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「サステナブルな機内食」って?「演習Ⅲa」の授業で、JALの韓国線の機内食を考える特別コラボのプレゼンテーションが行われました。 
7月7日に「演習Ⅲa」(担当:人間社会学部ビジネス社会学科 角本伸晃教授)の授業で、日本航空株式会社(以下、JAL)との特別コラボ授業が行われました。今回は2ヶ月かけて取り組んでいた課題のプレゼンテーション。テーマは「サステナブルな韓国便の機内食を考える」。学生たちは班に分かれ、この日のために企画を練り上げてきました。 企業さながらのプレゼンテーション 本日のプレゼンテーションには、6名が審査員として参加しました。現役客室乗務員の吉村真紀氏をはじめ、機内食企画担当部署など、実際の企業プレゼンテーションさながらの顔ぶれです。学生たちが緊張した面持ちで臨むなか、吉村氏は「今日は実際に機内食を決めているメンバーが集まっています。皆さんの発表をとても楽しみにしてきました。現場の意見を直接聞ける貴重な機会でもあります」と期待を寄せ、プレゼンテーションが始まりました。 機内食に遊びを! 最初の班は、韓国旅行をより楽しめる機内サービスを提案しました。到着後に現地グルメを満喫できるよう、機内食は軽めのサラダラップを主食としたセットを考案。副菜には、冷めてもおいしく食べられる濃い味付けのグラタンを組み合わせました。食べ終えると、容器の底に旅行運などの占いが現れる仕掛けも取り入れています。さらに2次元バーコード付きカードを配布し、韓国語の基本的なあいさつや日本とのマナーの違いを紹介するトラベルガイドを閲覧できるようにするなど、到着後も安心して旅行を楽しめる工夫を盛り込みました。 発表後の講評では、「参考になる点が多かった。占いの仕掛けは若い人ならではの発想ですね」と評価されました。また、「飛行機を降りた後まで考えた提案が印象的でした。韓国便はフライト時間が短いことを理由に発想を広げていなかったと気付かされました」と、担当者からも高い評価が寄せられました。 心と身体を満たすセルフメイクBOX 続いての班は、20代女性をターゲットに、美容や健康に配慮した機内食を提案しました。メインはベーグルサンドで、ヨーグルトやクリームチーズを添え、自分好みに味をアレンジできる内容です。具材にはバナナやベリーなど、機内で気になりやすいむくみ対策を意識したビタミン豊富な食材を取り入れました。 講評では、「心のウェルビーイングに着目した点が印象的でした。カロリーを気にせず楽しめる機内食という発想は新鮮です」と高く評価されました。一方で、「ターゲットが明確で企画の軸がしっかりありました。ただ、ビジネス利用の男性などには物足りない可能性もあります。より幅広い層に訴求できる工夫があると、さらに良い提案になったでしょう」とアドバイスが送られました。 未来食を体験できる機内食 最後の班は、JALが日本発の国際線やラウンジで提供している「未来の食材50」に着目。「未来からきたランチボックス」と題し、未来の韓国料理を提案しました。「未来の食材50」とは、環境負荷が少なく健康にも配慮した食材のこと。もやしやわかめなど身近な食材も含まれています。これらを使った韓国風おにぎり「チュモッパ」やナムルをメインにし、さらに「未来の食材50」のトレーディングカードを付属。2次元バーコードから食材を使ったレシピを見られる工夫も盛り込みました。 前の2班とは異なるアプローチに、JALの担当者からは「内容がプロのようによく調べられていた」と高い評価が寄せられました。「食を通して新たな気付きを提供し、お客さまの発見につながる提案だった」「おいしさだけでなく学びも届けられる」といった講評に加え、「日本食の要素を取り入れると、韓国との橋渡しになるのでは」といった実践的なアドバイスもあり、学びの多い発表となりました。 実際の企画にも刺激になる発表に 最後に中間発表にも参加された鈴木氏から総評がありました。「中間発表から大きくレベルアップしていました。韓国線の機内食は特に難しいテーマですが、皆さんが真剣に取り組んでくれたことが伝わりました。JALでは思いつかない発想も多く、私たちも大いに刺激を受けました。ここにいるメンバーで今回の学びを今後の機内食づくりにも生かしていけると思います」と講評されました。 発表後、学生たちも感想を共有。「他の授業でもグループワークは経験しましたが、今回はコストや提供方法まで考え、実際さながらの企業のプレゼンテーションを実践できました」と振り返りました。また、「中間発表で多くの指摘を受け、企画を一から練り直しました」と話す班もあり達成感をにじませていました。 授業の終わりには、吉村氏から修了証が授与され、会場は和やかな雰囲気に。企業と連携し、本格的な企画立案とプレゼンテーションを経験した貴重な学びの機会となりました。 担当教員からのメッセージ 中間発表会では学生としてはとても素晴らしい提案をしてくれましたが、アイディア勝負の面がありました。機内食というビジネスの一部であるからには、コスト制約を無視するわけにはいきません。中間発表会ではその点をご指摘いただきました。その後、最終発表会に向けて、ゼミ生たちはコスト面だけでなく中間発表会でいただいた他のコメントも意識しながら、ブラッシュアップしていきました。最終発表会では当初予定の倍の審査委員の方々にお越しいただき、緊張感の増す中で、堂々と発表をしてくれました。このPBLを通して、学生たちは共創力を大きく伸ばすことができました。
五輪開会式のプランを発表!2026年度〈国際理解とキャリア形成〉にてスポニチコラボ授業の最終プレゼンテーションが行われました
五輪開会式のプランを発表!2026年度〈国際理解とキャリア形成〉にてスポニチコラボ授業の最終プレゼンテーションが行われました
7月14日、実践女子大学共通教育科目〈国際理解とキャリア形成(担当:国文学科 深澤 晶久教授)〉にて、スポーツニッポン新聞社(以下スポニチ)とのコラボ授業として提示された課題『オリンピックの開会式をプロデュースする』に対する学生の発表が行われました。スポニチからは編集委員の藤山健二氏、ビジネス開発局の池田智子氏、記者の佐藤博之氏をお招きし、学生の発表に対するフィードバックをいただきました。 授業と社会連携について 国際理解とキャリア形成は、2年生以上を対象に開講されている共通教育科目です。国際情勢の学習や、グローバル業務を経験した外部講師による講演を通じて、国際的な視野と幅広い知識を身に付けます。  また、この授業は〈オリンピックとパラリンピック〉をテーマに、スポニチと連携して行っています。今年度は『オリンピックの開会式をプロデュースする』というテーマに、学生が挑戦しました。発表では、開会式のテーマ、選手入場、選手宣誓、聖火点火の4点を必須条件とし、学生たちは自由な発想で開会式を企画しました。 今回の授業では、グループワークの成果を発表し、編集委員の藤山健二氏からフィードバックをいただきました。また、授業の最後には、スポニチ賞として最優秀賞が贈られました。 3班:想像を創造へ 3班は開催地を日本と想定し、〈想像を創造へ〉を開会式のテーマに企画を考えました。未来の技術を使って活躍する漫画キャラクターをテーマの象徴として採用し、学生は「タイムマシンや空を飛ぶ小型の飛行装置など、想像を技術によって実現しています。あこがれや望みを象徴したキャラクターとして採用しました」と話しました。 選手入場では、4箇所に設置された扉から同時に入場するとしました。入場の演出としてプロジェクションマッピングで入場国の風景を映し出し、観客が各国の文化や自然に触れられるようにしながら、そのキャラクターが登場するアニメのテーマソングを、その国の言語で歌ったバージョンで流すとしました。 また、選手宣誓は柔道の阿部一二三選手、阿部詩選手とし、「柔道という日本らしさと、兄妹でオリンピックに出場するという夢と絆の表象として採用しました」と話しました。 聖火台は大樹をイメージしたデザインとし、「根は努力、幹は現在の選手、葉は選手にあこがれる次世代を表しました」と話しました。点火者は柔道を習っている子供とし、漫画に登場する飛行道具を身につけて空を飛び、聖火に点火する演出を紹介しました。スポーツを通じて次世代へつなぐ未来を伝えるとしました。 藤山氏は「大会ごとにキャラクターは存在していますが、すでに有名なキャラクターを採用するという点が驚きでした。また、選手入場を4箇所から入場する案も、着眼点がよかったと思います。全体を通して実現性と夢があり大変良かったです」とフィードバックを寄せました。 6班:Every color tells a Different Story 6班は、2028年ロサンゼルスオリンピックの開会式について企画しました。〈Every color tells a Different Story〉を開会式のテーマに、多様性、太陽、持続可能性をキーワードに設定し、開会式を演出しました。選手入場はギリシャからアルファベット順に入場し、開催国であるアメリカが最後に入場するとしました。入場では各国のウェア以外に伝統装束も着用し、世界の文化に触れることができる演出としました。また、各国オリジナルロゴを作成し、入場国に合わせてドローンでロゴや国旗を空に映し出すことで、観客に視覚的な楽しさを感じてもらうことを狙いました。選手宣誓は、アメリカ代表の主将と副主将が行うとしました。 聖火台への点火方法として、大砲風に装飾したピッチングマシンから火の玉を投球し、野球選手がホームランとして聖火台へ聖火を届ける演出を提案しました。学生は「追加競技として採用されることや、メジャーリーグでも有名で世界的に注目度が高いことから、スポーツらしいダイナミックな演出ができると考えました」と話しました。また、点火の際に花火とドローン、ランタンによる演出を行い、会場の一体感を表現しました。さらに、聖火台とランタンに太陽のモチーフを取り入れることで、大会テーマとの親和性も図りました。 藤山氏は「直球勝負な内容だと感じました。企画した要素に対して背景まできちんと考えられており、本当の記者会見のようなリアリティのある発表でした」と話しました。 5班:響きあう伝統と未来 5班は札幌を舞台にした冬季オリンピックの開会式を提案しました。開会式のテーマは〈響きあう伝統と未来〉です。選手入場は国ごとにそりに乗って行われ、そりのデザインに国旗の色やモチーフを取り入れることとしました。選手宣誓は「冬季五輪をけん引する存在」であるスノーボードの平野歩夢選手、スキージャンプの高梨沙羅選手が行うことを提案しました。 また、聖火台はアイヌの伝統家屋“チセ”の木組みをイメージし、北海道産の高級木材と軽量アルミニウムを融合させたデザインにするとしました。