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2024年7月22日

ワークルールを知って働く!「実践キャリアプランニング」の授業で連合のフェアワーク推進局長による講演が行われました。

5月10日に「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本労働組合総連合会(以下、連合)のフェアワーク推進局長である小林妙氏による講演が行われました。「働くことを考える」をテーマに、働く上で守るべきワークルールを教えていただきます。アルバイト中や就職活動中の学生にとって、安心安全に働くための基礎知識を知る機会となりました。

連合は働く人を守る組織

小林氏は教師を目指し教育学部を専攻するも、企業への就職に興味が湧き、証券会社へ入社。
その後転職した先が倒産の憂き目に遭うも、縁あって産業別労働組合(JAM)の仕事に関わるようになり、連合へ出向されました。

フェアワーク推進局では、非正規雇用などで働く人たちの声を集め、実態を把握し、課題解決につなげていく活動をしています。
その対象は非正規雇用者、パートやアルバイト、フリーランスや外国人労働者などさまざま。
またLGBTQといった性的少数者などの方々も対象です。性別・年齢・国籍・障がいの有無などに関わらず、一人ひとりが尊重され、公平で働きやすい職場環境を実現するために活動されています。

労働組合は、憲法28条で認められた「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」といった3つの労働者の権利を実行し、労働者を守るためにあります。また、労働基準法という法律も含め労働者が働く安全、安心は守られているのです。これらが守られていない場合や改善して欲しい場合は、労働組合は企業側と対話し、要望をすることができます。
労働組合は企業と対等の立場であり、企業側は対話を断ることはできません。労働組合と対話をすることも法律で決められているためです。

労働組合って必要?

連合は、各企業・業界の労働組合が加盟するナショナルセンター(中央組織)です。労働組合とは働く人たちが自主的に組織するもの。職場の環境は安全か、法律違反はないか、ハラスメントはないかなど相談を受け、意見を取りまとめる窓口です。
労組は二人以上で作ることができ、現在連合には690万人以上が加入。非正規雇用者やパートなど正社員以外も加入でき、現在加入者の約2割が正社員以外の方です

「憲法や労働基準法があるなら、労働組合って必要?と思われる人もいるかもしれません」と小林氏。
「私も勤めている時は、労働組合のことをよくわかっておらず、時間外に色んなことを聞かれて正直邪魔だなと思っていました」と告白。
しかし、「今は必要だと思っています」と言います。

例えば週休2日が常識になっていることも労働組合の活動の結果。
労働基準法には「少なくとも毎週1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日」としか決められておらず、週6日働くことは違法ではありません。
これでは労働者が大変だと労働組合が活動を行い、週2日の休みを勝ち取ったのです。
小林氏は「労働基準法以上の環境や働きやすさをきちんと獲得するために、労働組合や連合は必要です」と話します。「皆さんもこれから就職の際、労働組合がある企業に勤めてほしいと思います」と、就職先を決める基準のひとつにして欲しいと話しました。

ワークルールを知ろう!

ここで小林氏は「ワークルール」についての問題を出しました。
ワークルールとは、簡単に言えば企業側が労働者に対して、してはいけないことです。「知ってるつもりで実は知らないルールです」と小林氏は問題を出していきました。

例えば「学生アルバイトでも法律で守ってもらえるか?」という問題。答えは「もちろん守られます。年齢によっては深夜に働くことは法律違反ですが、知らずに働かされることもある」と小林氏は注意を促しました。
また意外な問題では「採用面接で尊敬する人は?と聞くのは良い?」というもの。「働く能力とは関係ない思想に関わることは、個人の自由であるべき」と小林氏。
好きな言葉や宗教なども聞くことはよくないと言います。「ただ、まだあまり浸透しておらずエントリーシートなどに項目があるといった現状です。そういった会社があったら、疑問を持つことも大事」と小林氏は話しました。
その他にも「インターンシップは無給が当たり前ではない」「時給は1分単位で支払われるべき」などのワークルールが紹介され、学生たちも興味深く聞いていました。

働くこと上で必要な知識を身に付ける

講演後、学生たちは質問をリアルタイムで掲示板に投稿し、深澤教授が読み上げる形で質疑応答が行われました。
「最低賃金を上げるように国に言ってください」という投稿に小林氏が「了解しました。連合など労働組合も最低賃金を決める会議に参画しているので、その担当に伝えます」と答えると、笑い声が起きました。
「国としても最低賃金を上げようという動きがありますので頑張っていきたいですね」と話されました。

「アルバイトでも有給休暇があると知らなかった」という感想には「一定期間・一定時間を働いているなど条件はありますが取れますので、社員の方にアルバイトも有休が取れると法律で決まっていると話してみましょう」と助言されました。
その他にもアルバイトやお金のことなど、働くことへの身近な質問が多数投稿されました。
学生たちは働く上で知っておくべき知識を得た大切な講演となりました。

2024年7月18日

ハピネスの循環で世界一のホスピタリティを!「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。 

6月6日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。夢の世界を運営するスタッフのホスピタリティの高さはどう養われているのか、その秘訣は「ハピネスの循環」にあると語ってくださいました。

開園当初はキャストとして活躍

この日はまさに東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープン当日。記念すべき日に講演いただくことになりました。永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
最初はアトラクションのキャスト(スタッフ)としてコスチュームを着て活躍し、その後役員になりました。

開園当初の日本はまだコンビニエンスストアが出てきたばかりの時代。
ディズニーランドも遊園地という認識が強く、飲食物を持ち込むゲスト(来園者)も多かったと言います。
「今では考えられないですが、アトラクションにバナナを持ち込んで食べてる方もいたくらい、当時の日本人もマナーは悪かったんですよ」と話し、笑顔どころか、眉間にしわを寄せてゲストに飲食物の注意をしては謝っていたと、笑いを交えて話されました。

ハピネスを届けるためにはコミュニケーションが大事

開園当初からどのようにディズニーランドが成長していったかを語られる中で、キャストのホスピタリティが上がっていったことが大きいと永嶋氏は話します。
世界に6つあるディズニーリゾートのなかで一番のホスピタリティ高さと言われるようになり、本場アメリカからも視察にくるように。
「ホスピタリティとは人間力のことだと私は思います」と永嶋氏は語りました。

「キャストが目指すべきゴール、それはゲストにハピネスをお届けすることです」と永嶋氏。
「驚かれるかもしれませんが、キャストには接客マニュアルがないんです」と話します。
キャストが心掛けていることはあいさつだと言い、「ゲストと会話をするために、まずあいさつするんです」と話します。いかにゲストとコミュニケーションを取るか、どうやってゲストを喜ばせるかをそれぞれのキャストが考えて行動します。
今では有名になった水たまりや落ち葉でディズニーキャラクターを描く「カストーディアルアート」もキャスト発案です。

永嶋氏は印象的な出来事として東日本大震災のことを話されました。
約1か月パークが閉園している間に、どのようにゲストとコミュニケーションを取るか、どうサプライズを提供するか定期的に集まってディスカッションを繰り返したと語りました。

インクルージョンを広めていくために

永嶋氏は「接客のためのマニュアルはないですが行動基準がある」と話します。
安全・礼儀正しさ・ショー・効率、の4つの基準がこれまでありましたが、「そのなかに最近インクルージョン(多様性)が入りました」と紹介しました。

