タグ: 女性とキャリア形成

2025年7月25日

自分の強みを伸ばしていこう!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員の関根近子氏による特別講義が行われました。 

さまざまなゲストをお迎えして貴重なお話を伺える、毎年人気の「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業。6月19日には株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えしての特別講義が行われました。自分の強みを知り、前向きに仕事を楽しむ大切さを教えていただきました。

役員になるなんて思いもよらなかった入社時

学生たちはこの講演に向け、「自分の強みを10個書き出す」という事前課題に取り組んでいます。
進行担当の学生から紹介を受け、登壇された関根氏は「課題は難しかったですか?」と問いかけました。「なかなか自分の強みは分からないものです。この授業を通し、強みを見つけていきましょう」と講義を始められました。

関根氏は18歳で資生堂に入社し、当初は地方の美容部員として働き始めました。
「人にお化粧するのが好きだったの?と聞かれるのですが、そんなことない。生活のために入社したんです」と関根氏。ご家族が突然の事故に遭い働かざるを得ない状況になり、一番初任給が高かった資生堂を選んだのだと話します。
「当初は結婚したら辞めると思ってました。女性管理職、ましてや役員なんてなるぞと思ってなかったんです」。
しかし「私の長所は明るくて元気、そして向上心があること。今でも勉強したいことがたくさんある」と語り、チャレンジ精神をもってキャリアを積み重ねてきたのだと実感をもって語りました。

同じ仕事でもやりがいに変える方法

関根氏は入社当初のことを振り返って自身の強みをみつけたきっかけを語ってくださいました。
それは美容部員から、プロモーションチームに異動したときのこと。
百貨店の食品売り場などに特設ブースを設置し、推奨品を販売する仕事でした。推奨品には高いノルマが課され、嫌がられてもしつこく声をかける日々。
「自分の仕事は人から嫌がられる仕事なんだろうか」と悩んだ関根氏は先輩に相談にいきました。

すると先輩から「そんなに嫌なら辞めていい。でも辞めるまでは、あなたの強みをしっかり使って接客しなさい」と言われたのです。
「そうか、私の強みは美容の知識だ、私は美容のプロなんだからと気付いたんです」と関根氏。そこから一人ひとりに合わせたカウンセリングをし、美容知識をお伝えする接客方法に転換しました。
すると、徐々にファンが付き、商品も売れていくようになったのです。さらにお客様から「ありがとう」という言葉をもらった関根氏は「商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたので、とても嬉しかった。店に立つのが楽しくなったんです」。
そして「心も折れなくなった。お客様に断られても、きれいになるチャンスを逃したわね、と思うようになった」と笑いを交えて語りました。
「同じ仕事なのに、ちょっと目線ややり方を変えただけで喜びを得るようになり、やりがいを見出すことができたんです」と話しました。

失敗を恐れずチャンスを活かす

ではどうしたら自分の「強み」が分かるのでしょうか。
関根氏は「資生堂で役員をやっているとき、一番重要視したのは自分の成長」と話します。コツは「一年前に比べてどのくらい成長したのかを知る。それを定量的に測ること」と関根氏。
例えば本が好きな人の場合、去年50冊の本を読んでいたら今年は60冊読むようにするなど、記録を取って目に見えて分かるようにすることが大事だと言います。去年より上がっているということで自信もつき、何を学んだかも具体的に伝えられるように。
「グローバル人材に必要なことは、自分の意見をきちんと言えること。強みを人前で堂々と言えるようになれば自己効力感も生まれます」と話しました。

もうひとつ大事なことはチャレンジ精神だと関根氏は語りました。
どちらかというと女性は一度居心地がいい環境に入ると外に出たくなくなる傾向にあると話します。
しかし、新しい環境に飛び込むことを躊躇しないでほしいと伝えました。異動や単身赴任、昇進や役員になるなど、仕事にはたくさんの変化がつきまといます。
「CHANCE(チャンス)がきたらCHANGE(チェンジ)することを怖がらない。自分には無理だと思わず、失敗を恐れずチャレンジしてください」と語りました。

強みを伸ばせば自分は変わる

ここで関根氏は一冊のノートを見せてくれました。
当時、義理の母との関係がうまくいかず悩んでいたと言います。
「それまでは人の悪口や義母の愚痴ばかり言っていて、自分でもいやでした」と告白されました。そのとき会社で、ポジティブ思考について講義を受け感動し、自身の考えや思いをまとめたのがこのノート。
「ポジティブ思考とは苦しい状況のなかでも希望や解決策を探すこと。ポジティブに考えることで辛い現状にどうやって付き合っていくか考えられました」と体験を話されました。

そして関根氏は「他人を変えようとしても難しい。でも、自分は変えられる」と力強く言います。
「他人と比べず、過去の自分からどう成長しているかを考えること。短所は誰にでもあります。箱で例えると長所は辺、角が短所。長所を伸ばせば器が大きくなる。だから強みを伸ばしていきましょう」と学生たちをエンパワーメントしました。

どうやって強みを見つける?

講義のあと、学生たちからの質問の時間が取られ次々に手が上がりました。
「自分の長所をみつけるコツは?」という質問には、「打ち込むことが出来る好きなことがなにか考えること。また、何か周りの人からほめられたことがないか考えてみましょう」とアドバイス。

次の学生は「自分の考えや思考を押し付けにならないように伝えるときの注意点は?」と質問しました。
「傲慢に取られないように。自分の伝えたいことを言うことよりも、相手を尊重するという気持ちを少し多く持つこと」と回答されました。

最後に代表の学生からお礼の言葉がありました。
「自分の強み、理想のキャリアはなにかを考えるきっかけになりました」という言葉通り、学生にとって学びに繋がる講演となりました。

担当教員からのメッセージ

私が資生堂の人事部に勤務していた時から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいは、毎年その輝きが増していると感じています。関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。
今年の事前研究では、一人ひとりの魅力を探り、強みを引き出す内容でしたが、とても盛り上がったのが印象的でした。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年7月22日

子どものスタートラインは同じじゃない?「女性とキャリア形成」の授業で認定NPO法人「カタリバ」代表の今村久美氏が特別講義を行いました。 

7月3日に女性とキャリア形成(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)「カタリバ」代表理事の今村久美氏による特別講義が行われました。今村氏は大学生のときに団体を設立しています。その後、なぜNPO法人という形を選んだのか、いま子どもたちにどんな支援が必要なのかを、ご自身の体験を交えて詳しく話してくださいました。

お互いに「語り合う」ことで自分を知る

まずはアイスブレイク。
今村氏は「この授業のクラスメイト同士について詳しく知っていますか?」と尋ねました。
どういう経緯でどんな選択をして本学に進学することを選んだのか、今後どんな人生を歩んでいきたいと思っているのか、3~5人のグループに分かれディスカッションを行いました。

いつも授業で顔を合わせていてもなかなか深い話はしないもの。改めてお互いを知る機会になりました。
「私のNPO法人の名前はカタリバと言います」と今村氏。
「学校生活って、教えられることはたくさんあるけどお互いのことを話すことは意外とない」と言い、「自分の現在地を知るためには、語り合うことが大事じゃないかと思って」、団体にこの名をつけたと語りました。

スタートラインの位置は公平じゃない?

