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2023年8月8日

生き方を輝かせる考え方とは?「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員がポジティブ思考の大切さを話されました。

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月6日に株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えし講演が行われました。進行は担当グループの学生たちが行います。関根氏は自身の経験とともにポジティブシンキングの大切さを伝えられました。

美しさは見た目だけじゃない

進行担当の学生から紹介を受け、笑顔で「本日は大変楽しみにしてまいりました」とあいさつをされた関根氏。
背筋を伸ばし、ピンヒールを履いて話す姿は学生たちの目にも、美しく感じられたようです。姿勢や見た目の美しさを保つことも関根氏の信念と話します。
「いつか関根さんのようになりたいと思われるように、このような信念も大事だと思います」と講演を始められました。

関根氏が入社した当時から、資生堂は女性社員の比率が高い会社でしたが「バリバリの男性社会だった」と言います。
少ない男性たちが会社の方針を決めていたのです。関根氏が大阪の販売会社の支店長になった際には「女には務まらない」と言われ、役員になった時も女性の数はたった2人でした。
ただ、女性が多い会社だったためにその後役員登用の道が開けたとも言います。
現在は政府も女性役員3割以上とするよう後押しをしており、だんだんと女性の意見は通りやすくなっています。
「一つの基準としてその会社の女性役員の比率を見ておくといい」とアドバイスされました。

自分の強みを生かしたことで仕事に喜びを見出した

関根氏は学生時代、教師になりたいと大学進学を考えていた矢先、家族が事故に遭い就職を選択せざるを得ない状況になりました。生活のために仕事を探し、運よく入社したのが資生堂だったと言います。
最初は美容部員として接客する仕事でしたが、ある日プロモーションチームに配置換えに。仕事内容は、ノルマを与えられ推奨品を売ること。
ノルマはきつく、高い商品を売りつけるだけの仕事に気持ちがなえてしまった関根氏は、先輩に辞めたいと相談に行きました。

そこで言われたのは「あなたの強みは何?」でした。
「お客様の持っていないあなたの強みを、お客様にお届けするのが役目」と言われ、関根氏は一念発起。
美容知識を駆使して、一人ひとりに合わせたアプローチ方法に変更しました。すると、後日お客様が来店して関根氏を指名してくれたり、友人を連れてきてくれたりするように。さらにはお客様に「ありがとう」と言われるようになりました。
関根氏は「今までは商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたのが、お客様から言われたことで、仕事に喜びを見出しました」と語ります。
そのときに「日本一の美容部員になる」というキャリアビジョンを、初めて描いたと言います。
環境は変わらずとも、考え方が変わったことでやりがいを見出すことができた経験だと語りました。

仕事もプライベートも輝くためのウェルビーイング

輝くための必要な生き方として、関根氏は「ウェルビーイング」を紹介しました。
身体的にも精神的にも良好な状態であることを示すウェルビーイング。ハピネスも幸せですが、ウェルビーイングは多面的な幸せを指します。

ウェルビーイングになるためにはポジティブなマインドがベースになります。
ただ、「ネガティブは否定しません」と関根氏。
「ネガティブだからこそ、ポジティブな考え方が必要なんです」と話します。そして「皆さん、自分を好きですか?」と問いかけました。
自分が一生離れられないのは、自分です。「自分のことを嫌いではとてもつらい。自分を好きになることで心底他人のことを愛せるし、喜びを感じることができます」と語りました。

自分の長所を言えますか?

ポジティブマインドのコツとして、関根氏は「毎日少しずつラッキーなこと、喜ぶことを見つけること」だと言います。
楽天家になれということではなく、「なにか問題が起こっても希望や解決策を探そうとする思考が本当のポジティブ思考」と話しました。

さらに関根氏は「自分の長所を10個書けますか」と問いかけます。
日本人は長所を言うことを傲慢だと思う傾向がありますが、「国際社会では負けますよ」と関根氏は断言。
自分を堂々とアピールすることが、国際社会では当たり前です。自分の意見を持ち発言する大切さを伝えました。
「私も役員になったとき、美容部員あがりと言われた。でも私は美容部員の経験は強みと思っています」と話し、誰かと比べるのではなく自分の経験を積み重ねることの大切さを伝えました。

ポジティブ思考でいこう

講演後、学生たちはグループごとに話し合い、質疑応答の時間に移りました。
「忙しい中どのように優先順位や時間を作っていますか」という質問には、「自分のなかで軸を作り、重要度や優先度を決めること。緩めるときは緩めることで、緊張感のある時間もできる。メリハリのある環境に身を置くことが大事です」と回答されました。
「海外で戦える人材として必要なマインドはなんですか」という問いには、「英語ができることが第一ではありません。自分の意見を考え、はっきり言えることが大事です」と回答されました。

最後に進行担当の学生から「これから社会に出て生きていく上で指針になる講演でした。まずはチャレンジし、失敗してもそこから学び成長し続けることが大切だと感じました」とお礼の言葉を述べました。
学生たちにとって、仕事もプライベートも輝いて生きるためのヒントを与えられた講演でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいには、憧れを感じています。企業時代には、お互いに厳しかった思い出も沢山あります。しかし、関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年7月20日

人から好かれる要素は「明・元・素」!「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子氏が人生とキャリアの選択について講演を行いました。

6月22日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えし、講演いただきました。本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。明石氏はご自身のキャリアと経験から、人生とキャリアの選択について、人とのつながりの大切さまで幅広く語ってくださいました。

大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリア経験

明石氏は1979年に日本航空株式会社(JAL)に就職。
当時は女性の就職は短大卒がほとんどの時代。4年制大学を卒業した明石氏は採用枠が限られていたため、特にCA(客室乗務員)になりたかったわけではないけれど応募したと言います。
当時は「キャリアを考えてバリバリ仕事をしようなんて全く考えていませんでした」と話します。
結婚をして退職し子どもも2人出産するも、その後離婚を経験されます。
その当時、女性の片親はハンディだったと言います。「これからどうしていこうと考えた時に初めて、仕事ができる人になろうと思いました」と語りました。

それまでいわゆるオフィスワークの経験は皆無だった明石氏は、当時ベンチャー企業だった株式会社パソナに入社。
自分で考えて動かなければいけない職場に、「業務は与えられたもの、仕事は自分で作り出すもの」ということを実感し、仕事をする楽しさを知ったと言います。
その後コンサルティング会社に転職し、自分で会社を設立。社会に役立つ仕事に関わりたいと思い、日本マナー・プロトコール協会を立ち上げました。
2015年には内閣府の委員を委嘱され、現在では大手企業の社外取締役も担っています。

企業の種類を知ろう

「みなさんの人生の大きなターニングポイントになりかねないのが就職です」と明石氏。
事前課題でもあった企業の見方や選び方を確認しました。上場企業のなかでもプライム・スタンダードなどレベルが分かれること、非上場の法人、行政も就職先としてありえること。
「何を基準に選ぶかは人それぞれですが、しっかり人を育ててくれるところがいいのではないかなと思います」と話されました。

「皆さんはどんな企業を知っていますか」と問われ、いくつか企業名が挙がりました。その多くは消費者に商品やサービスを提供するBtoC企業です。しかし多くは非上場だったり上場していてもレベルは下であったりします。
「企業規模と知名度があることは別問題」と明石氏。知っている企業が良い企業とは限りません。
BtoBやCtoCの企業など視野を広げることの大事さを伝えました。

