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2025年1月27日

地域活性化の施策を考えよう!「実践キャリアプランニング」の授業でJALとコラボし、学生たちがプレゼンテーションを行いました。

「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、日本航空株式会社(以下、JAL)との特別授業が行われました。JALから課題が出され学生たちは10班に分かれてグループワークに取り組みました。テーマは「地方が地域活性化する施策を考える」です。学生たちは、地域選びから自分たちで行い調査し施策を考案。12月に2週に渡り臨んだプレゼンテーションの様子をご紹介します。

JALの強みを生かして若者を呼ぼう

発表はJAL 産学連携担当の田中氏、細野氏、白川氏の皆様を前に行われ、学生たちは緊張した面持ちで発表を始めました。

トップバッターは10班。
北海道旭川市をピックアップしました。
教育機関が少なく就職先が限られるため若者の流出が起きていることを課題に上げ、JALの航空学校の設立を提案。専門知識を学びたいと考える若者を呼び込むことを狙います。

各班の発表のあとには、別班の学生が感想を発表。
「学校を作ることにより、実際に若者が増えるのではと思いました」と話しました。
また、JALの皆様からもフィードバックをいただきました。
田中氏は「教育現場の不足と過疎の問題は密接につながっています、発想として良い」と着眼点の良さを褒められました。

次の4班は秋田県にある鶴の湯温泉の旅行プランを考案。
自然好きな若者をメインターゲットとして、田沢湖やかまくら体験、地元の食材やきりたんぽを楽しむツアーを紹介しました。また秋田出身の芸能人にツアー動画を撮影依頼しSNSで訴求します。

細野氏から「ツアーの紹介で終わってしまった印象なので、地域活性化として持続可能であるようにどうするかをもっと知りたかったです」とアドバイスされました。

特産品を推す!

5班は和歌山県北山村に注目。
メンバーの祖母の家がある地域で調べることに。
北山村でしか育てられていない柑橘類「じゃばら」を押し出し、じゃばらジャムを挟んだクッキーを機内で配り、空港で販売することを提案しました。

白川氏は「よくこの特産を見つけてくれました。身近な人からの課題にアプローチしていました」と現地の魅力を発見したことに感心されました。

続いて1班は沖縄県を選びました。
すでに観光地として有名ですが、人気の地域に観光地が集中しているという課題があります。
知られていない地域へ誘導するため、現地の人のおすすめの場所や店を載せたパンフレットを作成。空港などで配ります。
また機内でルートビアを販売したり、座席モニターで方言クイズなどを流したり現地への関心を高める案です。

田中氏は「方言に目を付けたのが良いですね。歴史も学べ、現地の人と交流の機会も増える案です」とコメントしました。

前半最後は9班。
北海道帯広市のツアープランを考えました。
女子旅、家族向け、ペット連れツアープランをそれぞれ作成。食や歴史、ばんえい競馬などの文化も楽しめるルートを多数考えました。
またプランに含まれる店で買い物をすることでポイントを貯められる施策で経済効果アップを見込みます。

別の班の学生からは「マイルに焦点をあてているのが新しい視点と思った」と感想が。
白川氏からは「プレゼンテーションの組み立てが上手。それぞれターゲットを設定していていい」と感想がありました。

特産品で新しい商品を

後半は6班から。
島根県出雲市の名物出雲そばに注目しました。そばは抗酸化作用、保湿効果があることに注目し、そば粉を使った歯磨き粉やコスメを作る施策を提案。
JAL提携のホテルにアメニティとして置き、訴求します。
細野氏は「出雲ならではの他の環境資源と結び付けてもらえるとさらによかったです」と話されました。

8班は静岡県。
静岡に行くには新幹線を利用するイメージが強いため、飛行機を使ってもらうことを考え、空港で対象商品のお茶を買うと県内で使えるクーポン券配布する施策を提案しました。
お茶菓子も取りそろえ機内で販売します。
白川氏からは「新幹線ではなく飛行機で行くというところからわくわく感がある。全体的に良く構成されていました」とプレゼンテーションの良さも感心されました。

デジタルデトックスで若者にアピール

3班は山口県を取り上げました。
若者を呼び込むためインターンを提案。
ホテルや旅館でインターンを行い、ホスピタリティの仕事を学べると訴求しました。街の活性化や人手の確保にもつながります。
学生の感想も「インターンというアイデアは今までになく良いと思った」と好感触。
白川氏も「持続可能としてインターンはとてもいい」と話されました。

次の7班も山口県で勝負。
瓦そばやふぐなど魅力的な食べ物を食べられる格安ツアーを考案しました。
観光協会と共同運営でPRを行い、SNSで若い世代にアピールします。
田中氏からは「ただの格安旅行ではなく、体験型ワークショップなど次もまた来ようと思える工夫があると良かったです」とアドバイスがありました。

最後の2班は北海道を舞台にデジタルデトックスツアーを考案。
スマホを預かり、自然やアクティビティを堪能してもらうツアーです。スマホで写真が撮れない代わりに、チェキを配布し思い出作りもばっちり。
また、それぞれのアクティビティや観光地でチェキを撮るミッションを設置します。クリアするとさらにチェキのフィルムをもらえる、というシステムで楽しんで特産物や観光地に親しんでもらえるとしました。

学生からも「ミッションという発想が面白い」と感想がありました。
細野氏も「ミッションがあるというゲーム性があるのは面白く、デジタルデトックスというのも現代に特化した悩みにアプローチしています」と話されました。

持続的に地方活性化を考えていこう

それぞれの週で、優秀な発表された班にはJAL賞が与えられました。

前半は北山村を紹介した5班。
田中氏は評価ポイントとして「地域の魅力を掘り起こし、どう活性化するかを考える持続可能な観点がありました」とコメントがありました。
5班の学生は「メンバーがコロナになってしまって大変でしたが賞をいただけて良かったです」と話しました。

後半は静岡県を取り上げた8班でした。
田中氏からは「非常に練られていた。プレゼンテーションも明るく聞いていて興味を持てました」と表現力も評価ポイントだったと話されました。

「地方を調べるという機会がなかったのでたいへんでしたが、自分たちが面白いなと思ったことを盛り込めた」と8班の学生も安心したように話しました。

それぞれの班には賞状とクリアファイル、ステッカーセットが贈呈されました。

授業の最後には総評として田中氏からコメントをいただきました。
「難しいお題だったと思うけれど、どのチームも個性豊かでした。素晴らしい発表ありがとうございました」と学生たちの努力をねぎらいます。
「少子高齢化、人口減少とは言葉では知っていたと思いますが、実際に地域を調べて理解が深まったと思います。同時に地方それぞれに魅力があることも知ることができたでしょう。社会に出てから、自分になにができるのか考えていくきっかけになっていれば嬉しいです」と、地方の課題を自分事にして考えることの大切さを伝えられました。
学生たちにとって、より広い視野を持つことの大切さを実地で学ぶ授業となりました。

担当教員よりメッセージ

毎年、大変お世話になっている日本航空様とのコラボ講座、今年からは1年生科目となった英文学科の「実践キャリアプランニング」にて実施させていただきました。今年のテーマは、「地域の魅力を掘り起こし、新しい企画(商品開発や新規事業など)を提案してください。〜JALとして6次産業化を支援しよう〜」でした。大変ハードルの高いテーマでしたが、日本航空の社員の皆様が、とても丁寧にご説明、そしてご指導をいただいたおかげで、素晴らしい提案に漕ぎつけることができたと振り返っています。学生のレポートからも、このお題に取り組ませていただいたおかげで、企業のことを知れたり、グループワークの大切さを感じたり、プレゼンテーションの重要性を認識したり、多くの学びに繋がったことを実感しております。この場を借りて、3回にわたってご支援いただいた日本航空様に、心から御礼申し上げます。

2025年1月24日

女性活躍を後押しする企業を調べよう!「実践キャリアプランニング」の日本ロレアルとのコラボ授業で学生たちがプレゼンテーションを行いました。 

共通科目の「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で日本ロレアル株式会社との特別コラボが行われました。ロレアル パリの女性活躍に対する思いや活動を学び、同じように「女性をエンパワーメント(勇気づけ後押しする)する活動を行っている企業や団体を調査する」という課題が出されました。学生はそれぞれ班に分かれグループで調査を進め、いよいよプレゼンテーションです。
最終プレゼンは12月13日と20日の2回に分けて行われ、それぞれ6チームずつ発表しました。

学生にも身近な企業の活動は?

