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2023年1月27日

実践女子学園高等学校でサントリーの輿石優子氏による講演を実施しました

12月20日(火)に、サントリーホールディングスのサステナビリティ推進部の輿石優子氏による高校生全校生徒に向けた講演が行われました。「身近な事例を通してSDGsと向き合う」と題し、サントリーのペットボトルリサイクルの取り組みを中心に話されました。生徒たちは第一線で活躍する女性のお話を聞く貴重な機会となり、「ペットボトルは資源」という新しい考えを学びました。

サステナビリティとは?

今、世界的に注目されているSDGsとは2015年に国連で採択された17の目標のこと。世界すべての人が日本の水準の生活をした場合、地球は2.8個必要であるという計算があります。輿石氏はSDGsの概念の表す「ウェディングケーキモデル」を紹介しました。一番上の小さな層が経済、二段目が社会、一番下の大きな層は自然や環境を表します。「社会や経済は、自然があってこそ」と輿石氏は語ります。

サントリーの「天然水」は、南アルプスや阿蘇などに水源をもち、地域それぞれの水を使っています。サントリーでは、「天然水」を含むさまざまな製品に使う水を守るため、20年前から良質な地下水を育む森を守る活動を、全国21カ所の「サントリー 天然水の森」で続けています。持続可能な世界を守る取り組みのひとつです。

受け継がれる「やってみなはれ」精神!サントリーってどんな会社?

清涼飲料水で有名なサントリーは、生徒たちにも身近な企業です。事業の55%は、お茶やコーヒー飲料から炭酸やミネラルウォーターなどの清涼飲料水を取り扱っています。残りの3割はお酒。さらには健康食品や外食事業も手掛けています。珍しいところでは自然界には存在しない「ブルーローズ」の研究・開発など、飲み物に限らず幅広い事業を展開しています。

サントリーは1899年創業。豊かな生活文化の創造に向けて、創業者鳥井信治郎が、洋酒の製造販売をしたことから生まれた会社です。鳥井の有名な口癖が「やってみなはれ」。現状に満足せず新しいことに取り組み続けるチャレンジ精神は、サントリーにいまも受け継がれています。

輿石氏は2000年にサントリーに入社。大学で日本美術史を専攻していた輿石氏は、日本美術を中心に収蔵している「サントリー美術館」の存在を知ります。サントリーが文化芸術に造形が深い企業ということに興味を持ち、さらに「やってみなはれ」精神を知り「入ったら自分もいろんなことができるかもと思い入社しました」と話しました。

身近なペットボトルについて考えてみよう

輿石氏から「ペットボトルって脱炭素のためにも良くないんじゃないかと思っている人はどれくらいいますか?」と生徒たちに問いかけられると、生徒たちから複数手が上がりました。プラスチックの原料は石油で、一言でプラスチックと言っても、構成する化学成分の違いにより性質が異なります。そのなかでPETと呼ばれるものがペットボトルになります。

次に「ペットボトルを見て、何か気付くことはありませんか?」と輿石氏。日本のペットボトルは、無色透明で本体には印刷がされていません。これは、リサイクルしやすいよう飲料メーカーの間で自主基準を作り守っているためです。日本のペットボトルは96.7%という高い回収率を誇ります。さらにリサイクル率は88.5%と、欧米に比べると倍近くリサイクルしています。(2020年実績)

使用済みペットボトルからはペットボトルの他に、食品トレーや繊維など、様々なものに生まれ変わりますが、多くの場合、その後は同じものに生まれ変わりません。しかしながら、ペットボトルは何度も繰り返しペットボトルになる「水平リサイクル」が可能のため、新しい資源を使わずに済むという利点があります。「使用済みペットボトルからペットボトルに生まれ変わることを「ボトルtoボトル」リサイクルといいます。皆さんにも、ボトルは資源と覚えていただければと思います」と輿石氏は語りました。

ペットボトルは資源!ゴミにしないためには?

サントリーでは「プラスチック基本方針」を定め、2030年までに全世界のサントリーグループで出す飲料のペットボトルのすべてをリサイクルボトルか、植物由来資源のボトルに置き換えるという目標を掲げています。2021年度では、流通している37%にリサイクルボトルが使用されています。

ペットボトルを捨てる際はラベルとキャップを「はずす」、中を「すすぐ」、「つぶす」が大事と生徒たちに語り掛けました。特に「はずす」は、キャップやラベルはPETではないため外す必要があること、外すことで輸送の積載量が変わることが理由に挙げられました。「ぜひ皆さんもご協力お願いします」と話し、講演は終了しました。

世界で活躍する女性になるために

最後に生徒たちから質疑応答がありました。高校3年生の生徒は「世界で活躍し貢献する女性になるために心掛けるべきことはなんですか」という質問。輿石氏は「物事の裏側になにがあるか、原因や理由を理解しようとすること。相手の立場に立って考えることで自分の考えも深まります」と回答されました。

「伊右衛門のラベルの裏におみくじがありますが、大吉しかないですか?」という質問も。輿石氏からは「大吉以外にもあると思います。おみくじもラベルをはがしてもらう取り組みの一つなので、見てもらえてとても嬉しいです」と回答がありました。

最後に生徒代表から「サントリーが生活文化や世界に貢献している企業であることを知り、ペットボトルが資源という考えを学べました」と講演の感想を述べました。企業の第一線で活躍する女性の貴重なお話を聞く機会となり、生徒たちにも刺激になった講演でした。

2022年12月8日

食生活科学科の授業でマルハニチロの小梶聡氏が「海といのちの未来をつくる」ための課題について講義を行いました。

食生活科学科「フードビジネス研究」(担当:松岡准教授)の授業で、11月8日(火)にマルハニチロ株式会社常務の小梶聡氏による講義が行われました。小梶氏はマルハとニチロの経営統合時の苦労や事業展開について語られました。また、これからの社会におけるSDGsを含めた新しい課題について、分かりやすく講義を行ってくださいました。

100年以上の歴史のある漁業会社「マルハ」と「ニチロ」

小梶氏は1985年に雪印乳業に就職。冷凍食品部門に携わり、2003年にニチロの冷凍食品の子会社に入社しました。2007年10月にマルハとニチロが経営統合し、統合時のさまざまな問題にも直面。2019年に開発部長に就任し、現在は常務を勤めています。「就職に向かって勉強されているなかで、ひとつの企業のモデルケースとして、この講義が企業を選ぶときや社会に出てからの参考になればと思います」と、講義が始まりました。