今村氏は続いて学生たちの家庭環境について質問を投げました。
「自分の条件に当てはまる数を数えていってください」と8つの項目を伝えます。
離婚していない家庭である、携帯電話を止められる心配をしたことがない、家計を助けなくてはという心配をしたことがない、大学の学費の心配をしなくてもいい……。
6つ以上当てはまった人がクラスの多数を占めています。

ここで今村氏は、同じ質問を行ったアメリカの子どもたちの動画を見せました。条件に当てはまったら先に進めるルールで、どんどん進んでいく子も、一歩も進めない子もいます。
動画を見終わったあと、今村氏は「自分の回答も含め、この動画を見てどう思ったかをまたグループで話し合ってみてください」と再度ディスカッションを促しました。
ディスカッションのあと、学生たちからは「今の時代みんな学校に行けてスタートラインは同じように見えるけれど、家庭環境などでスタートラインが違うのだと実感した」「自分で選んだわけではなく、もともとその位置で決まっていたと知った」などの感想が出ました。

地元の閉塞感が設立のきっかけ

今村氏は岐阜県出身。
実家は飛騨高山で土産物屋を営んでおり、両親も親戚も大学に行ったことがない家庭だったといいます。
特に女性は高校を卒業したら就職し、結婚し子どもを産むことが良いとされ「女性が意見を持つなんていけないことのような雰囲気」があったと言います。今村氏はそんな環境に閉塞感を覚え、どうしても地元を出たいと大学進学を志します。

晴れて神奈川の私立大学に進学した今村氏は驚きました。
同級生はみんな良い服を着ています。車で通っている人も、海外留学をしたことがある人もたくさんいました。「自分が高校で常識だと思っていたことと、世の中はこんなにも違うのだと実感した」と言います。
充実した大学生活を過ごしていた今村氏は、成人式のために地元に戻ります。
すると、昔の友人にあったとたん同調圧力のようなものを感じ、大学生活が楽しいということを言えなくなってしまったのです。この差はなんなんだろう、と怒りや悔しさを感じた今村氏。
その後、大学の授業で少年法を学んだこともきっかけとなり、家庭環境などにより、スタートラインに立てない子どもの支援をしたいと「カタリバ」を設立することを決意したのです。

悩みごとは「発見のアンテナ」!

そもそもNPO法人とはなんでしょうか。学生からは「ボランティアのイメージ」との声が。
今村氏は頷いて、「寄付金を集めて、そのお金で行政の支援が届かない人たちを助ける活動を行っている」と話しました。
「ビジネスの領域や行政では解決できない、取り残された課題がNPO法人の領域です」と今村氏。
カタリバでは、シングルマザーの家庭の子たちなどに向けて、無料でご飯が食べられて勉強も見てもらえる拠点の運営などを行っています。行政と連携し、支援が必要な人に届くように活動を広げています。

「大学生活で感じたもの、地元から得たものがたくさんあります」と今村氏。地元から首都圏に出たことで、違いについて気付けたと話します。
そして「悩みごとは発見のアンテナ」と語りました。
「劣っているのではなくて、それは自分の強み。自信のある人には気付けないことに気付ける」と言い、「皆さんはこれからなんでもチャレンジしていける。これからの人生も頑張ってください」とエールを送りました。

小さな課題を「みんなの課題」にしていこう

講演後は学生たちからの質問タイム。
「NPOが取り組む課題で一番大変な問題はなんですか」という質問に、今村氏は「ニュースやテレビで報道されない課題。例えば子どもの貧困についても2016年頃からようやく取り上げられて表面化していった。それまでは家庭の問題と切り捨てられてしまう。メディアが取り上げることでみんなの課題になる」と話し、「皆さんもぜひ、皆さんの感性で捉えた小さな課題をSNSなどで知らせてください」と話しました。

最後にクラスを代表した学生がお礼の言葉を述べました。
「NPO法人の活動について初めて知りました。今後自分もどのような活動が出来るかと考える機会になりました」と感想を語り、新しい学びに繋がったことを自身の体験を交えて語りました。
学生たちにとって多くの気付きのあった授業でした。

担当教員からのメッセージ

女性とキャリア形成の最後のゲストに、カタリバの代表理事である今村久美様にお越しいただきました。
以前から存じ上げていた方ですが、直近では、東京2020オリンピックパラリンピック
競技大会組織委員会の文化教育委員会の委員としてご一緒させていただきました。
どんなことがあっても、こどもたちの居場所づくりを真っ先に考え、奔走されている姿には、
いつも感動していました。
今回、改めてご講演をお聞かせいただき、真の意味で将来の日本を考えておられる先導者であることを
改めて感じました。
大変ご多忙の中お越しいただいたことに心から感謝申し上げます。

2025年7月11日

たくさん達成感を得て自信を付けよう!「女性とキャリア形成」の授業でJFEテクノス社長による特別講義が行われました。

「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で6月5日に、JFEテクノス株式会社の能登隆代表取締役社長をお招きしての特別講義が行われました。仕事との向き合い方や自信を持つことの大切さなど、実体験を交えてお話してくださった能登氏。上に立つものとしての心構えなども含め、なかなか聞くことのできない「社長業」について学生たちが触れる機会となりました。

仕事は金銭的に自立する手段?

JFEテクノスは一言で言えば「街のあらゆるインフラのメンテナンスを行う会社です」と能登氏。
「皆さんの就職希望先とは少し遠いかもしれませんが、一人の社会人のサンプルとして気軽に話を聞いてほしい」と講義を始められました。

学生時代は火を燃やす「燃焼」に関わる勉強をしていた能登氏。
いまでも星空の下で焚火をたいて、コーヒーを飲むのが癒しのひとときだと話します。ただ、「私はこだわりがないんです」と自己分析。
「信念というものがないよな、と言われたこともある」と告白されました。そのためこれといってやりたい仕事があったわけでもなく、仕事は「金銭的に自立するための手段と思っていた」と言います。
ただ、地図に残るような大きなものを作れる会社に行きたかったことと、専攻した燃焼に関する仕事をしたいと思い、現在のJFEの前身である日本鋼管へ入社されました。

偉くなるとやりたくない仕事も増える

社会人になって最初の1年は、大学のころと同じように燃焼の研究を行い「学生時代と近いことをしてお金ももらえるなんて嬉しいと思っていた」と話しました。
しかし年が経つにつれ、自分の仕事に責任がのしかかってくるようになり、徐々にストレスに。

特に、より高いポストに就くようになるとそれは顕著でした。
会社で偉くなるとは部下が増え、権限が増え、責任も増えるということ。
能登氏は「偉くなるとは、自分の知らない領域の仕事を担当することです。自分のやりたい仕事以外のことをやることになる」と語りました。ときには意見の合わない人と一緒に仕事をすることも。
能登氏にとって仕事とはだんだんと、ただ試練を乗り越えうまくやり遂げるものになっていったと言います。
「心に蓋をして、自分に厳しく、人にも厳しくなっていってしまったんです」。

天狗になっていた自分を猛省

仕事がうまくいくと達成感が得られます。
「仕事にはトラブルはつきもの。トラブルがあってもみんなで協力しあって乗り越えることで自信が生まれる。客に感謝され、上司や仲間からも褒められることは、仕事を続けるモチベーションになります」と話しました。

ただ、能登氏は「自信を持ちすぎて、天狗になってしまった」と語りました。
人の話を最後まで聞かずさえぎっては切り捨てる。人として傲慢な態度を取っていたと告白されました。だんだんと部下の力が融合せずうまくいかなくなっていったと言います。
そんなある日、信頼していた女性の部下から「上から目線で皆を見てますよね」ときつい一言が。
能登氏はそれまでコミュニケーションがうまく出来ていると思っており「自分の態度が人を傷つけているとは分からなかった」ため、その一言に大きなショックを受けます。
未熟さを猛省し、そこから話すときはゆっくりと、人の話をしっかり聞くように。徐々にまた空気が良くなり、多くの人たちに受け入れられ、仕事が上手になっていったと話しました。
「社長というのはあくまで社長業なんです。営業などと同じ、一つの仕事」とかみしめるように語りました。

仕事は自信を持たせてくれる手段!

