

質疑応答では学生から「つながる市に良い企画を考えるコツは?」という質問が。
長谷川氏は「SNSなどを通して、その地域を強調している投稿を探しましょう。そういった投稿のなかから、飲食店やアーティストなどを絞り込んでいく方法です」と紹介。
また、「フォルテ八王子店は複合施設ですが、飲食店が少ない。コーヒーやドーナツなど小腹を満たせるちょっとした食べ物は需要があるかもしれません」と話しました。

そこから授業の終わりまでさっそくグループごとでワークを行いました。
模造紙にアイデアを書いたポストイットを貼って、相談し合います。
「クリスマスだからケーキ屋さんとか」「クリスマスカードのワークショップは?」などテーマについて考えたり、八王子市や日野市にある工場や農場から調べたり。
イベントに向けてさらに案を練っていく予定です。

また、11月19日には、実際の店舗に学生たちが見学に行き、店長の加納氏から店舗の特徴や商品のこだわりを伺いました。
衣服、食品、化粧品、雑貨それぞれの説明を受けた後、学生たちは当日のレイアウトや導線、販売形式などを確認。
残り1ヶ月をきっている状況ですが、学生たちは主体的に準備を進めています。

つながる市
2024年12月14日(土)~15日(日)開催
@無印良品 フォルテ八王子
〒1930803 東京都八王子市楢原町1463ー1 フォルテ八王子1F
https://www.muji.com/jp/ja/shop/046606/articles/events-and-areainfo/events/1561995
※実践女子大学の企画は14日(土)のみ

担当教員よりメッセージ

誰もが知っていて、とても身近なところにある無印良品様の店舗でのイベントとあって、学生たちは精力的に取り組んでいます。学科で学んでいる「環境配慮社会づくり」と、地域の魅力的なヒト・モノ・コトを活かす「地域づくり」のテーマを活かし、「地域を大事に思う人をつなぐ」というコンセプトで企画をすすめています。素朴ながらも、現代の若い女性たちの思いやセンスに気づいていただけるような場になるとよいなと思っています。イベント実施日が決まっているので、それに向けての段取りと、チーム内のコミュニケーションもとても大事です。この「実践」を通して、学生たちがたくさんの学びを得て、また、店舗にいらっしゃる皆様にも喜んでいただけるものになればと願っています。

2024年11月25日

SNSと上手に付き合うために。「経営学概論」の授業でSNSの可能性とリスクを学ぶUUUMとの特別コラボが行われました。 

11月6日に「経営学概論」(担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業でUUUM株式会社の特別講義が行われました。講師は本学のOGです。SNSを中心に活動するインフルエンサーのマネジメントを多く手掛けるUUUM。学生たちも普段から利用するSNSの可能性とリスクについて考える機会となりました。

クリエイターをサポートする

登壇された平林愛海氏は、篠崎ゼミの卒業生。総合商社を経て2019年からUUUMに入社しました。
本学に在学中は「大学を卒業したあと、大学で何を勉強したんだっけと迷わないように資格を取りました」と、教員免許と認定心理士資格を取ったと言います。
授業が多く大変だったけれど、自身の糧になったことを話していました。

UUUMは2013年設立の企業です。
「皆さんのなかでもインフルエンサーの事務所というイメージがあると思います」と平林氏が言う通り、幅広いクリエイターのマネジメントやサポートを行っている会社です。
所属するクリエイターの活動場所は動画配信サービスのYouTubeやInstagramなどSNSがメイン。SNSと向き合う仕事です。

SNS、どのくらい使ってる?

「SNSってどんなイメージがありますか」と平林氏。
SNSの歴史を説明されました。SNSは交流サービスとして2004年に作られたFacebookが始まりです。
その後YouTube、Twitter(現X)、InstagramやLINEと次々に登場。現在は多種多様なSNSプラットフォームが存在しています。

平林氏は「では一日にどのくらいSNSを使いますか」と学生たちに質問しました。
1時間未満という学生はほぼ0。
1~3時間という人が少数おり、3時間以上という選択肢に半数以上が手を挙げました。
平林氏は「データ的には1~3時間の人が60%なので、実践女子大学の学生さんは平均よりよくSNSを見るということですね」と興味深そうに話しました。
「それだけ皆さんの生活にSNSがなじんでいることが分かりました」。

好きなことを仕事にする

ここで平林氏は所属するクリエイターの一日のスケジュールを紹介。
「皆さんも見たことのあるインフルエンサーかなと思います」と話され、学生たちも興味津々。
SNS投稿を本業にしているクリエイターは一日中動画の撮影や編集、企画などをしていますが、「最近副業でSNS投稿をする副業クリエイターも増えてきています」と平林氏。
普段は会社などで勤務して、終業後や休日を活動に充てると言うスタイルです。「自分の好きなことに向き合える、と子育て中のママさんなどもいます」と紹介しました。

UUUMには登録者数がのべ100万人を超える大人気クリエイターも。
彼らは知名度や収益が高く、自分の好きなことをとことん追求できるというメリットがある反面、あることに悩まされることも多いと言います。それはSNSでの誹謗中傷です。

誹謗中傷はどうして起こる?