マルハニチロはもともと、マルハとニチロという別の漁業会社でした。マルハは1880年に鮮魚の仲買や運搬業を行う企業としてスタートし、戦後は大洋漁業という社名で活動していました。日本初の発動機付運搬船を導入し大きな会社に育て上げました。ニチロは1906年に誕生。サケ・マスの出漁や缶詰生産に着手し、1921年より日魯漁業の社名で日本のタンパク不足を補ってきました。マルハは主に南氷洋で、ニチロは北洋で操業していましたが、1977年に200海里漁業規制がかかり遠洋漁業から撤退せざるを得なくなります。そこでマルハは水産商事に、ニチロは食品加工にビジネスモデルを転換。企業理念は変えずに、それぞれの強みを生かしたモデルへ転換したことで、100年を超す歴史をもつ大企業に成長していきました。

大きな企業が統合する難しさ

2つの企業は2006年に経営統合をする方向へ動き出します。少子高齢化による食文化の変化や、原料価格の高騰など水産業界を取り巻く環境は厳しさを増しており、将来を見据えた戦略として統合に踏み切ったのです。

そのころマルハは業界1位、ニチロは業界3位という大企業。大きな会社が一緒になるにはなかなか大変です。「統合するにはどんな影響があるでしょうか」小梶氏は学生たちに問いかけ、考える時間を与えました。1つの班からは「従業員の数や役員の人事」という意見が。確かに人事や労務制度の統合は難しい問題です。給与や昇格などの評価基準、福利厚生はそれぞれの会社で規定があり、統合にあたり社員の納得いくようにしないとモチベーションに関わります。だからといって手厚い規定ばかり取り入れてはコスト増につながってしまいます。「皆さんも企業を選ぶときに、育休や子育て制度など福利厚生も注目すると思いますが、やはりそこが課題でした」と小梶氏は言います。

この他にもシステム統合やグループ企業の整理など多くの課題があり、ひとつひとつを考えていく必要がありました。ただ、重複している事業を再編し統合を行うことで、コストダウンや財務基盤の安定化が行われ、2014年にはグループ会社制からひとつの株式会社へ統合。さらに力のある大きな企業へとなったのです。

クロマグロ養殖で大きな成果

水産事業は環境問題と密接にかかわっています。水産資源は、世界の国々の6割はぎりぎりまで漁獲し3割は獲りすぎていると言われています。これを受け、世界的にMSC(Marine Stewardship Council)認証やASC(Aquaculture Stewardship Council)認証といった、持続可能な漁業であることを承認する水産エコラベルを付ける製品が急増。世界的なスーパーや飲食店もMSCやASCでの製品の取り扱うことを明言し始めました。

世界的に水産物の需要は高まっており、世界の生産量は2015年で2億トン。しかし漁業としては1億トンほどが限界で、半数は養殖です。漁業だけでは供給が追い付かないため、マルハニチロでは養殖にも力を入れています。そのひとつがクロマグロの完全養殖です。マグロは繊細な魚で養殖が難しいと言われていましたが、長年研究を重ねてきました。その結果、2010年には人口ふ化で生まれた親魚の産卵に成功し、民間企業では初めてクロマグロの完全養殖に成功しました。現在ではブリやカンパチの養殖や、人工肉のように魚の細胞培養にも取り組んでいます。

これからの展望と社会とのかかわり

「いまは企業経営のなかで環境価値や社会貢献を求められる時代」と小梶氏は言います。背景のひとつにはSDGsがあり、企業の成長だけでなく、サステナビリティを重視することで企業全体の価値を高めることが求められています。「企業がSDGsに取り組む理由は何があるでしょうか」と小梶氏は再度問いかけました。学生からは「取り組まないと企業の印象がよくない」という回答が。ひとつはその通りで、SDGsに取り組んでいる企業は、信用できる会社というイメージを持たれます。

また、企業がSDGsに取り組むことは多様性を認めるということでもあり、労働者が働くモチベーションにもつながります。「皆さんが企業を選ぶときにも、企業がどう考えているのかを知ることは大事です。対外的に発表されているかどうかも確認すると良い」と小梶氏。自分が働いている会社が誇れるには、ネームバリューだけではなく社会に対しても価値があることが大切です。

講義後、学生からの質疑応答。学生からは「日本の魚離れの問題があり、いま日本で魚を売るのは難しいのか」と質問がありました。小梶氏は「確かに日本の消費は落ちています。消費を上げるために簡単に調理できるものや、保存がきくものの開発にも取り組んでいます。また、どうしても肉よりも価格が高いため、もっと魚の価値を伝えると共に、安定供給できることを目指す必要があります」と回答。魚と海、ひいては学生たちの将来について考える密度の高い講義となりました。

最後に松岡准教授から、実際に企業経営をされている方から貴重なお話を伺えたことを将来役に立てて欲しい、という言葉があり、授業が終了しました。

2022年11月8日

社会連携授業「JAL社員と考えるSDGs」3チームの最終発表が行われました!

日本航空株式会社産学連携部の方々をお招きし、「SDGsの観点から考える新しい機内食サービス」を考え提案する全3回の授業が、いよいよ最終回を迎えました。これまでチームで取り組んできたグループワークを企画にまとめ、JAL社員の皆様にプレゼンテーションしフィードバックを頂くという貴重な場。3チームはどんな企画を提案したのでしょうか? 緊張しながらのプレゼンテーション、Q&A、JAL社員の方々からのフィードバックで盛り上がる、貴重なまとめの授業となりました。

食品ロスをなくす機内食を提案(チーム3年生)

最初のプレゼンは、チーム3年生でした。
食品ロスを減らすことを目的とし、国際線のビジネスクラス以上をターゲットとした絞り込んだ提案内容に、教室に集まった全員が引き込まれました。

現在、日本航空株式会社の中でどれだけの食品ロスが生まれているのか、JALグループ国際線輸送実績のデータをわかりやすく提示した上で、
①完全に事前予約制にする、
②食材の地産地消、郷土料理提供、
③機内食を体験できるレストラン
という3つの企画が示されました。

③のレストランには機内食で余った食材を利用し、コロナ禍でも飛行機の旅を食で楽しむことができ、それは将来の飛行機の利用につながるというシナジーが盛り込まれていました。

発表後、他チームの学生からは、「完全予約制のフローが具体的でわかりやすい」という感想が。
またJAL社員からのフィードバックでは、「レストランの場所はどこを想定しているかなど、企画を具体化することでよりいろいろなものが見えてくる」おもしろさを語っていただきました。

各都道府県の食材を活用しよう!~目指せ地産地消~(チームAの4乗)

