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2022年6月15日

「キャリアデザイン」の授業で元スターバックスCEOの岩田松雄氏が「ミッション」についての講演を行いました。

2022年度の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は「今、社会や企業が求める人材とは」をテーマに、キャリア形成を学ぶ授業です。企業のトップなどゲストも多数招かれ、4月19日に行われた授業では、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏による講演が行われました。岩田氏はリーダー論のなかで「ミッション」を自覚することの大切さを学生たちに伝えました。

元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏

リーダーに必要なのは「ミッション」

岩田氏は「今回の話は企業の部長さんたちにも話す内容です」と前置きをされました。学生レベルに落とすことはせず、企業を経営するためのリーダー論を語ると宣言。そして「それは自分が生かされている理由である、ミッションについてです。これをこれから就職活動で企業を選ぶ際の基準にしてください」と講演が始まりました。

「ミッション」とは、存在理由のこと。自分のできることを多くの人のために、世の中のために使ってみることを意識することと言います。企業におけるミッションは経営理念にあたります。企業のミッションは利益を上げることだと思われていますが、それは間違い。利益を上げることはミッションを行うための手段であるだけだと熱く語りました。

リーダーにとって必要なことは「ミッション」「ビジョン」「パッション」の3つが必要だといいます。なかでも一番大事なのがミッション。なぜかと言えば組織の「共通のゴール」が分かるからです。組織にはいろんな価値観を持った人が集まります。企業のミッションがはっきりしていれば、全員同じ方向に向かって行動できるのです。また、ミッションに共鳴した人がさらに集まり、企業としてもできることが増えていきます。それはやがて利益向上にも繋がっていくのです。

仕事は「志事」!個人のミッションの見つけ方は?

では個人のミッションはどうやって見つければよいのでしょうか。岩田氏は自分にとって「好きなこと」と「得意なこと」と「誰かのためになること」の3つの輪の重なるものはなにか探すことを勧めました。情熱を持って、継続して取り組むことができ、対価がもらえること。まずはビジョン(目標)を持つことから始め、突き詰めていくと自分のミッションが分かってくるといいます。「好きなことや得意なことが分からない場合は、まず目の前のことを一所懸命やってください」と語りました。お茶汲みで賞をもらった方を例に挙げ、どんな小さいことでも真剣に向き合って一所懸命にやれば好きになると断言しました。

スターバックスのミッションの素晴らしさ

岩田氏は新卒で日産に入社しました。生産管理など現場の仕事を経験し、アメリカへ留学。経営学を学び、帰国後コカ・コーラで役員を経て、ゲーム会社アトラスの社長に就任。プリクラで一大ブームを巻き起こし売上をV字回復させました。その後化粧品ブランドボディーショップを運営するイオンフォレストの社長を歴任し、2009年にスターバックスコーヒージャパンのCEOに就任しました。

岩田氏はスターバックスの経営理念、つまりミッションに共鳴したと言います。スターバックスで大切にしていることは「Just Say YES!」。道徳や倫理などに反しない限りお客様が喜んでくれることは何でもする、という考えです。スターバックスにはコーヒーの入れ方などのオペレーションには細かいマニュアルがありますが、サービスについてのマニュアルはありません。店員一人ひとりが考えて自ら行動します。目の前のお客様へ最善を尽くすというミッションに基づいて、正社員やアルバイトなど役職に関係なくサービスの裁量があるのです。スターバックスは会社としても居心地がよく、バイトも長続きするといいます。経営理念が浸透したスタッフが長くいることで、バイトにもしっかりとした研修を行えます。そして若いスタッフにもミッションが共有されていきます。例えイレギュラーであることでも目の前のお客様を大事にすることで、お客様に感動を与え、売上にも繋がる良い循環が生まれているのです。

自分のミッションを考え人生戦略を考える

「今回の話は企業のリーダー論ですが、想像しにくかったら自分の人生戦略としてミッションを考えてみてください」と岩田氏。特に自分は何が得意で何をしたいのか考えることは、就職活動のときの指針になると言います。知名度や企業の規模などにとらわれず、自分のミッションと企業の経営理念が近いかどうかを考えて選んでほしいと語りました。

