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若者をファンにするSNSの投稿とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲との特別コラボが行われ学生たちがプレゼンテーションを行いました。
若者をファンにするSNSの投稿とは?「演習Ⅱa」の授業で猿田彦珈琲との特別コラボが行われ学生たちがプレゼンテーションを行いました。
6月25日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)で、猿田彦珈琲との特別コラボ授業が行われました。この日は約2ヵ月にわたり取り組んできた課題の最終発表です。課題のテーマは「20代にファンになってもらえるSNSの投稿を考えよう」。企業の皆さんを前に、学生たちは緊張しながらも猿田彦珈琲のファンを増やすためのSNSの施策を発表しました。 中間発表から最終発表会に向けて  5月末の中間発表以降今回の最終発表会までに、篠﨑先生は学生に2つのことを徹底するように伝えていました。ひとつは、猿田彦珈琲から出ている課題に回答するかたちでまとめること、もう一つは、ターゲットを絞ることです。猿田彦珈琲からいただいたテーマは、学生のみなさんの年代層(20代男女)のお客様に、「猿田彦珈琲に興味をもってもらうきっかけ」or「猿田彦珈琲に行ってみたい!」と思ってもらうための投稿案を提示するというものでした。加えて、instagramもしくはXの投稿案に入れて欲しい項目が提示されていました。項目は多岐にわたるため、必ずしも網羅的でなくても良いが、提示されている項目を入れて提案することを強調しました。ターゲットについては、「20代男女」とはどのような層なのか。例えば、どこに住んでいて、何に興味がある学生なのかなど、より具体的にする指示が出ていました。 さて、では実際に発表がどのようであったのかを見てみましょう。 一目で情報が分かるように トップバッターはAチーム。ターゲットを女子大学生に定めました。学生のうちに猿田彦珈琲を知ることで、社会人になってから利用してもらい長期的なファンにするのが目標です。若い世代はコーヒーを飲むとき、苦みが少ないカフェラテなどを好む傾向から、甘いスイーツドリンクの紹介に力を入れることに。抹茶ラテやフロートなどの写真に、説明文をつけて投稿します。文も情報を書くだけではなく、共感を呼ぶような語り掛ける口調を意識。女子大生の検索が多いハッシュタグをつけて投稿します。発表後は企業の皆さんからの質問タイム。「写真に文字が入っている方が良いですか?」という質問に、学生は「一目で見て情報が分かる方が興味を引かれると思います」と実体験から回答していました。 次のCチームは2種類の投稿を考案。毎日おすすめ商品の投稿と、定期的にフォロワー限定クーポンを配布するキャンペーンの投稿です。毎日の投稿は、通勤通学の時間帯にその日の気候に合わせたおすすめ商品を投稿し、学校帰りなどに来てもらえるように訴求します。フォロワー限定クーポンは、公式アプリと連動して応募した人に、50円引きのクーポンを配布するというもの。投稿当日限定とすることで、限定好きな若い女性の興味をそそります。「毎日のおすすめ商品は、例えばどんなものを考えていますか?」と質問が。「雨の日はテイクアウトが少なくなると思うので、店内で食べられるスイーツとセットで紹介したり、晴れている日はフロートを紹介したりすることを考えています」と回答しました。 店内のおしゃれな雰囲気を伝えるには? 続いてはEチーム。現状の投稿内容や課題を細かく分析。期間限定商品が分かりにくかったり、文章が長かったりと統一感がないことを指摘しました。そこで投稿写真を同一のフィルターをかけ、商品にキャッチコピーを入れることを提案。また投稿の下にはロゴを挿入することで、ユーザーに一目で猿田彦珈琲であることを分かりやすくします。投稿案では店内風景を撮った紹介動画を作成。雰囲気が統一されブランドイメージを伝えられるとしました。質問では「統一感の話がありましたが、猿田彦珈琲っぽさとは何だと思いますか」と聞かれ、学生は「落ち着いた店舗の雰囲気がSNSでも伝われば良いと思いました」と回答。企業の方も納得されていました。 Fチームは自分の時間を大事にするZ世代をターゲットに一人でも快適で、落ち着いて過ごせる猿田彦珈琲の特徴をアピールするSNSを提案しました。行きたいなと思わせる構成にこだわった、店舗の紹介動画を作成。渋谷店では「都会のリズムからひとやすみ」をキャッチコピーに、渋谷という忙しい街との対比を強調して落ち着いた雰囲気を伝えます。企業の方からは「全店舗ぶん考えたいなと思いました」と感嘆の声が聴かれました。 スイーツ推しで興味を引く! Dチームは、おしゃれで落ち着いている猿田彦珈琲は大人な雰囲気があるとして、少し背伸びしたい女子大生をターゲットに投稿を考えました。まず、自分たちのSNSを利用してアンケート調査を実施。フードを注文したときドリンクも頼むという結果から、フードペアリングを提案する投稿を考案しました。スイーツをとりあげ、それにあったドリンクを3種類提案するというものです。発表後は「アンケートはすごく参考になりました」「簡潔で分かりやすく素晴らしかった」と感想をいただいた、完成度の高い発表でした。 最後はBチームです。ターゲットは普段からよくカフェに行くスイーツにこだわりのある女子大生。投稿案は診断テスト風を考えました。「今日はどんな気分?」と問いかけ、「リラックス」「リフレッシュ」など選択肢を用意。気分に合う方をタップするとおすすめの商品が表示される仕組みです。「心理テストなどの診断は女子大生たちに人気なことから取り入れました」と話し、若者にも楽しみながら商品に触れてもらえる、遊び心ある提案を考えました。「こういった診断方法は何を参考にしたのですか」と聞かれ、学生は「服のブランドなどの投稿を見て思いつきました」と回答していました。 すべての発表が終わり、代表取締役の大塚朝之氏から総評をいただきました。「とても有意義で、学びばかりでした。自信になる部分も、参考になる部分もどちらもあった刺激的な時間でした」と感嘆した面持ちで話されました。今回のSNS案の優秀賞は猿田彦珈琲の公式アカウントで実際に投稿される予定です。 担当教員からのメッセージ  4月末から始まった猿田彦珈琲株式会社との連携授業が幕を閉じようしています。 連携授業開始前の打ち合わせで、「猿田彦珈琲のSNSを活性化させるための提案」が課題となってからは、私自身も学生と進めているプロジェクトの情報をインスタグラムから投稿するなど、閲覧数が伸びる投稿について考える機会が増えました(写真は人間社会学部のインスタグラム。左側の真ん中が篠﨑による投稿)。  今回学生が提案したアイデアをもとに猿田彦珈琲の広報担当の方がアレンジしたものが、間もなく猿田彦珈琲の公式インスタグラムやXから投稿されるということで、とても楽しみです。閲覧数はもとより、見た方の反応がこれまでの投稿と違ってくるのかどうか、ぜひ猿田彦珈琲のご担当者に検証結果を伺いたいです。  最終回となった今回は、「蜂蜜ラテ」の差し入れをいただきました。 猿田彦珈琲の上田様によると、自家製蜂蜜オレンジソースと芳醇なエスプレッソにミルクを合わせ、風味豊かなドリンクに仕上げた、猿田彦珈琲ならではの一杯だそうです。エスプレッソには、ふくよかなボディ感とキャラメルのような甘さ、さらにアプリコットやマーマレードの果実味を思わせる余韻が特徴の「TOKYO ’til Infinity」を使用しているそうです(味わいは2025年6月29日時点のものとなります)。蜂蜜の独特のクセを感じず、ほどよい甘みのラテでした。ご馳走様でした。 大塚社長、平岡様、田岡様、上田様、播田様、そしてフィールドワークでお世話になった渋谷道玄坂通店の皆様、大変お世話になりました。また連携授業ができることを楽しみにしております。ありがとうございました。 
発見したことを共有しよう!「演習Ⅱa」の授業で、複数のカフェのSNS分析とフィールドワークの成果を共有する中間発表を行いました。
発見したことを共有しよう!「演習Ⅱa」の授業で、複数のカフェのSNS分析とフィールドワークの成果を共有する中間発表を行いました。
