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2023年7月10日

東京諸島の“宝”とは?「実践プロジェクトa」の授業で近畿日本ツーリストの課題への最終プレゼンが行われました。

6月2日に1年生対象「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、近畿日本ツーリスト株式会社の課題へ企画提案をする最終プレゼンが行われました。課題は「東京諸島を、若者が必ず一度は行きたくなる聖地にする」。グループごとに担当する島が割り振られ、30名の1年生が、それぞれの島の魅力を『宝』として探し出します。1年生で、プレゼンテーションが初めての学生も多い中、レベルの高い発表が行われました。

中間プレゼンで練り直し

今回の発表の前に、学生たちは5月19日にプレゼンに臨んでいました。
中間提案を行い、質疑応答やフィードバックをもらって最終プレゼンに向け再考するための機会です。それぞれのグループは、担当の島の宝として名産や景観を紹介、プレゼンしました。若者がどういうときに旅行に行きたくなるかも市場調査し、『癒し』や『SNS映え』をメインにするグループも多くありました。

6グループすべての中間プレゼンが終わった後、小宮氏と橘氏から全体講評がありました。
まず小宮氏からは「本当に担当の島が素敵だなと思っていますか?」と問い掛けが。
「その島でしかできないことや独自の仕掛けが必要」と言い、現在のプレゼンでは観光地の紹介に偏っているのではと厳しい指摘を受けていました。

4つの目で見てみよう!

続いて橘氏はまず、企画の立て方のコツとして、
「全体を見る『鳥の目』、注目する『虫の目』、時流を読む『魚の目』、疑ってみる『コウモリの目』」を紹介しました。

市場調査をしたうえで、ストロングポイントに注目し、トレンドに合っているかをみて、時には逆張りのアイデアをぶつけてみる。良い企画にはすべての視点が大切だと話します。
「6島とも自然があり海がきれいです。その中でその島にしかないものは何かを考えてみてください」と話しました。
「体験する人の感情が分かるような企画を楽しみにしています」と最終プレゼンに期待を寄せました。

講評後はさっそくグループで案を練り直します。
「リピーターを増やすにはどうしたらいいかな」「思い出になるものは?」など再度検討。
授業を見ていた過去にこの講座を受講していた先輩方も駆けつけてくれてアドバイスをします。橘氏と小宮氏も各チームを周り、細かくフィードバックしてくださいました。

“宝”を活かしてアピール!

2週間後の6月2日。
いよいよ最終プレゼンの日です。この日は東京諸島観光連盟の照沼氏もご参加下さいました。

最初の発表は新島グループ。
毎日の仕事に疲れた女性をターゲットに、新島の宝である海とガラスで癒しのツアーをプレゼンしました。
新島の周辺の海はサーフィンやシュノーケリングなどそれぞれに合ったスポットがあり、どの目的でも楽しめます。さらに新島一周クルージングの旅を用意。
船上で足湯なども楽しめ、参加者には新島ガラスのブレスレットをプレゼントし、思い出にしてもらう企画です。
橘氏からも「島一周クルージングはとても面白い、やってみたいですね」と感嘆の言葉がありました。

八丈島グループは人気コーヒーチェーンであるスターバックスコーヒーとのコラボを提案。
ターゲットを流行好きな大学生に定め、空港などで八丈島の特産品を使った新作フラペチーノを販売する企画です。
特産品は八丈レモン、ジャージー牛乳、明日葉、パッションフルーツを用意。SNSに写真を投稿してもらうことで宣伝効果も狙います。
小宮氏も「ツアーではなく企業コラボという提案は面白い切り口」と感心されていました。

本当に行きたくなるプレゼン

伊豆大島グループは、春に開催される「椿まつり」期間中に映画祭を開催することを提案。
屋外でも過ごしやすい伊豆大島の春に、映画を楽しんでもらうと同時に、伝統の祭りにも親しんでもらおうという企画です。
特産品が食べられる屋台なども出店し、地域住民と観光客がつながる仕掛けです。
橘氏は具体的な交流方法について質問。学生は「椿まつりの中に地元の人が紹介や説明する交流イベントがあるので、映画祭きっかけで行った若者も気軽に参加できるようになると思います」と回答しました。

SNSでアンケートを実施したのは三宅島グループです。
若者が旅行先に島を選ばない理由は島自体を知らないこと、魅力が分からないことが理由と考え、知ってもらえるきっかけ作りに企画を特化。若者の目に留まるポスターやSNSでの宣伝方法を考えました。
島の方に直接連絡を取り、おすすめポイントや星空の写真を提供してもらって宣伝動画を作成しました。
小宮氏は実際に島の方に連絡を取った行動力を賞賛。「実際に島に行きたくなりましたか?」と問われた学生たちは、大きく頷いていました。