自分のキャリア志向を確認する

「みなさん全員が仕事でバリバリ活躍したいわけではないですね。私は専業主婦もとっても素敵だなと思います」と明石氏。「自分を知ることで迷わないようにしてほしいし、いろんな意見に流されず後悔しないで欲しい」と話しました。

ただ「やりたい仕事やなりたい自分への道は遠いかもしれない」とも語ります。
まず与えられた仕事をしっかりやってみることが大事と話しました。渡辺和子氏の「雑用という仕事はありません」という言葉を引用し、どんな仕事も心を込めてやっていれば、それを見てくれる人もいると諭しました。
今はキャリアチェンジがしやすい時代ではありますが、次のチャンスがいいものとも限りません。まずは継続する勇気を持つことが大切です。

人との付き合い方が大切

「会社って何かというと単なる人の集団なんです」と明石氏は話します。ビジネスは人が協働して成果を出すこと。
しかし、人間同士で行うことなのでトラブルも起こります。「でも人がいることで頑張ったり励まされたりすることも確かです」と、明石氏は3つの言葉を紹介されました。
アドバイスや勇気をくれる「メンター」、人生の理想像である「モデラー」、どんなときも支援してくれる「サポーター」です。
この3つに該当する人たちを見つけ大事にすることを勧めました。

コミュニケーションのコツは「明・元・素」と明石氏。
明るい、元気、素直な人のことです。
また、他人のせいにしないこと。「他人のせいにすると何も解決しないのでストレスが溜まるんです」と伝えました。自分でどうしたら解決できるかを考えることが大切だと話しました。

2022年に発表された女性の平均寿命は87.6歳。
明石氏は「就職してからの人生の方が長いんです」と言い「充実した時間を過ごして欲しい」と話します。先が見えなくて不安ということは、どんな可能性もあるということ。
「皆さんは、これからなんです」と力強くエールを送られました。

あなたのキャリアと人生は?

質疑応答の時間では多くの学生から手が挙がりました。
「折れないようにするための心の持ちようは?」という質問には「苦手な人との距離感を知ることじゃないかなと思います。また、メンターに助けてもらうなど自分が立ち直る方法を探すこと。深く折れてしまう前の方法を見つけましょう」と回答。

「他人のせいにする方がストレスは軽くなると思っていたので驚きました。逆だと思ったきっかけはなんですか」という学生には「離婚の経験が大きかった。自分にも理由があったと思ったら変われる。成長のチャンスになりました」と話されました。

最後に進行担当グループの学生から「知っている企業が良い会社とは限らないことなど、事前課題も含めとても良い学びになりました。
明・元・素など、今後の人生の指針となることを教えていただきました」とお礼の言葉があり、大きな拍手が起こりました。

担当教員からのメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様にご登壇いただきました。とにかく終始笑顔を絶やさずお話しされる姿には、学生とともに感動いたしました。様々なご経験の中から培われたポジション思考は、明石様の生き方そのものだと思います。この場を借りて、明石様に、心から感謝申し上げます。

2023年7月19日

世界一のホスピタリティの秘訣は?「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。

6月8日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。テーマパーク開園当初の様子や、初の女性管理職としての奮闘ぶりをざっくばらんにお話くださいました。学生たちは世界に誇れるホスピタリティの秘訣に触れる機会になりました。

テーマパーク開園時の苦労は?

授業の冒頭の出欠確認に、この日は仕掛けがありました。
出欠管理システムで当たりが出た2名の学生には東京ディズニーランドの記念グッズが。学生たちからは歓声が上がり、授業のやる気も高まりました。

今回進行を担当したグループの学生

進行役の学生たちも、ミニーのカチューシャを付けてゲストを紹介いたしました。

永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
オリエンタルランドも当時は男社会。
希望していたグランド・サーキット(アトラクション)には女性を採用できないと言われ、シアター型のアトラクションに配属になったと話します。
「徐々に女性も働けるようになっていきました」と言い、今ではカヌーを漕ぐ力仕事のアトラクションにも、女性が多く採用されていると話します。

東京ディズニーランド開園当時、テーマパークは日本人にとって初体験。
ピクニック気分でお弁当を持参してしまう人も多く、持ち込み禁止が来場者へ浸透するには5年ほどかかったと言います。アトラクションキャストだった永嶋氏も何度もゲストにお願いをしたと笑いを交えて話されました。

男性社会に負けずに管理職に

1998年に管理職研修を受け、管理職試験に最初に受かった女性となりました。
1990年代は修学旅行先として選ばれるようになり、永嶋氏は営業部として教育委員会や文科省の方々との交渉にあたります。
「上層部の方は、テーマパークは遊ぶところというイメージがあり、修学旅行にふさわしくないと思われていました」と、イメージを変えるために奔走されたと語りました。

ここで永嶋氏は一つの言葉を提示。
「オールドボーイズネットワークって知っていますか?」男性中心の組織内の独特の文化や仕事の進め方、人間関係を指す言葉です。
民間企業は変化してきているものの「地方や公共機関などでは、まだ古い体質が蔓延っている」と永嶋氏。
実は永嶋氏も管理職試験を1度落ちていると話します。「自分より年下の男性が受かっていて納得できなかった」と話し、「女性の先駆者がおらず、管理者の経験や知識を聞けませんでした」と苦労を語りました。

ただ、元から執行役員になろうと思っていたわけではないと言います。
永嶋氏は「目の前のことが楽しくて、ただ頑張っていたら周りがさらにいろんな仕事を任せてくれるようになっていきました」と笑って語りました。

ゲストもキャストも楽しいハピネスの循環

2000年代、TVCMで「夢が叶う場所」を謳い、東京ディズニーランドは「夢の国」と呼ばれるように。
2010年代になると、ゲストとキャストが共に楽しむ、魅力のある場所へ成長していきます。エリアに合わせた挨拶や、掃除のキャストが落ち葉などで絵を描くなどのアイデアは、キャストの発案。
「ゲストにハピネスをお届けする」という理念を自発的に行っているのです。

キャスト研修に接客マニュアルはなく、安全第一に行動するという基準のみ。
東京ディズニーリゾートのホスピタリティは世界一と称されますが、その背景には「人間力」があると話します。
丁寧な対応やもてなしにゲストは喜び、その様子を見てキャストは嬉しくなり、モチベーションがさらにあがる。
これを永嶋氏は「ハピネスの循環」と語ります。

当たり前のことをしっかりやる「人間力」

ただ「お褒めの言葉もたくさんもらいますが、実はクレームもたくさんもらいます」。
クレームは賛辞の数よりも2桁ほど多いとのこと。そのなかで最も多いのが、キャストのぞんざいな行動。ゲストの目を見て話さなかった、笑顔がなかったなど、ぞんざいな扱いをされたと感じてしまうのです。
しっかり挨拶をして、ルールを守り、仲間を思いやり自分も楽しめる環境作りをすること。当たり前のことかもしれませんが、この当たり前ができる「人間力」が、世界一のホスピタリティを支えています。