しかし、オリエンタルランドも昔は男社会で、ジェンダー問題への理解も十分ではなかったという永嶋氏が役員時代、キャストのリーダー育成プログラムに手を挙げたキャストに性別違和をカミングアウトされた人がいたのですが、広報の男性役員からその人をリーダーから落とすよう指示があったと語りました。
永嶋氏はこの決定に反対し猛抗議しましたが、結局その人は落選。
翌年再度プログラムを受け、ようやく合格されました。
「ディズニーは進歩的だとイメージされていましたが、内部の状況は大きく遅れていた」と、永嶋氏は当時の苦い経験を話されました。

キャスト同士でお互いを高め合う

キャストのホスピタリティの高さの秘訣は「キャストのコミュニケーション活動」にあると永嶋氏は言います。
開園前に各アトラクション対抗のカヌーレースを行ったり、年に一度のサンクスデーで役員たちがキャストをもてなしたり。
永嶋氏が「一番効果がある報奨活動」と言うのは、キャスト同士で褒めてたたえ合うスピリットオブ東京ディズニーリゾートの取組です。
お互いにサンクスカードを送り、カードの一番多いキャストは大々的に表彰されます。

なぜそこまでキャストをねぎらうのかと言えば、「キャストに、実際に感情を持ってハピネスを体感してもらい、同じようにゲストにハピネスをお届けしてほしいからです」と永嶋氏は話しました。
ハピネスをもらったキャストはパフォーマンスが向上し、その分ゲストにさらにハピネスを提供できる、という「ハピネスの循環」が行われるのです。
「ぜひパークに遊びにきてください」と永嶋氏は講演を締めくくりました。

管理職の試験を受けたときの気持ちは?

講演後には質疑応答が行われました。
はじめに「男社会のなかで、なぜ管理職の試験を受けたのですか」という質問がありました。
永嶋氏は「差別というよりは、女性は弱いものだから守ってあげようという考えが当時はありました」と話しました。
初めて管理職の試験を受けたとき、永嶋氏は落ちてしまったのですが、自分よりもあまり仕事ができない男性が合格したのを見て「自分より仕事ができない人が上司になることが許せなかった」と笑いを交えて答えました。
また、「今までできなかった仕事にチャレンジできることは面白いことです」と管理職にチャレンジした気持ちも語りました。

「永嶋さんが思うインクルージョンを向上させるコツや考えを教えてください」という質問には、「いろんな身分、年齢の方が働けるということ。
これから定年という考えもなくなってくると思います。そういうこともひとつのインクルージョン」と回答されました。
「オリエンタルランドで働いたことで得た財産は?」という質問には「人。さまざまなつながりになったり、長い付き合いになったり、助けられています」と答えられました。

ディズニーリゾートに通底するホスピタリティの高さの秘訣に触れ、学生たちにも刺激になった講演でした。

担当教員からのメッセージ

永嶋様と初めてお会いしてから、もう20年以上になります。
いつもアグレッシブな永嶋様から色々なことを学ばせていただいています。
とりわけ確固たる信念をお持ちになり、メンバー一人ひとりのことに気を配りながら、先頭に立って組織を牽引されるリーダーシップについては、私の目標でもありました。
今回も、テーマパークのオープン当時のこと、管理職としてのご苦労など、
学生にとっては、極めて貴重な時間になったと思います。
この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

2024年7月17日

絵のように見せる様式美!「民俗芸能特講a」の授業で歌舞伎俳優が実演を交え講演会が行われました。

6月24日(月)に美学美術史学科専門科目「民俗芸能特講a」(担当:文学部美学美術史学科 串田 紀代美准教授)の授業で、歌舞伎俳優の中村梅乃(うめの)氏と中村梅寿(うめとし)氏による歌舞伎の講演会が行われました。教室の前側には畳が敷かれ、歌舞伎の様式美である「絵面(えめん)」について、実演も交えて丁寧に教えていただきました。普段なかなか触れる機会の少ない伝統芸能について学ぶまたとない機会でした。

歌舞伎は女性から始まった!

お二人は中村梅玉門下の兄弟弟子です。
梅乃氏は主に女性役を演じる「女方」、梅寿氏は男性役を演じる「立役」として活躍されています。
梅乃氏が「歌舞伎俳優というと、家系で代々受け継がれているように思うかもしれませんが、そうではない人たちもいます」と語り、お二人とも梨園(歌舞伎界)の外部から「自分の意志で、職業として歌舞伎俳優を選んでこの世界に入りました」と自己紹介されました。

まずは歌舞伎の歴史からスタート。
歌舞伎の語源は「傾き(かぶき)」で、常識にとらわれないアバンギャルドな行動のこと。
奇抜な風体を取り入れた新しいかぶき踊りを、1603年に出雲阿国が行ったのが始まりと言われています。
出雲阿国は女性で、意外にも歌舞伎は女性から始まったのです。
しかし歌舞伎踊りに男性が夢中になってしまい、風紀を乱すと幕府は女性が舞台に立つことを禁じました。
その後内容も、踊り中心のショー要素の強いものからストーリー重視になり、男性が女性を演じる女方が生まれ、今につながる歌舞伎の大きな特徴となっていきました。

400年以上さまざまな形で受け継がれる

歌舞伎は大きく分けて、江戸時代からみた歴史物語である「時代物」と、江戸時代当時の写実的なドラマ「世話物」の2つがあります。
「この2つは見た目から違います」と梅乃氏は強調します。
時代物は色彩豊かで派手な見た目で、世話物は庶民の地味な服装。化粧法も違うのも面白いところです。

明治から昭和初期にかけて、西洋の演劇や文学の影響を受けて生み出された「新歌舞伎」や、昭和中期以降、現代的な舞台技術を駆使した「新作歌舞伎」も作られるようになりました。
現在ではアニメ作品とコラボするなど、伝統芸能と新しいジャンルの掛け合わせも多く出てきています。
梅寿氏は「新作歌舞伎は難しいけれどゼロから掘り下げる面白さがあります」と話します。
「このように400年以上、工夫を凝らしながら人々を魅了し続けてきた歌舞伎は、今なお進化を遂げているのです。」と梅乃氏は続けます。

絵のようにみせるとは?

歌舞伎は、ひとえに「様式美によって表現される演劇」なのです。
演技、演出、身体表現などそれぞれに型があり、いかに美しく見せるかを追求する芸術。
舞台全体を絵画的な美しさで構成するという概念を、歌舞伎では「絵面(えめん)」と言うのだそうです。

ここでお二人が立ち上がり、実際に様式美の身体表現を実演されました。
女方の表現では、胸を張り肩を落とすことで、女性的なシルエットに見せます。
また背筋は保ったまま膝を折ることで身長を低く見せます。「この体勢は太ももがパンパンになりますが、こうすることで親子、上司と部下など上下関係も見た目で表せる」と梅乃氏。

さらに大事なのが「斜め45度」の美学です。
二人が会話する場面で、お互いが本当に向かい合ってしまっては、観客から見えるのは横顔だけ。
それでは演技が劇場に広がっていきません。そのとき45度に体を開くことで大きく表現できるのです。

実演により歌舞伎の魅力を知る

歌舞伎のだいご味である「見得(みえ)」についても実演を交えながらの解説に納得します。
梅乃氏は「映像で言うストップモーションやクローズアップ」と例えます。非日常的な動きをすることで、観客の視線を誘導したり、場面を印象付けたりするのです。この見得も、踏み出した足先や、顔の向きの角度は45度が基本です。

「やみくもに手を広げて目をひんむいているわけではないんです。すべての動きに意味があり計算されています」
梅寿氏が動きを教え、学生も一緒に見得の動きを体験した一幕もありました。