自分を見つめる旅

デジタルデトックスをテーマに選んだのは神津島グループ。
参加者はスマホの電源を切り、使い捨てのフィルムカメラを渡されます。
癒されたい人は星空保護区に認定された素晴らしい星空の下で星見ピラティスをしたり、アクティブに動きたい人は赤崎遊歩道で透明度の高い海を堪能したり。
思い出を写した写真は旅行後に特設サイトに投稿してもらい、参加者全員でアルバムを作れる仕組みも考えました。
「デジタルデトックスは良い視点。癒しと刺激という相反する価値観があるのも良かったです」と橘氏は感想を話されました。

最後の小笠原諸島グループは「自分探しの旅」と題し、将来に悩んでいる大学生をターゲットに、「遊び×インターンシップ」が融合したツアーを提案しました。
夏休み期間に2週間ほど滞在し、自分の興味を持った仕事を体験できる仕組みです。
ウェルカムイベントでは島内を巡る宝探しを行い、特産品や地元のことを学べる工夫も。
宝探しに必要なクイズは地元の小学生に考えてもらい、地元の人にも積極的に関わってもらう仕掛けを考えました。
小宮氏からも「地元の小学生に参加してもらうというのがいい。ロジックもとてもしっかりしていて聞きやすかったです」と感想をいただきました。

自分自身の“宝”を見つけて

発表後には照沼氏からも感想をいただきました。
「自分もいろいろな企画を作っていますが、頭が固かったなと。とても刺激になりました」と話し、島の魅力を再認識されたことを話しました。「プレゼンをきっかけに興味を持ち、島に行ってくれたら嬉しいです」と語りました。

最後は優秀賞と特別賞の発表です。
「どのグループも良い発表で、予想以上の出来でした。差はわずかです」と橘氏。
そのなかで優秀賞は小笠原諸島グループでした。「地元との交流とインターンというコラボの発想が素晴らしかった。若者がこのツアーに行ってどう変化するかが考えられていました」と授賞理由が述べられました。
特別賞は「企業との掛け算に可能性を感じた」と八丈島グループに贈られました。

橘氏は「今回の発表で、各島の特徴は全然違うんだと分かったと思う」と話し、「島は皆さん自身です」と語りました。
「皆さんの中にもそれぞれ違う宝がある。自分の強みって何だろうと問いかけ、自分自身にいろんな企画をぶつけてみてください」とエールを送りました。

担当教員からのメッセージ

1年生に対象を絞って行われている「実践プロジェクトa」も、今年は4年目を迎えます。コロナ禍で行われた2020年から近畿日本ツーリスト様には継続してご支援いただいています。毎年、テーマも変えていただき、1年生が真剣に取り組んでいる授業です。「大学生の学び方を変える」という狙いに向け、一般社団法人FSP研究会が構築した本プログラムは、全国約20大学で同時進行中の授業です。また、本学の講座には、過去履修してくれた学生たちがSAとして参加してくれており、自身の経験を通じて後輩へのアドバイスも行ってくれています。コラボいただいている企業、先輩、そして履修している学生が一体となって展開している講座は、年々グレードアップされており、本授業を履修している学生の成長には凄まじいものがあります。毎年ご支援いただいている近畿日本ツーリストの橘さん、小宮さんには、心から感謝申し上げます。

2023年7月7日

オンラインで留学体験!「国際理解とキャリア形成」の授業でアンジェラス留学とのコラボ授業が行われました。

6月6日に共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で株式会社アンジェラス留学(以下、アンジェラス留学)の中根なゆた氏をお迎えしてのコラボセッションが行われました。中根氏のお話のほか、フィリピン・セブ島とオンラインでつないで、実際に留学の授業も体験。また留学を経験された本学卒業生の斎藤遙紀さんのお話や、学生総合支援センターの内田雄介次長の「ミドル世代の留学」のお話も伺いました。たくさんの国際交流の経験を聞く体験型授業。学生も興味深々で参加していました。

留学が人生のターニングポイントに

学生は2グループに分かれ留学体験と、中根氏のお話を交互に伺いました。
中根氏はフェンシングをやっていたことをきっかけに、大学時代にフランスに1年留学。大学時代はいつか海外で働きたいと思っていたと言います。
株式会社資生堂に入社して6年後パリの事業所に配属になりました。このチャンスは大学時代にフランスに留学していたから巡ってきたと言います。「留学が私のターニングポイントになりました」と中根氏は話します。
その後、中根氏の父が創業されたアンジェラス留学へ入社。「私の一番の思いは、悩める大学生を応援したい」と中根氏。大学時代に留学することが大事だと痛感したと言い、大学生のキャリア形成を応援したいと話します。