トップバッターは6班。
大手の家具量販企業のをピックアップしました。最初に強調したのは社会や職場の男女格差について。
管理職の女性割合は平均10%のところ、その企業は50%を達成しています。女性もリーダーシップを発揮できる環境を整え、トレーニングや選考システムがしっかり作られています。ワーキングマザーについてのサポートやフレキシブルな働き方も積極的に取り入れ、母親ならではの視点も大切にしています。
発表後にはロレアル パリのみなさまから質疑応答が行われました。
加藤氏からは「なぜこの企業を選んだのでしょうか」と質問が。
学生は「日本でも有名な企業で若い世代にも親しみがあるから」と回答しました。

続いては4班です。
ある化粧品ブランドが行っている乳がんキャンペーンを取り上げました。
女性に一番多いがんですが、早期発見すれば90%完治します。しかし自覚症状がないため定期的な乳がん検診が推奨されています。
この企業は1992年にキャンペーンを開始し、シンボルのピンクリボンを配布したり売り上げの一部を協会へ寄付したりといった活動を行っています。
ただ、女性が検査に行くまでになかなかたどり着かないといった課題も挙げ、解決法として乳がん検診をさらに受けやすくするサイトやSNSの宣伝法など改善点を提案しました。

8班はボディケアなどのブランドを調査しました。
日本の10代女性は、世界で最も容姿に自信がないと言われています。
このブランドは「セルフエステームプロジェクト」という、容姿への自信と自己肯定感を高められるように、中高生向けのワークショップを行っています。
しかし、「可愛さの定義なんてない」ということを広めようとした広告ポスターが逆に「美の基準があるように周知してしまった」と批判を浴びました。広告は意図しない方向で広まってしまうこともあるという課題を指摘しました。

世界的企業もアクション

次の1班はある世界的化粧品ブランドに注目しました。
このブランドは国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)と連携し、女性が男性同様に活躍する社会になるためのイベントを開催。
東京でも女性活躍についての講演や、女子大生たちとディスカッションが行われたと紹介しました。
奥田氏は「あまり知られていない活動を良く調べていますね」と感嘆されました。

11班も化粧品大手の企業を紹介。
内閣府の「女性に対する暴力をなくす運動」に賛同し立ち上げた「パープルリボンプロジェクト」を調べました。
日本のDVはパートナーからの受ける被害も多いのが現状。
つい我慢してしまう人が多いなか、相談を促すキャンペーンです。売り上げの一部を寄付したり、ミヤシタパークを紫の電飾で染め上げたりといった啓発活動を行っています。
奥田氏は「一つの企業を越えてアクションをし、体現している。ロレアル パリもここまで目指したいと思いました」と話しました。

前半最後の3班は外資系のコーヒー販売店を取り上げました。
男女の労働力人口の差は世界的課題であるとして、女性の就労について紹介しました。
コーヒー豆を栽培するコロンビアでは女性も雇用し、家族へ清潔な水を提供するなど支援しています。また店舗ではシニア雇用など年齢に関係なく、ライフステージによる働き方が可能な制度を整えているとしました。

内面の美しさを大切にしよう

後半の週の発表は2班から。
飲料メーカーの企業を紹介しました。
この企業は女性活躍に優れた上場企業を示す「なでしこ銘柄」にも選定されています。その働きやすさは、直近5年で離職率1%未満という数字にも表れていると言えるでしょう。
出産や子育てにより会社を離れても、同じ役職に復帰できる「ウェルカムバック制度」などはその筆頭。経営層の女性比率も40%以上を達成しています。

続いて9班。
ボディケアのブランドを取り上げました。100%ありのままの美を伝えるため、写真の加工などを行っていないことを紹介しました。
また、アメリカで行われた「リアルビューティスケッチキャンペーン」ではFBIと協力し、自己イメージと他者からみた自分のイメージをそれぞれ似顔絵にすることで「自分が思っている以上に美しい」と伝える広告を打ち出したことを取り上げました。

12班は化粧品ブランドを取り上げました。
「女らしく」といった固定概念をなくすため男性をイメージモデルに起用するなどしてきました。
また高校生を対象にしたプログラムでは、内面の美しさを大切にすることを教えています。ただ、社会に出ると年齢関係なく身だしなみに対する意識が求められ、固定概念も強くなるとし、中高年向けにもあるといいのではと提案しました。
加藤氏から「男性が化粧品のCMに起用されるのはどう思いますか」と問われ「良いと思います。私の親も男性が化粧するのをよく思っていませんでした。テレビなどで目に留まれば価値観を変えられると感じました」と経験を交えて回答しました。

企業以外の取り組みも調査

続いて10班はあるファッションブランドにフォーカス。
1班と同じく女性支援のイベントに注目し、恵まれない環境にある女性へのアプローチなどを紹介しました。
課題として日本ではあまり知られていないこと指摘し、もっとSNSなどで発信するべきだと提案しました。

7班はコスメバンクを取り上げました。
一般社団法人による活動です。化粧品会社と提携し、余剰や型落ちした化粧品を集め、経済的に困窮している女性に無償提供しています。協賛企業にはロレアル パリなども名を連ねます。
企業側としてもエコに繋がりPRになるためwin-winの関係を作りつつ、女性への支援を行っています。
加藤氏から「あまり知られていない活動ですが、どうやって見つけたのでしょうか」と質問され、学生は「ロレアル パリが取り組んでいる活動を調べました」と回答しました。

ラストの5班は日本の化粧品ブランドを取り上げました。
2024年「女性の働きやすい企業」1位に選ばれ、女性管理職の割合も全体で58%を達成しています。
女性が自分らしさを表現し自信を持つことを後押しするメッセージ性はCMなどでも表現され高い評価を得ています。社員向けの子育て支援も充実しており、ベビーシッター制度や、新米パパママ向けのプログラムなども。
仕事と育児の両立を支援しています。
加藤氏は「プログラムに女性だけでなく男性も含まれているのは、資生堂が一歩進んでいるように感じました」とコメントしました。

女性として活躍するために

発表後は前後半それぞれで優秀だった班が選ばれました。
前半は乳がんキャンペーンを取り上げた4班。
奥田氏から「構成力、プレゼンテーション、資料のビジュアルとすべてよかった。良い所だけでなく、課題も合わせて改善点まで考え、自分たちの考えが落とし込まれていたと思います」と評価しました。
学生からは「期間が短くなかなかメンバーが集まれないなか分担し、協力してできてよかった」と安心したコメントがありました。

後半はコスメバンクを紹介した7班でした。
「あえて企業でなく取り組みにフォーカスしようと思い調べたので、賞をいただけて嬉しいです」と学生から喜びの声が聞かれました。
両班には、ロレアル パリから賞品としてヘアケアセットが贈呈されました。

最後に奥田氏から総評をいただきました。
「どの班も素晴らしかったです。他社のCSR活動を見ることはなかなかないので勉強になりました」と学生の頑張りをねぎらいました。
「これから社会に出て、女性として大変なこともたくさんあるかと思います。でも社会は変わってきている。女性であることを理由に何かを諦めることは絶対しないでください」と女性の先輩として学生たちに熱いエールを送り、授業は終了しました。

