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2022年11月7日

「グローバルキャリアデザイン」の授業で元マイナビ専務・浜田憲尚氏が就職活動の本質に迫る講演を行いました。

現代生活学科の授業「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、10月14日(金)に元マイナビ専務の浜田憲尚氏による講演が行われました。これからまさに就職活動が控えている学生たちに、就職活動の本質やなぜ働くのかなど、全体を俯瞰する視点の大切さを語って下さいました。

偶然出会った自分が打ち込める仕事

マイナビのロゴは、「M」の字をウェーブに見立てた一人の人生を描いているといいます。一人ひとりの可能性と向き合い、成長させる「きっかけ」でありたいというのが企業理念です。マイナビは1973年設立。現在全国70か所、海外8拠点を持つ大きな企業です。「マイナビという会社は、一言でいえば皆さんと企業をつなげる仕事をしています」と浜田氏。アルバイトからフリーランス、アスリートたちの支援やウェディング事業まで幅広く扱っています。新卒生が企業に就職することももちろんそのひとつ。「日本は新卒一括採用のため、たくさんの企業が待ち構えています。活かさない手はない」と力強く仰いました。

それから浜田氏の異例の入社の経緯を教えてくれました。大学で哲学を専攻していた浜田氏は院へ進みたかったのですが、親に説得され就職することに。就職活動に乗り気でなかったため、偶然DMを見たマイナビの面接に応募。当日向かってみると誰もいません。開始時間と終了時間を間違えていたのです。そこにいたある社員の方が気にかけてくれ、少し話すと「今度会おう」と時間と場所を指定されました。後日行ってみると、なんとそれは最終面接。話した社員の方は当時の人事部長だったというのです。

そのままマイナビに入社し、営業を経て、京都拠点の立ち上げや新卒向けの就職情報サービス開発に携わり、常任理事顧問に。まさにマイナビをNo.1就職情報サービス会社に育てた第一人者です。昨年退社し、現在はマイナビの海外展開の事業サポートをなさっています。「就職活動せずに入社した僕が就職を語るのも変な話なのですが」と前置きしつつ、長く勤めた理由を「打ち込める仕事に出会ったから」だと話します。会社が大切に育ててくれ、若くても仕事を任せてもらえたことや、自分たちでサービスを作り利益を得る楽しみ、クライアントの期待。そして人や企業の運命を左右する仕事であるという責任感があったからだと言います。

就職活動の前に考えてほしいこと

今回の講義を聞くのは就職活動前の3年生。今の心境は?と浜田氏に問われ、不安な心境を打ち明けました。「採用してくれる企業があるだろうか」「今の段階であまり動けていない」「行きたい会社が見つかるか…」わくわくしている学生たちは少ないようです。そこで浜田氏は「なぜ働くのか」ともう一つの問いかけをしました。「まずはお金を稼ぎたいから」「働いていない自分は想像つかないから」と、学生たちから回答が。では、自分にとってベストな就職には何が重要か、再度浜田氏は問いかけます。学生からは「自分の希望する職につくこと」「自分が大切にしていることを大事にしてくれる環境」などの回答が出ました。

浜田氏は「働くことは糧(かて)を得ること」と言います。そして「どんな職につき、糧を得るかは方法論です」と続けました。また人生で最も悲しいことは、何のために生きているのか分からないことだと言い、反対に存在価値が認められると自分に意味があると思えると話します。これらは生きがいや仕事のやりがいにつながることです。人は必要とされている、自分が活かされていると感じるとそこで働く意味があると思います。「人は誰しもいきいきと働くべき」と浜田氏は続けます。そのためにはそもそもどう生きたいか、自分を見つめることが大事です。就職すること自体を目的にせず、「なぜ働くのか」を考えることが大切だと語りました。

企業と学生、お互いがベストな就職を目指して

そして「皆さんがいきいきと働くことは企業にとっても良いこと」と浜田氏。企業とは、物やサービスなど「価値」を提供して対価をもらいます。その企業の価値を最大化するものが「人材」です。自分の力を活かして活躍すれば、企業の価値も上がっていくということ。そのため、企業側も「ベストな就職」を求めています。マイナビは企業と学生両者にとってベストな就職をする手助けをしています。質の高い情報や、たくさんの選択肢を提供し、精度の高いマッチングを目指しています。

最後に、学生たちに向けこれからの就職活動についてアドバイス。現在の採用基準は「量より質」。人数を採りたい時でも、基準を下げてまで採用する企業は少ないと言います。そのためインターンシップなど、早めの企業研究をしてほしいと助言しました。また「これまで、学生さんたちのたくさんの意見や期待をもらってマイナビも成長しました。もっといいサービスにしていきたいので、積極的に利用して頑張ってください」と応援しました。

縁がつながり就職先に!OGも応援

「深澤教授が資生堂在籍時に人事で関わったときのご縁で、年に1回学生たちの前で話す機会をいただきました」と浜田さん。
縁はさらに続き、なんとこの授業がきっかけで、2名の学生がマイナビに入社しています。
OGである中島さんと渡辺さんも最後に挨拶されました。
「この授業でマイナビに興味を持ち入社しました」
「自分たちも就活のとき先輩にいろいろ話を聞いてもらいました。良かったら相談してください」
と先輩らしい優しい言葉も。
就活に対し不安もある学生たちですが、将来のことを考える良い機会となりました。

深澤教授の話

マイナビの浜田様とは、もう15年来、私の企業人事時代から大変にお世話になっています。
そして毎年この授業にお越しいただいていますが、ご自身の就職活動を含めたキャリアの興味深いエピソードや、マイナビという会社の社会的意義など、学生にとっては、毎年、本当に多くの学びの機会をいただいています。
“就活の本質”という、浜田様でしかお聞き出来ない内容であり、これから就職活動に臨む学生にとって、貴重な時間となりました。
浜田様にはこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。

2023年1月31日

1年生が企業担当者に向けて、初めての本格的なプレゼンに挑戦!「ビジネスプランニング」の授業でクロス・マーケティンググループとのコラボ授業が行われました。

1年生対象の「ビジネスプランニング」(担当:現代生活学科 上野亮助教)で、1月11日(水)にクロス・マーケティンググループとのコラボ授業が行われました。「より多くの女子大生に読んでもらえるモラタメビューティーの記事内容」をテーマに、各班がプレゼンしました。クロス・マーケティンググループの皆さまはリモートで参加し、各発表後にはフィードバックをくださいました。

モラタメビューティーの女子大生読者を増やすには?

モラタメビューティーはクロス・マーケティンググループのグループ会社であるドゥ・ハウスが運営する美容・ヘルスケアのメディアサイトです。「知って、タメして、もっとキレイに」をコンセプトに、プレゼント企画に強みがあるのが特徴です。

今回は10~20代の女子大生の読者を増やすための記事を、2本考えてくる課題。学生たちは6班に分かれ、それぞれリサーチを重ねこの日に臨みました。プレゼン時間は10分です。

理想の体型になれる!

1班は「自分の骨格に合った簡単ダイエット」をコンセプトに、骨格診断の記事を提案しました。
自分の持って生まれた特徴を知ることで、似合う服や向いているダイエット方法が分かります。ターゲットはファッションを楽しみたい女子大生。ファッション記事は骨格別におすすめの服のブランドを紹介し、ダイエット記事は、器具を使わず簡単に真似できるものを紹介します。

質疑応答では「骨格別に似合う服のブランドは違うのか」という質問が。
学生は「女の子らしいデザインやストリートファッションなど、ブランドにより特徴が違うので」と根拠を持って回答していました。

新生活応援!これまでもこれからも美しく!

