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2024年3月8日

高大連携で高校生もアイデア創出にチャレンジ!「グローバルキャリアデザイン」の授業でVISITS Technologies株式会社とのコラボワークショップが行われました。

1月5日に「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業でVISITS Technologies株式会社(以下、VISITS Technologies)とのコラボワークショップが行われました。この授業は高大連携で行われ、本学併設校の実践女子学園の高校3年生も参加。高校生と大学生で協力し、デザイン思考のプロセスを体験しながら新しいアイディア創出のグループワークが行われました。

高校生も一緒にグループワーク

この日は、30人ほどの高校生も参加。この春から本学に進学予定の実践女子学園高等学校の3年生です。くじ引きで大学生と高校生が一緒のグループになるよう全部で11グループに分かれ、授業が開始しました。
VISITS Technologiesの野村博之氏の声掛けで、まずは自己紹介が行われました。「大学生はリーダーシップを取りつつ、高校生たちも気後れせずどんどん発言してくださいね」と促され、最初は緊張した様子の高校生たちからも笑い声が上がる班もありました。

イノベーションは「つなげる力」

VISITS Technologiesはデザイン思考力アセスメントの開発・運用を行っており、大手企業や政府とも連携している注目企業です。日本では「論理的思考力(ロジカルシンキング)」を重視して教育やビジネスが行われてきたと言います。しかし海外では20年ほど前からデザイン思考力に注目が集まっており、多くのイノベーションが生み出されています。イノベーションを一例で説明すると、スマートフォンが代表例です。なぜなら「体験が変わった」から。例えば、電車の中での過ごし方は、昔は新聞や本を読むのが一般的でしたが、現在ではほとんどの人がスマートフォンのを操作をしています。

野村氏は「イノベーションはこれまでなかった組み合わせによって新たな価値や体験を生み出すこと」だと話しました。何かを創り出すには才能だけではなく、この「つなげる力」が重要。そのアイディアを生み出す時に利用される手法の一つがデザイン思考なのです。

新しいショッピング体験を考えよう

いよいよ「デザイン思考ワークショップ」の開始です。

今回は「未来のショッピング体験」を考えることで、デザイン思考のプロセスを体験します。まずは大型ショッピングモール、ECサイト、コンビニのそれぞれの良いところを考えます。学生たちは付箋に1つずつできるだけ多くを書きだし、グループの中で発表し合いました。ショッピングモールなら「まとめて買い物できる」「一日楽しめる」、ECサイトは「中古品も買える」「口コミが見られる」、コンビニなら「家から近い」などなど。様々な意見が出そろいました。

そして、自分たちがどのサービスを新しく考えるかを決め、コンセプトを話し合います。例えばコンビニを選んだグループであれば、ECサイトやショッピングモールの良いところを掛け合わせた「口コミの見られるコンビニ」というようなコンセプトになります。野村氏は「自分たちがそれを使いたいか、ワクワクするか、誰が喜ぶかを考えてみてください」と決めるときのコツを伝えました。

話し合いをしながらグループごとに模造紙にアイディアをまとめていきます。大学生は高校生に「どう思いますか?」など促し、上手に意見を引き出していました。

未来のECサイトはこうなる!

あっという間に時間は過ぎ、いよいよ発表。発表は教室内を2つのスペースに分け2グループずつ同時に行われました。

グループFは「実際に商品を試せるECサイト」を考えました。
チャット機能で店員の説明を聞けたり、化粧品などは試供品を無料で試せなど、購入前に商品を確認できるサービスです。

野村氏は「ECサイトは着心地や質感などが分かりにくい。かゆいところに手が届くサービスだと思います」とコメントされました。

グループCは「仮想空間で直接触れることができるECサイト」を提案しました。VRゴーグルを活用し、空気圧を使い触った感触を再現する技術を使うことを考えました。

野村氏は「実際に触感の分かる技術が出てきている。地方の人も助かるアイディアだなと思いました」と話しました。

新しい技術も取り入れて

グループBは「映画が観られるコンビニ」を発表。
コワーキングスペースのように設置し、コンビニ商品を購入すれば映画代に充てられるシステムも考案。映画館では声が気になってしまう子ども連れや障害のある方、推し活にも利用できるとしました。

「家では集中できない小さい子どもがいる家族連れにも良いですね。マネタイズもしっかり考えられている」と野村氏も評価しました。

グループAは「後悔しないショッピングモール」として、商品についているQRコードを読み込むことで、モール内の類似商品を比較できるシステムを考えました。

野村氏は「服はブランドごとに販売されていて比較が難しい。値段やサイズなど比較できるのは便利ですよね」と話しました。

最後のグループGは「一緒に買い物ができるECサイト」です。
離れたところにいる友人や家族と画面共有して、相談しながら買うことができるというものです。割り勘でプレゼントを買う時や、お揃いのものを買う時などに活用できるとしました。

野村氏は「ネットの買い物でも誰かに相談したい時はあるのですごく良い機能だと思いました」と話しました。

全グループの発表が終わると、野村氏は「皆さんの中には、創造力が必ず眠っています。皆さん自分の中に創造力はあると思って、世の中を変えるアイディアや新しいビジネスのアイディアを生み出して欲しいです」と語り、授業は終了しました。

新しくアイディアを生み出す体験することのできた、貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

今、社会で求められている「デザイン思考力」この学びを深めること、そして高大連携プログラムの試みとして、毎年実践女子大学キャリア教育科目「グローバルキャリアデザイン」と、春から実践女子大学に入学予定の実践女子学園高等学校の3年生とのコラボ授業を継続しています。参加メンバーには、昨年12月にあらかじめ「デザイン思考力アセスメント」を受検してもらっています。
大学生は、積極的にリーダーシップを発揮してもらい、高校生には一足早く大学での授業を体験して貰おうという試みです。今回のプレゼンも、まさにZ世代の極めて柔軟な発想が随所に見られ、参加し学生、生徒のこれからのさらなる成長がとても楽しみです。まさに「大学生」と「高校生」のタッグで最強のイノベーションが起こる予感がします。アセスメントから本授業までご支援をいただきましたVISITS Technologiesの松本様、野村様、今井様に心から感謝申し上げます。

2024年2月22日

「グローバルキャリアデザイン」の授業でクレディセゾンとカードの新しい可能性を探る特別コラボが行われました。 

3年生対象の共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、12月22日に株式会社クレディセゾン(以下、クレディセゾン)とのコラボ授業が実施されました。学生たちはカードの機能やサービスを考えるグループワークを行い、短い時間で考えをまとめ、プレゼンを行いました。

金融系だけど自由な社風

クレディセゾンから谷口佑貴氏、野村早苗氏、上村郁美氏、金秋奈氏が来訪され、まずはそれぞれの自己紹介。
その後、戦略企画部の金氏から、一日の流れや仕事の内容の紹介がありました。

クレディセゾンは完全フレックス勤務制を取り入れ。
服装も自由で「金融系は厳しいイメージがあるかもしれないですが、自由に働いています」と金氏。
戦略企画部は、消費者にセゾンカードを利用してもらうためのアプローチ方法を考えることが主な仕事です。お客様に選んでもらうための割引サービスやポイント還元、キャンペーンを考え、社内外の人と打ち合わせを行っています。

クレジットカード会社ってどういう仕事?