留学と旅行の違いは、学校に行くか行かないか。1週間でも2週間でも現地の学校に通って勉強すれば立派に履歴書に書ける「留学」です。
留学時期も毎週月曜開始で出来るため、個人留学にも柔軟に対応が可能と言います。

卒業生による生の留学体験

続いて齋藤さんも交えて留学についての経験が話されました。
斎藤さんは2018年にセブ島に留学し、2019年に本学を卒業。現在はカナダのアパレル会社に就職しバンクーバーで活躍しています。
なぜ留学したかと問われると「大学3年生の時にグローバルキャリアデザインというキャリア科目を履修していた時、ゲストとしてお越しいただいた中根さんのお話しをお聞きしたことがきっかけで留学に興味を持ちました。CAにも興味があり、英語力を伸ばしたかった」と話されました。
現在のカナダでの仕事について聞かれると「職場にはいろんな人種の方がいて、バックグラウンドや考え方が違うので意見の衝突も多い」と言います。
「皆主張が強いので大変だけれど、だからこそ皆で思いやりをもって協力しています」と多様な価値観のなかで働く大変さと楽しさを語ってくれました。

「セブ島に留学した時は全く英語がしゃべれずに悔しかった」と話す齋藤さん。「勉強してカナダに行ってから、英語で通じ合えるとこんなに嬉しいんだなと思いました」と体験を語ります。
「日本から外に出てみるといろんな考えや価値観に触れられる。やりたいことがまだ見つからない人は、ぜひ留学していろんな経験をして欲しいと思います」と話しました。

オンラインでセブ島へ留学!

別室のパソコンはセブ島の講師の方とつながっています。学生たちは3~4人に分かれてそれぞれオンライン留学を体験しました。
つながると講師の方が「Hi!How are you?」と気さくに話しかけてきてくれます。学生たちは緊張しながらも自己紹介をしていきました。
挨拶を終えると、英語の模擬授業が始まります。

画像が表していることを英文で説明したり、英単語の意味を問われたり。
恐る恐る答えていた学生も「good!」と褒められると、笑顔で返事をしていました。
講師の方は、学生が分からないときはゆっくり問題を言ってくれたり発音を直されたり、学生たちが答えられるまで丁寧に受け答えしてくださいました。

半年間の「ミドル世代の留学」

再び教室に全員がそろうと、最後に本学の職員である内田次長にマイクが渡されました。
2022年10月から2023年3月まで半年間、東南アジアに留学していた経験を語ってくれました。自分の仕事の枠や価値観を広げようと考えた内田次長は大学職員を辞めてでも海外に出ようと考えていましたが、そのことを話すとなんと大学側から海外研修を勧められたと言います。
そこで英語力の獲得と、東南アジアに海外インターンシップ先の企業を開拓するミッションが託されました。

最初は英語ができなかったので、必死に勉強したといいます。
TOEICの点数向上を指標として学習した結果、半年間で300点UPを実現したそうです。ただ、英語学習では「はじめの1か月で簡単な英語でコミュニケーションが取れるようになると、他の単語を覚えなくなり英語力が伸びなくなった」と歳を取ってからの勉強の難しさも語りました。
そこで他国の生徒や先生と旅行に行ったり、地元の人と友人になったりと、教室外で英語を学習する機会を確保。「留学先では日本人同士で行動するのではなく、英語を話す機会を自らが作っていくかが大事」と話します。

英語力の向上を実現した後には、最後の1か月間を利用し、タイやカンボジア、ベトナム、韓国で27の企業等を周り、海外インターンシップ先候補の団体とネットワークづくりを行いました。

内田次長は「これからのグローバル人材、必要な要素は語学力ではなくマインド」と話します。
東南アジアでの企業の交渉は、どちらも英語がノンネイティブでの会話でした。言葉ではなく、目の前の課題や相手に真摯に向き合い、お互いに理解しあおうとする力が大切だと感じたと言います。
「まずは結果を考えず、一歩を踏み出してみるマインドが重要。皆さんには何事にもチャレンジして活躍していってもらいたいと思います」と語りました。

盛りだくさんの内容だった授業はこれにて終了。
学生たちは、留学や海外生活を身近に体験する貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

私が株式会社資生堂の人事部で、採用の責任者であった時に、中根さんをお迎えしました。その後、中根さんが父上の会社に転職された後は、私が担当しているキャリア教育科目に毎年ゲストとしてお越しいただき、留学を中心にキャリア形成のお話しをしていただいています。親身に相談に乗っていただくことがきっかけで、中根さんにお世話になって海外留学に出かけた学生は、約50人を数えます。長いご縁には、本当に感謝です。
この国際理解とキャリア形成の授業においては、特に留学や海外での業務の夢を持つ学生も多く、中根さんのお話しには、とても関心深く授業に参加してくれています。昨年からは、セブ島とオンラインで結んでの模擬体験までアレンジしていただいています。そして、今年は、キャリアの授業において中根さんのお話しがきっかけで、なんと海外で仕事をされている齋藤さんや、内田さんの経験談まで含めて、盛りだくさんの内容となりました。様々な準備をして下さった中根さんに心から感謝申し上げます。