「今の東京ディズニーリゾートを見ているとなんでも最初から成功しているように見えるかもしれませんが、そんなことないんです」と永嶋氏。
いろんな失敗や経験をしながら今の姿が築き上げられていったと話します。
「皆さんがこれから社会に出て、いろんな“はじめて”に遭遇すると思います。これまでの話のいいとこ取りをして、人生の参考にしてください」と講演を終えました。

部下を育てるのが管理職の仕事

講演後に学生はグループで感想を語り合い、質問の時間に。
「営業部のときに考えて成功した仕掛けはありますか」という質問には、「実は自分で考えた作戦はあまりないんです」と意外な回答が。
「部下の考えたことを形にして、世の中に広げていくことが管理職の仕事」と話し、部下のアイデアを工夫した体験を話されました。

授業の最後には進行担当のグループの学生からお礼の言葉がありました。
「東京ディズニーリゾートには小さい頃から行っていて身近でした。キャストの方が自ら行動して楽しませてくれていたのが分かって嬉しかったです。勉強になることがたくさんありました、本日はありがとうございました」。
最後は皆で記念撮影をして和やかに授業は終了し、その後、永嶋氏を囲んでアフタートーク会が開催されました。

担当教員からのメッセージ

永嶋様に初めてお会いしたのは、私が企業時代、しかも労組委員長の時でした。当日からアグレッシブな永嶋さんのお姿は印象的でした。以来、四半世紀、様々な場面でお世話になりました。今回も、私の願いが叶い、本授業のゲストにお招きすることが出来ました。今回の永嶋さまのお話しを聞く学生たちの姿は、真剣そのものです。学生にとっても身近な企業であり、その関心の高さが窺われました。永嶋さんが醸し出される雰囲気と、学生たちの反応、すでに「ハピネスの循環」が起こっていると実感した瞬間でした。永嶋様には、心から感謝申し上げます。

2023年6月22日

外資と日本企業の違いは?「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。

5月25日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、本学卒業生であり、客員教授でもあるSBI金融経済研究所株式会社の政井貴子氏をお迎えし、講演が行われました。外資系、日本企業、公的機関などさまざまな組織に在籍されていた豊富な経験をお話下さいました。

なぜ「女性活躍推進」なの?

この授業は学生たちが司会となり進行します。
学生から紹介を受け、政井氏がはじめに話されたことは「なぜ女性活躍を推進するのか」ということでした。
「なぜこんなに女性活躍についてうるさく言うのか、疑問に思う人もいるかもしれません。まずは背景をご説明していきます」と講演は始まりました。

今回進行を担当したグループの学生

女性の社会進出は世界的な課題です。1940年代の世界大戦以後、男女差別をなくしていこうとする動きが起こっていきました。日本でも1970年代から女性の参政権や解放運動などの動きが起こります。
しかし現代も日本はジェンダーギャップ指数では低迷。性別による分担意識や慣行をどう変えるか、女性が仕事をしたときの平等性をどう保つか、課題はまだ山積しています。

ただ、教育面では男女差が少なくなってきており、男女の役割分担意識も年齢が若くなるにつれ薄れています。
政井氏は「問題意識を持つ人は増えています。世の中の向きは少しずつ変ってきている」と伝えました。

外資系企業で20年活躍

「皆さんに覚えていていただきたいのは、仕事とは毎日生きていくなかで、楽しい、良かったと思える日を一年に何回かでも作るためにするんです」
と政井氏。
仕事のために生きていくわけではなく、一人ひとりが豊かな人生を送るために仕事はあります。社会に出てつらいことや悩みがあったときは「不幸になるために仕事をするのではない」ということを思い出してもらいたいと政井氏は強調しました。

政井氏は本学を卒業後、外資系企業に就職します。カナダ系の企業で、社員はほぼ外国人。書類も会話もほぼ英語です。社員の国籍もさまざまで、仕事をするなかで多様性が身に付き「外国の方々との交渉はとても上手になりました」と話します。

次に勤めたのもフランス系の外資系企業。ただ、こちらは日本に昔から根付いている大企業だったため日本人も多く、日本語で仕事をしていたと言います。「一言で外資系といっても幅があるので、外資系の企業を視野に入れる場合は、実態をしっかりと調べるといいと思います」とアドバイスをされました。

女性役員としての意識変化

外資系で20年ほど勤め、英語力やコミュニケーション力が身についた反面、日本企業では、当然学ぶであろう慣習などを全く知らなかったと政井氏は話します。例えばメールの挨拶、書類の文面のマナーなど。指摘された政井氏はショックを受け、「日本人としてちゃんとした社会人にならなければ」と日本企業へ転職します。

現SBI新生銀行に部長職として就任するも「最初は全然うまくいかなかった」と話します。日本人同士の仕事は交渉の仕方も外資の時とは違いました。また「今振り返ると女性の扱いが全然違った」と言います。外資企業では男女格差の少ない社内環境でしたが、比べると日本企業ではやはりギャップがあったと話しました。

しかしさまざまなチャレンジをすることでキャリアを積み、初の女性役員へ昇進。職務のかたわら、若い有能な女性役員候補たちと役員をつなげるパイプ役を、自分から積極的に担いました。役員になったことで自由度も上がり、やれることの幅も広がったと言います。
仕事を行うだけではなく「自分がどう価値を還元できるかを考えるようになりました」と話しました。

後悔のないように人生を豊かにしよう

2016年日本銀行へ。内閣府や省庁に就職された方と知り合いになる機会が増えました。女性問題や国際問題に関心がある人たちが多く圧倒されたと言います。学生時代は社会貢献意識が高いわけではなかったという政井氏は「皆さんの時点で、まだ目的がぼんやりしていても大丈夫です」と力強く仰いました。今の時点で目標がなくても落ち込まず、目の前のことをやってみることを勧めました。そうすると仕事が自分に向いている、向いていないということに気付いていけるようになると言います。
「ただ、努力は必要です」と言い、今でも英語は勉強していると話しました。

現在、政井氏は母親の介護で同居していると話し、
「プライベートも含めて選択を迫られる時、自分の優先度を決め、後悔しない選択をすることが重要」と語り掛けました。

「最悪だと思った出来事が、振り返ってみると転機になっていたこともあるので、常に前向きに考えて人生を豊かに過ごしてください」と講演を終えられました。

視野を広く持って前向きに

講演後、学生たちはグループごとに感想や質問などを話し合い、質疑応答が行われました。
「ポジティブになれるコツや活力は?」という質問には、
「気持ちが暗くなっているともったいない。人に話してみるなど気分転換は大事。人に話すと違う角度からの意見をもらえることもあります。聞いてくれる友人や家族に感謝することも重要ですね」と回答しました。

最後に司会進行をした学生からお礼と感謝の言葉がありました。
「日本企業だけでは分からないこともたくさんあり、もっと視野を広く持とうという気付きになりました。今つらいと思ったことも、あとで良いことにつながるかもと思えて心が軽くなりました」と伝えられ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。

女性活躍や将来の就職先などについて、学生たちも具体的にイメージできるようになった講演でした。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には第一回目からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿は真剣そのもの、政井様も本当にフランクに学生の視点でお話し下さり、アットホームな雰囲気も含めて大変貴重な時間になっています。一方、政井様のキャリアは、変化の連続。金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。なかなか先の見通せない時代を生きる学生たちにとっては、大きな勇気をいただくメッセージを沢山いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年6月15日