クレジットカードは、消費者が加盟店で商品を購入する際にクレジットカードを利用し、請求日にまとめて利用額を支払ってもらうシステムです。
消費者は現金を持たなくて良くなり、ポイントや割引などのサービスを受けられるメリットがあります。
また、カードを利用できると消費者の購買意欲が上がる傾向が。加盟店はクレジットカード会社に手数料を支払う必要がありますが、売上が上がりやすいというメリットもあります。

普段使いのメインカードに選んでもらうには、他社に負けないプロモーションや安心安全なカードである必要があります。
クレディセゾンは新機能や業界初ということに力を入れており、今では他社でも出ているナンバーレスカードや縦型のデザインなどを打ち出してきました。
また表面に人気の有名人やキャラクターとコラボするなど、意外性のあるキャンペーンも。
金氏は「一番はお客様に喜んでもらえるように、使いやすいと思ってもらえるようにカード開発しています」とまとめました。

どんなカードがあれば便利?

ここで、谷口氏から本日取り組む課題の発表がありました。
テーマは「過去・現在・未来に自分が欲しいと思えるカードとは?」です。
学生たちは8グループに分かれ、それぞれ過去・現在・未来の3つから担当を決めました。
大学生になる前の「過去」、大学生の「現在」、社会人になった時の少し先の「未来」、それぞれのタイミングで便利であったり必要であったりする機能やサービスを考えます。

グループワークの時間は45分間。
学生たちはさっそく話し合いを始めました。
「サブスクや毎月ある出費がどのくらいか分かる機能は?」や「アプリのように送金や支払いが簡単にできると便利」などのアイディアや、「大学生らしいカードってなんだろう」というお題に「大学とコラボして学割の利くカードは?」「カードのデザインはスクールカラーで」などのアイディアを出し合っていました。
別のグループでは「デートの前ってお金がかかるよね」「カップルで使えるカードは?」など新しい視点の提案を探っていました。

お金の知識を知るサービス

あっという間に時間は過ぎ、いよいよ発表です。
模造紙に案を書き、ポストイットなどで補足をした簡易のプレゼン資料が出来上がりました。
発表は教室を2か所に分け、2グループずつ同時に行いました。

グループCは、大学生になる前に受けられる、お金の知識に関するサービスを挙げました。
大学生になるとお金を自分で管理する機会が増えますが、奨学金やクレジットとデビットカードの違い、リボ払いなど分からないことも多く、学校側などもあまり説明がないと指摘。
web上などで優しく教えてくれるサービスがあれば安心とまとめました。
上村氏は「就活時などはしていましたが、入学時に知りたかったという需要があるのは初めて知ったので、ぜひ前向きに検討したいと思いました」とコメントされました。

グループEは、マイデザインクレカを提案。
自分のスマホに入っている画像の中からお気に入りのものを選び、自分オリジナルカードを作れるものです。
自由にカスタマイズもでき、ライブ会場などに専用機械を設置することやSNSに投稿することでプロモーションを行います。
野村氏からは「すでにあるデザインから選ぶのではなく、自分で選びカスタマイズできるという案はすごく良い。プロモーションもよく考えられていました」と話されました。

カップルで使えるカード

グループFはマッチングアプリと連動したカードを考案しました。クレジットカードがあるという信用やサクラ問題に対応でき、価値観の合うマッチングが出来るとしました。また、エステや飲食店、旅行などデートで使うと割引が利くサービスを考えました。
上村氏は「カード会社が審査をすることを安心として使うサービスという発想は、今までなく面白かったです」と話しました。

グループGは海外旅行をする際、支払いタイミングでレートが分かる機能があれば便利と考えました。
また社会人になったとき、金銭管理の手助けになるような予算管理などのサービスがあると安心と発表しました。
野村氏は「クレジットカードを作る大きな動機のひとつは海外旅行。現地でレートが分かるというのはいいなと思いました」とコメントされました。

あっという間の授業時間でしたが、その場で考えをまとめ発表するという社会人に必要な能力を体験できる機会となりました。

担当教員からのメッセージ

クレディセゾン様には、毎年この授業で大変お世話になっております。今年も、インターンシップさながらの展開となり、学生も緊張感に溢れつつも、楽しくグループワークに取り組んでくれました。キャッシュレス化が進む中、他社との差別化も考えながらの事業戦略のことも勘案しつつ、ユーザーとしての視点も絡めつつの議論とプレゼンテーション、真剣な学生の表情が印象的でした。お越しいただいた社員の方からも、クレディセゾン様の社風が伝わっており、自由闊達に活躍されていることが窺われました。年末のご多忙のところご協力いただきましたクレディセゾン様に、改めて心から感謝申し上げます。

2023年11月24日

「実践キャリアプランニング」の授業で実践女子大学短期大学部OGのSurpass石原社長による女性のキャリアについて講演が行われました。

共通教育科目「実践キャリアプランニング」の合同授業(担当:深澤晶久教授、髙橋裕樹特任教授)で、株式会社Surpass(以下、Surpass)社長の石原亮子氏による「日本に於ける女性のキャリア形成」についての講演が行われました。自身の経験を交えて、自分を知ることの大切さやキャリアデザインについて語られました。石原氏は実践女子大学短期大学部の卒業生。社会の第一線で活躍している先輩の話を伺い、学生たちも女性のキャリアについて知る機会になりました。

実践女子大学卒業の先輩!

OGでもある石原氏は「実践女子大学の卒業生は企業でも評判がよく、しっかりキャリアを築き活躍している方が多いです」と社会に出ても実践女子大学のDNAを感じる、と話を始められました。

学生時代は勉強熱心な方ではなかったという石原氏。
しかし、社会に出てから「正解がないことに挑戦をすることが向いていた」と言います。
生命保険やベンチャー企業、複数の会社の営業の経験を経て、2008年に28歳で起業しました。

Surpassは法人相手に営業DXの支援などを行っており、女性をメインとした営業アウトソーシング会社です。
企業における女性役員・管理職の数はまだまだ日本では少ないのが現状です。そこでSurpassでは「女性活躍という言葉がなくなる日」を目指し、「女性活躍推進総研」という女性のリーダーを育成する事業も行っています。
Surpass自体も従業員の8割が女性。福利厚生に低用量ピルの支給を行うなど、女性の働きやすい環境作りに力を入れています。
そのような取り組みを行なっているため若い世代からの注目度も高く、SNS上でのアンケート「Z世代の注目企業2022」にもランクインしました。

女性が自分らしく活躍するために

学生時代は、起業するなんて夢にも思っていなかったと言う石原氏。
起業しようと思ったきっかけは、友人たちでした。友人の多くは勉強もでき性格も良い尊敬できる人物なのに、就職してから「私なんか」と自分を過小評価し、楽しそうに働いていなかったと言います。
そんな友人たちをみて、自分らしく働き活躍して自信を持って欲しいという気持ちが沸き上がり、起業をしたと語りました。

現在日本の男女間での雇用形態や収入の格差はまだまだ大きく、女性活躍にはほど遠いのが現状です。特に年収は、男女で全く同じ仕事をしていても3割違うと言われており、「社会に出るとこれが当たり前になってしまい、違和感を持つことを忘れてしまいます。これを変えるには、皆さんの視点が非常に重要になってきます」と語りかけました。

迷ったときにブレないためには?