SNSを使う上で理解しておきたい知識として、平林氏は誹謗中傷について話を始めました。
「有名人だけが注意することでしょ?と思うかもしれませんが、想像以上に近くにあり、皆さんも知らず知らずのうちに加害者になりえます」と言います。
誹謗中傷とは、悪口を書き込むなどして相手の人格や名誉を傷つけること。
「なぜ誹謗中傷してはいけないかと言えば、傷つく人がいるから。これがすべてかなと思っています」と平林氏は語りかけました。

では人を傷つけてはいけない、という子どもでも分かることがなぜ起きてしまうのでしょうか。
それは、誹謗中傷した8割の人が「正義感」で書き込んでいるから。間違っていることを正そうとしたり、許せないと感じたり、書き込むことが良いのだと思っている人が大半なのです。
平林氏は「ネットの誹謗中傷は、自分が誹謗中傷していると気付いていないことがとても多いのが現状です。するつもりがなくてもやってしまっていることがある。このことを認識してSNSを使ってほしい」と話しました。

誹謗中傷をすると、相手の人生だけでなく損害賠償を求められるなど自分の人生を狂わせてしまうことも。平林氏はどんなことが誹謗中傷にあたるのか、詳しく説明をされました。
また、被害に遭った場合も絶対に抱え込まないようにとアドバイス。
相談窓口もたくさんあることを紹介しました。

正しくSNSと付き合おう

授業の最後に、学生たちからの質問を募集し質疑応答が行われました。
「UUUMに入ったきっかけは?」という質問に「自分はトレンドに疎いのではないかと感じ、最先端の仕事がしたいと思った」と回答。
「一日の仕事の過ごし方は?」という質問には
「会社はフレックス制でテレワークが多いです。担当しているクリエイターに合わせ、撮影やイベントに付き合うため休日出勤や夜間など変動も多い」とUUUMならではの働き方も紹介されました。

SNSの危険性を学んだ学生の「SNSであまり発信しない方が良いのか」というコメントには、
「自分が好きなものについては積極的に発信してもらいたいと思います。SNSは皆さんの持っている価値を最大限発揮できる場所。リスクを知ったうえで上手に使ってもらいたい」と平林氏はSNSの可能性にも言及し、講義を終えられました。

担当教員よりメッセージ

SNSを使用しない日がほとんどないという現代生活において、そのリテラシーを学ぶ機会はとても限られています。今回は人間社会の卒業生である平林さんをお迎えして、学生がなかなか知ることのないUUUM社の活動やクリエーターさんたちの日常、そしてSNSを利用するうえでのマナーについてお話を伺うことができました。
質問の時間には、平林さんの現在の仕事の様子にとどまらず、キャリア選択や大学時代に取得した資格などに話題が及び、学生は今の自分たちに通じる情報を得ようしている様子が伺えました。学部の先輩との交流という点からもとても有意義な時間になりました。ありがとうございました。
準備から当日まで平林さんをサポートされていた上司の南様にも感謝申し上げます。

2024年11月20日

生成AIを使ってみよう!ゼミ「演習ⅡB」でサイバーエージェントとのコラボ授業が行われました。 

10月1日に「演習ⅡB」(担当:人間社会学部人間社会学科 粟津 俊二教授)のゼミで、株式会社サイバーエージェントの川越寛之氏による特別授業が行われました。広告事業に生成AIの利用を積極的に取り入れている企業の方から、生成AIの使い方を学びます。学生たちは実際に動かしてみながら、仕組みや注意点を確認しました。

広告はAIで作る時代

サイバーエージェントは、100以上の関連子会社を持つ企業。
主にインターネット広告・メディア・ゲームの3つの事業を主にビジネスとしています。メディアやゲーム事業ではインターネットテレビ局「ABEMA」や人気ゲームが次々にヒット。
川越氏はもう1つの柱であるインターネット広告事業に携わっています。
「ゲームなどと比べあまり身近ではないかもしれませんが、広告代理店の仕事です。皆さんのSNSに流れているような広告などを作っている」と話しました。

サイバーエージェントでは広告事業部のなかに「AIクリエイティブ部門」があり、川越氏はその統括をされています。
「7、8年前からすべてAIで製作しています」と、デザインや映像製作にとどまらず、広告の効果の予測や、広告文の作成などに至るまでさまざまな場面でAIを活用していると話しました。

AIはこれからどんどん身近に

いまは「毎日AIのニュースが流れてくる」時代と川越氏。技術の進歩は特に目覚ましく、この前までできなかったことがどんどん出来るようになっています。
川越氏はサイバーエージェントのアルバイトの大学生の作った動画を紹介。「バイトをはじめて2ヶ月くらいの学生でも、AIを使って動画やアニメーションが作成できる」と話しました。
そして、今後スマートフォンなどに次々に搭載され「これから皆さんAIを知らない間に使うようになる」と、どんどん身近な存在になると語りました。

「ただ、AIは危険なんじゃないの?と考える人もいると思います」と、安易にAIを利用することの危険性にも言及。
著作権や肖像権の問題などは、あいまいだったり未解決な部分、規制が進んでいないことが理由のひとつ。
「AIは便利ですが、きれいなものだけで出来ているわけではない」と語りかけました。

AIを使って画像を作ろう

「‎Gemini」と「話して」みることに。
チャットスタイルで文字を打ち込むと、すぐに文章が返ってきました。
知りたいことやただの雑談、旅行計画の相談など、学生たちはそれぞれAIと会話をしていきます。「渋谷でおすすめのランチを教えて」と聞いた学生は、いくつかお店が出てきて役に立ったようですが、「お菓子が食べたい」と話しかけた学生は「甘いものを食べたいときの対処法」など少し見当違いな回答も。