担当教員よりメッセージ

毎年、ご支援をいただいてるロレアル パリ様には、2024年度は、2年生英文学科の実践キャリアプランニングの授業においてご協力いただきました。今年度は、前述の課題解決型プログラムに入る前に、メイベリン ニューヨーク(様)のメンタルヘルスサポート講習BRAVE TALKやロレアル パリ様提供のSTAND UPプログラムも実施いただき、ワークショップ型の授業とともに女子大学で学ぶことの特徴を生かした立体的な構成を構築いただきました。女性のエンパワーメントをテーマとしたワークショップでは、広い視野で考えた内容が次々と提案され学生のポテンシャルの高さを改めて感じました。詳細は前述の通りです。そして、今回取り組んだことは、来年から就職活動が始まる学生にとって、企業分析の大切な視点について自らの力で、深く学べた点も、とても意義あることになったと振り返っています。多くの時間を割き、ご指導いただきましたロレアル パリの奥田様、加藤様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

2025年1月15日

缶で受験生の悩みを解消!?「演習Ⅰ」の授業で東洋製罐株式会社とのコラボ授業が行われ学生たちがプレゼンに臨みました。

1年生対象の「演習Ⅰ」(担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業で、12月16日に東洋製罐株式会社との特別コラボ授業が行われました。今年で3回目になるこのコラボでは、毎年学生たちが「実践女子大学を受ける受験生の悩みを解決する缶」を考えるという課題にチャレンジしています。この日は東洋製罐のみなさまを前にプレゼンテーションに臨みました。

プレッシャーに負けないで!

司会進行とタイムキーパーも学生たちが行います。

トップバッターはC班:チーム「女子大調査隊!」
公式サイトや説明会では分かりづらい、リアルな女子大生活を伝えることで不安を解消しようと考えました。
リアルな声として、実践女子大生にアンケートを実施。
恋愛事情やバイトをどの程度やっているかなどの回答結果を紙にまとめ、缶に詰めます。缶にはおみくじと手作りのお守りも入れる予定です。


各班の発表後には質疑応答が行われました。
「缶におみくじを詰める意義は?」という質問には、「おみくじの棒が入っている筒と缶の形が似ていることから連想して考えました。おみくじにはハッピーになれることを書いた大吉を何種類か入れる予定です」と回答しました。

次のE班:チーム「超ポジティブ⭐︎宣伝部」は共通テストを控える受験生にフォーカス。
プレッシャーを吹き飛ばせるような日めくりカレンダーを考えました。
共通テストまでの日数分用意し、1日ずつポジティブになれるメッセージが書かれています。紙はリングで通すため破らず使え、共通テストが終わって本命校を受ける際も見返すことが可能。
「ポジティブなメッセージとは具体的には?」という質問に、学生は「つらいときが一番成長しているとき」や「現在は未来へのプレゼント」など頑張っている受験生を応援するメッセージを入れると回答しました。

体の不調を解消しよう

続いてA班:チーム「むちむちぷりん」です。
受験期は運動時間が減り運動不足になることに着目し、運動不足解消グッズの詰め合わせを提案しました。
スローガンはスペイン語の別れの挨拶とストレスをかけ「アディオストレス!」としました。
ストレッチバンドとひのき玉をいれ、マッサージやリラックスに使えるようにします。
東洋製罐の方からは「発表の構成順がすごくきれいだった。受験に限らず需要がありそうな内容だと感じました」とコメントをいただきました。

D班:チーム「受験生応援隊」は女子の大敵である冷えに注目。
体が冷えて集中できないなどのストレス解消を狙い、靴用カイロを入れることを考えました。
また計画的に勉強を進められるようto doリストもいれ、自分の目的を確認できるようにします。
なぜ靴用カイロなのかという質問には、学生の一人が「高校生はローファーで、受験日も足が寒くて困った」という自身の経験からきた発想だと回答すると全員が納得。
缶のパッケージデザインは生成AIで作成し、企業のみなさまも感嘆していました。

風邪は受験の大敵!

B班:チーム「somnia」は高校生のうち8割が、睡眠が足りていないというアンケート調査をもとに、仮眠をとれるアイテムを詰めることを提案しました。
アイマスクとネックピロー、耳栓をセットにして仮眠でも質の高い睡眠を取れるようにという思いを込めました。缶に入れてまとめて持ち運べるため、どこでも使えることもメリットです。
東洋製罐の方からも「睡眠に苦労した覚えがある」とコメントがありました。

ラストのF班:チーム「ミストメーカーズ」は缶の防湿性を活かして簡易加湿器を考案。
蛇腹折にしたコーヒーフィルターを詰め、開けた缶に水を入れてコーヒーフィルターを差して使います。乾燥する冬の風邪予防に使ってもらえるよう考えました。コーヒーフィルターの耐久性も学生たち自ら検証し2週間と判明。
説明書に書くことで気軽に使ってもらえるようにします。
企業の方も「とても面白いアイデア。検証したのも素晴らしい」と感心されていました。

人を巻き込みツールを使って時代に合ったプレゼン

発表を終え、東洋製罐の原様から総評をいただきました。
「それぞれ特徴がありましたね」と個性豊かな提案に感心されました。
そして「それぞれアンケートを取ったり検証をしたりしていて素晴らしかった。人を巻き込んでいく力があると感じました。データもしっかりしらべられていたし、生成AIなどのツールも上手に使っていて勉強させてもらいました」と学生たちの頑張りをねぎらいました。
そして、「コロナ禍を経て、価値観が大きく変わるパラダイムシフトが起きています。今後皆さんもそのことを念頭に置いて、社会のニーズを捉え表現の仕方を模索していってもらいたいと思います」と話されました。

今回の発表のなかで優秀作は「CAN詰めプロジェクト」として、実際に実現化される予定です。

担当教員よりメッセージ

 缶の用途を広げることと、受験生の悩みを解決することの2つの課題に取り組む目的でスタートしたCan詰めプロジェクト。今年は10月のキックオフの際に技術開発統括室の原拓也様と千地早紀様をお迎えし、東洋製罐の活動概要や缶の特徴などについて説明をしていただきました。その後はグループワークを行い、どのような受験生をターゲットに、どのような悩みを何で解決するのかの検討を行いました。最終発表会には、前述の原様と千地様に加えて、メタル技術開発部加飾開発グループの高橋ほのか様と、基盤技術開発部プラスチック素材開発グループの三宅雄太様をお迎えし、受験生の悩みを解決できるのか、缶を使う意味があるのか等の観点から評価をしていただきました。
 学生による相互評価と東洋製罐の皆さまの評価を合わせて高評価を得たチームのアイデアは、東洋製罐にて缶詰めにしていただき、次年度のオープンキャンパスで配布する予定です。「このプロジェクトに取り組みたくて実践女子大学に入学した」という受験生に会えることを楽しみにしています。
 東洋製罐の皆さま、ご協力ありがとうございます。

2025年1月7日

人生の目標を立てて努力する!「グローバル・キャリアデザイン」の授業でAGC株式会社との特別コラボが行われました。

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業でAGC株式会社の高芝秀長氏による特別講義が行われました。老舗企業で海外経験が豊富な高芝氏は、人生の目標を設定する大切さを中心に、本当のグローバル人材とはなにかを分かりやすくお話しくださいました。

人生の目標を考えるために

最初に高芝氏は「私は会議のときに今日の目標を決めるんです」と話し出しました。
どんなことを決定したいか、何を達成したいかなど設定すると言います。
「みなさんも、この授業でなにを学びたいかなど、メモで結構ですから書き留めてみてください」と促しました。

高芝氏は「2-6-2の法則というのを知っていますか?」と問いかけます。
これはどんな組織でも優秀な人が2割、平均的な人が6割、貢献度の低い人が2割となるというもの。
しかし「私はこれに違和感を持っています」と高芝氏。
優秀かどうかではなく、動機があるかどうかではないかと語りました。上位2割の人は自分自身で目標を設定し自らアクションを取れる人たち。それ以外の人たちは目標が定まっていなかったり迷っていたりする人たちです。
「あせる必要はありません。自分の人生を少しずつ考えていきましょう」と講義を始められました。

ひとつの企業にずっと勤められる?