2班はまずライバルサイトを徹底的に比較。
比較サイトにはヘアケアについて幅広く載っています。また若者のトレンドである食材の紹介なども多くありますが、モラタメにはないと分析。そこでターゲットを大学1年生に設定し、初めて髪を染めた人向けのヘアケアアイテムの紹介記事を提案しました。ヘルスケア記事は、食生活の傾向からチャートで足りない栄養素を診断し、サプリなどを紹介します。

発表後ドゥ・ハウスの橋本氏から「初めて髪を染めたときの気持ちを思い出して共感を持って聞けました」と感想がありました。

コロナ禍でも可愛くなろう!

3班はモラタメビューティーのSWOT分析を行いました。
イラストが少ない、1つの記事が長い、サイト内検索ができないなど弱みを分析しました。またコロナ禍で増えた、目元を強調するメイクについての記事がないことに注目。髪色に合わせてカラーコンタクトを紹介します。もう1つは「ながらダイエット」を紹介することで、女子大生でも気軽にできるものを提案しました。

質疑応答では「コロナ禍で女子大生も目元だけのメイクをしていますか?」という質問に、
学生の一人が「自分自身、カラコンを入れて目元を強調しています」と実体験を交えて回答していました。

ディズニーファッションでSNS投稿

4班はファッションやダイエットに対しての与件整理を重点的に行い、インスタグラムの投稿に多いディズニーファッションに注目。
ディズニーでは女子大生の多くはカチューシャを付けて楽しみます。予算別に、カチューシャに合うアイテムやブランドを紹介し、SNS投稿も促します。もう1つは骨格診断別ダイエット方法を提案。プレゼント企画も考え、読んで終わる記事ではなくモラタメならではの強みを生かします。

「プレゼント企画でほしいと思うファッションアイテムはありますか?」という質問に
学生は「ヘアクリップやバケットハットなど使いやすいもの」とニーズを伝えていました。

誰でも可愛くなれる!

5班はモラタメビューティーでは20~30代向けの記事が多く、まず認知度アップが大事と考えました。
ショート動画やインフルエンサーへの提供などを行い、もらって試せるモラタメの良さを訴求します。記事もダイエットや韓国メイク、ヘアケアなど若者が興味のあるものを選びました。なかでもダイエットはアプリと連動し継続してもらえる記事を提案しました。

「女子大生にとってインフルエンサーのPRは重要ですか?」という質問に
「実体験としてアイテムを知るきっかけが、有名人が使っていたり良いと言っていたりするものが多い」と答え、社員の方も納得されていました。

理想の自分になるために

6班は美容意識の高い女子大生をターゲットに設定しました。
若者に注目されている韓国では整形が盛ん。韓国での整形に興味がある人向けに、日本人が利用しやすい病院の紹介記事を提案しました。もう1つはスキンケアの記事で、モラタメの成分分析の強みを生かし、肌質に合わせた栄養や美容成分を分かりやすく伝えます。

発表後は「女子大生にとっても整形は身近ですか?」という質問が。
学生の一人は「自分も興味があります」と実感がある内容であることを伝えました。

初めての本格的なプレゼン!

最後にクロス・マーケティングの日下部氏から総評をいただきました。
「実際に使えそうなものや改善案がたくさんありました」と感嘆され、「ビジネスシーンではターゲット層と違う人にも納得してもらうプレゼンが求められます」と、データの見せ方はしっかり数値を出すことをアドバイスされました。

1年生にとって、企業の方から実際のプレゼンさながらに課題をいただき取り組むのは初めてのことです。レベルが高い課題でしたが、学生たちにとって今後に活かせる貴重な経験となりました。

クロス・マーケティンググループのWEBサイトニュースに本プロジェクトが掲載されました。
 以下URLをご確認ください。

 https://www.cm-group.co.jp/group-news/detail.php?id=498

2023年3月1日

「実践キャリアプランニング」の授業でJALグループの社員の立場に立って障がいのある社員が活躍できる新たなビジネスを考える課題に取り組みました。 

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、現代生活学科の学生が日本航空株式会社(JAL)とのコラボ授業を受けました。学生たちはD&Iの考え方を学び、JALグループの社員の立場に立って、企業がいままさに取り組んでいる課題に挑戦します。

JALが掲げる企業理念とESG戦略とは

講師を務めてくださる田中優子氏は、1982年から客室乗務員としてデビュー。2007年からは管理職となり、2017年からは名古屋外国語大学に出向し、特任教授として教鞭も取っていました。現在は産学連携部で人財育成に携わっています。

JALは1951年に設立。旅客輸送および貨物輸送事業において国内線・国際線ともに日本の空のインフラを担っています。JAL単体の従業員は12,000人以上、グループ会社は131社ある誰もが知る大企業です。
JALが2030年に向けたあるべき姿として掲げるJAL Vision 2030は、
「確かな安全といつも心地よい安心を感じられる社会を創ります」と、
「誰もが豊かさと希望を感じられる未来を創ります」。
この2つを実現するために「ESG戦略を経営の軸とする」という社長の表明が紹介されました。「ESG」とは環境(E: Environment)、地域社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の頭文字で、企業の長期的成長に重要な3つの観点です。

「皆さんが就職活動をしていくなかで企業のどんなところをポイントにされますか」と田中氏は問いかけました。業績のいい企業を選ぶのは当然としつつ「これからは業績だけではなく、ESGの観点がしっかり入って社会貢献しているかということが、重要な評価ポイントになってくると思います」と言います。

D&Iの実現のために

JALグループはESGの「S」の重点領域のひとつとして「人」に関する取り組みに力を入れています。その重要な項目のひとつとして「D&I」を推進するということが挙げられます。「Diversity&Inclusion」の略で「多様性と包括」などと訳されます。現在ダイバーシティの考えは浸透しつつありますが、単に組織のなかにさまざまな人がいるだけでは十分に個々の能力が活かされているとは言えません。お互いが関係しあい、能力を活かすことで新しい発想や活躍に結び付けるのがD&Iの考え方です。

JALグループでは2019年から人権方針を制定し、D&Iを推進していくという目標を掲げました。グローバル人財や女性リーダーの育成、障がい者の活躍推進、LGBTQへの理解促進などさまざまな活動を行っています。
今回はなかでも、障がい者の活躍推進にフォーカスして、学生たちも課題を考えていきます。まずJALグループの中でその取り組みを担う「JALサンライト」が紹介されました。

JALサンライトの活動を知る

JALサンライトとはJALグループの特例子会社です。
特例子会社とは、障がい者の雇用を促進するため、障がい特性に配慮し就業環境を整えている会社のこと。JALサンライトは障がい者と健常者の割合は約半々で、障がい者が多数を占める特例子会社が多いなか珍しい社員構成です。障がいの有無に関わらず社員全員が活躍できる環境作りが行われています。航空券にかかわる事務業務や客室乗務員のスケジュール作成のほか、JALグループ社員向けのカフェや靴磨き、ネイルサービスの運営もしています。

靴磨きサービス「シューシャイン」は社内で新規事業の提案を募ったなかから生まれた事業です。軽度な知的障がいのある社員の、集中力があり細かい作業が得意な特性を活かすことができるサービスです。靴磨きの世界チャンピオンに直接指導も受け、社員も誇りを持って靴磨きの技術を向上させています。

また車椅子で生活するJALサンライト社員とともに、JALは車椅子でいくツアーの企画を立案。車椅子で必要なサービスや視点を確認し、沖縄3泊4日のツアーを企画しました。車椅子だと遠方への旅行にどうしても踏み出しにくいため、車椅子利用者の背中を押すことを目的に立案されました。

企業のリアルな課題にチャレンジ!