5月28日の「演習Ⅱa」(Lクラス担当:人間社会学部ビジネス社会学科 篠﨑香織教授)で、猿田彦珈琲とのコラボ授業が行われました。この日は、4月に企業から出された課題に取り組む過程で発見したことを共有する中間発表。代表取締役の大塚朝之氏をはじめ社員の皆さんを前に、実際に店舗へ行って感じたことなどをプレゼンしました。 フィールドワークで発見したことを発表! 学生たちに出されている課題は「猿田彦珈琲のSNSについて考えよう」。ターゲットは20代で、猿田彦珈琲のファンになってもらえる投稿を提案することです。そのためのフィールドワークとして、先週クラスの皆で道玄坂通店へ来店。そのときに感じたことや課題に生かせそうなことをまとめてきました。 この日も学生たちの手元にはアイスコーヒーが配られました。「緊張するかと思いますがリラックスしてやってください」と芸人でもある平岡佐智男氏が話し、発表が始まりました。 対応の良さをアピールするには? トップバッターはE班です。ターゲットを20代前半の女性に定め、新規顧客の獲得を重視した投稿案を考える予定です。フィールドワークで感じたこと、発見したことを学生それぞれが細かく発表し、大塚氏からも「すごいね」と感嘆の言葉をいただいていました。そのなかで特に「店員の対応がとても良い」ことに注目。平岡氏から「店員の対応が良いというメリットをSNSでどうアピールしますか?」と質問され、学生は「対応している最中の動画を出すとか、大切にしている言葉をピックアップすることなどを考えています」と答えていました。 2番手はB班。大学生をターゲットに、スイーツに焦点を当てる投稿を考えています。天井が高く、店内の雰囲気が良いためちょっといい時間を過ごしたいときに使ってもらえるようアピールする作戦。特に一口サイズのクッキーなど、摘まめるものがあることに着目していました。 大塚氏からは「スイーツでカフェを選ぶことは多いですか?」という質問が。学生は「SNSでチェックしてスイーツをみて行ってみようと思うことはある」と回答し、「スイーツを頼むときは必ず飲み物も頼む。スイーツを基準に飲み物を決めるときもあります」と話し、大塚氏も頷いていました。 マイナスポイントも次に生かす 次のA班からは残念だった体験も。グラスに美しく入った写真に惹かれて「ブルーベリーバイオレットフロラッテ」を頼むも、提供は紙コップで中身が見えなかったということ。「グラスやプラカップなど透明なものに入っていれば、写真も映えるため雰囲気が演出できると思います」と発表すると、企業の皆さんも納得したように頷いていました。 D班もスイーツ系や期間限定商品を押し出していくことを考えています。公式サイトやSNSに載っていないスイーツやフードが、実際には種類が豊富にあり驚いたと発表。「事前に公式サイトを見てから行きましたが、あんまり種類がなく残念だと思っていたので驚いた」と話しました。大塚氏から「公式サイトでフードやドリンクの情報を調べますか?」と質問があり、「初めて行く場合は見ることもあります」と回答しました。 店舗ならではの良さを発見 続いてC班。季節限定などだけではなく、その日の天候や気温などに合わせてオススメ商品を紹介するなど、日常的な投稿案を考え中です。店内は落ち着いていて一人で作業する人もいますが、学生たちが普通の声量で話したり笑ったりしても大丈夫な雰囲気で、過ごしやすかったと話しました。 最後のF班は、映えだけではない、猿田彦珈琲独自の落ち着いた雰囲気が伝わるような投稿を目指しています。道玄坂通店には、靴を脱いで上がる畳敷きの小上がりがあります。インバウンドの方向けの和風の雰囲気を重視したそのスペースを、班のメンバーが体験。「他のカフェと違い、足を伸ばしてリラックスできた」と感想を語りました。メンバーが頼んだものは、フルーツをメインにしたスイーツドリンク。それを見て「期間限定商品などはフルーツ系の商品が多いのですが、コーヒーを使った商品でも飲みたいと思いますか?」と平岡氏から質問。気分に合えばもちろん飲みたいと学生たちは回答しました。最終プレゼンでコーヒーを使った新商品の提案もしてみようという話も出ました。 最終プレゼンに向けさらにレベルアップ 全部の班の発表を終え、企業の皆さんからは「みなさんとても考えていてすごいですね」という感心の声が。6月に行われる最終プレゼンテーションへの期待が高まりました。最終プレゼンでは、SNSへの投稿案というのがメインの課題ですが、どんな提案もNGはありません。新商品の提案や、提供の仕方など実際にフィールドワークから思いついた発想も活かし、自由に提案します。学生たちはさらに1ヵ月かけてグループワークを行い、企画の完成度を高めていく予定です。 担当教員からのメッセージ  4月30日の初回連携授業から5月28日の中間発表まで、約1か月の期間がありましたが、5月7日は本学の創立記念日のため授業はなく、実質2回の授業を経て中間発表を迎えることになりました。 この演習を履修している学生には、前期14回分の授業計画をあらかじめ示しており、ゴールデンウィークなど授業がない期間にも、猿田彦珈琲からいただいた課題に対応するために、意識的に「よく見るInstagraやXを参考に、フォロー・リツイート・コメントが多い投稿の特徴を分析する」という課題に取り組むように伝えていました。 5月14日の授業では、「インスタグラムの分析(フォロー、リツイート、コメントのあるインスタグラムとは?)」をテーマに、猿田彦珈琲のInstagramまたはXの投稿を、チームごとに分析しました。 また、5月21日には、猿田彦珈琲のお取り計らいにより、道玄坂通店でのフィールドワークを実施することができました。学生にとっては「猿田彦珈琲って?」「行ったことがありません」という状態からのスタートだったため、店舗の雰囲気やスタッフの皆さまの接客の様子、商品ラインナップ、顧客層などを観察・確認するとともに、それぞれが思い思いに商品を注文し、飲食できたことは非常に貴重で、「百聞は一見に如かず」を実感する良い機会となりました。 学生はあらかじめ猿田彦珈琲のInstagramやXのほか、他のカフェや女子大生に人気のブランドのSNSも観察し、「SNSを活性化させるとはどういうことか?」を自分なりに考えてから現地に赴きました。そして、「誰に」「何を」「どのように」伝えることが、課題解決に結びつくのかについて、店舗での経験を踏まえて検討を重ねました。  そして迎えた本日の中間発表会では、各チームがそれぞれの視点から猿田彦珈琲を分析し、その成果を発表することができました。猿田彦珈琲の皆さまからは、驚きや喜びのお声をいただく場面もあり、次のひと月で何を加えていけるかが私自身の課題になりました。  最後になりましたが、ご多忙の中ご対応いただきました猿田彦珈琲道玄坂通店のスタッフの皆さま、また中間発表会にご出席くださった大塚社長、平岡様、田岡様、上田様に、心より御礼申し上げます。今回は、当時「東京大学 Special Edition店」でしか味わえなかった「濃縮カスタムミルクラテ」を差し入れとしてご提供いただきました(6月21日より全店舗で販売開始)。重ねて感謝申し上げます。 【フィールドワークと中間発表会の様子はこちらからも知ることができます!】https://www.jissen.ac.jp/learning/human_sociology/blog/2025/shinozakizemi_20250530.html)
これからの時代に必要な企業の存在意義とは?「社会学概論」の授業で花王の小泉篤氏による特別講義が行われました。 
これからの時代に必要な企業の存在意義とは?「社会学概論」の授業で花王の小泉篤氏による特別講義が行われました。 
7月9日に「社会学概論」(担当:人間社会学部人間社会学科 原田謙教授)の授業で、花王株式会社特命フェローの小泉篤氏による特別講義が行われました。学生たちにとっても身近な製品を数多く作っている花王。長く愛されている企業ですが、その経営戦略は時代によって変わっています。これからの時代に必要な企業の在り方を、さまざまな観点から教えていただきました。 日本人の清潔文化を作った花王 小泉氏は入社から花王一筋。執行役員を経て、現在は社内の課題解決などを担当する特命フェローを担っています。インドネシア駐在の経験もある小泉氏は「グローバル潮流の変化に挑むイノベーションとは」というテーマで講演を始められました。 まずは花王の歴史から。1887年創業で、今年で138年を誇る老舗企業です。「清潔な国民は栄える」という理念のもと石けんを販売したのが始まり。日本人の清潔文化に大きく寄与してきました。小泉氏は「インドネシアに駐在した際、この理念を実感しました」と話します。発展途上国の一部では、川などで洗濯したり体を洗ったりすることがふつうで、衛生状態が悪いところも。地域の清潔と国の発展はつながっていると感じたと話しました。 花王は生活者が直接使うBtoCの製品を多く製造しています。洗剤やスキンケア、ヘアケアから化粧品まで幅広く、なんと61ものブランドがあるそうです。授業の冒頭では、花王と聞いて思い浮かべるブランドのアンケートも。スキンケア製品の「ビオレ」や洗剤の「アタック」、生理用品の「ロリエ」などが学生たちにも広く認知されていました。 