何のために働く?「女性とキャリア形成」の授業で元スターバックスCEOによる講演が行われました。

5月11日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に、元スターバックスコーヒージャパン株式会社CEOの岩田松雄氏をお招きし「ミッション」についての講演が行われました。現在は株式会社リーダーシップコンサルティング代表として、多くのリーダーを育成されている岩田氏。変化の多い現代を生き抜くための力の養い方や、使命としての「ミッション」の大切さを話されました。

変化の大きい時代の力の付け方とは

進行は担当のグループ(CUBE)が行う授業スタイルです。
司会の学生から紹介され、岩田氏の講演が始まりました。
岩田氏はまず講演の聞き方のコツとして、「最後に必ず一つ質問しようと思って聞くこと」を紹介しました。岩田氏が大学生のころから40年間実践している聞き方です。集中して話を聞くようになり、分からないこと引っかかることをそのままにしない姿勢が身に付きます。学生も就活のセミナーなどでも実践できる方法です。今回の講演も質疑応答の時間が設けられます。「なんでも聞いて下さい」と気さくに話されました。

今回進行を担当したグループの学生

最初に示されたのは「VUCA」という言葉。VUCAとは将来何が起こるか予測困難な状態のこと。現代はVUCAの時代と話します。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、なにがきっかけで世界が変わるか分からない時代です。

このVUCAの時代に必要なことは、3つ。
1つめの「視座を高める」は自分が他の人の立場だったときを考え、俯瞰して物事をみることです。
2つめは「視野を広げる」こと。知らないことを知ることです。検索で物事を調べようとしても、自分の興味のあることしか調べません。「意識的に知らないことに興味を持っていくことは大事」と言います。
3つめは物事や情報をどう受け取るか「視点を鍛える」こと。これらには学び続ける力が必要です。「卒業するためだけの学力ではなく、自分の基礎を作るために学ぶことが大切」と話しました。

企業は世の中を良くするためにある!

岩田氏は新卒社員として日産自動車株式会社に入社。当時から経営に興味があり、アメリカへ社内留学し経営理論を学びます。帰国後日本コカ・コーラ株式会社や株式会社アトラス、株式会社タカラ、株式会社イオンフォレストなど名だたる企業の社長や役員を歴任されました。社長に就任してから、これからは企業価値の時代になると気付き、働く姿勢や「何のために働くのか」が大事になると感じたと言います。

そこで大事なのが「ミッション」です。
ミッションとは企業の存在理由。
岩田さんは、企業とは「商品やサービスなど企業活動を通し、世の中を良くするためにある」と言います。企業は利益を出さなければ存続できませんが、利益はあくまでも手段であることを忘れてはならないと強調されました。

ではなぜミッションが大事なのでしょう。
「社会は大きく変化しています。すべての変化に対応したマニュアルは作れない。指針となるものがミッション」と岩田氏。
現在は多様性の時代です。様々な価値観を持った人たちが同じ方向を向くのは難しいことですが、ミッションがあれば共通のゴールになるのです。「就活のときも、その企業のミッションを一緒に実現したいと思える会社を探されたらいいと思います」と語りました。

自分の「ミッション」を見つけよう

ミッションは企業だけではなく、個人にも。
「自分が、好きで得意で人のために役に立つことをヒントに、自分の使命を考えていってください」と話しました。好きなことは情熱を持って取り組み、継続できることです。継続して続けていると、それは得意になり、のちに人の役に立ちます。

「好きなことが分からない、という時はまずは目の前のことを一生懸命やること」と話しました。
例としてお茶汲みをされている姿に岩田さんが出会われたことをきっかけに、その後岩田さんの社長秘書になった人の話をされました。お茶を出すタイミング、温度、好きな銘柄などをお客様に合わせ提供するという気配りを岩田さんが見ていて、秘書に登用したという話です。どんな仕事でも手を抜かず取り組むことで、サポートを得られたりチャンスをつかんだりできるのです。

小さな成功体験が自信につながる

講演後に学生たちはグループで意見交換し、質問を考えました。
質疑応答の時間に進行役の学生が挙手を促すと、多くの学生が手を挙げました。
「岩田さんのミッションはなんですか」という質問には
「リーダーを育てること。日本に良い経営者を増やしたい」と話し、
「もっと言えば、目の前にいる人を元気にしたい。この講演を聞いてくれた皆さんのやる気をちょっとでも起こせたら、今日のミッションは達成です」と語りました。

次の学生は「挫折したときはどうすればいいでしょうか」と質問。
岩田氏は「自分の価値を信じること。倒れてもいいけれど、指だけでも動かしてみる。落ち込んでいる自分に落ち込まないこと」と、やる気を失わないことの大切さを伝えました。
「そのためには小さな成功を積み重ね、自分をほめることです。経験だけではなく実績を積み重ねることが自信になります」。

最後に司会の学生から「頑張りは必ず誰かが見ているから、アルバイトや学業なども一生懸命取り組んでいきたいと思いました。素晴らしい講演をありがとうございました」と感想とお礼の言葉がありました。

これから社会に出る学生たちにとって「何のために働くのか」という根本的なテーマを考えるきっかけとなる講演でした。

担当教員からのメッセージ

岩田様には、本講座のみならず、キャリア開発実践論、キャリアデザインなど、数多くの授業においてご講演をいただいています。そして、その際は、決して大学生向けの内容ではなく、日頃、岩田さんが主たる相手として時を共にされている企業トップや経営層、管理職に話されていることを本学の学生に語って下さっています。学生にはややレベルが高いのではないかと思いましたが、本学の学生は、岩田さんのお話しに真剣に耳を傾けており、また、岩田さんが、語り掛けて下さる言葉が素晴らしく、きっと5年後10年後まで学生一人ひとのキャリア形成に大きく関わる内容として届いてくれていると感じます。岩田様には、改めて心から感謝申し上げます。

2023年5月24日

「女性とキャリア形成」の授業でアフラック生命の木島葉子氏から女性役員になるまでのお話を伺いました。

共通科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、アフラック生命保険株式会社(以下、アフラック生命)の木島葉子顧問をお迎えし、女性役員になるまでの経緯や大切にしていることについての講演が行われました。進行は担当のグループの学生たちが行うなど、学生主体の組み立てとなっており、講演後も積極的に質疑応答が行われました。

アフラック生命とはどんな会社?