いよいよグループワークの課題が発表されました。
課題は「障がいのある社員が活躍できる新たなフィールドやビジネスを提案する」。学生たちはJALサンライトの社員の立場に立って課題に取り組みます。ポイントは、人財の多様さが活かされて相互に機能しているか。障がい者がその仕事をすることで、他の社員にとってもメリットはあるかを考えます。社内向けのサービスでも、一般の方向けのビジネス案でも構いません。ただアイディアを出すだけではなく、実際に行うときにどんなハードルがあるか、持続可能であるかも考えなければいけません。

「そして、そのプロジェクトを自分自身が楽しめるか、やりがいを感じるか。この観点もとても大事です」と田中氏は話します。
田中氏は「うまく発表するだけでなく、グループワークでどんなプロセスがあったかがとても大事」と言い、プレゼンではどんなグループワークだったかプロセスや感想を加えるようにとのことでした。

「知らないを知る」ことで課題を解決する

最後に田中氏は、「障がいのある人は何が出来て何ができないのか、伝えるのが難しいことがあることを忘れないでほしい」と話します。
「障がいについて知らないことが多いという認識を持って、知ろうとすることが重要です」と課題への視点を語りました。

大変難しい課題ですが、田中氏は「例えばアルバイト先でこんなサービスがあったらいいな、というところから発想してみるのもいいと思います」とアドバイス。「新鮮で斬新で、楽しいアイディアが出ることを楽しみにしています」と期待をかけました。

学生はグループワークを経て、12月に最終プレゼンテーションに臨みます。

深澤先生の話

昨年度からご支援をいただいている日本航空様からの今年のお題は障がい者の方の更なる活躍を考えるという内容でした。多様性がさらに重要となり、注目が増す中で、JALグループ様の取り組みは社会からも高く評価されており、ダイバーシティ&インクルージョンを学びの軸においている中、極めて貴重な機会となりました。日野キャンパスまでたびたび足をお運びいただいた日本航空様、そしてJALサンライト様の社員の方に、心から感謝申し上げます。

2023年3月1日

「実践キャリアプランニング」の授業で学生たちはJALグループにおける障がいのある社員が活躍できる新たなビジネスを提案しました。

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、12月13日に現代生活学科の学生が日本航空株式会社(JAL)とのコラボ授業が行われました。1か月前に出された課題「障がいのある社員が活躍できる新たなフィールドやビジネス」のプレゼンで、週にわたって行われこの日は後半7グループが発表しました。優秀なプレゼンにはJAL賞が与えられます。

才能を活かしてインテリアデザインを

最初の12班は
「芸術的才能を活かしたインテリアデザイナー」を提案。
精神障がい者の色彩感覚、芸術的才能を活かし、JALグループにあるマンション建設事業のモデルルームのインテリアや部屋に飾るフラワーアレンジメントを行う事業を考えました。
またこの課題に向き合い「障がいのある方の特性を知り活かすことが大切と気付いた」とまとめました。

発表後には企業の皆様からフィードバックが行われ、
JAL産学連携部の田中氏からは
「バリアフリーだけにこだわるのではなく夢のある仕事だと思いました」
と感想がありました。

発達障がいの方も介護で活躍

次の8班は、
近年増えている発達障がいのある社員の雇用を提案。
発達障がいは会話のやりとりや社会性に障がいがありますが、ルールを守る真面目な人柄が多いとも言われています。
そこで丁寧な対応が求められる高齢者介護の仕事を提案しました。
最後にはこの企画は健常者目線の提案であることに触れ、障がい者に寄り添った企画に練り上げる必要があることに言及しました。

JAL産学連携部の與口氏は、
「当事者に寄り添った企画に練り上げる必要があるという最後のコメントに誠実さを感じました」
と感嘆されました。

安心、安全な修学旅行

行事に着目したのは5班です。
多くの学生にとって思い出の行事となる修学旅行は、特別支援学校ではクリアするべき条件が多くとても大変。
そこで特別支援学校の修学旅行プランをJALサンライト社員が考案することを提案しました。
障がいのある社員ならではの目線で、支援学校の学生や先生、家族の不安を取り除き、安心、安全な修学旅行を強調しました。

JALサンライトの田中氏から
「安全・安心というJALのビジョンを掲げていることにぐっときました」
と心をつかまれたことを伝えました。

KAKUNOU-CONしよう

4班は「格納コン」を提案。
飛行機の格納庫で行うコンサートのことで、実際にアイドルや芸能人が行っています。
運営にはすべての障がいのある方と健常者が関わります。
会場内はバリアフリーで手話通訳なども対応し、関わる方すべてが楽しめる案をプレゼンしました。

JAL産学連携部の猪田氏は
「わくわくする内容で、具体的なところまでイメージできました」
とすべての人がコンサートを楽しめるという案に共感していました。

やりたい!できる!を仕事に

7班は機内の軽食の製造を提案しました。
いちから新規事業の開拓は難しいと考え、既存の形態を利用する案です。
黙々と作業し続けられる特性のある精神障がい者の雇用を増やします。
サンドイッチ製造やラッピング、盛り付けなど工程を分け、障がい者がこれならできると思わせる環境を整えることが大切と伝えました。

JALサンライトの田中氏は
「既存のものを進化させる着目がいい」
と話されました。

空のお菓子プロジェクト

11班は機内のお菓子の製造についてプレゼンしました。
障がい者雇用の課題は、障がい特性によって携わる業務の種類が偏りがちであることだと考え、どんな障がいのひとでも関われる事業を考えました。
クッキーやマフィン、パウンドケーキなどのお菓子の考案、作成、梱包、運搬まで対応。
すべて障がい者とともに一般の社員も関わり、交流の場を作ることの大切さを伝えました。

JAL産学連携部の與口氏は、
「オーソドックスな提案だと思いましたが、一般の社員も含め全員で行うことの大切さ、交流すべきというメッセージが伝わりました」
と話されました。

空飛ぶ絵画

最後の10班は、
まず精神障がい者の描いた絵画を提示し、色彩感覚が豊かなことを視覚的に伝えました。
ドリンクカップのデザインを募集し、選ばれたデザインは商品化を提案。
デザインした人にはインセンティブ報酬があり、モチベーションアップにつなげます。
学生たちはこの課題を調べるうち障がい者と健常者と棲み分けされていると感じ、一緒に働ける案を考えたとまとめました。

JAL産学連携部の田中氏は、
「インセンティブ報酬に加え、会社に貢献したという実感もやりがいに繋がりますね」
と話されました。

障がい者も活躍できる社会を想像する大切さ

発表後、企業の皆さまが話し合って本日のJAL賞を決定。
受賞したのは「安心、安全」の修学旅行をプレゼンした5班でした。

JALサンライトの田中氏から
「障がいのある学生や家族、学校の先生などいろんな視点が入っている点や、安心、安全というJALの強みも生かせる点が良かったです」と評価ポイントを挙げました。
学生からは
「賞をもらえると思っていませんでしたが、障がいについての理解が深まり良い機会になりました。ありがとうございました」と感想がありました。

最後に企業の皆さまから全体の講評をいただきました。
JALサンライトの田中氏は
「JALサンライトの職場を見学などしていない中想像して考えるのは大変だったと思いますが、この経験は今後の人生にも生かされるはずです」と相手の立場に立つという想像力の大切さを伝えました。

JAL産学連携部の田中氏も
「日頃接することの少ない障がい者のフィールドを考えることは難しかったと思います」と、D&Iを考えることが必要と伝えました。
最後に「本当に楽しくワクワクするプレゼンテーションを聞けました。
これからも頑張ってください」とエールを送りました。

深澤教授の話

昨年度からご支援をいただいている日本航空様からの今年のお題は障がい者の方の更なる活躍を考えるという内容でした。多様性がさらに重要となり、注目が増す中で、JALグループ様の取り組みは社会からも高く評価されており、ダイバーシティ&インクルージョンを学びの軸においている中、極めて貴重な機会となりました。日野キャンパスまでたびたび足をお運びいただいた日本航空様、そしてJALサンライト様の社員の方に、心から感謝申し上げます。

2024年1月17日

ウェルビーイングについて学ぶ! JWP研究会が女子大生フォーラム「What is Well-Being~自分を輝かせるキャリアの描き方2023~」を開催しました。 

12月25日(月)に実践Well-Beingプロジェクト研究会(以下、JWP研究会)によるウェルビーイングフォーラム「What is Well-Being~自分を輝かせるキャリアの描き方2023~」が開催されました。本フォーラムはJWP研究会の有志の学生が企画・運営を行い、実践女子大学のほか聖心女子大学や明治学院大学の女子学生、実践女子学園高等学校と京都市立日吉ケ丘高等学校のメンバー総勢40名が参加。ゲスト講師にEVOL株式会社代表の前野マドカ氏をお迎えし、ウェルビーイングについての理解を深めました。また、講演やグループワークの内容をアウトプットするために参加者一人一人に自分がどういった際にウェルビーイングな状態になるか考えてもらいました。最後には、ビンゴ大会を行って大盛り上がりで計3時間のフォーラムを終えることができました。

JWP研究会の活動は?