点火は火矢を用いて聖火台を射ることで行うとし、点火した瞬間にその火が天に昇るような光の演出を、ドローンを活用して行うとしました。学生は「現実の炎とプロジェクションマッピングやドローンによるデジタル技術の輝きの融合をイメージしました」と話しました。 さらに、場外の特設イベントとして、聖火点火体験ブースを設けることを提案しました。設置された聖火台のオブジェクトに向けて、来場者が手元のスマートフォンから一斉に火矢を射ることで点火を疑似体験。参加者により一体感を感じてもらうとしました。 藤山氏は「冬季オリンピックの開会式を提案してくれるとは思っていませんでした。札幌を舞台にする上で、アイヌ民族に注目してくれたことがよかったです。また、体験スペースとはいえ観客を点火に取り入れる発想はこれまでにない斬新なもので、参加型で一体感を演出するアイデアがとてもよかったです」とコメントを寄せました。 4班:わ 4班は開催地を日本と想定し、〈わ〉を開会式のテーマに企画を考えました。学生はテーマについて「〈わ〉には平和の“和”、五輪の“輪”、そして日本文化の“和”という意味が込められています」と述べました。また「日本文化をわかりやすく織り交ぜ、他国との調和や平和、そして過去から未来を表現します」と話し、その演出全体を考えるベースとして『万物が互いに影響し合い循環する』という東洋思想である“五行思想”を取り入れると説明しました。 選手入場の順番については、オリンピックのシンボルマークである五輪が5大陸を表していることに触れながら「ギリシャを先頭に5大陸ごとに順番に入場し、日本がアジア大陸の最後として入場する」と説明しました。また、選手宣誓には柔道の阿部一二三選手、阿部詩選手を起用するとし、「柔道が日本の伝統競技であること、兄妹の絆がスポーツの努力を象徴することから採用した」と起用の理由を話しました。さらに、聖火ランナーとして歌舞伎俳優の市川團十郎氏を起用することを提案し、「日本の伝統文化を象徴する歌舞伎の力強さをストレートにアピールし、日本ならではの魅力を伝える点火セレモニーとする」としました。 藤山氏は「まず、テーマをひらがなとした点が、同じ発音で複数の意味を持つ日本語の特徴を活かした発想で素敵でした。また、“五行思想”に着目した点も面白かったです。さらに5つの大陸を意識した入場順は、オリンピックの原点である“大陸の団結”に立ち返った発想で良かったです」とコメントしました。 2班:3つのB 〜Bridge、 Believe、 Beyond〜 2班は夏季オリンピックを想定し、〈3つのB 〜Bridge、 Believe、 Beyond〜〉をテーマに開会式を企画しました。学生は「テーマでは3つのBを通じて、オリンピックが世界中の人をつなぎ、お互いを信じながら、新たな未来へ歩み出すきっかけとなることを表現した」と話しました。選手入場は競技ごとに行うとし、選手宣誓は次の世代へつなぐ“Bridge”の象徴として、10代のオリンピック選手である、スケートボードの吉沢恋選手と小野寺吟雲選手を選出しました。 聖火の点火者は2024パリ五輪で金メダルを獲得したフェンシング団体の日本選手とし、採用理由を「チーム競技で仲間を信じ、限界を超えた先の金メダルであると考え、Believe、Beyondの象徴として採用した」と説明しました。点火者たちが聖火台へ集まり、ひとりひとりのトーチから聖火が灯された後、光が会場全体に広がる演出を行うとし、学生は「重ねた想いが未来に広がっていく様子を表現しました」と話しました。また、聖火台は両端に階段を設け、上から見ると橋に見えるデザインにすると説明し、学生は「橋でつながり、信じる力で支え合い、限界を超えて未来を切り拓くという3Bのコンセプトを意味として込めた」と話しました。 藤山氏は「開催都市を選ばない普遍性のある提案で、内容の完成度も高かったです」とフィードバック。「また、スケートボードやフェンシングといった競技の目の付け所がマニアックで面白かったです」と話しました。 1班:コネクト 1班は2032年夏季オリンピック開催地であるオーストラリアを舞台に、<コネクト>をテーマとした開会式を企画しました。また「スポーツを通じた人とのつながりと自然との共存」をコンセプトに、演出を考案しました。 選手入場は「競技ごとに船に乗り、シドニー・オペラハウス周辺の海を同時に周遊する」と提案。入場にかかる時間の短縮を狙いました。また、選手宣誓はオーストラリア選手の最年少と最年長が行い、「スポーツが持つ歴史を次世代へつないでいく〈コネクト〉を表現する」としました。学生は「追加競技に、現地で人気のオーストラリアンフットボールが採用された場合、その競技の選手から選出する」と話し、開催国の魅力も発信すると述べました。 聖火点火は、オリンピックで実施される競技から選手が一人ずつ参加して点火を行い、聖火台は「ニューサウスウェールズ州のシンボルである花、ワラタをモチーフとしたデザインにする」とし、自然との共存というテーマの表現につなげました。 さらに、オペラハウス前でのオーストラリア室内管弦楽団の演奏に加え、ゴールドコーストのサーファーズパラダイスで先住民族の伝統音楽やダンス〈マニカイ〉〈コロンボリー〉を披露すると話しました。 藤山氏は「オーストラリアンフットボールという、ローカルだけれども現地で圧倒的な人気を誇るスポーツを取り入れてくれて、よく調べたなと感じました。また、オーストラリアの歴史として先住民族問題を忘れずに取り入れてくれて大変良かったです」と話しました。 スポニチ賞の表彰 すべての班の発表が終了した後、藤山氏、池田氏、佐藤氏の3名がスポニチ賞の審査を行いました。 協議の結果、最優秀賞は2班〈3つのB 〜Bridge、 Believe、 Beyond〜〉に決定。藤山氏は評価のポイントを「企画内容の実現可能性の高さ」と説明しました。2班には、オリンピック公式グッズの防水ポーチが藤山氏から贈呈されました。また、参加賞としてスポニチグッズのペンが学生に配布されました。 総括のコメント 藤山氏は「予想を超える素晴らしい提案でした。スポニチ賞を設けていますが、みなさんには自分の発表に自信を持ってもらえればと思います」と、発表全体への感想を述べました。続けて、オリンピック取材時のエピソードや、有森氏との対談を振り返りながら、学生たちへエールを送りました。 藤山氏は、あるメダリストに取材した際、金メダルを取れた理由を尋ねると「”負けず嫌い”だったから」と返ってきたエピソードを紹介しました。「その言葉を聞いた直後は『アスリートはそういうものだろう、よくある回答だな』と思っていました。でも話を聞くうちに、そうではないと気づいたんです」と振り返り、「その選手が言う“負けず嫌い”は、誰かへの対抗心ではなく、自分自身に対しての負けず嫌いだったんです」と説明しました。 さらに「一流の選手でも、緊張に悩んだり負けて落ち込んだりします。その選手も『練習でもういいやと感じる時もあるけれど、それでも自分に負けたくなくて続けてきた。その結果がオリンピックにつながった』と話していました」と、アスリートの心の内を紹介しました。 また、有森氏との対談で出た『自分で自分を褒めたい』という言葉についても触れ、藤山氏は「自分が満足するまでは負けを認めない。そして満足のいく結果が出たら、自分をほめる。これは皆さんのこれからの人生でも、大切な考え方になるのではないかと思います」と学生たちに伝えました。 最後に「今後、どうしても悩むことが出てくると思います。そんなときはぜひ有森氏との対談で聞いた信条を思い出して乗り越えてください。これからも、もっと楽しい毎日を送ってもらえたらと思います。本当に皆さん、お疲れ様でした。ありがとうございました」と、学生たちへ言葉を贈りました。 学生たちは、企画提案や対談を通して、一つの提案をやり抜く力やチームで動く協働力、自分の人生を支える力強い信条を学びました。 担当教員のコメント 2014年からスタートした本授業では、一貫してオリンピックパラリンピックを学生とともに考えてきました。そして、スポーツニッポン新聞社さまにも、一貫してご支援を継続いただいてきました。スポニチ藤山様には、毎年、お題をいただいたり、オリンピックパラリンピックの裏話の数々をご披露いただくなどスポーツを通しての国際理解を深めることにお力添えをいただきました。今年のテーマは、将来のオリンピックパラリンピック開会式をプロデュースするという壮大なテーマでしたが、学生たちも想像力や創造力を目いっぱい発揮いただき、素晴らしいプランが提案されました。スポーツニッポン新聞社様のご支援に対し、心から感謝申し上げます。
自分と向き合い可能性を開く!〈国際理解とキャリア形成〉スポニチコラボ授業に有森裕子氏が登壇し、対談形式でご講演いただきました。
自分と向き合い可能性を開く!〈国際理解とキャリア形成〉スポニチコラボ授業に有森裕子氏が登壇し、対談形式でご講演いただきました。
6月23日、実践女子大学共通教育科目「国際理解とキャリア形成(担当:国文学科 深澤 晶久教授)」にて、スポーツニッポン新聞社とのコラボ授業の一環で、五輪メダリストであり現日本陸上競技連盟会長の有森裕子氏をお招きし、アスリートとしてのご経験やキャリアの中で得た価値観について、編集委員の藤山健二氏との対談形式でご講演いただきました。 授業と社会連携について 国際理解とキャリア形成は、2年生以上を対象に開講されている共通教育科目です。国際情勢の学習や、グローバル業務を経験した外部講師による講演を通じて、国際的な視野と幅広い知識を身に付けます。  また、この授業では〈オリンピックとパラリンピック〉をテーマにスポーツ新聞の発行を行っているスポーツニッポン新聞社と連携を行っています。今回の授業では、バルセロナオリンピックで銀メダル、アトランタオリンピックで銅メダルを獲得した元マラソン選手である有森裕子氏をお招きし、長年オリンピックの取材に取り組んできた編集委員の藤山健二氏との特別対談が実施されました。 陸上との出会い 陸上を始めたきっかけは、「小学校の頃に信頼していた先生が陸上クラブの担当だったから」という理由だけだったと話す有森氏。また、「中学校の運動会で参加した800m走で3年連続優勝したことが、自分の自信につながった」と話しました。有森氏は、結果を左右するのは自分自身だけという陸上競技の特性が、自分に合っていると感じたそうです。 藤山氏が「自信が持てるものが欲しかったということでしょうか」と質問すると、有森氏は「自分に自信が持てる、自分を認めることができるような機会がなかったため、自信満々に自分を表現できる友人たちがうらやましかったんです。何でもいいから『私はこれ』と言えるものが欲しいと思っていました」と話しました。 