AGC株式会社は旭硝子株式会社の名前で1907年創業。
100年以上の歴史がある老舗企業です。日本で初めて建築用のガラスを開発・販売した会社として有名です。
当時はガラスを創る材料も、設備も海外のものに頼っていましたが、旭硝子は一から国産で作っていきました。
特にガラスは窯で1500℃という超高温で材料を溶かし作ります。その窯を創るには、1500℃に耐えうるレンガがなくてはなりません。ガラスを作るために、高温に耐えるレンガ作りをも自分たちで開発し、徐々に大きくなっていったのです。

ここで高芝氏は「創業100年を超えた企業は世界に何社あると思いますか」と学生たちに問い掛けました。
答えは約3万社。全世界と考えると少ないように思えます。
また30年間存続している企業の割合は、0.02%で、5000社に1社しかありません。日本企業の平均寿命は約23年と言われているそうです。
高芝氏は「そうすると、一生ずっと同じ会社に働けるかと考えると難しいかもということが分かります。だからこそ入社して終わりでなく、自分もやりたいことと共に変わって行くことが大切です」と変化に対応する力を付けることを伝えました。

頑張りを見てくれている人はいる

高芝氏は世界遺産・熊野古道がある三重県尾鷲市の出身。
野球に打ち込んでおり、地元の国立大学への進学を目指していましたが、高校の先生に都内の私立大学の推薦を進められたと言います。
最初は断っていた高芝氏でしたが、「親も賛成してくれ、高芝なら大丈夫だろうと先生も思ってくれたということ。見てくれるひとは必ずいるんだと感じた」と、進学を決めたと話しました。

1990年に旭硝子に入社し、車のガラスを作る部署で営業として活躍。
転機となったのは青年海外協力隊に応募したことだといいます。
そのときは採用されませんでしたが、「会社がこいつは海外に行かせた方が良いと思ったようで、イギリスへ赴任しました」と、入社5年目という早い段階での海外赴任につながったと語ります。
5年後に戻ってくるまでにグローバルな視点を得て、MBA取得を目指すように。

結果取得はかないませんでしたが、そのときに学んだことは今に生きているといいます。
「日本人はもっとできると確信しました」と高芝氏。
ハーバートのビジネススクールで教わることの半分は、信頼を得ることや人を思いやることなど、日本の学校や家庭で教わる基礎的なことだったと言います。「グローバルビジネスパーソンと言っても、基本は人として成長し、会社にどう貢献するかが大事。語学力ではなく、意志があることが必須の要素です」と話しました。

くさらず努力することで次につながる

2023年からは医薬品、農薬等を受託製造するファインケミカルズ事業本部の本部長に就任。
ガラス一筋だった高芝氏は「青天の霹靂の人事」と表現しましたが、「しかしマネジメントはずっとやりたかった仕事。夢は叶うし、次にどんな目標を設定するかが大切」と話しました。

目標を立てるためには、自分を良く知ることが必要だと言います。
将来の夢やどんなことを達成したいかなどを人に話すことで分かることも多いと語りました。
「学校の課題などやってなんの意味があるがあるのかと思っても、やらないといつまでもできないままです。無駄になる努力はありません。ひとつひとつ目の前のことに全力で取り組み習得すると、見える景色が変わります。その頑張りは誰かが見ていてくれます」と学生たちを励ましました。

人に話してやりたいことを見つけよう

授業の最後には質疑応答が行われました。
「やりたいことの見つけ方は?」という質問には、
「私も大学生のときにはグローバルな仕事がやりたいなどざっくりしか考えていなかったです。やりたいことややりたくないことを書き出し、周りの人に話すことで固まってくるのではないかと思います。取ってつけて話すのではなく悩みを素直に表現しましょう」とアドバイス。

「モチベーションの低い人をどう動かしていますか」という質問には、
「モチベーションが低い人でも、言われたことがしっかり出来たら褒めること。その上で本当は何をやりたいか、今後はどういうことに力を入れていきたいのか本人としっかり会話することを大事にしています」とコツを話されました。

自分の目標を定め努力することの大切さと、目標は変わっていっていいのだというメッセージは、学生たちが今後将来を考える上で指針となることでしょう。

担当教員よりメッセージ

高芝氏は、私の大学野球部の後輩です。現役時代も大活躍された名選手ですが、現在も、
後輩のために、様々な活動で尽力されています。とりわけキャリアデザインについての
指導をされており、後輩の人材育成にとても熱心なOBです。
今回、日本を代表するグローバルカンパニーであるAGCで活躍される高芝氏をお招きし、
変わりゆく企業の姿とともに、高芝氏ご自身のキャリアについてお話しをいただきました。
自分を知ることの大切さ、目の前のことに真剣に取り組むことで必ず新しい景色が見えてくること、
そして、「縁」の大切さなど、学生にとって大変に貴重なご講演をいただきました。
この場を借りて心から感謝申し上げます。

2024年12月24日

ゆっくり動いて体をほぐそう!美学美術史学科の授業でジャワ古典舞踊のワークショップが行われました。 

11月19日に美学美術史学科(担当:文学部美学美術史学科 串田 紀代美准教授)の特別授業が行われました。インドネシア人のジャワ古典舞踊の名手をお迎えし、発声や体の動かし方などを実際に体験するワークショップです。ゆったりした動きですが、学生たちは「身体が温かくなった」と舞踊の基礎を楽しみながら学びました。

古典舞踊にヒントを得た動き

この日は隣接する実践女子学園の多目的室をお借りしての特別授業です。学生たちも動きやすい恰好で授業にのぞみました。
教えてくださるのは、インドネシア国立芸術大学スラカルタ校舞踊科教授のワシ・バントロ氏。
インドネシアのジャワ島中部に伝わる古典舞踊の踊り手であり、普及に取り組んでいらっしゃいます。英語で学生たちに「Let’s have fun together and do make a voice, do move, and be happy(一緒に楽しんで、声を出して、体を動かして、幸せになりましょう)」とあいさつされました。

今回学生たちが教わるのは、ジャワ古典舞踊からワシ氏が編み出した発声・身体操法「ヌンバン・ブクソ」です。
ジャワ語で「ヌンバン」は歌う、「ブクソ」は踊るという意味。「難しい動きはなく、呼吸し声を出しながら体を動かします。
太極拳のような感じです」と通訳を介して話されました。
踊りというより、体の動きにくいところを動きやすくしてみることが目的で、体のこわばりを取りゆるませるものです。

まずは体をゆるめよう

お互いぶつからないよう広がり、動く準備はばっちり。
学生たちは、ワシ先生やアシスタントの方々を真似て、実践していきます。
まずは寒さで固まってしまった顔をほぐすところから。
口のわきの筋肉を指でそっとおさえ、唇をふるわせます。唇を閉じた状態で空気を吐き出し、唇をブルブルと震わせることで顔の筋肉を柔らかくしました。
次にワシ氏は「Let’s shake your body(体を揺らしましょう)」と促し、手足を振ったり伸びをしたり、準備運動。
この間も唇をブルブルと震わせることで、体をリラックスさせます。

次に唇を震わせたまま「um~」とハミング。背中を伸ばしおなかに手を添え、頭の上からおなかまでまっすぐに声が通るようにします。
ワシ氏は徐々にハミングの音階を変えていきました。
これは「ガムラン」と呼ばれるインドネシアの伝統音楽で使われる音階とのこと。高い音と低い音を交互に出しながら体も動かしていきます。声を出すことで余分な力が抜け、体も動くようになってきました。
振動が心地よく体に響くようになったら準備完了です。

声を出しながら動いてみる

ガムランの音階をハミングしながら、徐々に手や足を動かしていきました。
学生たちが苦戦していたのは、足を開いて立ち、声を出しながらゆっくりお尻を下げていくもの。体が前のめりにならないよう、膝を曲げるのではなくお腹に力を入れながら下げていきます。
また足の指だけ上げたり、動かしたりという普段やらない細かい動きも。
不慣れな動きに戸惑っていましたが、徐々に出来るようになっていきました。それぞれ無理のない範囲で続けていきます。

おでこで8の字を描くように、ゆっくりと首を回し続けるのは、ジャワ舞踊の基礎の動きです。
「水が流れるように」ゆっくり焦らず回します。足を上げたり、手首を回しつつ腕をゆっくり開いたりする動きも伝統舞踊からとられたもの。体操のなかで、学生たちは古典的な動きを知っていきました。
「皆さんきちんと出来ていて素晴らしいです」とお褒めの言葉もありました。

体を動かすってきもちいい!