最後にはお二人による寸劇が披露されました。
なんと今回のために書き下ろしてきてくださった特別なものだそうです。
傘や刀など小道具も使い、立廻りも入れた贅沢な作品で、学生たちも真剣に見入っていました。

ぜひ歌舞伎を観てみよう

講義後には質疑応答の時間も持たれました。
「歌舞伎を始めたきっかけはなんですか?」という質問に、梅乃氏は「小学生のとき歌舞伎を見てすごい世界だと思い、徐々にやってみたいと思うようになり国立劇場の養成所に通いました」と回答。
梅寿氏は「私は歌舞伎が好きだったというわけではなく、習い事として日本舞踊をやっていたことがきっかけです。師匠に勧められこの世界に入りました」と梅寿氏。お二人それぞれのきっかけに、学生は興味津々です。

まだ歌舞伎を観たことがないという学生からは「最初に観ると良い作品を教えてください」というリクエストに、梅乃氏は「時代物よりも世話物の方が話の内容も分かりやすいです」と教えてくださいました。
「裏方に当たる方も全員男性なのでしょうか」という問いには、「女性の方もたくさん活躍されています。衣裳さんなどは女性の方が多いセクションも。大道具さんなど力仕事にも女性はいます」と女性の活躍にも言及なさいました。

最後に梅乃氏が「ぜひ絵面にも注目して歌舞伎に触れてみてください」と話し、授業は終了しました。
歌舞伎俳優による実演を間近で見る素晴らしい機会となりました。

担当教員からのメッセージ

「民俗芸能特講a」の授業履修者は70名を超えています。しかし、歌舞伎、能狂言、人形浄瑠璃といった日本を代表する古典芸能の舞台に自ら足を運ぶ大学生は、ほぼおりません。「伝統文化の継承者は無理でも、学生たちにはよき舞台鑑賞者になってほしい...」こんな話を株式会社生活と舞踊の代表である梅澤暁氏に相談したことがきっかけで、中村梅乃氏をご紹介いただき、本講演会が実現しました。次は劇場の客席で、歌舞伎の様式美「絵面」や「斜め45度の美学」を学生に思い出してほしいです。

2024年7月17日

誇りを持ってキャリアを積み重ねる。「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。

5月16日に、大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、SBI金融経済研究所株式会社の取締役理事長である政井貴子氏をお迎えして講演が行われました。本学の卒業生でもある政井氏は、自身の経験から、学租の思いを受け継ぎ女性活躍の道を実現していく大切さについてお話くださいました。

男女差をなくすことは世界平和につながる?

この授業は学生たちが司会進行します。
学生に紹介されると、政井氏は「なぜこの授業があるのかについて、私なりに説明していきたいと思います。」と講演を始められました。

まずは「男女共同参画社会基本法」について。日本の男女差別を撤廃するおおもとです。
「もっと遡ると国連にたどり着きます」と政井氏。国連は二つの大戦を経て、戦争を二度としないために設立されました。
「戦争防止のための組織がなぜ差別撤廃に踏み込んでいるのかと言えば、過去の日本において、男性しか政治や経済などのものごとを決めていなかったことに気付いたからです」と政井氏は話します。
人類の半分は女性であり、人種もさまざま。国連は、いろんな立場の人たちが合同で話し合いをしていたら、戦争は起きなかったかもしれないという反省からできた組織なのです。
男女が平等に社会で活躍できることが、安定的な経済、そして平和につながるという考えが根底にあります。

完全な男女平等までは道半ば

日本も少しずつ法律を調え、1985年男女共同参画社会基本法を制定。
それまで男性に隠れていた女性が、各々自分が幸せだと思う、豊かだと思う生活を選べるように少しずつ変わって行ったのです。
ジェンダーギャップ指数を見ても、日本は健康と教育の分野ではほぼ男女格差のないところまできています。
「ところが、ここまで平等に育ててきておいて、経済や政治になるとまだまだ」と鋭い一言の通り、経済や政治の分野では男女平等とはいいづらい状況です。

今はあまりギャップを感じていなくても、「女子大を卒業して社会に出たとき、ひょっとしてこれは、と思うことがあるのだろうなと思います」と、政井氏は学生たちに心構えを促しました。
あるアンケート調査では、社会において『男性の方が優遇されていると思う』と回答した割合は8割。
「性差役割の思い込みギャップは若い世代では減ってきていますが、育休取っている男性同僚のことはあまり仕事をしていないように感じてしまうなど、意識が完全に変わっていない。今は過渡期です」と現状を伝えました。

外資系から公的機関まで

政井氏は本学の英文学科を卒業後、外資系の金融機関に就職。
英語を使うのではなく、英語で仕事をするのが当たり前の職場に行きたいと思い外資系に。約20年間外資系の企業で活躍してきました。

日本の慣習やビジネスでの立ち振る舞いが足らない部分と感じ、2007年に現SBI新生銀行に転職。
「当時、女性を中途採用で正当に評価してくれた会社は他になかった」と言い、前職から継続してキャリアを積み重ねられたと話しました。
2012年に役員に就任。役員になると自分が決められることの幅が広がり、会社や社会に対して一層働きかけることができる
ことを感じ、やりがいを覚えたと話しました。
その後、日本銀行の審議委員へ就任。世界に向け、日本を紹介したり政策を伝えたりする場面が増えていき、これからの日本について考えるようになったと言います。

2021年からは現職に。テレビ出演、講演の仕事も増えていきました。
「自分が出演するなんて、と思いますが長く仕事しているとそのことに詳しくなっていく。知識を共有することも大事な仕事」と話しました。

創設者の思いを引き継いで活躍して

最後に、本学の創設者・下田歌子の話題も。
当時から外国の留学生を受け入れていたことを上げ、「相当革新的なキャリアウーマン」と評します。
どうやって出資してもらって学校設立できたのか、どのように帝国婦人協会設立したのか、それがどんなに大変なことか「実際に女性として役員をやってしみじみ思う」と言い、改めてすごい人物だと知ったと話しました。

「彼女は国連ができる前に、国のことを決めるには女性も参画するべきと主張しています。男女差が相当ある時代に女性が自立することの大切さを知っていた。彼女が作った学校のもと学んでいることを誇りに思って、学租の思いを皆さんなりに実現していかれるといいなと思います」と講演を締められました。

極意は分からないことは素直に教えてもらう

授業の最後には質疑応答が行われました。
「人生を決める際に自分の軸になっている考えは?」という質問には、「モヤモヤしないかどうか。なんとなく気が進まない、すこしでも引っ掛かることがあると思ったら その直感を基準にしてみる」と回答。

次の質問は「女子大から経済界という男性が多い環境に飛び込んだとき、どのように関わっていったのか」というもの。
政井氏は「知らないことは取り繕わないこと。卒業当時は、経済も詳しくなかったので、分からないことは教えてくださいと言う質問魔だった。知らないことを隠さないで聞けることが重要」と話しました。

「女子大に入って良かったことは?」という質問もありました。
「共学だったら男子がやっているポジションも、女子大だと女子がやらなくてはいけない。共学だとどうしても女子はアシスト的になっているところも多いですが、女子大だと女子がリーダーシップを取らざるを得ない。そして学校とは失敗しても大丈夫な場所です」と回答しました。
女性として活躍するロールモデルの一人として、学生たちに多くの刺激を与えてくださった講演となりました。