あきらめない気持ちとやる気 陸上が自分の自信につながることを実感し、高校進学と同時に陸上部への入部届を提出したという有森氏。しかし、「進学した学校が陸上の名門であることを知らず、中学校時代に陸上競技での入賞経験がなかった私は門前払いされました」と話しました。 「顧問の先生から入部を却下されたにもかかわらず、どうしても入部したくて、行く先々で先生を待ち伏せすることを1か月くらい続けました」と続け、最終的に仮入部という形で陸上部へ。有森氏は「そのまま高校卒業まで部活動を続けましたが、大会での受賞歴はありませんでした」と話しました。それでも大学で競技を続ける決断をしたといいます。 藤山氏は「高校3年間頑張って結果が出なければ、やめる人も多いと思います。どうして大学でも陸上を続けようと思ったのでしょうか」と質問しました。 有森氏は、あきらめずに進む自分を応援してくれる存在がいたことが大きかったと話し、進路に迷った際、陸上部の先生から「あきらめずに続けたら相手が先にあきらめるかもしれない。それまであきらめなかったら、自分が前に行けるかもしれない。俺はお前をずっと応援するから、それまで頑張れるか」と言われたことを紹介しました。 続けて「先生の『かもしれない』という言葉を聞いて、『自分が何かできる可能性があるということだな』と思ったんです。自分が可能性をあきらめなければ、その道を応援してくれる人がいる。そう思ったときに『やめる』という選択は頭に浮かびませんでした」と話しました。 大学進学後はけがの休養からの復帰を経て、卒業後は実業団に所属。実業団入団の経緯も「通常、実業団への入団は勧誘か紹介で決まるのですが、私はそれを知らなかったんです。直接アプローチを行い、面談にこぎつけました」と話しました。 有森氏は入団できた背景について「当時の企業の状況と私のやる気がかみ合ったから」と振り返り、「会社は不祥事を立て直していくために“やる気”のある人材を求めていました。私は実績がないものの、走ることに対する“やる気”はしっかりと持っていました」と説明。「監督との面談で『これから先、どうしたいか』を伝えました。その“やる気”が伝わり、『今会社が求めている力を持っている』という点が評価されて入団することができたんです」と話しました。 オリンピックに関する有森氏のキーフレーズ 藤山氏はオリンピックに関する話題として、インタビューで有森氏が語った『自分で自分をほめたい』という言葉を紹介し、「この言葉は有森氏を代表する言葉として知られています。この言葉に込めた思いについて聞かせてください」と質問しました。 有森氏は「銅メダルを獲得したアトランタオリンピックで、競技後に行われたインタビューの最後に出た言葉でした。アナウンサーからの質問に対し『なんでもっと頑張れなかったんだろうと思うレースはしたくなかった』と話した後、ふと自分の中で今回のレースを振り返ったんです。その時、何一つそう思う瞬間はなかった。そう思ったときに『自分で自分をほめたいと思います』という言葉が自然と出ました」と、当時どのような思いでその言葉が生まれたのか語りました。 また、「アトランタオリンピックまでの道のりの中で、手術などさまざまなことがあり、周囲からは『有森は終わってしまったな』と言われることもありました。何とか自分を信じるしかない状況の中で、やっと戻ることができた4年後の舞台だったんです」と振り返りました。さらに、「誰も褒めてくれなくても、自分で『本当によくやった』と思えました。レースを振り返ったとき、あの言葉以外は出てこなかったんです。自分自身を最大限に見つめて出た言葉なので、周りの反応は関係ありません。たとえ歓声がブーイングに変わっていたとしても、同じ言葉を口にしていたと思います」と話しました。 有森氏の信条 藤山氏は「有森氏が現役時代の経験から導き出した、これからの人生にプラスになるような信条やモットーがあるということで、ご紹介します」と話しスライドに言葉を投影しました。有森氏は〈世の中にたった一人しかいない自分の生き方にこだわる〉について、次のように話しました。 有森氏は「たった一人しかいない自分であることに誇りや特別感を持つことは大切です。それと同時に、周囲の助けがあって自分が生きていけるとも感じますが、その助けを“頼ろう”と判断するのも自分だと思っています。しっかりとした自分自身を自覚していないと、何歳であろうが人にコントロールされるようになってしまいます」と話しました。また「私の場合、周囲と違うことがエネルギーになり楽しかったです。自分らしさをつくると面白いですよ」と学生へ伝えました。 藤山氏は有森氏の言葉を受け、「その根底にあるのは自己肯定感の高さだと感じます。誰しも自分自身の嫌なところを感じていると思いますが、自分を好きになるためにはどうしたらいいのでしょうか」と質問しました。 有森氏は「自分が決めたことを自分がやらないと、やりきれない自分が嫌になってくると思います」と回答。続けて、「私自身も自分の全部が好きなわけではありません。しかし、そういう部分を自覚して生きていくことと、無自覚に生きていくことには大きな違いがあると思っています。すぐに変えることはできなくても、自覚できていれば変わることができるタイミングや、変化のチャンスを逃すことが少なくなると思っています」と、自分の苦手な部分と向き合う考え方を共有しました。 さらに、学生へのアドバイスとして『嫉妬』という感情について説明。 有森氏は嫉妬を『嫌い』と別の感情であることに触れ、「他人に対して嫉妬するということは、『そうなりたい』という欲求が自分にあるということであり、伸びしろの部分です。人を貶めるために使わなければ自分にちゃんと関心を持っている証である、ものすごいエネルギーなんです」と解説しました。学生に「簡単なことではないけれど、自分が嫌だと感じている部分にもそういう視点があるんだと感じることで、自分を好きになれる瞬間が早く訪れると思います」と伝えました。 講演の最後に 藤山氏は、学生が取り組む〈オリンピックの開会式をプロデュースする〉という課題に関連し、「選手から見た理想の開会式とはどのようなものですか」と有森氏に質問しました。 有森氏は「実は現役時代、オリンピックの開会式には参加していません。マラソンはコンディションの調整が難しく、開会式に出る選手はあまりいないんですよ。ですが、開会式は単なるイベントではなく、選手と応援する人が一体感を感じられる場であってほしいなと思います」と回答しました。 さらに、スペシャルオリンピックス(知的障害のあるアスリートの競技大会)で行われたアスリートファーストの開会式や、世界陸上競技選手権大会で観客の視点に立ち、競技の見やすさを意識した大会運営を例に挙げながら、陸上競技大会の運営に対する考え方も変化していることを紹介。「競技に参加する選手が最高のパフォーマンスを出せることが大切」と話しました。 尽きることのない話題の中、予定の時間を迎え、対談は締めくくられました。 その後、学生からの質疑応答の時間が設けられ、「走っているときに心が折れそうなとき、どうしていましたか?」という質問に、「“苦しい”は頑張ろうとしているから出る感情です。ネガティブでは全くなく、苦しくなるくらい頑張っている証拠なのであきらめる理由にはならないです。逆に、“嫌になること”は自分の力になりません。嫌と感じていることは周りにも伝わりますし、進化を止めます。自分がどちらの感情であるかは見極めたほうがいいです。考えてみると案外嫌なことは少なかったりします」と回答。自分の感情を見失わずに進むことの大切さを伝えました。 講義の最後に有森氏は「けがの時、この言葉にずいぶん救われた」という『何で』と『せっかく』の話を学生に贈りました。 「何か想定外のことが起きたとき、『なんで』と考えることが多いですが、それを考えて良くなることはほとんどないです。『何で』を『せっかく』に変えるとポジティブになります。『せっかくなら』と、今しかできないことに目を向けることができ、嫌なことがあっても自分にとってプラスになることを考えることができるんです。『せっかく』をきっかけに自分をいい方向に持ち直し、その自分を通して周りも良くなる。たったこれだけのことですが、自分の心持ち1つ、使う言葉1つで、変えることができます。ぜひやってみてほしいなと思います」 担当教員のコメント 有森さんにご登壇いただくのは、今回が6回目となります。その間には、東京2020そしてパリ2024が開催され、早いもので再来年はロサンゼルス2028です。オリンピックパラリンピックを通して国際理解に繋げようとする試み、毎年スポニチ様にご支援いただいています。有森さんの数々のエピソードからは、決してあきらめない心や、逆境の時にこそ「せっかくだから」という言葉を乗せることで、常に前向きに物事を考えること、そして挑戦する気持ちの大切さなど、数々のお言葉をいただきました。この場を借りて、有森さん、そしてスポニチの藤山様はじめ関係の皆様には、心から感謝申し上げます。
現役社員が語る仕事と子育て!〈国際理解とキャリア形成〉で資生堂グローバルブランドユニットの岡野静佳氏をお招きしご講演いただきました。
現役社員が語る仕事と子育て!〈国際理解とキャリア形成〉で資生堂グローバルブランドユニットの岡野静佳氏をお招きしご講演いただきました。