「今は情報に溢れ、選択肢も多く、どう生きるかを決めることが難しい時代です」と石原氏。
そんな、何を基準に物事を決めればいいか迷った時に、一つの軸となる考え方を教えてくださいました。
ゴールデンサークル理論と呼ばれる考え方です。「Why(なぜ)」→「How(どうやって)」→「What(何を)」の順で物事を考えるやり方で、「何をするのか」ではなく「なぜするのか」を中心に考えます。
石原氏は「この方法を覚えていると、今後何かに迷ったときに、何のためにやるのかということに立ち返れると思います」と、ブレずに選択できるようになると話しました。

自分を知ろう

ここで、石原氏は学生たちに一つのワークを行いました。
それは「あなたの中にあるエレファントシンドロームは何ですか」というもの。エレファントシンドロームとは、自分を縛り付けている見えない鎖のこと。
「どうせできない」と諦めていることは何か、それはどんな経験が原因か、断ち切るには何をするかを書き出してみるワークです。
時間が与えられ、学生たちは真剣にシートに書き出していきました。

しっかり書けた学生もいれば、言語化することが難しかった学生も。
日本の教育では自分自身について知らずに社会に出ることが多いと言い「なぜ自分の足が止まるのか、自分がなぜ嫌だと思うのか分からないままでは他人をマネージメントしたり説得したりすることはできない。これは自分を知るためのワークです。」と語りました。

これからの時代のキャリアを考える

最後に石原氏は、未来に向けたキャリアデザインについて話されました。
そこで「事務職を希望する女性は多いですが、もう事務職はなくなる前提で考えましょう」と衝撃の発言が。AIの発展もあり事務職はすでに人が余っているため、それを見据えた職探しをするべきとアドバイスをされました。その中で「営業職はキャリアの土台になります。
営業で身に付いたコミュニケーション力、ヒアリング力、プレゼンテーション力、プランニング力や仕事の得方は、フリーランスになったりキャリアアップしたりした時にも使えるスキルです。」と話しました。

「皆さんが思っているよりも、自分に眠っている能力は本当に沢山あります」と石原氏は語りかけました。
社会に出るとやりたくない仕事も沢山ありますが、一生懸命に取り組むことで新しい自分や可能性に出会え、「それが仕事の一番の報酬ではないかなと思います。これからの皆さんのご活躍を祈念しています」と講演を締めくくられました。

担当教員からのメッセージ

キャリア教育の授業に初めてご登壇いただいた石原様、本学のOGでもあり、学生の表情はいつも以上に真剣であったと感じました。石原様のお話しにあった、「もっと自信を持って、一歩前へ踏み出して欲しい」このお言葉は、私も日々感じていることでした。実践女子大学の学生のポテンシャルは計り知れないものがあります。とにかく行動してみる、このことから必ず違う景色が見えてきて、それが大きな自信につながると思います。その意味からも、素晴らしいロールモデルである石原様のご講演をお聞き出来たことは、大変に貴重でありました。この場を借りて、石原様には心から感謝申し上げたいと思います。

2023年11月24日

大学生の今、考えよう!「グローバルキャリアデザイン」の授業でマイナビ顧問による「なぜ働くのか」を問う講演が行われました。

共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月13日に株式会社マイナビ(以下、マイナビ)顧問の浜田憲尚氏による講演が行われました。就職活動で利用必須のサービスを提供している企業の方のお話に学生たちも興味津々です。就職活動を前にした学生たちは改めて「働くとは何か」「なぜ働くのか」を考えるきっかけとなりました。

「働く」を考えるには今しかない!

浜田氏による講演はこの授業でも恒例となってきつつありますが「学生の皆さんの前で話すことはめったにないので、毎回緊張します」と、前置きをして話し始められました。
コロナ禍も終息しつつある現在、企業の採用意欲は急激に回復しつつあります。それは新卒に限らず、中途採用やアルバイトなどすべての雇用形態に言えること。どの業界も人手不足です。
そんな中、まさに就活を目の前にした学生たちに改めて考え直してもらいたいのが「なぜ働くのか」ということ。今働かなくてはならないのか、どこで、どんな仕事をするのか。
浜田氏は「それらについて深く考えるタイミングとしては今がとてもよい」と話し、「そのタイミングを活かさない手はない」と言います。
なぜなら日本は依然として新卒一括採用が主流のため、たくさんの企業が情報を提供し就活生たちを受け入れようとしているから。改めて働くとは何かを考える講演が始まりました。

企業と人をつなぐ仕事

マイナビは1973年創業。今年で50周年を迎える人材系の広告企業です。
主にインターネットなどのメディアを通して人と企業を繋ぐ事業をメインに行なっています。就活生はもちろん、アルバイトや転職、アスリートなどさまざまな人材と企業とのマッチングを行なっています。
マイナビの企業理念は「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」。ユーザーの人生に寄り添い、日常生活のあらゆる場面で使ってもらい、それによって前向きに人生が進んでいけるように支援することが目的です。

現在は海外展開事業のサポートを行なっている浜田氏ですが、なんと就職活動をせずにマイナビに入社したと言います。
面接の時間を間違えて行った会場で、当時の人事部長に声を掛けられ、とんとん拍子で最終面接まで進みそのまま入社されたそうです。そのため最初は「アルバイト感覚だった」と話します。
ただ「会社は楽しく、仕事も向いていると感じ打ち込めた」ため、こんなに長く勤められたと言います。この経験から、浜田氏は「深刻に考えすぎないこと」をアドバイスしました。
「一生懸命就活しても、一生勤められる企業かは分かりません。入ってからが勝負です。自分に合わないと感じたら、あるいはさらに新しいビジネスに挑戦したいと思ったら転職も考えていい」。
希望する企業が見つからないからと言って悩みすぎないようにと語りました。

たくさんの情報から何を目的に働くかを考える

就職活動を目前にした学生たちは不安も多いもの。ただ、ここで浜田氏はひとつのアンケート結果を見せました。
2023年8月に現4年生に行った「就職活動を漢字一文字で表すと?」の結果は、1位が「楽」。夢や将来が広がると前向きにとらえている学生も多いのです。
ただ2位は「苦」。「苦労したからこそ頑張れるという面もあります」と浜田氏。
「就職先を見つけることが目的になってはいけない。親や周りに言われたからと流されてしまわずに、自分の判断で見つけることも大事です」とアドバイスしました。

ではベストな就職とは何か。
何がベストなのかは人によって異なります。その答えを見つけるために働く目的を考えることが重要です。
「働く目的は人それぞれでいいと思います」、しかし仕事は糧(かて)を得るための手段であることは、誰にとっても共通しています。その「糧」を得る上で自分にとって何が重要か、自分の価値観や何にやりがいを感じるかを掘り下げ、それを企業が持つ理念やビジョンと照らし合わせる中で共感できる部分があるかどうかを確かめることが就職活動の第一歩として重要だと浜田氏はお話されました。

学生にとってベスト就職を実現するために、マイナビでは自己分析をサポートする機能や、インターンシップ情報、そして求人情報を質量の面から充実させています。できるだけ多くの選択肢からベストな1社を選んで頂くために、掲載企業数やその情報の質にこだわってサービス提供をしています。
浜田氏は「マイナビをフルに活用してぜひ悔いのない就職活動就活をしてください」と講義を締めくくりました。

OGからも貴重なアドバイス

実はこの授業を受講したことがきっかけで、2名の本学卒業生がマイナビに入社しています。
この日はOGである中嶋さんと渡辺さんも駆けつけてくれました。

授業の最後には質疑応答の時間が設けられ、浜田氏や先輩たちへたくさんの質問が飛び交いました。
「長く働き続けられたのは何が要因?」という質問に、浜田氏は「自分の成長と会社の成長を重ね合わせられたのが良かった。頑張ったらきちんと報われたのも大きい」と話しました。