利益を求めるより企業の存在意義を考える ここからは経営の話です。現在、花王をはじめ多くの日本企業は「ESG経営」を行っています。ESGとは環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3つの要素を重視する言葉。環境や社会に対して企業として責任ある経営を行うことです。「日本の多くの企業はESG経営に舵を切る前は株主資本主義経営だった」と小泉氏。「株主の利益を最大化させるために会社を運営することが最優先されていた」と話します グローバルで転機が訪れたのは2008年。リーマンショックが起こり企業の株価は急落。「そこで企業は株主資本主義経営に対して反省したのです」と小泉氏。短期的な利益よりも、なぜ企業が存在するのかという長期的な会社の価値を求めるようになっていきました。2020年にはダボス会議で「企業は収益の最大化だけでなく、社会課題の解決のために取り組むべき」とマニフェストが改訂され、世界的にESG経営の機運が高まりました。 ブランドにもパーパスはある! 花王も2019年から本格的にESG戦略を取るように。花王の原点である清浄観から「きれいをこころに、未来に」をスローガンに、きれいな世界を作ることで社会に貢献する企業を目指しています。こういった企業の社会的意義を表す言葉は「パーパス」と呼ばれます。「その企業は何のために存在するのかを表す言葉」と小泉氏は説明しました。花王はパーパスにのっとり、コロナ禍では「プロテクトJAPAN」というプロジェクトを展開。消毒液の増産に対応したり、感染予防の情報やエッセンシャルワーカーの支援も行ったりしました。 「パーパスは企業ブランドの花王だけでなく製品のブランドにもある。61のブランド全部にパーパスがあります」と小泉氏。例えば生理用品の「ロリエ」は「生理現象をとりまく環境をより良くしていく」がパーパス。生理の考え方や仕事中の女性の居心地の悪さを変えるため、職場のトイレに生理用品を無料で提供する「職場のロリエ」という活動も行っています。 イノベーションを起こすことの大切さ 「コロナ禍以降、世の中はより変化が激しくなり、想定外のことが起きるのが当たり前になってきている」と小泉氏。またECやSNSの発達で海外市場は拡大し、カネもヒトもボーダレス化しています。そこで必要なのが社会やビジネスに新しい価値を生み出す「イノベーション」です。 イノベーションの一つとして有効なのが「役に立つ」ものから「意味がある」ものはなにか考えること。(ライプニッツ代表山口周氏の「ニュータイプの時代」から)例えばフロア用掃除道具として人気の高い「クイックルワイパー」は、掃除機が重くてかけられない妊婦や障がい者にとって「意味がある」製品。ターゲットとなる層は狭くても、「意味が有る」必要とされているものを作ることで企業としての価値を高めています。 ガラパゴス化しないために行動しよう! これから就職活動をする学生に向け、小泉氏は企業のパーパスを見て自分に合ったところを探すことを勧めました。また、もうひとつ「相手の意見を聞く」ことも大事なこととして伝えます。「10年後には皆さん海外の仕事に携わるのがふつうのことになります」と小泉氏。直接海外に行かずとも、取引をしたり一緒に仕事をしたりという機会は必ずあると話します。そのために「自分をガラパゴス化させないように行動しましょう」と話しました。「海外旅行やショートステイなど、文化的な背景が違う人と出会い、現地の人と少しでも触れ合ってほしい。何か違うなと感じることがグローバルマーケットの最初だと思います」と語り掛けました。 授業後のアンケートには学生たちからの質問がたくさん寄せられました。これから就活を迎える学生たちにとって、企業の見方を学ぶ貴重な講演となりました。 担当教員からのメッセージ 人間社会学部の1年生には、社会学・心理学からビジネス、そして社会デザイン/イノベーションをめぐる基礎を幅広く学んでもらいます。「社会学概論」の授業では、家族や仕事にかんするライフスタイルの変化について学習してきました。今回の特別講義は、洗剤やスキンケア、そして化粧品といった学生にとっても非常に身近な花王ブランドの具体的なトピックから、ESG経営、イノベーションを起こす大切さまで、とても充実した内容でした。学生にとって、まさに「人を知り、社会を知り、ビジネスを学んで、よりよい未来をデザインする」とても良い機会になりました。ご多忙の中ご講演頂いた小泉様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
社会人にはどんな力が必要?「実践プロジェクトa」の授業でサントリーの新人研修を考える課題のプレゼンテーションを行いました。
社会人にはどんな力が必要?「実践プロジェクトa」の授業でサントリーの新人研修を考える課題のプレゼンテーションを行いました。
7月11日に「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科深澤晶久教授)にて、サントリーホールディングス株式会社(以下サントリー)とのコラボ授業が行われました。この日は6月に企業から出された課題に対しての最終プレゼンテーション。課題は「サントリー社員として、サントリーの新人研修を考案すること」です。中間プレゼンを経て、内容をよりブラッシュアップして臨みます。学生たちはサントリーの髙橋氏、斎藤氏を前に自信をもってプレゼンしていました。 グループワークで「協働力」を付ける 最初の発表は6グループから。「協働力」にフォーカスした一週間のプログラムを考案しました。アンケート結果から、日本の若者は輪を乱さないことを重要視する傾向があると分析。しかし協働力とは周りと合わせることではありません。違う考えでも一緒に仕事をして、結果を出すことができる力です。サントリーの大事な資源である「天然水の森」に関わる地域課題に取り組むことで協働力を高める、としました。発表後の講評で、斎藤氏から「自分たちで行ったアンケート結果をしっかり分析し整理できていた」とお褒めの言葉が。髙橋氏は「水問題に絡めていたけれど、協働力とのつながりがもっとあればさらに良かったです」と話されました。 次の5グループは「揺らぐ世界に揺らがない力を」をコンセプトに、1年間を通して行う研修を考えました。時代を越えて社会人に求められる力として思考力や主体性、柔軟性が大事と考え、それぞれが身に着くワークを提案。前期ではクイズなどで知識を養い、中期にそれぞれ気になることを調べる個人ワーク、後期には販売戦略を考えるグループワークを行います。講評では髙橋氏から「原稿を見ずに話していて事前準備をしっかりしたことが伝わりました」と感心の言葉もありました。斎藤氏は「アイデアはとても良い。どんなワークがどんな成長につながるのかもう少し考えてみましょう」とアドバイスもいただきました。 社会人基礎力を身に付けるには? 3グループは社会人基礎力をOSとアプリケーションに例え、「基盤となる考えは最新にアップデートし、語学力などのスキルをダウンロードすることが大事」と主張。その上で若者の8割が、挑戦することに苦手意識があることに注目し、意欲を引き出す研修を考えました。主体性を養う方法として、プレゼンテーションのワークを行い、自分の言葉に責任を持ち行動できる人材を育てます。髙橋氏は「中間発表から内容を大きく変えて、改善しましたね」と驚いた様子。「社会人基礎力を詳しく分析し理論的でした」と感嘆されました。 続いては4グループです。社会には「自ら動く人と繋がり価値を生み出す人材」が必要として、まずは自己理解ができる自己診断ツールを導入することを提案。「探求心」が弱い、「協調性」が苦手など、自分になにが足りないかを把握してからグループワークに臨みます。お互いの強みや弱みを補いあうことで、協調性やリーダーシップなどを育む計画です。斎藤氏は「方法論をよく考えている。成長支援を長期的にできる研修で良いアイデアだと思います」と語られました。 パラスポーツを研修に活用 次の2グループは、現代社会ではAIが発展していることに注目。しかしビジネスも根本的には人と人でのやりとりです。AIには真似できない、人に気持ちに寄り添う人間性を育てることが重要と考えました。考案した研修はなんともユニークな「逆転研修計画」。上司と部下の立場を入れ替え課題に取り組みます。部下が上司に具体的に指示を出すことで、リーダーシップや言語化能力を身に付けます。上司と部下の相互理解にもつながり、風通しのよい社内になるとしました。斎藤氏からは「人間性と自ら行動することのつながりに、もっとフォーカスしているとさらに良かった」とコメント。また、中間発表とがらりと内容を変えてきたことに対して「中間発表より素晴らしくなっている」と頑張りをねぎらいました。 最後は1グループ。