6月16日、実践女子大学共通教育科目「国際理解とキャリア形成(担当:国文学科 深澤 晶久教授)」にて、株式会社資生堂(以下資生堂)の岡野静佳氏をお招きし特別講演が行われました。学生は、岡野氏の商品開発に関するご経験やご自身の“学チカ”の話を通じ、就職活動や仕事について理解を深めました。また、岡野氏は現在、二児の育児とフルタイム勤務を両立させており、キャリアの選択肢を示す存在として、学生が将来を具体的にイメージするきっかけとなりました。 授業と社会連携について 国際理解とキャリア形成は、2年生以上を対象に開講されている共通教育科目です。国際情勢の学習や、グローバル業務を経験した外部講師による講演を通じて、国際的な視野と幅広い知識を身に付けます。 今回の授業では資生堂から岡野静佳氏をお招きし、キャリアや商品開発の仕事について、そして子育てと仕事の両立のリアルに触れるご講演をいただきました。岡野氏は現在、二児を育てながらフルタイムの勤務を両立させています。キャリアを語る岡野氏の講演に、学生は真剣に耳を傾けていました。 岡野氏のキャリア 初めに、岡野氏のキャリアについて説明がありました。資生堂への入社後、百貨店担当の営業として約3年間勤務。その後「社内のジョブチャレンジ制度に応募し、本社の国際事業部へ異動しました」と話しました。岡野氏は「営業として勤めていた時、上司との面談のたびに『国際的な仕事をしたい』と伝えてました」と、グローバルにかかわる業務に対して積極的だったと話しました。 そして異動後、配属されたのは未経験であったメーキャップ商品開発担当。岡野氏は「仕事の面で、先輩たちとの比較や理想の自分とのギャップに悩みました。しかし、先輩たちにも私のような新人の時代があったはずと考え、食らいついて仕事を続けました」と話しました。また、商品開発は企画から発売までに年単位の時間がかかることを説明し、岡野氏は「担当して3年ほど経った頃、ようやく仕事のやりかたが掴めるようになりました。つかめてからはとても楽しく、バリバリ働きました」と振り返りました。 その後、2020年に第一子の産休に入った岡野氏は続けて第二子も出産。約4年間の育児休暇を経て、一昨年スキンケアの商品開発担当として復帰したと話しました。育児休暇からの復帰後は、育児と仕事を両立する日々だといい、さらに岡野氏は「実は10か月間の研修を受け、今年1月から正式にマネージャーとして勤務しています。管理職として増えた仕事に翻弄されつつ、頑張って働いています」と話しました。 岡野氏のキャリアの原点 岡野氏は自身のキャリアの原点として、大学時代の留学中に経験したとある出来事を学生に話しました。 留学中、旅に出るため飛行機の出発を待つ空港の待合ロビー。周囲に空席が目立つ中、男性が真隣に座ってきたといいます。警戒心から「なんですか」と尋ねたものの返答はありませんでした。不審に思っていると、男性から手元の機械を用いて飛行機の行き先について質問され、初めてこの男性が視覚と聴覚の両方に障害のある人(盲ろう者)だとわかったといいます。岡野氏は「彼はアナウンスや掲示の情報を受け取ることができず、誰かに教えてもらわなければ状況に気づけない立場なんだ、と気づきました」と話しました。 そこから機械や手のひらに文字を書いてコミュニケーションを図り、「不慣れで拙くゆっくりとしたやり取りしかできず、大した会話はしていなかったと思います」と話しました。優先搭乗の案内がかかり、グランドスタッフの介助の元搭乗ゲートに向かう男性を見送った岡野氏。「男性がくるっとふりかえり、すごい笑顔で大きく手を振ったんです。向いている方向は全く違っていたのですが、きっと私に向けてしてくれたんだろうと思いました」と話しました。 当時の経験を振り返り「当時、体験したことがないほどの達成感を感じ『すごくいいことをしてあげられたんだろうな』という純粋な印象が今も根強く残っています」と話し、岡野氏のキャリアの軸でもある「心を重んじる究極のおもてなし」という価値観を持つきっかけとなったことを紹介しました。 さらに学生に「私はこの出来事を『学チカ(就活の自己PRの定番の質問である“学生時代に力を入れたこと”」のこと)』として就活面接で話しました。皆さんも『力を入れたこと』という言葉に引っ張られすぎず、自分の経験を自分の言葉に変えることを大切にしていただきたいと思います」と話しました。 商品開発の仕事 岡野氏は商品開発のプロセスを、メーキャップ担当時に開発に携わった〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉を例に説明しました。 岡野氏は「商品開発では、なぜその商品を作るかという戦略を明確にしたうえで、その目的を達成するために必要な要素とミッションを調査・分析によって導き出していきます」と説明。 〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉は、ブランドのメーキャップ商品の大幅リニューアルを前に新規顧客を獲得するための企画として立ち上がったといい、岡野氏は「新規顧客を『かわいい』でひきつけるものとして提案したものが〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉となります」と説明しました。 また、さまざまな調査の結果、新規顧客が見込める世代が若年層であったことや、ポーチの中身を調査した際に資生堂の商品が一つも入っていなかったことなどから「“若いお客様に『可愛い』『ポーチに1個入れたい』と思ってもらえる商品をつくること”をミッションとして設定した」と話しました。 その後、「ミッションを達成するにはどうしたらよいか、具体的な商品の企画が始まります」と話し、実際の提案資料をスクリーンに投影しながら、『20代女性』というターゲットや『商品の機能だけじゃなく、見た目の可愛さやストーリーも重要』というニーズなど、〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉開発時の詳細な設定を紹介。客観的な要素をそろえたうえで、それをどうしたら商品に落とし込むことができるか、コンセプトなどを決定すると説明しました。 〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉のコンセプト決定について、岡野氏は「商品コンセプトを考えていく段階で『手つむぎ』をキーワードにしました。日本の伝統工芸など、手作業で完成する商品に込められた職人さんの美意識を、エッセンスとして取り入れたかったんです。そこで贈り物や自分へのご褒美として購入される『和菓子』をコンセプトとして採用しました」と話しました。 また、「商品の販売スタートの時期が2月だったのですが、ブランドのメーキャップ商品リニューアルは秋。そこで、季節ごとに和菓子をモチーフにした色を約2カ月おきに展開するという戦略を考えました」と話し、「販売戦略に合わせ、商品の色を開発していきます」とプロセスを紹介。色の開発について「試作と修正のトライアンドエラーを重ね、研究所やメーキャップアーティストと連携しながら商品ごとに独自の色を作り出します」と話しました。 岡野氏は「〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉はSNSなどでも大変好評で、2019年、2020年と続きました。また、老舗和菓子屋とのコラボレーションも実現しました」と語りました。さらに、〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉の商品開発には2年かかったと話しながら「スキンケアの商品開発には最低3年はかかります。今も2032年に発売する商品について、考え始めています」と商品開発のサイクルについて説明しました。 制度が支える働き方 商品開発という責任ある仕事をこなしながらも、岡野氏は二人の子どもを育てる母親でもあります。仕事と育児の両立について、岡野氏は資生堂を「とても働きやすい環境です」と話し、その両立を支える要素として〈スーパーフレックス制度〉を紹介しました。スーパーフレックス制度は1か月の所定労働時間を満たしていれば、出勤・退勤時刻を比較的自由に調整できる勤務制度です。岡野氏は「中抜けや休みなど、プライベートの時間をあまり損なわずに自分が動きたいように動くことが許されている」と話しました。 制度を活用した働き方、そして仕事と家庭の両立を行っている具体的な例として、岡野氏の一日のタイムスケジュールがスライドに投影されました。朝食の準備や幼稚園への送り出しを終えた後、9時台から出社して勤務を続け、午後4時台には退勤。就寝も子どもに合わせて早い時間帯にとり、起床は午前の3時。岡野氏の具体的なライフスタイルに触れ、学生も驚きの表情。岡野氏は「業務時間を前倒しすることで、夕方以降に行うはずの仕事を早朝の時間帯で行い、育児と仕事を両立しています」と話しました。 講演の最後に 学生からの質疑応答の時間が設けられました。 学生から「来年から新卒として企業で働きます。理想の自分とのギャップを実感し落ち込んだ状況で、自分がこれを大切にしていたからこそ乗り越えられたと感じることを教えてください」という質問に対し、岡野氏は「『大きな夢』と 『小さな目標』の両方を持つことです」と話しました。 続けて「『いつか国際関係の業務をしたい』という大きな夢をずっと持っていましたが、それだけでは心が折れる時もあったため、『今日は○○さんに話しかける』など小さな目標を設定していました。誰にでも新人時代はあるものです。上司や先輩たちも新人のことをきちんと見たいけど、忙しいとどうしても無理な時もあります。先輩たちに話しかけに行くコミュニケーションを積極的に取ることや、自分から仕事を取りに行くことも大切だと思います」とアドバイスをしました。 また、「〈SHISEIDOメーキャップ PICO 2018〉の商品開発における色づくりについて詳しく教えてください」という質問には「こちらが『この色がいい』と作ったサンプルを研究所に送り、実際にメーキャップ製品として使用できる成分で色を試作してもらいます。研究所から送られてきた試作に対して、さらに色味の修正をかけまた戻ってきてを納得がいくまで繰り返します」と回答。また、「どういう色味にするか、資生堂に所属するメイクアップアーティストと相談しながら色を決めていきます」と話し、岡野氏は「日々の生活の中で『美しい』と感じた瞬間の印象を大切にしながら色を作り上げています。飲んでいたお茶の色や、パンに塗ったジャムの色などから着想を得ることもありました」と説明しました。 担当教員のコメント 今年も、岡野様にご登壇いただきました。初めてお会いしたのは2006年、私が企業の採用を担当していた時でしたから、それからもう20年になります。管理職にもなられ、今や資生堂の中心的な存在して活躍されている姿を、本当に頼もしく、そして嬉しく拝見しました。仕事にも、育児にも、全力で取り組むお姿が、学生の心に強く響いたようです。そして、毎年お聞かせいただく究極のおもてなしのエピソードは、学生の心に深く刻まれたことと思います。岡野さんの益々のご活躍を心からお祈り申し上げます。本当にありがとうございました。
キャリアを積み重ねて輝こう!「キャリア・ショーケース」の授業で日本マナー・プロトコール協会理事長による特別講演が行われました。 
キャリアを積み重ねて輝こう!「キャリア・ショーケース」の授業で日本マナー・プロトコール協会理事長による特別講演が行われました。 