はじめに今回の企画運営を行う7名の学生たちから、本フォーラムの説明がありました。

JWP研究会も今年は3年目。女性がキャリアを築き自信をもって人生を歩んでいくために、より自分自身に目を向けることが大切と考え、様々な角度からウェルビーイングへの学びを深めることを重点に活動してきました。

「本フォーラムでは、大学生と高校生が交流を図りつつ、一人一人の参加者が自分自身にとってのウェルビーイングを深く考える機会にしたいと考えています」と開催の主旨を伝えました。 そして、早速、ゲストの前野マドカ様の講座がスタートしました。

自分を輝かせるキャリアの描き方とは

JWP研究会では発足当初に、ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司氏にお話を伺う機会があり、そのご縁でパートナーである前野マドカ氏に2023年2月に引き続き講演をお願いしました。マドカ氏も隆司氏に感化され幸せの研究を始め、現在では幸せを広めるワークショップやプログラムを開発されています。

前向きな人は創造力や生産性も高く、周りに良い影響を与えるという研究結果があります。「幸せは移ります。皆さん覚えておいてくださいね」と前野氏。では幸せな人とはどんな人でしょう。それは夢や目標を持ち、多様な人とつながりを大切にして前向きに自分らしく生きる人のこと。

「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」が幸せの4つの因子です。

人間は、ないもの・苦手なもの・できないことに目が向いてしまう生き物。しかしそれでは幸せになれません。自分にあるもの、得意なもの、できていることに目を向けることが大切と言います。

「自分の良さや強みは意外と自分では分からないので友達や家族に聞いてみましょう」前野氏はアドバイスを送りました。

ハーブティーを味わう

今回の初めての試みは、前野マドカ様にご用意いただいたハーブティーを楽しむことです。オリジナルブレンドのハーブティーを、本当にゆっくりと味わいながらいただく、まさに五感を研ぎ澄ましながらということになります。
日頃、時間に追われながら過ごしている我々にとって、味、香り、音など、静かに味わうことの大切さを感じる瞬間でした。

「Well-Beingダイアログカード」使った幸福度を高めるワークショップ

ここで、前野氏がグループに1セットずつWell-Beingダイアログカードを配りました。幸福度研究に基づいて作られたカードにはそれぞれ問が書かれています。

例えば「自分にありがとうと言いたいことは?」「本気で取り組んでいることは?」「人生をかけて成し遂げたいことは?」など。

答えを考えることで自分自身の大切なことや軸について知ることができるカードです。グループごとで話し、他の意見を聞くことで幸福度を高めていきます。

対話は盛り上がり、自然と拍手が出るグループも。それぞれグループで対話したあと、感想を発表しました。

Well-Being宣言!

フォーラムの最後には参加者全員が「Well-Being宣言」を行いました。

自分自身にとってのウェルビーイングを考え、言語化できるようにします。

開催日がちょうどクリスマスでもあったため、幹事グループのメンバーが用意したのは、クリスマスツリーを彩るオーナメント型の用紙、それぞれの思うウェルビーイングを宣言。グループ内で発表し合います。全員分の「Well-Being宣言」は幹事作成のオリジナルクリスマスツリーに貼り付け、可愛らしく飾られました。

最後に参加者から、

チームのメンバーがみんな明るくてグループワークの会話が弾んで楽しかったです。4つのマークのカードを使って自分の意見を共有するワークでは、みんな自分と違う考えを持っていたのが印象的で面白いと思いました。また、最初の1口を味わうマインドフルテイスティングは、食べることが大好きな私にピッタリだと思い、これからも取り組んでみたいと思いました。(大学生)

長続きする幸せと、すぐに消えてしまう幸せがあるというお話がとても印象に残りました。また、周りの目を気にしすぎてしまうところがあるので気にしないように自分を優先して行動するようにしていたのですが、自分の性格が悪くなったような気がしていました。「ありのまま」でいるだけでなく、繋がりに感謝する心も持たなければいけないと気づくことができたのは、大きな発見だったと思います。それから、やってみよう!と頑張る時間と、今の幸せに浸る時間のバランスが大事だというお話も興味深かったです。私はどちらかに傾いてしまうことが多かったので、バランスを意識してみようと思いました。普段関わる機会のない高校生の方と話すこともできて、とても刺激的で楽しい時間でした。(大学生)

1日の中で自分と向き合う時間を取ることはとても大切な事だと思った。どれだけ忙しくても落ち着く時間を10分くらいは取る事で心に余裕が生まれやるべき事の生産性も上がると思う。(高校生)

今回のワークショップで、日々の生活をよりプラスで豊かにする方法を学ぶことができて良かったです。個人的にはなんとかなるの精神を持つことが苦手なので、今回の質問を自分にも投げかけ、少しずついい意味で柔らかい思考を持てるようになりたいなと思いました。(大学生)

普段の日常生活と幸せとの繋がりや普段からできる自分との向き合い方を楽しく自分から学ぶことができました。班の皆さんとの交流がとても楽しくていい人たちばかりだったのでいい経験ができました。(高校生)

交流会

最後には、ビンゴ大会でのクリスマスプレゼント、お菓子を食べながらのビンゴ大会は盛り上がりました。

前野氏は「自分をいい状態にすることを、しっかり考えてくれてとても嬉しいです。全員に応援メッセージを送りたい」と語り、ウェルビーイングフォーラムは終了しました。

企画・運営した学生たちの話

私は去年、参加者側として参加して、今年は企画・運営から携わってみたいと考えて運営メンバーに応募しました。事前の打ち合わせから当日まで時間がない中で、メンバー全員と話し合いながらコツコツ準備を進めていきました。今年は高校生がいる中で、どうやったら参加者全員が楽しめて学びになるフォーラムになるか何度も考えて創りあげていきました。当日は緊張しながらも、司会進行を務めてフォーラムをスムーズに進められるよう努めました。自分達が企画したフォーラムが形になっていく様子を肌で感じ、自分自身も楽しく、感動したのを覚えています。
フォーラムの最後には、参加者の方から「とても楽しかった」と言ってもらい嬉しかったです。貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました!(人間社会学部人間社会学科)

ウェルビーイングフォーラム初参加という中で、運営メンバーのリーダーという、重要な役割を務めさせていただきました。講師の前野様とも直接連絡をとらせていただき、サポートいただきながら企画してまいりました。私は去年のウェルビーイングフォーラムに参加していなかったので、不安もありましたが、去年参加したメンバーから意見をもらいつつ、メンバー全員で工夫しながら企画や運営を進め、最終的に参加者の方から「楽しかった」と言ってもらうことができ、大変うれしく思いました。また、ウェルビーイングの考え方が注目されている中、大学生のうちから理解を深めるだけでなく、このようなフォーラムの企画や運営に携わることができ、貴重な経験をさせていただきました。(生活科学部現代生活学科)