続いて発表したのは、2年生のチームAの4乗。
JALグループの最重要課題として掲げられている環境、人、地域社会に注目し、その具体的な解決策として規格外野菜の活用と食品廃棄の削減(余った機内食の有効活用)を取り上げました。

それをまとめる形で提案された企画は、47都道府県の特産品を使用したメニューです。北海道、関西、九州、海外など、テーマにあわせて具体的なメニューがおいしそうなイラストとともに視覚化され、他チームの学生からは「食べてみたい」という率直な感想が寄せられました。企画の最後には、現場のスタッフのモチベーションとなる「ジャパンSDGsアワード獲得」という具体的な目標も。
フィードバックでは、日本の課題解決につなげたいという意志を乗客に伝えることが必要であること、パンフレットなどでストーリーを語る方法についてご紹介いただきました。

『目指せ!世界一のサステナブル』現代~将来のニーズに合わせた機内食の提案(チームにんじん)

最後は1年生と3年生混合のチームにんじんが登壇。
提案の目標を「JALグループの ESG 経営 の取り組みをもとに、廃棄量削減、地域活性によりSDGs 達成に貢献する」と掲げ、食品ロスとプラスチックごみ削減を具体的な目標に定めました。

JALの機内食に対する乗客の口コミや現在提供中のメニューを分析した上で提案したのは、
①完全予約制、
②1プレート和食、
③容器をBPM(竹パルプモールド容器)にする
という3つの企画でした。

特に機内食のチョイスを入力しないとチケット予約ができない新しい仕組みや、食材調達で『JALふるさとプロジェクト』と協業する点には、JAL社員の皆様も関心を示していました。
フィードバックでは、近年外国人に日本のお弁当が注目されていることや、過去の機内食で外国人におふくろの味が人気だった事例が紹介され、1プレート和食への期待が膨らみました。

チームのがんばりを称え、JALの皆様から表彰状が進呈されました

3チームの提案が無事終わり、塩崎さんより「みなさん、ここまでがんばってくれて本当に嬉しいです」という心のこもった講評が。
「この嬉しい気持ちを示すために、みなさんに表彰状をお贈りしたいと思います」という言葉に、学生達に驚きの表情が浮かびました。
各チームの賞はこちらです。

3年生チーム:グッドチャレンジ賞
「難しい課題に、果敢に挑戦したことを称えます」

1年生チーム:JAL想い賞
「JALによりよい会社になってほしいという気持ちが伝わりました」

チームにんじん:サステナビリティ賞
「未来志向で持続可能な機内食という企画を強く感じました」

チームごとに表彰を行い、賞状とプレゼントを手渡すひとときに学生達の笑顔がこぼれました。
こうしたあたたかいねぎらいの前には、緊張したプレゼンテーションや大変だった準備も昇華されそうです。
たくさんの情報を集め、それを吟味し、課題を解決する企画にまとめあげ、クライアントの前で発表したこの授業は、これから社会で活躍する際に役立つ大切な経験になったことでしょう。

2022年10月4日

実践女子学園高等学校で印刷博物館の資料から現代の課題を考える特別授業「JJスコレー」が行われました

夏休み期間中の8月22日(月)、23日(火)、24日(水)の3日間、実践女子学園高等学校で「JJスコレー」が行われました。有志の生徒たちが参加し、印刷博物館を見学して、持続可能な社会につながる課題を見つけるという特別授業です。3日目には校長先生や印刷博物館の学芸員の方を前に、見つけた課題と解決策について発表を行いました。

「JJスコレー」とはどんな取り組み?

「JJスコレー」とは、普段の授業では学べない体験を通して有志の生徒が課題にチャレンジする特別セッションプログラムです。3回目となる今回のテーマは「印刷博物館の所蔵品からSDGsについて考えよう!」です。課題は2つで、1つは「むかしの教科書から現代社会の課題を考えてみよう」、もう1つが「100年後まで残したい印刷博物館所蔵資料は?」です。

初日は印刷博物館へ。実際の博物館の取り組みや所蔵品を見学し、印刷の歴史や日本文化を学びます。グーテンベルクの活版印刷機、江戸時代中期の医学書『解体新書』や、マルチン・ルターによる『ドイツ語訳聖書』など貴重な現物を見学。学芸員の方による展示案内を聞き、印刷が歴史にどうインパクトを与えたかを学びます。その他、貴重な博物館の裏側も見せていただき知見を深めました。

明治の教科書から浮かび上がる現代の課題とは?

2日目は学校でリサーチ。2班に分かれ、明治時代の教科書『修身教本』(現代の小学校の教科書に当たる)に書かれた考えの中から、現代につながる課題やSDGsのゴールに紐づけて考えます。現代の教科書や道徳との違いや、同じところを比較し、未来をどう作っていきたいかを考えていきます。

課題を考える上で気を付けたいのが、当時と現代で目指す理想像の違いです。明治新政府はなってほしい「日本国民」像であり、現代はグローバルで持続可能な「地球市民」像という違いを意識しなくてはいけません。視点を変えて考えることが必要になります。3日目は印刷博物館の方々を前にプレゼンテーション。直前まで資料作りをし、パワーポイントで発表を行いました。

紙に対する問題意識の違い

1つめのチームは「紙」に対する意識の違いに着目しました。修身3年生の教本に、紙を大切にするようにという記述があります。現在も紙を大事にする考えは根付いていますが、当時は物を大事にするべきという道徳的観点からの記述でした。現代は地球温暖化から資源を守るという点が重視されている違いがあります。

紙の問題は、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」につながり、違法な伐採や過剰包装などの課題が挙げられます。これらを解決するには、適切な紙の量を使い電子化を推進したり、廃棄される食材から紙を作るフードロスペーパーを利用したりするなど様々な観点から取り組む必要があるとまとめました。

教育の観点から平等な社会の実現を目指す

2番目のチームは、教育が日本においてどう広まっていったかを調べ、SDGsの目標4番「質の高い教育をみんなに」を考えました。明治時代の小学校の就学率は、男性は約80%、女性は約30%でした。また、高校への進学率は現在の半分以下、大学へは1%しかいませんでした。明治の就業割合は林業や農業が多く高学歴は不要と考えられ、優秀かつ裕福な家庭の子しか学べませんでした。また、女性も学業よりも家業を助けることが重視されていました。

就学率は現代日本では改善されていますが、別の教育の課題として「ヤングケアラー」があります。一人親家庭が増加し頼れる身内がおらず、睡眠時間の低下や学習時間の減少している子どもが増えています。相談窓口も分かりづらく、支援を受けづらい現実があります。1988年からケアラーズセンターを設立し、ヤングケアラーの支援をしているイギリスを例にとり、相談窓口の普及や各家庭の状況把握に努めるべきであると結びました。