木島氏は実践女子大学の卒業生。そして現在、実践女子学園の常務理事をされています。
「このような形で皆さんとお会いすることができて大変嬉しく思っております」と自己紹介が始まりました。アルバイトとスキーなどスポーツに夢中な大学時代を過ごしたと言い、
「女性のキャリアの話の冒頭にはふさわしくないかもしれませんが、大学生活は自分のやりたいことを自由にできる素晴らしい4年間です」と話しました。

今回進行を担当したグループの学生

就職活動をしてアフラック生命へ入社。当時はまだまだ小さな会社だったそうです。アフラック生命は、1974年に日本で初めてがん保険を提供する保険会社として誕生しました。がん保険は、がんに罹患された人々を経済的にサポートする「生きるための保険」です。来年50周年を迎えるにあたり「生きるを創る」というVISIONを掲げ、女性を含む人財の能力の発揮やダイバーシティ推進に取り組んでいます。

アフラック生命の推進するダイバーシティ

アフラック生命は創業時から役割や評価などの男女差はなく、1997年に生保業界で初の女性役員が誕生しました。しかし、2014年の女性の管理職は10%にとどまり、他社との差も無くなってきたため、女性活躍を推進していたとは言い難い状況に。
そこで目標を策定し、2025年までに部下のいる管理職の女性割合30%達成を目指しています。

育児と仕事の両立セミナーも積極的に開催。男性社員はもちろん、社外の配偶者も参加できるセミナーで、産休前や復帰後の働き方やキャリアを考えます。また男性の育休取得は100%を目指しており、取得時期はいつにするかなど上司の方から確認するようにして、育休を取りやすい環境を作っています。

働き方改革にも力を入れており、テレワークやフレックス制度も導入。
「重要なのは、こういった制度を育児や介護をしているなど限られた一部の社員が使うのではなく全社員が使うこと」と木島氏。さまざまな制度を組み合わせ、組織的に実践していくことが大切と話します。

危機時の対応で成長した

では木島氏がどのようにキャリアを築いていったのでしょう。
木島氏は「私自身のキャリアを話すうえで外すことができないのが危機時の対応です」と語りました。
2011年の震災の際は、翌日から業務を再開したものの、計画停電で継続に支障が出るという事態に。パソコンも電話も動かず、対応が困難になりました。ただ、そのとき物事の進め方や、やり方を決める判断材料をそろえることの重要さに気付いたといいます。

「危機時を経験することでだんだん不安は小さくなり、自信は大きくなっていきます」と木島氏。あの時大丈夫だったから今回もできると、困難にも主体的に取り組むことができるようになったと言います。
そして「主体的に取り組むことで、チームのサポートを得られることにもつながった」と話しました。

最後は気合!女性が活躍する社会へ

ただ、「キャリアをアップしていくとは、日々の積み重ねの結果である。」と話します。
必ずしも危機時の対応を経験しないといけないわけではなく、日々の仕事を真面目にやることが基本だと語りました。
「そして私が何より大切にしているのは、気合です」と木島氏。
何事も絶対にやりとげるという気持ちで、周りを巻き込み動かしていくのだと話しました。

経営など上に立つ一員として大事にしているのは、常に人に見られていることを忘れないということ。女性で役員を務めているのは日本ではまだまだ少ないため、ロールモデルとしての自覚を持ち恥ずかしくないように取り組んでいると言います。また、実践女子学園の理事になり、学園の精神である「女性が社会を変える、世界を変える」が自分の夢になったと言います。「100年以上前にこの考えを持っていたことに感動を覚えました」と話し、今の時代になんとしても実現したいと思っていると力強く語りました。

日本の女性の活躍推進はまだまだ道半ば。ただ、これからどんどん良くなっていくはずと言います。
「皆さんもぜひ自分の軸を持って頑張っていってほしいと思いますし、私も応援していきたい」と学生にエールを送りました。

自分のこれからに活かせる講演に

その後グループごとで感想を話し合い、木島氏への質問の時間が持たれました。
「男性がいない環境で育ち、強く言えないのですが、男性にも自分の意見を言えるようになるには?」という質問には
「私もどちらかというと黙っている方が好きなんです」と意外な回答が。
「ただ仕事をしているときは、役割を果すため自分のプライベートな性格は二の次だと思います。またそのための準備や練習をするなど、求められていることに対して自分はどう振舞えばいいかを考え実行することが大切です」と話しました。

「自分の強みの見つけ方は?」という質問には
「自分では見つけづらいので、友人や家族など他人に教えてもらうのがいいですよ」と回答されました。

最後に進行役の班の学生から
「できないことはないという強い言葉が印象に残りました。お話の内容をこれからにつなげていけたらと思います」と感想を述べ、
講義は終了しました。

担当教員からのメッセージ

企業トップを迎えて行う「女性とキャリア形成」も今年で3回目を迎えました。ゲスト講師のトップを務めていただいたのは、アフラック生命保険の元専務取締役で、本年4月からは本学の常務理事に就任された木島葉子さんでした。企業における女性の活躍という視点では、常にトップランナーを務めて来られた木島さん、やはり仕事には厳しく、人には優しくというご本人の確固たる理念をお聞かせいただきました。本学の卒業生であり、学生にとっては、本当に良きロールモデルであると感じました。今年も6人のゲストが登場されます。

2023年5月22日

「国際理解とキャリア形成」の授業で「未来のオリンピックの姿を考える」講義が行われました。プレゼンはスポニチに掲載!

共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、4月18日にスポーツニッポン新聞社の皆さまをお迎えし「未来のオリンピックの姿を考える」講義が行われました。この日はオリエンテーションとして藤山健二編集委員から現在のオリンピックの形や問題点が提示されました。後日学生たちはプレゼンテーションに臨み、その様子はスポニチに掲載される予定です。

スポニチってどんな新聞?

最初にスポーツニッポン新聞社の池田氏からスポニチに関して説明がありました。
スポニチは来年75周年を迎える老舗のスポーツ新聞社です。新聞発行だけでなく、マラソン大会や将棋の王将戦、映画コンクールなど年間250件以上のイベントの主催や後援も行っています。

「スポニチを読んだことはありますか?」と池田氏が学生たちに問いかけると3,4人が手を挙げました。女子大生にはあまり身近ではない新聞です。
スポーツ新聞とは、野球やサッカー、オリンピックなどのスポーツを中心に、芸能やレジャーなどのニュースを伝える大衆紙です。駅やコンビニで売っているイメージが強いですが、定期購読者の割合は65%と多く、女性読者も約1/4いると言います。

「皆さんWBCは観ましたか?」と聞かれるとほとんどの学生が手を挙げました。スポニチが配った優勝記事の号外も、ものの数分で1万部がなくなったと言います。大きな盛り上がりに、池田氏も「やっぱりスポーツには国をひとつにする力があると感じたイベントでした」と語りました。
webニュースは自分から興味があることを拾いに行きますが、新聞は記事が目に入ってくるためさまざまな情報を知れるのがメリットだと言い、
「幅広い情報を知っていると、いろんな人と話もはずみ信頼も得やすいです。皆さんも新聞を読んでもらえればと思います」と話しました。

オリンピックの理念とは

続いて藤山氏からオリンピックに関する話が始まりました。
藤山氏はスポーツ記者歴40年。
世界陸上やゴルフのマスターズ、サッカーW杯などさまざまな大会を取材するなか、オリンピックは夏冬合わせ7度担当されています。

2021年に行われた東京大会では、日本は58個のメダルを獲得、そのうち金メダルは27個と史上最多でした。多くの選手の活躍があった反面、オリンピック終了後に汚職が明らかになり、元理事が逮捕されるなど問題も残りました。
「残念ながら毎回多くのどの大会でも出てくる話です」と藤山氏。このイメージからも若者のオリンピック離れが進んでいると言われています。

また、2022年の冬の北京大会中には、ロシアがウクライナに侵攻。オリンピックが「平和の祭典」と呼ばれるのは理由があります。オリンピックは「スポーツを通じて平和な世界の実現に寄与する」ことを目的にしており、オリンピック開幕7日前からパラリンピック閉幕7日後までは休戦とすると国連に定められています。IOCはロシアの五輪休戦決議違反を強く非難し、現在ロシアとベラルーシの選手は大会に出場できないという処分もされています。ただ、政治とスポーツは別ではないかという議論も。オリンピック憲章にも「個人の競技者間の競争である」と明記されており、国家間の競争ではないということが、オリンピックの理念でもあります。