先輩たちにも「就職活動前の今、やるべきことを教えてください」という質問が。
渡辺さんは「普段生活の中で目にする会社は本当にほんの一部。セミナーやインターンにたくさん参加してください。私も色んな会社を見たからこそ、いろんな会社に関われるマイナビに入社しました」と回答。
「就活の軸を決めたきっかけは?」という問いには、中嶋さんは「男女差のない仕事をしてしっかり稼ぎたいと思ったので、営業職を選びました。将来は転職することも視野に入れて自分の市場価値がさらに高まる会社を見つけていこうと思った、だからこそ、今の仕事に注力したい」と回答されました。

これから就職活動を行う学生たちにとってより就職活動について身近に、深く考えられるきっかけとなる授業でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代に、採用業務を全面的にサポートいただいたマイナビ様、その時に浜田様と出会ってもう20年の歳月が流れます。こうして毎年、ゲストしてお招き出来ていることに、とても大切なご縁を感じています。

就職活動、採用活動も時代とともに様々な変化があることは肌で感じています。しかしながら、毎年、この時期に浜田様のお話しをお聞きして感じること、それは、「人と人とのご縁」だと思います。一期一会を大切にすることで、きっと素晴らしい会社が見つかり、長く長くお付き合いできる方との出会いが生まれると思います。学生たちの就職活動での健闘を祈り、改めて浜田様に心から感謝申し上げたいと思います。

2023年8月8日

ディズニーに若者がたくさん行くには?「キャリアデザイン」の授業で学生たちが東京ディズニーランドのスペシャルイベントをプレゼンしました。

3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月4日に株式会社オリエンタルランドの横山政司氏をお迎えし、コラボセッションが行われました。この日は閑散期(冬季・春季)の東京ディズニーランドへ若者たちに来場してもらえる有効なイベントを考える課題のプレゼンテーション。各グループ1ヵ月かけて考えた、想いのこもった提案が発表されました。

冬は温かみを感じられるイベントを

発表はグループ4から始まりました。
冬季は冬の舞踏会をイメージし、若い女性に人気が高いプリンセスキャラクターをモチーフにティアラや王冠のついたカチューシャも販売。春季は来場者も体を動かせるダンスイベントを企画し、梅雨の時期は雨の日限定イベントを提案しました。
横山氏からは「プレゼン資料の作り方や見せ方が上手」と評価がありました。

次のグループ6は寒い冬季に愛情や温かみを感じさせる晩餐会をテーマに、レストラン内でプロジェクションマッピングやキャラクターと会える体験型イベントを企画しました。
春季は写真映えや自然に興味がある若者をターゲットに、キャラクターがフラワートピアリーになるものを考えました。

グループ7は、若者は経済的に余裕がないと、パークに行かない理由を分析し、価値に見合った満足度や新規性が大切と主張しました。
そこで冬季は音楽フェスをモチーフに、ダンサーやキャラクターと一緒に盛り上がれるイベントを考案。派手なキャッスルショーを行い、サイリウムやタオルなどのフェスならではのグッズも販売します。春季は桜まつりで日本の春を押し出しました。
「冒頭の現状分析が良かった」と横山氏も評価されました。

春は出会いの季節!多様性?コスプレも?

グループ5は冬季にバレンタインとホワイトデーをモチーフに、プリンセス&プリンスたちによるイベントを企画しました。
期間中は割引のペアチケットを販売したり、昼と夜でパレードを2部構成としたり、ストーリー性のある内容を提案しました。春季は、2026年にはよりグローバル化が進むことから多様性をテーマにしました。

グループ8は冬季に期間限定で、キャラクターとのグリーティングイベントを提案。春季は映画「スターウォーズ」シリーズをモチーフに男性をターゲットにしたイベントを考えました。
春は出会いの季節。映画の名台詞をもじり「新たな出会いに幸運を」をコンセプトとしました。人型ロボットを導入したリアルショーを行うことも提案しました。
横山氏も「春の季節と映画のコンセプトを結び付けた切り口は面白い」と感想を仰っていました。

次のグループ2は、冬季は初雪のお祝いをテーマに、過去イベントの人気キャラクターの復活を提案。
春季には、参加型の体験にお金を使う若者をターゲットに、秋で人気なコスプレを導入することを提案しました。コスプレできるキャラを限定し、秋季イベントとの差別化を図ります。
横山氏は「若者がパークに戻ってこない一番の理由が分かりにくいので、このイベントで本当に来てくれるかの考察がもう少し欲しかったです」と講評されました。

どうしたら若者が東京ディズニーランドに来たくなる?

次のグループ1は、若者は東京ディズニーランドよりも大人の雰囲気が味わえる東京ディズニーシーを好むという分析から、冬季に悪役たちを中心にした大人向けイベントを考えました。
春季はプリンセスキャラクターたちによるキャッスルショーを開催し、温かみのあるものを提案しました。

グループ9のキーワードは「なつかしさ」と「お一人さま」。
ヤングアダルト層は懐かしいものに「エモさ」を感じるという観点から、冬季は以前あったアトラクション「シンデレラ城のミステリーツアー」をモチーフにしたイベントを開催。春季は祝祭をテーマに一人でもパーク内をゆっくり回って楽しめるイベントを提案しました。また、冬季と春季のイベントはストーリーとしてつながっていて、どちらのイベントにも来ることで満足感の高いものになるものを提案しました。
「終了したアトラクションをモチーフにする着眼点や、仮説の置き方が面白い」と横山氏も感想を述べられました。

最後のグループ3は、冬季は猫や犬のディズニーキャラクターを集めたイベントを提案。
若者に人気の高い動物カフェから発想しました。春季は運動会をテーマに、応援合戦で一体感を味わえるイベントを考えました。お弁当箱型のフードの提供やハチマキのグッズも考案。コロナ禍があけた2026年には体を動かす需要が高まると考えての提案です。

「木を見て森を見ず」にならずに全体を見よう

すべての発表が終わり、最後に横山氏の総評がありました。
「皆さんにお願いしたことは、我々が考えても頭を悩ませる本当に難しいこと」と学生たちをねぎらいました。
ただ、今回の提案の多くが、アンケート分析と提案がうまく結びついていないことを指摘。
「一個一個の分析や提案は良いが、全体を見ることが出来ていなかった」とアンケート結果から分析、提案まで全部が一本でつながっていることを確認する大事さを伝えました。
その上で「良い気付きがたくさんありました」と学生たちのアイデアを褒め、「もしかしたらこれからのイベントに皆さんの案が使われるかも」と話されました。

最優秀賞は「なつかしさ」と「お一人さま」をキーワードにしたグループ9、優秀賞はグループ5が選ばれました。
受賞したグループには東京ディズニーランドのグッズが贈呈され、学生たちから歓声も上がり、和やかに写真撮影が行われました。

担当教員からのメッセージ

オリエンタルランドの横山様は、毎年、様々な切り口から、学生の関心が高いと思われるテーマをお題として提示いただいています。今回は、シーズンイベントの企画提案という壮大なテーマで、日頃から東京ディズニーリゾートをよく訪れている学生たちにとっては、身近でありながら、とても難しいテーマであったと振り返っています。アイデアは沢山浮かぶものの、オリエンタルランドの横山様が求められていることは、背景や環境などのしっかりとした分析であり、実際の仕事でも最も大切な「問いに対する理解度」を求めておられました。
授業時間では、事前の提案に対して、1グループ毎にフィードバックをいただけるなど、横山様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年7月10日

ディズニーにもっと行きたくなる!「キャリアデザイン」の授業で東京ディズニーランドのスペシャルイベントを考える夢の課題が出されました。

3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月6日に東京ディズニーリゾートの運営を行う株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の横山政司氏をお迎えし、コラボセッションが行われました。学生たちは閑散期の集客に有効なイベントを考える課題に挑戦します。学生たちも大好きな東京ディズニーランドのイベントを企画するという夢のような課題に、皆真剣ながらも楽しそうに取り組んでいました。

季節のイベントを開発

「今日の出欠確認は仕掛けがあります」と深澤教授。
出欠管理システムが当たり付きになっていて、当たった2名の学生に東京ディズニーランドのグッズがプレゼントされ、学生たちから歓声が上がりました。


授業もディズニーの魔法にかかり和やかになったところで、本日のゲストである横山氏が登壇されました。

横山氏は1991年オリエンタルランドに入社。
最初は運営部に配属されました。その後、経理部やテーマパーク戦略部、人事部、フード本部などを歴任。2023年からマーケティング本部マーケティング開発部長に就任されました。
「皆さんがイメージしやすいのは、パークでやっているスペシャルイベントです」と横山氏。
クリスマスやハロウィンなど季節ごとに変わるイベントの企画・開発をしています。

現場の声を聴いてまずは試す!

