社会連携プログラム
SOCIAL COOPERATION PROGRAM
TOPICS
2023年3月1日

「実践キャリアプランニング」の授業でJALグループの社員の立場に立って障がいのある社員が活躍できる新たなビジネスを考える課題に取り組みました。 

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、現代生活学科の学生が日本航空株式会社(JAL)とのコラボ授業を受けました。学生たちはD&Iの考え方を学び、JALグループの社員の立場に立って、企業がいままさに取り組んでいる課題に挑戦します。

JALが掲げる企業理念とESG戦略とは

講師を務めてくださる田中優子氏は、1982年から客室乗務員としてデビュー。2007年からは管理職となり、2017年からは名古屋外国語大学に出向し、特任教授として教鞭も取っていました。現在は産学連携部で人財育成に携わっています。

JALは1951年に設立。旅客輸送および貨物輸送事業において国内線・国際線ともに日本の空のインフラを担っています。JAL単体の従業員は12,000人以上、グループ会社は131社ある誰もが知る大企業です。
JALが2030年に向けたあるべき姿として掲げるJAL Vision 2030は、
「確かな安全といつも心地よい安心を感じられる社会を創ります」と、
「誰もが豊かさと希望を感じられる未来を創ります」。
この2つを実現するために「ESG戦略を経営の軸とする」という社長の表明が紹介されました。「ESG」とは環境(E: Environment)、地域社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の頭文字で、企業の長期的成長に重要な3つの観点です。

「皆さんが就職活動をしていくなかで企業のどんなところをポイントにされますか」と田中氏は問いかけました。業績のいい企業を選ぶのは当然としつつ「これからは業績だけではなく、ESGの観点がしっかり入って社会貢献しているかということが、重要な評価ポイントになってくると思います」と言います。

D&Iの実現のために

JALグループはESGの「S」の重点領域のひとつとして「人」に関する取り組みに力を入れています。その重要な項目のひとつとして「D&I」を推進するということが挙げられます。「Diversity&Inclusion」の略で「多様性と包括」などと訳されます。現在ダイバーシティの考えは浸透しつつありますが、単に組織のなかにさまざまな人がいるだけでは十分に個々の能力が活かされているとは言えません。お互いが関係しあい、能力を活かすことで新しい発想や活躍に結び付けるのがD&Iの考え方です。

JALグループでは2019年から人権方針を制定し、D&Iを推進していくという目標を掲げました。グローバル人財や女性リーダーの育成、障がい者の活躍推進、LGBTQへの理解促進などさまざまな活動を行っています。
今回はなかでも、障がい者の活躍推進にフォーカスして、学生たちも課題を考えていきます。まずJALグループの中でその取り組みを担う「JALサンライト」が紹介されました。

JALサンライトの活動を知る

JALサンライトとはJALグループの特例子会社です。
特例子会社とは、障がい者の雇用を促進するため、障がい特性に配慮し就業環境を整えている会社のこと。JALサンライトは障がい者と健常者の割合は約半々で、障がい者が多数を占める特例子会社が多いなか珍しい社員構成です。障がいの有無に関わらず社員全員が活躍できる環境作りが行われています。航空券にかかわる事務業務や客室乗務員のスケジュール作成のほか、JALグループ社員向けのカフェや靴磨き、ネイルサービスの運営もしています。

靴磨きサービス「シューシャイン」は社内で新規事業の提案を募ったなかから生まれた事業です。軽度な知的障がいのある社員の、集中力があり細かい作業が得意な特性を活かすことができるサービスです。靴磨きの世界チャンピオンに直接指導も受け、社員も誇りを持って靴磨きの技術を向上させています。

また車椅子で生活するJALサンライト社員とともに、JALは車椅子でいくツアーの企画を立案。車椅子で必要なサービスや視点を確認し、沖縄3泊4日のツアーを企画しました。車椅子だと遠方への旅行にどうしても踏み出しにくいため、車椅子利用者の背中を押すことを目的に立案されました。

企業のリアルな課題にチャレンジ!

いよいよグループワークの課題が発表されました。
課題は「障がいのある社員が活躍できる新たなフィールドやビジネスを提案する」。学生たちはJALサンライトの社員の立場に立って課題に取り組みます。ポイントは、人財の多様さが活かされて相互に機能しているか。障がい者がその仕事をすることで、他の社員にとってもメリットはあるかを考えます。社内向けのサービスでも、一般の方向けのビジネス案でも構いません。ただアイディアを出すだけではなく、実際に行うときにどんなハードルがあるか、持続可能であるかも考えなければいけません。

「そして、そのプロジェクトを自分自身が楽しめるか、やりがいを感じるか。この観点もとても大事です」と田中氏は話します。
田中氏は「うまく発表するだけでなく、グループワークでどんなプロセスがあったかがとても大事」と言い、プレゼンではどんなグループワークだったかプロセスや感想を加えるようにとのことでした。

「知らないを知る」ことで課題を解決する

最後に田中氏は、「障がいのある人は何が出来て何ができないのか、伝えるのが難しいことがあることを忘れないでほしい」と話します。
「障がいについて知らないことが多いという認識を持って、知ろうとすることが重要です」と課題への視点を語りました。

大変難しい課題ですが、田中氏は「例えばアルバイト先でこんなサービスがあったらいいな、というところから発想してみるのもいいと思います」とアドバイス。「新鮮で斬新で、楽しいアイディアが出ることを楽しみにしています」と期待をかけました。

学生はグループワークを経て、12月に最終プレゼンテーションに臨みます。

深澤先生の話

昨年度からご支援をいただいている日本航空様からの今年のお題は障がい者の方の更なる活躍を考えるという内容でした。多様性がさらに重要となり、注目が増す中で、JALグループ様の取り組みは社会からも高く評価されており、ダイバーシティ&インクルージョンを学びの軸においている中、極めて貴重な機会となりました。日野キャンパスまでたびたび足をお運びいただいた日本航空様、そしてJALサンライト様の社員の方に、心から感謝申し上げます。

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