まだ的確な回答をするのは難しい場合もありますが、コツとして、文章で条件を細かく指定していくことを教えてくださいました。数字を指定したり具体例を出してもらうようにしたりすると、より正確に出てくる確率が高まります。
「会話をしてだんだん慣れていくと、思い通りのものが出てくるようになります」と話しました。

次に「Image FX」を使って、画像を作ってみることに。
テーマは「昭和と令和を掛け合わせたおもちゃ」です。かわいいブリキ人形や、近未来的なコマなどユニークな画像が、10分ほどで生成されました。学生たちは互いに見せ合い、感想を言い合っていました。

AIとの付き合い方は?

半導体などの技術が進み、普段使っている自然な言語で、AIと会話できることを実感した学生たち。
「では、生成AIは考えることはできるんでしょうか」と川越氏は問いかけます。
答えは「今はできない」です。
生成AIは学習した大量のテキストデータをもとに予測をして、確率が高い返答をしています。
このため、AIは「嘘をつく」ことも。AIは絶対的な事実を聞くには向いていません。
間違った情報をもっともらしく生成してしまうことをハルシネーションと言い、「これはものすごくよく起きる。」と川越氏。
「ハルシネーションは当面はなくならない。気を付けて使うしかないんです」と語りました。

最後に川越氏はAIのメリットを話しました。
「AIを使う一番の良さはスピードです」と、読むのが大変な大量の資料を読み込ませて要約させる使い方や検索方法を紹介。
「AIは何度聞いても怒らないし疲れない。便利に使うことで努力のしどころが変わってくる」と語り、「ぜひたくさん使ってみて、慣れていってください」と講義を終えられました。
最初はAIを難しく考えていた学生たちも、実際に使うことで身近に感じられるようになる授業となりました。

担当教員よりメッセージ

生成AIは急速に普及し、その生成物を見聞きする機会も増えてきています。様々なデバイスやサービスに組み込まれて行っていますので、今は使ったことのない学生も、遠からず、どこかで使うことになるでしょう。今だからこそ、長所も短所も、問題点も将来性も、積極的に体験して欲しいと思っています。今回は川越様に、最先端の使い方の一端をご紹介頂けました。生成AIについて、知識だけでなく実際の使い方も知ることができ、貴重な学びの機会が得られたのではないかと思います。川越様には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

2024年11月15日

人気ゲームの企画立案!?セガサミーホールディングスと「文化の盗用」について学び、実践する特別コラボ授業が行われました。

10月29日に「海外の日本文学」(担当:国際学部国際学科 大塚 みさ教授)の授業でセガサミーホールディングス株式会社との特別コラボが始まりました。「文化の盗用」について知り、どう付き合っていくかを実地で学ぶこの授業。社会の最先端にいる企業に協力いただき、世界の広がりを感じることができる貴重な機会となりました。

ゲームで世界に感動を

はじめにセガサミー法務知的財産本部の寺原潤氏からセガサミーグループについて紹介がありました。
セガサミーグループはゲームを筆頭にしたエンターテインメントコンテンツ事業、パチンコの開発や販売をする遊技機事業、そしてリゾートの運営やカジノ機器の開発を行うゲーミング事業を軸に展開しています。「感動体験を創造し続ける」をミッションに、ありたい姿として「Be a Game Changer」を掲げています。
「この革新者たれ、という精神は、実践女子大学にも通じる考えとシンパシーを感じています」と寺原氏は語りました。

今回は数あるグループ会社の中でもゲーム開発を行う株式会社セガとのコラボです。
セガでは家庭用ゲームソフトの開発が主力。ゲームをする人は全世界に30億人を超えると言われ、大きな市場です。
「だからこそ、文化の盗用は問題になっています」と寺原氏。
今回の課題について触れながら説明をされました。

文化の盗用とは?

続いてセガの表現倫理ユニットに所属されている吉田一彦氏が登壇。
「ゲームなどのコンテンツ内の表現が倫理的に適切なものにするためのサポートをしています」と仕事内容を紹介されました。技術が進歩するにつれゲーム内でもリアルな表現ができるようになったことにより、表現一つひとつが、社会的に問題がないか確認する必要がでてきたのです。
そのひとつが「レーティング」。
定められた基準に照らし、対象年齢などの目安を提示するものです。暴力表現などが多いものなど、未成年からの保護が大きな目的です。

しかし「文化的な理由で年齢問わずNGにすることもある」と吉田氏は話しました。
地域の文化、宗教に合わない表現があった場合にストップをかけるのも大事な役目です。
法律や条例には違反していなくとも、文化や宗教の倫理的に侮辱や差別に該当しかねない表現をチェックするのです。「社会との価値観のズレがないように、さまざまな相談があります」と吉田氏。
例えば、2021年に行われた東京オリンピックのオフィシャル映像の初期設定では、神社の境内でサッカーやバスケットボールをするという構想があったと言います。しかしこれは神聖な場所にはふさわしくない行為ということでNGを出したと話されました。
「こういった倫理観は全世界、地域ごとで違っている。相談があるたび自分たちもそれぞれの国の文化や伝統を一から調べています」と語りました。

防ぐためにはどうする?