社会人にはリーダーシップや規律性が求められるとして、団体スポーツを取り入れた研修を提案しました。ゴールボールという視覚障害の方が行うパラスポーツを通し、フェアプレーの精神やルールを守る規律性、積極性を養うと発表しました。髙橋氏は「研修の中身が全グループのなかで一番詰められていた。実際に、車いすラグビーを行う研修もあります」と感心されていました。 自分の個性に気付き次に活かそう 全グループ発表が終わり、サントリーのお二人から総評をいただきました。「非常にハードだったと思いますが、まさに『仕事』を体験してもらえたと思います」と髙橋氏。「グループで協力し、適材適所で進めていったと思います。そのなかで自分がうまく出来なかったこと、足りないものを知れるいい機会になったはず。この授業で終わりではなく、得たことや気付いたことを糧にするため一歩踏み出していってください」と語りました。 斎藤氏は「大事なのは結果よりもプロセスです。他の人は自分からどう見えたか、自分は他の人からどう見えたか。自分の個性に気付き、自分がどう成長できたかを大事にしてください」と話しました。そして二人から「全員が優秀賞です」とアイスクリームのギフト券がプレゼントされると、学生たちから歓声が上がりました。ほっとした表情で笑い合う学生たちは、難しい課題を乗り越えた満足感に満ちていました。 担当教員からのメッセージ 「実践プロジェクトa」は今年で5年目となりました。サントリーホールディングス様には毎年ご支援いただいています。そして、一貫して同じテーマをご提示いただいています。大学生なったばかりの1年生が、社会人に求められているものを調べあげ、サントリーホールディングス様の新人研修を考えるというのはかなりハードルの高い課題ではありますが、この講座が「1年生に対して大学での学び方を学ぶ」という目的があるからです。言い換えれば、この授業で考え、調べ抜いた社会人に求められることを理解し、これからの大学生活を送ることが、素晴らしいキャリア形成に繋がるからです。まさに「主体性講座」と名付けている理由がここにあります。今のレベルと社会人に求められるレベルとのギャップを埋めていく事が大学での真の学びなのです。そして、今年は、初めて併設校の実践女子学園高等学校の3年生も2名加わってくれました。「実践10年教育」の具現化が図れた意義ある講座となりましたことを付け加えさせていただきます、最後に、毎年ご支援いただいているサントリーホールディングス様に心から感謝申し上げます。
 「English for Linguistic Studies I a」の授業でJALの吉村真紀氏の特別講演が行われました。 
 「English for Linguistic Studies I a」の授業でJALの吉村真紀氏の特別講演が行われました。 
7月1日(火)に「English for Linguistic Studies I a」(担当:文学部英文学科 柳田 亮吾 専任講師)の授業で、JALの吉村真紀氏をお招きし、日常的に海外の方と関わる航空関係の職場で行われるコミュニケーションについて、講演していただきました。この科目は英文学科の専門教育科目で、学生たちは異文化間のコミュニケーションのスタイルについて学んでいます。 吉村氏は「地球320周分、月まで往復16回分飛行機に乗っている」現役の客室乗務員。客室責任者の経験をもとに、大学などで講演を行っています。 アサーティブコミュニケーションって? 吉村氏は初めに、「アサーティブコミュニケーション」を紹介しました。アサーティブコミュニケーションは「自分の意見や気持ちを正直に素直に伝えながら、相手の立場や感情を尊重するコミュニケーションの方法」で、「多様性、心理的安全性、自分を大切にすること、信頼関係の構築につながる」ものと説明。そしてこれらはハラスメントの防止につながるといいます。 具体的な手法として「Iメッセージ」と「DESC法」を紹介しました。Iメッセージは「私を主語にして伝え、相手を攻撃せず率直に本音を伝える」方法で、例えば貸したものが返ってこないときに「あなたっていつもそうだよね」ではなく「返ってこないと私が心配になるな」と伝える例です。DESC法は、Describe(描写)、Explain(表現)、Specify(提案)、Choose(選択)の頭文字で、事実を客観的に伝え、自分の気持ちを表現し、具体的な改善案を提案し、結果を伝える方法です。 学生たちはミニワークで実践。「アルバイト先で忙しい時間帯に休憩がもらえなかったとき」という設定で、ある学生は「長い時間働いていますが休憩がとれていません。この仕事を終わらせたら休憩に行ってもいいですか?」と答え、吉村氏は「最後に『今休憩に行ったら、休憩後もっと頑張れます!』と言うとDESC法により忠実になる」とフィードバックしました。 JALの企業理念 話はJALグループについてうつります。『JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、一、お客さまに最高のサービスを提供します。一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。』という企業理念を、吉村氏は「ウェルビーイングの考え方につながるもの」と解説。 続いて、企業理念を支える二つの柱として「安全憲章」と「JALフィロソフィ」を紹介。吉村氏は安全憲章の文を読み上げ、「『安全とは命を守ること』と明確化されていることがポイントです」と説明しました。続いて、安全への取り組みとして2006年に設立された「安全啓発センター」を紹介。1985年8月12日に起きた123便ジャンボジェット墜落事故を取り上げ、「この事故を大きな重みをもって受け止め、安全の重要さを学ぶ場として開設している」と説明。「社員も年に数回必ず行って、安全に対する気持ちを新たにしている」と、安全に対する意識の高さを説明しました。 「JALフィロソフィ」は「JALグループ全員が持つべき、意識・価値観・考え方が書かれたもの」と紹介。部門や職種を超えて一つの飛行機を運航する上でどう連携できるのか、一体感を高めていくための共通言語として設定されたものだと述べました。 現場のコミュニケーション 企業理念を説明したのち、吉村氏は〈安全とサービスを伝えるコミュニケーションについて〉と題して現場の事例を紹介しました。 吉村氏は、JALの現場において最も大切にされているのが「安全第一」という企業理念であると強調しました。その上で、「安全を守るためには、個々の技術や経験だけでなく、チーム全体の対話力が欠かせない」と話します。 この“対話力”には、心理的安全性・ノンテクニカルスキル・適切な権利勾配の3つの要素が含まれるといいます。心理的安全性は自分の意見や気持ちを安心して言える状態のことで、高いほど周囲の反応に不安感を抱くことなく発言できる環境といいます。ノンテクニカルスキルは、コミュニケーション能力などモノコトをどう使うか判断する力です。適切な権利勾配とは、職場の上下関係が適切であることです。権利勾配が急すぎると上司に言い出しにくい環境が生まれ、緩すぎると大切な場面でも引き締まり切らないため、適切な関係性が必要となります。 実際、過去には、機内での冷静かつ適切なコミュニケーションによって、事故を未然に防ぐことができた事例も紹介されました。 こうした経験からも、「良好な人間関係=安全につながる」という意識が根づいており、JALでは日頃から職場内のコミュニケーションを非常に大切にしているとのこと。アサーティブコミュニケーションは、信頼関係の構築や心理的安全性の確保において、大きなヒントになると話しました。 続いて吉村氏は、「JALフィロソフィ」にふれ、現場では時代や社会の変化に応じて柔軟な対応が求められている近年において、大切な行動指針がいくつも掲載されていることを紹介。特に近年ではインバウンドの増加により、文化的背景の異なる乗客への配慮の重要性がこれまで以上に高まっているとのことで、相手を意識したコミュニケーションの取り方について説明しました。 吉村氏は、日本人に対する対応と、文化的多様性をふまえた対応との違いを、「ハイコンテクスト・コミュニケーション」と「ローコンテクスト・コミュニケーション」という言葉を用いて説明しました。日本のように、言葉にせずとも空気や文脈で察する文化では、相手の気持ちを“先回り”して読み取るハイコンテクストな対応が基本となります。一方、多様な背景を持つ乗客に対しては、あいまいな表現では伝わりづらく、明確な言葉で伝えるローコンテクストな対応が必要になります。こうした違いを理解し、状況や相手に応じた対応が求められるのです。 また、吉村氏はJALの現場でホスピタリティを高めるために、チーム全体で大切にしている5つの具体的な行動を紹介しました。 ① 仲間を名前で呼ぶ(役職名で呼ばない)② 仲間にありがとうを伝える③ お客様を名前でお呼びする④ お客様に自己紹介、他己紹介をする⑤ 表情、アイコンタクトをしっかりとする 日々の行動の積み重ねが、サービスの質を支えているといいます。 以上のことからわかるように、JALでは乗客に対してだけでなく、乗員同士のコミュニケーションにも細やかな気配りを欠かしません。職場内の関係性を大切にし、適切な対話を重ねることで、チーム全体としてのサービス力が向上していく。JALの業務におけるコミュニケーションの重要性をよく理解できる紹介でした。 授業の終わりに 吉村氏は最後にミニワークを実施しました。 とある乗客の行為が、ほかの乗客に迷惑をかけている状況を想定し、その行動を改善してもらうための声かけを考えます。 吉村氏は「相手を心配しているという姿勢を、言葉でしっかり伝えることがポイント。そうすることで、話を聞いてもらうきっかけになります」と語り、さらに次のように述べました。 「理不尽な場面や、相手が感情的すぎる場合など、アサーティブ・コミュニケーションだけでは対応しきれないこともあります。そういうときは、感情に巻き込まれず冷静になること、できること・できないことをはっきり伝えること、安全や秩序を守る行動をとることが大切です」。 今回の授業は、実際に複数の言語を使ってコミュニケーションをとりながら働く現場の話を聞くことができ、学びと実践が結びつく貴重な機会となりました。 担当教員からのメッセージ 近年情報技術、情報機器の発達によって時間と空間を超えた様々なコミュニケーションが可能となり、それに伴いコミュニケーション上の問題もまた生じています。例えば、異文化間コミュニケーションにおける誤解に加え、近年社会問題化している顧客による過度な要求や不当なクレーム、いわゆるカスハラ(カスタマーハラスメント)もその一例でしょう。吉村さまによる特別講演は、JALという職場におけるコミュニケーションの諸相、その根底にある価値観を知ることで、グローバル化の進む現代におけるコミュニケーションについての理解を深めるための非常に貴重な機会となりました。今後の授業でも、言語学(Linguistics)の知見を教室で深めるだけでなく、その知見をもとに実際の社会におけるコミュニケーションを考える機会を積極的に創出したいと思います。
2025年度「実践キャリアプランニングa」の授業で、文化放送の課題に対し、学生によるプレゼン発表が実施されました。
2025年度「実践キャリアプランニングa」の授業で、文化放送の課題に対し、学生によるプレゼン発表が実施されました。
7月4日(金)と7月11日(金)に「実践キャリアプランニングa」(担当:文学部英文学科 鹿島千穂 専任講師)の授業で、文化放送から提示された課題に対する最終プレゼンテーションが行われました。課題内容は「20秒のラジオCMを考える」。テーマは二つ提示され、「渋谷センター街の子ども食堂」チームは7月4日、「実践女子大学」チームは7月11日に発表を行いました。 学生は、台本を掲載したパワーポイントスライドを使い、発表中に読み上げました。さらに事前準備として提案するラジオCMの企画書を提出しています。同じテーマの全グループの発表が終わった後に、学生間投票で優秀賞を選定。鹿島専任講師は『自分が好きな作品に投票してください』と呼びかけました。さらに、課題発表時に講演していただいた村田氏が企画書を読んで選出した「文化放送賞」も発表されました。 この記事では各テーマで優秀賞と文化放送賞を受賞したグループを紹介します。 「渋谷センター街の子ども食堂」|優秀賞:チームポンデリング 「チームポンデリング」は、子どもをターゲットにしたCMを提案しました。放送時間は学校終了後の夕方17時〜19時を想定。「食の温かさ」と「地域のやさしさ」が伝わる内容です。 【CMコピー】(探偵ドラマ風のピアノBGMと足音のSE) 探偵「俺は探偵。渋谷区宇田川町ビルディングで目撃された『謎のあたたかいごはん』を追っている…」子ども「あ、それ?渋谷区こども食堂のごはんだよ!」(音楽一気に明るく)探偵「まさか…この優しさ、(間を開けて)無料だと!?」子ども「事件は『渋谷区子ども食堂』で起きている!みんなで食べるごはん、捜査不要のうまさです!」 CMの主人公は、子どもにも親しみのある“探偵”キャラクター。物語は事件をきっかけに会話で進行し、子どもの視点からワクワクしながら自然と子ども食堂の魅力に触れられる構成になっています。音楽も工夫されており、ミステリアスなBGMから疾走感のあるBGMへと切り替わることで、事件解決の爽快感を演出しています。会話も元気でコミカルにまとめられ、難しい言葉は平易な表現に言い換えるなど、細部まで丁寧に作り込まれていました。「どこで開催されているか」「無料で食事ができる」といった重要な情報もしっかりと押さえられています。 発表後の質疑応答では、鹿島先生から「ヒントになった作品はありましたか?」との問いに、メンバーは「国民的探偵アニメです」と回答。続けて「必要な情報を残し、簡単でキャッチーな言葉でつないでいる。まさに以前の講演の要点を押さえた、子どもにも届く素晴らしいCMだった」と評価が寄せられました。 「渋谷センター街の子ども食堂」|文化放送賞:チームMARRY 文化放送賞を受賞した「チームMARRY」は、子ども食堂を「大学生にとっても身近な場所」として提案しました。ターゲットは大学生で、孤独感を抱える若者に向けたメッセージ性のあるCMに仕上げられています。 【CM案】(食事中の音声) 男性「好きな色とかってあるんですか?」女性「うーん、このイチゴみたいな赤が好きかな」男性「今日の洋服の赤も似合っていますね」女性「でしょう?だからランドセルも赤なの。お兄ちゃんともっと話したい」 ナレーション「おかわりされたのは、ご飯じゃなくてあなたとの会話でした。出会いじゃないつながりを。渋谷センター街こども食堂」 放送時間は深夜帯(22時〜25時)を想定し、「みんなの孤独をいやす場所」というコンセプトを軸に、学生自身の孤独感と子ども食堂でのサポート活動を丁寧に結びつけました。 CMでは、マッチングアプリの会話を模した演出が印象的です。恋愛のやり取りかと思わせておいて、実は子ども食堂での小学生との会話だったという意外な展開が、音声メディアならではの魅力を引き立てています。また、大学生にとってなじみのあるマッチングアプリという題材を取り入れることで、子ども食堂を“自分ごと”として感じてもらえる工夫も凝らされていました。 発表後、鹿島先生から「スタッフ募集の情報はどこで見つけましたか?」と質問があり、メンバーは「子ども食堂のHPで随時募集されているのを見つけた」と回答。続けて「マッチングアプリの要素を盛り込んだり、オチを用意したりと、多角的に構成が練られたCMだった」と評価が寄せられました。 村田氏からは「音声ならではの特徴を生かして聞く人によい裏切りを演出しつつ、情景やそれぞれのキャラクターが浮かぶようなコピーであり、大変素晴らしい作品だと思います。何よりおかわりされたのはご飯じゃなくて、あなたの会話という言葉がとても心に響き、心が温まりました。子ども食堂の魅力が存分に伝わり、興味を引くとても魅力的な音声CM作品だと思います」とコメントが寄せられました。 〈実践女子大学〉優秀賞:チーム東日本ガールズ 優秀賞を受賞した「チーム東日本ガールズ」は、進路に悩む高校2年生の女子生徒をターゲットに、実践女子大学の魅力を伝えるCMを制作しました。放送時間は、学校の授業が終わる16時30分ごろを想定し、等身大の視点から親近感を引き出す構成になっています。 【CMコピー】 JK1「ねえ最近、#推し活 しかしてないんだけど~(笑)」JK2「それな?でも私、最近#未来活 始めたかも」JK1「え、なにそれ(笑)」JK2「実践女子が、企業と授業とやるんだって。マジで就活前のリハって感じ」JK1「それガチすぎじゃん…。ってか渋谷だよね?通いたすぎ」JK2「『映え授業』じゃね?」JK1「え、なにそれ強!てかそれ未来見えてんじゃん」ナレーション(女性)「実践女子大学渋谷キャンパス。#推しは未来のわたし」 BGM:渋谷スクランブル交差点のざわめきと信号音のカッコウ(ラジオ内の会話の部分にBGMとして流す) CMには、未来の実践生となる“JK”たちが登場。実際の高校生に近いテンポ感のある会話と、渋谷の象徴ともいえるスクランブル交差点の環境音をBGMに使うことで、大学の立地の魅力が自然に伝わるよう工夫されていました。また、「PBL授業」といった専門用語も「企業と授業」「就活前のリハ」といった高校生に伝わりやすい言葉に言い換えられ、将来への期待を膨らませる内容になっています。 中でも印象的だったのは、「推し活」から「推しは未来のわたし」へとつなげたコピー。