2023年7月3日

「国際理解とキャリア形成」の授業で資生堂のブランド担当者が人生のテーマを考えるきっかけになる講演を行いました。

5月23日に共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に株式会社資生堂(以下、資生堂)の林順子氏をお招きし、グローバルキャリア形成についての講演が行われました。『BAUM』というグローバルブランドの担当者として活躍されている林氏。これまでの軌跡と、人生のテーマについて貴重な経験をお話頂きました。

幅広いマーケティングの仕事

講演は、林氏が手掛けるブランド「BAUM」のルームフレグランスやオーデコロンをグループごとに回し、学生たちは実際に香りを体験しながら、リラックスしたムードで始まりました。

林氏は関西出身。ドラマで見た英語を使う仕事に憧れて関西外国語大学に入学しました。在学中イギリスに短期留学を経験し、2007年に資生堂に入社します。このときの人事部の採用責任者が深澤教授でした。

初めての配属先は行ったこともなかった北海道。3年間営業職を経験しました。2011年、中国へ1年間出向。中国語もまったく話せない状態だったと言い「発音などは気にせずとにかく話して覚えていきました」と言います。
その後日本に戻ってからは中国の専用ブランドの開発に携わり、2020年からはグローバルブランド『BAUM』のローンチから関わっています。

マーケティングの仕事は幅広く、商品開発や、広告素材の開発のみならず、ストアデザイン等ブランドに係る様々な要素があると言います。
「市場の状況やコンシューマーのニーズ、ブランドイメージ等を総合的に考え、コンシューマーにとってより豊かなライフスタイルや価値を届けることが仕事です」と話しました。

あなたの人生のテーマは?

林氏は「人生のテーマを決めている人はいますか?」と問いかけました。

何人かの学生が手を挙げるのを見て、
「テーマがあると人生に深みが出ると思っているので、今回の話を単純に聞くだけではなく、考えるきっかけにしてもらえたらと思います」と語りました。例えば将来について考えるとき「漠然と○○になりたいと思うのではなく、5年後10年後にどうなっていたいのかを考え、書いたり話したり言語化することが大事」と話しました。

林氏自身は、
「やらない後悔よりやる後悔の方が、その後の成長につながる」が信念と話します。
大学時代、堂々と自分を表現できている人たちを目の当たりにし、挫折を味わったと言います。しかし、このままだと後悔だけが残ると思い直し、一念発起。経験ではなく努力でカバーできると思った新しい言語(アラビア語)を授業選択し、絶対にトップの成績を取るという目標を立てました。その結果やればやるほど楽しいと思うようになり、長所を伸ばせば個性になると思うようになったと言います。
「挫折と挑戦を繰り返す、自分の人生の礎になった経験だと思います」と話しました。

「グローバル」とは多様な価値観や文化が形成される世界

BAUMは日本以外の中国でも展開されているブランドです。そのため日本人だけでなく、日々さまざまな国の人とコミュニケーションを取ると言います。
「日本語以外でのコミュニケーションの時には、できる限りシンプルにわかりやすく伝えていくことを心掛けるようにしています」と林氏。

「グローバルというとかっこいいイメージがあるかもしれませんが、多様な価値観や文化が交差するところなんです」と林氏。多種多様な人々とコミュニケーションをとるため、1つのことを説明するにも伝え方に工夫が必要です。これまでの思考プロセスでは通用せず、そこでも理想と現実のギャップを感じたと言います。

まずはやってみる!そのあと内省し言語化する

ただ、「できないこと」が山ほどある中で「半歩先にあるできること」を積み重ねていくことによって、少しずつ変わっていったと話します。
「私自身は高いスキルを持っているわけではなかったですが、できることを少しずつ積み重ねていった結果、振り返ったらキャリアができていました」と話しました。いま自分にスキルが足りないと思っている学生にも、目の前のことを積み重ねることで活躍できる方法もあると語り掛けました。

「自分の短所をカバーするためにどうするのかを、自分自身と対話しながら考えることで、長所を個性に昇華できる」と林氏。
自分の好きなことや興味のあることを見つけてまずはやってみること、見つけられなかったら目の前のことに誰よりも取り組むことの大切さを語りました。そして「取り組んだらそれで終わらせず、言語化することが大事です」と話し、「皆さんの人生が、より豊かにより深くなるお手伝いになる授業になっていればと思います」と講演を終えました。