学芸員の方も感嘆

発表後に印刷博物館の学芸員・部長の中西保仁氏と学芸員の式洋子氏から講評をいただきました。中西氏は「短い時間でこんなに調べてくれたことに驚きました」と感心されました。紙の問題について「印刷会社としてとても意識するところです」と受け止め、「紙を大事にするという常識は変わっていませんが、しなければいけない理由が変化したことに注目したことが素晴らしい」と続けました。

式氏も教育問題の発表に対し「グラフや数字で表していて、説得力が増していた」と感嘆しました。ヤングケアラー支援の先駆者がイギリスであったことを初めて知ったと「皆が知らない問題や事実に注目し伝えようとすることが素晴らしい」との言葉をいただきました。湯浅茂雄校長も、「大学生でも難しい課題に臨み、現代と比べてなにが違うか、今にどうつながるかを考えた経験は皆さんにも財産になったのでは」と結びました。

100年後まで残したい印刷博物館の資料は?

最後に生徒それぞれの印象に残った資料や、後世に残したい資料を発表しました。レンズを覗くことで立体的に見える、江戸時代のVR「眼鏡絵」や、豪華な挿絵の嵯峨本『伊勢物語』、当時の地震観が分かる「鯰絵」などが挙げられました。葛飾北斎の浮世絵を上げた生徒は、「北斎だけでなく大勢の摺師や彫師が力を尽くしたことを実感できた」と言います。式氏は生徒たちが選んだ資料や理由について「資料の重要さだけでなく、当時の人々の労力や熱量を重視しているのだなと感じました」と述べました。

これからの社会を考える力を養う「スコレー」

最後に渡辺大輔教諭から、「スコレー(skhole)」とは、ギリシャ語で「余暇」という意味であるという話が出ました。中世では余暇に「学び浸れる」時間があることが一番の贅沢であり、そこから「スクール」の語源となったと言います。「スコレー」は正解がないことを扱い、考える力をつける貴重な機会です。生徒たちはこれからの時代を生きるための良い学びと経験を得ることができました。

2022年9月29日

実践女子大学の渋谷キャンパスで「学びのフェス」が開催され学生も子どもたちと交流しました!

夏休み期間中である8月23日(火)に、実践女子大学渋谷キャンパスで毎日新聞社主催の「学びのフェス」が開催されました。小学生たちが訪れ、さまざまな企業や団体の出張授業を体験するイベントです。実践女子大学からも出張授業やコーナーが出て、学生たちも授業の手伝いや子どもたちとの交流を行いました。

学びのフェスとはどんなイベント?

「学びのフェス」とは毎日新聞社等が主催する、さまざまな企業やNPOの小学生向けの出前授業を一堂に集めたイベントです。このイベントは2014年から毎年夏休みと春休みに行われています。環境や食、労働などをテーマに各企業や団体が趣向を凝らした授業を用意し、小学生たちが社会学習できる貴重な体験イベント。今回は実践女子大学の渋谷キャンパスを会場に行われました。普段は女子大生だけの空間に、子どもたちの楽しそうな声が響きました。

これはゲーム?アート?デザインのひみつを知ろう!

実践女子大学の研究室も小学生たちを相手に出張授業を行いました。文学部・美学美術史学科の下山肇教授による授業は、デザインについての授業です。始まったのは、色の話。色には2種類あることを学びます。絵の具のような「色の三原色」青緑(C:シアン)、赤紫(M:マゼンタ)、黄(Y:イエロー)と、パソコンのモニターなどの「光の三原色」赤(R:レッド)・緑(G:グリーン)・青(B:ブルー)です。

この三原色を使ったボードゲームを遊んでいきます。隣の人と順番に、マスに色のコマをはめて、オセロの要領で並べていきます。シアンとイエローでコマを挟むと、挟まれたコマは2つを混ぜた色である黄緑に変化。そうして色のピースを並べていきます。16コマ全部埋まったボードを見てみると、いつの間にか「アート」のパーツが出来上がっていました。みんなで遊んだボードは組み合わせて、大学の玄関の柱に貼り付けられ、お客様をおもてなしする壁面アートとして展示されます。一人で作ったものは小さくとも、全員で少しずつ協力しひとつの作品を作る「共創」。これからの時代を生きる上で大事な考えを学びました。

カルタで遊んで楽しく学ぼう

現代生活学科の須賀ゼミの学生が開いていたのはカルタのワークショップ。学生たちが、中学校の家庭科教科書を元に作成した「くらしいろはカルタ」を使います。カルタは、百人一首のように上の句と下の句に分かれ、それぞれ同じイラストが描かれています。子どもたちは、それを神経衰弱のように絵柄を合わせて札を取っていきます。

札は「リデュースすれば」「ゴミが減る」や「にんじん、トマト」「皮膚を守るカロテン」など54ペアあり、SDGsや栄養、生活文化などについて遊びながら楽しく学べます。中には「カードには便利と危険」「2つの顔を持っている」など現代の消費生活に合わせた知識も。子どもたちは真剣な表情で札を覚え、取れると「やったー」と拍手して喜んでいました。

遊んだあとはSDGsの目標である2030年にどのような街にしたいか、オリジナルのカルタ作り体験も。須賀ゼミでは「多世代交流かるた」を制作しており、高齢者や子どもたちとの交流を通して素直な思いをそのままカルタにする取り組みを行っています。学生たちは6月頃から就活の合間を縫い、このイベントに向け準備していました。学生の一人は「対面で子どもたちとカルタをするのは初めて。真剣にやってくれてとても嬉しいです。カルタを通じてSDGsや良いくらしを伝えていけたら」と話しました。

実践女子学園中学・高校ってどんなところ?

ラウンジには、実践女子学園の中学校・高等学校から来た有志「JJブロッサム」の生徒たちによる、小学生との交流コーナーも。「小学校と中学校はどんな風に違いますか」などといった質問に答えていました。

実践女子学園の良いところは?と聞くと、都会の中心である渋谷にありつつ、静かで落ち着いているところが真っ先に上がりました。また、中学と高校の垣根も低く、色んな考えや価値観の人と交流ができ視野が広がるという意見も。そして何より制服の可愛さ。レトロなセーラー服に惹かれて入学した生徒もいました。伝統と歴史がありつつ革新的な学園に、皆誇りに思っているようでした。

小学生たちとの交流を通して学生たちも学ぶフェス

「学びのフェス」はさまざまな有名企業や団体が参加しており、子どもたちは普段はできない体験をすることができます。実践女子大学の学生たちも、それぞれの授業の手伝いを通し、子どもたちと交流しました。イベントでは自分で考え、自発的に動き仲間たちと助け合って進行します。学生たちにとっても、良い体験となったイベントでした。

2022年7月26日

美学美術史学科の学生が「かわさきSDGsランド」でSDGsを楽しんで学べるブースを出展しました

文学部美学美術史学科「デザイン実習d(企画デザイン)」(担当:文学部美学美術史学科 下山肇教授)の学生たちが、6月18日(土)に川崎フロンターレのイベント「かわさきSDGsランド」に参加しました。相田化学工業株式会社と協同し「純銀アクセサリー作り」のブースを出展し、お客様と一緒にSDGsを楽しく学べるワークショップを行いました。

かわさきSDGsランドとはどんな取り組み?