いま夢中になっている自分と、将来の自分を重ね合わせる構成が、進路を考える高校生に前向きな一歩を促していました。さらに、ハッシュタグを効果的に使うことで、SNS感覚で情報が伝わる親しみやすさも演出されています。 発表後の講評では、鹿島先生から「文章を読んだだけではピンと来なかったが、読み上げを聞いて魅力が伝わった。世代間で単語の意味が分からなかったが、それがむしろターゲット世代に刺さるとわかって面白かった」と、リアリティと説得力にあふれる表現が評価されました。 〈実践女子大学〉文化放送賞:チームIデンティティ 文化放送賞に選ばれた「チームIデンティティ」は、女子高生とその保護者の双方をターゲットにしたCMを提案。放送時間は、ちょうど帰宅時間にあたる16時から18時を想定し、親子で耳を傾けたくなるような内容に仕上げました。 【CMコピー】 (SE:ヘアアイロンのジジジ、水道のシャー、メイク道具のカチャカチャ、洗面所の反響音) 実践女子大生A「鏡、渋滞しすぎじゃない?」実践女子大生B「ほんとそれ~。てかさ、今日、企業連携の授業じゃん。準備した?」実践女子大生A「うちらさ、ビジュ整えながら、企業170社以上とコラボしてんの、エグくない?」実践女子大生B「てかもう、実践してるよね、フツーに。」ナレーション(女性) オシャレも、社会も本気で向き合う。(ジングル) 女性が社会を変える、世界を変える。 実践女子大学 CMでは、「渋谷キャンパスの魅力」や「建学の精神(女性が社会を変える、世界を変える)」を、日常の大学生活になじませながら紹介。セリフにはリアルなキャンパスライフの様子が盛り込まれ、自分がここで学び、すごすイメージが自然と浮かんでくるよう工夫されています。また、「おしゃれにも社会にも本気で取り組む」という、現代の女子大生像を等身大で描いた点も印象的でした。 社会連携事業を取り上げ、「実社会とつながる実学の場」としての大学の特色にも言及。親世代に対しても安心感や納得感が得られるよう、客観的な数字や取り組みの具体例を織り交ぜながら構成されていました。 質疑応答では、鹿島先生から「ターゲットに保護者も含めた理由は?」という質問があり、「大学選びは本人だけで決められないことも多い。親御さんにも、こどもの“好き”を実践できる環境があることを知ってもらいたかった」との回答がありました。 村田氏からは「実践女子大生の日常を切り取ったストーリー仕立ての映像で、勢いのあるセリフとリアルなやりとりが印象的。軽やかなテンポのなかに、「企業170社とコラボ」というインパクトあるキーワードが盛り込まれ、最後には“おしゃれにも社会にも本気で向き合う”というフレーズでしっかりとメッセージが締めくくられています。日常の延長線にあるパワフルさが、緻密な構成とセンスによって自然に引き出された作品です。実践女子大生の魅力がびしびしと使って伝わってくる作品ということで、選ばせていただきました」とコメントが寄せられました。 授業全体の講評 授業の最後に、村田氏からの総括コメントが紹介されました。 「それぞれのCM作品の設定や言葉選び、セリフの話者のキャラクターや効果音などのクリエイティブをはじめ、CMを届けたいターゲットや目的訴求、ポイント、流す時間に至るまで、最後までよく考えられて工夫されており、大変感心しました。対象についてそれぞれがよく考え、思いを巡らせた様子がよく伝わってきました。渋谷センター街こども食堂の方は、思わず笑顔がこぼれるような心温まるような作品が多く、実践女子大学の方は、まさに生き生きと学ぶ本学の学生の顔が浮かんできて、改めて魅力的な大学であることを再認識しました。ラジオでそのまま流せそうなものも多く、私自身も楽しませていただくとともに刺激を受けました。ぜひこの機会に音声で伝えることや音声を楽しむことに興味を持ってもらえると嬉しいです。貴重な機会と素晴らしい作品をありがとうございました」 担当教員からのメッセージ 学生たちは1ヵ月にわたって「20秒のラジオCM制作」に取り組みました。秒単位の短い時間で「伝わる」作品にするにはどうしたらよいか、アイデアを出し合い、ことばを厳選して完成した作品は、文化放送村田様の「本気度と一生懸命さが伝わってきた」との評価の通り、斬新で完成度の高いものでした。また、企画発表の際にCMのイメージをオーディエンスに伝えるために、SEやBGMを駆使したり、CMコメントをテンポよく読み上げたり、あるいはAIで音声化するグループもあったりと、さまざまな工夫を凝らしていたことにも感心しました。ラジオのプロである文化放送様が選んだ作品と学生間の投票で選んだ作品が違ったのも、ラジオの訴求層の違いを表しているようで興味深い点だと感じました。この経験を通して、学生たちが音声表現の奥深さや面白さに触れられたことを嬉しく思います。お力添えいただいた文化放送様に心より感謝申し上げます。
相手を思いやって「やさしい日本語」を使ってみよう!「日本語教育入門b」でJR東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別授業が行われました。 
相手を思いやって「やさしい日本語」を使ってみよう!「日本語教育入門b」でJR東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)との特別授業が行われました。 
6月24日(火)に「日本語教育入門b」(担当:国際学部国際学科 大塚みさ教授)で、JR東日本との「やさしい日本語」第2回特別コラボ授業が行われました。学生たちはマナーについてポスターや放送文案を作成し発表しました。また、ロールプレイングをとおして、相手を思いやって伝える姿勢について学びました。 音だけで伝えるのは難しい 前回に引き続き、我孫子乗務ユニットから車掌の皆さんが登壇されました。平山秀人氏と伊藤暉氏に、車掌と取手駅で改札業務を兼務している山田直人氏が加わり、和気あいあいとテンポよく楽しい授業を行ってくださいました。 まずは前回の授業の振り返り。電車の車内放送や改札で、外国人のお客さまに伝えるため、やさしい日本語を使う工夫を学んだ感想として学生からは「音(放送)だけで伝える難しさを感じた」「見た目で英語を使おうと判断しないこと」などが寄せられました。伊藤氏は「人によって価値観が違うということに気付いてもらえた。今日は特にこのことを中心に進めていきます」と話し、授業が始まりました。 ピクトグラムを使って分かりやすく さっそく、前回出された課題の発表から。課題は「鉄道マナーを在留外国人にどう伝えるか?」ポスターと、車内放送文を考えるというものでした。学生たちは5つの班に分かれ、約1か月の期間でスライドとポスターを作成し、それぞれの班が発表を行いました。  最初の班は、荷物を前に抱えて乗るマナーについて。ポスターはピクトグラムを使って分かりやすくしています。文も「混雑時」などの言葉は理解してもらえない可能性を考え、あえて省き「荷物は自分の前に!」と、シンプルに仕上げました。平山氏からは「このまま車内に貼ってもいいくらいの完成度」と感嘆の声が。伊藤氏も「外国人だけでなく日本人にも分かりやすいですね」と感心されました。  2番目の班は、駅構内では右側通行のルールについて。ポスターはこちらの班もピクトグラムを使った、一目で分かるデザインとし、英語でも注意を促します。放送文は「階段や廊下は右側を歩いて下さい」と一文で分かるものを目指しました。山田氏は「ピクトグラムは外国人のお客さまに分かりやすい。参考にしたいと思います。」と話しました。 一目でマナーを伝えるには?  3番目の班は、席に荷物を置いてしまうお客さま向けに注意を促すポスターを考案しました。「かばんを座るところにおかないでください」と文章で示し、放送文では「席は一人ひとつです」と伝えます。伊藤氏は「普通車でもグリーン車では空いている席をつい使ってしまう外国人のお客さまが多いので、ぜひ使いたいと思いました。」とコメントされました。  4番目の班は、外国と日本で違うルールを一目で分かりやすく。エスカレーターは左に立つ、走らないなどをイラストで表現しました。これらのマナーは実際に学生が「駅を利用している際に感じたことをもとに選んだ」と話しました。  最後の班は、荷物のマナーについて。マナー違反であるイラストを載せて、赤字で注意喚起しました。注意文には漢字を使わず、分かりやすく伝わることを意識しました。平山氏も「漢字を使わないというのはとてもいい」と評価されました。 全部の発表が終わると、伊藤氏から総評をいただきました。「すごいなと思ったのが、自分の経験が作品に反映されていること。私も秋葉原駅での改札業務がきっかけでやさしい日本語について考えるようになりました。今後も経験を大切にしながら社会に役立てていってほしい」と話されました。 