能登氏は「たくさんの達成感を自分に与えましょう」と学生に語りかけました。
人から褒められる経験を増やすことで自信を付けることの大切さを伝えました。
ただ、自信を付けすぎると傲慢になる危険も。けれど「天狗になってもいいんです」と能登氏。
「周りや友人など、おかしいよと言ってくれる人がいるはず。そのときに軌道修正すればいい」と話し、周囲に耳を傾けることも伝えました。

いまの能登氏にとって仕事とは、金銭的に自立する手段だけでなく、自信をつける手段であり自分をポジティブにしてくれるものになったと話しました。
そして学生のうちに「異人コミュ力」を付けてほしいと伝えます。
「異人コミュ力とは私の造語で、自分と異なる考えの人と話す力。社会人になると本当にさまざまな人と仕事をする。自分の考えと違う人の話を聞くことに慣れておくといいでしょう」とアドバイスしました。

自分が変われば周りも変わる

講演後には質疑応答の時間が取られ、学生が次々と手を挙げました。

「部下から指摘されて改善したあと、部下や周りの反応に変化はありましたか?」という質問には「数か月後に同じ部下から、やればできますねと言われました」と笑いを交えて回答。
「徐々に周りからアイデアや企画も出てくるようになり、雰囲気が良くなっていきました。自分が変われば周りも変わることが分かった」と話されました。

最後に、司会進行をした班の学生が代表しお礼の言葉を述べました。
「当初は社長と聞いて、難しい話をされるかと思っていましたが、等身大の話をしてもらえ社会人に対しての解像度が上がりました」と話しました。
「就活に自信がなかったですが、仕事は自信をつけてくれる手段と聞き、自分の人生を豊かにしてくれるものなのだと気づきました」と話し、今回のお話が身になったと伝えました。

担当教員からのメッセージ

能登社長は、今年初めてお迎えいたしました。歴史ある企業のトップを務められる能登さんですが、語りがとてもソフトで、しかも、学生の視点を意識いただいた内容に、学生が真剣に聞き入る姿勢が印象的でした。様々な部下の方とのやりとりには驚くこともありましたが、それだけ社員一人ひとりとの絶対的な信頼関係を築かれている能登社長でなければあり得なかったエピソードも沢山聞かせていただきました。能登様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年7月10日

女性が社会で活躍するために。「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。 

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、5月22日にSBI金融経済研究所株式会社の取締役理事長である政井貴子氏をお迎えしての、特別講演が行われました。女性が社会に出ていく前に知っておくべき心構えなど、実体験やデータに基づいた貴重なお話をお伺いしました。

なぜ女性が活躍することが重要なの?

この授業は進行も学生が行います。キューブと呼ばれる担当の班の学生が「つねに前向きに学びを深めながら、華麗な転身をしてこられた」と紹介し政井氏が登壇されました。
この授業に出演されるのは4年目です。「毎年気付きがあるのでそのたびにブラッシュアップしています」と話します。
「今回はそもそもなぜ『女性とキャリア形成』という授業があり、女性活躍推進が重要なのかしらという背景の共有をできればと思います」と講演を始められました。

まず政井氏は「男女雇用機会均等法」について説明。性別にとらわれずに自由に働けるための制度です。
逆に言うと、制度がないと女性は自由に生きていけなかった過去があります。
「皆さんは小学校の家庭科の授業は男子も一緒だったと思いますが、私のときは女子だけ。男子は技術という工作の授業を別々に受けていた」と話します。

第二次世界大戦を経て国連が成立した際、あらゆる差別を撤廃するべきだという動きが世界中で盛り上がりました。
そのなかには女性への差別も含まれ、1985年に女子差別撤廃条約に日本も批准。男女共同参画社会基本法を制定し、1999年に男女雇用機会均等法が制定されました。
「こういった流れのひとつとして、皆さんの雇用を後押しする一つとしてこの授業もある」と政井氏は話しました。

男性の意識はどうか

しかし、格差がまったくなくなったわけではありません。
世界のジェンダーギャップの解消には100年以上かかるという試算が。特に政治経済格差はなかなか縮まらないと言われており、それは日本も同様です。

では具体的にどういうことが課題となっているかと言えば、ひとつは家事の分担です。
政井氏は、家事を男女のどちらが担うべきか、男性に取ったアンケート結果を示しました。39歳以下の7-8割は、半々で負担するべきと回答。
しかし年齢が上がるにつれ割合は少なくなり、60歳以上になると半分以上の人がパートナーに任せたいと回答しています。
「女性は家庭に入るべきだと思っている人はまだまだいるということ。社会に出れば、年上とも仕事します。特に60歳くらいの人は偉いポジションも多い」と政井氏。
年上の男性と接する際は、口には出さずとも女性は家庭に入るべきという考えをもっている可能性も想定した方がいいと忠告されました。

ジェンダーギャップはこれからもある

政井氏は続けて「若い世代は大丈夫では、と思うかもしれませんがそうでしょうか」と次のアンケート結果を表示。
「営業職は男性の仕事だ、職場では女性は男性のサポートにまわるべきといった質問に、若い男性もそう思うと回答する人も2割ほどいる。10人いれば2人くらいは内心そう思っている人がいるんだと知っておくべきです」と語りました。
そして「皆さんは、そういうのも含めて会社を見て就活をしましょう」と話しました。
「出したデータは平均値なので業態や会社ごとにばらつきがあります。特定の業種や会社に偏っている可能性もある。受け入れ側の体制がどうなっているか、変わって行きそうかをみるのも大事ですよ」と語り掛けました。

また、賃金格差も依然としてあることを指摘。
政井氏は「私も役員をやってきましたが、世代的にも安く使われていると思います」と告白しました。
「昔は今よりも男女格差が大きかったので、役職に就けるだけで信頼されていると思っていた」と話します。
現在は男女差が出ないようポストに対して報酬制度が決まっているところもあります。「稼いでいくことが目的ではないですが、生涯賃金を考えるのも大事」と話されました。

女子校でリーダーシップを養われる!

「私が学生の頃はキャリアを考える授業もなく、自分もここまで長く仕事をするとは思っていなかった」と政井氏。
英語を使える仕事が良いと外資系金融業へ就職し、周囲は全員外国人のなか、人の数だけいろんな考えや価値観があることを知ったと言います。

日本の会社でも仕事したいと、現SBI新生銀行へ転職。
その後長年金融業界で働いた実務能力を買われ、日本銀行の審議委員へ就任されました。
「経済を学んだことのない私が専門家と混ざって意見交換する立場になるなんて」と話しましたが「20年もやっていると専門家として認めてもらえることもある」と誇らしげに語りました。

「女子校卒は不利ですか、と質問を受けることがあるのですが、そんなことはない」と本学の卒業生でもある政井氏は力強く話します。
「男性がいない中で女性がリーダーシップを取ることが求められる。人の前に立って行動することを経験できることはとても貴重です」と言います。
「皆さんの人生はまだまだ長い。振り返ってみて悔いの残らない充実した時間になると良いなと思います」と政井氏は講演を締められました。

キャリアを積み重ねるには

講演のあとは質疑応答の時間。学生から次々に手が上がりました。
「女子校でリーダーシップが養われることは実感がある」という学生からは、「男性のいる場で女性がリーダーシップを発揮できますか」という質問が。
政井氏は「なかなか自分にチャンスが回ってくることは少なかった」自身の経験を回答。
「一緒に仕事する人によって環境にばらつきがある世の中。自分に何が必要なのか考え、足らないことを実践してみる人がキャリアを積み重ねられると思います」と答えました。

さまざまな仕事をされている政井氏に「新しい仕事で環境が変わるとメンタルも影響出ると思いますが、どうやって前向きでいたのか」と質問した学生には「重要な視点ですね」と感心した様子も。
不安なときは友人に相談していたと話し、「大事なことを相談できる友達の存在が大切かも。そういう存在が学生のうちにできるといいですね」と回答。
「どうしても納得が出来なかったら辞めて、充電できたらまた仕切り直せばいい。手放すのも選択肢のひとつです」と伝えました。