これからのオリンピックの女性参加とは

「皆さんは女子大生ということで、オリンピックと女性について考えていきたいと思います」と藤山氏。

オリンピック第一回大会の女性参加は0人。スポーツは男性が行うものでした。しかし反対の声が広がり第2回から22名が参加。東京大会の男女比は男性51.2%、女性は48.8%になり、次のパリ大会では男女50%ずつになる予定です。ただ、数を一緒にすれば平等なのか、という議論もあります。女子選手として出場できる国は先進国ばかりで、女性にスポーツが解放されていない国もまだ多くあります。また、トランスジェンダーを公表している選手がどちらの性で出場するのか、に関しては体格差やホルモンバランスなどの問題も残っています。
「スポーツで大切なことは公平性」と藤山氏は話します。年齢や体重などで階級を分けるのもその一つ。「トランスジェンダーの選手を拒否するのではなく、これから検討必要な問題です」と話しました。

さらにメタバースはオリンピックにどのように活用されるかも、これからの姿を考えるのに大切です。これからはバーチャル空間でオリンピックが行われる可能性も出てくるかもしれません。
「ぜひそういったテクノロジーの面からもオリンピックについて考えてもらえたらいいと思います」と藤山氏は語りました。

プレゼンは記事に!

最後に学生から
「一流の選手に共通する姿勢や言動はありますか」と質問があり、
藤山氏は
「思考がポジティブ。怪我など落ち込むことがあっても前向きにとらえることができる人たち」と回答され、講演を終えました。

今年のお題は
「実践女子大生が考える、新しい五輪の姿」です。

次回は元女子マラソン選手である有森裕子氏もお迎えし、オリンピックについての理解をさらに深めます。その後グループで検討し、プレゼンテーションに臨みます。
プレゼンテーションの様子は、なんと記事になりスポニチに掲載予定。よりよい発表にするため学生たちはグループで早速話しあっていました。

担当教員からのメッセージ

2014年からスタートした本授業では、一貫してオリンピックパラリンピックを学生とともに考えてきました。延期された「東京2020」の1周年イベントが開催されたのが昨年、そして来年は、もうパリ五輪が開催されます。
東京2020のレガシー講座の位置付けで行われているスポーツニッポン新聞社様とのコラボ授業、今年も、どんなアイデアが提案されるのか、とても楽しみです。

2023年1月24日

「実践キャリアプランニング」の授業でロレアル パリによるストリートハラスメントに立ち向かうトレーニング講義が行われました。

共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、食生活科学科の学生が日本ロレアル株式会社のブランドであるロレアル パリとのコラボ授業を受けました。公共の場でのハラスメントに対しどう立ち向かうか、どう被害者に寄り添うべきかというセンシティブな内容に、学生たちも真剣に耳を傾けていました。学生たちは、企業が社会的責任に対しどう取り組んでいるか、企業の幅広い活動について学ぶ機会になりました。

女性を応援し続けるロレアル パリ

菊池裕貴氏は、2014年に日本ロレアルに入社。メイベリン ニューヨークというブランドでネイルやリップ、マスカラなどの開発、マーケティングに携わり2021年からはロレアル パリのブランドディレクターを務めています。ロレアル パリは、1909年発祥のブランドで、髪の毛を染めるヘアカラーから出発しました。日本ロレアルはイヴ・サンローラン・ボーテやシュウ ウエムラ、メイベリン ニューヨークなど数々の人気ブランドを抱えていますが、なかでもロレアル パリは100年以上変わらずヘアカラーやヘアオイルなどを取り扱っています。

掲げているスローガンは「あなたにはその価値があるから」。50年前から変わっていません。ブランドのマニフェストは時代に合わせ10年ほどで変わるのが一般的なところ、ずっと変わらずに女性の価値や自分らしい生き方を応援し続けています。

ストリートハラスメントって?

「日本は、残念ながら女性が生きにくいと正直思っています」と菊池氏。「これをどうにか変えていくために固定観念を打破し、女性の活躍をサポートするブランドになっていきたいと強く思っています」と語りました。

その一環として行われているのが「STAND UPプロジェクト」です。女性をとりまくストリートセクシャルハラスメントに対して立ち向かうためのプロジェクトで、世界各国で行われています。ストリートハラスメントとは公共の場でのハラスメントのこと。電車や飲み会の場、また家族のなかでの会話も該当します。こういった行為に立ち会った「傍観者」の立場に対しトレーニングを行い、ハラスメントを減らしていこうとするトレーニングをロレアルは一般社団法人Voice Up Japanと協力し行っています。

目をそらしてしまいがちなストリートハラスメント

続いてVoice Up Japanの佐野エレナ氏が登壇し「5Dアクション」についての講義が始まりました。ハラスメントを受けた人のなかで、誰かが介入したことで状況が改善したと答えたのは86%に上ります。「どんな形であれ誰かが介入してくれたら状況がよくなったと思えた人の割合は多いので、あまり不安にならずぜひ皆さん実践していただけたら」と佐野氏は語り掛けます。

不自然な身体の接触、お酌の強要、ストーキング行為…直接的な言葉をかけられるだけではなく、じっと見つめられるのもハラスメント行為にあたります。ハラスメントを受けた影響は、その場での不快感だけでなく長期的に残ります。自尊心を傷つけられ、うつやPTSDになったり、被害を受けた場所が怖くて近づけず行動制限を受けたり。日常生活が変えられてしまうのです。

「5Dアクション」を知りどう行動できるか考えよう

そういった場面に立ち会ったときにどう介入するか。学生たちはその方法として「5Dアクション」を学びました。物を落とすなどして気をそらす「Distract」、店員や責任者などに協力を求める「Delegate」、録画や録音して証拠を記録する「Document」、あとから被害者をケアする「Delay」、直接行動する「Direct」。「どんな行為ならできそうだなと思いますか」と佐野氏は学生に問いかけ、「Distract」や「Delay」なら行動できそうと学生も多く手を挙げました。

佐野氏は飲み会での先輩の発言や満員電車などさまざまなシチュエーションを想定し、自分に何ができるか学生たちに考えさせました。「自分の10分で、その人の一生が変わるかもしれません」と佐野氏。声を掛けるなど小さいと思える行動でも介入できると言います。また佐野氏は大切なこととして「ハラスメントは受けた人のせいではない」ということを強調します。自分がハラスメントの被害を受けた場合も「決してあなたのせいではありません」と伝えました。

学生たちも5Dアクションに前向きに

学生たちからは感想や意見がたくさん集まりました。「痴漢され自分も助けてほしいと思ったことがあるので、今後見かけたら見て見ぬふりはしたくない」「自分に何ができるか難しいが、どれかを実践してみたい」「一人では難しいが友達と一緒ならできるかも」といった前向きな意見が多数。実際に助けられた経験がある学生も。ストーカー被害に遭い、いまでも影響を受けていることを打ち明けてくれた学生もいました。

質問も多くありました。「お酒の場では自分もアルコールが入っていて行動は難しいのでは」「満員電車では自分も身動きできない」などの意見には「見てましたよという視線を送るだけでも有効です」と回答がありました。「自分がハラスメントを受けているときに助けてもらう方法は?」という質問には「アピールすることができればベストですが、一番は自分を守ることが最優先。あとから誰かに打ち明けてケアをする方法もあります」と伝えました。

学生たちの心に響く講義

ハラスメントは自分が加害者にもなりえます。例えば友達が誰かに付きまとわれた経験を話したとして「しょうがない」「可愛いからだよ」という言葉はその友達に原因があったことになり、二次加害につながってしまいます。またハラスメントは外見では嫌がっているか分からないことも。介入していいのか判断が難しいこともありますが「ちょっとしたことでも勇気を出してみるということは重要だと思います」と語られ、講義は終了しました。

2022年9月5日

2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」最終回に、サントリーホールディングス株式会社顧問の福本さんをお迎えしました!