横山氏は仕事のポリシーとして3つのことを大切にしていると話します。
1つ目は「現場のリアリティ」。
現場の声を聴くことが何より重要と言います。「人事部にいたときも、良かれと思って制度を改正しても、実は現場は望んでいないということもありました」と横山氏は語ります。

2つ目は「外から情報を得る」こと。
オリエンタルランドはチームワークがいい会社とした上で「チームワークがいいということは悪いことではないが、関心がチーム内に向きがち」と話します。意識して外の情報を得ることの大事さも話しました。

3つ目は「試してみよう!」。
仕事や企画は完璧に仕上げたくなってしまいますが、完璧にするには時間がかかります。
横山氏は「今は世の中の変化が早いので、完璧を目指して仕上げているとその間に環境が変わってしまっている可能性もあります」と言い、5~6割の出来でも、いったん上司に企画を出したり自分で動いてみたりすることが大事だと話しました。

課題発表!若者が閑散期にも東京ディズニーランドに来たくなるイベントとは?

話はスペシャルイベントについて。東京ディズニーリゾートでは年間を大きく5つの期間に分けてイベントを考えています。
4~6月が「春」。ゴールデンウィークは来園者が多いですが、全体的に集客が落ち着きます。
7~8月の「夏」は夏休みで繁忙期。ただ、最近は猛暑の影響もあり以前よりは落ち着いていると言います。
9~10月の「秋」はハロウィン。仮装してディズニーパークを楽しめるといまや一番人気のイベントです。
11~12月は「クリスマス」。こちらもイベントムードを楽しみに多くのゲストが来園します。
そして1~3月の「冬」は寒さもあり一番集客が弱い時期です。「春と冬の時期の集客をなんとかしたいと思っています」と横山氏。

ここで課題の発表です。
テーマは「ヤングアダルト層(19~34歳)に向けた2026年の冬と春のイベントを考える」です。
「1~3月の冬の時期と4~6月の春の時期に、最低1回ずつ東京ディズニーランドに来てもらえるイベントをそれぞれ提案してください」と提示されました。

コロナ禍以降、徐々に来園者も戻っていますがヤングアダルト層の回復が鈍いというのも現在の課題。
現在東京ディズニーランドのチケット代は1万円近い日もありますが「このイベントを行なっていたら、自分はお金払って絶対に行く!という自信を持った提案をしてください」と横山氏。
「感動する提案を待っています、頑張ってください」と学生たちの提案に期待を寄せました。

自分たちの企画が実現するかも!?

2026年は3年後。
今とどう状況が変わっているのか、顧客はどう行動変容しているか、想定しなくてはなりません。
難しい課題ですが「2025年まではすでに企画が決まっていますが、2026年はまだなので、皆さんの案がパークで実現するかもしれません」と横山氏が話されると、学生たちもやる気満々。
さっそく積極的にグループディスカッションが行われました。

「アトラクションをモチーフにするのは?」「待ち時間が長いのがネックだから、パークを歩き回れるイベントは?」など案が飛び交っていました。
「イベントは女性メインになりがち」や「ヤングアダルト層はディズニーシーへ行くイメージがある。自分や周りもそう」と分析する学生も。
「ランドでもちょっと大人っぽいイベントはどうだろう」「キャラクターに絶対に会えたら私は行きたい」など、まずは自分の興味から発生したイベント案も出ていました。
「ディズニーのどこが好きか改めて調べよう」「ディズニーで何にお金を使う?」など、さまざまな視点からイベントを考え始めていました。
学生たちは中間提案を経て、ひと月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

オリエンタルランドの横山様には、毎年、本授業にご支援をいただいています。履修しているのは3年生が中心、そろそろインターンシップを経て就職活動も本格化していきます。企業分析の視点を一歩掘り下げてみることが出来ればという思いで、毎年様々なテーマをご準備いただいています。学生にとっては、身近な企業ではありますが、企業としての努力は並大抵のものではありません。普段のゲストの立場ではなく、社員目線で企業の戦略を考えて欲しい、そんな思いも込めて今年のテーマもご用意いただきました。今までにない難しさもあると思いますが、この授業を通して一皮むけて欲しい、そんな願いもあります。7月初旬の提案を期待したいと思います。

2023年6月23日

「未来フォーラム」のメンバーと直接交流!学生たちが企業の方々とグループ対話する特別授業が行われました。

5月30日に3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で「未来フォーラム」の皆さまをお迎えし、学生たちとのグループ対話が実施されました。実際に社会で働く方々との貴重な交流の機会です。学生たちは名刺交換のやり方から、働くやりがいや入社のきっかけなど、直接お話を伺える特別な時間となりました。

労働組合の集まりである「未来フォーラム」

この日の教室は熱気に満ちていました。学生のほか14労組30名の方が参加され、教室も2部屋用意。14のグループにそれぞれの企業の方が着席されています。学生たちはこれから1回15分ずつ、計4グループを回り企業の方とグループ対話を行います。

初めに、代表幹事を務めるセイコーエプソン労働組合の品川友執行委員長から「未来フォーラム」について紹介がありました。
未来フォーラムとは「業種の枠を超え、理念に共感する労組の集まり」です。小売業、サービス業、メーカーなど「ここまで業種の幅が広いのは珍しい」と話します。
現在は27労組が参加し「人のために、社会のために、未来のために」という理念のもと、自分たちの会社と社会を良いものにするために活動されています。
品川氏は「ここにいるメンバーにも率直に、真摯に話すようにお願いしていますので、遠慮せず質問をぶつけてください」と挨拶され、グループ対話が始まりました。

学生たちはこの日に備え特別に大学サイドで用意した名刺を用意し、質問も考えてきました。仕事に対する本音を聞けるまたとない機会です。学生たちは緊張しつつも前のめりに、たくさんの質問を企業の方々に問いかけていました。
※今後のインターンシップなど社会人と出会うことも増えると考え、学生総合支援センターに支援いただき、毎年、この授業の履修学生のために名刺を用意しています。

その企業を選んだ理由は?

