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2023年6月23日

「未来フォーラム」のメンバーと直接交流!学生たちが企業の方々とグループ対話する特別授業が行われました。

5月30日に3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で「未来フォーラム」の皆さまをお迎えし、学生たちとのグループ対話が実施されました。実際に社会で働く方々との貴重な交流の機会です。学生たちは名刺交換のやり方から、働くやりがいや入社のきっかけなど、直接お話を伺える特別な時間となりました。

労働組合の集まりである「未来フォーラム」

この日の教室は熱気に満ちていました。学生のほか14労組30名の方が参加され、教室も2部屋用意。14のグループにそれぞれの企業の方が着席されています。学生たちはこれから1回15分ずつ、計4グループを回り企業の方とグループ対話を行います。

初めに、代表幹事を務めるセイコーエプソン労働組合の品川友執行委員長から「未来フォーラム」について紹介がありました。
未来フォーラムとは「業種の枠を超え、理念に共感する労組の集まり」です。小売業、サービス業、メーカーなど「ここまで業種の幅が広いのは珍しい」と話します。
現在は27労組が参加し「人のために、社会のために、未来のために」という理念のもと、自分たちの会社と社会を良いものにするために活動されています。
品川氏は「ここにいるメンバーにも率直に、真摯に話すようにお願いしていますので、遠慮せず質問をぶつけてください」と挨拶され、グループ対話が始まりました。

学生たちはこの日に備え特別に大学サイドで用意した名刺を用意し、質問も考えてきました。仕事に対する本音を聞けるまたとない機会です。学生たちは緊張しつつも前のめりに、たくさんの質問を企業の方々に問いかけていました。
※今後のインターンシップなど社会人と出会うことも増えると考え、学生総合支援センターに支援いただき、毎年、この授業の履修学生のために名刺を用意しています。

その企業を選んだ理由は?

多くの学生が気になるのは、やはり「その企業に入社しようと思った理由」です。

商業施設に加え金融サービスなどを展開する株式会社丸井グループの方は
「もともと商業施設が好き。街づくりにも携われる面白さもあった」と回答。
反対に、電機メーカーのアルプスアルパイン株式会社の方は「自分の手でモノを作りたかった」と語り、
「モノを作る会社はたくさんある。細かいものから形のないものまで。自分は何がやりたいか知ることが大切」と話しました。

住宅設備機器メーカーTOTO株式会社の方は、「一緒に働きたい人で選んだ」と言います。
面接やインターンで担当してくれた社員の雰囲気や話しやすさが決め手のひとつとなったと話しました。

株式会社資生堂の方は
「他者貢献が自分のなかで大事。自分の立場で役に立つことができる」ことがやりがいと答えていました。

いま企業が取り組んでいることや工夫

普段の生活では気付かない各企業のこだわりを直接聞けるのもメリットです。
プリンタメーカーのセイコーエプソン株式会社が業界をリードする企業として力を入れているのは、環境に配慮すること。特にインクを捨てるとき、水質や土壌に影響の出ないものを研究していると話しました。

スーパーマーケットを展開するサミット株式会社では、店ごとに買い物時にストレスがない配置を考えたり、総菜の味付けは老若男女誰でも美味しく食べられるようにこだわったり「楽しい買い物体験」を実現しています。

自己分析と企業選択…どう結び付ける?

ある学生は「自己分析と企業選択がまだ結び付かない」という悩みを話していました。
IT企業のBIPROGY株式会社の方は、「いろんな業界の人の話を聞く」ことをおすすめ。
セイコーエプソン株式会社の方も「企業説明会を聞きまくり、ワクワクしない、違和感をあるところを削っていく」という消去法を提案していました。

面接のコツを聞かれた給湯機メーカーの株式会社ノーリツの方は
「一緒に働きたいのは、前向きで元気なひと。学歴も見るが人柄で選ぶ」だろうと元気に面接に臨むことをアドバイスされていました。

何を軸に企業を決める?

何を基準に企業を選べばいいか、というのは多くの学生が抱える悩みです。
漢方薬品メーカー株式会社ツムラの方は「働きやすさを考えたほうが良い」と助言。これから女性が活躍する社会になるのは間違いないと言い、女性の管理職割合や育休の取得率など情報を確認することは重要と話しました。

近畿日本ツーリスト株式会社の方も、有休を時間単位で取得できるなど、福利厚生が充実していることが入社理由のひとつと話し、「福利厚生や制度は確認しておくといい」と話しました。

ただ、BIPROGY株式会社の方は「福利厚生より雰囲気を重視」と、制度が整っていても社風が自分に合うか合わないかは大切だと話しました。社内の雰囲気を知るには、インターンやOG訪問など直接会社の中を見る機会を増やすように助言しました。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の方は「やりがいを日々感じながら仕事するのは難しい」と言い、働く時間をいかにストレスのない充実したものにするか、何を基準に働きやすさを決めるかを考えることをアドバイスしました。

学び続けていこう!

グループ対話の時間はあっという間に終了し、企業の皆さんから感想を頂きました。

「学び続ける姿勢に刺激をもらいました。大学を卒業しても、自分のキャリアを考えるという勉強が続いていく。今日は自分のキャリアを振り返るきっかけになりました。一緒に学び続けていきましょう」と話される方も。

品川氏も「社会に出たら誰も正解を教えてくれません。自分の気持ちに向かい合い、自分で決めていくことが大事。それが正解だった時にやりがいが出ます」と話し、
「これから皆さんが社会に出て、共に働けることを楽しみにしています」とエールを送りました。

最後には学生からの感想も。
「働いて楽しかったこと、つらかったことなど経験を聞けて良かった」や
「どんな業界がありどんな企業がどんな仕事をしているのかまだまだ分からないと思います。今後の就職活動などでも苦しいことや悩むこともあると思うが、今日聞いたことを参考に頑張ろうと思います」
と前向きな感想がありました。

授業時間後も多くの学生が残り、まだまだ話足りないと対話が続いていました。
学生たちにとって多くの刺激となる貴重な機会となった授業でした。

担当教員からのメッセージ

私自身が企業勤務時代に労働組合専従の経験があったこともご縁で、毎年、「未来フォーラム様」に、この授業にお越しいただいています。
毎年感じることは、労組役員の皆さん、特に「未来フォーラム」に所属している皆さんの熱量の大きさです。誰よりも社員に寄り添い、そして会社の発展を望む、これからの労働組合の方向性を指し示しておられると思います。
多様性の時代の中で、労組役員の方のご苦労は大変なものがあると思いますが、こうした皆さんが活躍されている企業で働けることは幸せだと思います。
学生も名刺交換からスタートした社員の方との真剣勝負、企業の説明会ではなく、働き甲斐ややりがいなどを直接お聞き出来る貴重な時間となりました。
毎年、本当に多くの方にご支援いただいていること、心から感謝申し上げます。

2023年6月22日

外資と日本企業の違いは?「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。

5月25日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、本学卒業生であり、客員教授でもあるSBI金融経済研究所株式会社の政井貴子氏をお迎えし、講演が行われました。外資系、日本企業、公的機関などさまざまな組織に在籍されていた豊富な経験をお話下さいました。

なぜ「女性活躍推進」なの?