では「文化の盗用」は具体的にどのようなことでしょうか。
吉田氏は「自分の文化ではない文化や伝統から物事を流用、私物化する行為」と話します。部外者がよく知らずに外見だけ真似ることで、誤った模倣が広がってしまい、元々の伝統が守られなかったり差別につながってしまったりすることも。

吉田氏は実際に問題になった例を上げていきました。
そこには日本の文化である着物が盗用された例もありました。また日本家屋の屋内にハイヒールで立っている写真の例なども紹介。
「日本文化が何一つ尊重されていないと批判が殺到しました」と吉田氏。このほかにも、黒人文化のヘアスタイルやファッションを安易にまねた例や、インディアンやサーミ族など少数民族の伝統を盗用した例も。
そこには「世界的に有名なブランドも次々に批判されています」と吉田氏は語り、文化の盗用をしないことの難しさを語りました。

「こういった相談はこうしたらいいという正しい対処法がなかなかありません」と吉田氏。
しかし「他文化の要素を取り入れることはNGではないはずと信じたい」と言います。きちんと調べ尊重して正しく取り入れれば、その文化を伝えることもできると考えています。

文化の盗用に注意してゲームを企画しよう!

ここで学生たちの課題が寺原氏から発表されました。
セガ製作のゲーム「龍が如く」の新作の企画立案です。それぞれお題の国や地域が与えられ、リサーチとディスカッションにより文化の理解を深め、文化の盗用を避けるという点を重要視して作成することが求められます。
そのとき一目で「○○編」だと分かるようなキービジュアルを作ることも課題のひとつ。
単純な街並みだけでなく、ストーリーにもその地域らしさを盛り込みます。

担当の国・地域はくじ引きで決定。
アルゼンチンやトルコ、イギリス、ドイツ、ペルーなどさまざまな国が発表されました。
各チームは各国についてリサーチをして要素を探していきます。

最後に学生たちから質問の時間が取られました。
「批判されたら文化の盗用に当たると判断されるのでしょうか」という質問には吉田氏が「批判されたら、ということではないけれど、その文化の当事者が怒るというのは一つの基準です」と回答。
文化の盗用を防ぐには倫理観を正常に保つことが大切と言い、「みなさんもこの点に気を付けて頑張ってください」とエールを送りました。

担当教員よりメッセージ

この日を心待ちにしていた学生たちは、みな真剣なまなざしで話に聞き入っていました。当日のリアクションペーパーには、「文化の盗用」に対する深い理解とさまざまな観点から抱いた関心、そしてチーム課題に対する並々ならぬ意気込みが一人ひとりのことばで綴られていました。
100分間という短い時間でしたが、豊富な事例を用いた「文化の盗用」のレクチャー、そして学生たちを鼓舞する細やかな演出によって、大変有意義なコラボ授業を行うことができました。セガのみなさまに心から感謝申し上げます。
初回授業から重ねてきたチーム学習の成果を活かし、11月の中間発表、そして12月の最終発表に向けて、力を発揮できることを願っています。

2024年11月5日

企業格を考えよう!「グローバル・キャリアデザイン」の授業で元資生堂の山田氏による講義が行われました。 

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月18日に元株式会社資生堂の山田正人氏による講義が行われました。企業にも人格のような「格」がある、というお話のもと、さまざまな企業の企業格を調べてみるケーススタディを行いました。それぞれの企業の特徴をつかむヒントになる、就職活動にも応用できる実践的な授業となりました。

企業にも「格」がある

現在山田氏は、エフクリエイション株式会社に所属しています。
企業広告や商品パッケージやデザインなどをつくる広告制作会社です。エフクリエイションは、資生堂の創業家である福原グループのひとつ。
資生堂とはいまも深い縁があります。
今回は資生堂の現状や歴史や社風などを通して、「企業格」について考えていきます。
「私がしゃべるばかりでなく、皆さんがどう考えどう活かすかを大切にしていきたいです」と話され、講義は始まりました。

まず、前提となる人格とはなにか、というお話から。
人格とは「能力、性格、気質」からなるもの。性格と気質は似たような概念ですが、「性格は成長するにつれあとからできるもの、気質は遺伝的・先天的なもののことです」と山田氏。
この考えを企業にあてはめたのが、企業格です。企業でいう「能力」は、売上利益・ブランド・商品など。「性格」は理念。
また広告や社長の発言など、時代によって移り変わるものです。
そして「気質」は企業の歴史や社風。長年にわたって蓄積されてきた風土だと話しました。

資生堂の作り上げた企業格とは

ここで資生堂を例に企業格を見ていくことに。
資生堂は化粧品業界ではNo.1の業績です。
「能力という目に見える企業格では日本のトップです」と山田氏。
性格にあたる理念では、美を創る、提供することで世の中を良くするという「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を掲げています。
150周年のCMでは、世代を超えて自分らしく活躍する女性たちの姿を表現し、好評を得ました。

気質として、創業者の福原家のことを紹介しました。
資生堂は1872年日本初の洋風薬局として銀座に開業。化粧水や歯磨き粉がヒットし、大きくなっていきました。
2代目の時代に本物やデザインにこだわる「資生堂スタイル」が徐々に確立していきます。
特に資生堂を象徴するモチーフになった「花椿」は2代目自らが描いたスケッチを元にデザインされました。
「ブランドイメージという概念もなかった時代に作り上げていったんです」と、山田氏は2代目の持つ先見性とアートの精神を伝えました。同時期に試験室を開設し、最先端の技術を化粧品に応用することを目指していきます。
山田氏は「このアートとサイエンスの理念は今なお続いています」と話されました。