様々な分野で活躍し、輝かしいキャリアを築いてきた講師の方をお招きするリレー講座もいよいよ最終回となりました。6回目となる授業は、サントリーホールディングス株式会社顧問の福本さんです。
福本さんには昨年もご講演をいただきましたが、その時に聴講した学生から多くの質問が寄せられ嬉しい驚きだったというエピソードから始まった90分。「私は何のために働くのか」を軸としながら、社会人としてキャリアを積み重ねていくヒントをたくさん紹介してくださいました。

創業から100年以上受け継がれる、「やってみなはれ」精神

今世紀に入ってから世界中に市場を拡大しているサントリーは、2兆3000億円の売上(2021年度)を持つ大企業。現在はお酒や飲料だけでなく、外食、健康食品、花、そしてハーゲンダッツアイスクリームなど、幅広い事業を行っています。サントリーは創業以来、「やってみなはれ」と「利益三分主義」という2つの精神を軸に、長い歴史を作ってきました。

創業は1899年の大阪。ぶどう酒を製造する鳥居商店から始まりました。1907年に甘味葡萄酒「赤玉ポートワイン」を発売し、外国人や上流階級に支持され大成功を収めました。最近ではプレミアムモルツのヒットやハイボールブームを成功させたサントリーには、今に至るまで、上述の「やってみなはれ」「利益三分主義」という創業精神が貫かれています。

「やってみなはれは、現状に満足せず常に成長を続けようとする挑戦。そして利益三分主義は、近江商人の三方よしに通じる精神で、高品質な商品やサービスの提供だけでなく、真に豊かな社会の実現を目指すこと。創業から100年以上経っても、私が勤めたサントリーにはこの精神が受け継がれています」

就活は、みなさんが企業を選ぶ場でもある

大学では文学部だった福本さんは、ご自身の就活を「志無し、業界希望無し」だったと振り返ります。様々な企業の説明会に参加する中で、印象に残ったのがサントリーでした。

「私が社会人になったのは、男女雇用機会均等法が施行される前で、男女の給与に大きな差があった時代。4大卒の女性はなかなか採用されませんでした。ところがサントリーの説明会には若い女性社員がいて、ウィットに富んでいて珍しかったんです。サントリー商品をよく知らず、第一志望でもなかったんですが、人事の楽しそうな雰囲気に惹かれて面接を受け、入社しました。

5年くらい働くかという軽い気持ちでの就活でしたが(笑)、自分はこれをやりましたと言える仕事がしたいと思っていました。そこで女性を戦力とする会社を探していたんです」

福本さんはご自身の経験を踏まえ、就活に挑む学生たちに自分に合った企業を選ぶヒントを紹介してくださいました。

「説明会で会った社員の印象と組織風土は、重なることが多いんです。みなさんたくさんの説明会に参加されると思いますが、そこにいる社員を観察することで、企業を深く理解できると思います。就活は学生のみなさんが選ばれる場であると同時に、みなさんが企業を選ぶ場でもあります。ぜひ萎縮せず、自分に合った企業を選んでほしいですね」

1人のプロとして、仕事に挑む姿勢とは

新人の福本さんは人事に配属され、研修担当に。入社6年目で目標とするロールモデルが社内にいないことに気づき、仕事の幅を広げて強みをつくるために社内留学制度に手を挙げ、2年間の教育を受けました。その後、広報に異動しサントリーホールの担当になります。

「広報は記者に情報を発信し、記事にしてもらう仕事。クラシックも芸術もあまりわからなかった私は記者とコミュニケーションがとれず、1年間まともな仕事にならず本当に悩みました。ある時、PR会社の女性社長から『貴女、今のままだと次の仕事はない。会社もつぶれるわよ』と言われ、勇気を出して記者の人間関係に入り込んでいったんです。するとだんだんと話を聞いてくれる人が増えました」

その後、結婚・出産をした福本さんは、3年間の育休を取得。早くから育休制度があったサントリーでは、お互いかばい合う社風があったそうです。育児と仕事を両立しながら広報として奔走したウィスキー博物館は、ご自身のレガシーになったと福本さんは当時を語ります。

2008年に支配人としてサントリーホールに戻ったとき、300人の大所帯になっていました。前任者と違い自分は強いリーダーシップを発揮するタイプではない福本さんは、みんなの意見を聞きながら3~5年先のパーパスを作り上げます。このとき「リーダーシップのかたちはひとつではない」と気づき、この経験がその後の福本さんの軸となりました。そして入社33年目の2015年には、サントリーホールディングスの役員に就任。会社の理念を事業に反映させる立場として、サステナビリティの実現に挑みました。

講義のまとめとして、
福本さんは女性が仕事で活躍するために役立つ心構えを強調しました。

① 目の前にある自分の仕事を楽しむ
② 努力を惜しまず熱中する
③ 人との関係を大切にする

「みなさんが社会人になると、様々な仕事を経験すると思いますが、どんなときもどんな姿勢で挑むかが大切です。好きなことなら夢中になる、人よりも努力する、まわりに応援しようと思ってもらえる。みなさんが1人のプロとしてキャリアを形成していく中で、ぜひこの3つを意識してほしいと思います」

キャリアは「目の前の仕事にベストを尽くす」ことから始まる

続く質疑応答では「モチベーションを維持する方法は?」という質問に、「新しい仕事はもがき苦しむほど大きくステップアップできる」と回答。「仕事ができる人とは?」という問いに対しては、「言われたことだけではなく、一歩先を見て動ける人。自分のアウトプットを受け取る、まわりの人のことも考えられる人ですね」と答えてくださいました。

いまと社会環境は大きく違いますが、大企業で輝かしいキャリアを築いてきた福本さんにも就活や新しい仕事に挑む苦労があったのは、これから社会で活躍する学生達にとって新鮮な共通点だったのではないでしょうか。サントリーの「やってみなはれ」精神を体現し、「目の前の仕事を軽んじることなく、ベストを尽くして挑む」ことで実績を残した福本さんの講義は、学生達の未来を支えるひとつの軸になることでしょう。

深澤教授の話

今年度の女性とキャリア形成6人目のゲスト、最後を飾っていただいた福本様は、昨年度に引き続きのご登壇となりました。ソフトな語り口がとても印象的ですが、ご自身のお話しからは、真面目に目の前の仕事に取り組む大切さや、やはり人間関係を何よりも大切にされてきた数々のエピソードをお聞かせいただきました。最後に、感じたこと、それはサントリー様の社員の方の、会社を愛する心の強さです。今の時代“愛社精神”という言葉はあまり登場しなくなりましたが、やはり、会社と社員のエンゲージメントを大切にされていることは、企業の成長には欠かせないものだと考えます。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

関連情報 【企業トップ層が語る!リレー講座】

【第5回】2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第五回に、元(株)資生堂執行役員常務の関根さんをお迎えしました!