深澤晶久教授の話

2021年度に立ち上げた「JWP(実践ウェルビーイングプロジェクト)研究会」も3年目を迎えました。

2020年責任世代である私自身が、2050年責任世代である学生たちに、少しでも良い形でバトンを渡したい、そんな想いから辿り着いたのが「Well-Being」でした。なかでもメンバー自らが企画立案に携わり、一つの形に仕上げる。いわばプロジェクト・マネジメントの経験が今回の「ウェルビーイングフォーラム」でした。企画から運営まで、まさにプロジェクト・マネジメントをやり遂げてくれた学生たちの姿に、大きな成長を感じるとともに、頼もしさまで身に着けてくれました。

この企画にお力添えいただいた前野マドカ様に、この場を借りて心から感謝申し上げます。そして、参加してくれた学生・生徒の皆さんにとって、さらにウェルビーイングな時間が沢山訪れることを祈ります。

2024年2月8日

土着化したイベントを考えよう!「プロジェクト実践演習b」で無印良品の店舗とのイベントコラボ授業が実現しました。

「プロジェクト実践演習b」(担当:現代生活学科 須賀由紀子教授)の授業で、10月18日に株式会社良品計画(以下、良品計画)と本学による産学連携プロジェクトが開始されました。生活雑貨を幅広く扱う「無印良品」とコラボし、地域に密着したイベントを開催します。この日は無印良品とはどういったブランドか、地域に密着するとはどういうことかを学び、イベントに向けてのアイデア出しを行いました。

無印良品とはどんなブランド?

はじめにブロックマネージャーの吉原佑亮氏から、良品計画が展開する『無印良品』について説明がありました。
無印良品の商品は、学生たちも購入したことのある身近なブランドです。食品や衣料品、雑貨にとどまらず、家具や化粧品など幅広く展開しています。
無印良品は1980に創業。
「わけあって、安い。」をキャッチコピーに低価格で良質な商品を販売しています。素材の選択、工程の点検、包装の簡素化を「3つのわけ」として創業当時から大切にしています。
1983年に東京・青山の1号店から始まり、今では世界32カ国・地域に1000店舗以上を展開し、商品アイテムも衣服や生活雑貨、食品、そして家まで取り扱っています。

2021年から企業理念を再定義し、「感じの良い暮らしと社会」の実現を目指して社会課題にも取り組んでいます。
大きな使命は2つ。
1つは日常生活の基本商品を誠実な品質と論理的視点から開発をし、未利用資源の活用や無駄のなくす取り組みなど、商いを通じて社会に貢献すること。
2つ目は無印良品の店舗がコミュニティセンターの役割を持ち、地域の皆さまと課題や価値観を共有し、共に地域課題に取り組み、地域やまちづくりに貢献を図る「土着化」です。
例えば防災についてグッズを販売するだけではなく防災を学ぶイベントを開催するなど、各店舗が中心となり行っています。
今回の連携授業としては、この「土着化」が主に関わってきます。

イベント会場は大きい郊外型店舗

ここからは無印良品フォルテ八王子店の店長加納聖人氏から、店舗について紹介がありました。
今回学生たちが実際にイベントを行う店舗です。フォルテ八王子店は2023年6月にオープンしたばかりの新しい店。
売り場面積は600坪もある郊外型店舗です。
2030年までに、地域に土着化し「買い物の場だけでなく、人々の暮らしの場」となることを目標の1つに掲げています。

客層の傾向は、平日はご年配の方や主婦層、土日はファミリー層が多いとのこと。
全体平均でも男女ともに50歳以上のシニア層の割合が高い店舗です。
店舗は八王子駅からバスや車で20分ほどかかるため、立地的には「わざわざ行くところ」。つまりわざわざ行きたくなるお店にならなくてはいけません。
「まだまだ課題はありますが、まずは一人一人のお客様から信頼されるように頑張っています」と話されました。

土着化した店舗を目指して

続いて今回のコーディネーターを務める長谷川浩史氏が「土着化」について話されました。
長谷川氏は良品計画とともに「MUJIキャラバン」という土着化につながるプロジェクトで、日本一周の旅を果たした人物。各地の暮らしの中で自然と生まれたものづくりや食文化、取り組みを見つけ、現代の生活習慣に合わせて改良されているものを紹介してきました。
土着化とは「地域住民の方同士が交流しつながるプラットフォームとなることを目指し、地域課題を解決するきっかけを与えられる店舗であること」と言います。

土着化の一環として、店舗ではイベントワークショップも数多く実施してきました。
そのうちの1つが「つながる市」。今回、本学の学生たちが参加するイベントです。
つながる市とは全国の大型店を中心に不定期に開催している、地域の方々と一緒に作り運営するマーケットです。これまでのつながる市では、その地域の大学の学生が育てた野菜の販売や、小物作家による雑貨作成のワークショップなど、それぞれの特色を生かしたものが様々行われてきました。吉原氏も「イベントの内容も何が良い何がダメ、という定義は一切なく、地域の役に立つところに関わっていけたらと思っています」と話されました。

早速アイデア出し!どんなイベントにしよう?

学生たちは班に分かれアイディア出しを始めました。
模造紙を広げ、ポストイットにアイデアを書き貼り付けていきます。
「季節に合わせて考えよう」とクリスマスのオーナメント作りのワークショップ案が出たり、「八王子市の有名な店舗はどこがあるかな」と検索をしたり。「豊田ビールは?」という意見には「いい案だけど、車で来る人が多いし…」と懸念点も出ていました。
他にもターゲット層はどうするか、実践女子大学ならではのモノは何かあるか、価格帯は?など様々な意見が飛び交いました。八王子市にあまり縁がない学生はなかなかペンが進まず「まずは八王子市について知るところから」と検索し、アイディアのきっかけがないかを探し、吉原氏たちも各班を回ってアドバイスを下さいました。

時間はあっという間に過ぎ、授業の最後にどんな方向で進めていくか、各班から出た案を報告しました。
八王子発祥の東京こけしの絵付けワークショップを考えた班や、地元の有名パン屋とのコラボ、八王子付近の牧場で採れた牛乳でバター作りなどの案も。
イベントは12月16日(土)の開催予定です。学生たちはこれからイベントに向けてさらに案を練っていきます。

2024年2月13日

地域とつながる!「プロジェクト実践演習b」の授業で学生たちが考えたイベントを無印良品の店舗で開催しました。 

「プロジェクト実践演習b」(担当:現代生活学科 須賀由紀子教授)で、12月16日に株式会社良品計画(以下、無印良品)との産学連携プロジェクト『つながる市』を学生たちが企画しました。八王子市楢原町にある大型ショッピングモール『フォルテ八王子』の無印良品店内にて、学生たち自身でプロデュースした3つのワークショップを開催しました。

地域とひとをつなげよう

無印良品フォルテ八王子店の入り口付近に3つのブースが開設されました。
学生たち全員で決めたキャッチコピー「このマチ、もっとスキになる。」をテーマに、地域と人がつながる無印良品フォルテ八王子の『つながる市』をプロデュースしたのです。
ポスターチームは、無印良品っぽさもあるシンプルかつ実践女子らしさを取り入れたカラフルなポスターを作成。
このポスターを持ちながら、店舗に来店したお客様に、ワークショップに参加してもらえるよう声掛けをします。一体どんなイベントに仕上がったのでしょうか?