この授業は学生たちが司会となり進行します。
学生から紹介を受け、政井氏がはじめに話されたことは「なぜ女性活躍を推進するのか」ということでした。
「なぜこんなに女性活躍についてうるさく言うのか、疑問に思う人もいるかもしれません。まずは背景をご説明していきます」と講演は始まりました。

今回進行を担当したグループの学生

女性の社会進出は世界的な課題です。1940年代の世界大戦以後、男女差別をなくしていこうとする動きが起こっていきました。日本でも1970年代から女性の参政権や解放運動などの動きが起こります。
しかし現代も日本はジェンダーギャップ指数では低迷。性別による分担意識や慣行をどう変えるか、女性が仕事をしたときの平等性をどう保つか、課題はまだ山積しています。

ただ、教育面では男女差が少なくなってきており、男女の役割分担意識も年齢が若くなるにつれ薄れています。
政井氏は「問題意識を持つ人は増えています。世の中の向きは少しずつ変ってきている」と伝えました。

外資系企業で20年活躍

「皆さんに覚えていていただきたいのは、仕事とは毎日生きていくなかで、楽しい、良かったと思える日を一年に何回かでも作るためにするんです」
と政井氏。
仕事のために生きていくわけではなく、一人ひとりが豊かな人生を送るために仕事はあります。社会に出てつらいことや悩みがあったときは「不幸になるために仕事をするのではない」ということを思い出してもらいたいと政井氏は強調しました。

政井氏は本学を卒業後、外資系企業に就職します。カナダ系の企業で、社員はほぼ外国人。書類も会話もほぼ英語です。社員の国籍もさまざまで、仕事をするなかで多様性が身に付き「外国の方々との交渉はとても上手になりました」と話します。

次に勤めたのもフランス系の外資系企業。ただ、こちらは日本に昔から根付いている大企業だったため日本人も多く、日本語で仕事をしていたと言います。「一言で外資系といっても幅があるので、外資系の企業を視野に入れる場合は、実態をしっかりと調べるといいと思います」とアドバイスをされました。

女性役員としての意識変化

外資系で20年ほど勤め、英語力やコミュニケーション力が身についた反面、日本企業では、当然学ぶであろう慣習などを全く知らなかったと政井氏は話します。例えばメールの挨拶、書類の文面のマナーなど。指摘された政井氏はショックを受け、「日本人としてちゃんとした社会人にならなければ」と日本企業へ転職します。

現SBI新生銀行に部長職として就任するも「最初は全然うまくいかなかった」と話します。日本人同士の仕事は交渉の仕方も外資の時とは違いました。また「今振り返ると女性の扱いが全然違った」と言います。外資企業では男女格差の少ない社内環境でしたが、比べると日本企業ではやはりギャップがあったと話しました。

しかしさまざまなチャレンジをすることでキャリアを積み、初の女性役員へ昇進。職務のかたわら、若い有能な女性役員候補たちと役員をつなげるパイプ役を、自分から積極的に担いました。役員になったことで自由度も上がり、やれることの幅も広がったと言います。
仕事を行うだけではなく「自分がどう価値を還元できるかを考えるようになりました」と話しました。

後悔のないように人生を豊かにしよう

2016年日本銀行へ。内閣府や省庁に就職された方と知り合いになる機会が増えました。女性問題や国際問題に関心がある人たちが多く圧倒されたと言います。学生時代は社会貢献意識が高いわけではなかったという政井氏は「皆さんの時点で、まだ目的がぼんやりしていても大丈夫です」と力強く仰いました。今の時点で目標がなくても落ち込まず、目の前のことをやってみることを勧めました。そうすると仕事が自分に向いている、向いていないということに気付いていけるようになると言います。
「ただ、努力は必要です」と言い、今でも英語は勉強していると話しました。

現在、政井氏は母親の介護で同居していると話し、
「プライベートも含めて選択を迫られる時、自分の優先度を決め、後悔しない選択をすることが重要」と語り掛けました。

「最悪だと思った出来事が、振り返ってみると転機になっていたこともあるので、常に前向きに考えて人生を豊かに過ごしてください」と講演を終えられました。

視野を広く持って前向きに

講演後、学生たちはグループごとに感想や質問などを話し合い、質疑応答が行われました。
「ポジティブになれるコツや活力は?」という質問には、
「気持ちが暗くなっているともったいない。人に話してみるなど気分転換は大事。人に話すと違う角度からの意見をもらえることもあります。聞いてくれる友人や家族に感謝することも重要ですね」と回答しました。

最後に司会進行をした学生からお礼と感謝の言葉がありました。
「日本企業だけでは分からないこともたくさんあり、もっと視野を広く持とうという気付きになりました。今つらいと思ったことも、あとで良いことにつながるかもと思えて心が軽くなりました」と伝えられ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。

女性活躍や将来の就職先などについて、学生たちも具体的にイメージできるようになった講演でした。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には第一回目からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿は真剣そのもの、政井様も本当にフランクに学生の視点でお話し下さり、アットホームな雰囲気も含めて大変貴重な時間になっています。一方、政井様のキャリアは、変化の連続。金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。なかなか先の見通せない時代を生きる学生たちにとっては、大きな勇気をいただくメッセージを沢山いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年6月19日

学生たちが渋谷のスローなツアーを提案!原田ゼミ(都市と地域の社会学)で博報堂とJR東日本のコラボ授業が行われました。

人間社会学科 原田謙教授のゼミで、5月29日に株式会社博報堂(以下、博報堂) ミライの事業室と東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本) 東京感動線とのコラボ授業が行われました。渋谷でスローに過ごす体験ツアーを学生たちが提案し、実際に開催することを目標にしています。今回は土台となる案出しを行い、企業のみなさんと質疑応答でブラッシュアップしていきました。

渋谷のスローな過ごし方をツアーにしよう

JR東日本の「東京感動線」は、山手線を起点に心豊かな生活を提案するプロジェクトです。街の個性を引き出し、人と人の繋がりを作る「エキとマチをつなげる」をコンセプトに、地域と連携し街を探索したくなる仕掛けづくりを行っています。タッグを組んだのが博報堂 ミライの事業室。渋谷の街づくりサービス「shibuya good pass」を開発している繋がりから、「Slow Platform 渋谷駅0番線」という駅構内のスペースを活用したプロジェクトを共同で行っています。

2022年度後期の原田先生の「フィールドワーク論」の授業では、渋谷駅0番線プロジェクトとコラボし、渋谷で一息つけるスローな場所を紹介した「渋谷スローマップ」が作成されました。今回はその発展版として、「渋谷をスローに過ごすツアー」を学生たちが考案します。

現在、東京感動線は、体験シェアサービス「aini」と連携し、山手線の暮らしをより楽しめる体験ツアーを提供しています。ツアーの内容は地域によって多種多様。
上野駅の歴史を知る構内ツアーや、東京駅は鉄道古物を使ったアクセサリー作り等があります。

朝はのんびり&夜はご褒美

学生たちはainiのツアーを参考に、各チーム2つずつ案を考えてきました。

Aチームは、忙しい朝の時間をのんびりするモーニングツアーと、日々の疲れを癒すご褒美ツアーを考案しました。

モーニングツアーでは、朝8時にカフェでゆっくりと朝食を取り、その後代々木公園でサイクリング。最後は美術館で美術鑑賞するツアーを提案しました。午前中を活用することで充実した一日を過ごすことができ、ゆったりとした時間を過ごすことで心豊かになるとプレゼンしました。

夜のご褒美ツアーは金曜日の19時にレストランでディナーを楽しみ、足湯カフェでリラックス。その後はシーシャカフェで過ごしたり、夜景を見たりを選べる贅沢な時間を過ごすツアーです。働く女性をターゲットに、一週間頑張った自分にご褒美を用意しました。

デジタルデトックスで有意義な時間を

Bチームはスローな時間を過ごすために、デジタルデトックスというコンセプトを決め2つの案を考えました。

1つめは親子で参加するツアー。
スマホの電源を切ってもらい、使い捨てカメラを配布。喫茶店や明治神宮でゆっくり過ごし、お弁当を買って食事を楽しみます。その様子はフィルムカメラで撮影し、思い出に残してもらうというツアーです。

もう1つはおひとり様専用で、金曜日の夜に読書をするためのツアーです。
アナログレコードなどを聞けるカフェで静かに読書を行い、最後にはツアー参加者同士で本についての感想などを話し合います。
デジタルを離れ、人と人の対話を楽しめるとプレゼンしました。

価格はどうする?人数は?