人に温かい社風はいまも

企業格の気質には社風も含まれます。
資生堂は、人に温かく、社員一人ひとりが互いを尊重し合う社風です。
「私も学生の際の企業面接のときに、エレベーターのボタンを社員の方が開けてくれ、いい会社だなと感じたことがあります。小さなことですが、人に温かいというのは資生堂の持っている気質で、それが周りの人を幸せにするのだなと思います」と山田氏。
社外や世間からのイメージも、信頼性が高く安心感がある、という評価を受けています。

最後に山田氏が資生堂の企業格をまとめられました。
能力は日本を代表する化粧品会社であること、性格は品質や安全性の高い製品を作り美で世界を豊かにすることを目指していること、気質は創造性を大事にしてチームワーク良く仕事に取り組んでいること、を表にして示されました。
「これを例にして、みなさんにも企業格を考えてもらいたいと思います」とケーススタディが始まりました。

身近な企業はどんな企業格?

ケーススタディで示されたのはアパレル企業のユニクロ、飲食業のスターバックスコーヒー、生活雑貨の無印良品、日清食品の4つ。
学生は10つの班に分かれ、それぞれ担当の企業について企業格を調べていきます。学生たちは協力し合いながら各企業について調べていきました。

20分ほどワークの時間が取られたあと、最後に各班から調べた企業格について発表がありました。
ユニクロについて調べた学生は、性格として企業理念のほか、「CMにさまざまな人種や年代の人を採用している」ことに着目。
山田氏も「ダイバーシティを推進している企業ということが分かりますね」と感心されました。
日清食品を調べた班からは企業サイトに合った文言から「ハッピーやユニークであることを重視している」という点を挙げました。
山田氏は日清食品の企業ミュージアムがあることを紹介し、「商品を使うだけでなくミュージアムで体験することでより企業を知ることにつながります」と話しました。

企業格を考え就活に役立てよう

最後に山田氏は「今日で実践女子大学の、真面目で熱心だという大学格が分かった気がします」とあいさつ。
「企業格を考えることは、その企業がどんな会社であってほしいかを考えることにつながります。就職活動のときにもぜひ考えてみてください」とアドバイスを送りました。
学生たちにとって就職活動の企業研究のヒントとなる授業となりました。

担当教員のメッセージ

本授業には、初めてお越しいただきました。
海外の事業所での経験を含めて、グローバルキャリアを築かれてこられた山田さんのお話しは、
大変興味深い内容でした。そして「会社の格」という視点での見方は、学生にとっても
私にとっても新鮮な切り口でありました。
時代とともに会社の姿は変化していきますが、やはり150年の歴史を刻む資生堂ならではの
語り継がれたミームは、永遠に変わらないと思います。
これから就職活動に臨む学生に対する企業研究の新たな視点は、大変参考になる示唆に富んだ
内容を構築いただきました。この場を借りて山田正人様には心から感謝申し上げます。

2024年10月30日

お化粧は心を満たすもの。「国文学マーケティングプロジェクト」の授業で資生堂企業資料館の貴重な資料を拝見する講義が行われました。 

10月3日に「国文学マーケティングプロジェクト」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社資生堂の企業資料館の大畑昌弘氏による特別講義が行われました。資料をたどることで、企業の歴史とともに日本の近代史を肌で感じることができる貴重な時間となりました。

貴重な資料を一か所に集約

資生堂の企業資料館は静岡県掛川市にあります。
1、2階が展示スペース、3、4階が保管庫になっています。資料館は1992年に開館。
きっかけは「創業100年に社史を創ろうとしたこと」と大畑氏。
創業当時からの資料を全国から収集したことでした。現在21万点収蔵され、現在も販売されている新商品を集め続けているため年々増えていると言います。

ここで大畑氏は「資生堂はどんな会社だと思っていますか」と学生たちに問い掛けました。
「一言で表すのは難しいですが、私たちは『変わらないために変わり続けてきた会社』だと考えています」と話しました。大切にしているこだわりを守り続けるために、時代に合わせてさまざまな変化をしてきた資生堂。
その歴史を資料とともに紹介してくださいました。

本物を志向し新しいものを生み出す

資生堂は1872年創業。
創業者は医者の家に生まれた福原有信です。
現在の東京大学医学部にあたる幕府医学所にて、当時最先端の西洋薬学に出会います。当時、日本で使われていた薬と言えば漢方でした。
福原は西洋薬学を浸透させたいと、民間では日本初となる西洋薬学の調剤薬局を始めました。
それが資生堂です。

資生堂の名は中国の古典である易経の一節、「万物資生」から採られました。全てのものは大地から生まれるという言葉です。
「ここから考察出来るのは、新しい価値を生み出していくというフロンティアスピリッツです」と大畑氏。
それまでなかった西洋薬学の薬局という新しいものを生み出した福原。
「この新しい価値を生み出すことで、より良い世界にしていくという考えは現在のミッションにもつながる」と話しました。