7月9日に共通教育科目「キャリア・ショーケース」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。明石氏は人間関係を大事にすることで、「キャリアも人生も自ら切り拓く」ことができると明るくお話くださいました。 山あり谷ありの人生で築いたキャリア 司会進行は、「キューブ」と呼ばれる学生グループが担当。 学生から紹介を受けて登壇した明石氏は、「若いうちからキャリアについて考えることはとても大切です」と、自身の経験を交えながら講演を始めました。「私が学生だった頃は、大学でキャリア教育を受ける機会もなく、私自身も将来について深く考えていませんでした」と振り返ります。大学卒業時は第二次オイルショックによる不況の影響で就職活動は厳しく、ちょうど客室乗務員を積極採用していたJALに運よく就職できました。 その後、結婚を機に退職し、出産後に離婚を経験。「当時は離婚が大きな挫折で、将来への不安や劣等感を抱えていました」と語ります。転機となったのは、ベンチャー企業で秘書として働いたことでした。さまざまな企業の立ち上げに携わる中で、「会社は自分たちでもつくれる」という考えを持つようになり、その経験を生かして日本マナー・プロトコール協会の設立にも挑戦。「自分でキャリアを計画してきたわけではありませんが、振り返ると一つひとつの経験を積み重ねて今につながっています」と話しました。 どんな会社が良い会社? 現在は人材不足を背景に、就職活動は学生優位の「売り手市場」と言われています。しかし明石氏は、「皆さんもコロナ禍を経験したように、社会はいつ大きく変化するか分かりません」と話します。社会情勢はキャリアに大きく影響するため「社会の動きに関心を持ち、自分と結び付けて考えてほしい」と呼びかけました。 続いて、事前課題として調べてきた企業について確認。「皆さんが知っている企業は、なぜ知っているのでしょうか」と問いかけます。学生が挙げた企業の多くは、消費者向けの商品やサービスを提供する「BtoC」企業でした。一方で、企業間取引を行う「BtoB」企業や、消費者同士をつなぐ「CtoC」企業など、世の中にはさまざまな企業があることを紹介しました。 「日本には約370万社の企業があります。知名度が高いことだけが良い会社の条件ではありません」と明石氏。また、女性活躍を支援する企業の認定制度「えるぼし」や「くるみん」を確認することも、企業選びの参考になると説明しました。「新卒で入社できる会社は一社だけです。幅広く企業を知り、自分に合った会社を見つけてください」と語り掛けました。 未来が決まっていないことは選択肢がたくさんあるということ 明石氏が「就職活動に不安を感じている人はいますか」と尋ねると、多くの学生が手を挙げました。「先が見えないと不安になりますよね」と共感しながらも、「将来が決まっていないということは、それだけ選択肢があるということです」と前向きな考え方を紹介。「何もしなければ不安は変わりません。まずは行動して情報を集め、自分に合う会社を見つけていきましょう」と学生たちを励ましました。 また「キャリアが大切と言われますが、専業主婦も立派な生き方です」と話し、自分に合った働き方や生き方を選ぶことの大切さを強調。「自分がどんなタイプで、どんな人生を送りたいのかを知ることで、迷いも少なくなります」と語りました。「今は企業も仕事も多様化し、一つの仕事を一生続ける時代ではなくなりました」と説明。一方で「転職しやすい時代だからこそ、すぐに辞めるのではなく、まずは続けてみることも大切です」と助言しました。「無理をする必要はありませんが、厳しい環境で取り組んだ経験は、必ず自分の成長につながります」。 自分の頼りになるひとは? 最後に明石氏は、「人間関係を大切にすることも、キャリアを築くうえで欠かせません」と話し、自分の周りに「メンター」「モデラー」「サポーター」を持つことを勧めました。メンターは助言や励ましをくれる人、モデラーは目標となるロールモデル、サポーターはどんな時も支えてくれる存在です。「困ったときに相談したり頼れたりする人がいることで、前向きに進んでいけます」と語りました。また、人に好かれる要素として「明るさ」「元気」「素直さ」の大切さも伝えました。 さらに、「これからの人生で最も長い時間を過ごす場所は、職場です。だからこそ、自分に合った職場で充実して働くことが、豊かな人生につながります」と話します。そして、「皆さんはまだ磨かれていない原石です。どう磨き、自分らしく輝くかが大切です。ぜひ、自分らしい未来を切り開いてください」と学生たちにエールを送り、講演を締めくくりました。 信頼を築き人間関係を深めていこう 授業の最後には質疑応答が行われました。「メンターやモデラー、サポーターはどう見つければよいですか」という質問に、明石氏は「一緒にいて楽しい、すごいと思うだけでなく、その人が自分にどんな影響を与えてくれる存在なのかを意識してみると、自然に見つかります」とアドバイスしました。 また、アルバイトで後輩指導に悩む学生から「好感度を下げずに指導するには」と質問されると「伝えるべきことはきちんと伝えることが大切です。好感度とはいつも笑顔でいることではなく、相手を思って伝えること。信頼関係があれば、多少厳しい指摘でも相手はきちんと受け止めてくれるはずです」と答えました。 このほかにも多くの質問が寄せられ、学生たちにとって、自分らしいキャリアの築き方や人との関わり方について学ぶ貴重な機会となりました。 担当教員からのメッセージ 今年の最後のゲストとして、日本マナー・プロトコル協会理事長の明石伸子様にお越しいただきました。「よい人間関係を築けるような人になってください。それはきっと人生の大きな“財産”になるはずです。」「あなたが、魅力的で人から好かれる存在であって欲しいと、心より願っています。」このメッセージは、私がこの授業を通じ、学生に伝えたかった本質でもありました。そのような大切なことを教えて下さった明石様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
自分をほめてポジティブ思考で人生を切り開く!「キャリア・ショーケース」の授業で元資生堂役員の関根近子氏による特別講義が行われました。 
自分をほめてポジティブ思考で人生を切り開く!「キャリア・ショーケース」の授業で元資生堂役員の関根近子氏による特別講義が行われました。 
6月25日に、共通教育科目「キャリア・ショーケース」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された株式会社Bマインド代表・関根近子氏をお迎えしての特別講演が行われました。前向きに人生を過ごすエッセンスを、学生たちに向け明るくお話下さいました。 人を大切にする会社との出会い 登壇された関根氏は、「毎年この講演を楽しみにしています。学生の皆さんからいつもパワーをもらっています」と笑顔であいさつ。「今回は、私自身が実践してきたことで、仕事も人生も充実させることができたと感じるエッセンスをお伝えします」と話し、講演をスタートしました。 テーマは「仕事もプライベートも輝いて生きる」。関根氏は「どちらか一方だけではなく、どちらも充実していることが大切です。嫌なことや大変なこともありますが、それも前向きに楽しめるヒントをお伝えしたいと思います」と学生たちに語りかけました。 高校卒業後は資生堂に美容部員として入社。「資生堂に入って一番良かったのは、人を大切にする会社だったことです」と振り返ります。会社が掲げる「Human Centric」の考え方のもと、お客様だけでなく従業員の幸せも大切にする企業文化を実感したといいます。そして、「就職活動では仕事内容だけでなく、企業理念や『人を大切にする会社かどうか』にも目を向けてほしい」と、学生たちへアドバイスしました。 自身の技術で他人を喜ばせるやりがい 関根氏は高校で教師を目指していましたが、家族の事故をきっかけに家計を支えるため資生堂へ入社しました。美容部員として3年間働いた後、百貨店の特設ブースで接客販売を行うプロモーションチームへ異動。しかし、「お客様に歓迎されない仕事で、誇りを持てなくなった」と振り返ります。ノルマに追われるなかで、仲間の成功を喜べない自分にも嫌気が差していたといいます。 そんなとき、上司から「商品を売るのではなく、3分間でメイク技術を提供しなさい」と助言を受けました。一人ひとりに合った提案を続けた結果、数か月後、お客様から「いいものを教えてくれてありがとう」と感謝の言葉をもらいます。「本当にうれしくて日記に書きました」と関根氏。自分の力で誰かに喜んでもらえることが、仕事のやりがいだと気付いた瞬間でした。 その後は、より良い接客を目指して技術を磨くだけでなく、礼儀作法やペン字、話し方も自ら学ぶように。「上司に言われたからではなく、自分で必要だと思って学びました」と関根氏。リスキリングが注目される今だからこそ「自分から学び、強みを育てることが大切です」と語り、目標を定めて今出来ることを分析し、出来ないことをどう伸ばすかを考える大事さを学生たちに伝えました。 自分を変えた思考との出会い その後、関根氏は美容部員から営業職へ異動します。美容部員の仕事にやりがいを感じていただけに、不本意でした。さらに上司との関係がうまくいかず、家庭でも義母との関係に悩み、大きなストレスを抱えていたといいます。 転機となったのは、プラス思考について学ぶ講義との出会いでした。当初は「今さら考え方なんて変わらない」と半信半疑でしたが、話に引き込まれ、夢中でノートを取りながら「自分も変わりたい」と強く感じたそうです。講義で最初に伝えられた言葉は、「今日は残りの人生で一番若い日」。その言葉に「今日から変わろうと思えば、ここから人生を変えられる」と気付いたと振り返ります。それをきっかけに営業への向き合い方や家庭での考え方も変化。「ポジティブ思考とは、嫌なことから目を背けることではなく、困難な状況でも解決策を探そうとする姿勢です」と学生たちに伝えました。 講演の最後には、「皆さんは自分のことが好きですか」と問いかけました。「人生で一番長く付き合う相手は自分です。嫌いだとつらいですよね。自分で自分をほめましょう。強みを育てることが自信につながり、自分を好きになる第一歩です」と温かいエールを送りました。 自分を信じて行動する大切さ 授業の最後には質疑応答が行われました。接客のアルバイトをしている学生からは、「気持ちが落ち込んでいるときに良い接客ができません」という相談が。関根氏は「気持ちを無理に切り替えようとするのではなく、自分はプロだと意識すること。プライベートを持ち込まず、笑顔で相手に安心してもらうことを大切にしましょう」とアドバイスしました。 また、「自分では良いと思っていても、周囲の評価が違うときはどうすればいいですか」という質問には、「まずは他人からはそう見られているのだと認識すること」と回答。その上で「最終的には自分を信じることも必要です。周囲の意見を受け止めつつ、自分が正しいと信じたことは自信を持って行動してください」と学生たちにエールを送りました。 このほかにも多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。学生たちにとって、自分らしく前向きに人生を切り開くためのヒントを得られる有意義な講演となりました。 担当教員からのメッセージ 今年も引き続き関根をお迎えいたしました。毎年お会いするたびに、生き生きさが増していく関根さん、ご自身のお姿から、すでにポジティブさを感じますが、今年のお話しも、ポジティブ思考に繋がるものばかりでした。そして、「主体的に生きること、自分の人生は自分がつくる。自分の人生のプロデューサーは自分である。」というお言葉をいただき、学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。関根様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