学生たちにとってこの上ないロールモデルとして、貴重なお話を伺えるひとときとなりました。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には初回からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿も真剣です。政井様のキャリアは特筆すべきものがあり、金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。今までは比較的遠い存在であった金融のフィールドでしたが、今の学生が社会を牽引するこれからの世の中を考えた時、一人ひとりがみずから資産設計することが求められることになります。政井様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年6月6日

自身のキャリア志向を知ろう!「女性とキャリア形成」の授業で、日本マナー・プロトコール協会理事長による講演が行われました。

5月8日に行われた共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。明石氏は、積極的になることで人生が変わったと話し、ご自身のエピソードを交えて学生に前向きにキャリアを考える大切さを語りました。

チャレンジ精神を持ってキャリアを切り拓く

司会進行は「キューブ」と呼ばれる班ごとに学生が行います。
学生から紹介され明石氏が登壇されました。明石氏がこの授業で講演されるのは今年で3回目。
「毎年とても楽しみにしています。学生が主体的に運営していて質問も活発にあり、私自身モチベーションが上がります」と笑顔で仰いました。

「ただ、皆さん真面目で優秀なのに、チャレンジ精神がちょっと足りないなと思うことがある」といいます。質問に対して、分かっているのに手を上げないなど積極性に欠けると感じる場面があると話しました。
「キャリアを振り返ってみると、勇気を出したことで今の自分につながってきたなと思うことがたくさんあるんです」と話し、「キャリアも人生も自ら切り拓く」と題し、講演を始められました。

最初の就職先はよく検討して選択しよう

明石氏は大学卒業後、日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社。今では憧れの職業と言われるCAですが「なりたくて入ったわけではない」と言います。
明石氏が就活をしたのは、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職が難しかった頃。
大量採用していたJALになんとか入った、と話されました。

「現在は人手不足で売り手市場と言われている。ある意味、皆さんが企業選択の決定権をもっています」と明石氏。
転職も当たり前になっている現代ですが、「それでも最初の就職先はこれからの人生に大きく関わってくる」と話します。
「たくさん内定をもらっても、最初に入れる会社は1社しかない。だからこそ、入ったらしっかり頑張れるところを選んでほしいと思います」と、よく検討して選択するよう勧めました。

自分のキャリア志向とは?

就職活動をするにあたり、自分自身がどういうキャリア志向なのかを確認することが大事だと明石氏は話します。
例えば自分でやってみたい自立志向型や、人を動かすほうが向いているプロデュース型、まずは何かをやってみたいチャレンジ志向型など。「自分を知ることで、より迷わず、流されず、後悔しないキャリアにつながります」と伝えました。
また、「人生はキャリアだけではない」との言葉も。
「専業主婦だって素敵なことですし、地域活動に力を入れるのも素晴らしい。自分はどういう人生を歩みたいのか考えることが、有意義な企業選択に繋がる」と強調されました。

自分のやりたいことが分からない人には、『置かれた場所で咲きなさい』という元ノートルダム清心学園理事長の故・渡辺和子先生の言葉を紹介。
与えられた仕事を真摯に頑張ることの大切さを伝えました。「人生も仕事も必ず起伏がある。そのときにどうするかで、その人の真価が問われると思います」と話し、逃げずに継続する勇気を持つことが大事だと話します。
ご自身も離婚を経験されたとき、初めて劣等感や将来の不安を感じたと告白されました。
しかし子どものためにも自分が頑張らなくてはと一念発起し、当時まだベンチャー企業だったパソナに秘書として入社。
そこで経営を間近に見る機会を得、その後のコンサル業へとつながっていきます。
「大変なときこそ成長するチャンス。うまくいかなくてもチャレンジ精神をもって乗り越えてほしいと思います」と語りました。

人とのつながりを大事に

最後に強調されたのは、人とのつながりを大切にすること。
「チャンスをくれるのも評価をするのも、相手や周囲の人たちです」と明石氏。
日本マナー・プロトコール協会の立ち上げに加わったのも、会社を立ち上げてから人脈が広がったためだと話しました。
「それまでは一人で仕事をしていましたが、あまり社会貢献をしている気がしていなかった。マナーやプロトコール(国際儀礼)を普及させていくことは社会的に意義があることと思い、協会を立ち上げました」と言います。

そして、主体的な思考をすることを勧めました。
「誰かと同じほうが安心、と思う人もいるかも知れません。しかし正解はひとつではありません。自分で調べいろんな人の意見を聞き、自分なりの判断の基準を持つことが大事」と話し、「本質を見る目を、ぜひ若い時からはぐくんでほしいと思います」と伝えました。

チャンスで力を発揮するためには

講演後は質疑応答の時間が設けられ、たくさんの学生が手を挙げました。

「自分のキャリア志向が合っているか確認する方法は?」という質問には、「やってみないと分からない。ライフステージが変わったら志向も変わることがあります。自分にはこういう面があるなと気付いたらキャリアチェンジも考えていきましょう」と回答。

「いろんなキャリアを歩まれたと思いますが自分の軸はいつ見つけましたか」という質問も。
明石氏は「私自身若い頃はやりたいことが漠然としていたタイプでした。だからこそ『置かれた場所で咲きなさい』を実践し、そのときそのときで自分の力が発揮できるかやってみることを重視しました」と話し、「チャンスはいつ巡ってくるか分からない。いろんな出会いを大切にしてください」と伝えました。

担当教員からのメッセージ

今年も、日本マナー・プロトコル協会理事長の明石伸子様にお越しいただきました。
大変素晴らしいキャリアをお持ちの方ですが、一方、ご苦労の多かった経験もお話しいただきました。
いつも笑顔を絶やさないそのお姿が印象的であり、語りかけるようなお話しに、自然と学生が
引き込まれていく様子を強く感じました。

コロナ禍以降、人と人との触れ合いが減少したと言われています。
しかし、これからどんな時代が来ようとも、人と人とが出会い、直接語り合うことの大切さは
変わらないと思います。そのような大切なことを教えて下さいました。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2025年5月16日

Life Ship株式会社の田形正広氏が「キャリアデザイン」の授業で今年度も講演を行いました。

2025年度の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は「今、社会や企業が求める人材とは」をテーマに、キャリア形成を学びます。企業のトップなどゲストも多数招き、リアリティがあると評判の授業。2025年5月13日(火)のゲストは、Life Ship株式会社の田形正広氏。深澤教授との縁により実践女子大学で講演を行うのは10回目となります。世界にただ一つのコンテンツである「ワンピースキャリア論」に、学生たちも興味津々で耳を傾けていました。

漫画「ワンピース」でキャリアを学ぶ?

さまざまな経歴をお持ちな田形氏。大好きな漫画が「ワンピース」です。ワンピースは週刊少年ジャンプで連載中の、世界的にも人気の少年漫画。主人公のルフィを中心に海賊たちが大冒険を繰り広げる物語です。田形氏は「ワンピースには人生で起こることのほぼすべてが詰まっている」と言います。仕事のことやリーダーシップについても描かれているというのです。キャリアと漫画がどう結び付くのか学生たちも興味津々です。

講演は田形氏の自己紹介とキャリアの説明からスタート。経歴について説明があったのち、ライフログのグラフに沿って当時の経験を振り返りながら話が進みます。新卒入社の会社を半年でやめた話からはじまり、転職によって良い方向に進んだこと、任された大きな仕事に失敗したことなど、どのような状況に何を感じていたか語られました。

伝えたいことは「海賊になろう」?!