発表のあとには、学生から質問もありました。
特に価格設定はどのくらいが妥当なのか、という質問は両班とも気になるところ。

JR東日本の方は
「正直ピンキリです。金額に見合った内容で、お客様が納得される値段であることが大事」と回答。ただ、今回は学生考案のツアーとして打ち出す予定のため、「値段が高すぎるとお客様にどう思われるかというところはあります。価格の一つの決め方として、催行人数が半分でも成立するように決めるということがあります」とアドバイス。ツアーは必ず定員が埋まるとは限りません。定員に届かなくても、赤字が出ないようにするのは大切な考えです。

その他にも、
人数は?サイクリングやピクニックなど外で行うイベントは、雨の時はどうしたらいい?飲食の場合、席は一緒?移動の時間はどう過ごす?など細かい確認や決定すべき事項がいくつか出ていました。

学生ならではのツアー体験で付加価値を

発表後は企業の皆さまから講評もいただきました。

モーニング&ナイトツアーについては、JR東日本の方から
「時間帯で区切るという発想がなかったので面白いと思いました。レストランやカフェも、自分では踏み込みにくいところもツアーなら行きやすいというのは良い案」と感想を話されました。

デジタルデトックスの案にも、博報堂の方から
「デジタルデトックスというコンセプトは、都会に住んでいる人向けならではと思いました」という感想が。
また、「私も本が好きなので、カフェの前に本屋巡りなども良いかも」と提案もありました。

ただ共通して伝えられたのは
「大事なのは、わざわざツアーに参加したくなる付加価値を考えること」。

どのツアー案も、個々でやろうと思えばできることです。それでもツアーに参加する価値や特別感を考えてほしいと話されました。
例えば、美術館で作品の案内が聞ける、レストランではツアー限定のメニューがある、など。学生ならではの目線で、体験の提案を考えてほしいと期待を寄せました。

学生たちは今回の案を練り直し、夏休み前を目安に提案予定。秋には実際にツアーの開催を目指します。

2023年6月16日

「キャリアデザイン」の授業で日本経済新聞社の村山氏による今の日本経済や企業を学ぶ講演が行われました。

5月16日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の村山浩一氏をお迎えし、「今、働くこと」を考えるための講演が行われました。実際に日経新聞に掲載された記事を引用しながら、企業の昔と今の違いや経済に関することを、学生たちにも分かりやすく話されました。

これからの時代をどう乗り越える?

村山氏は新卒で日経新聞に入社して以来、経済や経営に関わる記事を1000本以上執筆してきました。実践女子大学の前理事長のインタビュー記事も書いたことがあるとのこと。学生向け討論番組「日経カレッジ・ラボ」の制作に携わっていたこともあり、番組には深澤教授も出演されています。現在は教育事業ユニットのシニア・コンテンツ・プロデューサーとして、教育研修コンテンツを開発されています。

村山氏の話は、AGC株式会社(以下、AGC)のCMから始まりました。AGCは歴史のある大手ガラス製造会社でしたが、ガラス以外も扱う素材ソリューション会社へ社名とともに変革を遂げました。これには「両利きの経営」への意志が感じられると言います。両利きの経営とは、既存の事業を深掘りするとともに新たな事業を開発すること。「日本企業は、新たな事業の開発をすることは苦手なのですが、これからの時代を生き残るためには必要とされています」

産業界をみる上で、世界情勢も注視する必要があります。「今の世界を象徴するキーワードは”分断”だと思います」と村山氏。ロシアのウクライナ侵攻などに象徴されるように、世界的に対立が大きくなっています。同時にグローバル化は急速に広がり、日本企業も対立の影響を受けています。分断は政治だけでなく、経済においても重要なポイントなのです。「この分断をどう乗り越えていくか、どう新しい世界を作っていくかが大きな課題です」

日本に会社はいくつある?

次に村山氏は「日本の上場企業は何社あるでしょう」と問いかけました。学生たちは「100?」「1万社?」と答えるなか、正解は約4,000社。「では日本に会社は何社あるでしょうか」と再度問いかけが。「10万社?」「5万社?」と答えが出ましたが、正解はなんと400万社。99%以上が中小企業です。「皆さんの中にも、中小企業に就職する方もいると思います。たくさんの中小企業が活躍して、日本の経済が成り立っているんだなということを分かっていただければと思います」と村山氏は語りかけました。

「皆さんはどんな企業に就職したいですか」という問いかけには「メーカー系」や「金融」と答える学生がいました。ここで示されたのが、世界の時価総額上位企業の記事。1989年には世界上位20位のうち日本企業は14社ありましたが、2019年では41位でようやく出てきます。数十年経てば業績や世界の評価は大きく変わるのです。「皆さんが現役で働いている間にも、順位が大きく変わる可能性があります」と、大手企業だからといって、ずっと安泰だとは限らないことを伝えました。

お給料はどのくらい?

話は年収の話題へ。「皆さん社会人になったらどのくらいの年収がほしいですか?」と聞かれ、「500万円」「困らない程度に」「600万円くらい」という回答が出ました。日本の給与平均は443万円。ただ正社員では508万円ですが、非正規雇用だと197万円と大きな開きがあります。「学生で、希望の会社に入れなかったらアルバイトでもいいと言う方がいるけれど、私は、できれば正社員でどこかの企業に入ったほうが良いと思っています」と伝えました。

これから就活する学生たちに一番身近な話題として、採用の話も。採用側からの観点として、データサイエンスやAI、ITの知識を持っていることに期待が集まっているという記事には、「特に今の時代を反映している」と話されました。

メディアリテラシーを身に付けよう

最後はメディアとの付き合い方。「メディアリテラシーはどの業界で働いても重要です」。なぜならどんな情報もメディアを通して知ることになるからです。特にビジネスの話題には日経新聞は最適で、読者のうち課長クラス以上の役職に就いている人が45%を占めています。日経新聞で得た情報は、取引先との話題や企画案作りにも活用されています。

村山氏は「今日紹介したなかで、少し興味を持った記事もあるんじゃないかと思います」と語りかけ、「新聞は難しいというイメージがあるかもしれないけれど、興味を持ったものから読んでみると良いと思います」と話しました。

就活にも情報をうまく活用して

講演が終わると学生たちはグループで感想などを話し合い、質問をまとめました。質疑応答では就活やビジネスに関わる質問が飛び出しました。「中小企業やスタートアップの会社の情報をどうみつけていけば良いでしょうか」という質問には、「日経新聞を含む、メディアを見てみましょう。メディアに載るということは、取材したくなる企業ということ。そのなかで気になる企業を自分で調べるといい」と話し、「上場企業でも、今は社長の決算会見や株主総会の様子などの動画が無料で見られる時代です。こういった会見はとても貴重で、企業がどちらの方向を向いて動いているのかが分かる。ぜひ活用してほしいと思います」とアドバイスしました。

