2年生対象の「演習IIA」(担当:人間社会学部人間社会学科 広井多鶴子教授)の授業で、青山商事株式会社(以下、青山商事)の皆さんとのコラボ授業が7月12日に行われました。就活生の服装の悩みに向き合う「#きがえよう就活」プロジェクトとの産学連携授業として、「就活生の服装の現在地と未来」についてプレゼンテーションを行いました。この日のプレゼンテーションにはテレビの取材も入り、学生たちはそれぞれ自分が思う就活にふさわしい恰好で臨みました。
服装自由は本当に自由?
1グループはCMでは黒スーツで就活生を表現されていることを取り上げ、就活生=黒スーツのイメージは根深いと分析。
そこで就活生ももっと個性を出していいとCMやSNSでアピールすることを提案しました。CMは企業間でコラボなども行い、社会全体の共通理解とします。また各企業の基準や、参考を検索できるような就活服装アプリを作り、服装から行きたい会社も選べるようにすることを考えました。
発表後の講評では
「服装から行きたい会社も選べるのは面白い視点」
「社風は入ってみないと分からないですが、アプリで知れるのは良い案」
と着眼点が評価されました。
2グループは、服装自由と言っているのに本当の自由ではないことに言及。
TPOをわきまえていれば普段着でも良いのではと提起し、清潔感があり相手を不快にさせないラインを考えました。露出も下品ではないものであれば可、アクセサリーも数を制限することでOKとするなど基準を提案。就活の服装も日常生活と変わりないものにし、本当の意味での服装自由を選べるよう提案をしました。
講評では
「OKとNGのラインを明確にしたのはいい着眼。自分が着たい服装を選ぶだけではなく、面接官がどう思うかという視点を基準としたのも良い」
という評価がありました。
オフィスカジュアルってどんな恰好?
3グループのテーマは「オフィスカジュアルを知り自分に似合う服装で印象UPへ」。
スーツでは決まった色、形があり自身に似合わない服を仕方なく着ている就活生もいるとして、パーソナルカラーや骨格診断などで自分のスタイルを最大限に活かせる服装を考えました。
しかし、オフィスカジュアルは基準が分かりにくく失敗も多いもの。
失敗をなくし、オフィスカジュアルの認知度を広げるために、就活生向けにカタログを作成することを提案しました。
発表後の講評では
「働くにふさわしいというより似合うものという考えは面白い」
というコメントがありました。
4グループはリクルートスーツとオフィスカジュアルを選択できることを提案。
アンケートを取ったところ6割以上の学生は、季節に適した格好をしたいと回答。オフィスカジュアルであれば季節に合わせた格好ができ、低価格なのでお金がない学生にもメリットがあります。
ただ、リクルートスーツにも悩まなくていい・面接の内容で勝負ができるといったメリットもあります。
そこで、どちらも選べる方がより良い就活の未来であるとまとめました。
発表後には
「スーツもオフィスカジュアルもどちらが悪いということはないという視点を持ってもらえたことは嬉しかったです」
とコメントをいただきました。
スーツでも個性を出せる方法は?
5グループは採用における男女差に注目。
女子学生は4人に1人が、男子学生も1割が男女差を感じたというデータを紹介しました。この差の一端には男女別のスーツの存在やスーツによる没個性化があるのではと考えました。ただ、スーツを着用するとやる気が出ると答えた学生もいます。そこで就活用にさまざまな色、柄のスーツを展開するブランドを立ち上げることを提案。メンズレディースの枠組みを撤廃し、リーズナブルな価格で展開することにより、就活後も利用できるスーツという発想を伝えました。
発表後、
「ジェンダーの視点で課題に取り組んでくれた。働くそのままの姿で就活できるのがいい」
とコメントがありました。
6グループは「就活に彩りを」として、個性を出せる服装を提案しました。
アメリカでも面接時はスーツを着用しているが、シャツは自由なため、カラーやストライプ柄などシャツで個性を出していると紹介しました。また、グループの学生それぞれが、カラースーツやシャツなどどのような格好で就活したいか具体例を出し、人によって着たい服装は違うと伝えました。
そこでSNSで#きがえよう就活を広く認知してもらうよう、芸能人やインフルエンサーに依頼する案を提案しました。
講評では
「スーツ自体や、シャツのカラーを変えるのは面白い視点。皆さんが着たい服が少しずつ違ったのも実例としてよい」
と、具体的に提案したことが評価されました。
「就活」をきがえるために
各グループのプレゼンテーションが終わり、最後に優秀賞の発表です。
「#きがえよう就活賞」はジェンダー視点で解決策を探った5グループ。
「具体的なアイデアがあり、特に就活後も着られるスーツを販売したいという意見にはとても共感しました。実現に向けて取り組んでいきたい」と社員の方からも納得の講評をいただきました。
「青山商事賞」はオフィスカジュアルの基準を考えた3グループでした。
「今すぐにでもできそうな提案をたくさんもらった」と青山商事でも取り組めそうな提案だったことが評価されました。
授業の終わりには、青山商事の皆様から学生たちにプレゼントもあり、写真撮影も行われ和やかに終了しました。
担当教員からのメッセージ
ビジネスウェア専門店である青山商事が「#きがえよう就活」という取り組みを行っていると知り、驚くとともに、ぜひコラボしたいと思いました。今の学生たちは、入学式も就活も黒一色のリクルートスーツ。その画一さが「不自由さ」や「萎縮」を表しているように思えて、気になっていたからです。学生たちには就活の服装を通して、就活のあり方、ひいては社会のあり方を考えてもらいたいと思いました。
授業のはじめ、学生たちは「どうしたらいいのか」「どこまで言っていいのか」と、少々戸惑っている様子でした。
黒のリクルートスーツが当たり前だと思っていたからでしょう。ですが、そうした常識を問い直し、グループで議論を重ねるうちに、様々なアイディアが出てきました。学生たちは、自ら就活服を着替えることで、若者に黒のリクルートスーツの着用を求める社会を少し変えることができると、実感できたのではないかと思います。