多くの学生が気になるのは、やはり「その企業に入社しようと思った理由」です。

商業施設に加え金融サービスなどを展開する株式会社丸井グループの方は
「もともと商業施設が好き。街づくりにも携われる面白さもあった」と回答。
反対に、電機メーカーのアルプスアルパイン株式会社の方は「自分の手でモノを作りたかった」と語り、
「モノを作る会社はたくさんある。細かいものから形のないものまで。自分は何がやりたいか知ることが大切」と話しました。

住宅設備機器メーカーTOTO株式会社の方は、「一緒に働きたい人で選んだ」と言います。
面接やインターンで担当してくれた社員の雰囲気や話しやすさが決め手のひとつとなったと話しました。

株式会社資生堂の方は
「他者貢献が自分のなかで大事。自分の立場で役に立つことができる」ことがやりがいと答えていました。

いま企業が取り組んでいることや工夫

普段の生活では気付かない各企業のこだわりを直接聞けるのもメリットです。
プリンタメーカーのセイコーエプソン株式会社が業界をリードする企業として力を入れているのは、環境に配慮すること。特にインクを捨てるとき、水質や土壌に影響の出ないものを研究していると話しました。

スーパーマーケットを展開するサミット株式会社では、店ごとに買い物時にストレスがない配置を考えたり、総菜の味付けは老若男女誰でも美味しく食べられるようにこだわったり「楽しい買い物体験」を実現しています。

自己分析と企業選択…どう結び付ける?

ある学生は「自己分析と企業選択がまだ結び付かない」という悩みを話していました。
IT企業のBIPROGY株式会社の方は、「いろんな業界の人の話を聞く」ことをおすすめ。
セイコーエプソン株式会社の方も「企業説明会を聞きまくり、ワクワクしない、違和感をあるところを削っていく」という消去法を提案していました。

面接のコツを聞かれた給湯機メーカーの株式会社ノーリツの方は
「一緒に働きたいのは、前向きで元気なひと。学歴も見るが人柄で選ぶ」だろうと元気に面接に臨むことをアドバイスされていました。

何を軸に企業を決める?

何を基準に企業を選べばいいか、というのは多くの学生が抱える悩みです。
漢方薬品メーカー株式会社ツムラの方は「働きやすさを考えたほうが良い」と助言。これから女性が活躍する社会になるのは間違いないと言い、女性の管理職割合や育休の取得率など情報を確認することは重要と話しました。

近畿日本ツーリスト株式会社の方も、有休を時間単位で取得できるなど、福利厚生が充実していることが入社理由のひとつと話し、「福利厚生や制度は確認しておくといい」と話しました。

ただ、BIPROGY株式会社の方は「福利厚生より雰囲気を重視」と、制度が整っていても社風が自分に合うか合わないかは大切だと話しました。社内の雰囲気を知るには、インターンやOG訪問など直接会社の中を見る機会を増やすように助言しました。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の方は「やりがいを日々感じながら仕事するのは難しい」と言い、働く時間をいかにストレスのない充実したものにするか、何を基準に働きやすさを決めるかを考えることをアドバイスしました。

学び続けていこう!

グループ対話の時間はあっという間に終了し、企業の皆さんから感想を頂きました。

「学び続ける姿勢に刺激をもらいました。大学を卒業しても、自分のキャリアを考えるという勉強が続いていく。今日は自分のキャリアを振り返るきっかけになりました。一緒に学び続けていきましょう」と話される方も。

品川氏も「社会に出たら誰も正解を教えてくれません。自分の気持ちに向かい合い、自分で決めていくことが大事。それが正解だった時にやりがいが出ます」と話し、
「これから皆さんが社会に出て、共に働けることを楽しみにしています」とエールを送りました。

最後には学生からの感想も。
「働いて楽しかったこと、つらかったことなど経験を聞けて良かった」や
「どんな業界がありどんな企業がどんな仕事をしているのかまだまだ分からないと思います。今後の就職活動などでも苦しいことや悩むこともあると思うが、今日聞いたことを参考に頑張ろうと思います」
と前向きな感想がありました。

授業時間後も多くの学生が残り、まだまだ話足りないと対話が続いていました。
学生たちにとって多くの刺激となる貴重な機会となった授業でした。

担当教員からのメッセージ

私自身が企業勤務時代に労働組合専従の経験があったこともご縁で、毎年、「未来フォーラム様」に、この授業にお越しいただいています。
毎年感じることは、労組役員の皆さん、特に「未来フォーラム」に所属している皆さんの熱量の大きさです。誰よりも社員に寄り添い、そして会社の発展を望む、これからの労働組合の方向性を指し示しておられると思います。
多様性の時代の中で、労組役員の方のご苦労は大変なものがあると思いますが、こうした皆さんが活躍されている企業で働けることは幸せだと思います。
学生も名刺交換からスタートした社員の方との真剣勝負、企業の説明会ではなく、働き甲斐ややりがいなどを直接お聞き出来る貴重な時間となりました。
毎年、本当に多くの方にご支援いただいていること、心から感謝申し上げます。

2023年6月16日

「キャリアデザイン」の授業で日本経済新聞社の村山氏による今の日本経済や企業を学ぶ講演が行われました。

5月16日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の村山浩一氏をお迎えし、「今、働くこと」を考えるための講演が行われました。実際に日経新聞に掲載された記事を引用しながら、企業の昔と今の違いや経済に関することを、学生たちにも分かりやすく話されました。

これからの時代をどう乗り越える?

村山氏は新卒で日経新聞に入社して以来、経済や経営に関わる記事を1000本以上執筆してきました。実践女子大学の前理事長のインタビュー記事も書いたことがあるとのこと。学生向け討論番組「日経カレッジ・ラボ」の制作に携わっていたこともあり、番組には深澤教授も出演されています。現在は教育事業ユニットのシニア・コンテンツ・プロデューサーとして、教育研修コンテンツを開発されています。

村山氏の話は、AGC株式会社(以下、AGC)のCMから始まりました。AGCは歴史のある大手ガラス製造会社でしたが、ガラス以外も扱う素材ソリューション会社へ社名とともに変革を遂げました。これには「両利きの経営」への意志が感じられると言います。両利きの経営とは、既存の事業を深掘りするとともに新たな事業を開発すること。「日本企業は、新たな事業の開発をすることは苦手なのですが、これからの時代を生き残るためには必要とされています」

産業界をみる上で、世界情勢も注視する必要があります。「今の世界を象徴するキーワードは”分断”だと思います」と村山氏。ロシアのウクライナ侵攻などに象徴されるように、世界的に対立が大きくなっています。同時にグローバル化は急速に広がり、日本企業も対立の影響を受けています。分断は政治だけでなく、経済においても重要なポイントなのです。「この分断をどう乗り越えていくか、どう新しい世界を作っていくかが大きな課題です」

日本に会社はいくつある?

次に村山氏は「日本の上場企業は何社あるでしょう」と問いかけました。学生たちは「100?」「1万社?」と答えるなか、正解は約4,000社。「では日本に会社は何社あるでしょうか」と再度問いかけが。「10万社?」「5万社?」と答えが出ましたが、正解はなんと400万社。99%以上が中小企業です。「皆さんの中にも、中小企業に就職する方もいると思います。たくさんの中小企業が活躍して、日本の経済が成り立っているんだなということを分かっていただければと思います」と村山氏は語りかけました。

「皆さんはどんな企業に就職したいですか」という問いかけには「メーカー系」や「金融」と答える学生がいました。ここで示されたのが、世界の時価総額上位企業の記事。1989年には世界上位20位のうち日本企業は14社ありましたが、2019年では41位でようやく出てきます。数十年経てば業績や世界の評価は大きく変わるのです。「皆さんが現役で働いている間にも、順位が大きく変わる可能性があります」と、大手企業だからといって、ずっと安泰だとは限らないことを伝えました。

お給料はどのくらい?