続いて、漫画「ワンピース」のあらすじと大まかなストーリーの解説があり、「伝えたいメッセージは二つだけ」とキャリア論の本題へ進んでいきます。

メッセージの一つ目は「人生は冒険だ!」。「就職はゴールではなく、大冒険の始まりであり、常に挑戦が求められる」「嫌なことや思い通りにいかないことがたくさん出てくるが、それが自分を強くしてくれる」と、自分の過去の経験とからめながら説明。「冒険には危険や勇気が必要な場面が伴うが、それを乗り越えた先には感動や成長が待っている」と述べました。「忘れがちですが自分の人生の主役は自分なんです。自分の人生に遠慮は無用」と田形氏。日本では自分が主役であることを忘れがちな制度や仕組みの中に生きているため、改めてこのことを伝えたいと述べました。

二つ目のメッセージは「海賊になろう!」です。海賊になるとはどういうことでしょうか。これはワンピースに出てくる海賊たちのように、楽しく、自由に、一生懸命に「今」を生きようということ。田形氏は、まず自由とは「何を信じてどの道を進むか自分で決めるということ」と定義しました。自由には責任が伴います。何をしてもいいですが、それを人のせいにはできません。何をどう行動するのか一つずつ自分で決断する必要があります。「大学生時代に自由は社会に出ることによって失われると思っていた」と話しながらも、「責任を負う部分が多くなっているが、それに伴い自由な部分も増え、より自由になっている」と述べました。

自由に必要なもの

自由の定義である「自分で決めること」に必要なものとして「自分の人生を生きる覚悟・判断基準(価値観)・判断材料(情報)」の三点をのべました。とくに「判断基準」と「判断材料」について、「情報だけ取ると溺れてしまうので、自分の価値観というものを同時に大事にする」とアドバイス。続いて、海賊の条件の一つにあがっていた「一生懸命」の定義に触れます。「謙遜も含め私このくらいの生き方で一生懸命かな?なんて思われる方も多いと思います。 なので、私が作った定義をまず言いますので、それに当てはまる方は、自分で自分は一生懸命なんだって認めていいですよ」と話し、その条件を「行動を起こしていること」「悩んだり迷ったりしていること」「失敗したり断られたりしていること」の三点と述べました。成功したかどうかは問題ではなく、まず行動できていることが一生懸命「今」を生きている証拠であると続けました。

クイズワーク

ここで田形氏から学生に向けて「海賊の反対は?」と質問が投げかけられました。グループで話し合う学生たち。「囚人」や「ニート」など様々な答えが出ましたが、田形氏の出した正解は「幽霊」。予想外ながらもどこか納得できる正解にうなずく学生。幽霊は過去や未来にとらわれ「今」を生きていない状態であると説明し、海賊と離れているイメージを認識することで軌道修正できると述べ、「今を一生懸命生きる」大切さを重ねて強調しました。

冒険と宝物(ワンピース)

冒険の先にある宝物(ワンピース)はどこにあるのかという問いに対し、仲間、愛情、仕事であると答え、どれか1つでも手に入れることができれば、ワンピースを見つけたのと同じくらい幸せであると述べました。また、仕事のワンピースとは?という問いに対しては「天職」とこたえ、「自分にしかできない仕事であり、昨年ついに天職を見つけ、現在それに向かって邁進している」と続けました。さらに、働くということは人や社会の役に立つことであり、より役に立てるように成長を重ねることで高い景色を見ることができると述べました。

冒険を楽しむために

宝物の次は、冒険を楽しむための武器と力として悪魔の実と覇気について説明。ワンピースの世界では、能力者と呼ばれる特殊な力を持つキャラクターが登場し、能力は「悪魔の実」という特別な果物を食べると身に付きます。しかし代わりに海賊ながらカナヅチになってしまうという犠牲を伴い、一長一短の力であることが示されました。悪魔の実を現実で例えると、これは時間を犠牲にして身に付ける専門的な技術や資格と説明し、漫画では悪魔の実を食べていないキャラクターも多数活躍していることを提示しながら「あると大きな力を発揮するが必ずしもマストではない」とも助言しました。

続いて覇気について説明。覇気とは、時間を犠牲にせずに得られる力であり、「見聞色」「武装色」「覇王色」の3種類が存在し、それぞれを「自己客観力と他者共感力」「自己コントロール力」「根拠のない自信」と解説します。前者二つは「相手の立場になって考える」「挨拶をする」など日常動作の中で訓練可能であることを提示。最後の「覇王色」の覇気についてはあってもなくてもいいとし、「自分に対する信頼」であると述べました。

「つながり」のキャリア論

今回の講義を通して田形氏が伝えたかったことは「自分の行動や経験と人の縁は繋がっていく」ことだと田形氏は実感を込めて言います。「どこでなにがどう繋がるかは分からない。ただ、勇気を出して行動すると願いは叶っていきます」。例として田形氏と深澤教授との繋がりが挙げられました。キャリアコンサルタントが大勢集まる会で深澤先生が講演をした際に、名刺交換をし、深澤教授の著作の感想を思いきってメールで送ったことから縁ができ、夢だった大学での講義が実現したと語りました。 「自信満々に見えるかも知れないけど軸がブレることもあるんです」と飾らない言葉で真摯に学生に語る田形氏。「自分の人生を生きるために行動しよう」としたことが今に繋がっていると強調しました。

担当教員からのメッセージ

早いもので10回目の特別講座「ワンピースキャリア論」が展開されました。
田形さんとは、キャリアコンサルタント仲間としてお会いしたことがきっかけで
この授業に、毎年駆けつけて下さいます。
仕事にも、家庭にも、とにかくポジティブ思考を貫かれている田形さんから、
私自身も、多くのことを学ばせていただきました。
ワンピースという作品を読んでいる人も、読んだことがない人も、あっという間に
この作品の世界に引き込んでいただき、キャリアデザインのために大切な考え方や
キーワードを沢山伝えて下さること、とても意義ある授業となっています。

先行き不透明に時代に大航海に出かける今の学生には、人との出会い、すなわち
“ご縁”を大切に、海賊として人生を謳歌として欲しいと願うばかりです。
この場を借りて、田形様に心からの感謝をお伝えしたいと思います。

2025年5月8日

「女性とキャリア形成」の授業で実践女子学園理事長の木島葉子氏からこれまでのキャリアについてお話を伺いました。

本学卒業生を含む企業トップの方々をお招きし、ご自身のキャリアや仕事で人生を充実させるために必要なことを語っていただく全6回のリレー講座が今年度もスタートしました。最初の第一回目は、実践女子学園理事長の木島葉子氏です。 木島氏は講座で、アフラックでの39年間のキャリア、そして現在の学園理事長としての活動について語られました。特に、危機対応や日本法人化プロジェクトの経験で得たリーダーシップについて、働き方改革などに代表される組織の改革におけるダイバーシティ推進の重要性など、管理職として実際に経験を重ねられてきたからこそわかるお話が展開されました。進行は担当のグループの学生たちが行うなど、学生主体の組み立てとなっており、講座後も積極的に質疑応答が行われました。

学生生活とキャリアの歩みのスタート

はじめに、自己紹介として大学時代についてお話がありました。木島氏は実践女子大学の卒業生。学生時代はスキーに熱中し、花屋でのアルバイトを通じてフラワーアレンジメントの資格を取得するなど、興味を持ったことには徹底的に取り組む姿勢を持っていたと振り返ります。「手書きの卒業論文の清書が何よりきつかった」と、当時を振り返りながら語りました。

続いてこのリレー講座について触れ、ゲストとして招かれている方々を「もし皆さんが社会に出て講演会に参加しようと思ったら、参加費がかかるようなすごい人たち」と紹介しつつ、「すごい人の講演を聞くという気持ちは捨てて、この人の真似できるところはどこだろうか、どんなことを考えているんだろうかということを探しながら、質問したり事前課題に取り組んでほしい」と話しました。