村山氏は「これからも勉強や就活に励んでください」と話し授業は終了しました。経済や経営者のニュースの最前線を知る村山氏のお話は、学生たちにも刺激になるものでした。

担当教員からのメッセージ

毎年ご支援をいただいている村山様には、極めて旬な経済や企業に関わるお話しをいただいています。グローバルレベルで日々変化を続けている経済界にアンテナを立てることは、就活のみならず、これからの社会を支える大学生にとっても極めて大切なことであることを気づかせて下さいます。情報をどこから集め、そして峻別する力がより求められる大学生にとって、大変学びの深いお話しをいただきました。この場を借りて心から感謝申し上げます。

2023年6月16日

「国際理解とキャリア形成」の授業で元資生堂海外支社社長の海外キャリアと挑戦することの大切さについて講演が行われました。

5月9日に共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社タイキ営業本部長の藤井恵一氏をお招きし講演が行われました。株式会社資生堂(以下、資生堂)で勤務していた際の幅広い海外経験を中心にお話しされ、学生たちはグローバルキャリアを改めて考える授業となりました。

広告に惹かれて資生堂へ

大学時代は勉強にサークルにアルバイトにと学生生活を謳歌した藤井氏。今でもつながっている友人がおり、「振り返ると、ネットワークを作るという考えの土台になった時期でした」と語りました。就活の時には広告やエンターテイメントビジネスに興味があったと言います。資生堂には、当時の広告がとてもかっこよく、惹かれたので面接を受けたと話しました。

1983年に入社。最初の仕事は北九州や長岡の支社での営業でした。現場での仕事は充分経験した頃、自分のキャリアについて考えるように。本社での勤務や海外勤務に興味が出て、海外派遣制度や別部門へのジョブチャレンジ制度へ応募などを積極的に行ったといいます。結局その時に海外へ行くことは叶わなかったものの、「アクションを取ったことで色んな人が自分を見てくれてつながりができ、その後本社のマーケティング部門へ行くことができました」と経験を語りました。

憧れのフランス駐在!異文化に「浸る」こと

海外への憧れは残っていたものの、本社勤務はとにかく多忙。
海外勤務の夢は半ばあきらめていたとき、突然フランスへ異動の辞令が来ました。
ヨーロッパの薬事法規制に対応したり、子会社のフランス、イタリア、ドイツなどと本社の商品・マーケティング戦略について意見交換したり、どう売上や知名度を拡大するかを考える日々でした。加えて、フランスに設立した子会社の社長まで任されましたが、結果的に不採算事業からの撤退ということで会社清算を担当。最後の1年間は弁護士と打合わせ、取引先との契約打切り商談、従業員の解雇などつらい日々でしたが、後々この経験が活かせることになったと話しました。

憧れの海外生活でしたが、英語もフランス語もほぼできないまま始まったといいます。英語は大量の書類を読み慣れていき、ヨーロッパ人とも英語でコミュニケーション。英語だけに集中し、フランス語は結局できないままと話しました。

海外旅行と海外生活の違いは異文化に「触れる」ことと「浸る」ことだと言います。異文化のなかに入って生活することで行動の背景も理解できるようになっていきます。
「例えばフランスでは日照時間が短いため、晴れていれば冬でもテラス席に座ります。日焼け止めよりも焼けたい願望が強かった」と話し、身近な行動からも日本との違いを感じたと話しました。「それが分かることでコミュニケーションの内容や仕方も変わってくる」と言います。
また、「日本人なら、歴史や文化などもっと日本のことを勉強しておくべきだったと思いました」と反省点も語りました。

ついに海外支社の社長へ

その後本社へ戻り国際マーケティング部のグループリーダーを任されます。ヨーロッパやアジア、アメリカなど各現地の子会社と連携を取るなかで、海外販売会社のトップに興味を持つようになりました。海外の会社の社長という立場からは何が見えるのか、自分なら何が出来るのか考えるようになり、国際事業の役員へ思い切って直訴します。念願叶い、カナダの子会社の社長に就任しました。

赴任してすぐ取り組んだのは社長として何を考えているのか、何を目指しているのかビジョンを従業員にシェアすることでした。「製品ではなく夢を売る」というスローガンを共有し、次のステージを目指しトロントやバンクーバーなど大都市で大々的なプロモーションを展開し、売上拡大を図りました。また、SDGsの先駆けとなるCSR活動への取組や、東日本大震災の写真展をカナダで行うなどの活動も積極的に行いました。英語も再度学びなおし、週2回家庭教師に文法と会話を習ったり、初めてTOEICを受験しました。

社長を経験し、ポジションの難しさを改めて痛感したと言います。
日本と違い海外では部下の責任と権限が明快であるため、一度部下に業務を託したら、部下の責任と権限のもとで業務を遂行しており、ある程度の期間をみないと進捗状況を把握することができず、フラストレーションが溜まることもありました。しかし何かがあればすべて自分が責任を負うという重責もあります。一方で提案次第では会社全体を動かせるパワーがあることも実感。「日本では経験できないことができ、非常に楽しかったです」と話しました。

「凡事徹底」と「最大の挑戦」を

57歳のとき「もうこの会社ではやりきった」という思いが出てきます。まだ貢献できる会社やワクワクできる仕事があるはずだという考えが湧き出て、転職を決意。縁があって化粧品OEMメーカーの株式会社タイキに入社しました。現在も自社ブランドの開発・マーケティング・販売や取引先のPB開発に携わっています。

最後に学生たちへ、人が真似できないほど物事を一生懸命にやること、挑戦することの大切さを伝えました。
「やり方を変えれば結果も変わってきますし、チャンスもでてきます。そのチャンスに向かってどれだけ高くジャンプできるか、出会いを大切にしながらぜひチャレンジしてください」とメッセージを伝えました。

ネットワークを作り好奇心を持って

講演が終わると、学生から質問が飛び交いました。
「自分から主体的にキャリアアップしていたように感じましたが、そのモチベーションは何ですか」という質問には、藤井氏は「新しいこと、面白いことにチャレンジしたい、次は何が出来るかという好奇心が根底にありました」と回答。
これからオーストラリアにワーキングホリデーに行くという学生には、今の会社でも資生堂時代のつながりが活きていることを伝え、「海外に行ったら向こうの人とネットワークを作っておきましょう。いつか思いがけないところでつながるかもしれません」と、アドバイスされました。

最後には藤井氏から化粧品の試供品が学生たちにプレゼントされ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。学生たちにとって海外で活躍するための前向きな力を学ぶ、貴重な講演となりました。

担当教員からのメッセージ

今から約30年前に、同じ職場でお目にかかった藤井さん、その頃の仕事は国内のブランドマーケティングでした。その後、藤井さんは海外中心のお仕事に、私は労働組合と人事、全く畑は別になりましたが、ブランドマーケッター時代に苦楽を共にしたことが、今でも藤井さんとのご縁を繋いでくれているわけです。私の印象は、仕事ぶりも身のこなしも、“かっこいい人”、今でも化粧品業界で活躍されている姿は、素晴らしいと思います。毎年のご支援に心から感謝申し上げます。