話は年収の話題へ。「皆さん社会人になったらどのくらいの年収がほしいですか?」と聞かれ、「500万円」「困らない程度に」「600万円くらい」という回答が出ました。日本の給与平均は443万円。ただ正社員では508万円ですが、非正規雇用だと197万円と大きな開きがあります。「学生で、希望の会社に入れなかったらアルバイトでもいいと言う方がいるけれど、私は、できれば正社員でどこかの企業に入ったほうが良いと思っています」と伝えました。

これから就活する学生たちに一番身近な話題として、採用の話も。採用側からの観点として、データサイエンスやAI、ITの知識を持っていることに期待が集まっているという記事には、「特に今の時代を反映している」と話されました。

メディアリテラシーを身に付けよう

最後はメディアとの付き合い方。「メディアリテラシーはどの業界で働いても重要です」。なぜならどんな情報もメディアを通して知ることになるからです。特にビジネスの話題には日経新聞は最適で、読者のうち課長クラス以上の役職に就いている人が45%を占めています。日経新聞で得た情報は、取引先との話題や企画案作りにも活用されています。

村山氏は「今日紹介したなかで、少し興味を持った記事もあるんじゃないかと思います」と語りかけ、「新聞は難しいというイメージがあるかもしれないけれど、興味を持ったものから読んでみると良いと思います」と話しました。

就活にも情報をうまく活用して

講演が終わると学生たちはグループで感想などを話し合い、質問をまとめました。質疑応答では就活やビジネスに関わる質問が飛び出しました。「中小企業やスタートアップの会社の情報をどうみつけていけば良いでしょうか」という質問には、「日経新聞を含む、メディアを見てみましょう。メディアに載るということは、取材したくなる企業ということ。そのなかで気になる企業を自分で調べるといい」と話し、「上場企業でも、今は社長の決算会見や株主総会の様子などの動画が無料で見られる時代です。こういった会見はとても貴重で、企業がどちらの方向を向いて動いているのかが分かる。ぜひ活用してほしいと思います」とアドバイスしました。

村山氏は「これからも勉強や就活に励んでください」と話し授業は終了しました。経済や経営者のニュースの最前線を知る村山氏のお話は、学生たちにも刺激になるものでした。

担当教員からのメッセージ

毎年ご支援をいただいている村山様には、極めて旬な経済や企業に関わるお話しをいただいています。グローバルレベルで日々変化を続けている経済界にアンテナを立てることは、就活のみならず、これからの社会を支える大学生にとっても極めて大切なことであることを気づかせて下さいます。情報をどこから集め、そして峻別する力がより求められる大学生にとって、大変学びの深いお話しをいただきました。この場を借りて心から感謝申し上げます。

2023年6月16日

「国際理解とキャリア形成」の授業で元資生堂海外支社社長の海外キャリアと挑戦することの大切さについて講演が行われました。

5月9日に共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社タイキ営業本部長の藤井恵一氏をお招きし講演が行われました。株式会社資生堂(以下、資生堂)で勤務していた際の幅広い海外経験を中心にお話しされ、学生たちはグローバルキャリアを改めて考える授業となりました。

広告に惹かれて資生堂へ

大学時代は勉強にサークルにアルバイトにと学生生活を謳歌した藤井氏。今でもつながっている友人がおり、「振り返ると、ネットワークを作るという考えの土台になった時期でした」と語りました。就活の時には広告やエンターテイメントビジネスに興味があったと言います。資生堂には、当時の広告がとてもかっこよく、惹かれたので面接を受けたと話しました。

1983年に入社。最初の仕事は北九州や長岡の支社での営業でした。現場での仕事は充分経験した頃、自分のキャリアについて考えるように。本社での勤務や海外勤務に興味が出て、海外派遣制度や別部門へのジョブチャレンジ制度へ応募などを積極的に行ったといいます。結局その時に海外へ行くことは叶わなかったものの、「アクションを取ったことで色んな人が自分を見てくれてつながりができ、その後本社のマーケティング部門へ行くことができました」と経験を語りました。

憧れのフランス駐在!異文化に「浸る」こと

海外への憧れは残っていたものの、本社勤務はとにかく多忙。
海外勤務の夢は半ばあきらめていたとき、突然フランスへ異動の辞令が来ました。
ヨーロッパの薬事法規制に対応したり、子会社のフランス、イタリア、ドイツなどと本社の商品・マーケティング戦略について意見交換したり、どう売上や知名度を拡大するかを考える日々でした。加えて、フランスに設立した子会社の社長まで任されましたが、結果的に不採算事業からの撤退ということで会社清算を担当。最後の1年間は弁護士と打合わせ、取引先との契約打切り商談、従業員の解雇などつらい日々でしたが、後々この経験が活かせることになったと話しました。

憧れの海外生活でしたが、英語もフランス語もほぼできないまま始まったといいます。英語は大量の書類を読み慣れていき、ヨーロッパ人とも英語でコミュニケーション。英語だけに集中し、フランス語は結局できないままと話しました。

海外旅行と海外生活の違いは異文化に「触れる」ことと「浸る」ことだと言います。異文化のなかに入って生活することで行動の背景も理解できるようになっていきます。
「例えばフランスでは日照時間が短いため、晴れていれば冬でもテラス席に座ります。日焼け止めよりも焼けたい願望が強かった」と話し、身近な行動からも日本との違いを感じたと話しました。「それが分かることでコミュニケーションの内容や仕方も変わってくる」と言います。
また、「日本人なら、歴史や文化などもっと日本のことを勉強しておくべきだったと思いました」と反省点も語りました。

ついに海外支社の社長へ

その後本社へ戻り国際マーケティング部のグループリーダーを任されます。ヨーロッパやアジア、アメリカなど各現地の子会社と連携を取るなかで、海外販売会社のトップに興味を持つようになりました。海外の会社の社長という立場からは何が見えるのか、自分なら何が出来るのか考えるようになり、国際事業の役員へ思い切って直訴します。念願叶い、カナダの子会社の社長に就任しました。

赴任してすぐ取り組んだのは社長として何を考えているのか、何を目指しているのかビジョンを従業員にシェアすることでした。「製品ではなく夢を売る」というスローガンを共有し、次のステージを目指しトロントやバンクーバーなど大都市で大々的なプロモーションを展開し、売上拡大を図りました。また、SDGsの先駆けとなるCSR活動への取組や、東日本大震災の写真展をカナダで行うなどの活動も積極的に行いました。英語も再度学びなおし、週2回家庭教師に文法と会話を習ったり、初めてTOEICを受験しました。

社長を経験し、ポジションの難しさを改めて痛感したと言います。
日本と違い海外では部下の責任と権限が明快であるため、一度部下に業務を託したら、部下の責任と権限のもとで業務を遂行しており、ある程度の期間をみないと進捗状況を把握することができず、フラストレーションが溜まることもありました。しかし何かがあればすべて自分が責任を負うという重責もあります。一方で提案次第では会社全体を動かせるパワーがあることも実感。「日本では経験できないことができ、非常に楽しかったです」と話しました。

「凡事徹底」と「最大の挑戦」を

57歳のとき「もうこの会社ではやりきった」という思いが出てきます。まだ貢献できる会社やワクワクできる仕事があるはずだという考えが湧き出て、転職を決意。縁があって化粧品OEMメーカーの株式会社タイキに入社しました。現在も自社ブランドの開発・マーケティング・販売や取引先のPB開発に携わっています。