休憩をはさみつつ、1時間ほどかけてしっかりワークショップは行われました。
ワークショップ終わりには質疑応答の時間が。
「動きは少ないものでしたが、やってみてどうでしたか?」と問いかけられると、学生からは「あまり大きく動かさなかったけれど、それでも体がポカポカしてほぐれる感じがありました」「最初は声をどう出したらいいかも分からなかったけれど、だんだん楽しくなり最後にはおなかから声が出てリラックスできた」など感想が上がりました。
体の変化を感じた学生は多かったようです。
ワシ氏は「鼻歌くらいの声を出してゆっくり動くのは体に良い」と実体験を交えて話しました。

女性と男性の踊りに違いについて質問した学生には、実際に踊りを披露し違いを解説。
女性の動きは柔らかく流れるようですが、男性の踊り(荒形・優形があり、今回は荒形)は力強くピタッと動きを止めるのが特徴とよくわかるものでした。

このあとワシ氏たちはピロティにてジャワ舞踊のフラッシュモブと簡易ワークショップを行っていただき、有志の学生たちも参加。
学生たちは伝統的な動きを学びつつ、体を動かすことを存分に楽しめた時間でした。

担当教員よりメッセージ

今回のワークショップは、ジャワ舞踊家の針生すぐり氏(東京音楽大学講師)からお声がけいただき実現しました。近年のインドネシアでは、都市部の富裕層を中心にヨガやマインドフルネスが注目されています。心と体をリラックスさせるため、ジャワ伝統舞踊の基本的な動きと歌を組み合わせたものが「ヌンバン・ブクソ」です。伝統舞踊に現代社会での役目を与え、新たなコンセプトのもとで息吹を吹き込むワシ先生の試みは、日本の民俗芸能が置かれている危機的状況を学んだ学生だからこそ、その価値が理解できるのだと思います。ワークショップ後に、東南アジアのダンスに興味を持ってくれた学生も現れ、さっそく効果を感じています。ジャワの先生方の素敵な笑顔と優しいお人柄に、私たちも大変癒されました。

2024年11月25日

SNSと上手に付き合うために。「経営学概論」の授業でSNSの可能性とリスクを学ぶUUUMとの特別コラボが行われました。 

11月6日に「経営学概論」(担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)の授業でUUUM株式会社の特別講義が行われました。講師は本学のOGです。SNSを中心に活動するインフルエンサーのマネジメントを多く手掛けるUUUM。学生たちも普段から利用するSNSの可能性とリスクについて考える機会となりました。

クリエイターをサポートする

登壇された平林愛海氏は、篠崎ゼミの卒業生。総合商社を経て2019年からUUUMに入社しました。
本学に在学中は「大学を卒業したあと、大学で何を勉強したんだっけと迷わないように資格を取りました」と、教員免許と認定心理士資格を取ったと言います。
授業が多く大変だったけれど、自身の糧になったことを話していました。

UUUMは2013年設立の企業です。
「皆さんのなかでもインフルエンサーの事務所というイメージがあると思います」と平林氏が言う通り、幅広いクリエイターのマネジメントやサポートを行っている会社です。
所属するクリエイターの活動場所は動画配信サービスのYouTubeやInstagramなどSNSがメイン。SNSと向き合う仕事です。

SNS、どのくらい使ってる?

「SNSってどんなイメージがありますか」と平林氏。
SNSの歴史を説明されました。SNSは交流サービスとして2004年に作られたFacebookが始まりです。
その後YouTube、Twitter(現X)、InstagramやLINEと次々に登場。現在は多種多様なSNSプラットフォームが存在しています。

平林氏は「では一日にどのくらいSNSを使いますか」と学生たちに質問しました。
1時間未満という学生はほぼ0。
1~3時間という人が少数おり、3時間以上という選択肢に半数以上が手を挙げました。
平林氏は「データ的には1~3時間の人が60%なので、実践女子大学の学生さんは平均よりよくSNSを見るということですね」と興味深そうに話しました。
「それだけ皆さんの生活にSNSがなじんでいることが分かりました」。

好きなことを仕事にする

ここで平林氏は所属するクリエイターの一日のスケジュールを紹介。
「皆さんも見たことのあるインフルエンサーかなと思います」と話され、学生たちも興味津々。
SNS投稿を本業にしているクリエイターは一日中動画の撮影や編集、企画などをしていますが、「最近副業でSNS投稿をする副業クリエイターも増えてきています」と平林氏。
普段は会社などで勤務して、終業後や休日を活動に充てると言うスタイルです。「自分の好きなことに向き合える、と子育て中のママさんなどもいます」と紹介しました。

UUUMには登録者数がのべ100万人を超える大人気クリエイターも。
彼らは知名度や収益が高く、自分の好きなことをとことん追求できるというメリットがある反面、あることに悩まされることも多いと言います。それはSNSでの誹謗中傷です。

誹謗中傷はどうして起こる?

SNSを使う上で理解しておきたい知識として、平林氏は誹謗中傷について話を始めました。
「有名人だけが注意することでしょ?と思うかもしれませんが、想像以上に近くにあり、皆さんも知らず知らずのうちに加害者になりえます」と言います。
誹謗中傷とは、悪口を書き込むなどして相手の人格や名誉を傷つけること。
「なぜ誹謗中傷してはいけないかと言えば、傷つく人がいるから。これがすべてかなと思っています」と平林氏は語りかけました。

では人を傷つけてはいけない、という子どもでも分かることがなぜ起きてしまうのでしょうか。
それは、誹謗中傷した8割の人が「正義感」で書き込んでいるから。間違っていることを正そうとしたり、許せないと感じたり、書き込むことが良いのだと思っている人が大半なのです。
平林氏は「ネットの誹謗中傷は、自分が誹謗中傷していると気付いていないことがとても多いのが現状です。するつもりがなくてもやってしまっていることがある。このことを認識してSNSを使ってほしい」と話しました。

誹謗中傷をすると、相手の人生だけでなく損害賠償を求められるなど自分の人生を狂わせてしまうことも。平林氏はどんなことが誹謗中傷にあたるのか、詳しく説明をされました。
また、被害に遭った場合も絶対に抱え込まないようにとアドバイス。
相談窓口もたくさんあることを紹介しました。

正しくSNSと付き合おう

授業の最後に、学生たちからの質問を募集し質疑応答が行われました。
「UUUMに入ったきっかけは?」という質問に「自分はトレンドに疎いのではないかと感じ、最先端の仕事がしたいと思った」と回答。
「一日の仕事の過ごし方は?」という質問には
「会社はフレックス制でテレワークが多いです。担当しているクリエイターに合わせ、撮影やイベントに付き合うため休日出勤や夜間など変動も多い」とUUUMならではの働き方も紹介されました。