2023年6月15日

ファーストペンギンになろう!「キャリアデザイン」の授業で元日経新聞の記者が講演を行い失敗を恐れず行動する大切さを話されました。

5月9日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、元株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の大村泰氏が招かれ講演が行われました。大村氏は在職中の多くのインタビューの中から学生たちへ伝えたい名言を集めてきてくださいました。講演の中でこれからの時代の情報の扱い方や、失敗を恐れず行動をしていくことの大切さを語られました。

深澤教授とは部活の友人

大村氏は、深澤教授の高校時代の同級生。二人は野球部で、共に白球を追った仲です。
大村氏は日本経済新聞社で数々の業務に就かれた後、日経メディアマーケティングの代表取締役社長を務められ、2023年3月に日経を退職したばかり。退職を機に、第二のキャリアデザインを考えているところと言います。
また、学生の前で講演をされるのは今回が初めて。「今日が第二のキャリアのデビュー戦です」と講演を始められました。

大村氏の子どもの頃の夢は小説家。書く仕事がしたくて新聞記者を目指し、日経新聞に入社しました。最初は記者ではなく記事の編集をする整理部に配属になりました。入社後は失敗と挫折の連続だったと言います。しかし最後は先輩が助けてくれたと感慨深く話されました。

「今日、新聞を読んだひとはいますか」大村氏の問いかけに手を挙げた学生はゼロ。学生たちは無料のニュースサイトやテレビ、SNSなどから情報を得ているという回答に。若い世代が新聞を読む機会が減っているのが新聞業界の課題です。

若者たちに贈る「名言集」

今回大村氏は、学生たちに伝えたい言葉として、インタビューした多くの成功者の言葉のなかから選りすぐりの「名言集」を持ってきてくださいました。最初は「ファーストペンギン」。財界の重鎮、小林喜光氏の言葉です。ファーストペンギンとは、群れの中から真っ先に海に飛び込んでいくペンギンのこと。転じて、勇気と主体性を持って行動する先導者のことを意味します。「企業文化もファーストペンギンが出ると変わっていく」と大村氏は語りました。

「ラストマン」というのは最終責任者という意味で、最後の責任を取るリーダーのこと。どんな活動でもリーダーは必要です。そのなかで、ただ選ばれるのではなく自分で考え行動し責任を取れるリーダーになってほしいと大村氏は話しました。

中外製薬会長の言葉は「失敗を恐れるな」でした。「日本は失敗に厳しいですが、アメリカでは失敗すればヒーローになる」と言い、チャレンジ精神の大事さを伝えました。モルガン・スタンレー証券のアドバイザー、ロバート・フェルドマンの言葉は「いでよ異端児」。「チームワークを大切にするなかで、挑戦のためには異端児もいなくてはいけない」と話しました。

メディアをどう使い分けるか

ニュースの影響力の大きさを示す事件として、大村氏は2016年のアメリカ大統領選について触れました。当時世論はクリントン氏の圧倒的有利と思われていましたが、結果はトランプ氏の勝利。これには共和党寄りのメディアFOXTVの報道が大きく寄与していると言われています。また、AIはSNSなど含めビッグデータの解析からトランプ氏勝利を予想していたと言います。

これからの時代、情報をどう扱うかは大きな問題です。
そこで大村氏は「上手にメディアを使い分けることが大切」と言います。例えば物事について詳しく知りたいとき、ネットニュースだけではなく新聞がどう書いているかを読むことを勧めました。新聞各社がそれぞれどのように報じているか、それは本当なのかを疑う姿勢を持つことで「自分なりの立ち位置というのが分かるようになります」と話します。また、1対1の対話力を磨くことも大切。「名言は1対1で話しているときに出てきます」と話しました。

AIとどう付き合っていく?

現在話題の「chatGPT」に関しても話されました。「すごく大事な問題で、いろいろ考えなくてはいけない」と語りました。「インターネットのように、世の中を変えてきたものというのは必ず浸透します。間違いなく、10年後や20年後の将来には当たり前の技術になっている」と言います。AIに仕事が奪われるという未来予測もある中で、では何に気を付けていけばいいのでしょうか。

AIにできないことは、判断することや新しく何かを生み出すことです。「これからは自分たちに何が出来るかを考えていく時代になるでしょう」と、自分で考え判断する大切さを伝えました。

失敗を失敗のままにしない

講演後、学生たちはグループディスカッションを経て大村氏への質疑応答が行われました。「名言の中で失敗を恐れるなとあったが、どうしても失敗を怖がってしまう。どうしたら一歩進めますか」という質問には「失敗するかもと立ちすくむのではなく、失敗した場合のリスクをどう乗り越えていけるか考えることだと思います。経験者に聞いたり調べたり、失敗を失敗のままにせず、どう立ち上がるかだと思います」と回答しました。

「情報をどのように取捨選択すればいいでしょうか」という質問には、「新聞を読むのが良いと思います。新聞は記者が現場に行き、一次情報にあたって取材しています。裏付けが取れた情報しか載りません」と、新聞の情報の正確性を伝えました。また「週に1回でも新聞の1面だけでも読むと、今何が起こっているかが分かる」と、新聞を利用することを勧めていました。

最後に大村氏は「今回の授業で一番伝えたかった言葉はファーストペンギンです」と話しました。「最初に手を挙げて発言することや、一番に教室に入って準備することもそう」と、先陣を切る勇気を持つことの重要さを再度伝えました。

学生たちにとっても、失敗しても挑戦することの大切さを学んだ講演となりました。

担当教員からのメッセージ

大村氏と初めて会ったのは高校1年の時、以来約半世紀が経とうとしています。しかし、今でも時々会う大切な仲間の一人、やはり社会で大切なのは人脈であることを改めて感じています。大村さんが会社を離れると聞いてお目にかかった時に、私の夢は大学生に自分の経験や生き様を伝えることだと聞き、今回の舞台をご用意させていただきました。豊かな経験に基づく珠玉の言葉の数々に、大村さんのキャリアの年輪の厚さを感じました。

2023年6月15日

何のために働く?「女性とキャリア形成」の授業で元スターバックスCEOによる講演が行われました。

5月11日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に、元スターバックスコーヒージャパン株式会社CEOの岩田松雄氏をお招きし「ミッション」についての講演が行われました。現在は株式会社リーダーシップコンサルティング代表として、多くのリーダーを育成されている岩田氏。変化の多い現代を生き抜くための力の養い方や、使命としての「ミッション」の大切さを話されました。

変化の大きい時代の力の付け方とは

進行は担当のグループ(CUBE)が行う授業スタイルです。
司会の学生から紹介され、岩田氏の講演が始まりました。
岩田氏はまず講演の聞き方のコツとして、「最後に必ず一つ質問しようと思って聞くこと」を紹介しました。岩田氏が大学生のころから40年間実践している聞き方です。集中して話を聞くようになり、分からないこと引っかかることをそのままにしない姿勢が身に付きます。学生も就活のセミナーなどでも実践できる方法です。今回の講演も質疑応答の時間が設けられます。「なんでも聞いて下さい」と気さくに話されました。

今回進行を担当したグループの学生

最初に示されたのは「VUCA」という言葉。VUCAとは将来何が起こるか予測困難な状態のこと。現代はVUCAの時代と話します。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、なにがきっかけで世界が変わるか分からない時代です。

このVUCAの時代に必要なことは、3つ。
1つめの「視座を高める」は自分が他の人の立場だったときを考え、俯瞰して物事をみることです。
2つめは「視野を広げる」こと。知らないことを知ることです。検索で物事を調べようとしても、自分の興味のあることしか調べません。「意識的に知らないことに興味を持っていくことは大事」と言います。
3つめは物事や情報をどう受け取るか「視点を鍛える」こと。これらには学び続ける力が必要です。「卒業するためだけの学力ではなく、自分の基礎を作るために学ぶことが大切」と話しました。

企業は世の中を良くするためにある!