担当教員からのメッセージ

本学卒業生として毎年ご登壇いただいている政井貴子様は、外資系の金融機関をご経験の後、日本銀行の政策委員会審議委員を務められた方であり、外資系、国内系、そして政府系と3つの金融機関でのキャリアを歴任されている方は、他に例をみない素晴らしいロールモデルです。
 
マクロな厳しい視点からのアドバイスもいただけた一方、仕事だけが人生ではないというご自身の経験からのお言葉は学生の心に深く届いたことと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2024年7月17日

企業は世の中を良くするためにある!「女性とキャリア形成」の授業で元スターバックスCEOによる「ミッション」についての講義が行われました。 

5月2日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に、元スターバックス・コーヒー・ジャパン株式会社CEOの岩田松雄氏をお招きしました。現在は株式会社リーダーシップコンサルティング代表として、多くのリーダーを育成されている岩田氏。学生たちに向け自身の「ミッション」を考えるきっかけとなる講演を行っていただきました。

人はだれでも人生においての「経営者」である

本授業の進行は担当のグループ(CUBE)が行いました。
担当CUBEの学生は「アルバイト先でチームリーダーを任されており、メンバーをどうまとめるかが悩み。本日は良いリーダーになるための考えを学びたい」と話し、岩田氏を紹介しました。

岩田氏が登壇されると「リーダーに一番必要なことは、その組織のミッションを明確にしメンバーに語ることです」と講演を始められました。
ミッションは一般的には使命と訳されますが、「なんのために企業や組織が存在するのか?それがミッションです。」と語ります。
「企業といわれてもまだ実感できないと思いますが、自分たちが所属する組織、例えばサークルやアルバイト先などにおいてもミッションはとても大切です」

また、「みなさんはご自身の人生においては、間違いなく経営者です。自分で意思決定をし、その結果責任を持つという意味で、全員が人生の経営者なのです」企業経営に限らず、自身の人生についてのミッションを考えてみることを勧めました。

情報に流されないために

現代は変化の激しいVUCAの時代です。
コロナ禍やウクライナ侵攻、ガザ侵攻など現在、世界中で大きな変化や危機が起こっています。
こういった問題は「遠い世界のことではなく、自分たちにも大きな影響があります。大きな変化の時代を生き延びるためには、高い視座と視野を持ち広い視点を鍛えることが大切です。」

「特にネットの使い方については注意が必要です。ネットには情報があふれていますが、実は自分が関心のあるトピックスしか見ていません。全然視野が広がっていないのです。企業や組織に常に求められるイノベーション(革新)というのは、ほとんどの場合既知と既知を新しく組み合わせることで起きます。イノベーションを起こすためには意識的にいろんなことを見て知る必要があります。広く社会、政治、世界情勢、環境、気候など興味を持つことがとても大切です。」

「現在は情報は洪水です。放っておいても多く情報が入ってきます。次から次に入ってくる情報に対し、自分はどう反応するか、対処するかは自分自身の問題です。自分自身の視点を鍛える必要があります。」

企業の目的は利益じゃない!

岩田氏が経営に興味を持ったきっかけは某ハンバーガーショップの例だと言います。
Aの店舗は従業員が楽しそうに生き生きと働いているのに、Bの店舗はつまらなそうに仕事をしているのがとても不思議に思ったそうです。同じような商品を売っていて、働いているアルバイトの時給もほぼ同じなのに、この差はなんだろうと考えました。
そして、それが経営・マネジメントの差だと気付き、経営の勉強を志すようになったと話しました。

日産自動車株式会社に入社し、製造・購買・財務など幅広く経験し、UCLAビジネススクールで経営を学び、帰国後日本コカ・コーラ株式会社や株式会社タカラ、株式会社アトラスなどの社長や役員を歴任しました。
2005年にはイオンフォレスト(THE BODY SHOP JAPAN(以下、ザ・ボディショップ))の社長に。
この時、企業理念について共鳴されたと言います。「ザ・ボディショップ」は英国の自然派化粧品ブランド。ボディソープや香水、乳液などを販売しています。
一般的に化粧品の安全性を確認するために動物実験をしていますが、「ザ・ボディショップ」は動物実験に反対しています。女性の美のために尊い動物の命が失われるのはおかしいという考え方です。その他、環境問題や人権問題、また30年以上前からフェアトレードにも取り組んでいます。
「ザ・ボディショップ」の創立者であるアニータ・ロディックの考えが企業理念となり、企業として世の中を変えていこうとする姿勢に岩田氏は感銘を受けたと話しました。

「どうしてミッションが大切なのか?ミッションを高く掲げると、それ共鳴した人が集まり、ゴールを共有でき、同じ方向を目指す仲間ができます。企業というのは世の中を良くするためにある。企業の目的は利益の最大化を図ること、という考えは間違い。利益はあくまでも手段であり、最終的な目的は世の中をよくすること(=ミッション)です」と強調されました。

自分のミッションに合わせて就活を

自分のミッションの見つけるためには、「好きで、得意で、人のための重なりを考えることです。とても難しいことですが、まずは自分が本当に夢中になれる好きなことを探しましょう。好きなことさえ分からない人は、まず目の前のことを一所懸命行ってください。頑張っていることを見てくれている人が必ずいます。目の前の仕事を一所懸命にやることで、新しい可能性が広がります。次の仕事やステージに繋がります」

「人は事故や災害、病気などでいつ死んでもおかしくありません。私は生きているのではなく、生かされているという感覚を持っています。その生かされている理由がミッション(=使命)です。」
これから就活に向かう学生たちに「会社のミッションありきではなく、自分のミッションを達成できそうな会社を見つけて欲しい」と話しました。その後ミッションに従って行動したスターバックスのパートナーの感動的な接客の事例紹介がありました。スターバックスでは、アルバイトの一人一人までに「人々に活力を与える」というミッションが浸透しているから、日々お店でのあの素晴らしい接客があるのです。

目の前のことを一所懸命やろう

講演のあと学生たちからの質疑応答が行われました。
「自分の好きなことと得意なことが重ならない時はどちらを選ぶべき?」という質問には、「まずは好きなことから始めれば良い。その好きを深めていけば、必ず得意になっていきます。得意なことを人に教えたり、人のために活用ができ、それでお金をいただける。また苦手だと思っても、それを一所懸命やっていれば得意になることもあります。意外と自分自身の得意なものは気付いていないものです。ですから、良いことも悪いことも人からのフィードバックを謙虚に受けましょう。」と励まされました。

「ミッションが見つかってきても、ビジョン(目標や最終地点)はどうやって決めていけばいいでしょうか」という質問には
「3年先、5年先の実現可能な目標を立てていくこと。まず目の前のことをやって経験を重ねることで、自分の実現可能な範囲も見えてくる」と回答されました。

最後にCUBEの学生から感謝の言葉が述べられ、「大学生活やアルバイトも含め、目の前のことを一生懸命全力で取組み、好きなこと得意なことを見つけていきたい」と学びと感想を話しました。
学生たちにとって、自分が人生で何を成し遂げたいのかを考える大切なきっかけとなりました。

担当教員からのメッセージ

岩田様には、この科目のみならず、本学の多くの科目でご講演をいただいています。
「ミッション」については、多くの学生の中に浸透しており、他の科目での学びと
結び付ける事例も出てきております。
企業が社会で活動する意味、個人が社会で生きていく意味、まさにキャリアの本質に
迫る内容は、学生の大きな気づき、そして学びに繋がっていることを感じます。
改めて、この場を借りて、岩田様に心からお祈り申し上げたいと思います。

2024年6月13日

【渋谷】イノベーションの薪をくべよう!テレビ東京『田村淳のTaMaRiBa』のご協力のもと「実践プロジェクトc」の授業が始まりました。

共通教育科目「実践プロジェクトc」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業が4月10日に始まりました。本授業は株式会社テレビ東京(以下、テレビ東京)のテレビ番組『田村淳のTaMaRiBa』からのご協力のもと、さまざまな企業と連携し、学生たちがさまざまな課題解決に挑む予定です。

テレビ番組で地域創生やビジネスを作る!