1888年には日本初の練り歯磨きを発売。
かなり高価でしたが大ヒットしました。陶器に入ったラグジュアリー感もあり、本物を志向する資生堂を象徴する商品となりました。
1897年発売の化粧水「オイデルミン」も、資生堂を代表するヒット商品。当時最先端の技術により作られましたが、現在も改良が重ねられ販売され続けています。

文化発信の役割も担った

資生堂の少し変わったビジネスに飲食業があります。
「資生堂パーラー」は資生堂が運営するレストラン。創業者の福原有信がアメリカのドラッグストアでソーダ水を販売していることをヒントに、ソーダ水製造機を輸入して店内にソーダファウンテンをつくったことから始まりました。
本物志向はしっかり受け継がれ、息子である福原信三が、ソーダファウンテンをレストラン「資生堂パーラー」に発展させ、オーケストラの演奏や銀食器の使用などにより、高級なレストランとして浸透しました。「ものごとはすべてリッチでなければならない」とは息子信三の哲学です。
「資生堂は高級なもの、間違いのないものを扱っているというブランドイメージを醸成した」と大畑氏は説明しました。

1934年のミス・シセイドウが美容部員の起源です。
採用された女性たちは、化粧品の知識やメイク方法などはもちろん、着付けやテーブルマナー、歩き方など教養やマナーをしっかりと叩き込まれました。資生堂を代表する一流の女性として育てたのです。
彼女たちはミスシセイドウとしてスター的な人気を得て、女性たちの憧れの存在になっていきました。

女性文化情報誌「花椿」の発刊もこの頃です。
商品の宣伝のほか、海外の映画情報や献立のレシピなども載せていました。生活の欧米化が進みつつもテレビもない時代、文化の発信も担いました。

化粧は生活に必要なもの

とはいえ、資生堂もすべてが順風満帆だったわけではありません。
1923年の関東大震災や戦争の時代は商品を作ることも売ることも難しいときも。

最近では、2011年の東日本大震災も大きなダメージがありました。
資生堂はすぐ支援のために動きます。物資の輸送はもちろん、社員が現地に赴き化粧品がなくてもできるお手入れ方法を伝える活動も行いました。
現地で被災者の方と交流を重ねる中で、化粧品とは何か、ということと向き合っていったと大畑氏は語ります。
当時の経験から大畑氏は、「化粧は心を満たすものです。化粧品は食料品などと違って、生きることに必要なものではないかもしれませんが、明日を信じることや、前向きになるために重要なものであると知りました」と話しました。

コロナ禍では、手肌が荒れにくいアルコール消毒液を開発。
医療関係者に無償提供しただけでなく、さまざまな企業で作れるよう処方も公開。利益だけを追うのではなく、世の中を良くするために行動し続けています。
「資生堂は今年で152年目を迎えます。これからも想像もつかないような変化がうまれていくことでしょう。それでも変わらないために、変わり続けていくのです」と大畑氏は話しました。

前向きになるために必要なもの

講演後には学生から「お化粧をする日としない日では気分が違う。お化粧をすると気分が上がるので、震災のときの話はとても共感しました」という感想が。
大畑氏は、「化粧品がほしいと思えることは、社会に出る、つながるという感覚がある。生活必需品ではないと思われがちですが、一番大事なものになることがあるんです」と熱意を込めて語られました。

授業の最後には、資料館から持ってきた貴重な資料を実際に鑑賞。
学生たちは美しい化粧水や香水、ヘアトニックの瓶などを真剣に見入っていました。

担当教員のメッセージ

国文学の学びと企業活動を結び付けて考えることをコンセプトにした本講座も5年目を迎えました。
本講座には、資生堂と叶匠寿庵の2社にご協力をいただいて授業が進行していきます。
まずは、資生堂企業資料館の大畑館長からの講話をいただきました。和魂洋才をベースにおく資生堂、
近代文学の中にも数多く登場する資生堂パーラーなど、国文学の学びが、企業の歴史の中に
散りばめられていることを改めて学びました。大畑館長には、この場を借りて心から感謝申し上げます。

2024年10月29日

人を巻き込む思考力を身に付ける!「キャリアプロジェクト演習」の授業で取り組みたい社会課題のプレゼンテーションが行われました。 

10月15日に行われた「キャリアプロジェクト演習」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、学生たちが企業の皆さまを前に発表を行いました。身近な社会課題の中から自分たちで取り上げたいテーマを選び、それを解決する策をプレゼンテーション。企業の方々のサポートを受けながら、この授業内での実現を目指し取り組んでいきます。

心強いメンターのサポートを受けられる

この日は緊張した空気が学生たちを包んでいました。
株式会社資生堂の渡部卓明氏、株式会社ベネッセi-キャリアの東山高久氏、株式会社オリエンタルランドの横山政司氏の3名がそろい、皆さんを前にプレゼンテーションを行うためです。
この授業では、企業側から課題をもらって受動的に取り組むのではありません。自分たちが取り上げたい社会課題を見つけるところからスタート。
そして解決案のプレゼンテーションで終わるのではなく、メンターの助力を得ながら、実際に解決策を実践するところまで目指していきます。

「メンター」とは取り組んでいる内容について指導・助言をしてくれる、信頼のおける相談相手のこと。内容を良い悪いと判断するのではなく、一緒になって良いものになるようサポートしてくれる役割です。
横山氏は「今日は、成長のために厳しいことを言われるかもしれません。
ただ、きっと今後の参考になる。自分の班だけではなく、他の班に言われたことも聞いておきましょう」とアドバイスをされました。

誰のための課題解決?