SNSの危険性を学んだ学生の「SNSであまり発信しない方が良いのか」というコメントには、
「自分が好きなものについては積極的に発信してもらいたいと思います。SNSは皆さんの持っている価値を最大限発揮できる場所。リスクを知ったうえで上手に使ってもらいたい」と平林氏はSNSの可能性にも言及し、講義を終えられました。

担当教員よりメッセージ

SNSを使用しない日がほとんどないという現代生活において、そのリテラシーを学ぶ機会はとても限られています。今回は人間社会の卒業生である平林さんをお迎えして、学生がなかなか知ることのないUUUM社の活動やクリエーターさんたちの日常、そしてSNSを利用するうえでのマナーについてお話を伺うことができました。
質問の時間には、平林さんの現在の仕事の様子にとどまらず、キャリア選択や大学時代に取得した資格などに話題が及び、学生は今の自分たちに通じる情報を得ようしている様子が伺えました。学部の先輩との交流という点からもとても有意義な時間になりました。ありがとうございました。
準備から当日まで平林さんをサポートされていた上司の南様にも感謝申し上げます。

2024年11月20日

生成AIを使ってみよう!ゼミ「演習ⅡB」でサイバーエージェントとのコラボ授業が行われました。 

10月1日に「演習ⅡB」(担当:人間社会学部人間社会学科 粟津 俊二教授)のゼミで、株式会社サイバーエージェントの川越寛之氏による特別授業が行われました。広告事業に生成AIの利用を積極的に取り入れている企業の方から、生成AIの使い方を学びます。学生たちは実際に動かしてみながら、仕組みや注意点を確認しました。

広告はAIで作る時代

サイバーエージェントは、100以上の関連子会社を持つ企業。
主にインターネット広告・メディア・ゲームの3つの事業を主にビジネスとしています。メディアやゲーム事業ではインターネットテレビ局「ABEMA」や人気ゲームが次々にヒット。
川越氏はもう1つの柱であるインターネット広告事業に携わっています。
「ゲームなどと比べあまり身近ではないかもしれませんが、広告代理店の仕事です。皆さんのSNSに流れているような広告などを作っている」と話しました。

サイバーエージェントでは広告事業部のなかに「AIクリエイティブ部門」があり、川越氏はその統括をされています。
「7、8年前からすべてAIで製作しています」と、デザインや映像製作にとどまらず、広告の効果の予測や、広告文の作成などに至るまでさまざまな場面でAIを活用していると話しました。

AIはこれからどんどん身近に

いまは「毎日AIのニュースが流れてくる」時代と川越氏。技術の進歩は特に目覚ましく、この前までできなかったことがどんどん出来るようになっています。
川越氏はサイバーエージェントのアルバイトの大学生の作った動画を紹介。「バイトをはじめて2ヶ月くらいの学生でも、AIを使って動画やアニメーションが作成できる」と話しました。
そして、今後スマートフォンなどに次々に搭載され「これから皆さんAIを知らない間に使うようになる」と、どんどん身近な存在になると語りました。

「ただ、AIは危険なんじゃないの?と考える人もいると思います」と、安易にAIを利用することの危険性にも言及。
著作権や肖像権の問題などは、あいまいだったり未解決な部分、規制が進んでいないことが理由のひとつ。
「AIは便利ですが、きれいなものだけで出来ているわけではない」と語りかけました。

AIを使って画像を作ろう

「‎Gemini」と「話して」みることに。
チャットスタイルで文字を打ち込むと、すぐに文章が返ってきました。
知りたいことやただの雑談、旅行計画の相談など、学生たちはそれぞれAIと会話をしていきます。「渋谷でおすすめのランチを教えて」と聞いた学生は、いくつかお店が出てきて役に立ったようですが、「お菓子が食べたい」と話しかけた学生は「甘いものを食べたいときの対処法」など少し見当違いな回答も。

まだ的確な回答をするのは難しい場合もありますが、コツとして、文章で条件を細かく指定していくことを教えてくださいました。数字を指定したり具体例を出してもらうようにしたりすると、より正確に出てくる確率が高まります。
「会話をしてだんだん慣れていくと、思い通りのものが出てくるようになります」と話しました。

次に「Image FX」を使って、画像を作ってみることに。
テーマは「昭和と令和を掛け合わせたおもちゃ」です。かわいいブリキ人形や、近未来的なコマなどユニークな画像が、10分ほどで生成されました。学生たちは互いに見せ合い、感想を言い合っていました。

AIとの付き合い方は?

半導体などの技術が進み、普段使っている自然な言語で、AIと会話できることを実感した学生たち。
「では、生成AIは考えることはできるんでしょうか」と川越氏は問いかけます。
答えは「今はできない」です。
生成AIは学習した大量のテキストデータをもとに予測をして、確率が高い返答をしています。
このため、AIは「嘘をつく」ことも。AIは絶対的な事実を聞くには向いていません。
間違った情報をもっともらしく生成してしまうことをハルシネーションと言い、「これはものすごくよく起きる。」と川越氏。
「ハルシネーションは当面はなくならない。気を付けて使うしかないんです」と語りました。

最後に川越氏はAIのメリットを話しました。
「AIを使う一番の良さはスピードです」と、読むのが大変な大量の資料を読み込ませて要約させる使い方や検索方法を紹介。
「AIは何度聞いても怒らないし疲れない。便利に使うことで努力のしどころが変わってくる」と語り、「ぜひたくさん使ってみて、慣れていってください」と講義を終えられました。
最初はAIを難しく考えていた学生たちも、実際に使うことで身近に感じられるようになる授業となりました。

担当教員よりメッセージ

生成AIは急速に普及し、その生成物を見聞きする機会も増えてきています。様々なデバイスやサービスに組み込まれて行っていますので、今は使ったことのない学生も、遠からず、どこかで使うことになるでしょう。今だからこそ、長所も短所も、問題点も将来性も、積極的に体験して欲しいと思っています。今回は川越様に、最先端の使い方の一端をご紹介頂けました。生成AIについて、知識だけでなく実際の使い方も知ることができ、貴重な学びの機会が得られたのではないかと思います。川越様には、この場を借りて、心より御礼申し上げます。

2024年11月15日

人気ゲームの企画立案!?セガサミーホールディングスと「文化の盗用」について学び、実践する特別コラボ授業が行われました。

10月29日に「海外の日本文学」(担当:国際学部国際学科 大塚 みさ教授)の授業でセガサミーホールディングス株式会社との特別コラボが始まりました。「文化の盗用」について知り、どう付き合っていくかを実地で学ぶこの授業。社会の最先端にいる企業に協力いただき、世界の広がりを感じることができる貴重な機会となりました。

ゲームで世界に感動を

はじめにセガサミー法務知的財産本部の寺原潤氏からセガサミーグループについて紹介がありました。
セガサミーグループはゲームを筆頭にしたエンターテインメントコンテンツ事業、パチンコの開発や販売をする遊技機事業、そしてリゾートの運営やカジノ機器の開発を行うゲーミング事業を軸に展開しています。「感動体験を創造し続ける」をミッションに、ありたい姿として「Be a Game Changer」を掲げています。
「この革新者たれ、という精神は、実践女子大学にも通じる考えとシンパシーを感じています」と寺原氏は語りました。

今回は数あるグループ会社の中でもゲーム開発を行う株式会社セガとのコラボです。
セガでは家庭用ゲームソフトの開発が主力。ゲームをする人は全世界に30億人を超えると言われ、大きな市場です。
「だからこそ、文化の盗用は問題になっています」と寺原氏。
今回の課題について触れながら説明をされました。

文化の盗用とは?