授業の開始は自己紹介から。
2年生から4年生まで、幅広い学部学科の学生40名が集まりました。
ひとしきり盛り上がったところで、深澤教授から今回のゲスト講師である今井豪氏の紹介がされました。
今井氏はテレビ東京の番組プロデューサーです。ここで今井氏は「今回のために動画を作ってきました」と自身で編集した動画を披露。
「自己陶酔も入っています」と謙遜されましたが、学生たちはスタイリッシュな動画に見入っていました。

その動画で紹介されたのが、今井氏が総合プロデューサーを務めているテレビ番組『田村淳のTaMaRiBa』。
タレントの田村淳さんを司会にした、地方創生やスタートアップ企業の支援などを番組の中で行っているビジネス共創番組です。この番組の特徴のひとつがさまざまな企業と連携していること。
例えば沖縄の伝統芸能・三線の音源をデジタル保存する取り組みにはヤマハ株式会社が協力しています。他にも大手IT企業やデベロッパーなど、多くの企業と連携。
また、大学生や高校生たちも参加し、番組内で一緒に地域創生や課題解決に取り組んでいます。

協力し合うことでできることがある

「こんな番組を作っているけれど、僕は決して意識が高いわけではありません」と今井氏。
ではどうしてこうした番組作りに携わっているのか、その理由として今井氏は東日本大震災の時のことを語りました。
大きな被害を前にして、なぜテレビ番組を作っているのか、自分に何ができるだろうかと考えたと言います。
「しかしテレビ局だけでは何もできなかった。無力だと思っていたら、企業に勤めている方たちも同じことを言っていたんです」。大企業でも1社ではできることに限界がある。
しかし、企業同士が協力し繋がればできるようになると気付いたと話しました。

本授業の大きな特長は、ゲスト講師の今井氏が前期を通して授業に参加されることです。
今井氏と深澤教授が一緒になって授業を進めていく形です。学生たちがやってみたいこと、提案したことを案で終わらせず、実行できるところまで深澤教授だけでなく今井氏や番組がサポートしてくれます。
「できれば番組でも、この授業の進捗を収録できればと思います」と今井氏。
番組に出演する可能性も出て、学生たちの目も輝きました。

誰でもイノベーションは起こせる!

「今回の授業を進めるにあたって、ひとつ合言葉を決めたいと思います」と今井氏は話し始めました。それは『イノベーションって天才たちの発明なんかじゃない!』。
「イノベーションってなんでしょう。どんなイメージですか?」と今井氏は問いかけます。
「すごい技術」「がらっと変えること」など学生たちから回答がありました。
今井氏は、「イノベーションは身の周りにあるものにヒントがある。いつも何かにチャレンジすることが大切」といくつかイノベーションの例を挙げました。

町工場の釣り糸が最先端医療に使われたり、電車に乗って参拝するのを宣伝したことで初詣が生まれたり。
「技術がなくても、自分たちの課題を組み合わせるだけで良いアイディアが生まれることがある。自分のこれまでの経験と何かを掛け合わせてイノベーションは起こる。だからこそまずは自分の強みを発見することが大事」と今井氏は語りました。

イノベーションを起こすヒントとして、今井氏は「一日1回ビジネスの妄想を記述する」ことをしていると話しました。
例えば渋谷駅を出てから大学のキャンパスに着くまでにあるコンビニで、イートインコーナーが混んでいて座れなかったとき、今井氏は「回転率を上げるにはどうすればいいか考えてみる」と、自分が感じた不満や疑問を解決する方法を想像してみると話していました。

誰のために何をしたい?

最後に、来週の授業までの宿題の発表がありました。
1つ目は「自分にとって大事な地域(街)について考える」こと。
今住んでいる街や大学のある渋谷区、地元、祖父母の住んでいる地域など、自分に縁のある地域を選び、そこでやってみたいことを考える宿題です。
2つ目は「誰のためにやってみたいか、ターゲットを決める」です。
自分のやりたいことや作りたいものが、どんな人に向けたものであるかを考えるための「ペルソナ」を考えます。フルネームから性格、職業、どんな生活をしているか将来の夢などどんな人物かを深く掘り下げていきます。
「絵は下手でいいので似顔絵も書きましょう。最初は恥ずかしいかもしれないけれど、具体的になればなるほど自分のやりたいことが分かってくる。だまされたと思って書いてみてください」と今井氏は語りました。

今後グループごとにテーマとターゲットを決め、内容を詰めていきます。
「やりたい内容はこれから決定していくので、どんな企業と連携するかは皆さんの発想次第。番組ではいろんな企業と繋がりがあるのでどんどん利用していいです。皆さんと面白い企画を作っていければと思います」と今井氏はこれからの授業に期待をかけました。

担当教員からのメッセージ

本年から新たにスタートした講座は、テレビ東京さんの番組と並行して行われる極めてリアリティ溢れる講座です。そして、根底に流れるテーマは、今の時代に最も必要な視点であり、力でもあるイノベーションです。地域再生を考えながら、様々なフィールドで活躍されるゲストを交えながらの航海がスタートしました。相当な荒波も予想されますが、主体性に溢れる学生たちと、無事に目的地に着けるよう伴走していきたいと考えています。

2024年6月5日

未来のファッションを考えよう!人間社会学部の新入生セミナーで三越伊勢丹のご協力のもと、学生によるメタバース空間での企画発表が行われました。 

4月13日に人間社会学部の授業の一環として、新入生全員が参加するイベント、「新入生セミナー」が行われました。今回は協力企業として、株式会社三越伊勢丹にご協力いただきました。実践女子大学人間社会学部では、2004年の設立当初から、入学直後の新入生に対し、4年間の学びの動機づけと新入生同士の交流を目的として「新入生セミナー」を実施しています。2017年からは企業と連携したPBL型のセミナーに方式を変更しました。高校までの授業の多くが「正解のある問題」であるのに対し、社会人になったときに対峙する問題のほとんどは「正解のない問題」です。「新入生セミナー」では、この「正解のない問題」に取り組む姿勢や思考を学ぶことができます。人間社会学部では専門知識を身につけるだけでなく、PBLも含むアクティブな学びを展開しています。また、入学直後のグループワークを通じて、学友を作る機会にもなっています。さらに、この体験を通じて、今の自分に何が足りないかを認識し、今後の学びの動機づけにもつながります。この新入生セミナーでの産学連携PBLを通して、新入生の意識変容を図り、これからの4年間の学びに対する意欲を高めています。今年度は、近い将来に重要視される仮想社会であるメタバース空間を対象とした提案を考えるために、生成AIの使い方を学び、一日を通じてメタバース空間「REV WORLDS」を使ったバーチャルファッションを考える課題にチャレンジしました。学生たちは、新しい世界への視点やきっかけを得る貴重な機会となりました。

先輩学生からのファシリテートの様子
学部長の竹内光悦教授からの挨拶

デパート販売員がメタバース空間を作る?