岩田氏は新卒社員として日産自動車株式会社に入社。当時から経営に興味があり、アメリカへ社内留学し経営理論を学びます。帰国後日本コカ・コーラ株式会社や株式会社アトラス、株式会社タカラ、株式会社イオンフォレストなど名だたる企業の社長や役員を歴任されました。社長に就任してから、これからは企業価値の時代になると気付き、働く姿勢や「何のために働くのか」が大事になると感じたと言います。

そこで大事なのが「ミッション」です。
ミッションとは企業の存在理由。
岩田さんは、企業とは「商品やサービスなど企業活動を通し、世の中を良くするためにある」と言います。企業は利益を出さなければ存続できませんが、利益はあくまでも手段であることを忘れてはならないと強調されました。

ではなぜミッションが大事なのでしょう。
「社会は大きく変化しています。すべての変化に対応したマニュアルは作れない。指針となるものがミッション」と岩田氏。
現在は多様性の時代です。様々な価値観を持った人たちが同じ方向を向くのは難しいことですが、ミッションがあれば共通のゴールになるのです。「就活のときも、その企業のミッションを一緒に実現したいと思える会社を探されたらいいと思います」と語りました。

自分の「ミッション」を見つけよう

ミッションは企業だけではなく、個人にも。
「自分が、好きで得意で人のために役に立つことをヒントに、自分の使命を考えていってください」と話しました。好きなことは情熱を持って取り組み、継続できることです。継続して続けていると、それは得意になり、のちに人の役に立ちます。

「好きなことが分からない、という時はまずは目の前のことを一生懸命やること」と話しました。
例としてお茶汲みをされている姿に岩田さんが出会われたことをきっかけに、その後岩田さんの社長秘書になった人の話をされました。お茶を出すタイミング、温度、好きな銘柄などをお客様に合わせ提供するという気配りを岩田さんが見ていて、秘書に登用したという話です。どんな仕事でも手を抜かず取り組むことで、サポートを得られたりチャンスをつかんだりできるのです。

小さな成功体験が自信につながる

講演後に学生たちはグループで意見交換し、質問を考えました。
質疑応答の時間に進行役の学生が挙手を促すと、多くの学生が手を挙げました。
「岩田さんのミッションはなんですか」という質問には
「リーダーを育てること。日本に良い経営者を増やしたい」と話し、
「もっと言えば、目の前にいる人を元気にしたい。この講演を聞いてくれた皆さんのやる気をちょっとでも起こせたら、今日のミッションは達成です」と語りました。

次の学生は「挫折したときはどうすればいいでしょうか」と質問。
岩田氏は「自分の価値を信じること。倒れてもいいけれど、指だけでも動かしてみる。落ち込んでいる自分に落ち込まないこと」と、やる気を失わないことの大切さを伝えました。
「そのためには小さな成功を積み重ね、自分をほめることです。経験だけではなく実績を積み重ねることが自信になります」。

最後に司会の学生から「頑張りは必ず誰かが見ているから、アルバイトや学業なども一生懸命取り組んでいきたいと思いました。素晴らしい講演をありがとうございました」と感想とお礼の言葉がありました。

これから社会に出る学生たちにとって「何のために働くのか」という根本的なテーマを考えるきっかけとなる講演でした。

担当教員からのメッセージ

岩田様には、本講座のみならず、キャリア開発実践論、キャリアデザインなど、数多くの授業においてご講演をいただいています。そして、その際は、決して大学生向けの内容ではなく、日頃、岩田さんが主たる相手として時を共にされている企業トップや経営層、管理職に話されていることを本学の学生に語って下さっています。学生にはややレベルが高いのではないかと思いましたが、本学の学生は、岩田さんのお話しに真剣に耳を傾けており、また、岩田さんが、語り掛けて下さる言葉が素晴らしく、きっと5年後10年後まで学生一人ひとのキャリア形成に大きく関わる内容として届いてくれていると感じます。岩田様には、改めて心から感謝申し上げます。

2023年5月18日

美学美術史学科の学生が日本紙通商(株)(日本製紙グループ)との協働プロジェクトで防水ダンボールの新商品のプレゼンを行いました。

3月23日(木)に美学美術史学科の学生たちが、日本紙通商㈱(日本製紙グループ)の皆さまの前で防水ダンボールの商品のプレゼンを行いました。3月13日に御茶ノ水にある本社にお邪魔して、アイデア出しをした中から選定しブラッシュアップを重ねました。学生たちは直前まで資料を作りなおし、新たな防水ダンボールの可能性をプレゼンしました。

防水ダンボールを子ども向け商品に

最初の発表は子どもの歯固め「もっしゃー」。歯が生えてくるむずがゆさを解消し噛む練習になるアイテムです。口のなかに入れるものなので衛生面が第一。そのため汚れたらすぐに捨てられるダンボールを使い、外出用など洗わずにすむものを提案。商品名は、学生たちが実際にかじってみた触感から名付けました。
発表後は、企業の皆さまからコメントをいただきました。「防水ダンボールそのものは口に入れられないのですが、食品用のボール紙で作ったら面白いのでは」と感想がありました。

次も子ども向けの商品の提案。「あめるんるん」は子ども用のレインコートです。キリンやウシの動物の模様が印刷されたケープ型レインコートで、動きやすく付け外しも簡単。着ぐるみ的要素もあるため、雨の日も子どもも楽しんで着られます。子どもは成長が早いためすぐサイズが合わなくなり新調する必要がありますが、ダンボールならコストも抑えられます。発表後には「思いつかなかった案で面白い。動物園とのコラボもできるかも」と着眼点に感心されていました。

3番目の「ぱずさりー」は小学生をターゲットにした知育玩具です。形をきりぬいて、ひもでつなげたりシールを貼ったり、ものづくりができるアイテムです。名前はパズルとアクセサリーの造語で、遊び終わったらパズルのようにはめ込んで片付けられるところから。実際に試作品を作ってプレゼンしました。
企業の方からは「商品化できるかも」「レベルアップしたものをつくれば大人用も作れる」などの意見も出ました。

大人の癒しに防水ダンボールを

次の発表は「カプセルトイ」という斬新な案。カプセルトイ市場は拡大しており、植物を育てるキットなども販売されていることに注目。ダンボール製カプセルがそのまま鉢になり、ハーブや雑草を育てるというものです。大きなサイズでは野菜や木の苗を育てられるものを提案しました。
発表後「似たような商品は実は既にあるが、中身をアップデートするのは良い案」とコメントをいただきました。

次の「段ルーム」は簡易サウナになるダンボールハウスです。従来品は大きく保管に場所を取り、高価なことが難点でした。防水ダンボールであれば自宅で手軽にサウナに入れ、リーズナブル。持ち運びも簡単なのでキャンプにも最適です。サウナは睡眠の質を改善するデータを提示し、市場も拡大しているとアピールしました。
コメントでは「防水ダンボールと相性がいいと思う、実現可能性が高い」「サウナに興味があるけれど迷っている人も気軽にできそう」と好感触の感想をいただきました。

「段ルーム」はもう1案あり、子ども向けの秘密基地も提案されました。子どもが自分で組み立てられ、絵を描いたり塗ったりオリジナルでデザインできます。防水ダンボールは丈夫で水にも強いので、子どもが遊んでも安全です。
コメントでは「犬小屋などもいいかも」などの意見が出ました。

既存のものを防水ダンボールで作ると?