続いてセガの表現倫理ユニットに所属されている吉田一彦氏が登壇。
「ゲームなどのコンテンツ内の表現が倫理的に適切なものにするためのサポートをしています」と仕事内容を紹介されました。技術が進歩するにつれゲーム内でもリアルな表現ができるようになったことにより、表現一つひとつが、社会的に問題がないか確認する必要がでてきたのです。
そのひとつが「レーティング」。
定められた基準に照らし、対象年齢などの目安を提示するものです。暴力表現などが多いものなど、未成年からの保護が大きな目的です。

しかし「文化的な理由で年齢問わずNGにすることもある」と吉田氏は話しました。
地域の文化、宗教に合わない表現があった場合にストップをかけるのも大事な役目です。
法律や条例には違反していなくとも、文化や宗教の倫理的に侮辱や差別に該当しかねない表現をチェックするのです。「社会との価値観のズレがないように、さまざまな相談があります」と吉田氏。
例えば、2021年に行われた東京オリンピックのオフィシャル映像の初期設定では、神社の境内でサッカーやバスケットボールをするという構想があったと言います。しかしこれは神聖な場所にはふさわしくない行為ということでNGを出したと話されました。
「こういった倫理観は全世界、地域ごとで違っている。相談があるたび自分たちもそれぞれの国の文化や伝統を一から調べています」と語りました。

防ぐためにはどうする?

では「文化の盗用」は具体的にどのようなことでしょうか。
吉田氏は「自分の文化ではない文化や伝統から物事を流用、私物化する行為」と話します。部外者がよく知らずに外見だけ真似ることで、誤った模倣が広がってしまい、元々の伝統が守られなかったり差別につながってしまったりすることも。

吉田氏は実際に問題になった例を上げていきました。
そこには日本の文化である着物が盗用された例もありました。また日本家屋の屋内にハイヒールで立っている写真の例なども紹介。
「日本文化が何一つ尊重されていないと批判が殺到しました」と吉田氏。このほかにも、黒人文化のヘアスタイルやファッションを安易にまねた例や、インディアンやサーミ族など少数民族の伝統を盗用した例も。
そこには「世界的に有名なブランドも次々に批判されています」と吉田氏は語り、文化の盗用をしないことの難しさを語りました。

「こういった相談はこうしたらいいという正しい対処法がなかなかありません」と吉田氏。
しかし「他文化の要素を取り入れることはNGではないはずと信じたい」と言います。きちんと調べ尊重して正しく取り入れれば、その文化を伝えることもできると考えています。

文化の盗用に注意してゲームを企画しよう!

ここで学生たちの課題が寺原氏から発表されました。
セガ製作のゲーム「龍が如く」の新作の企画立案です。それぞれお題の国や地域が与えられ、リサーチとディスカッションにより文化の理解を深め、文化の盗用を避けるという点を重要視して作成することが求められます。
そのとき一目で「○○編」だと分かるようなキービジュアルを作ることも課題のひとつ。
単純な街並みだけでなく、ストーリーにもその地域らしさを盛り込みます。

担当の国・地域はくじ引きで決定。
アルゼンチンやトルコ、イギリス、ドイツ、ペルーなどさまざまな国が発表されました。
各チームは各国についてリサーチをして要素を探していきます。

最後に学生たちから質問の時間が取られました。
「批判されたら文化の盗用に当たると判断されるのでしょうか」という質問には吉田氏が「批判されたら、ということではないけれど、その文化の当事者が怒るというのは一つの基準です」と回答。
文化の盗用を防ぐには倫理観を正常に保つことが大切と言い、「みなさんもこの点に気を付けて頑張ってください」とエールを送りました。

担当教員よりメッセージ

この日を心待ちにしていた学生たちは、みな真剣なまなざしで話に聞き入っていました。当日のリアクションペーパーには、「文化の盗用」に対する深い理解とさまざまな観点から抱いた関心、そしてチーム課題に対する並々ならぬ意気込みが一人ひとりのことばで綴られていました。
100分間という短い時間でしたが、豊富な事例を用いた「文化の盗用」のレクチャー、そして学生たちを鼓舞する細やかな演出によって、大変有意義なコラボ授業を行うことができました。セガのみなさまに心から感謝申し上げます。
初回授業から重ねてきたチーム学習の成果を活かし、11月の中間発表、そして12月の最終発表に向けて、力を発揮できることを願っています。

2024年11月5日

企業格を考えよう!「グローバル・キャリアデザイン」の授業で元資生堂の山田氏による講義が行われました。 

3年生対象の大学共通教育科目「グローバル・キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月18日に元株式会社資生堂の山田正人氏による講義が行われました。企業にも人格のような「格」がある、というお話のもと、さまざまな企業の企業格を調べてみるケーススタディを行いました。それぞれの企業の特徴をつかむヒントになる、就職活動にも応用できる実践的な授業となりました。

企業にも「格」がある

現在山田氏は、エフクリエイション株式会社に所属しています。
企業広告や商品パッケージやデザインなどをつくる広告制作会社です。エフクリエイションは、資生堂の創業家である福原グループのひとつ。
資生堂とはいまも深い縁があります。
今回は資生堂の現状や歴史や社風などを通して、「企業格」について考えていきます。
「私がしゃべるばかりでなく、皆さんがどう考えどう活かすかを大切にしていきたいです」と話され、講義は始まりました。

まず、前提となる人格とはなにか、というお話から。
人格とは「能力、性格、気質」からなるもの。性格と気質は似たような概念ですが、「性格は成長するにつれあとからできるもの、気質は遺伝的・先天的なもののことです」と山田氏。
この考えを企業にあてはめたのが、企業格です。企業でいう「能力」は、売上利益・ブランド・商品など。「性格」は理念。
また広告や社長の発言など、時代によって移り変わるものです。
そして「気質」は企業の歴史や社風。長年にわたって蓄積されてきた風土だと話しました。

資生堂の作り上げた企業格とは

ここで資生堂を例に企業格を見ていくことに。
資生堂は化粧品業界ではNo.1の業績です。
「能力という目に見える企業格では日本のトップです」と山田氏。
性格にあたる理念では、美を創る、提供することで世の中を良くするという「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を掲げています。
150周年のCMでは、世代を超えて自分らしく活躍する女性たちの姿を表現し、好評を得ました。

気質として、創業者の福原家のことを紹介しました。
資生堂は1872年日本初の洋風薬局として銀座に開業。化粧水や歯磨き粉がヒットし、大きくなっていきました。
2代目の時代に本物やデザインにこだわる「資生堂スタイル」が徐々に確立していきます。
特に資生堂を象徴するモチーフになった「花椿」は2代目自らが描いたスケッチを元にデザインされました。
「ブランドイメージという概念もなかった時代に作り上げていったんです」と、山田氏は2代目の持つ先見性とアートの精神を伝えました。同時期に試験室を開設し、最先端の技術を化粧品に応用することを目指していきます。
山田氏は「このアートとサイエンスの理念は今なお続いています」と話されました。

人に温かい社風はいまも

企業格の気質には社風も含まれます。
資生堂は、人に温かく、社員一人ひとりが互いを尊重し合う社風です。
「私も学生の際の企業面接のときに、エレベーターのボタンを社員の方が開けてくれ、いい会社だなと感じたことがあります。小さなことですが、人に温かいというのは資生堂の持っている気質で、それが周りの人を幸せにするのだなと思います」と山田氏。
社外や世間からのイメージも、信頼性が高く安心感がある、という評価を受けています。

最後に山田氏が資生堂の企業格をまとめられました。
能力は日本を代表する化粧品会社であること、性格は品質や安全性の高い製品を作り美で世界を豊かにすることを目指していること、気質は創造性を大事にしてチームワーク良く仕事に取り組んでいること、を表にして示されました。
「これを例にして、みなさんにも企業格を考えてもらいたいと思います」とケーススタディが始まりました。

身近な企業はどんな企業格?