まず登壇された仲田朝彦氏は、仮想都市のコミュニケーションスマホアプリ「REV WORLDS」の発起人。CGのメタバース空間を一から作り上げた一人です。
しかし、入社時は伊勢丹メンズ館で服を売っていたデパートマンでした。
今回は「きっかけをインストールしよう」をテーマに、なぜ仲田氏がメタバース空間を作り上げたのか語ってくださいました。
仲田氏が入社したのは2008年。
この年に起きた出来事がリーマンショックです。同じ年、iPhoneが誕生したことも仲田氏に大きな影響を与えました。これからはデジタルで革命が起こると確信し、先行きの見えない時代、自らスキルアップすることの大切さを実感したのです。当時メタバースはまだ出てきたばかりの概念でしたが、仲田氏は「いつかネット上に伊勢丹を建てたい!」と考えるようになります。時間も空間も越えて、バーチャル空間で買い物できるようになればもっとすばらしいサービスができるようになると思ったのです。

チャレンジすることを諦めない

ただ、実際に企画が立ち上がるまで13年の時間がかかったと言います。事業計画書を書いて何度も会社に提出しましたが、なかなか企画の力を信じてもらえなかったのです。
「社会人になるとチャンスはなかなかない。売れるものを作らなきゃいけないと言われ、挑戦しづらい環境です。新しいものを受け入れてもらえないこういった環境は変えたいと思っています」と仲田氏。
なかなか企画が通らないなか、今苦しくても頑張ろうと諦めず、ずっと胸に秘め機会をうかがっていました。
そして巡ってきたのが社内起業制度の募集です。

「バーチャル空間なんていつできるのか」と社員に言われたことに一念発起し、独学でCGのモデリングを学びました。
仲田氏はCGについてはまったくの素人でしたが、必死で勉強しCGのプレゼンテーション動画を作成。
そのプレゼンテーションが認められ、「REV WORLDS」が誕生しました。

未来のデジタルファッションとは?

「REV WORLDS」は伊勢丹だけの空間ではありません。
都市型のメタバース空間で、様々な企業や施設が地続きで存在する、もうひとつの世界です。
仲田氏は「皆さん一週間のなかでお財布を開いた時間はどのくらいですか?」と問いかけました。
買い物をしている時間はそこまで長くないでしょう。
「みんなメタバース空間で買い物だけをしたいわけではない。他のアバターと遊んだりコミュニケーションを取ったりできる、世界を作りたいと考えたんです」と、メタバース空間を舞台にした映画などを例に挙げながら説明しました。

ここで学生たちに課題が出されました。
「アバターが着用するデジタルファッションを起案してください」というもの。
アバターとはメタバース空間での『もう一人の自分』です。
ただ、「人と人が関わることで起こることは現実と一緒」と仲田氏。
ファッションは自己表現のツールとして使われます。ターゲットはこれからのデジタル時代を担う、α世代(小中学生の世代)。彼らがオンラインのコミュニケーションツールとして使いたくなるファッションを考えます。
仲田氏は「メタバース空間では、今までできなかったことができるようになる。頭のなかの未来のファッションを形にしてみてください」と話しました。

生成AIを使いこなせる大学生になろう!

最後に仲田氏は生成AIの使い方を学生たちに伝授しました。
「大学1年生で生成AIを使える人は少ない」と言い、「この講演を聞けば、皆さん生成AIを使えるようになりますよ」と話し始めました。
生成AIと言われると、難しく感じるかもしれませんが仲田氏は「AIは難しかったら意味がない」と言い、作りたいイメージを言葉で指示することで具現化するコツを教えてくださいました。

ただ、生成AIは技術が先行しすぎて、現代の倫理観に当てはまらないものも出てきています。生成AIの作成したものがアートとして良い悪いかなど、これからしっかり考えていかなくてはなりません。
「メタバースはなんでもできるようになる世界だからこそ、何をするかが大事になる。AIを身に付けただけでなく、倫理観も考えられる大学生になってください」と仲田氏は語りました。

このあとグループワークでそれぞれ生成AIを使って「未来のデジタルファッション」を作成しました。
今回の課題は、新しく設置した社会デザイン学科との学びの領域と親和性があるテーマで、新入生たちは自分の感覚を最大限に活かし、創造的思考を深めながら取り組みました。また、ファシリテーターとして参加した上級生の力も借りながら、チーム内で協力し、ターゲットやコンセプトを決めながら生成AIを使いつつ、オリジナルのアイディアを具現化させました。

その後、各グループ3分間プレゼンテーションを行いました。最後に、株式会社三越伊勢丹の関係者と本学部の教員による審査が行われ、優秀な提案・発表を行った6チームに賞が授与され、全体での講評もいただきました。また学生たちは今回の体験を振り返り、それぞれが自分の得意なところや苦手なところを認識し、今後の成長の糧としました。約一日と長い活動になりましたが、学生たちにとって未来に必要な視点や技術を知る貴重なイベントとなりました。

2024年5月28日

「女性とキャリア形成」の授業で味の素社長による「志」を持って働くことについての特別講義が行われました。

4月18日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で味の素株式会社(以下、味の素)社長による特別講義が行われました。学生たちにとっても調味料やレトルト食品など、身近な製品を販売している企業です。学生たちは自分の「志」を問いかけられた刺激的な機会でした。

社会課題を解決するために創設された企業

この授業では進行を教授ではなく学生が行います。
担当のグループの学生から、本日の特別講師が紹介されました。
藤江太郎氏は味の素の代表執行役社長、最高経営責任者です。日本を代表する会社の社長として第一線で活躍される藤江氏。
ご多忙の中「今日を大変楽しみにしてきた」と本学に駆けつけてくださいました。

藤江氏は最初に「味の素の商品を知っていますか」と学生たちに問いかけました。
「冷凍餃子」と答えた学生に対し「嬉しいですね。あの商品は餃子がうまく焼けないというお客様相談センターに入った声がきっかけで改良したんですよ」と全国の家庭からフライパンを送ってもらい、使い古されたフライパンでも美味しく焼けるよう研究されたというエピソードを話されました。

味の素は1909年に東京大学の教授と神奈川県の企業社長が始めた、産学共同で作られた会社です。
「当時は日本人の栄養状態が悪かったのでおいしく栄養を取れる食品を作ろうと、社会課題を解決することを目的に創設されたんです」と藤江氏。

現在は130カ国以上の国と地域で事業を展開している味の素。大きな柱のひとつはもちろん食品事業です。
「もうひとつはあまり知らないと思いますが、アミノ酸を利用した医薬品や製品開発です」と藤江氏。
半導体の基板に使われる絶縁フィルムもアミノ酸製造から派生した技術が生かされていて、そのフィルムのシェアも高いのだと話されました。

学びの多かった2つの挫折

藤江氏は「小学校の頃はコックさんになりたいと思っていました」と語ります。
小さい頃から料理番組を見ては自分で作り、家族などに振舞っていたと言います。なぜ自分は料理が好きなのかと考えた時、料理を振舞うと友人や家族が喜んでくれるからだと気付いたと話しました。
「自分が幸せを差し上げれば差し上げるほど自分も幸せになる」と語りました。

高校時代は牧場経営に憧れ、北海道の牧場に修行へ。しかし多額の費用が掛かることを知り挫折。
大学時代にはウィンドサーフィンに打ち込み五輪出場を目指すまでになりましたが、上には上がいることを知ったと言います。
2つの挫折の経験から、藤江氏は熱意だけではダメなことがあると学んだと話しました。