遊んで作って楽しい!くらしいろはカルタ

「くらしいろはカルタ」とは、家庭科の教科書を題材とし、学生が作成した、様々な世代をつなぐオリジナルカルタです。
カルタで遊んでもらうスペースと、お客様自身に八王子の良いところを書いていただくというワークショップを行いました。

カルタを企画した学生の声
「カルタのワークショップを企画したのは、実践女子らしさをどう出そうかと考えていたときに、須賀先生からアイディアをいただいたことです。お客様に一緒にカルタを作ってもらおうと決めて進めていきました。八王子は自然が多く、東京都なのにのんびりした時間が流れている、マイペースになれる街。そこから四季をイメージしたパネルを作成しました。難しかったのは、自分たちがやりたい企画を出せばいいだけじゃないということ。また、予測と実際では違うことも学びになりました。複数のことを考えて実行する経験は今後に活かせると思います」

ふぉるむがカワイイ東京こけしづくり

八王子市の特産である「東京こけし」作りを体験できるブースも。
胴体が丸い形状が特徴の東京こけしは、小さくころんとして可愛らしいフォルムです。

東京で唯一こけしをつくっている大蔵木工所が、こけしづくりを実演し、出来立てほやほやのこけしに無印良品のカラーペンを使って色付けの体験ができます。

大蔵木工所の大蔵氏
「普段は企業の実演会や外国人向けの絵付けなどを行っています。イベントにはたびたび出ますが、大学生からの声掛けはめったにない。よく『東京こけし』を探したねという気持ち。依頼があった時はいくらでもできるよと返事しました」

親子の絆を深めるお菓子の家づくり

無印良品の商品「ヘクセンハウス」を使って、お菓子の家づくりのワークショップも展開しました。
デコレーションに使うメレンゲなどは八王子のお店のお菓子を使用。お持ち帰り用に新聞紙でエコバックづくりなども行いました。

ヘクセンハウスワークショップを企画した学生の声
「当初は地元の個人店のパン屋と連携したパンの物販を考えたのですが、物販は発注の数量や配送の方法、衛生管理など考えることや準備が多く断念し、ヘクセンハウスに八王子のお店のお菓子をデコレーションすることで八王子とつなぐ内容にしました。結果的にお客様にとても楽しんでいただけてよかったです。目の前のことだけをやっていては駄目で、先を見据えて動くことは今後に活かせると思います。大変だったけど準備も含め楽しかったです」

今後のつながる市もより良いものに

今回は様々な企業の方のご協力により実現しました。
学生たちは企画立案からイベントの運営まで対応し、実地でマーケティングを学んだ貴重な経験となりました。

無印良品フォルテ八王子店 加納店長
「授業は週1回のため意思疎通が難しく、タイムラグが出てしまったこともありましたがよくやってくれたと思います。無印良品の商品を使ってというような注文も特にせず、自由にやってほしいと伝えていました。つながる市としての目的はバッチリ達成していると思います。東京こけしなどは学生たちも知らなかったと聞いて、今回一から八王子について調べてくれた外からの目線だからこその発見だったのかもしれないと感じました。今後ともなにか連携していければと思っています」

コーディネーター 長谷川氏
「学生がやりたいこととお店が求めること、そして来店するお客様が求めることの中から合致するものを見つけることが難しかった印象です。しかし、実践女子ならではのものができたと思いました。お菓子の家づくりは無印良品単体でもやっているワークショップですが、エコバッグづくりや八王子のお店のお菓子を取り入れるなどのアイディアで、コラボした意義が出たと感じています。都会にはなかなか民芸品が少ない中で、東京こけしを見つけたのもすごい。カルタもまさに実践女子らしい仕上がりになったと思っています。今後にも活かせるコラボになりました」

須賀先生からのメッセージ

企業の皆様は学生のやりたいことを好意的に受け止めてくださいました。学生たちも「八王子らしさ」を手探りで探しながら、企業側にもメリットのあるものを模索し、ブースに使う机や絵付けのペンなど無印良品のものを利用することを考案しました。暮らしに密着している無印良品の郊外型店舗でのイベント運営ということで、学生たちも意欲高く取り組むことができました。自分たちが企画したイベントを実際に店舗で運営させていただく経験は、意思疎通をしっかり行い、段取りをつけて進めることの大切さを学ぶ機会となったと思います。学生の思いを懐深く見守っていただいた関係者の皆様に深く感謝いたします。

2024年3月7日

ライブ配信アプリの女子大生利用者を増やすには?「ビジネスプランニング」でDeNA×クロス・マーケティンググループとのコラボ授業が行われました。

1年生対象の「ビジネスプランニング」(担当:生活科学部現代生活学科 上野亮助教)授業で、株式会社クロス・マーケティンググループ(以下、クロス・マーケティング)と株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)とのコラボ授業が行われました。テーマは「女子大生のPocochaの利用を増やすための施策の提案」です。学生たちはグループワークで企画を考え、1月10日にプレゼンテーションに臨みました。企業の方々もオンラインで参加してくださり、直接講評をいただきました。

女子大生がPocochaをたくさん使うようになるには?

『Pococha』はDeNAが運営するライブコミュニケーションアプリです。
誰でも「ライバー」と呼ばれる配信者になることができ、「リスナー」と呼ばれる視聴者とコメントなど双方向でコミュニケーションを取れることが特徴です(Pocochaの利用は18歳以上)。利用者の年齢層は幅広く、男性の割合が高め。ライバーは、ライバーとしてのランクや毎回の配信の盛り上がりに応じて、報酬を獲得することができます。無課金でも十分楽しめる仕組みで、初心者でも簡単に始められるアプリです。今回は、女子大生の利用者を増やす企画を考える課題が学生たちに出されました。

当日はクラスを半分に分け、2か所同時に発表が行われました。
それぞれに企業の方もオンラインで参加。各グループのプレゼンとクロス・マーケティングの小川氏と前口氏、DeNAの山本氏の講評をレポートします。

ライバーとリスナー どっちを増やす?

1班はライバーを増やす案として、若い女性も安心して参加できる「企業が全面サポートするファンミーティング」を提案しました。ファンミーティングは個人で行うにはハードルが高いもの。企業主催であればセキュリティも整い、女子大生が参加しやすいと考えました。
発表後の質疑応答では「実際に行うならどんなイベントを想定していますか」と問われ、学生は「有名になりたいという女子大生がファンミーティングすることでリスナーとの距離が近づけるイベントを想定しました」と回答しました。

2班はリスナーを増やすため、シニア配信者に注目。
一人暮らしの20代女性のうち8割が「食事は誰かと食べたい」と回答しているアンケート結果に着目しました。祖父母と孫をイメージした広告をSNSで流したり、シニア配信者をピックアップできるタブを作ったりという案を出しました。

「皆さんは実際にシニア世代の配信を見たいですか」と質問され、学生は「若い人は飽和状態なので年齢を重ねた人の話を聞きたい」と回答。また、「今皆さんがさみしいときにしていることと、配信を見ることはどう違いますか」といった質問には「第三者だからこそ話しやすいこともあると思うので、悩みを打ち明けられると思います」と回答しました。

Pocochaでデビューを目指せ

3班は、Pocochaは報酬システムが安定していることに注目しました。
ミス・コンテストを企画し、期間内の配信数やアイテム数でランク付けします。上位のライバーは事務所所属や、化粧品など賞品を用意します。

質疑応答では「実際にやってみたいですか?」と問われ、学生は「自宅で配信できるのでやってみたいと思って企画しました」と回答しました。また「化粧品はどんなものをもらったら嬉しいですか」と質問され「プチプラでもブランド品でも、お試しできるのは女子大生には嬉しいと思います」と答えていました。

4班は、リスナーを増やす案。
若い女性はダイエットに敏感です。DeNAの子会社であるDeSCヘルスケア株式会社が運営するダイエットアプリ『カラダモ』と連動し、ライバーと一緒に運動する配信を提案しました。

質疑応答で「どんな人の配信が見たい?」「どういった運動を想定している?」と質問され、「インフルエンサーの筋トレや、トレーナーの運動は参考になると思います」「自宅で行える運動。配信者から応援をもらえれば、双方向でコミュニケーションを取れるPocochaの強みを活かせると思います」と、学生たちは回答しました。