ケーススタディで示されたのはアパレル企業のユニクロ、飲食業のスターバックスコーヒー、生活雑貨の無印良品、日清食品の4つ。
学生は10つの班に分かれ、それぞれ担当の企業について企業格を調べていきます。学生たちは協力し合いながら各企業について調べていきました。

20分ほどワークの時間が取られたあと、最後に各班から調べた企業格について発表がありました。
ユニクロについて調べた学生は、性格として企業理念のほか、「CMにさまざまな人種や年代の人を採用している」ことに着目。
山田氏も「ダイバーシティを推進している企業ということが分かりますね」と感心されました。
日清食品を調べた班からは企業サイトに合った文言から「ハッピーやユニークであることを重視している」という点を挙げました。
山田氏は日清食品の企業ミュージアムがあることを紹介し、「商品を使うだけでなくミュージアムで体験することでより企業を知ることにつながります」と話しました。

企業格を考え就活に役立てよう

最後に山田氏は「今日で実践女子大学の、真面目で熱心だという大学格が分かった気がします」とあいさつ。
「企業格を考えることは、その企業がどんな会社であってほしいかを考えることにつながります。就職活動のときにもぜひ考えてみてください」とアドバイスを送りました。
学生たちにとって就職活動の企業研究のヒントとなる授業となりました。

担当教員のメッセージ

本授業には、初めてお越しいただきました。
海外の事業所での経験を含めて、グローバルキャリアを築かれてこられた山田さんのお話しは、
大変興味深い内容でした。そして「会社の格」という視点での見方は、学生にとっても
私にとっても新鮮な切り口でありました。
時代とともに会社の姿は変化していきますが、やはり150年の歴史を刻む資生堂ならではの
語り継がれたミームは、永遠に変わらないと思います。
これから就職活動に臨む学生に対する企業研究の新たな視点は、大変参考になる示唆に富んだ
内容を構築いただきました。この場を借りて山田正人様には心から感謝申し上げます。

2024年10月30日

お化粧は心を満たすもの。「国文学マーケティングプロジェクト」の授業で資生堂企業資料館の貴重な資料を拝見する講義が行われました。 

10月3日に「国文学マーケティングプロジェクト」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社資生堂の企業資料館の大畑昌弘氏による特別講義が行われました。資料をたどることで、企業の歴史とともに日本の近代史を肌で感じることができる貴重な時間となりました。

貴重な資料を一か所に集約

資生堂の企業資料館は静岡県掛川市にあります。
1、2階が展示スペース、3、4階が保管庫になっています。資料館は1992年に開館。
きっかけは「創業100年に社史を創ろうとしたこと」と大畑氏。
創業当時からの資料を全国から収集したことでした。現在21万点収蔵され、現在も販売されている新商品を集め続けているため年々増えていると言います。

ここで大畑氏は「資生堂はどんな会社だと思っていますか」と学生たちに問い掛けました。
「一言で表すのは難しいですが、私たちは『変わらないために変わり続けてきた会社』だと考えています」と話しました。大切にしているこだわりを守り続けるために、時代に合わせてさまざまな変化をしてきた資生堂。
その歴史を資料とともに紹介してくださいました。

本物を志向し新しいものを生み出す

資生堂は1872年創業。
創業者は医者の家に生まれた福原有信です。
現在の東京大学医学部にあたる幕府医学所にて、当時最先端の西洋薬学に出会います。当時、日本で使われていた薬と言えば漢方でした。
福原は西洋薬学を浸透させたいと、民間では日本初となる西洋薬学の調剤薬局を始めました。
それが資生堂です。

資生堂の名は中国の古典である易経の一節、「万物資生」から採られました。全てのものは大地から生まれるという言葉です。
「ここから考察出来るのは、新しい価値を生み出していくというフロンティアスピリッツです」と大畑氏。
それまでなかった西洋薬学の薬局という新しいものを生み出した福原。
「この新しい価値を生み出すことで、より良い世界にしていくという考えは現在のミッションにもつながる」と話しました。

1888年には日本初の練り歯磨きを発売。
かなり高価でしたが大ヒットしました。陶器に入ったラグジュアリー感もあり、本物を志向する資生堂を象徴する商品となりました。
1897年発売の化粧水「オイデルミン」も、資生堂を代表するヒット商品。当時最先端の技術により作られましたが、現在も改良が重ねられ販売され続けています。

文化発信の役割も担った

資生堂の少し変わったビジネスに飲食業があります。
「資生堂パーラー」は資生堂が運営するレストラン。創業者の福原有信がアメリカのドラッグストアでソーダ水を販売していることをヒントに、ソーダ水製造機を輸入して店内にソーダファウンテンをつくったことから始まりました。
本物志向はしっかり受け継がれ、息子である福原信三が、ソーダファウンテンをレストラン「資生堂パーラー」に発展させ、オーケストラの演奏や銀食器の使用などにより、高級なレストランとして浸透しました。「ものごとはすべてリッチでなければならない」とは息子信三の哲学です。
「資生堂は高級なもの、間違いのないものを扱っているというブランドイメージを醸成した」と大畑氏は説明しました。

1934年のミス・シセイドウが美容部員の起源です。
採用された女性たちは、化粧品の知識やメイク方法などはもちろん、着付けやテーブルマナー、歩き方など教養やマナーをしっかりと叩き込まれました。資生堂を代表する一流の女性として育てたのです。
彼女たちはミスシセイドウとしてスター的な人気を得て、女性たちの憧れの存在になっていきました。

女性文化情報誌「花椿」の発刊もこの頃です。
商品の宣伝のほか、海外の映画情報や献立のレシピなども載せていました。生活の欧米化が進みつつもテレビもない時代、文化の発信も担いました。

化粧は生活に必要なもの

とはいえ、資生堂もすべてが順風満帆だったわけではありません。
1923年の関東大震災や戦争の時代は商品を作ることも売ることも難しいときも。

最近では、2011年の東日本大震災も大きなダメージがありました。
資生堂はすぐ支援のために動きます。物資の輸送はもちろん、社員が現地に赴き化粧品がなくてもできるお手入れ方法を伝える活動も行いました。
現地で被災者の方と交流を重ねる中で、化粧品とは何か、ということと向き合っていったと大畑氏は語ります。
当時の経験から大畑氏は、「化粧は心を満たすものです。化粧品は食料品などと違って、生きることに必要なものではないかもしれませんが、明日を信じることや、前向きになるために重要なものであると知りました」と話しました。

コロナ禍では、手肌が荒れにくいアルコール消毒液を開発。
医療関係者に無償提供しただけでなく、さまざまな企業で作れるよう処方も公開。利益だけを追うのではなく、世の中を良くするために行動し続けています。
「資生堂は今年で152年目を迎えます。これからも想像もつかないような変化がうまれていくことでしょう。それでも変わらないために、変わり続けていくのです」と大畑氏は話しました。

前向きになるために必要なもの

講演後には学生から「お化粧をする日としない日では気分が違う。お化粧をすると気分が上がるので、震災のときの話はとても共感しました」という感想が。
大畑氏は、「化粧品がほしいと思えることは、社会に出る、つながるという感覚がある。生活必需品ではないと思われがちですが、一番大事なものになることがあるんです」と熱意を込めて語られました。

授業の最後には、資料館から持ってきた貴重な資料を実際に鑑賞。
学生たちは美しい化粧水や香水、ヘアトニックの瓶などを真剣に見入っていました。

担当教員のメッセージ

国文学の学びと企業活動を結び付けて考えることをコンセプトにした本講座も5年目を迎えました。
本講座には、資生堂と叶匠寿庵の2社にご協力をいただいて授業が進行していきます。
まずは、資生堂企業資料館の大畑館長からの講話をいただきました。和魂洋才をベースにおく資生堂、
近代文学の中にも数多く登場する資生堂パーラーなど、国文学の学びが、企業の歴史の中に
散りばめられていることを改めて学びました。大畑館長には、この場を借りて心から感謝申し上げます。