そもそも「かわさきSDGsランド」とはどんなイベントかというと、楽しくSDGsを知れる・学べる・体験できる大規模イベントです。主催は川崎フロンターレ、富士通川崎工場、川崎市公園緑地協会、川崎市で、この4者はもともと「CC(カーボン・チャレンジ)等々力」という取り組みを行っていました。CC等々力では、等々力陸上競技場でフロンターレのホームゲームが行われる際に「エコ暮らしこフェア」という環境に配慮した生活を遊んで楽しみながら学べる環境イベントを、2011年から行っていました。

今年は「エコ暮らしこフェア」の発展版として「かわさきSDGsランド」を開催。脱炭素を筆頭とした環境問題だけでなく、経済や社会も含めたSDGsを川崎市内全域で推進する目的で行われました。40を越えるブースが出展し、エコ気球やキックターゲットなどさまざまなワークショップを楽しみながらSDGsを学べるイベントです。飲食店もたくさんの出店がならび、使用される容器にはリユース食器を導入しました。リユース食器を利用することで、場内のごみを減らしCO2削減に貢献しています。

銀アクセサリー作りはSDGs!

今回、学生たちは相田化学工業株式会社と協同ブースを出展しました。出展名は「純銀アクセサリー作り」です。相田化学工業ではスクラップから貴金属を回収・精製し、新たな資源としてリサイクルしています。そのリサイクルされた純銀を材料にした、「アートクレイシルバー」を使ったアクセサリー作りの体験ワークショップです。銀粘土を型にはめ込み、焼成したものを磨くときれいなシルバーアクセサリーが出来上がります。フロンターレの公式マスコットふろん太くんの顔の型もあり、オリジナルアクセサリーが作れるとあって多くのお客様がブースを訪れていました。

学生たちで「楽しくSDGsを体験できる」コンテンツを作成

学生たちに任されたのは、主に銀の焼き上がりを待つ時間。その時間を使って、身近なものを通して楽しくSDGsを考えるきっかけを作るコンテンツ作りを行いました。SDGsの大切さを伝える「ストーリー」と「名画」、不要になったものを再利用する「しおり」と「折り紙」の4班に分かれ、この日に向けて準備をしてきました。

名画班は「モナ・リザ」や「落穂拾い」など、世界的名画を使ってSDGsを分かりやすく解説したシートを作成。作業台に貼り、手元をみたときや時間の空いたときに読んでもらえるようにしました。ストーリー班は、資源がなくなってしまった星からやってきた宇宙人のおはなしを、イラストボードを使って作業と作業の合間に披露。しおり班は食べ終わったお菓子の箱を切り抜き、ラミネートしてしおりにするワークショップを行いました。折り紙班は終了した美術展のチラシをシャツの形に折り、銀アクセサリーの台紙になるように、お客様と一緒に作成していました。学生たちはそれぞれの班のコンテンツをお互い体験しており、お客様への説明なども他の班の学生もできるよう準備していました。

 自分で考えて動くことで自分の力が分かる

これまでも実践女子大学では、相田化学工業と、SDGs啓蒙のため小学生向けのコンテンツを考えるなどの授業を行ってきました。しかしコロナウイルス感染症の影響で、実際に学生たちがお客様の前で行うのは初めての試みです。

そのため4月からこの日に向けて準備をしてきたものの、緊張もあり、進行が少しぎこちなくなってしまった部分もありました。ただ下山教授は「個人で考えて、自発的に動くことが大事」と言います。「言われたことをやるだけではなく、問題が起きたときにどう動くかが大切。問題はデザインすれば解決する。そのことを今回の経験を通し学んでもらえたら」と話していました。その言葉通り、学生たちは思い通りにいかないなかでも全員で助け合って進行していました。

学生たちも「この日を目標に楽しんで準備してきたので、今日お披露目できて嬉しい」「お客様の前でやるのは緊張するけど楽しいです」と、イベントを楽しんでいるようでした。

2022年7月26日

日野キャンパスにて実践プロジェクトa「JAL社員と考えるSDGs」がスタートしました!

様々な企業の方をお招きし、私たちが直面する課題について考える社会連携授業。今回は日野キャンパスに日本航空株式会社産学連携部人財開発グループ塩崎さんをお迎えし、SDGsについて考えます。グループワークを主体とするこちらの授業は、3回の講義で構成されています。第一回は「新しい機内食サービスをSDGsの観点から提案してみよう」というテーマに、日本航空株式会社が直面する様々な課題について、講師の塩崎さんからレクチャーがありました。

授業のテーマは、企業が取り組むSDGs

「若いみなさんに会うのが楽しみでした」と笑顔で教室に登場した塩崎さんは、1987年に日本航空に入社。CAとして国内・国際線でキャリアを重ねながら、部下の指導教育にも携わってきました。2021年から産学連携部の所属となり、様々な大学との活動を推進しています。

今回、塩崎さんが提示したテーマはSDGsです。Sustainable Development Goalsの頭文字を取ったSDGsは、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。現代の私たちだけでなく将来の世代も豊かな暮らしを送るために、環境・経済・社会の3つの分野で17のゴールと169のターゲット、232の指標が設けられています。SDGsは2015年に国連で193か国の全会一致で採択され、2030年のゴールに向かって各国が取り組んでいます。

食を扱う企業が直面する、食品ロスとプラスチックごみ問題

多くの企業がSDGsを考える中、日本航空株式会社では食品ロスに注目しています。世界ではまだ食べられる食料が毎年13億も廃棄され、日本では毎年約612万トンとなっています。食品ロスは「もったいない」というだけでなく、ごみとなった食品を処理する際に大量の二酸化炭素を排出し、途上国を中心に8億人以上が栄養不足で苦しんでいる食の不均衡の放置につながる、大きな問題です。
日本の食品ロスの約半分は、外食産業や食品製造業など、食を扱う事業によるものです。私たち1人ひとりが食品ロスを考えることが重要ですが、企業としても食品ロスの削減に舵を切ることができれば、大きな動きとなっていくでしょう。