相手に合わせてコミュニケーションを取ろう 続いて株式会社JR東日本サービスクリエーションの藤根美咲氏が登壇され、グリーン車での案内について話されました。近年グリーン車は外国人も多く利用しており、やさしい日本語が必要な場面も多々あります。そこで、学生たちはグリーン車で使われる案内をやさしい日本語に言い換えることができるか挑戦しました。 「お手持ちの特急券ではグリーン車はご利用いただけません」という文言を、ある班は「このチケットではこの電車に乗れません」と言い換えました。藤根氏は「とても詳しくて分かりやすい。私たちが実際使っているものに近いです」とコメントされました。 グリーンアテンダントは直接お客さまと会話します。やさしい話し方のポイントは、分かりやすい説明や落ち着いた態度などです。特に大事なのは、積極的な態度と相手に合わせた説明だといいます。「外国人のお客さまは、熱心に自分に話されていることを重視します。思いやりをもってコミュニケーションを取れば、伝わりやすいですよ。」と話されました。 ロールプレイングで「やさしい日本語」にチャレンジ! 最後は「やさしい日本語ロールプレイング」。平山氏たちが迷惑行為をしている乗客を演じ、それをやさしい日本語で注意してみるというものです。車掌用の手袋がプレゼントされ学生たちは歓声を上げました。帽子もお借りして車掌になりきります。 最初は車内で外国人のお客さまが大声で話しているシチュエーション。学生が「車内では静かにしてください。」と話しかけても、「なんで?」と分からない様子。学生たちは試行錯誤しながら「周りの人が困っているので、静かに話してください」と言い直していました。伊藤氏は「文化が違うとなぜ、静かにしないといけないのか分からない。理由も伝えることが大事ですね」と解説されました。 次の班は渋谷駅で乗り換えに迷っている外国人のお客さまを想定します。どこに行きたいのか、乗り換えの改札はどこかなど伝えることが複雑で、学生たちは相談し合いながら頑張って伝えていました。終了後、山田氏は「改札では複雑なことを聞かれることが多く非常に大変。翻訳アプリだけに頼らず、相手の様子を見ることも大事ですね」と解説されました。 平山氏は、最後に「やさしい日本語は伝えるためのひとつの手段です。」と話します。「皆さんが、授業で習っているとおり、やさしい日本語の使い方はとても上手。一方で、それだけでは難しいこともあります。やさしい日本語は選択肢のひとつとして、伝わる方法を工夫していってほしいと思います」と語り、和やかに授業は終了しました。 担当教員からのメッセージ 第1回に引き続き、第2回の連携授業も活気あふれる有意義な100分間となりました。 学生たちが発表した課題に対し、貴社の皆様から一つひとつ丁寧にフィードバックを賜り、誠にありがとうございました。実務の最前線でご活躍されている皆様からのご指導は、学生にとって大変貴重な学びの機会となり、教員一同、心より感謝しております。 特に、実際の現場を想定した臨場感あふれるロールプレイングでは、学生たちが協働しながら真剣に課題へ取り組む姿に、この1ヶ月間での著しい成長を感じることができました。 授業後、学生からは次のような感想が寄せられています。 「『やさしい日本語』で対応する際、相手を尊重しつつ自分の要望を伝えること、そして相手の『なぜ?』『どうやって?』という疑問を的確に汲み取ることの難しさと重要性を学びました。」 「貴社スタッフの方々の模範ロールプレイングを拝見し、相手の文化背景を理解した上で疑問に答えることが、多文化共生社会においていかに大切であるかを実感しました。」 この2回の連携授業を経て、学生たちの学ぶ姿勢にも顕著な変化が見られました。一人ひとりが深く思考して主体的に発言するようになり、仲間と協働してより良い答えを導き出す場面が増えました。実践的な体験型学習がもたらす教育効果の大きさを、改めて実感する貴重な機会となりました。 末筆ではございますが、本連携授業の実施にあたり多大なるご尽力を賜りました東日本旅客鉄道株式会社ならびにJR東日本サービスクリエーション 東京グリーンアテンダントセンターの皆様に、心より御礼申し上げます。
自分の強みを伸ばしていこう!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員の関根近子氏による特別講義が行われました。 
自分の強みを伸ばしていこう!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員の関根近子氏による特別講義が行われました。 
さまざまなゲストをお迎えして貴重なお話を伺える、毎年人気の「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業。6月19日には株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えしての特別講義が行われました。自分の強みを知り、前向きに仕事を楽しむ大切さを教えていただきました。 役員になるなんて思いもよらなかった入社時 学生たちはこの講演に向け、「自分の強みを10個書き出す」という事前課題に取り組んでいます。進行担当の学生から紹介を受け、登壇された関根氏は「課題は難しかったですか?」と問いかけました。「なかなか自分の強みは分からないものです。この授業を通し、強みを見つけていきましょう」と講義を始められました。 関根氏は18歳で資生堂に入社し、当初は地方の美容部員として働き始めました。「人にお化粧するのが好きだったの?と聞かれるのですが、そんなことない。生活のために入社したんです」と関根氏。ご家族が突然の事故に遭い働かざるを得ない状況になり、一番初任給が高かった資生堂を選んだのだと話します。「当初は結婚したら辞めると思ってました。女性管理職、ましてや役員なんてなるぞと思ってなかったんです」。しかし「私の長所は明るくて元気、そして向上心があること。今でも勉強したいことがたくさんある」と語り、チャレンジ精神をもってキャリアを積み重ねてきたのだと実感をもって語りました。 同じ仕事でもやりがいに変える方法 関根氏は入社当初のことを振り返って自身の強みをみつけたきっかけを語ってくださいました。それは美容部員から、プロモーションチームに異動したときのこと。百貨店の食品売り場などに特設ブースを設置し、推奨品を販売する仕事でした。推奨品には高いノルマが課され、嫌がられてもしつこく声をかける日々。「自分の仕事は人から嫌がられる仕事なんだろうか」と悩んだ関根氏は先輩に相談にいきました。 すると先輩から「そんなに嫌なら辞めていい。でも辞めるまでは、あなたの強みをしっかり使って接客しなさい」と言われたのです。「そうか、私の強みは美容の知識だ、私は美容のプロなんだからと気付いたんです」と関根氏。そこから一人ひとりに合わせたカウンセリングをし、美容知識をお伝えする接客方法に転換しました。すると、徐々にファンが付き、商品も売れていくようになったのです。さらにお客様から「ありがとう」という言葉をもらった関根氏は「商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたので、とても嬉しかった。店に立つのが楽しくなったんです」。そして「心も折れなくなった。お客様に断られても、きれいになるチャンスを逃したわね、と思うようになった」と笑いを交えて語りました。「同じ仕事なのに、ちょっと目線ややり方を変えただけで喜びを得るようになり、やりがいを見出すことができたんです」と話しました。 失敗を恐れずチャンスを活かす ではどうしたら自分の「強み」が分かるのでしょうか。関根氏は「資生堂で役員をやっているとき、一番重要視したのは自分の成長」と話します。コツは「一年前に比べてどのくらい成長したのかを知る。それを定量的に測ること」と関根氏。例えば本が好きな人の場合、去年50冊の本を読んでいたら今年は60冊読むようにするなど、記録を取って目に見えて分かるようにすることが大事だと言います。去年より上がっているということで自信もつき、何を学んだかも具体的に伝えられるように。「グローバル人材に必要なことは、自分の意見をきちんと言えること。強みを人前で堂々と言えるようになれば自己効力感も生まれます」と話しました。 もうひとつ大事なことはチャレンジ精神だと関根氏は語りました。どちらかというと女性は一度居心地がいい環境に入ると外に出たくなくなる傾向にあると話します。しかし、新しい環境に飛び込むことを躊躇しないでほしいと伝えました。異動や単身赴任、昇進や役員になるなど、仕事にはたくさんの変化がつきまといます。「CHANCE(チャンス)がきたらCHANGE(チェンジ)することを怖がらない。自分には無理だと思わず、失敗を恐れずチャレンジしてください」と語りました。 