学生たちも将来を考えるきっかけになった講演

講演後、学生たちはグループで感想を話し合い、林氏に伝えました。
「自分は挫折も挑戦もまだ数が少なく未熟だと思いました。思いを言語化して、自分の軸を持っていきたい」と語った学生には、
「自分の考えを人前で発言することはとても難しいことです。言語化していくことを頑張ってやっていってください」とエールを送りました。

まだどんな仕事がしたいか決まっていないけれど、海外に興味があるという学生は「怖がらずに踏み込んでいきたいと思います」と宣言。林氏は「夢を実現するためには今日から何が出来るか、明日はどうするかアクションプランを考えてみると良いですよ」と具体的なアドバイスをされました。

学生たちにとって、これからの人生を良くしていくためのテーマを考えてみる授業となりました。

担当教員からのメッセージ

林さんに初めてお会いしたのは、彼女がまだ大学生の頃でした。以来15年の歳月が流れたことになりますが、毎年お会いするたびにその輝きを増しているお姿には、感動します。目の前のことに精一杯挑戦してきたそのキャリアが物語っています。ご自身の軸をしっかりと持ち、卓越した行動力をいかんなく発揮されて、さらなるご活躍を心から期待したいと思います。人生のテーマを有し、とにかく恐れることなく行動することの大切さは、学生にとって、本当に大切なメッセージとなりました。来年も、楽しみにお待ちしています。ありがとうございました。

2023年7月3日

ベトナムフェスに証券会社が出展!学生たちが内容やプロモーションを考えイベントに参加しました。

現代社会学科の篠﨑香織教授のゼミ(演習ⅡA・Jクラス)でアイザワ証券株式会社(以下、アイザワ証券)とコラボし、学生たちがベトナムフェスティバルへの出展内容を考案しました。ベトナム株や証券会社の認知度アップのためターゲティングから始まり、プロモーションや運営まで体験。学生たちは授業を通し、マーケティングだけでなく投資やベトナムについても身近に感じる機会になりました。

ベトナムってどんなところ?

授業は4月から始まりました。まずはベトナムを知るところから。ベトナムはどこにあるか、文化や料理は、人口は、著名な企業は、などベトナムの基礎知識を知りイメージを広げていきます。ベトナムのGDP成長率は東南アジア諸国の中でも高く、いま勢いのある国のひとつです。国際化も進み日本企業も多く進出しています。輸出拠点として発展し、所得も向上し国内消費も拡大中です。ただ世界で見るとベトナムはまだまだ小さいマーケット。今後の成長が期待されている市場なのです。

証券会社がなぜベトナムフェスに?

今年は日越外交関係樹立50周年。記念事業として6月にベトナムフェスティバルが開催されます。そのベトナムフェスにアイザワ証券が出展します。アイザワ証券は日本株だけでなくアジア株や投資信託など豊富な商品を取り扱う証券会社です。特に強みなのがベトナム株。長期で資産形成できる投資先としてベトナム株を知ってもらいたいものの、認知度アップはまだ道半ばです。

そこでベトナムフェスに出展し、アイザワ証券とベトナム株の認知拡大を狙います。投資家が参加するのではなく、ベトナムに興味がある人たちへのアピールが目的です。実はアイザワ証券も、投資目的ではない一般的なイベントに出展するのは初めて。学生たちは、社員の方と一丸になり、ブースにより多くの人に足を運んでもらえる施策を考えました。

告知は、Twitterのアイザワ証券公式アカウントから学生が発信しプロモーション。ベトナムの魅力やイベント出展情報など、グループごとにそれぞれターゲットを決めて作成しました。ブース内の催しものは、サイコロを振って出た目に応じて当たりのプレゼントを考案。どんなプレゼントや雰囲気であれば参加したいと思えるか、ブースに興味を持ってもらえるかを考えました。

フェスティバルを通してアイザワ証券を身近に

いよいよフェスティバル当日の6月3日。天気も心配されましたが雨はやみ、会場は多くの人でにぎわっていました。学生たちはブースの前で声を出して集客をしたりプレゼントを渡したり、社員の皆さんと協力して運営していました。

3グループの学生たちは「ターゲットは30代のビジネスマン。アイザワ証券の顧客層を意識して、当たりにはベトナムコーヒーを用意しました」「お子さん連れのプレゼントはお菓子。子どもたちに配る風船には、アイザワ証券のロゴをプリントして宣伝してもらうようにしました」と工夫した点を教えてくれました。