対話をして社員の「志」を大切に

2022年に社長に就任した時、意識したのはASV経営だと言います。
ASVとは「Ajinomoto Group Creating Shared Value」の略で、事業を通じて社会課題を解決することを重視した経営法です。「企業が成長する原動力は資産です。その中でも人材、技術、顧客、組織といった無形資産が大切」と藤江氏。
そこで、藤江氏が重視したのが社員との対話です。社員一人ひとりがリーダーや経営陣に意見を伝えられる環境を作りました。
その中でよく聞いているのが社員の「志」だと言います。
社員の人生の志と、味の素の人・社会・地球のwell-beingに貢献するという志の重なる部分はどこか、小さくても良いので見つけて欲しいと話している、と言います。

藤江氏は「働き続けたい、選んでもらえる会社になっていきたい」と言います。
特にジェンダーの壁をなくすことをあげ「味の素の女性社員の比率は3割なのですが、女性管理職は12%のため、その点は課題」としました。
藤江氏自身も、無意識の偏見をなくしていく「アンコンシャスバイアス」の研修にも参加していると話しました。

「みなさんの志はなんでしょうか。書き出してみましょう」と藤江氏。「私の人生の志は『幸せの素』で世界をWell beingで満たすことです」と言います。
「あなたの人生の志と、例えば地球の問題や社会課題、実践女子大学の志と重なるところはどこか、見つけていってはいかがでしょうか。志を明確にし、楽しみながら自発的にそれぞれの個性にあった挑戦をすることで、明るい未来を作っていって欲しいと思います」と語りました。

リーダーであるために大事にしていることは?

学生たちはグループごとに感想や意見を交換。
その後、藤江氏と質疑応答の時間が設けられました。
「社長というリーダーの立場にあたり大切にしていることは?」という学生の質問には「リーダーにもいろんなタイプがいます。私は率先して引っ張っていくより、チームをまとめたり後押ししたりすることができると思っている。サポートするリーダーでありたい」と回答し、「自分はどういうタイプか考えるといい」とアドバイスしました。

「対話をする際に重視していることはなんですか」という質問には「双方向、マルチ方向を重視しています。それぞれの人に意見があるので言ってもらう。一方通行にならないように」と回答した上で、「あなたはどういうことを注意していますか」と質問した学生へ逆質問。
学生が「全員が意見を出せるように促し、否定せず耳を傾けています」と答えると、藤江氏は大きく頷き「皆が話しやすくなるリーダーシップですね」と同意されました。

その他にも質問は多く出て、藤江氏は「いい質問ですね」とそれぞれに真摯に回答くださいました。
最後に、受講学生を代表して学生から「経営者と社員の距離が近く、対話を大事にしているのが印象的で学びが多かった」と感想を伝え、藤江氏に大きな拍手が送られました。
学生たち一人ひとりが自分の「志」を考えるきっかけとなる講義となりました。

担当教員からのメッセージ

4年目を迎えるキャリア教育科目「女性とキャリア形成」には6人のゲストをお招きします。2024年度のトップバッターは、味の素の藤江社長です。藤江社長とは、お互い企業時代に知り合った仲間であり、当時から人を大切に思うお気持ちが極めて強かったという思い出があります。本日のお話しも、一人ひとりの学生に語り掛けて下さるお姿に、藤江社長のリーダーシップの形を感じました。とりわけ“志”というお話しは、大変印象的であり、先行き不透明な社会を生き抜く学生にとって、とても大切な考え方をお示しいただいたものと思います。藤江社長には、この場を借りて、改めて心から感謝申し上げる次第です。

2024年4月8日

ポイ捨てをなくすためには?渋谷区と渋谷モディと連携し啓発動画を作成するJミッションの最終発表会が行われました。

本学、キャリアサポート部の低学年向けキャリア支援プログラム「Jミッション」で、渋谷区と渋谷モディとの特別連携企画が開催されました。学生たちは渋谷区のポイ捨てをなくすための啓発動画作成に挑戦。2月27日には、1ヵ月の成果を発表しました。

実際の企業からの「ミッション」に挑戦

「Jミッション」とは大学1・2年生が対象のプロジェクトです。企業からのミッション(課題)について、学生だけで構成されたチームで約1ヶ月間グループワークを行い、最終日に成果発表を行うというもの。有志で参加した学生10名は学年も学部もバラバラです。3つのグループに分かれ、それぞれディスカッションを重ねてきました。この日はいよいよ最終発表会が行われました。

今回ご協力いただいたのは、渋谷区と渋谷モディの皆さんです。1月31日のキックオフミーティング時に、学生たちに出された課題は、『渋谷の街のポイ捨てを解決する動画を作成すること』。15秒と30秒の動画をそれぞれ作成しました。中間発表を経て、さらに内容をブラッシュアップしました。優秀作品は、渋谷モディの店頭と館内のデジタルサイネージに実際に流されるということで、学生たちは渾身の作品を作成して最終発表に臨みました。

きれいな渋谷は「当たり前じゃない」

1グループは、清掃員の方にインタビューをし、「その背中は当たり前じゃない」と啓発する動画を作成しました。
ターゲットは渋谷モディの前を通る大学生たちで、ごみ問題に関心を持ってもらうため毎日清掃している人たちがいる事実を伝えました。
「掃除をしている人達の努力に気付いた」と、街中で自分たちが実際に見たことを主軸に動画を作成し、きれいな渋谷を作る人を見える化。気持ちのいい毎日を迎えられることは誰かの努力に支えられている、当たり前のことではないと伝えることで、ポイ捨てをなくすことに繋げようと考えました。

あなたの力できれいな渋谷を

2グループも渋谷にくる若者がターゲット。
ポイ捨てされたごみや、ごみが溢れているごみ箱などを映し、「きれいな渋谷にしたくない?」「きれいな渋谷をみんなで創ろう」とメッセージを伝えました。見て見ぬ振りをしたくなるようなポイ捨ての現状をリアルに伝え、このままの渋谷ではいけないと思ってもらえるよう共感性の高いフレーズを使って訴えることにこだわりました。

文化の違いを越えてポイ捨てをなくすには

3グループは、外国人観光客をターゲットに据えました。
文化の違いにより、ポイ捨てが当たり前だったり、ごみが気にならなかったりする外国人観光客にどう訴えるかを考えました。そこで粘土で作った人形を動かすクレイアニメで、ポイ捨てに悲しむハチ公を表現。観光客に人気のあるハチ公の目線にすることで関心を持ってもらおうと考えました。
またクレイアニメは可愛らしく見やすいことから、観光客だけでなく幅広い世代に興味を抱いてもらうことも目的に作成しました。

学生たちの成長が見えた発表

すべての発表が終わり、審査員の方々が別室で真剣に話し合い、今回の優秀作が決定されました。優秀賞は3グループが受賞しました。
渋谷区、渋谷モディの方から総評もいただきました。『企業側』の立場から表現の仕方などアドバイスを頂いた一方、中間発表を受けての伸びしろやストーリー性など、どのグループも好評いただきました。
そして、最後に「春休みの貴重な時間を割いていただいてありがとうございました。1ヵ月間という短い期間でしたが、皆さんの成長を感じられ楽しい機会でした」と学生たちの頑張りをねぎらいました。

参加学生は、1ヶ月間という短い期間の中で、グループワークを重ね、『啓発動画』というそれぞれの個性が光る作品を完成させました。
今回のJミッションを通して、学内、学外とのつながりをつくり、グループ一丸となってミッションに取り組んだことで、個々の成長に寄与することができました。