もうひとつの課題は、プラスチックごみです。世界では毎年8億トンのプラスチックごみが廃棄されています。数百年以上自然界に残り続けるプラスチックは、環境破壊につながります。特に5ミリ以下の細かい粒子となったプラスチック(マイクロプラスチック)が海に流れ込むと海洋生物の身体に取り込まれることで問題となっています。
日本は米国に次いで1人あたりの使い捨てプラスチックごみが多い国となっています。食品パッケージとして身近で便利なプラスチックですが、3R(Reduce・Reuse・Recycle)の観点から生産量を減らす取り組みが求められています。

日本航空株式会社がいま実施していること

では日本航空株式会社では食品ロス削減のために、4R:Refuse・Reduce・Recycle・Reuseというキーワードを掲げています。具体的にはRefuse(乗客は食べられないものを事前に伝えられる)、Reduce(食品ゴミの削減)、Recycle(循環型農法で作られた野菜を使用)、Reuse(規格外の野菜や果物を機内食デザートに活用)という取り組みを実施しています。
また使い捨てプラスチック製品からの脱却として、使用済みPETボトルを原料とした容器、繰り返し洗って使える食器、そばつゆボトルを止めてジュレにする、100%再生PETボトルの飲み物を提供など、を進めています。

さらに機内で使用する紙コップなどの製品は、環境や生き物に配慮したことを証明する世界的な認証(FSC、MSC、ASC)を受けた商材を使用しています。

授業のゴールは、新しい機内食サービスをSDGsの観点から提案すること

後半では、塩崎さんから今回のゴールとして「新しい機内食サービスをSDGsの観点から提案すること」が示されました。もともと機内食は、食品を扱う上でのリスク(食中毒や賞味期限切れなど)をクリアし、食のダイバーシティ(アレルギーや宗教上の理由)を考慮しなくてはなりません。 「空のレストラン」を目指して機内での食事を楽しめるように様々な工夫をしている中で、新たな工夫のうちのひとつとしてSDGsが注目されています。塩崎さんの「環境や人に優しい機内食のアイデアを、仲間と一緒に考えてみましょう」という言葉で、レクチャーが締めくくられました。

プレゼンテーションに向けて、グループワークがスタート

授業の途中では、塩崎さんの「私たちに何ができる?」という問いかけがあり、和やかな雰囲気の中で学生はグループでディスカッションを開始。食品ロスに関しては、「必要以上に食材を買わない」「残ったものは冷凍保存する」「使えると部分は使う」といった意見が寄せられました。また「水筒やエコバッグの利用」「なるべく紙製品を選ぶ」といったプラスチックごみ削減のアイデアもでていました。

最期にグループワークを進める際の3ステップ、プレゼンテーションの5つのポイントの説明がありました。最終的に全員参加のプレゼンにすることを意識し、グループワークでは自分の意見を伝える・仲間の意見を傾聴する・論理的な意思決定をする点が強調されました。

三回目の授業では、グループごとに新たな機内食サービスのプレゼンテーションを行います。日本航空株式会社の取り組みを具体的に聞き、自分達で機内食を考えることを通じて、SDGsをより身近に考えるきっかけになったのではないでしょうか。

2022年6月3日

来館者増や価値創造など印刷博物館の課題解決を学生が提案へ!本学との社会連携授業がスタートしました

凸版印刷株式会社(東京都文京区)が運営する「印刷博物館」と本学の初の社会連携授業が6月3日(金)、渋谷キャンパスでスタートしました。学生が印刷博物館が抱える来館者増や新たな価値創造などの課題を分析、解決策を提案します。最終プレゼンテーションは7月1日と8日の2回に分けて行われ、16チームがアイデアを発表します。

印刷博物館

印刷博物館は、印刷の起源から最新の印刷技術まで古今東西の印刷文化を学べる企業博物館です。社会連携授業は、学生がグループワークで取り組む課題解決型授業(PBL)として実施され、国文学科の「実践キャリアプランニング」(4限)の授業のなかで実現しました。

現状分析の上で具体策のプレゼンを!

講師の中西氏

キックオフ授業は午後3時すぎ、渋谷キャンパスの503教室でスタート。同博物館部長で学芸員の中西保仁氏が登壇し、PBL型授業のミッション提示(お題出し)を行いました。具体的には「印刷出版文化に関心の薄い層に来館してもらう」と「新たな体験価値を生み出し、継続的に発信していく」の2つです。学生たちは、いずれかのテーマを選んでグループワークを行い、解決のための具体策をスケジュールも含めて検討します。

中西氏は、グループワークについて「現状を分析した上で、皆さんが考えようとしている施策は、どこまで実現できていて、どこが出来ていないのか拾い出して欲しい。このプロセスを入れていないと、説得力はゼロです。その結果、何が印刷博物館の問題なのか分かるので、それを明示して欲しい」と強調しました。併せて、解決するためのスケジュールも大事だと強調。「例えば30日でクリアできるのか、1年掛かるものなのか。その規模感を含めて、より具体的に施策をプレゼンテーションして欲しい」と語りました。

 グループワークの課題
学生たちのグループワーク風景

国文学科2年生66人が挑戦

最終プレゼンで発表する各チームは、1チーム4~5人で構成。実践キャリアプランニングの授業を今年度履修した国文学科の2年生66人を16チームに分けました。学生らは約1か月かけ、提案づくりにチームで挑戦します。その一環として、学生らは実際に印刷博物館を4日(土)に現地訪問、同博物館の現状や課題に対する理解を深めました

2年前のリニューアル効果は?