最後に学生たちへ、人が真似できないほど物事を一生懸命にやること、挑戦することの大切さを伝えました。
「やり方を変えれば結果も変わってきますし、チャンスもでてきます。そのチャンスに向かってどれだけ高くジャンプできるか、出会いを大切にしながらぜひチャレンジしてください」とメッセージを伝えました。

ネットワークを作り好奇心を持って

講演が終わると、学生から質問が飛び交いました。
「自分から主体的にキャリアアップしていたように感じましたが、そのモチベーションは何ですか」という質問には、藤井氏は「新しいこと、面白いことにチャレンジしたい、次は何が出来るかという好奇心が根底にありました」と回答。
これからオーストラリアにワーキングホリデーに行くという学生には、今の会社でも資生堂時代のつながりが活きていることを伝え、「海外に行ったら向こうの人とネットワークを作っておきましょう。いつか思いがけないところでつながるかもしれません」と、アドバイスされました。

最後には藤井氏から化粧品の試供品が学生たちにプレゼントされ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。学生たちにとって海外で活躍するための前向きな力を学ぶ、貴重な講演となりました。

担当教員からのメッセージ

今から約30年前に、同じ職場でお目にかかった藤井さん、その頃の仕事は国内のブランドマーケティングでした。その後、藤井さんは海外中心のお仕事に、私は労働組合と人事、全く畑は別になりましたが、ブランドマーケッター時代に苦楽を共にしたことが、今でも藤井さんとのご縁を繋いでくれているわけです。私の印象は、仕事ぶりも身のこなしも、“かっこいい人”、今でも化粧品業界で活躍されている姿は、素晴らしいと思います。毎年のご支援に心から感謝申し上げます。

2023年6月15日

ファーストペンギンになろう!「キャリアデザイン」の授業で元日経新聞の記者が講演を行い失敗を恐れず行動する大切さを話されました。

5月9日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、元株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の大村泰氏が招かれ講演が行われました。大村氏は在職中の多くのインタビューの中から学生たちへ伝えたい名言を集めてきてくださいました。講演の中でこれからの時代の情報の扱い方や、失敗を恐れず行動をしていくことの大切さを語られました。

深澤教授とは部活の友人

大村氏は、深澤教授の高校時代の同級生。二人は野球部で、共に白球を追った仲です。
大村氏は日本経済新聞社で数々の業務に就かれた後、日経メディアマーケティングの代表取締役社長を務められ、2023年3月に日経を退職したばかり。退職を機に、第二のキャリアデザインを考えているところと言います。
また、学生の前で講演をされるのは今回が初めて。「今日が第二のキャリアのデビュー戦です」と講演を始められました。

大村氏の子どもの頃の夢は小説家。書く仕事がしたくて新聞記者を目指し、日経新聞に入社しました。最初は記者ではなく記事の編集をする整理部に配属になりました。入社後は失敗と挫折の連続だったと言います。しかし最後は先輩が助けてくれたと感慨深く話されました。

「今日、新聞を読んだひとはいますか」大村氏の問いかけに手を挙げた学生はゼロ。学生たちは無料のニュースサイトやテレビ、SNSなどから情報を得ているという回答に。若い世代が新聞を読む機会が減っているのが新聞業界の課題です。

若者たちに贈る「名言集」

今回大村氏は、学生たちに伝えたい言葉として、インタビューした多くの成功者の言葉のなかから選りすぐりの「名言集」を持ってきてくださいました。最初は「ファーストペンギン」。財界の重鎮、小林喜光氏の言葉です。ファーストペンギンとは、群れの中から真っ先に海に飛び込んでいくペンギンのこと。転じて、勇気と主体性を持って行動する先導者のことを意味します。「企業文化もファーストペンギンが出ると変わっていく」と大村氏は語りました。

「ラストマン」というのは最終責任者という意味で、最後の責任を取るリーダーのこと。どんな活動でもリーダーは必要です。そのなかで、ただ選ばれるのではなく自分で考え行動し責任を取れるリーダーになってほしいと大村氏は話しました。

中外製薬会長の言葉は「失敗を恐れるな」でした。「日本は失敗に厳しいですが、アメリカでは失敗すればヒーローになる」と言い、チャレンジ精神の大事さを伝えました。モルガン・スタンレー証券のアドバイザー、ロバート・フェルドマンの言葉は「いでよ異端児」。「チームワークを大切にするなかで、挑戦のためには異端児もいなくてはいけない」と話しました。

メディアをどう使い分けるか

ニュースの影響力の大きさを示す事件として、大村氏は2016年のアメリカ大統領選について触れました。当時世論はクリントン氏の圧倒的有利と思われていましたが、結果はトランプ氏の勝利。これには共和党寄りのメディアFOXTVの報道が大きく寄与していると言われています。また、AIはSNSなど含めビッグデータの解析からトランプ氏勝利を予想していたと言います。

これからの時代、情報をどう扱うかは大きな問題です。
そこで大村氏は「上手にメディアを使い分けることが大切」と言います。例えば物事について詳しく知りたいとき、ネットニュースだけではなく新聞がどう書いているかを読むことを勧めました。新聞各社がそれぞれどのように報じているか、それは本当なのかを疑う姿勢を持つことで「自分なりの立ち位置というのが分かるようになります」と話します。また、1対1の対話力を磨くことも大切。「名言は1対1で話しているときに出てきます」と話しました。

AIとどう付き合っていく?

現在話題の「chatGPT」に関しても話されました。「すごく大事な問題で、いろいろ考えなくてはいけない」と語りました。「インターネットのように、世の中を変えてきたものというのは必ず浸透します。間違いなく、10年後や20年後の将来には当たり前の技術になっている」と言います。AIに仕事が奪われるという未来予測もある中で、では何に気を付けていけばいいのでしょうか。

AIにできないことは、判断することや新しく何かを生み出すことです。「これからは自分たちに何が出来るかを考えていく時代になるでしょう」と、自分で考え判断する大切さを伝えました。

失敗を失敗のままにしない

講演後、学生たちはグループディスカッションを経て大村氏への質疑応答が行われました。「名言の中で失敗を恐れるなとあったが、どうしても失敗を怖がってしまう。どうしたら一歩進めますか」という質問には「失敗するかもと立ちすくむのではなく、失敗した場合のリスクをどう乗り越えていけるか考えることだと思います。経験者に聞いたり調べたり、失敗を失敗のままにせず、どう立ち上がるかだと思います」と回答しました。

「情報をどのように取捨選択すればいいでしょうか」という質問には、「新聞を読むのが良いと思います。新聞は記者が現場に行き、一次情報にあたって取材しています。裏付けが取れた情報しか載りません」と、新聞の情報の正確性を伝えました。また「週に1回でも新聞の1面だけでも読むと、今何が起こっているかが分かる」と、新聞を利用することを勧めていました。

最後に大村氏は「今回の授業で一番伝えたかった言葉はファーストペンギンです」と話しました。「最初に手を挙げて発言することや、一番に教室に入って準備することもそう」と、先陣を切る勇気を持つことの重要さを再度伝えました。

学生たちにとっても、失敗しても挑戦することの大切さを学んだ講演となりました。

担当教員からのメッセージ

大村氏と初めて会ったのは高校1年の時、以来約半世紀が経とうとしています。しかし、今でも時々会う大切な仲間の一人、やはり社会で大切なのは人脈であることを改めて感じています。大村さんが会社を離れると聞いてお目にかかった時に、私の夢は大学生に自分の経験や生き様を伝えることだと聞き、今回の舞台をご用意させていただきました。豊かな経験に基づく珠玉の言葉の数々に、大村さんのキャリアの年輪の厚さを感じました。