5グループではサイコロのデザインを担当。「ブースに集客するためにサイコロは大きく、カラフルに。来てもらえるだけでなく、もっと知ってもらいたいと思ってもらえるためにどうすればいいか考えました」と、QRコードのシールを配ることを提案。こちらは読み取るとアイザワ証券のデジタルパンフレットが表示されます。

ベトナムについても、学生たちは元々詳しくない状態からのスタートでした。「最初はベトナムについてほとんど知らなくて、どんなイメージと聞かれてもイメージすらないような状態でした。今回の授業を経て身近に感じられるようになりました」「ベトナムはバイクのイメージが強かったですが、地下鉄がたくさん利用されているというのを知れたのが驚きでした」と授業を通じ、だいぶ距離が縮まった様子でした。

証券会社をより身近に

証券会社や投資も遠い存在でしたが、今回で関心を持ったという学生が多数。「将来は投資をやったほうがいいのかなと興味を持ちました」という声が多く聞かれました。「証券会社も日本国内だけの取引のイメージでしたが、海外にも多く市場があってベトナムにもあるんだなと知りました」「投資は自分には関係ない難しいことだと思ってたけど、初心者でも意外と始めやすいんだと知りました」と、情報を知ったことで身近に感じた学生も多くいます。

5グループのある学生は「母が銀行員で、株などについての話も聞いていたので私は身近に感じていたところもありました。若い人に証券や投資について知ってもらうには、触れる機会や学ぶ機会をもっと増やすといいと思います」と話し、親しむことの大切さを話してくれました。

アイザワ証券の社員の方も「おかげ様でたくさんの人に来ていただきました」と仰います。「Twitterでのプロモーションも反響は大きく、一番多いものだと100件ほどいいねがつきました。いままでの当社のツイートではそこまでの反応はなかったので」と学生の考えたプロモーションに感心していました。

授業としてはイベント出展がゴールではありません。篠崎先生から「どんなお店にお客がきているのか、どのようにお客を呼び寄せているかなど会場の市場調査もしてもらっています」と課題も出ていました。今回のイベントも、学生たちが実地でマーケティングを学べる、貴重な経験となりました。

担当教員からのメッセージ

 これまで4年生の就職活動先をみてきて金融というと銀行系が多かったので、2年生の段階で証券会社と社会連携ができるのはとても良い機会になると思いました。
 今回の集客企画では、ゼミ生は自分たちの考えをかたちにしてその効果を検証することができ、その過程で、ひとくちに「顧客」といっても、取引き前の潜在顧客からリピーターまでいることを実感することができました。そして、それぞれの顧客に異なる対応が必要であるという気づきを得ることができました。
 プロジェクト中は、毎週アイザワ証券の社員さんがグループごとに1名ついてフォローをしてくださったので、スムーズにグループワークができました。学生の証券会社や金融商品に対する心理的距離がかなり縮まったと思います。二カ月間大変お世話になりました。

2023年6月30日

カルビーの環境への取組って知ってた?「実践プロジェクトa」でカルビーの環境対策の認知度アップを考えるコラボ授業が行われました。

「実践プロジェクトa」(担当:髙橋 裕樹特任教授)の授業で、6月5日にカルビー株式会社(以下、カルビー)の荒木友紀氏をお招きしたコラボ授業が行われました。カルビーのSDGsへの取組を伺い、その認知度アップできる施策を考えます。学生たちはグループワークを重ね、後日プレゼンテーションに臨みます。

健康への思いから設立されたカルビー

実は荒木氏は中学・高校からの実践女子の卒業生。大学では生活科学部で学び、10年間実践女子で学んだ先輩です。1999年に卒業し、食に関する企業に興味を持ったところからブルドッグソース株式会社に入社。2004年にカルビー株式会社に入社されました。マーケティングに携わり、主にスナック菓子のブランディングや商品設計を行っています。

カルビーの社名の由来は「カルシウム+ビタミンB1」。健康食品づくりへの思いが託されています。最初のヒット商品はかっぱえびせん。来年60周年を迎えるロングセラーです。誕生当初はアメリカ産の小麦粉が大変安い時代で、未利用だった小エビと共に活かしてできた商品です。「自然の恵みを活かすこと」を大切にしており、原料は自然素材を使い、農工一体で取り組んでいることが特徴。特に主力商品であるポテトチップスの原料となるじゃがいもは、加工用の国産じゃがいもの約60%をカルビーが使用しています。
商品作りだけでなく土づくりから品種改良まで、じゃがいもに関わるすべてのプロセスに関わり、徹底した品質管理を行っています。

地球の未来のためにできること

カルビーの環境への取組として、2030年までにプラスチック容器を50%環境に配慮した素材にすることを目標にしています。
2050年には100%を目指しており、「大変な目標だと思いましたが、ここまでしないと貢献ができないと考え、全社で取り組んでいます」と荒木氏。
パッケージのインクを植物性由来のバイオマスインキを利用したり、包材の研究を進め薄膜化したりとCO2削減に取り組んでいます。