推し活したい女子大生を増やそう

5班は、Pocochaを初めて使う際の操作が分かりづらいと課題を挙げました。
そこでチュートリアルの充実を提案。ライバーがショッピングモールでコスメなどの実演販売することで身近に感じてもらえる案も考えました。

「網羅的にデータを見ていると思いました。ショッピングモールのユーザーをターゲットにするのは面白い視点」と感想をいただきました。

6班もリスナーを増やす方法を考えました。
サバイバルオーディションの開催を提案しました。オーディション参加者の配信を視聴することで投票できるシステムにし、ポイントがたまるとライバーと1対1で会話できる特典を考えました。

「ちゃんと女子大生の興味関心を引くだろうなと思いました」と講評があり、重ねて「その後Pocochaに定着させるには?」と質問されました。学生は「デビュー後もPocochaで配信することで、リスナーは推し活できると思います」と回答していました。

実体験をもとに具体的に企画を考えよう

全チームの発表後には総評をいただきました。
「女子大生ならではのアイデアもあり面白かったです。課題整理も丁寧でよく考えられていました。ただ、周りの友人や自分たちで取ったアンケートなど、もっと生の声を取り入れるとさらに良かった。企画を考えるときは自分にも覚えがあるな、という消費者としての体験が大切。実体験を反映できるよう考えてみてください」とコメントをいただきました。
また「皆さんが企画を考えるとき、イメージを持って作っているはずです。そのイメージを言語化し具体的な施策をより詰めていくと、聞いている人にも伝わっていきます」とアドバイスも。
最後は「素敵な企画を考えていただきありがとうございました」と学生たちの頑張りをねぎらわれました。

1年生でまだ企画立案も慣れていないなか、実際に企業が抱えている本物の課題に取り組んだ貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

 今回、この授業を履修し、実際にPBL(Project Based Learningのこと。課題解決型学習とも訳される、文部科学省が推進するアクティブラーニングの一種)にチャレンジした学生は学部1年生です。そのため、多くの学生にとっては、実際に社会で活躍する企業の皆様方を前に、自分たちの考えた内容を提案するのは、初めての挑戦であったと思います。本授業では、全14回の授業の前半の内に、グループワークを進める方法や様々な分析手法等、企業が提示する課題を取り組むに当たって必要なことについて、学修しています。その後、企業から出題頂いたテーマに取り組むことになります。
 今回の最終発表会では、これまでの学修内容を踏まえて、株式会社クロス・マーケティンググループ、株式会社ディー・エヌ・エーの両社から出題されたテーマに対し、学生ならではの視点や感性、考え方も取り入れながら、企画立案した内容を報告し、両社の皆様から、そのフィードバックを受けました。学生達が体験した企画立案、報告、フィードバックという、この一連の経験自体が大きな学修成果になったことと思います。今回、経験した内容は、実際に社会に出た後も活かせる内容です。学生達には、ぜひこの貴重な経験を活かした活躍をしてもらいたいと考えております。
 この度は、このような貴重な機会を頂きました、株式会社クロス・マーケティンググループ、株式会社ディー・エヌ・エーの皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。

2024年12月5日

「つながる市」で地域に土着化を目指そう!須賀ゼミで無印良品とイベントコラボのオリエンテーションが行われました。

現代生活学科 須賀由紀子教授のゼミで、10月22日に株式会社良品計画(以下、良品計画)との産学連携プロジェクトが開始しました。有名生活雑貨ブランド「無印良品」のフォルテ八王子店とコラボし、12月に地域に密着したイベントを開催します。良品計画が目指す「土着化」とはどういうことかオリエンテーションを受けたあと、さっそくイベントへ向けアイデア出しが行われました。

無印良品のものづくりへのこだわり

最初に良品計画の八王子ブロックマネージャーである藤崎央佳氏から無印良品について説明がありました。
無印良品は1980年創業。
「ワケあって安い」というコンセプトのもと港区青山に1号店を出すと、たちまち好評を得ます。いまでは世界に1200以上の店舗を構える大企業です。
無印良品の商品は、「これがいい」ではなく「これでいい」、をキャッチコピーにしています。「ただし、自信に満ちたこれでいい、です」と藤崎氏。
仕方なく選ぶのではなく、質の高さと安さを両立し、積極的に選んでもらえる商品づくりを目指しています。

無印良品のモノが手に取りやすい価格なのは「3つのわけ」があるから。
素材の選択、工程の点検、包装の簡略化を徹底しコストカット、生活の基本となる日用品のほか、家具や化粧品、家や宿泊施設まで幅広く展開しています。

地域のニーズに応える店舗

ここからはフォルテ八王子店の店長加納聖人氏が、無印良品の郊外店舗の在り方について話されました。
フォルテ八王子店はスーパーに併設された店舗で広さは約600坪。小学校の体育館より大きく「全速力で走ると疲れるくらい」と言います。
その店舗入り口とレジ横の休憩スペースが、今回のイベントスペースです。

2021年から、良品計画は「100年後のより良い未来の実現に向けて」をスローガンに掲げ、感じの良い暮らしと社会を実現するための取り組みを開始しました。
その使命は大きく2つあります。
ひとつは誰もが手に取りやすい商品販売。
もうひとつは地域へ良いインパクトを与えることです。
「全国津々浦々どこでも同じく必要なものが手に入ることも大切ですが、その地域に住んでいるお客様のニーズに応えてサービスや商品を提供することを大事にしています」と加納氏。
そのためには買い物だけでなく、店舗が地域に巻き込まれ人々の暮らしの場になることが大切なのです。

つながる市を通じて地域を知る

続いて、MUJIキャラバンで日本中のモノ・食づくりの産地を巡った長谷川浩史氏が、無印良品の目指す「土着化」について説明されました。
土着化とは「その土地になくてはならない存在になること」と言います。
店舗と人が信頼され、その土地の生活になじむことが土着化です。土着化で大切なのが、その土地にしかないものや歴史を伝えられる存在になること。
新しいものをつくるより、元々ある「役に立つ」ものを再発見することを重要視しています。

地域の役に立ち愛される店舗になること、そして地域のものや歴史を再発見すること。
この2つの考えから行われているイベントが「つながる市」です。
つながる市のコンセプトは「ヒトとつながる、マチをつなげる」。地域の特産品を購入したり、ワークショップを通して歴史や文化を学んだりできるイベントです。
「地元にこんなモノ・コト・ヒトがあったんだ、と気付いてもらえるきっかけを作ることを目指しています」と長谷川氏は話しました。

この地域にしかないモノや人は?

学生たちが参加するつながる市の開催時期は12月中旬。
そこでテーマは「クリスマス×つながる市」。
学生は3班に分かれ、それぞれ店舗やワークショップのブースを出します。どんなお店とコラボするか、どう宣伝するかも学生たちが考えていきます。
とはいえあと2ヶ月で準備するのはなかなか大変。

そこで長谷川氏からヒントとしていくつかお店の紹介がありました。
多摩市唯一のワイナリーや、都市型農業を実践しているハチミツ農家などに学生たちも興味津々。
「皆さんが知らない活動をしている人はたくさんいます」と長谷川氏。「ぜひその地域らしいものを見つけてください」と学生たちに期待をされました。

どんなイベントにする?

