自身が生かされている意味とは?「キャリア・ショーケース」の授業で元スターバックスCEOによる「ミッション」についての講義が行われました。
4月23日に「キャリア・ショーケース」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で元スターバックスコーヒージャパンCEOであり、株式会社リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏の特別講演が行われました。自らの半生を通し、「ミッション」を自覚することの大切さを学生たちに伝えてくださいました。

自分はなぜ「生かされている」?
この授業では学生が進行を担当します。CUBEと呼ばれる各班に分かれ自ら考え行動する力を養います。
まず語られたのは「生きていることの不思議」。宇宙の誕生や地球の形成、そこから生命が生まれ人間へと進化してきた流れは、すべて偶然の積み重ねです。その視点から岩田氏は「生きているというより、(何か大きな力に)生かされていると感じる」と話します。

では、なぜ自分は生かされているのか。岩田氏は「人それぞれにミッションがあるから」と説明します。
ミッションとは「存在理由」のこと。ミッションには、自分自身の役割を考える「個人のミッション」と、会社が存在する意味を考える「企業のミッション」があります。授業ではこの2つを軸に、自分の生き方や将来について考えていきます。
AI時代に必要な学びの本質とは
AIの進化によって、多くのことが簡単に答えを得られる時代になりました。では、なぜ大学で学ぶ必要があるのでしょうか。
岩田氏はその理由を「視座を高める、視野を広げる、視点を鍛えるため」と説明します。自分とは異なる立場で物事を考え、興味のある分野だけでなく幅広く知識を得ること。「それによってイノベーション(変革)が起こりやすくなる」と話しました。そして得た情報をどう受け止めるかを考える力(視点)こそが重要だといいます。「卒業のためではなく、自分の土台をつくるために学び続けることが大切」と学生に伝えました。

また、変化の激しい時代だからこそ「不易流行」という考え方が必要だと強調します。
岩田氏は「これは、変わらない本質(哲学)を大切にしながら、新しいもの(科学技術)も柔軟に取り入れるという考え方です。科学技術は加速度的に進歩しているが、人間の本質は何千年も変わっていないということ。今日お話しするミッションの大切さはいつの時代も変わらない。
AIが答えを出してくれる時代だからこそ、人間に求められるのは「問う力」です。」と話し、常識を疑い、問題意識を持ち、自分で問いを立てるためにも、学び続ける姿勢が大切だと語られました。
AIが答えを出してくれる時代だからこそ、人間に求められるのは「問う力」です。問題意識を持ち、自分で問いを立てるためにも、学び続ける姿勢が大切だと語られました。
自分のミッションを見つけよう
岩田氏は、自身がミッションに気づいた経験を語りました。
「新卒で日産自動車株式会社に入社し、新入社員あいさつで『社長を目指す』と宣言し、先輩方から失笑をかった。
しかし当時は社長の仕事は何も分からなかったが、高い目標が必要だと考えたからだといいます。ふと自社の企業理念を先輩達に尋ねても答えは得られませんでした。若い時から経営理念や社長に関心を持っていました。」
「経営に興味を持ったきっかけは、二つのハンバーガー店での気づき。
同じ業種でも、楽しそうに働く店とそうでない店があることに疑問を持ち、経営に興味を持つようになります。そこでビジネススクールに進み、経営を学びました。経営学の授業では『会社=利益を追うもの(株主価値の最大化)』と教えられましたが、腑に落ちませんでした。」
「その後、株式会社アトラスの社長に就任。
最初は社長就任挨拶で『株主価値の最大化が大切』と言っても社員には通じませんでした。その後ザ・ボディショップの社長をしている時に『企業は世の中を良くするためにある』と言う考えに至りました。ザ・ボディショップは、化粧品会社ですが、環境問題や人権問題に取り組む創業者のアニータ・ロディックの考えに共感しました。」

岩田氏は「企業は利益のためだけにあるのではない。世の中をよくするというミッションを実現する手段として利益が必要」と強調します。
社会をより良くするために企業が存在するという考えに至ったプロセスは、これから進路を考える学生にとって大きなヒントとなる内容でした。
ミッションをもつことで働き方は変わる

なぜ企業にもミッションが必要なのでしょうか。
岩田氏は「共通のゴールを持てるから」と説明します。会社にはさまざまな価値観を持つ人が集まるため、同じ方向を目指すための軸が欠かせません。
また、ミッションに共感した人が集まることで、組織としての一体感も生まれます。実際に岩田氏自身もスターバックスの理念に共鳴し、長い採用プロセスを経てスターバックスの社長に就任しました。
では個人のミッションはどう見つけるのか。
ヒントは「情熱を持てること」「世界一になれること」「経済的原動力になること」の重なりを探すこと。
つまり「好きで、得意で、人のためになること」です。「人にためになる」からその対価としてお金をいただけます。
岩田氏は「ミッションはすぐに見つかるものではなく、また成長とともに進化させてもいい」と語ります。大切なのは、自分がなぜ生かされているのかを考え続けること。
「働くとは、傍(はた)を楽にすること。自分の仕事が社会にどう役立つかを意識してほしいと思います」と講演を締めくくられました。
ミッションをどう見つけ、どう向き合う?
講演後は各グループで学びを共有し、質疑応答が行われました。
サークルでリーダーを務める学生からは「友人の関係性を越えて、組織の挑戦意欲を高めるにはどうすればよいか」と質問があり、岩田氏は「リーダーとは役割。自分のためではなく、チームのために何ができるかを考える“無私の心”が大切。だから時には厳しいことも言うべき」と答えました。
また、「好きで得意なことが人のためになっているか自信がない」という声には、「人に感謝されたり褒められたりすることは、すでに誰かの役に立っている証拠。まずは好きなもの得意なものをつきつめていきましょう」とアドバイス。
さらに就職の失敗への不安については「もし落ちても、相手の見る目がないなと思って、ご縁があるところで頑張ればいい」と笑いも交えつつ回答。
「就活面接で御社のミッションやビジョンに共鳴して~というのはだいたいの学生が言います。ただそれは相手起点で話している。自分起点で、自分はこういうミッションを持っていてこういう事をしたい、御社だったらそれが出来ると思った」と伝えれば良い。
学生にとって、自分の軸はなにかを考える大切さに気づく機会となりました。

担当教員からのメッセージ
岩田様には、本学客員教授として、この科目のみならず本学の多くの科目でご講演、ご指導をいただいています。
「ミッション」については、多くの学生の中に浸透しており、キャリア形成を考える上での軸となっており、学内の様々な活動は勿論、就活の際の「自分の強み」を考える上でも貴重な示唆をいただいています。
さらに社会人となってからも、生き方の支えにもなっています。
企業が社会で活動する意味、個人が社会で生きていく意味、まさにキャリアの本質に
迫る内容は、学生の大きな気づき、そして学びに繋がっていることを感じます。
改めて、この場を借りて、岩田様に心からお祈り申し上げたいと思います。





























