またカルビーでは国内全体のパーム油の使用量の約5%を占めており、大変多くの油を使っています。パーム油はアブラヤシからとれる油でインドネシアやマレーシアで産出されますが、森林伐採や児童労働が問題になっています。カルビーは、こうした社会問題に配慮した認証パーム油への切り替えを進めており、パッケージにも認証マークを表示しています。
【認証パーム油に関する動画】
https://www.calbee.co.jp/sustainability/

認知度が低いのが課題…

荒木氏は「SDGsの認知者の2人に1人が、SDGsに取り組む企業を応援したいという結果がでています」と話します。そのためカルビーも環境ラベルで取組への消費者の納得を得たい反面、まだまだ認知度が低いのが課題です。
店頭やCM、Webサイトなどでアピールしていますが、なかなか浸透していません。学生たちに知っているかを問いかけても、認証マークを知らなかった学生も多くいました。
「入社前にいろいろ調べているだろう内定者からも、知らなかったという声がたくさん聞かれました」と荒木氏。

認証マークを得られる原料は、通常のものよりも値段が高いのがネック。「原料のコストは上がっているんですが、なかなかそれを知られておらず、価値が伝わっていないということが課題」と荒木氏は話します。

環境への取組を知ってもらうには?

ここで課題の発表です。
テーマは「カルビーの環境への取組をお客様へ伝えるコミュニケーションを考える」。
考えるコツとして
「誰が(Who)」
「何を(What)」
「どのようにして(How)」
を土台に考えていくことが紹介されました。

このなかで特に大切なのは「誰が(Who)」。ポテトチップスの主な購買層はファミリー層です。学生世代の若者はあまり買わなくなっているそうです。あえて若い層の方々をメインにご購入いただけるようにするのか、現状の購買層に向けて発信するのか、ターゲットを決めることは重要です。

実は同様の課題は、昨年カルビー社内の若手社員にも出されたといい、「なかなか社内の人間でも難しい課題です」と荒木氏。「ぜひ自由な発想で取り組んでください」と学生の発表に期待を寄せました。

誰にどうやって認知度を上げる?

学生たちは早速3つのグループに分かれディスカッションを始めました。
「若者をターゲットにするならショート動画がいい」
「インフルエンサーは?」
などSNSを活用することを考えるグループや、
「興味があることは自分で調べるけど、関心がなければ見て終わるだけになりがち」
「興味を持ってもらうには向こうから知ってる?とアピールしてくれるといい」と方法を考えるグループも。

最後に3グループそれぞれの方向性を発表しました。
1グループのターゲットは若者。SNSやQRコードを利用してアピール。
購入者も環境取り組んだのだ、と参加が分かる仕掛けを考えます。

2グループは小学生を対象にします。
カルビー主催でコンクールを行い作文などで広く伝える案が出ていました。ゲーム配信などのイベントのスポンサーとなり、ポスターやCMで若者にも訴求。
若者の中でも健康意識が高い層に訴えることを提案しました。

3グループは中学生以上のスマートフォンを使う学生をターゲットに設定しました。
SNSなどで短い動画を流します。キャラクターを作りキャッチーな内容を流して認知度アップを狙います。

学生たちはグループワークを経て案を練り上げ、1ヵ月後に最終プレゼンに臨みます。

2023年6月23日

「未来フォーラム」のメンバーと直接交流!学生たちが企業の方々とグループ対話する特別授業が行われました。

5月30日に3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で「未来フォーラム」の皆さまをお迎えし、学生たちとのグループ対話が実施されました。実際に社会で働く方々との貴重な交流の機会です。学生たちは名刺交換のやり方から、働くやりがいや入社のきっかけなど、直接お話を伺える特別な時間となりました。

労働組合の集まりである「未来フォーラム」

この日の教室は熱気に満ちていました。学生のほか14労組30名の方が参加され、教室も2部屋用意。14のグループにそれぞれの企業の方が着席されています。学生たちはこれから1回15分ずつ、計4グループを回り企業の方とグループ対話を行います。

初めに、代表幹事を務めるセイコーエプソン労働組合の品川友執行委員長から「未来フォーラム」について紹介がありました。
未来フォーラムとは「業種の枠を超え、理念に共感する労組の集まり」です。小売業、サービス業、メーカーなど「ここまで業種の幅が広いのは珍しい」と話します。
現在は27労組が参加し「人のために、社会のために、未来のために」という理念のもと、自分たちの会社と社会を良いものにするために活動されています。
品川氏は「ここにいるメンバーにも率直に、真摯に話すようにお願いしていますので、遠慮せず質問をぶつけてください」と挨拶され、グループ対話が始まりました。

学生たちはこの日に備え特別に大学サイドで用意した名刺を用意し、質問も考えてきました。仕事に対する本音を聞けるまたとない機会です。学生たちは緊張しつつも前のめりに、たくさんの質問を企業の方々に問いかけていました。
※今後のインターンシップなど社会人と出会うことも増えると考え、学生総合支援センターに支援いただき、毎年、この授業の履修学生のために名刺を用意しています。

その企業を選んだ理由は?