早速各班が取り組むテーマの発表です。
まずは3班から。
渋谷のオーバーツーリズムを取り上げました。渋谷のように観光場所が限られている場合、滞在時間は短く経済効果が少ないことや、一か所に人が集中することが課題と考えました。
そこでSNSを利用し観光客の流れを変えようと発想。
知られていない文化的な場所を発掘・紹介することで観光客の分散を図ります。

発表後はメンターからの講評をいただきました。
東山氏からは「誰のための解決策なのか明確に。困っているのは観光客なのか、地元住人なのか絞りましょう」と助言がありました。

次の4班はフードロスに着目。
身近なところで本学の食堂が使える時間が限られていることに、学生が不便を感じているのを聞きこみました。
そこで食堂の職員にアンケート調査を行い、食品の廃棄量や人員不足で長時間食堂を開けておけない実態を調査。
そこで食堂以外の場所でパンを販売し、稼働率を上げることで廃棄を減らす案を考えました。
渡部氏からは「なぜフードロスが起こるのか、パンを販売することでその根本的な問題解決につながるか調査が必要ですね」と話されました。

渋谷の過ごし方をよりよく

5班は本学のトイレにハンドドライヤーがないことを課題にあげました。
取り付けるには費用などハードルがありますが、学生たちの声として要望の強いハンドドライヤーを設置できないかを検討していきます。
東山氏からは「自分たちのやりたいことをやるだけでは人は協力してくれない。
設置することでどんな社会課題が解決に近づくか考えてみましょう」とアドバイスされました。

1班は渋谷がどこも混んでおり少しの時間つぶしも難しい点をあげ、過ごしやすい拠点づくりを提案。
学生向けに低価格で過ごせる場所を提供するため、企業や大学と連携していきたいと考えています。
発表後は「本当に渋谷にはそういう場所がないのでしょうか。同じような取り組みをしている場所がないか調査してみましょう」と渡部氏が助言されました。

当事者意識を持って取り組む

6班も渋谷での過ごし方に注目しました。
カフェの込み具合や待ち時間の分かるアプリを作成し、短い時間でも有効に過ごせる方法を提案。
リアルタイムで待ち時間を更新するにはお店側の負担となるため、客に入力してもらえるようなシステムを作りたいと考えています。

東山氏は「皆さんが過ごせる場所を探しているのはよく伝わりました。社会課題との関係性を明確にして、店側や協力者にもメリットになるか考えると良いと思います」と話しました。

最後の2班はこども食堂について。
子ども食堂という名前自体は知っていても、実際どこにあって何をしているのか知っている人は少ないことを課題として、必要な人に届くような工夫や補助金の案内を行いたいと考えました。
渡部氏からは「この活動を皆さんがやる意味は何かが大事。上辺でなく寄り添う活動を期待します」と応援の言葉も聞かれました。

人を巻き込む説得力を

全班の発表が終わった後は、もらった助言を踏まえてグループでディスカッション。
メンターの方々が各班を回り、どうすればさらに良くなるか、現在はなにが問題かを相談します。
社会にとってどんなメリットがあるのか、自分たちが取り組む意味は何か。どういう点を強調すれば協力者が見つかるのか。各班まだまだスタートに立ったばかりです。

来週から提案の実現に向け、メンターとの相談を通し、さらに企画を詰めていきます。
東山氏は「協力者となる企業が、学生たちとその企画をやろうと思えるような説得力が大切です。頑張っていきましょう」と声を掛けられました。
渡部氏は「社会に出たら実現できるかわからない話を聞いてくれる大人は少ない」と話します。「でも私たちは絶対に皆さんを見捨てません。相談しないと損です。ぜひたくさん聞いてきてください」と全面協力の気持ちを伝えてくださいました。
学校だけでなく企業、社会を巻き込んで動いていく他にはない授業スタイル。
12月の実現を目標に、学生たちは奮起しました。

担当教員のメッセージ

本科目は、文学部キャリア科目として、今年度から新しくスタートした講座です。
文学部の1年生を対象とした講座で、従来の社会連携から一つステップアップして、
「渋谷×社会課題」をテーマに、自ら課題をみつけ、課題解決に向けての実践までを
正課科目として行おうという試みです。一般社団法人フューチャースキルズプロジェクト研究会
(FSP)がオリジナルで企画した講座となっています。
コンセプトは、「主体性」と「人を巻き込む思考力」の2つを身につけることにあります。
年内までの授業については、3人の社会人メンターが伴走していきます。

2024年8月25日

自律的人材になるために!「実践キャリアプランニング」の授業でホリプロ取締役による特別講義が行われました。 

大学共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社ホリプロ・グループ・ホールディングス取締役である鈴木基之氏が特別講義を行いました。日本の芸能・エンタメ業界の最前線にいる鈴木氏から、華やかな世界の舞台裏の話がたくさん飛び出し学生たちは興味津々。世界で求められる人材になるヒントも多くいただきました。

エンタメを産業へ!