今回進行を担当した学生

就職活動では、女子大生の就職が厳しかった時代にアフラックに入社し、管理職、役員を経て39年間勤務されました。アフラックでは、保険契約管理、コールセンター、コンプライアンス、日本法人化対応、ダイバーシティ推進など、多岐にわたる業務を経験されました。入社後からのキャリアについて順を追って説明する木島氏。ひとつひとつのステップで得た経験や知見を話します。

象徴的なエピソード

「自分のキャリアの話をするときは避けて通れない」と紹介されたことは、東日本大震災時の危機対応でした。具体的な対応業務に、お客様対応、安否確認、保険料支払いの猶予など、広範囲な対応が必要であったことを説明されました。震災当日は4.5時間かけて帰宅したこと、計画停電の影響を受けて業務が滞ってしまったことなど、通常通りにいかなかった当時の苦労を話します。

その中で「特に大変だった」と触れたことは、お客様の安否確認など、各種対応を実施するにあたり社長の事前承認を得ることでした。単にやることを説明するだけでなく、判断してもらうための情報を合わせてもっていかないと判断してもらえないということに気づかず、何度もやり直しに。最終的には20万人の方の安否確認は一年の月日をかけて終了させましたが、「この経験から、物事の進め方を学ぶことができました」と振り返りました。また、東日本大震災の前後にも大きな危機対応を経験したことに触れ、「はじめは不安が大きかったけど、経験を重ねることで自信がつきました」と話を結びました。

続いて、日本法人化プロジェクトにおいて、チームの力でプロジェクトを成功に導いた経験を共有されました。

プロジェクトの内容は、アメリカの保険会社の日本支店を日本の株式会社にするというもの。取り扱う内容がこれまで触れてきた業務とは全く違う専門分野外で「当時の社長からリーダーを任された際思わず『本当ですか』と聞いてしまうほど衝撃的だった」と話します。「仕事でつかえる英語力がないのに、アメリカとの電話会議が朝7時から始まり、英語でのやり取りが続くという大変なもの」と続け、困難な課題に対して「英語ができる人、プロジェクトマネジメントの経験がある人、税務や法務に詳しい人など、社内の人材を集めてチームを作り、関係者と対話を重ね、課題を一つ一つ解決していきました」と語り、リーダーシップを発揮した経験を話しました。

ダイバーシティ・インクルージョン推進

さらに、アフラックが経営戦略として掲げているダイバーシティ&インクルージョン推進についてもお話がありました。企業がダイバーシティを推進する理由として社会や顧客ニーズが多様化していることをあげ、対応する人材も多様性が求められていることを提示されました。「能力を最大限に発揮できる環境を整え、意思決定の場で多様な意見を聞けるようにする必要がある」と解説。

木島氏がダイバーシティ推進を担当されていたアフラックでは、「女性が比較的多い会社でしたが、上に行けば行くほど女性の割合が減っていくという課題があり、ライン長ポスト(部下がいる管理職)の女性割合を2024年末までに30%以上にすることを目標に掲げています」と実際に行われているダイバーシティ推進について説明。同時に「ダイバーシティ&インクルージョン推進は、変革案件のドライバーになっています」と語り、「働き方改革も、ダイバーシティ推進と一緒にやったことで、長時間労働が激減しました。また、DXやアジャイル型の働き方も導入しやすくなりました」と、変革を進める推進ドライバーとしての役割もあると話しました。

講義を聞く学生の様子

理事長就任

理事長就任の前置きとして、キャリアプランを「30歳の頃から、60歳ぐらいまではアフラックでの仕事を続けるものの、それ以降は家族との時間を増やしたいと考えていました」とお話されました。実践女子学園との再会は「120周年のイベントでお声がけいただいたのがきっかけ」と語ります。その後、理事に就任。さらにその数年後に理事長へのオファーがあり、それ自体に驚くとともに、抱いていたキャリアプランとのタイミングの一致に驚いたといいます。

理事長就任の決め手となったことは「女性が社会を変える、世界を変える」という建学の精神。「120周年のイベントで学校に来て、建学の精神を目にしたときに衝撃を受け、女性活躍推進の最終形態だと思いました。下田先生が100年以上前に考えられたことを言葉にしたもので、そんな人が創立した学校で働けば、少しでも女性の働きやすさという点で変えていけるのではないかと思いました」と決断の決め手となった出来事と、女性が働きやすい環境を整備するために貢献したいという想いを紹介していただきました。

最後に学生の皆さんに伝えたいことを「実践すること」「チームで取り組むこと」「主体的に行動すること」の3つのポイントをあげてお話しされました。それぞれ「気になったことがあれば、とにかく手をつけてみる。そういう習慣を学生のうちに身につけると、社会に出て仕事が忙しくなっても、いろんなことにチャレンジできるようになります」「1人でやることには限界がありますが、チームの成果は無限大です。チームで取り組むことを実行するためには、公私問わず相談できる人、話ができる人をたくさん持っておくことが大切。友達や家族、同僚など、様々な人に相談できる環境を作っておくといいと思います」「人に頼るべきところは頼りつつ、自分がどうしたいのかを自分で決めて行動することが大切。誰かが声をかけてくれるのを待つのではなく、自分から声をかけて、一緒にやってくれないかとお願いすることが、主体性だと思う」と、具体的かつ前向きなアドバイス。学園の後輩たちにエールを送られました。

担当教員からのメッセージ

「女性とキャリア形成」の授業がスタートしました。
6人のトップオブトップを迎えてのキャリア科目、今年は55名の学生とともに展開していきます。

最初のゲストは、本学園の木島理事長のお話しでした。
理事長は、前職時代には企業トップとして、昨年からは学園のトップとしてお話しを伺っています。学生にとっては、大学の先輩でもあり、いわばこの授業の基調講演という位置付けでした。主体性溢れる学生に向けて、大変貴重なご示唆をいただきました。

また、この授業の特徴は、錚々たるゲストの皆さんからのメッセージをお聞きできることは勿論ですが、それぞれのゲストに対し、プレセッション→オンタイムセッション→アフターセッションと続く一連の取り組みにポイントがあると考えています。また、ゲストがお越しになるコマについての授業進行は、学生が行います。学生自らが、授業の設計や運営に携わることにより、より主体的に授業に臨み、大きな成果を感じてもらう試みを続けています。

2024年8月5日

人とのつながりを大事に。「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会理事長が人生と企業の選択について講演を行いました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月20日に日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリアを持つ明石氏は、自身の経験を通して、人の繋がりや人生について幅広くお話されました。

企業をどう見極めるか

本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。司会の学生は「社会に出るとマナーが必要な場面が多いですが、マナーを学ぶ授業はあまりなく私自身もマナーに自信はありません」と話し、「今回の講演で何か一つでも就活や、社会人として役立つものを身に付けたいと思います」と、明石氏にマイクを渡しました。

明石氏も「私が学生のときは、キャリアやマナー教育はなかった」と話し、この授業が貴重な内容であることを強調され、これから就職活動が待っている学生たちに向けて、「就職は人生のターニングポイント」と話し始められました。
明石氏は45年前に日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社されました。しかしその少し前は「結婚したらCA職をやめなければならない時代もあったそうです」と話します。
また、明石氏が就活をした時は、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職活動に苦戦したそうです。最近ではコロナで就職が厳しかった時があったように、「就職活動は、世の中の経済状況に影響されることが多いんです」と明石氏。

今、社会は大きく変わっています。その上で、今後どのような企業が発展していくのかなどを見極めて、企業選びをしてほしいと話します。
また、学生の私たちにとっては知名度がなくても優良な企業があることや、女性活躍を推奨している企業などの調べ方なども紹介してくださいました。

自分はどんなキャリア志向だろう?