強みを伸ばせば自分は変わる ここで関根氏は一冊のノートを見せてくれました。当時、義理の母との関係がうまくいかず悩んでいたと言います。「それまでは人の悪口や義母の愚痴ばかり言っていて、自分でもいやでした」と告白されました。そのとき会社で、ポジティブ思考について講義を受け感動し、自身の考えや思いをまとめたのがこのノート。「ポジティブ思考とは苦しい状況のなかでも希望や解決策を探すこと。ポジティブに考えることで辛い現状にどうやって付き合っていくか考えられました」と体験を話されました。 そして関根氏は「他人を変えようとしても難しい。でも、自分は変えられる」と力強く言います。「他人と比べず、過去の自分からどう成長しているかを考えること。短所は誰にでもあります。箱で例えると長所は辺、角が短所。長所を伸ばせば器が大きくなる。だから強みを伸ばしていきましょう」と学生たちをエンパワーメントしました。 どうやって強みを見つける? 講義のあと、学生たちからの質問の時間が取られ次々に手が上がりました。「自分の長所をみつけるコツは?」という質問には、「打ち込むことが出来る好きなことがなにか考えること。また、何か周りの人からほめられたことがないか考えてみましょう」とアドバイス。 次の学生は「自分の考えや思考を押し付けにならないように伝えるときの注意点は?」と質問しました。「傲慢に取られないように。自分の伝えたいことを言うことよりも、相手を尊重するという気持ちを少し多く持つこと」と回答されました。 最後に代表の学生からお礼の言葉がありました。「自分の強み、理想のキャリアはなにかを考えるきっかけになりました」という言葉通り、学生にとって学びに繋がる講演となりました。 担当教員からのメッセージ 私が資生堂の人事部に勤務していた時から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいは、毎年その輝きが増していると感じています。関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。今年の事前研究では、一人ひとりの魅力を探り、強みを引き出す内容でしたが、とても盛り上がったのが印象的でした。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
子どものスタートラインは同じじゃない?「女性とキャリア形成」の授業で認定NPO法人「カタリバ」代表の今村久美氏が特別講義を行いました。 
子どものスタートラインは同じじゃない?「女性とキャリア形成」の授業で認定NPO法人「カタリバ」代表の今村久美氏が特別講義を行いました。 
7月3日に女性とキャリア形成(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)「カタリバ」代表理事の今村久美氏による特別講義が行われました。今村氏は大学生のときに団体を設立しています。その後、なぜNPO法人という形を選んだのか、いま子どもたちにどんな支援が必要なのかを、ご自身の体験を交えて詳しく話してくださいました。 お互いに「語り合う」ことで自分を知る まずはアイスブレイク。今村氏は「この授業のクラスメイト同士について詳しく知っていますか?」と尋ねました。どういう経緯でどんな選択をして本学に進学することを選んだのか、今後どんな人生を歩んでいきたいと思っているのか、3~5人のグループに分かれディスカッションを行いました。 いつも授業で顔を合わせていてもなかなか深い話はしないもの。改めてお互いを知る機会になりました。「私のNPO法人の名前はカタリバと言います」と今村氏。「学校生活って、教えられることはたくさんあるけどお互いのことを話すことは意外とない」と言い、「自分の現在地を知るためには、語り合うことが大事じゃないかと思って」、団体にこの名をつけたと語りました。 スタートラインの位置は公平じゃない? 今村氏は続いて学生たちの家庭環境について質問を投げました。「自分の条件に当てはまる数を数えていってください」と8つの項目を伝えます。離婚していない家庭である、携帯電話を止められる心配をしたことがない、家計を助けなくてはという心配をしたことがない、大学の学費の心配をしなくてもいい……。6つ以上当てはまった人がクラスの多数を占めています。 ここで今村氏は、同じ質問を行ったアメリカの子どもたちの動画を見せました。条件に当てはまったら先に進めるルールで、どんどん進んでいく子も、一歩も進めない子もいます。動画を見終わったあと、今村氏は「自分の回答も含め、この動画を見てどう思ったかをまたグループで話し合ってみてください」と再度ディスカッションを促しました。ディスカッションのあと、学生たちからは「今の時代みんな学校に行けてスタートラインは同じように見えるけれど、家庭環境などでスタートラインが違うのだと実感した」「自分で選んだわけではなく、もともとその位置で決まっていたと知った」などの感想が出ました。 地元の閉塞感が設立のきっかけ 今村氏は岐阜県出身。実家は飛騨高山で土産物屋を営んでおり、両親も親戚も大学に行ったことがない家庭だったといいます。特に女性は高校を卒業したら就職し、結婚し子どもを産むことが良いとされ「女性が意見を持つなんていけないことのような雰囲気」があったと言います。今村氏はそんな環境に閉塞感を覚え、どうしても地元を出たいと大学進学を志します。 晴れて神奈川の私立大学に進学した今村氏は驚きました。同級生はみんな良い服を着ています。車で通っている人も、海外留学をしたことがある人もたくさんいました。「自分が高校で常識だと思っていたことと、世の中はこんなにも違うのだと実感した」と言います。充実した大学生活を過ごしていた今村氏は、成人式のために地元に戻ります。すると、昔の友人にあったとたん同調圧力のようなものを感じ、大学生活が楽しいということを言えなくなってしまったのです。この差はなんなんだろう、と怒りや悔しさを感じた今村氏。その後、大学の授業で少年法を学んだこともきっかけとなり、家庭環境などにより、スタートラインに立てない子どもの支援をしたいと「カタリバ」を設立することを決意したのです。 悩みごとは「発見のアンテナ」! そもそもNPO法人とはなんでしょうか。学生からは「ボランティアのイメージ」との声が。今村氏は頷いて、「寄付金を集めて、そのお金で行政の支援が届かない人たちを助ける活動を行っている」と話しました。「ビジネスの領域や行政では解決できない、取り残された課題がNPO法人の領域です」と今村氏。カタリバでは、シングルマザーの家庭の子たちなどに向けて、無料でご飯が食べられて勉強も見てもらえる拠点の運営などを行っています。行政と連携し、支援が必要な人に届くように活動を広げています。 「大学生活で感じたもの、地元から得たものがたくさんあります」と今村氏。地元から首都圏に出たことで、違いについて気付けたと話します。そして「悩みごとは発見のアンテナ」と語りました。「劣っているのではなくて、それは自分の強み。自信のある人には気付けないことに気付ける」と言い、「皆さんはこれからなんでもチャレンジしていける。これからの人生も頑張ってください」とエールを送りました。 小さな課題を「みんなの課題」にしていこう 講演後は学生たちからの質問タイム。「NPOが取り組む課題で一番大変な問題はなんですか」という質問に、今村氏は「ニュースやテレビで報道されない課題。例えば子どもの貧困についても2016年頃からようやく取り上げられて表面化していった。それまでは家庭の問題と切り捨てられてしまう。メディアが取り上げることでみんなの課題になる」と話し、「皆さんもぜひ、皆さんの感性で捉えた小さな課題をSNSなどで知らせてください」と話しました。 最後にクラスを代表した学生がお礼の言葉を述べました。「NPO法人の活動について初めて知りました。今後自分もどのような活動が出来るかと考える機会になりました」と感想を語り、新しい学びに繋がったことを自身の体験を交えて語りました。学生たちにとって多くの気付きのあった授業でした。 担当教員からのメッセージ 女性とキャリア形成の最後のゲストに、カタリバの代表理事である今村久美様にお越しいただきました。以前から存じ上げていた方ですが、直近では、東京2020オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会の文化教育委員会の委員としてご一緒させていただきました。どんなことがあっても、こどもたちの居場所づくりを真っ先に考え、奔走されている姿には、いつも感動していました。今回、改めてご講演をお聞かせいただき、真の意味で将来の日本を考えておられる先導者であることを改めて感じました。大変ご多忙の中お越しいただいたことに心から感謝申し上げます。