楽しんで全員で意見を出し合えた

優秀賞の3グループの学生たちには授業後にインタビューを行いました。

「私は2年生なのですが、Jミッションは1、2年でしか参加できないということで最後の機会だと思い、思い切って参加しました。ミーティングはWeb会議ソフトを使って進めました。私は動画を作ることがは苦手なのでどうなるかと思ったのですが、意見の言いやすいメンバーでとても楽しかったです。就活としても、学内の企画なのでインターンシップをいきなり受けるより安心して取り組めました」

「美学美術史学科の1年です。今回のJミッションには、『動画を作成する』との記載があったのを見て参加しました。もともと動画を作ってみたいと考えていたので、チャンスだと思いました。私が粘土でキャラクターを作ってきたことで、クレイアニメで動画を作ることになりました。採用されて嬉しかったです。動画の作成は何日もかかりましたが工程も楽しかったですし、先輩たちと繋がりができたこともとても嬉しいです」

1位の作品は渋谷区役所と渋谷モディのデジタルサイネージで、さらに2位の作品は渋谷区役所のサイネージで、実際に今回作成した動画が流れる予定です。(※4/15まで全作品放映中です。)

 ※下記動画は学生が制作した作品です。

2024年4月5日

”服装自由”の時は何を着る?「演習IIB」で青山商事とコラボ授業!
就活生の服装の悩みを解決するプレゼンテーションに挑戦しました。

2年生対象の「演習IIB」(担当:人間社会学部人間社会学科 広井多鶴子教授)の授業で、12月19日に青山商事株式会社(以下、青山商事)とのコラボ授業が行われました。11月に、就活生の服装の悩みに向き合う「#きがえよう就活」プロジェクトの一環として「就活服の悩みをどう解決するか」というテーマが出されており、学生たちは6グループに分かれ、課題解決法を考案。この日は、青山商事から6名、株式会社ニューズピックスから1名の方々が来校され、学生たちは皆様の前でプレゼンに臨みました。

自分らしさをどう表現する?

最初のグループ①は「オフィスカジュアルのサブスクリプション」と題して発表を行いました。
オフィスカジュアルとはどのような格好をしたらいいのか分からないという就活生の悩みに注目。女性に人気のファッションサブスクを参考にして、青山商事が就活生向けサブスクを展開することを提案しました。
若者向けのトレンドを抑えたオフィスカジュアルが、月に2回届く仕組みです。
青山商事の方からは「まさに若者たちが着たいと思う服を社内でブラッシュアップしているところなので、背中を押された気持ちになりました」というコメントがありました。

グループ②は、就活で結局黒スーツを選んでしまうのは、悪目立ちしたくないなどの保守的な意見が多いからと分析し、「就活は学生が企業を選ぶ側でもある」という自信を持つべきだと考えました。そこで、服装自由な企業にプロジェクトのロゴマークを提示してもらうことを提案。
就活生がロゴマークを見て企業を選び、安心して個性の出せる服装ができるようにします。
青山商事の方からは「自分が企業を選んでいくんだという意識を作っていく案になっている」と評価されました。

オフィスカジュアルって難しい!

続くグループ③は、SNSを利用する案を考えました。就活生の多くは、企業がどのような意図で服装自由にしているのか分からずに不安を感じていることに着目しました。
服装で評価が変わると思っている学生と、服装はそれほど重視していない企業の意識の隔たりをなくすため、大学生の約8割が利用しているInstagramを活用し、「#きがえよう就活」のタグを広めることを提案しました。
「服装の例として画像を上げるのに、Instagramは相性がいい。ぜひ検討させていただきたい」と青山商事の方から前向きなコメントをいただきました。

グループ④は、メンバー全員が黒スーツで就活をするつもりでいたことを告白。スーツ以外を選ぶためには、オフィスカジュアルを気軽に購入できることが必要だと考えました。
そこでアパレル企業等に協力してもらい、サンプルとして載っている服装の中から購入できるサイトを考案。
また服装についての疑問やレビューを書いたり投票できたりする機能を付け、就活生と企業との双方向のコミュニケーションが取れるようにしました。
講評では「レビューや質問で学生からもアクションできるのがいい。みんなが知りたいことがわかる仕組みになっている」と着眼点について高く評価していただきました。

服装の基準を分かりやすく

グループ⑤はクールビズにフォーカスしました。
就活生は夏の面接やインターンでスーツを着用しなければならないことに不満を持っていることに着目。クールビズに明確な定義がないことが原因と分析しました。提案は服装のピクトグラムを作成すること。
企業の採用ページにピクトグラムを提示してもらいます。
青山商事の方からは「悩みの解決方法が分かりやすく、最後まで筋の通った良いプレゼンでした」「賛同企業を増やすためにも、ピクトグラムは取り入れやすくて良いと思いました」というコメントをいただきました。

最後のグループ⑥は、服装自由が言われる一方でスーツで来てほしい企業もあることが就活生を悩ませている原因と分析。企業から就活の服装の例を挙げてもらうことを提案。採用ページに面接時の服装や、面接官の服装を載せてもらうようにします。
また、Instagramで「#インスタ就活プロジェクト」のタグを作り、各企業に就活向けの情報や服装を発信してもらいます。
青山商事の方からは「認知を広げるにはInstagramは相性がいい」「面接官の服装は確かに就活生が気になるポイントだ」という感想が寄せられました。

これからの就活が楽しくなるように

全発表終了後、優秀なプレゼンのグループが表彰されました。
「#きがえよう就活」賞に選ばれたのはグループ④。
受賞した学生からは「中間発表の後、一から考え直しましたが、賞をいただけてよかったです」「内容は難しかったがみんながそれぞれ自分の役割を果たしました」と喜びのコメントがありました。

「#きがえよう就活」賞を受賞したグループ④

もう一つの青山商事賞は、グループ⑤でした。
受賞した学生は「途中企画倒れになりかけてどうなるかと思いましたが、形になって良かったと思います」「スーツ以外で就活してみたくなりました」などとコメントしました。

青山商事賞を受賞したグループ⑤

最後に青山商事の平松氏から「みなさん、まじめに課題と向き合ってくれました」、「SNSなど学生目線の提案が、大変参考になりました」というコメントがありました。
そして、「今回の課題を通して、就活が少しでも楽しくなったらいいなと思います」ということばで、授業を締めくくってくださいました。

担当教員からのメッセージ

人間社会学科 広井多鶴子

当初、学生たちは、就活は黒のスーツが当たり前と思っていましたが、調べ、考え、話し合う中で、自分たち自身の固定観念に気づき、新たな考えをまとめていきました。そして、「自分たちは企業に選ばれるだけの存在ではなく、自分たちが企業を選ぶ存在だ」というように発想を転換!! 当たり前だと思っていることを問い直すことのおもしろさと重要性を実感できたのではないかと思います。

最終のプレゼンテーションは、中間発表よりもかくだんに完成度が高くなっていました。学生たちは、ほんの数週間でみちがえるように視野を広げ、根拠と説得力のあるプレゼンへと作り替えました。

それは、青山商事のみなさんの仕事への熱意と真摯さが学生たちに伝わったからだと思います。

学生からは、「本格的な産学連携授業は初めてで、実践的な学びが得られた」「企業の方から直接アドバイスをもらえる貴重な機会だった」といった感想が寄せられました。
何度も大学に足を運び、丁寧で的確なアドバイスをしてくださった青山商事のみなさんに、心より感謝いたします。