オリエンタルランド・クリエイションズを訪問し、学生がプログラムに挑戦しました。
オリエンタルランド・クリエイションズを訪問し、学生がプログラムに挑戦しました。
5月25日、キャリア実践演習(担当:国文学科 深澤 晶久教授)にて、株式会社オリエンタルランド・クリエイションズ(以下、OCS)に学生が訪問しプログラムに挑戦しました。プログラムでは企業説明のほか、キャリアに関する講演や社員との座談会、代表取締役社長 向井 丈晴氏を交えたランチ会など、キャリアに関する視点を深めるほか、社内視察を交えた課題解決の施策提案を行いました。 OCSについて OCSは〈「デザイン」を通じて世界に笑顔と幸せを届けます。〉というミッションを掲げ、オリエンタルランドとグループ会社をはじめ、さまざまなクライアントに対して、デザイン、商品、印刷物、デジタル、写真、映像セグメントのクリエイティブを提供している会社です。と紹介がありました。 次に組織図をスライドに投影しながら、各部門の説明があり、企画営業部と制作部がクリエイティブ制作事業を担当していることを紹介。さらに、「案件ごとにチームが結成され、協力してクリエイティブを提供します」と説明しました。実際にOCSが担当したデザインや商品、ツール、HP、動画などがスライドで紹介され、「自分が担当したクリエイティブの展開開始日に現地視察を行うことも。ゲストのリアクションなどを直接確認することもあります」と話しました。 続いて、リゾートオペレーション部門が担当しているフォトサービス事業の業務内容が説明されました。 部門にはさらにテーマパーク内にある各フォトロケーションでのカメラマンによる撮影からプリント、販売までを担当するグループと、ホテルにおける婚礼や宴会等での各種写真の撮影からアルバム等の構成、販売を担当するグループがあるとの紹介がありました。 OCSが、各種デザインや思い出となるコンテンツの制作など、ゲストの体験につながるクリエイティブを提供していることを学んだ学生たち。テーマリゾートの運営を支えるグループ企業の事業領域紹介を通じて、一つの商品やサービスが企業間の連携によって支えられていることを学びました。 現役社員によるキャリア講演 企画営業部の齋藤氏によるキャリア講演が行われました。齋藤氏は講演の冒頭、「講演を準備する中で、自分自身のキャリアを改めて振り返る機会になりました」と話し、自身の歩んできた道のりと、その経験を通して気づいた価値観について学生へ語りかけました。 齋藤氏は株式会社オリエンタルランド(以下OLC)にデザイン職として中途入社。その後、グループ会社への出向やOLCへの帰任を数度経験し、現在はOCSで企画・営業・デザインなど幅広い業務に携わっています。 講演は、「私は失敗しない」という言葉から始まりました。しかし、それは数多くの困難や失敗を乗り越えてきた経験から、「何とかする」「何とかなる」「やり切る」という覚悟を表す言葉であると学生へ説明しました。 キャリアスタートと経験 齋藤氏は新卒で保険会社に事務職として入社。「『就職のタイミングが来たからとりあえず働く』という感覚だった」と振り返るものの、「仕事は長く続けたいし、楽しく働きたい。“好き”を仕事にしたい」と考え、その状態に近づくべく3年で退職を決意。 『職人=かっこいい』『仕事好きな大人=かっこいい』。そして、小さい頃読んだ『ウォルト・ディズニー』の伝記から、好奇心をビジネスにしてきた、ウォルトの生き方に憧れ、ディズニーに携わりたいと考えていました。 保険会社退職後は大学で専攻した日本語教師を海外で1年経験し、その後入社した制作会社では、公的機関に出向。出向先で事務の仕事に取り組む傍ら夜間のデザインスクールでデザインの基礎を学びました。当時の経験を「海外生活では度胸が身に付き、公的機関での仕事では、人の役に立てることに大きなやりがいを感じました」と振り返りました。 その後、準社員としてOLC商品部へ入社し、2年間勤務した後、中途採用試験に合格して商品デザイングループの社員となりました。 齋藤氏は「人は誰もが、自分の人生の責任者なのです」というウォルト・ディズニーの言葉を引用しながら、OLCに入社するまでの約7年間は、自分で考え、自分の意思で道を選択しながら進んできたことを学生へ伝えました。 入社後の経験  入社後、テーマパークの商品開発のためのデザイン素材集の作成、商品デザインや開発、監修などの他にも、テーマパーク以外で展開されるキャラクター商品の開発やマーケティングにも携わり、沢山の新規企画の立ち上げを実現してきたといいます。 「グッズのデザイン業務の中では、デッサンやイラストの制作に苦労しました」と振り返る齋藤氏。当時の経験を「やればやるほど自分の得意・不得意がわかるようになりました。できないことがあるだけ、多くの人に助けてもらいました。アドバイスをくれる先輩や、力を貸してくれる協力会社の職人さんなどの中で働く楽しさを強く感じました」と振り返りました。 また、「とんでもない業務量の時もありましたが、『やってから文句を言う』というスタンスで、やってのけました」と言いながら、同時に『数字に強いクリエイター』を目指し、ビジネススクールに通ったことも告白。「とにかく時間が足りなかったですが、適応能力が身に付きました」と笑いながら話してくれました。 その後も多様な業務を経験し、OCSへ出向したタイミングでコロナ渦に突入。ソーシャルディスタンスなど、従来とは異なる形での企画が求められる中、やったことのない技術を体験価値につなげられるかなど色々な取り組みを繰り返したことを述べ、「正解が分からない中、チームで試行錯誤しながら挑戦することが楽しかったです」と話しました。 キャリアを振り返って さまざまな経験を経た現在、齋藤氏は「企画、営業、提案からデザインまで幅広い業務に携わっています」と話しました。そして、これまでで、本当にやってきてよかったこととして「その時できることを最大限やってきたこと」を挙げました。目の前にある仕事一つ一つに一生懸命に取り組んできた積み重ね、一見繋がりがないような経験の数々が後の自分の強みになっていきました。そして、なによりもその『一生懸命』が、ヒトとの繋がりを生み今の財産になっているといいます。 講演の終盤、齋藤氏は自身のキャリアを振り返る中で、一つの大きな気づきがあったと語りました。 「私は、ディズニーが好きだから仕事を続けられていると思っていました。でも振り返ってみると、本当に好きだったのは、人の役に立つことでした。」 仕事を通じてゲストが喜ぶことはもちろん、一緒に働く仲間が助かったり、笑顔になったりすることに、自分自身が最もやりがいを感じていたといいます。 「だから私は、ディズニーが好きというより、仕事が好きなんだと気づきました。そして、その得意分野がディズニーなので、今の仕事を心から楽しめています。」 さらに学生へ、「人生はゲームのようなもの」という考え方も紹介しました。 ゲームでは、設定変更できないキャラクターや出来事にでくわします。設定を変えられるのは、自分自身のスキルや考え方や次の行動、戦略です。 「想定外のこと、納得いかないことにでくわしたときは『そうきたか!』とだけ思ってください。『なぜ自分だけこんなめに?』とそこに躓き思い悩むのはもったいない」と学生たちに語りかけ、出来事は変えられなくても、その後どう行動するかで、その先を変えることができると説明。人生はゴールで決まるものではなく、それまでの経験や時間の全てが人生であり、そのプロセスが価値であると伝えました。 講演の最後には、「長く大人をやっていてもわからないことは沢山あります。でも、自分が今どこに向かっているのかという現在地を見失わなければ、人は必ず前へ進むことができます」と学生たちへメッセージを送りました。 フォトサービスとPBL プログラムの後半には、現役社員から提示される課題に学生が挑戦しました。リゾートオペレーション部門の江口氏が登壇し、課題の説明が行われました。 江口氏は、テーマパーク内で提供されているフォトサービスの時間帯責任者を担当しています。「各フォトロケーションでの撮影や受付、プリント、販売など、最前線で活躍しているキャストの育成や管理、より多くのゲストに写真をお届けするための施策の立案・実行を行っています」と、日々の業務について紹介しました。 また、「最前線で活躍するキャストのモチベーションを高く保つためにはどうすればよいかなど、キャストを育成・管理するリーダーとしてのスキルも求められていると感じています」と説明。学生たちはサービス運営を支える仕事について理解を深めました。 江口氏から提示された課題は、〈より多くのゲストに写真をお届けするための施策の提案〉です。実際の業務フローが紹介された後、1日の目標など具体的な条件と、設定シーンにおける利用状況を数値化したデータが配布されました。 江口氏は特に、「サービスを提供しているキャストの行動変容によって数値向上につながる内容を提案してほしい」と学生に呼びかけました。また、「数値化されたデータを読み解き、見つけた課題から施策を考えることも一つのアプローチです」とヒントを示しました。 学生たちは3つのグループに分かれ、施策を考えるディスカッションを実施。配布資料をもとに、どの数値を改善すべきかを分析し、そのために必要な施策についてアイデアを出し合いました。 あるグループでは、提案の方向性が固まった段階で江口氏から「その価値を、キャストがどのようにゲストへ伝えられるかも考えてほしい。例えば、こんな声掛けをしてみるという方法もあります」と具体的なアドバイスを受ける場面もありました。江口氏は「最前線で体験価値を提供するキャストによってサービスは支えられています。その力をより活かす形で色々な施策を考えてください。」と話し、時間帯責任者としてサービス運営に携わる立場ならではの視点で学生に助言を送りました。 ディスカッション後は各グループが施策を発表。「案内文章にわくわく感を持たせたい」といった利用者視点からオペレーション改善を提案するグループや、ニーズを分析し、その要素を案内文章へ反映する施策を提案するグループ、利用者への説明を充実させることで、サービスの魅力をより効果的に伝える施策を考案したグループなど、多様なアイデアが発表されました。 また、「今考えていただいた施策は、『撮影体験』というパーク内での体験価値を、より多く提供することにつながるものです。