「実践プロジェクトa」(担当:髙橋 裕樹特任教授)の授業で、6月5日にカルビー株式会社(以下、カルビー)の荒木友紀氏をお招きしたコラボ授業が行われました。カルビーのSDGsへの取組を伺い、その認知度アップできる施策を考えます。学生たちはグループワークを重ね、後日プレゼンテーションに臨みます。
健康への思いから設立されたカルビー
実は荒木氏は中学・高校からの実践女子の卒業生。大学では生活科学部で学び、10年間実践女子で学んだ先輩です。1999年に卒業し、食に関する企業に興味を持ったところからブルドッグソース株式会社に入社。2004年にカルビー株式会社に入社されました。マーケティングに携わり、主にスナック菓子のブランディングや商品設計を行っています。
カルビーの社名の由来は「カルシウム+ビタミンB1」。健康食品づくりへの思いが託されています。最初のヒット商品はかっぱえびせん。来年60周年を迎えるロングセラーです。誕生当初はアメリカ産の小麦粉が大変安い時代で、未利用だった小エビと共に活かしてできた商品です。「自然の恵みを活かすこと」を大切にしており、原料は自然素材を使い、農工一体で取り組んでいることが特徴。特に主力商品であるポテトチップスの原料となるじゃがいもは、加工用の国産じゃがいもの約60%をカルビーが使用しています。
商品作りだけでなく土づくりから品種改良まで、じゃがいもに関わるすべてのプロセスに関わり、徹底した品質管理を行っています。
地球の未来のためにできること
カルビーの環境への取組として、2030年までにプラスチック容器を50%環境に配慮した素材にすることを目標にしています。
2050年には100%を目指しており、「大変な目標だと思いましたが、ここまでしないと貢献ができないと考え、全社で取り組んでいます」と荒木氏。
パッケージのインクを植物性由来のバイオマスインキを利用したり、包材の研究を進め薄膜化したりとCO2削減に取り組んでいます。
またカルビーでは国内全体のパーム油の使用量の約5%を占めており、大変多くの油を使っています。パーム油はアブラヤシからとれる油でインドネシアやマレーシアで産出されますが、森林伐採や児童労働が問題になっています。カルビーは、こうした社会問題に配慮した認証パーム油への切り替えを進めており、パッケージにも認証マークを表示しています。
【認証パーム油に関する動画】
https://www.calbee.co.jp/sustainability/
認知度が低いのが課題…
荒木氏は「SDGsの認知者の2人に1人が、SDGsに取り組む企業を応援したいという結果がでています」と話します。そのためカルビーも環境ラベルで取組への消費者の納得を得たい反面、まだまだ認知度が低いのが課題です。
店頭やCM、Webサイトなどでアピールしていますが、なかなか浸透していません。学生たちに知っているかを問いかけても、認証マークを知らなかった学生も多くいました。
「入社前にいろいろ調べているだろう内定者からも、知らなかったという声がたくさん聞かれました」と荒木氏。
認証マークを得られる原料は、通常のものよりも値段が高いのがネック。「原料のコストは上がっているんですが、なかなかそれを知られておらず、価値が伝わっていないということが課題」と荒木氏は話します。
環境への取組を知ってもらうには?
ここで課題の発表です。
テーマは「カルビーの環境への取組をお客様へ伝えるコミュニケーションを考える」。
考えるコツとして
「誰が(Who)」
「何を(What)」
「どのようにして(How)」
を土台に考えていくことが紹介されました。
このなかで特に大切なのは「誰が(Who)」。ポテトチップスの主な購買層はファミリー層です。学生世代の若者はあまり買わなくなっているそうです。あえて若い層の方々をメインにご購入いただけるようにするのか、現状の購買層に向けて発信するのか、ターゲットを決めることは重要です。
実は同様の課題は、昨年カルビー社内の若手社員にも出されたといい、「なかなか社内の人間でも難しい課題です」と荒木氏。「ぜひ自由な発想で取り組んでください」と学生の発表に期待を寄せました。
誰にどうやって認知度を上げる?
学生たちは早速3つのグループに分かれディスカッションを始めました。
「若者をターゲットにするならショート動画がいい」
「インフルエンサーは?」
などSNSを活用することを考えるグループや、
「興味があることは自分で調べるけど、関心がなければ見て終わるだけになりがち」
「興味を持ってもらうには向こうから知ってる?とアピールしてくれるといい」と方法を考えるグループも。
最後に3グループそれぞれの方向性を発表しました。
1グループのターゲットは若者。SNSやQRコードを利用してアピール。
購入者も環境取り組んだのだ、と参加が分かる仕掛けを考えます。
2グループは小学生を対象にします。
カルビー主催でコンクールを行い作文などで広く伝える案が出ていました。ゲーム配信などのイベントのスポンサーとなり、ポスターやCMで若者にも訴求。
若者の中でも健康意識が高い層に訴えることを提案しました。
3グループは中学生以上のスマートフォンを使う学生をターゲットに設定しました。
SNSなどで短い動画を流します。キャラクターを作りキャッチーな内容を流して認知度アップを狙います。
学生たちはグループワークを経て案を練り上げ、1ヵ月後に最終プレゼンに臨みます。