「今はいつでもキャリアチェンジできる時代です」と明石氏。転職のハードルは低くなったのは良いこととしつつも、「スタートはやっぱり大事」と強調されました。
明石氏自身も最初に就職した企業がJALで良かったと話しました。
「しっかり教育をする会社だったことが、きっと今につながっていると思います」と言います。

とはいえ「これからキャリアを考えると迷うことが多いですよね」と明石氏。
企業の数は多く、どういう会社が自分に合っているんだろう、と考えるとき、少しでも自分のことを知っているとある程度絞り込みやすいと話しました。
そのひとつとして、自分のキャリア志向を確認することが大事と紹介。
自分は、「チャレンジ志向型」なのか、人と人を結び付ける「プロデューサー型」か、一つのスキルを突き詰めてやっていきたい「専門職型」なのかなどなど。
「仕事も大事だけれど、家庭もしっかり大事にして働きたい人ももちろんいらっしゃるでしょう。自分の仕事に対する志向を知ったうえで、あなたにとっていい会社を見つけましょう」と話しました。

また、すぐにやりたい仕事ややりがいのある仕事ができるわけではないということも忠告。
つらい仕事や好きではない仕事をやらなくてはいけないこともありますが、「逃げない、折れない、継続することが大事」で、渡辺和子氏の「置かれた場所で咲きなさい」という本を紹介されて、まずは与えられた仕事をしっかりやってこそ自己成長に繋がると伝えました。

すべては人で決まる

「会社とは人の集団です」と明石氏は言い、人との関係を大切にすることを伝えました。
「チャンスをくれるのもあなたを評価するのも、相手や周囲の人」と話し、人から好かれ、人としての好感度を高めるポイントを話されました。
その秘訣は「明・元・素」。明るく、元気で、素直なことです。

また「主体的な思考をもつ」ことの大切さも伝えられました。
「なんでもマニュアルに基づいて答えを教えてもらいたいと思う人が多いようですが、正解は1つとは限りません」と言います。
そのためには、何が本質なのか、多角的に物事を見ることが大切だと語りました。
「マナーも時代とともに変わっています。しかしその本質は変わらないんですよ」と明石氏。
マナーの本質は、人と良い関係を築くためにどうしたらいいかを考えること。そのための配慮や心遣いがマナーです。
自分自身が大切にしていることは何なんだろうか、相手はどうして欲しいのだろうか、という判断の基準を持つことで惑わされないようになると話しました。

「みなさんは20歳前後で、結構生きてきた感じがしているかもしれないけれど、皆さんの人生はこれからです」と明石氏。
時間をどう過ごし、人とどう関わっていくかで、人生の輝きが決まると言い、「先が決まっていないという事は、未来は可能性に満ちて開けていると希望を持ってほしい」と講演を結びました。

目の前の仕事に一生懸命に

講演後は質疑応答の時間が設けられました。
学生から「時間の使い方で意識していることは?」という質問に対して、「集中すること。なにかに一生懸命になっていると時間が早く感じられるでしょう。そんな風に何事にも情熱を持って取り組んでみると良いと思います」と回答されました。
「明石氏はどんな基準で仕事をされていますか」という質問には
「一番大事にしているのは「信頼」。信頼を築くのは時間がかかるし大変。しかし頼られることは嬉しいし、信頼してもらえるかどうかが人として大切な基準になります」と答えました。

学生たちは「自分に合った企業をどう選ぶか」という、就職活動に向かう上で大きなヒントを得た講演になりました。

担当教員よりメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様に今年もご登壇いただきました。多くのご経験から導き出された明石さんからのメッセージの中に、チャンスをくれるのも評価してくれるのも周囲の人であり、そのためには、好感度プラス「明・元・素」、すなわち明るく、元気で、素直であるというお言葉が印象的でした。この場を借りて、明石様に心から感謝申し上げます。

2024年7月29日

ポジティブ思考で人生を輝かせる!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂執行役員の関根近子氏による講演が行われました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月4日に元資生堂執行役員常務の関根近子氏をお呼びしての特別講義が行われました。「仕事もプライベートも輝いて生きる」をテーマに、関根氏がどう壁を乗り越え、キャリアを形成していったかを語ってくださいました。学生たちにとって自己成長につながる多くのアイデアやヒントが盛り込まれた講演となりました。

輝いて生きるための指針とは

この授業では学生が司会進行を担当します。担当の学生に紹介された関根氏は「今日は美しく輝く女性になるためのヒントも話していきます」と笑顔で学生たちに語り始めました。

はじめに伝えたのは3つの仕事観。
「Job」「Career」「Calling」という言葉です。「Job」は、お金を稼ぐ手段としての仕事のこと。
「Career」は自分も成長していく仕事、「Calling」はやりがいがあり、することが喜びである仕事です。
「私も最初は、仕事はお金を得るための手段としか考えてなかったのですが、仕事を通してこんなことを実現したいという気持ちの変化があり、今はやりがいのある仕事になっています」と、自身の仕事への意識が変わった経緯を話されました。

「売らない」セールスで自分が変わった

大学進学を志していた高校時代、父親が事故に遭い、関根氏は家庭を支えるため就職を選択。
とにかくお給料の良いところ、と選んだのが資生堂でした。まさにお金を稼ぐ手段としての「Job」だったと言います。入社当時の仕事は、スーパーなどに設けられた特設会場で通りかかった人に化粧品を紹介し販売する、いわゆるキャッチセールス。
ノルマはきつく、客にも迷惑がられ、自分の仕事に誇りが持てなくなった関根氏は、先輩に辞めたいと相談します。

そこで言われたのが「辞めるなら、売らなくていい」という言葉。
その代わり、客一人ひとりに合わせ、プロとしてメイクの仕方を教えることをアドバイスされました。そこで言われたのが「私たちの仕事は単に化粧品というモノを売ることではなく、お客様の魅力を引き出すことなのよ」美容のプロとしての知識をお客さまのために使うことの大切さを気付かされました。
瞬時にその人に合わせたメイクを、自分の知識と技術のなかから選んで伝えること。そのことを意識して接客するようになると、徐々に売り上げにつながっていきました。
さらに客から「教えてくれてありがとう」と感謝されるように。
「もっとありがとうと言われたいと思うようになりました」と語りました。

この経験から関根氏は「それまで自分を評価するのは上司だと思っていたのですが、自分を評価するのはお客様」と意識が変わります。
そこから礼儀作法や滑舌、お礼状を書くためのペン字などなど、お客様のため自分に足りないものを自ら学んでいったと話します。
「環境はまったく変わってないのに、仕事に行くのが楽しくなった。不思議ですね」と意識を変えることの大切さを伝えました。

自分に自信を持つことの大切さ

のちに国際事業部に異動になった関根氏は、自己肯定感を高めるように意識するようになったと話します。当時の上司はドイツ人。
英語はそれほど得意でなく、原稿にルビを振り必死で英語スピーチをしたこともあったそう。
なぜ自分がこの部署なのかと上司に尋ねると「大事なのは語学力じゃない。自分の意見をはっきり言うというところがいいんだ」と言われたのです。
物おじせずなんでも話すことがグローバルな人材に必要なことだと教えられ、自信を持つことの大事さに気付いたと言います。
現状、出世するのは男性が多いのが現実。しっかり競争意識を持ち自己アピールできる女性になってほしいと伝えました。

「皆さんも自分に自信を持ってください」と語られました。

ポジティブ思考で困難に立ち向かう

自己肯定感を高めるために大事なのが「ポジティブ思考」だと関根氏は言います。
ただ、ネガティブな思考がだめだということではないと話しました。
「私も愚痴や不満を言っていた時期がある。ポジティブ思考とは、嫌なものは見ないということではありません。物事の見方や思考を変えてみることを意識してみることです」と語ります。
ポジティブとは、辛いことや課題があっても希望や解決策を探そうとする強い精神のこと。
「愚痴を言ったからって変わらない。じゃあ現実を受け止めて、自分がどう気持ちを切り替えるかが大事」と関根氏。
「自分の人生は自分が作るんです。過去と他人は変えられないが未来と自分は変えられる」と力強く語りかけました。

最後に関根氏は「歩いた後に一輪の花を咲かせたい」という托鉢者の言葉を紹介し「皆さんもどうぞ、これからの長い人生でいろんな花を咲かせていただければ」と講演を締めくくりました。

悔しい気持ちをポジティブに変換するコツは?