【第4回】2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第四回に、SBI金融経済研究所取締役理事長の政井さんをお迎えしました!

【第3回】2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第三回に、元スターバックスコーヒージャパン(株)CEOの岩田さんをお迎えしました!

【第2回】2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第二回に、株式会社ANA総合研究所顧問の河本さんをお迎えしました!

【第1回】2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第一回に、OGのアフラック生命保険株式会社取締役専務執行役員の木島さんをお迎えしました!

2022年8月3日

2022年共通教育科目「女性とキャリア形成」第五回に、元(株)資生堂執行役員常務の関根さんをお迎えしました!

様々な分野で活躍し、輝かしいキャリアを築いてきた講師の方をお招きするリレー講座の第五回は元(株)資生堂執行役員常務を務めた関根さんです。
「皆様にとって仕事とは?」という問いかけで始まった授業では、資生堂に入社した関根さんがどんな壁にぶつかり、それをどう乗り越えてきたかというエピソードを軸とし、学生達が社会人として活躍しキャリアを形成していくためのヒントがたくさん盛り込まれていました。途中、美しい立ち姿や座り姿のコツを学ぶ時間も設けられ、学生からは歓声が上がっていました。

商品を「売らない」ビューティーコンサルタントとして

1972年にビューティーコンサルタントとして資生堂に入社した関根さん。学生時代に尊敬する先生と出会い、将来の夢は教師になることでしたが、御父様が寝たきりになったことで大学進学を諦めざるを得ず、就職を決めたそうです。「初任給が高い会社」を探す中で、出会ったのが資生堂でした。
入社したばかりの関根さんが担当したのは、スーパーなどに設けられた不定期の特設会場で、通りかかった人に化粧品を紹介・販売する仕事。高度経済成長を背景にした厳しいノルマは、なかなか達成できませんでした。

「毎日終礼で各自の売上を報告するんですが、ノルマの1割しか売れない日もありました。自分が目標を達成できなければ、チームの誰かが足りない分をカバーしなくてはなりません。毎日がプレッシャーでした」

悩んだ関根さんがたどり着いたのは、なんと「売らない」ことでした。いくらノルマを達成できても押し売りはやりたくなかった関根さんは、「商品を売る」から「商品を利用したお客様の喜び」にシフトしました。
「お客様に声を掛ける際、最初に『売りません』と言った上で、商品を体験していただいたんです。『押し売りされないなら…』と商品を試したお客様の美しさを、資生堂の商品で引き出すことで、自然と購入につながっていったんです」

多くのお客様から支持された関根さんは、着実に売り上げを伸ばしていきました。ここで関根さんが学んだのは、自分達はお客様のためにあるということでした。働くのは上司や会社の評価を得るためではなく、お客様の喜びのため、信頼を得ること仕事の本質をつかんだ関根さんは、実績を積み重ねていきました。

40年以上在籍する中で、様々な仕事を経験

その後、関係会社に出向し、そこで女性初の本部長に任命されました。さらに宇都宮支社の支社長、大阪支店支店長を経て、50歳のときに国際マーケティング部へ。ドイツ人上司のもとで、グローバル人材に囲まれながら働き、各国を飛び回りました。

「上司に私の配属理由を聞いたら『人事考課に自分の意見が言える。グローバル人材の第一要件を満たしていた』と言われました。意見を言わない日本人の中で、関根さんはものおじしないという評価だったようです」

英語がそれほど得意ではなかったという関根さんは、NYで行った30分の英語スピーチに秘書にルビを振ってもらうこともあったそうです。国際事業部での経験は、英語やグローバルビジネスに本気で取り組むきっかけになったと当時を振り返りました。

そして2012年に資生堂の執行役員に就任、2014年には執行役員常務、顧問を務めた関根さんは、2018年に独立し、(株)Bマインドを設立しました。現在は女性活躍、プラス志向講師として全国で活躍しています。

目の前に現れた壁は、困難であると同時にチャンス

関根さんはこれから社会に出る学生達に、チャレンジ精神の大切さを強調しました。

「お給料をもらう以上、会社では興味のない仕事もやらなくてはなりません。時には不本意な異動もあるでしょう。でも目の前の課題を『やりたくない』と思う前に、それをチャレンジととらえてほしいんです。勇気を出して新しい環境に飛び込むと、新しいものが見え、自分に足りないものがわかります。ぶつかった壁から逃げず、立ち向かうことが自分を成長させる経験になります。

仕事もプライベートも輝くための要件として①自分の強みを知る・磨く、②チャレンジ精神(失敗を恐れない)、③主体的であること、④タフな精神力を意識することがポイントだと関根さんは語ります。そして持続的な幸せという意味のwell-beingに役立つポジティブ思考を紹介しました。ポジティブ思考は物事を良い方に考えることではなく、つらく苦しい中で希望や解決策を探す思考と、探し出した光に向かって進んでいく強い精神のことです。それには目の前の壁そのものに価値を見出し、試練として受け止め、困難を突破して成長する「ブレークスルー思考」が役に立つといいます。

「人生は選択と挑戦の連続といえます。選択で大事なのは、ポジティブな思考と視点。挑戦で大事なのは、自分の強みと課題が一致していることです。そのためには自分の強みや得意分野を磨いておくのは、とても役に立ちます。

人生はアップダウンの連続といえます。チャレンジして失敗しても、それは貴重な経験ととらえればいいんです。みなさんには逆境を楽しみ、苦しいときほど笑うタフな精神力を身に付けていただきたいですね」
と締めくくりました。

well-beingにつながる具体的な手法で、輝く未来を創っていく

大きな拍手で終了した講演の後は、質疑応答の時間となりました。「自分に似合うメイクを教えてほしい」という質問には、質問した学生の長所を活かす具体的なメイクアドバイスがあり、みな真剣に聞き入っていました。また「プレゼンテーションで意識すべきことは?」という問いには、「ミスなく語るよりも、聴衆の目をみて心から湧き上がる自分の言葉で語ることが大切」と強調しました。

関根さんが紹介してくださった、キャリアを①今、やらなければいけないこと(must)、②今できること(can)、③やりたいこと(will)の3つでとらえる視点は、社会で活躍する際、自分を客観的に振り返る上で役に立つ視点になりそうです。仕事だけではなくプライベートも輝くwell-beingを実現する具体的な手法の数々は、学生の心に強く響いたようです。

深澤教授の話

女性とキャリア形成、5人目のゲストは、元資生堂執行役員常務の関根近子様でした。私が資生堂勤務時代には大変お世話になった方で、久しぶりにお目にかかりましたが、さらにパワーアップされておられるお姿に感動いたしました。全身から溢れるオーラに加え、ポジティブ思考のお話しに学生は魅了されていました。
60名を超える学生が教室でお聞きしているのに、学生一人ひとりと会話をされておられることを感じる、その雰囲気づくりがとても印象的でした。
やはり、こうして対面で、ゲストの姿から感じる「想い」を浴びることが大切であることを改めて感じました。この場を借りて関根様に心から感謝申し上げます。