質疑応答では学生から「つながる市に良い企画を考えるコツは?」という質問が。
長谷川氏は「SNSなどを通して、その地域を強調している投稿を探しましょう。そういった投稿のなかから、飲食店やアーティストなどを絞り込んでいく方法です」と紹介。
また、「フォルテ八王子店は複合施設ですが、飲食店が少ない。コーヒーやドーナツなど小腹を満たせるちょっとした食べ物は需要があるかもしれません」と話しました。

そこから授業の終わりまでさっそくグループごとでワークを行いました。
模造紙にアイデアを書いたポストイットを貼って、相談し合います。
「クリスマスだからケーキ屋さんとか」「クリスマスカードのワークショップは?」などテーマについて考えたり、八王子市や日野市にある工場や農場から調べたり。
イベントに向けてさらに案を練っていく予定です。

また、11月19日には、実際の店舗に学生たちが見学に行き、店長の加納氏から店舗の特徴や商品のこだわりを伺いました。
衣服、食品、化粧品、雑貨それぞれの説明を受けた後、学生たちは当日のレイアウトや導線、販売形式などを確認。
残り1ヶ月をきっている状況ですが、学生たちは主体的に準備を進めています。

つながる市
2024年12月14日(土)~15日(日)開催
@無印良品 フォルテ八王子
〒1930803 東京都八王子市楢原町1463ー1 フォルテ八王子1F
https://www.muji.com/jp/ja/shop/046606/articles/events-and-areainfo/events/1561995
※実践女子大学の企画は14日(土)のみ

担当教員よりメッセージ

誰もが知っていて、とても身近なところにある無印良品様の店舗でのイベントとあって、学生たちは精力的に取り組んでいます。学科で学んでいる「環境配慮社会づくり」と、地域の魅力的なヒト・モノ・コトを活かす「地域づくり」のテーマを活かし、「地域を大事に思う人をつなぐ」というコンセプトで企画をすすめています。素朴ながらも、現代の若い女性たちの思いやセンスに気づいていただけるような場になるとよいなと思っています。イベント実施日が決まっているので、それに向けての段取りと、チーム内のコミュニケーションもとても大事です。この「実践」を通して、学生たちがたくさんの学びを得て、また、店舗にいらっしゃる皆様にも喜んでいただけるものになればと願っています。

2024年12月13日

女性がたのしく活躍できる社会をめざそう!サニーサイドアップグループの次原悦子氏をお招きして特別講義が行われました。 

10月21日に「メディアプロデュース論」(担当:生活科学部現代生活学科 行実洋一教授)と「女性社会論b」の合同授業が行われました。株式会社サニーサイドアップグループの代表取締役社長である次原悦子氏をお迎えしての特別講義です。高校生のときから働いて今に至る経緯、PRという仕事のたのしさ、そして女性がもっと活躍していくためにはなど多岐に渡る話題を、ユーモアを交えてお話くださいました。

女子高生で社長に!

PR会社で働いていた母親が独立し、仕事を手伝うよう誘われたことが始まりです。17歳でサニーサイドアップグループの前身となる会社を立ち上げることになり、当時高校生だった次原氏が社長に就任。
「なので、女性起業家!と紹介されることもあるのですが、自分から始めたのとは少し違うんです」と経緯を話されました。
周りの友人たちが大学生活を楽しんでいるのを見て、うらやましいなと思うこともあったそう。
とはいえ「仕事をすることがたのしくて仕方なかった」と言います。「どんな小さな仕事でも世の中に参画しているということが嬉しかったんです」と語りました。

会社は少しずつ大きくなっていき、2008年に上場。今ではグループ全体で450名のメンバーを抱える企業に。
2023年度は過去最高益を記録しています。掲げるスローガンは「たのしいさわぎをおこしたい」。PRの力で人の心を動かし、世の中の空気を変えることで、明るい明日を創り出したいという想いがこめられています。

PR・コミュニケーションの力で人の心を動かす

「私たちはさまざまなニュースの裏にいます」と次原氏。
「ひとりでも多くの生活者にそのモノやコトを知ってもらい、その上でアクションを起こしてもらうことで、世の中の空気を変えること」がPR・コミュニケーションの力だと思います。知ったことにより、欲しい、食べたい、やってみたいと思ってもらうことが大事なのです。
「伝えるだけじゃなく、その人をどう動かすのかを考える仕事」と話しました。

「広告とPRの違いは、伝達の方法」だと言います。
広告は自分で自分たちの商品やサービスをアピールすること。PRは誰か他の人に良さを伝えてもらうことです。
例えばSNSのインフルエンサーや、テレビ番組の特集など、企業が直接働きかけるのではなく、第三者目線で情報を拡散してもらう方法です。
「信頼できる誰かに言われたら信憑性があると感じますよね。情報だけでは人は動かない時代。自ら情報を拡散したくなるようなストーリーを作ることが大事になっています」と語りました。

「PRはアイデア勝負で世の中を大きく変える可能性を持っている」と次原氏。
立ちあげたばかりの会社が小さかったときは、予算がないなかアイデアを出していたと言います。
現在、大企業を相手にするようになってからも、この考えを念頭に仕事をしていると話しました。

女性が活躍することで経済が回る

現在、次原氏は日本経済団体連合会(経団連)のダイバーシティ推進委員会委員長を務められています。
日本企業全体の女性社長の割合は8.3%。上場企業だけでみると0.8%しかいません。
次原氏は「そのうちの一人というのは光栄なことでもあるけれど、海外からみるとジョークを越えてホラーと言われます」とユーモアを交えて表現されました。

次原氏は、購買を決定する割合は女性が7割と言われていることを紹介し、女性が活躍することで経済が動くことを強調されました。
経団連は、2030年までに日本企業の役員に占める女性比率を30%以上にすることを目標に掲げています。
次原氏は「イギリスの大学教授に、女性役員30%をクリアしている会社は確実に成長していると言われました。感情だけが理由ではない、データサイエンスなんだよ、と」と語りました。

働く女性としての「失敗」

上場企業の女性社長として活躍する次原氏は、周りの女性社員を勇気づけるためにも、熱心に仕事に励んでいたと語ります。
しかし「大きな失敗」も経験されました。
2人の子どもを持つ次原氏ですが、一人目の出産は当日まで出社し働いて、2日後には病室でミーティング、その2週間後には完全復帰。海外出張に行ったりと慌ただしく過ごしていたと言います。

妊娠や出産を経ても仕事と両立できることをと示したかったからですが、女性社員は「あなたのようになりたくない」と会社を離れてしまいました。
大変ショックを覚えたと話します。
「頑張っているところを見せるのではなく、それぞれ違うライフステージにいる女性誰もが、働きやすい環境を作らないとと思い直しました」そこでさまざまな福利厚生や制度を整備。
現在は女性が働きやすい会社として世界的にも評価が広まっています。

熱意を持ってアクションを起こそう

講義の最後には質疑応答が行われました。
「結婚した際に苗字を変えることに疑問を感じましたか」という質問には「当時は抵抗なかったのですが、会社が大きくなるにつれビジネスの名前と本名が違うとで不便なことが多かったのは事実。」と自身の経験を話され、選択的夫婦別姓への議論が進むことを望まれました。
また「若い女性であるがゆえに、時に正当に評価されないことがあるかもしれませんが、ビジネスの場でどのように信頼を得てきましたか」という質問には、「人は頼られることが嬉しい。若い子が熱意をもってアクションを起こす姿を見ると応援したくなるもの。みんなも思いがあれば、アクションを起こしてみてください。きっと誠意を持って力になってくれる大人たちとつながれると思います」とエールを送りました。

担当教員のメッセージ

以前からテレビや新聞・雑誌といったメディア業界でしばしば耳にし、話題となってきた会社が「サニーサイドアップグループ」です。いわゆる大手広告代理店とはひと味違った、「クレバー」なPR・コミュニケーション手法を展開する会社として、かなりの注目を集めてきました。
今回、その会社のトップのお話をお聞きして、その訳が分かり納得しました。
卓越した女性経営者ならではの視点や、真摯でユニークな物事への取り組み、そして人間味ある経営方針などが、そうしたオリジナルな良さを生み出していたのだと改めて感じさせられました。
学生の皆さんからすれば、次原社長は遙か遠い星かもしれませんが、将来を照らす希望の星だと思って、多くを学んで欲しい講演でした。