次の発表は御茶ノ水本社でのアイデア出しのときも話題となった「棺」です。名前はダンボールに「安らぎ」を加えた「Danboarest」。最初に現在葬儀にかける費用が減少傾向にあることがデータで示されました。防水ダンボールの棺であればエコに配慮し経費も削減できます。また、棺の形をカスタマイズしたり、色やデコレーションパーツで彩ったりも可能です。親族や本人、アーティストのデザインや「推し」を全面に出した「痛棺」も提案されました。用途も人に限らず、ペットやぬいぐるみなど大切なもののお焚き上げという提案もありました。「とても興味深かったです、お焚き上げの案も面白い」とコメントもいただきました。

次は「アイシャドウパレット」。プラスチック製では落としたとき壊れやすいですが、ダンボールでは破損を防ぎます。類似品は海外製ではありましたが、パッケージがシンプル。紙パッケージのものは日本製でもあり、デザイン性や種類も豊富でした。今回はダンボールらしさを追求した、「みかん箱」や「りんご箱」を模したデザインを提案。10~20代がパケ買いしたくなる可愛らしさや面白さをプレゼンしました。「素晴らしい練り具合。コスメ会社も環境配慮に敏感のため実現性がある」と、感嘆の感想もありました。

最後は「花型絵具セット」です。筆洗器のフタにパレットをつけ、持ち運びが簡単なお絵描きセットです。旅行やアウトドアで気軽に絵を描け、思い出作りにも最適です。発表後には「複雑な形状だと水がもれないようにするのが難しいかもしれないが、紙コップなどを転用すればできるかも」といった意見がありました。

春休みの特別プロジェクト

全員の発表が終わり、最後に水田氏から講評をいただきました。「皆さん本当にお疲れさまでした。ここまで短い時間だったのに、想像以上の出来でした。我々も勉強になり刺激になりました」と学生たちの頑張りをねぎらいました。また、「せっかく良い案がたくさん出たので、今後引き続き一緒にやっていけたらと思います」と言葉もいただきました。

授業外の有志の社会連携プロジェクト。学生たちは春休みの時間を使い、アイデア出しから選定、企画を作成しました。市場調査や資料作りも限られた時間のなかで、ぎりぎりまで作成しました。プレゼンは初めての1年生もおり、実際の企業の方に見ていただき意見をいただく貴重な経験となりました。

2023年5月18日

美学美術史学科の学生が日本紙通商(株)(日本製紙グループ)との協働プロジェクトで防水ダンボールの新しいアイデアの創出を行いました。

2023年3月に美学美術史学科の下山肇教授のもと、日本紙通商㈱(日本製紙グループ)協同プロジェクトが行われました。「防水ダンボールの新しい使用方法をデザインする」ため学生たちは、女子大生ならではの考えや感性を活かしてアイデア出しを行いました。3月13日(月)は、なんと本社に伺い、社員の方々にアイデアの卵を見ていただく貴重な機会になりました。今回人気のあったアイデアをまとめ、後日最終プレゼンテーションに臨みます。

アイデアの出発点は自分の好きなもの

場所は御茶ノ水にある、日本紙通商㈱(日本製紙グループ)の本社内。
学生たちは少し緊張しつつも、初めて実際の企業のなかに入る貴重な経験になりました。

まずは下山教授から今までの概要が説明されました。先日、日本紙通商㈱(日本製紙グループ)の皆さまが大学を訪れ、学生たちは防水ダンボールを実際に見せていただきました。
そこで感じたことを活かし、新たなアイデア創出するためこれまでに6回話し合いを行ってきました。
女子大生ならではのアイデアを活かすため、出発点としたのは
①今自分にとってホットなもの、こと ②今ほしいもの ③(防水ダンボールから発想して)水と言えば何?の3つ。

まずは防水ダンボールそのものからは離れ、自分の好きなものなどを挙げていきました。
タコ焼き機、コスメ、ゲームやアニメ、映画、サウナ、一人旅、アウトドア、編み物、ランドセル…。
さまざまなものが提示されました。

③では水彩絵具、お風呂、ペットボトル飲料、洗濯やトイレといった素直な連想から、水害や水ようかんといったものまで。
「そうして抽出したものに、一見かけはなれた印象の防水ダンボールをくっつけたときに、いったいどういうことが考えられるだろうかということをみんなで話し合い、たくさんアイデアを出してきました」
 アイデア出しには3つのポイントが。
 ・発想は中途半端なところで終わらせず、とことん突き詰めること。
 ・一つの価値観を裏返して反対の意味をくっつけたらどうなるか考えてみること。
 ・遠い属性と思われるものをくっつけてみること。
この3つのやり方で、「質より量」とアイデアをとにかくたくさん出しました。

面白いアイデアに投票しよう!

「今までの社会連携のやり方ですと、最後まで提案の検討が終わったあとに連携先企業へプレゼンテーションを行い、その結果に対して企業の方が評価をしてくださることが多かったのですが、今回は案が固まる前にアイデアに対していっしょにディスカッションを行いたく、時間を取っていただきました」と下山教授が今回の意図を説明すると、アイデアが部屋いっぱいに並べられました。机だけでは足りず、床にも所狭しと並べられます。その数は80個以上。こんなものがあったらいいな、面白いなという発想からスタートしたまだ柔らかいアイデアの数々です。

例えば「雨×防水ダンボール」というアイデアでは、「リサイクルできる傘」として、安価でビニール傘の代替品になる「ダンブレラ」が考案されていました。また「楽器×防水ダンボール」ではダンボールを組み立てて作るドラムセットという、面白いアイデアです。

企業の方も含め、学生たちにはシールが配られました。この日行うことは、全てのアイデアを見てそのなかから自分が良いと思ったものにシールを貼ってアイデアを絞り込む作業です。シールの色は3種類。ピンクは「最も成功する可能性が高そうなアイデア」、緑は「最もユーザーを喜ばせると思えるアイデア」、青が「最も画期的なアイデア」にそれぞれ貼っていきます。シールは色ごとに4枚まで貼ることができます。

アイデアはひとつひとつどれも新鮮で興味深く、企業の方々も「どれにしようか本当に悩む」「決めるのが難しい」とうなり、学生たちの発想力に感心していらっしゃいました。

人気を集めたアイデアは?

全員がシールを貼り終えると、シールの数が多いアイデアが発表されました。「衛生的に使える使い捨てまな板」や「子どもに人気なアニメのアイテムを模したしゃぼん玉機」、「自転車のかごカバー」や「子ども向けダンボールハウス」などが挙げられました。「アイシャドウパレット」には、軽くて持ち運びやすく、落としても割れないパッケージという利点あり、多くのシールが貼られていました。

「筋トレできるダンボール」を考案した学生は「成長×ダンボール」から発想。箱型のダンボールを棒の端に2つ付け、水を入れてウェイトトレーニングできる器具を発案しました。「汗をかいてもすぐにお風呂に入れる」などのメリットを挙げていました。

特に人気を集めたアイデアが「棺」。アイデアを出した学生は「自分が参列したお葬式で、棺はシンプルな木製のものしかなく、地味に感じた」といいます。「ダンボールなら印刷もできるし、自分が死んだときに自分の手で描いたものも良いなと思いました」と自分の体験から発想したことを語りました。発展して「ペット用の棺があればいいなと思った」という意見も出ていました。

本当に商品化できる?最終プレゼンへ!