同博物館は、凸版印刷の創業100周年を記念して同社本社ビル(東京都文京区)に隣接して2000年に設立。2020年10月にガラっとフルモデルチェンジしてリニューアルオープンしました。この間の年間来館者数は平均3万人、20年間の累計来館者数(2020年)は63万人を超えています。中西氏によると、リニューアル前の同博物館は▼中高生の来館が少ない▼団体客を増やす施策が持てていない▼初来館者が8割もあり、リピーターの獲得が出来ていない-などが課題だったとか。このため、リニューアルは①活動の体系化に着手②多様な来館者ニーズに対応③施設が老朽化し活動自体がマンネリ化-などを克服するため必要だったと振り返りました。

深澤晶久教授の話

印刷博物館様と本学とで締結した包括連携協定に基づく初めての具体的な試みとして、2年生のキャリア教育科目「実践キャリアプランニング」にご協力をいただきました。毎年、この授業の後半では、企業様にご協力をいただき、PBL形式の授業を展開しおりますが、今年のテーマは一段とリアルな内容をご提示いただきました。

 翌日、4日には有志の学生13名が実際に印刷博物館を訪れ、中西様をはじめ多くの皆様から、展示物や企画内容のご説明をいただき、来週からはグループワークに臨みます。学生の豊かなる創造力に期待をしたいと思います。授業当日、そして翌日の視察において、ご丁寧に対応いただきました印刷博物館様に感謝申し上げます。

2022年4月20日

有楽町マルイ『インクルージョンフェス2022 Spring』で現代生活学科 環境・エネルギーゼミ作成のサステナブルレポート2021が展示されました (3/7〜3/13)

 2022年3月7日~13日、有楽町マルイにおいて『インクルージョンフェス2022 Spring』が開催されました。「私の『好き』は地球や人にやさしい!」というタイトルと共に、有楽町マルイに出店する店舗が各自のエシカルな活動を紹介する中、7階の会場では現代生活学科 環境・エネルギーゼミの活動が「サステナブルレポート2021」と共に紹介されていました。

サステナブルレポートとは

 サステナブルレポートとは、現代生活学科 環境・エネルギーゼミで「持続可能な社会の実現」を目指して行った1年間の活動をまとめたものです。編集長の学生とともに全員が協力しながら、まるで雑誌を編集するように46ページの冊子に仕上げました。

菅野教授のもとでこのサステナブルレポートの作成が始まったのは2019年でした。以前からあった「ゼミの活動を紹介する媒体がほしい」という意見をかたちにしたもので、その2021で3冊目になりますが、毎年学生たちの試行錯誤によりバージョンアップを重ねています。

学外プロジェクトにも積極的に参加

環境・エネルギーゼミのある現代生活学科では、地球環境やエネルギー問題についての基礎知識を学び、問題解決や改善に結びつく手法を考えます。持続可能な社会の担い手となる専門知識と技能を身につける領域です。

2021年の環境・エネルギーゼミの活動では、学外プロジェクトにも積極的に参加しました。J-POWERグループがエネルギーと環境の共生を目指して社会貢献活動に取り組む「エコ×エネ体験プロジェクト」では、実際の発電所を題材として火力・水力発電について学び、参加した他大学の学生とディスカッションを行いました。

また原発事故の風評被害を払拭するために環境省が行っている「ぐぐるプロジェクト」では、放射線に対する正しい知識を学び、それをどう発信すべきかを深く考えて台詞作成部門に応募しました。

キャンパスの外にも、学びの場を求めて

このほかにもいくつかのスマートシティの最前線を見学しました。綱島サステナブル・スマートタウン内の「スイソテラス」は、水素エネルギーの基礎が学べる施設として知られています。ここでの体験を通じて、化石燃料から低炭素社会へどう移行していくべきか、学生たちが考える貴重なきっかけになったようです。柏の葉スマートシティでは再生エネルギーを活用した都市を歩き、あちこちに風力発電機や太陽光パネルの存在を感じながら、環境未来型都市を体感することができました。

さらに学生たちは三菱みなとみらい科学館、科学技術館、多摩六都科学館にも足を運び、五感を通じて学ぶ様々な技術の基礎知識を通じて、環境と技術の共生を考えました。

さらに2021年12月には、東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2021」に環境・エネルギーゼミで出展。ブースを訪れた方に環境に関するアンケートを実施する貴重な場となりました。ブースでは学内に掲示された節電ポスターや、使用済みカイロ・ペットボトルキャップ・使い捨てコンタクトレンズケースの回収などを紹介し、活動全体をまとめ、サステナブルレポート2020も配布することができました。

アウトプットの存在は、学生を大きく成長させる

菅野教授がゼミの学生に強調していることは、環境に対して問題意識を持つことだと語ります。

「ゼミに参加する学生の多くはそれまで環境教育や環境活動に参加したことがなく、『環境は理系の学問』という印象を持っている人も少なくないんです。環境について考えたことがないのはそうした機会がなかっただけで、きっかけさえあれば思考をどんどん深めていくことができます。そこでゼミではまず、身近な存在である環境について興味を持つきっかけを重視しています。
 サステナブルレポートは学生の学びによい影響を与えていると思います。自分達で企画を考え、冊子にまとめ上げることを通して、『物を創る』という社会人としての基礎力を養うことにつながっています。アウトプットすることが決まっていると、学生たちの日々の活動に目標ができるようですね。
 2021年はレポートを作った経験が自信につながり、企業が実施するアワードに応募する学生も出ました。環境をテーマにしたアワードはたくさんあるため、今後も応募する学生が続くことを期待しています。
 コロナ禍次第ですが、2022年は引き続き学内の廃棄物(使用済みカイロなど)の回収と、太陽光発電による自然エネルギーキャンパスをテーマにした活動に力を入れたいと考えています。これらの活動を通して学生の視野を大きく広げる社会連携についても、積極的に推進していきたいです。 これからもゼミを通じて環境に興味を持ち、持続可能な社会を考え、行動につなげる学生がここからたくさん巣立っていってほしいと願っています」

2022年1月25日

<学生記者レポート>カードゲームでSDGsへの理解を深めました=JWPプロジェクトを開催(12/12)

「誰一人取り残さない 世界が目指す17の目標」をテーマに、学生のSDGsに対する理解を深めるイベントが12月12日(日)、渋谷キャンパスで行なわれました。「実践ウェルビーイング(JWP)プロジェクト」の一環として行われ、KPMGあずさサステナビリティ株式会社の鈴木ももこさんが講師として登壇。学生たちは、企業や学校、自治体などで導入が進むSDGsカードゲームを実際に体験しました。

SDGsのスローガンのもとイベントが開幕

学生が交流、トークの花咲かせ

講演に先立ち、参加者は互いを自己紹介。世界の諸問題やSDGsなどに関する意見交換を通じて交流を深めました。会場のあちこちで興味ある分野が共通する参加者同士で会話が弾み、人権問題や気候変動などを話題に取り上げては、トークの花を咲かせていました。

共通の話題でトークの花咲かせ

SDGsの背景や目標を学ぶ

鈴木さんの分かりやすい解説が好評

講演では、講師の鈴木さんが、動画や資料を駆使し、SDGs誕生の背景や17の目標を詳述しました。鈴木さんは、難解な話題も噛み砕いて説明。SDGsになじみの薄い学生であっても、分かりやすい解説であると、好評でした。