そして、その体験は思い出をカタチとして残していただくことにもつながります」と述べ、今回の課題解決提案がどのような価値を生み出すのかを説明しました。 さらに、「みなさんが考えた施策を実際に形にするのは、最前線で活躍するキャストです。キャストに施策の価値をどう伝えるか、また、実行に向けたモチベーションをどのように高めていくかなど、日々、複数の要素を考えながら進めることが求められます。」と話し、業務における難しさとやりがいを学生に伝えました。 学生は、時間帯責任者の視点で課題に取り組むことで、サービスを支える多様な業務と、実際の業務で求められている広い視点について理解を深めました。 学生はキャリア講演や課題に挑戦することを通じて、社会人として求められる仕事への姿勢やより広い視野について理解を深めました。 講演や課題以外にもこんなことを行いました お昼の時間には、代表取締役社長 向井 丈晴氏を交えてランチ会が開催されました。学生と同じテーブルに社員の皆さんも着席。学生は、社員の方に直接質問をしながらリラックスした様子で昼食を楽しみました。逆に社員から学生への質問もあり、双方の意見交換の場としても盛り上がりました。 また、講演や課題のワークのほかに、社員と学生の座談会も開催されました。座談会では齋藤氏のほかに企画営業部から太田氏、和田氏、池﨑氏が参加。学生一人一人から寄せられた質問に、4人それぞれから回答されました。座談会での質問を一部抜粋し、掲載いたします。 Q一番大変だった仕事は? 池﨑氏「商品を作る工場とやり取りをしながら納品までのスケジュール管理を行ったことです。海外の方と話すこともあり、意思疎通や意識の統一に難しさを感じました」 和田氏「映画と連動したイベント企画の担当をしたことです。複数の制作物を同時並行で進捗管理を行わなくてはならず、大変でした」 太田氏「ECサイトを立ち上げたことです。ウェブに関するノウハウがない中で構築しなくてはならず、分からないことの範囲が広い点が大変でしたが、それが良い経験になり今に繋がっています。」 齋藤氏「企画が進んでいた商品を、予定していた日に納品することが難しいとの連絡が来たことです。関係者と協議し対応することで、何とか商品販売までこぎつけました。他にも大変なことはいろいろありますが、このようにエピソードにもなりますし、何とかなります。恐れるものではないです」 Q.好きなことを職にするためにどうしたか 池﨑氏「今好きを仕事にしていることは、タイミングと憧れが重なった結果だったと思います。これまでつらいこともありましたが、『食べることが好き』という一つの好きがあったからこそ頑張れたと思っています。一つの好きからつながっていろんな好きが増えたので、なにかひとつ見つけることが大切なのかなと思っています」 太田氏「好きを職にする入社きっかけではなかったですが、代わりに『負けず嫌い』でやり抜いてきたなと思っています。できたことが自信につながり、乗り越えた分できることも増えました。このような経験が仕事の楽しさにつながっていると思います」 和田氏「好きなことを職にする、という目標を諦めなかったことが一番大きかったと思います。それが今の仕事につながっていると感じています。」 齋藤氏「考え方として私がよく言うのは『好き』になる必要はなく『プロ』になれ。何事も極めると仕事が楽しくなります。ただもともと『好き』だった業界に行くことは続けるモチベーションになりますね。」 担当教員のコメント 文学部キャリア科目群の一つとして、今年(2026年)開講したキャリア実践演習では、オリエンタルランドクリエイションズ様に大変お世話になりました。向井社長や前山部長にご尽力いただき、素晴らしいプログラムを企画いただき、当日は、多くの社員の方のお力添えもいただきました。オリエンタルランドグルーブを支える大きな柱として存在するオリエンタルランドクリエイションズ様での至れり尽くせりのプログラムは、学生にとってもとても意義深く印象に残る一日となりました。普段はゲストとして眺めていた風景をキャストの側から学ぶという貴重な体験をさせていただくことが出来ました。なぜ、いつも笑顔で満たされているのか、深い視点での研鑽を積めたたことに心から感謝いたします。改めて貴重な経験をさせていただいた向井社長、前山部長をはじめとするオリエンタルランドクリエイションズ様の社員の皆さまに御礼申し上げます。
アイデアを製品に!2026年度「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲とのコラボ授業が始まりました。
アイデアを製品に!2026年度「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲とのコラボ授業が始まりました。
4月29日、演習Ⅱa(Kクラス担当:ビジネス社会学科 篠﨑 香織教授)にて、猿田彦珈琲とのコラボ授業が始まりました。初回の授業では、代表取締役の大塚朝之氏をはじめとする社員6人をお招きし、猿田彦珈琲のコーヒーにかける思いや経営哲学など、企業理念について紹介いただきました。また、企業が実際に抱える課題をテーマにした商品企画の内容も発表され、学生たちは今後、課題解決に向けた取り組みを進めていきます。 授業と連携企業について 演習Ⅱaは、人間社会学部の2年生を対象に開講されている専門科目です。授業を通じて、次年度以降のより専門的な学びに向けた具体的な根拠に基づく議論をする力や、正文献サーベイなどを通して必要な情報を収集し、活用する力を身に付けていきます。 猿田彦珈琲との連携は今年で2回目です。昨年は〈猿田彦珈琲のSNSについて考えよう〉をテーマに、SNS投稿の提案を行いました。学生たちが提案した投稿案はブラッシュアップの後、実際に猿田彦珈琲公式SNSアカウントで投稿が行われました。 インスタグラムの投稿→https://www.instagram.com/p/DSrqtLhAT8w/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA== 篠崎教授は「猿田彦珈琲との連携授業の一番の特徴は、皆さんのアイデアを単なる発表で終わらせず、『ワクワクを形に』して実際に店舗での商品化を目指すことです。直感だけでなく、論文やデータなどの根拠に基づいた提案を行う練習としてこの課題に取り組みましょう」と学生に呼びかけました。 授業のはじめに 学生たちの手元には猿田彦珈琲のカフェラテが配られ、心地よい雰囲気の中で授業がスタート。 「すっぱめのコーヒーとミルクを合わせることが、猿田彦珈琲のカフェラテの特徴です」と話す代表取締役の大塚氏から、猿田彦珈琲の価値観について説明がありました。 猿田彦珈琲の原点 起業時に「『親近感のある接客とおいしいコーヒー』が理想像だった」と話す大塚氏。その原点として、コーヒーショップが自身の居場所となったエピソードを紹介しました。 大塚氏は自身が役者を志していたことを紹介し、「オーディションの結果がなかなか実を結ばず、ふさぎ込んでしまった時期があった」と振り返りました。当時、ふらっと立ち寄ったコーヒーチェーン店で受けた親近感のある接客に「社会とのつながりを感じた」と話し、「友達未満の程よい距離感の交流が、『コーヒーショップは居場所である』という感覚につながった」と語りました。 さらに、友人の紹介でコーヒー豆を販売する店舗で勤務していた経験にも触れ、「豆の販売や、展示会の参加を通じて『飲み物のコーヒーを売りたい』という気持ちを抱くようになった」と話しました。 猿田彦珈琲の今 猿田彦珈琲は、「たった一杯で幸せになるコーヒー屋」をコンセプトに掲げるスペシャルティコーヒー専門店です。スペシャルティコーヒーとは、品質評価で高得点を獲得した高品質なコーヒーのことを指します。猿田彦珈琲では、市場全体の上位5%ほどの品質の豆を使用しており、コーヒー豆の買い付けから販売までを一貫して行っていることが紹介されました。 大塚氏は「国内に30以上の店舗を展開するほか、自家焙煎珈琲のドリップバッグなどの卸販売や、コーヒー飲料の商品監修も行っています」と話しました。また「6月に渋谷新南口に店舗がオープンします」と紹介しました。 店舗一覧→https://brand.sarutahiko.jp/shop 「利他的が得」な経営哲学 大塚氏は組織づくりに対する考えについて、「利他的な行動は、結果的に自分にも良い形で返ってくるのではないか」と語りました。 「利他的が得」になる仕組みについて、「利他的な行動をすると周囲から褒められ、その経験が自己肯定感や自信につながる」と説明。実際の例として、社員がバリスタの世界大会に出場した際のエピソードを紹介しました。 大会には先輩と後輩にあたる社員が出場し、最終選考では6名が順番に競技を行いました。競技順は事前に団体ごとに割り振られており、猿田彦珈琲には1番と6番の順番が与えられていました。大塚氏は、より早い順番の方が有利とされていることを説明しました。 大塚氏によると、競技順を決める際、先輩社員は後輩社員に1番の順番を譲ったそうです。大塚氏は、「世界大会で優勝できる可能性がもっとも高い順番を、自ら後輩に譲ったのです」と紹介しました。 その結果、大会では後輩社員が1位を受賞し、先輩社員は2位を記録しました。大会後には、先輩社員の姿勢を見ていたバリスタコーチや大会関係者から、「彼はすごい」と称賛の声が多く寄せられたそうです。大塚氏は、「この出来事以降、彼の社内での発言の質が明らかに変わりました。それは、この経験を通して自信がついたからだと思います」と話しました。 一見すると営利とは関係のない「利他的な行動」が、結果として組織やビジネスにも良い影響を与えていることを学生たちに伝えました。 課題の発表 大塚氏から猿田彦珈琲の価値観や商品づくりへの想いが語られた後、猿田彦珈琲が実際に抱える課題をテーマに、学生が取り組む3つの課題が提示されました。 まず、フード商品開発チームの三浦里芳氏から、学生全員が個人で取り組む課題〈アイスの商品企画〉について説明がありました。三浦氏は、課題提案の必須条件として「商品名、フレーバー、こだわりポイント、PR方法」を提示しました。また、課題の詳細な設定として「冬の販売を想定すること」や「学生や20代の若者をターゲットにすること」などが共有されました。 フード商品開発チームの坂本大樹氏と経営企画チームの河村美樹氏からは、グループごとに取り組む課題〈ジェラッテの商品企画〉と〈福袋の商品企画〉について説明がありました。 〈ジェラッテの商品企画〉では、坂本氏はジェラッテの抱えている課題として「認知度が低いこと、価格帯が適切か不安であること」の2点を挙げ、一日の店舗売り上げを約7杯から10杯に引き上げたいと考えていることを学生に伝えました。