学生からは「ミッションを考えるときに、魅力的な選択肢に迷ってしまうのですが、どうすればぶれないでいられますか」という質問が投げ掛けられました。
例えば岩田氏のミッションは「リーダーを育てること」。しかしこのミッションにも最近気付いたといいます。「ミッションは進化させていいんです」。好きなことや得意なことは変わっていくことがあります。また自分の置かれた環境に合わせビジョンも変わります。まずは目の前のことを一所懸命に努力してください、と語りました。「努力して小さな成功体験を積み重ねることが大切です。努力しなければ夢は叶いません。過去の成功体験は、なにかを新しいことを行おうとするときに思い出して力になります。そのためには、学び続けてください」と、学生たちにエールを送りました。

深澤教授の話

夏季集中講座と後期のグローバルキャリアデザインの授業で毎年お世話になっている岩田松雄様のご講義は、今年から前期のキャリアデザインに舞台を移してご登壇いただきました。学生にとっても、とても身近なスターバックスコーヒーを舞台に、そのトップとしての思いや現場で起こった数々のエピソードの紹介もいただき、あっという間の100分でした。岩田様のお話しの中心は、リーダーシップとミッション、VUCAの時代に生きる学生たちにとっては、大変大きな勇気をいただくご高話でした。この場をお借りして心から感謝申し上げます。

2022年6月3日

Life Ship株式会社代表取締役の田形正広氏が「キャリアデザイン」の授業で世界にただ一つの講演を行いました。

2022年度の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は「今、社会や企業が求める人材とは」をテーマに、キャリア形成を学びます。企業のトップなどゲストも多数招き、リアリティがあると評判の授業。2022年5月10日(火)のゲストは、Life Ship株式会社の代表取締役の田形正広氏。深澤教授との縁により実践女子大学で講演を行うのは7回目となります。世界にただ一つのコンテンツである「ワンピースキャリア論」に、学生たちも興味津々で耳を傾けていました。

漫画「ワンピース」でキャリアを学ぶ?

田形氏はLifeship株式会社という、派遣社員の評価をスムーズに行う評価管理ツールを提供するベンチャー企業の代表取締役。人材派遣会社パーソルの営業部部長を経験後、Lifeship株式会社を起業しました。 そんな田形氏が大好きな漫画が「ワンピース」です。ワンピースは週刊少年ジャンプで連載中の、世界的にも人気の少年漫画。主人公のルフィを中心に海賊たちが大冒険を繰り広げる物語です。田形氏は「ワンピースには人生で起こることのほぼすべてが詰まっている」と言います。仕事のことやリーダーシップについても描かれているのというのです。キャリアと漫画がどう結び付くのか学生たちも興味津々です。

楽しく自由に一生懸命に「今」を生きるとは

田形氏は「伝えたいメッセージは2つだけ」と講演をスタートしました。メッセージの一つ目は「人生は冒険だ!」。「忘れがちですが自分の人生の主役は自分なんです。自分の人生に遠慮は無用」と田形氏。家族や友達を気にして進路を選んでしまうことがないようにアドバイスしました。

二つ目のメッセージは「海賊になろう!」です。海賊になるとはどういうことでしょうか。これはワンピースに出てくる海賊たちのように、楽しく、自由に、一生懸命に「今」を生きようということ。田形氏は、まず自由とは「何を信じてどの道を進むか自分で決めるということ」と定義しました。自由には責任が伴います。何をしてもいいですが、それを人のせいにはできません。何をどう行動するのか一つずつ自分で決断する必要があります。

しかし、決断するのは容易なことではありません。それには自分なりの価値観を持ち、情報を集めることが必要です。たくさんの情報を精査し、判断していくことが大切だと言います。田形氏のひとつの判断基準は「好き・嫌い」といった簡単なもの。なぜそれが好きなのか、嫌いなのかを掘り下げていくことは自分を客観視することにも繋がります。

では、「一生懸命に」生きるとはどういうことでしょうか。それは行動を起こしているかどうかだと田形氏は言います。勇気を持ってまずは動いてみること。それにより悩んだり失敗したりすること。成功したかどうかは問題ではなく、まず行動できていることが一生懸命「今」を生きている証拠なのです。

現実をワンピースに例えると何が武器や力になる?