ちなみに、鈴木さんは大手化粧品メーカーに勤務後、大学院に進学。その後、国際協力に関心を持ち、独立行政法人国際協力機構に就職しました。東南アジア・ラオスで3年間活動したのちに、現在はKPMGあずさサステナビリティ株式会社でコンサルタント業務を担当。企業のサステナビリティやESG経営の実現を支援しています。

SDGsカードゲームに実際に挑戦

その上で、学生たちは「SDGsの本質と可能性が学べる」と注目を集めるカードゲームに挑戦しました。SDGsの17目標の達成に向け、現在から2030年までの道のりをシミュレーション(体験)するゲームです。日本で開発された体験型ゲームであり、現在、研修やイベントに取り入れる企業や自治体、学校、NPOなどが相次いでいます。

学生たちは、1チーム3~4人の8チームに分かれ、計26人でカードゲームに挑戦しました。ルールは、いたってシンプル。プレーヤーは、目標(ゴール)を達成しながら、同時に、SDGsが17目標に掲げる持続可能な世界の実現を目指します。

プロジェクトで目標達成を追求

そのゲームの進め方を紹介すると、真っ先に行うのが個人・チームの目標(ゴール)の選択です。「大いなる富」「悠々自適」「貧困撲滅」「環境保護」「人間賛歌」の5種類が用意されており、例えば、お金が一番大事という「大いなる富」を目指すプレーヤーがゲームクリアするには、お金1200を集めることが必要となります。また、時間がゆったり、たっぷりある「悠々自適」を目指すプレーヤーは、ゲーム終了時に時間15を保持していなければなりません。

まるで現実世界の価値観を垣間見るかのような目標(ゴール)の達成を、プレーヤーは「プロジェクト」と呼ばれるカードの実行を通じて挑戦します。プロジェクトは実行に必要なお金や時間をあらかじめ決められており、例えば、プロジェクト「交通インフラの整備」を実行するには、お金500、時間3が必要です。そして、実行すれば、お金1000と時間1の対価を得られると同時に、次のプロジェクトカードがもらえる仕組みです。

プロジェクトを通じてゴール目指す

目標追求と同時に、社会の状況も変化

プロジェクトの選択がカギ

翻って、ゲームの難しさは、個人・チームの目標だけ追求しても、ゲーム世界全体の状況が良くなるとは限らないことにあります。つまり、他のプロジェクトや世界全体の状況を考えることなしに、自分のプロジェクトを決められないということです。

プロジェクトの実行に応じてゲーム世界の状況も刻一刻と変化します。その変化は、事務局に設置されたホワイトボード「世界の状況メーター」で把握可能であり、ホワイトボード上の青色、緑色、黄色の三色のマグネットの数が、ゲーム世界の状況をそれぞれ「経済」「環境」「社会」の3つのパラメータに分けて表しています。

各プロジェクトは、「経済」「環境」「社会」の3つのパラメータに対してそれぞれ一長一短があり、例えば、先のプロジェクト「交通インフラの整備」であれば、実行すれば状況メーターは青の経済がプラス1、緑の環境がマイナス1だけ変化します。つまり、どのプロジェクトを行うかで世界の状況メーターが刻々と変化。参加者全員が行うプロジェクトの結果、2030年の世界が次第に姿を現す、という仕掛けです。

7チームが目標達成、ゲーム世界も好転

この結果、個人・チームがそれぞれの目標を達成出来ても、世界の状況バロメーターが好転するとは限りません。今回のカードゲームで、学生が目標達成に向け奮闘すること約2時間。目標をクリア出来たチームは、中間発表段階で8チームのうち4チーム、最終的に7チームという結果になりました。また、世界の現状を示す状況バロメーターも、開始時より「経済」「環境」「社会」のいずれも好転、参加者が満足できる好成績となりました。

多くのチームが目標達成
チーム戦略の立て方が奏功

では、なぜ多くのチームが目標を達成し、世界の現状も改善することができたのでしょうか。各チームに話を聞くと、「前半は自分達の目標に向かって行動していたが、自国の目標が達成された後は、世界の現状に目を向け行動する余裕が生まれた」など声が返ってきました。即ち、学生たちは本ゲームを通して、「自分たちの目標を追求するだけでなく、他チームの目標や世界の現状にも目を向けなければならない」と気付いたわけです。

「私も起点」という覚悟で

ゲーム終了後は、その振り返りの講義のため、鈴木さんが再び登壇。日本のSDGsの目標達成状況を、日本が抱える課題や国内企業の取り組みを交えて解説しました。その上で、鈴木さんは「世界はつながっている。《私も起点》を大切にしてほしい。世界の現状を知り、自分に何ができるかを考えよう。国や企業だけでなく『個人』で何ができるかが大切」と講義を総括。SDGsの未来を担う学生へのメッセージとして、鈴木さんが大学時代に教授から教わったという「Think Globally,Act Locally:グローバルに考えて身近なところから行動しよう」の言葉をはなむけに送りました。

「世界はつながっている」+「私も起点」

3回目のイベント開催

実践ウェルビーイングプロジェクトは、サステナブル(持続可能)な社会は何かについてSDGsの理解を深めるとともに、その先にある“ウェルビーイング”という視点について学ぶことを目的としたプロジェクト。指導教授は文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)です。対象は、学年を問わず本学学生で、2021年後期に発足。今回で3回目のイベント開催となりました。

SDGsカードゲームを終えて
担当の深澤教授

深澤晶久教授の話

実践ウェルビーイングプロジェクトは、昨年の9月にスタートしました。SDGsの動きが急加速していることを感じます。一方、SDGsのゴールは2030年、全てのゴールを達成したとしても、大学生たちはその時30歳前後、彼女たちが社会の中心となって活躍する世界は、まだまだそこから続きます。2050年責任世代といわれる彼女たちには、SDGsのその先、「SDGsプラス1」を考えて欲しい、その視野を身に付けて欲しいと願い立ち上げたプロジェクトです。

この日は、カードゲームを通じて、SDGsに対する理解を深めるとともに、講師の鈴木さんから学んで欲しかったことは、グローバルな視点からSDGsを見つめる視座を習得することです。参加した学生の姿からは、その意図を感じ、真摯に学んでくれる姿勢を感じました。まだまだプロジェクトは続きます。

取材メモ

世界の現状を自分事として捉え、行動していくことの大切さを改めて感じました。私は自分なりのSDGsの取り組みとして、フードロスを少しでも減らせるように献立を工夫、食品を無駄なく調理するようにします!自分の行動で世界に貢献できると思うと嬉しいですね。皆さんも「私も起点」を胸に、日頃の生活にSDGsを取り入れてみて下さい!

食生活科学科食物科学専攻 品田 梨花