学生には「商品名」「フレーバー」「価格」「PR方法」の4点を盛り込んだ企画提案が求められ、販売期間を11月から2月とする条件も提示されました。また、実際の店舗を見学し、商品や価格設定について理解を深めてほしいと呼びかけました。 一方、〈福袋の商品企画〉では、河村氏から「20代前半の若者が興味を持ち、購入したくなる福袋」をテーマに企画してほしいとの説明がありました。あわせて、2025年の福袋が手土産需要を意識し、“手軽さ”をコンセプトに開発されたことも紹介されました。学生には「コンセプト」「価格帯」「外装」「内容物」の4点を提案条件として示し、「年末年始の具体的な利用シーンを想像しながら企画を考えてほしい」と期待を寄せました。 学生は前半に個人課題である〈アイスの商品企画〉に取り組み、発表を実施。その後、グループに分かれて〈ジェラッテの商品企画〉または〈福袋の商品企画〉の提案に挑戦します。 授業に関するインスタグラムの投稿はこちら 実践女子大学人間社会学部公式インスタグラムにて、授業紹介の投稿が行われました!投稿リンク:https://www.instagram.com/p/DZ8pW_oAaMe/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA== 担当教員からのメッセージ 昨年に引き続き、猿田彦珈琲社との連携授業を担当することとなり、大変光栄に思っております。  今年度は、「アイス」「ジェラッテ」「福袋」という三つの課題に取り組むという、挑戦的でありながらも大変貴重な機会をいただきました。アイスは他のカフェでも展開されている商品であるため、どのような差別化要素を組み込めるかが重要なポイントとなります。一方、ジェラッテは猿田彦珈琲オリジナルの商品であり、その魅力をいかに多くの方に知っていただくかが課題です。福袋については、「猿田彦珈琲らしさ」を打ち出しながら、女子大学生が思わず複数購入したくなるような商品を目指しています。  ビジネス社会学科の学生は、商品企画やマーケティング、価値創造への関心が高い傾向にあります。だからこそ、市場や社会の動向にしっかりと目を向けながら、実践的な提案ができるよう授業を展開しています。  5月27日には、履修者全員(26名)が猿田彦珈琲社の皆さまの前でアイスに関する提案発表を行いました。次回のジェラッテと福袋の発表は、チームごとに取り組んだ成果を発表する予定です。学生たちのアイデアが今秋・今冬の商品づくりに活かされるよう、引き続きサポートしてまいります。  猿田彦珈琲社の皆さま、いつもおいしいコーヒーをありがとうございます。また、学生一人ひとりの力を引き出してくださる貴重なコメントをいただき、心より感謝申し上げます。
木造建築が注目されている背景とは?「建築・インテリア構法」の授業でゼネコンの奥村組による特別講義が行われました。 
木造建築が注目されている背景とは?「建築・インテリア構法」の授業でゼネコンの奥村組による特別講義が行われました。 
6月13日、「建築・インテリア構法」(担当:環境デザイン学部環境デザイン学科・内藤将俊教授)の授業で、株式会社奥村組による特別講義が開催されました。建築業界の最前線で活躍する企業から直接話を聞ける貴重な機会に、学生たちは熱心に耳を傾けていました。 建築を通して地域に貢献する会社 はじめに採用グループの坂本悠月氏が登壇し、奥村組について紹介しました。奥村組は1907年創業の総合建設会社(ゼネコン)で、博物館や高層ビル、学校などの大規模建築を手掛けています。自治体や企業、国などから工事を受注し、多くの専門業者と連携します。坂本氏は「一社だけで仕事が完結することはなく、多くの人と協力してつくり上げるところが建築の面白さです」と説明しました。 奥村組は「堅実経営」「誠実施工」を理念に掲げ、安全性と品質を重視した施工で高い信頼を獲得しています。なかでも、トンネル工事に用いられるシールド工法やビルの免震技術など、高度な技術力に強みを持っています。坂本氏は「施工を通して地域やまちづくりに貢献できることも、この仕事の大きな魅力です」と語り、建設業の社会的な役割についても紹介しました。 今が木材資源のつかいどき!? 続いて建築設計統括部の菅正和氏が登壇。授業の前に学生たちの課題や提出物に目を通したことを明かし、「建築への情熱が伝わってきました」とコメント。「建築を学び続けるうえで、何より大切なのは建築が好きだという気持ちです」と学生たちを激励しました。 ここからは「なぜ今、中大規模の木造建築が増えているのか」をテーマに講義がスタートしました。木造建築が注目されている背景には、日本の森林資源の多くが資材に適した時期を迎えていることがあります。さらに建築技術の進歩によって、これまで難しかった中大規模の木造建築も実現できるようになりました。一方で、安価な海外産木材の流入により、国内の林業や木材産業は縮小傾向にあるのが現状です。こうした課題を受け、国は森林資源の有効活用や地域活性化を目的として木造建築の普及を後押ししているのです。菅氏は、木造建築の広がりが環境面だけでなく、日本の林業や地域社会の未来にも深く関わっていることをわかりやすく説明されました。 社員寮で理想の木造建築を実現 奥村組でも積極的に木造建築の取り組みを進めています。これまでに三重県の熊野古道センターや千葉県内の中学校など、中規模木造建築を手がけ、高い評価を得てきました。しかし、建物を土台からすべて木材で造る場合、コストや工期が大きな課題となります。そこで奥村組が採用しているのが、木材と鉄筋コンクリートを組み合わせる「ハイブリッド構法」です。木の温かみや環境性能と、鉄筋コンクリートの強度や施工性を両立させることで、合理的な建築を実現しています。 その代表例として紹介されたのが、西川口にある奥村組の社員寮です。建物は8階建てで、1〜2階部分は鉄筋コンクリート造とし、免震システムも導入。上部の居住フロアは木造と鉄筋コンクリート造のハイブリットで構成されています。さらに、木造ならではの快適さを活かす工夫も随所に施されています。例えば耐火性能を確保するための壁紙で木材を覆ってしまうのではなく、石こうボードの上から木材を仕上げ材として使用することで、木の香りや質感を感じられる空間を実現。「安全性と両立させながら、人に優しい木造の良さを活かすことも大切にしています」と菅氏は語りました。 実験や試験に裏打ちされた評価 奥村組の大きな強みの一つが、自社で研究や試験を行える体制です。菅氏は、耐火性能や構造強度に関する実験を自社研究所で繰り返し実施していることを紹介しました。実験によって、安全性や性能が確認された技術だけを実際の建築に採用しているのです。特に木材は鉄やコンクリートと比べてどうしても火に弱いもの。そのため、火災発生時に熱がどのように伝わるのか、どれくらいの時間で燃焼が進むのか、安全に避難できる時間を確保できるのかなど、さまざまな条件を想定した検証が行われています。西川口の社員寮についても、木と鉄筋コンクリートを組み合わせたハイブリッド構法の採用が決まった後、実際に安全かつ確実に施工できるかを何度も試験したうえで建設が進められたと語られました。 こうして完成した社員寮は、その先進性やデザイン性が高く評価され、グッドデザイン賞やウッドデザイン賞など数々の賞を受賞しています。また、設計に携わったメンバーの一人が女性設計者であることも紹介されました。菅氏は「設計者や工事主任など、建築業界では女性の活躍が目覚ましい。弊社も意匠設計の新入社員の約半数が女性です。」と説明し、「皆さんもぜひ建築の世界で活躍してほしい」と学生たちへ力強いエールを送りました。 建築最前線のリアルを学べた講演 講演後には学生から寄せられた質問をもとに質疑応答が行われました。「木造建築は今後どこまで高層化できるのでしょうか」という質問に対し、菅氏は「技術的には30階を超える建物も可能でしょう」と回答。一方で、「需要に見合う木材の供給がまだ十分ではありません。今後の林業の発展が鍵になる」と説明されました。 また、「社員寮の写真では立面に設備機器が見当たらずとてもすっきりしていましたが、どのような工夫をしているのですか」という質問には、「プロのような鋭い質問ですね」と感心した様子。菅氏は、居住空間を広く見せるため、配管などの設備を中廊下側にまとめて配置していることを紹介し、設計上の工夫について解説してくださいました。 さらに、「今後の建築業界で求められる人材とは」という質問には、人財戦略部の村松敬哲氏が回答。「前向きに取り組める人です。仕事はやりたいことばかりではありません。大変なことや難しい課題にも前向きに挑戦する人は周囲から信頼され、チームにも良い影響を与えます」と語りました。加えて、「皆さんの授業への取り組みも非常に前向きで、私たちも刺激を受けました」と学生たちへエールを送りました。 建築技術の最前線から業界が求める人物像まで、現場で活躍する社会人のリアルな声に触れることができ、学生たちにとって学びの多い貴重な機会となりました。 担当教員からのメッセージ 「建築・インテリア構法」は、一級建築士受験資格を取得するために修得すべき「建築一般構造分野・2科目」のうち、基礎的な役割を担う科目となっており、木構造から鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造、さらには、屋根や壁、設備などの構法まで、幅広く扱っています。 入学時には、建築やファッション、プロダクトなど、専攻する分野が決まっていた者ばかりではなく、また、高校時に文系クラスに所属していたり、美術を選択していなかったりした学生が多く見受けられる本学科ですが、ここ5年間で多くの建築卒業制作が、全国レベルの学外コンテストなどで20以上の賞を獲得してくれています。これは、まさに各々の学生が基礎的な授業に真摯に取り組み、「決して競わず、楽しむ」ことで着実に身に着けた実力の賜物です。 本講義は、そのような学生を対象としており、2年生の6~7割が受講しています。木構造と鉄骨構造が終わり、鉄筋コンクリート構造の中盤へと差し掛かったタイミングで特別講義が行われました。そこで、㈱奥村組の皆様に木と鉄筋コンクリートの高度なハイブリッド構造を主体的にご教授いただいたことで、各回の講義が面的につながり、受講生の興味がさらに広がったと強く感じております。そして、20分以上の質疑応答時間では足りないほどの多くの質問をだした学生たちが、「設計製図」などの演習科目で本講義の内容を柔軟に活用してくれることを期待せずにはいられません。 このような素晴らしい経験を受講生にもたらしてくださいました㈱奥村組の菅様、村松様、坂本様、さらに、調整に翻弄してくださいました事務局の皆様に担当教員として心より感謝申し上げます。