ワンピースの世界では、能力者と呼ばれる特殊な力を持つキャラクターが登場します。能力は「悪魔の実」という特別な果物を食べると身に付くのですが、代わりにカナヅチになってしまうという犠牲を伴います。悪魔の実を現実で例えると、これは時間を犠牲にして身に付ける専門的な技術や資格です。しかし、悪魔の実を食べていないキャラクターも多数活躍しており、田形氏は「あると大きな力を発揮するが必ずしもマストではない」とも助言しました。

また、ワンピースのなかで強いキャラクターは「覇気」という力を身に付けています。覇気には3つの種類があり、それぞれを現実に当てはめることができると言います。

気配を読む「見聞色」の覇気は、自己客観力と他者共感力。自分を俯瞰し長所短所を把握することは大切です。また相手の立場に立ち、コミュニケーションを円滑に行うことも社会生活ではとても重要な力です。

大きなパワーを出せる「武装色」の覇気は、自己コントロール力だと言います。感情に振り回されずに常に冷静でいる力を身に付けることは大切ですが、なかなか難しいこと。これを身に付けるには、田形氏は「いつも挨拶、笑顔を忘れず、つい甘えてしまう家族にも言い方に気を付けると訓練になります」とアドバイスしました。そしてこの見聞色と武装色をどちらも身に付けた人は、誰もが認める魅力的な人になると言います。 最後の「覇王色」の覇気は天性の自信。努力や実績で身に付いた自信とは別に、自分にはできるという根拠のない自信があると、より大胆に行動することができるのです。

「つながり」のキャリア論

今回の講義を通して田形氏が伝えたかったことは「自分の行動や経験と人の縁は繋がっていく」ことだと田形氏は実感を込めて言います。「どこでなにがどう繋がるかは分からない。ただ、勇気を出して行動すると願いは叶っていきます」。例として田形氏と深澤教授との繋がりが挙げられました。キャリアコンサルタントが大勢集まる会で深澤先生が講演をした際に、名刺交換をし、深澤教授の著作の感想を思いきってメールで送ったことから縁ができ、夢だった大学での講義が実現したと語りました。 田形氏は「自分にしかできない仕事=天職」と定義し、田形氏自身もまだ見つかっていないと言います。「自信満々に見えるかも知れないけど軸がブレることもあるんです」と飾らない言葉で真摯に学生に語る田形氏。初就職した会社は半年で退職し、パーソルでも企画職に在籍していた際システム開発のプロジェクトに失敗した過去や、去年思い悩んでいたことも語ってくれました。それでも「自分の人生を生きるために行動しよう」としたことが今に繋がっていると強調しました。

学生の頃より大人になってからが楽しいと自信をもって言える

講義を聞いた学生たちから、いくつか質問も飛び出しました。周りを気にしてしまって、ネガティブな感情が出てくる場合はどうすればいい?という学生には、田形氏はそれは周りや自分のことをよく観察している証拠だから「見聞色の覇気の達人になれる素養がありますよ」と答えました。ただ、冷静に自分を見つめ、主観的な感情に振り回されないようにと助言しました。

学生時代と大人になってからの自由はどう違うのか、といった質問には、学生時代は無責任だったが大人は責任とともにスリルがあると語り「大人の方が楽しいと自信を持って言えます」と答えました。大人になってからは仲間やお金なども増え社会や人のためにできることが広がると熱く語りました。

社会の荒波を乗り越えていくことは大変なことです。しかしその先に仲間や愛情といった「宝物」が待っている、と学生たちへエールを送りました。

深澤教授の話

日本の中でも、ここ実践女子大学だけで聞ける特別講座田形正広様の「ワンピースキャリア論」も、今年で7回目となりました。田形様のキャリアをご披露いただきながら、その数々のご経歴がワンピースにトレースされて、キャリア論として語られる内容は、毎年、学生がとても楽しみにしている講座です。7回目ですが、内容も資料も毎年アップグレードされ、そして、その年々の、田形様のキャリアの今が重なりながら進化していくこと、とても興味深く聞かせていただいています。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。