この日は7月12日。鈴木氏は「今日は何の日か知っていますか」と問いかけました。7月12日はマララデー。10年前に、16歳だったマララさんが国連で「すべての子どもたちに、すべての女性に教育を」と訴えた日です。鈴木氏は「まさに女子教育の先駆者である下田歌子先生が創設された実践女子大学で、今日、話が出来ることは運命だと思います」と語りました。そして「芸能エンターテイメント業界を生き抜く心の糧」と題し儒学者の言葉を引きながら、熱量高く話を始められました。

「皆さんにエンタメ業界に興味を持っていただきたい」と鈴木氏。
それは単に俳優などに興味を持つということではなく、「産業」として注目してもらいたいということ。
「IT業界や自動車業界などは産業と呼ばれますが、悲しいかなエンタメは産業と呼ばれていないんです」と話します。
しかし、鈴木氏はエンタメが単なる娯楽ではなく、強い産業として世界的に拡大していることを説明。国もようやくエンタメ・コンテンツを産業として伸ばすことを目指し始めています。
「日本経済をけん引する一つの成長分野として期待されている」と話しました。

芸能プロダクションの仕事とは?

ホリプロには現在約450名のタレントや俳優が所属しています。
文化人やスポーツ選手、音楽グループも多く在籍しています。
「ひとりのタレントが売れてくると、楽曲を制作する部署(音楽制作部)、コンサートをする部署が出来、コマーシャル、ドラマ、映画や舞台出演の依頼が増えて来るようになると、自らの所でCMやテレビ番組、映画制作をする部署(映像制作部)、そして舞台制作をする部署が・・・と様々な事業部が生まれてきました。これが基本的な芸能プロダクションの成り立ちです」と鈴木氏。
CMや映画、ドラマ製作部などは自社所属のタレント以外も多くキャスティングし、製作されています。
「自社のタレントを出すことが目的ではない。あくまでビジネスとして多くのお客さんに観てもらうことが大事」と芸能プロの方針を説明しました。

鈴木氏はホリプロに入って45年。ほとんどのエンタメ事業に関わって来られました。
入社当初はアイドルが苦手だったと言います。
しかし多くのファンレターを読み、考えが変わります。学校で友人関係に悩んでいたけれどアイドルの曲を聞いて頑張ろうと思った学生などを筆頭に、多くのエピソードがありました。
「アイドルが人の生き方まで変えることを知った」と言います。
音楽の力、タレントのすごさを身に染みて知ったと話しました。

先を見て長所を伸ばす

マネージャー時代には失敗もあったと語ったのは、タレントの方向性や戦略について。
「いまでは誰もが知る国民的女優も、最初から人気があったわけではないんです」と、当時目指していた方向性が間違っていたエピソードを披露くださいました。
「マネージャーは1年先、3年先を見据えて仕事を選んでいかなくてはなりません。さまざまな個性を持つタレントがいるなか、先を見据えてこの原石をどう磨いていくか」と長期的な目線を持つことが大事であると話されました。

鈴木氏は儒学者・佐藤一斎の「着眼高ければ則ち理を見て岐せず」の言葉を引きます。
先を見据えて戦略を立てる大切さを教える言葉です。
また「我は当に人の長所を視るべし」の言葉を引き、「ホリプロは長所を伸ばしていきます。欠点は自分でも分かっている。本人が見えていない長所を見て伸ばしてあげるのがマネージャーの役割」と隠れた、しかし重要な視点についても話されました。

人間力を鍛え自律的人材へ

ホリプロはグローバル戦略にも力を入れています。これからの芸能人に求められるものは、一芸だけではダメだと話します。
鈴木氏は「これまでは日本の中で売れていればよかったけれど、日本一になることがかっこいいことではなくなっている」と話しました。そしてそれは、芸能人に限りません。これからは「自律的人材が大事」だと語ります。

他の情報を信じすぎず、自分で信じること。指示がなくても自ら能動的に動き、問題解決に向かう力。
これは下田歌子が育てようと目指した人物像でもあると鈴木氏は言います。一人で行おうとせず、周りを巻き込む「人間力」を持つ人材です。「一人でも多くの人に下田歌子先生のようになってもらいたいと思っています」と講演を結びました。

熱量を持って作品を作る

授業の最後には学生からの質問を募集し、鈴木氏が回答くださる時間も。
「女性マネージャーに必要な力はなんですか」という質問には、
「幅広い知識を常に求め続けて、何にでも好奇心を持って取り組めること、そして、今はSNSをうまく扱えることが求められています。」と回答されました。
「映画化はどうやって決まるのでしょうか」という質問には
「プロデューサーの熱量が一番です。ホリプロには小説や漫画など、ホリプロでこの作品を作りたいという強い思いで入ってくる人が多い。映画化までいくつもの壁がありますがこだわりを持って作れる人間が、作品のファンからも受け入れられるものを作れる」と回答されました。

芸能界の裏側や経済効果など、知らなかった世界に触れることが出来、学生たちは多くの刺激を受けた講義となりました。

担当教員のメッセージ

昨年からご講演をいただいているホリプロ様からは、今年は役員であり、恵那市ともご縁の深い鈴木基之様にお越しいただきました。ホリプロ様の事業内容、そしてエンタメ業界のグローバル化の現状など、とても幅広い内容をお話しいただきました。
また、それぞれのお話しと本学創立者下田歌子先生の言葉を結び付けていただくなど、学生にとって、大変貴重な時間となりました。
この場を借りて鈴木様をはじめ、ホリプロの皆さまに心より感謝申し上げます。