講演の後は質疑応答の時間となりました。
「様々なことに挑戦しすぎて中途半端になってしまうときは、一つに絞るべきでしょうか」という質問には「挑戦しなかったら分からなかった出会いもある。最初から一つに絞らないでいいと思います。そのなかで深めていきたいものをみつけていけるでしょう」と回答しました。
「人のいいところを真似したいと思う前に、自分と比較し悔しいと思ってしまうがどのようにポジティブに変換すればいいでしょうか」という質問には
「負けず嫌いなのはいいと思う。悔しいと思わせられたということはどういうことか考えてみましょう。自分もできるはずと思っているからかも」と回答されました。

キャリア形成のヒントになる多くの視点やアイデアを教えてくださり、学生たちの心にも多くの言葉が響いた講演となりました。

担当教員のメッセージ

本授業の最後のゲストとしてお迎えいたしました。毎年お会いするたびに、生き生きさが増していく関根さん、ご自身のお姿から、すでにポジティブさを感じますが、今年のお話しも、ポジティブ思考に繋がるものばかりでした。しかし、関根さんが語るポジティブ思考とは、単に「ものごとを良い方に考える」ということではなく、辛く、苦しい状況のなかでも希望や解決策の光を探そうとする思考とその光を信じて進んでいくという強い精神のことであります。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。関根様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

2024年7月18日

ハピネスの循環で世界一のホスピタリティを!「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。 

6月6日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。夢の世界を運営するスタッフのホスピタリティの高さはどう養われているのか、その秘訣は「ハピネスの循環」にあると語ってくださいました。

開園当初はキャストとして活躍

この日はまさに東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープン当日。記念すべき日に講演いただくことになりました。永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
最初はアトラクションのキャスト(スタッフ)としてコスチュームを着て活躍し、その後役員になりました。

開園当初の日本はまだコンビニエンスストアが出てきたばかりの時代。
ディズニーランドも遊園地という認識が強く、飲食物を持ち込むゲスト(来園者)も多かったと言います。
「今では考えられないですが、アトラクションにバナナを持ち込んで食べてる方もいたくらい、当時の日本人もマナーは悪かったんですよ」と話し、笑顔どころか、眉間にしわを寄せてゲストに飲食物の注意をしては謝っていたと、笑いを交えて話されました。

ハピネスを届けるためにはコミュニケーションが大事

開園当初からどのようにディズニーランドが成長していったかを語られる中で、キャストのホスピタリティが上がっていったことが大きいと永嶋氏は話します。
世界に6つあるディズニーリゾートのなかで一番のホスピタリティ高さと言われるようになり、本場アメリカからも視察にくるように。
「ホスピタリティとは人間力のことだと私は思います」と永嶋氏は語りました。

「キャストが目指すべきゴール、それはゲストにハピネスをお届けすることです」と永嶋氏。
「驚かれるかもしれませんが、キャストには接客マニュアルがないんです」と話します。
キャストが心掛けていることはあいさつだと言い、「ゲストと会話をするために、まずあいさつするんです」と話します。いかにゲストとコミュニケーションを取るか、どうやってゲストを喜ばせるかをそれぞれのキャストが考えて行動します。
今では有名になった水たまりや落ち葉でディズニーキャラクターを描く「カストーディアルアート」もキャスト発案です。

永嶋氏は印象的な出来事として東日本大震災のことを話されました。
約1か月パークが閉園している間に、どのようにゲストとコミュニケーションを取るか、どうサプライズを提供するか定期的に集まってディスカッションを繰り返したと語りました。

インクルージョンを広めていくために

永嶋氏は「接客のためのマニュアルはないですが行動基準がある」と話します。
安全・礼儀正しさ・ショー・効率、の4つの基準がこれまでありましたが、「そのなかに最近インクルージョン(多様性)が入りました」と紹介しました。

しかし、オリエンタルランドも昔は男社会で、ジェンダー問題への理解も十分ではなかったという永嶋氏が役員時代、キャストのリーダー育成プログラムに手を挙げたキャストに性別違和をカミングアウトされた人がいたのですが、広報の男性役員からその人をリーダーから落とすよう指示があったと語りました。
永嶋氏はこの決定に反対し猛抗議しましたが、結局その人は落選。
翌年再度プログラムを受け、ようやく合格されました。
「ディズニーは進歩的だとイメージされていましたが、内部の状況は大きく遅れていた」と、永嶋氏は当時の苦い経験を話されました。

キャスト同士でお互いを高め合う

キャストのホスピタリティの高さの秘訣は「キャストのコミュニケーション活動」にあると永嶋氏は言います。
開園前に各アトラクション対抗のカヌーレースを行ったり、年に一度のサンクスデーで役員たちがキャストをもてなしたり。
永嶋氏が「一番効果がある報奨活動」と言うのは、キャスト同士で褒めてたたえ合うスピリットオブ東京ディズニーリゾートの取組です。
お互いにサンクスカードを送り、カードの一番多いキャストは大々的に表彰されます。

なぜそこまでキャストをねぎらうのかと言えば、「キャストに、実際に感情を持ってハピネスを体感してもらい、同じようにゲストにハピネスをお届けしてほしいからです」と永嶋氏は話しました。
ハピネスをもらったキャストはパフォーマンスが向上し、その分ゲストにさらにハピネスを提供できる、という「ハピネスの循環」が行われるのです。
「ぜひパークに遊びにきてください」と永嶋氏は講演を締めくくりました。

管理職の試験を受けたときの気持ちは?

講演後には質疑応答が行われました。
はじめに「男社会のなかで、なぜ管理職の試験を受けたのですか」という質問がありました。
永嶋氏は「差別というよりは、女性は弱いものだから守ってあげようという考えが当時はありました」と話しました。
初めて管理職の試験を受けたとき、永嶋氏は落ちてしまったのですが、自分よりもあまり仕事ができない男性が合格したのを見て「自分より仕事ができない人が上司になることが許せなかった」と笑いを交えて答えました。
また、「今までできなかった仕事にチャレンジできることは面白いことです」と管理職にチャレンジした気持ちも語りました。

「永嶋さんが思うインクルージョンを向上させるコツや考えを教えてください」という質問には、「いろんな身分、年齢の方が働けるということ。
これから定年という考えもなくなってくると思います。そういうこともひとつのインクルージョン」と回答されました。
「オリエンタルランドで働いたことで得た財産は?」という質問には「人。さまざまなつながりになったり、長い付き合いになったり、助けられています」と答えられました。

ディズニーリゾートに通底するホスピタリティの高さの秘訣に触れ、学生たちにも刺激になった講演でした。

担当教員からのメッセージ

永嶋様と初めてお会いしてから、もう20年以上になります。
いつもアグレッシブな永嶋様から色々なことを学ばせていただいています。
とりわけ確固たる信念をお持ちになり、メンバー一人ひとりのことに気を配りながら、先頭に立って組織を牽引されるリーダーシップについては、私の目標でもありました。
今回も、テーマパークのオープン当時のこと、管理職としてのご苦労など、
学生にとっては、極めて貴重な時間になったと思います。
この場を借りて、改めて感謝申し上げます。