最後に企業の皆さまから感想や気になったアイデアを伺いました。アウトドアがお好きだという方からは「カヌー」案が推されました。「アイシャドウパレット」を推した方は、「実は今、アイシャドウのチップを紙ストローで試作しているんです」と、併せて進められそうと実現可能性を感じていらっしゃいました。

全員が投票し、絞られたアイデアは20個ほど。ここからさらに何案かを選び出し、ブラッシュアップして3月23日(木)の最終プレゼンテーションに臨みます。

2023年2月21日

「実践キャリアプランニング」の授業でロレアル パリとのコラボが行われ学生たちは「人権問題に配慮したCM」について発表しました。

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、食生活科学科の学生と、ロレアル パリとのコラボが行われました。学生たちは出された課題「人権問題を意識し配慮の足りた広告を作るために大切なこと」をプレゼンしました。プレゼンでは実際に使用されたCMを例にとり、発表後には菊池氏や山下氏からフィードバックがありました。プレゼンは2週にわたって行われ、この日は後半の9グループが発表を行いました。

人権問題についての意識とは

トップバッターの1班は肌色問題から人種について考えました。
大手食品会社のアニメCMでは選手の肌が実際より白いことが問題になりました。
クレヨンなどの「肌色」は2000年頃から、多人種の肌色の固定概念をなくすため「うすだいだい」と呼ばれています。肌の色の固定概念をなくすことが大切であるとまとめました。


菊池氏は
「肌色という固定概念を植え付けられていたなと気付かされました」と話しました。

次の14班は、飲料と異業種のコラボCMを紹介。
さまざまな人種が出演しており、家政夫が男性です。対して脱毛の車内広告は若い女性のみが起用されていることを指摘。性別や年齢にとらわれない広告を作成するためには、第三者からの視点も必要と提案しました。


山下氏は
「脱毛のモデルが若い女性ばかりと気付かされました。脱毛は恥ずかしくないという意識改革も必要」と共感しました。

洗濯洗剤のCMにおける男女差を取り上げた8班は、悪臭の原因は男性から、主婦が洗濯という偏見に言及しました。
対してあるブランドのCMは男性俳優を起用し、固定概念を覆していると評価。男女差別がなくならないのは受け手が無知だからとし、視野を広げて自分から関心を持つことが大切と訴えました。

菊池氏も
「(評価されたCMは)男性も共感を呼びやすい作り。男性の家事需要に合わせている」と着眼点の良さを褒めていました。

性差別をどう解消するか

15班は大手化粧品会社のCMを紹介。
結婚や若く見られるなど、年齢で女性の価値を決めてしまっていると取れるCM例をだし、「メイクは人の価値ではなく自分の個性を作るもの」と伝えました。
女性はメイクをしなくてはならないという固定概念を覆すために男性を広告に起用するなど、異なる価値観を取り入れることが大切だとしました。


山下氏は
「時代として可愛いという価値観ではなく、自分に似合うものはなにかという方向に進んでいる」と共感を示されました。

16班は昔と今のおむつのCMを比較。
40年前は女性が家事と育児の対象となっていましたが、最近のあるCMでは男性が起用され育児する姿を見せています。男女の固定概念にとらわれず、家事や育児も女性だけではなく両者に向けることを伝えました。


菊池氏は
「赤ちゃんのために男性がおむつを選んでもいいという発信をしている例。素敵な例を見つけてくれた」と感心されました。

5班もおむつCMを取り上げました。
母親のワンオペ育児を連想させるCMを批判を受けた例として提示。経済力の差を感じてしまうため有名タレントは使われづらい育児関連商品のCMには女性が起用されることが多いのですが、ある製品では男性タレントを起用しイメージを変えたことにも言及しました。


山下氏も
「タレントも含めどんどん男性を出していくべき」と共感されました。

ジェンダー問題を意識した広告

11班はインフラのCMを取り上げました。
男性が家事や育児を行い、女性が働いている描写があり、性別のイメージで固定しないことが配慮と考察しました。
悪い例として挙げられたCMでは「脱毛をしていないと良くないことが起こる」というネガティブなメッセージングが問題に。「広告で性別に対する偏見を覆すこともできる」とポジティブなメッセージを伝えることが大切と提案しました。

菊池氏は良い例に上がった企業は、大手の優良企業であるとし「就活を考えるなかで、企業がどうマーケティングしているかみるといいと思います」と助言も出ました。

4班は大手百貨店が賛否両論を受けたCMを例に挙げました。
日本での女性の生きづらさを訴えた広告でしたが、食品を顔に投げつけられても笑っているのは我慢させられているように見えるなど批判も浴びたCMです。「人権問題を意識するあまり逆に配慮が足りないと思われてしまうこともある」と広告の難しさを伝えました。


山下氏は
「賛否両論あるCMを挙げたのは勇気あり、考えさせられました」と語りました。

ラストの10班はLGBTQに着目。
マッチングアプリの広告は男女のみを描いており、恋愛=男女という認識が根深いことを伝えました。
また、大手アパレルが作成した女性カップルの日常を描いたCMを紹介。このCMには批判的な意見も多かったと紹介しました。しかし「今以上に大きな声で発信していくことが大切」と偏見をなくすことの重要さを伝えました。

菊池氏は
「やるなら批判があってももっとやるべきという意見はその通りだと思う」と学生たちのまっすぐな気持ちに感嘆しました。

人権問題に取り組んでいける社会人に

2週にわたったプレゼンも終了。
最後にこの日のロレアル パリ賞が発表されました。選ばれたのはLGBTQを取り上げた10班でした。
学生たちも各班に点数を付けており、後日学生間賞も決まります。

最後に菊池氏から総評をいただきました。
「マーケティングのことを考えてもらえればと思っての課題でしたが、どの発表もとても面白かったです。皆さんも、提示された悪い例のようにならないように頑張っていきましょう」とこれからの時代を生きる学生にエールを送りました。

深澤教授の話

ロレアル・パリ様には、今年度、初めてご支援をいただきました。私自身も食物科学専攻のクラスを担当するのも初めてということで、テーマ設定に悩んでいたところ、ロレアル・パリ様とのご縁をいただき、素晴らしい内容を構築いただきました。まずは、Voice Up Japan様にご協力いただいたStand UPにフォーカスした講義をいただき、ジェンダーや平等、社会での活躍の話をいただきつつ、ストリートハラスメントについて学ばせていただきました。その後は、ロレアル・パリの菊池様、山下様にお越しいただき、ジェンダー論×マーケティングについて、昨今のinclusivityに焦点を当て、ジェンダーやセクシュアリティ、人種を意識したマーケティングについての講義とグループディスカッションそしてプレゼンテーションセッションに繋がる内容となりました。食物科学専攻の学生さんの学びとは、一見遠いようで、実際に取り組んでみると、かなり強い結びつきを発見出来たことも事実であり、大変貴重な学びの場となりました。ロレアル・パリ様には、この場を借りて心から感謝申し上げます。