多くの学生が気になるのは、やはり「その企業に入社しようと思った理由」です。

商業施設に加え金融サービスなどを展開する株式会社丸井グループの方は
「もともと商業施設が好き。街づくりにも携われる面白さもあった」と回答。
反対に、電機メーカーのアルプスアルパイン株式会社の方は「自分の手でモノを作りたかった」と語り、
「モノを作る会社はたくさんある。細かいものから形のないものまで。自分は何がやりたいか知ることが大切」と話しました。

住宅設備機器メーカーTOTO株式会社の方は、「一緒に働きたい人で選んだ」と言います。
面接やインターンで担当してくれた社員の雰囲気や話しやすさが決め手のひとつとなったと話しました。

株式会社資生堂の方は
「他者貢献が自分のなかで大事。自分の立場で役に立つことができる」ことがやりがいと答えていました。

いま企業が取り組んでいることや工夫

普段の生活では気付かない各企業のこだわりを直接聞けるのもメリットです。
プリンタメーカーのセイコーエプソン株式会社が業界をリードする企業として力を入れているのは、環境に配慮すること。特にインクを捨てるとき、水質や土壌に影響の出ないものを研究していると話しました。

スーパーマーケットを展開するサミット株式会社では、店ごとに買い物時にストレスがない配置を考えたり、総菜の味付けは老若男女誰でも美味しく食べられるようにこだわったり「楽しい買い物体験」を実現しています。

自己分析と企業選択…どう結び付ける?

ある学生は「自己分析と企業選択がまだ結び付かない」という悩みを話していました。
IT企業のBIPROGY株式会社の方は、「いろんな業界の人の話を聞く」ことをおすすめ。
セイコーエプソン株式会社の方も「企業説明会を聞きまくり、ワクワクしない、違和感をあるところを削っていく」という消去法を提案していました。

面接のコツを聞かれた給湯機メーカーの株式会社ノーリツの方は
「一緒に働きたいのは、前向きで元気なひと。学歴も見るが人柄で選ぶ」だろうと元気に面接に臨むことをアドバイスされていました。

何を軸に企業を決める?

何を基準に企業を選べばいいか、というのは多くの学生が抱える悩みです。
漢方薬品メーカー株式会社ツムラの方は「働きやすさを考えたほうが良い」と助言。これから女性が活躍する社会になるのは間違いないと言い、女性の管理職割合や育休の取得率など情報を確認することは重要と話しました。

近畿日本ツーリスト株式会社の方も、有休を時間単位で取得できるなど、福利厚生が充実していることが入社理由のひとつと話し、「福利厚生や制度は確認しておくといい」と話しました。

ただ、BIPROGY株式会社の方は「福利厚生より雰囲気を重視」と、制度が整っていても社風が自分に合うか合わないかは大切だと話しました。社内の雰囲気を知るには、インターンやOG訪問など直接会社の中を見る機会を増やすように助言しました。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の方は「やりがいを日々感じながら仕事するのは難しい」と言い、働く時間をいかにストレスのない充実したものにするか、何を基準に働きやすさを決めるかを考えることをアドバイスしました。

学び続けていこう!

グループ対話の時間はあっという間に終了し、企業の皆さんから感想を頂きました。

「学び続ける姿勢に刺激をもらいました。大学を卒業しても、自分のキャリアを考えるという勉強が続いていく。今日は自分のキャリアを振り返るきっかけになりました。一緒に学び続けていきましょう」と話される方も。

品川氏も「社会に出たら誰も正解を教えてくれません。自分の気持ちに向かい合い、自分で決めていくことが大事。それが正解だった時にやりがいが出ます」と話し、
「これから皆さんが社会に出て、共に働けることを楽しみにしています」とエールを送りました。

最後には学生からの感想も。
「働いて楽しかったこと、つらかったことなど経験を聞けて良かった」や
「どんな業界がありどんな企業がどんな仕事をしているのかまだまだ分からないと思います。今後の就職活動などでも苦しいことや悩むこともあると思うが、今日聞いたことを参考に頑張ろうと思います」
と前向きな感想がありました。

授業時間後も多くの学生が残り、まだまだ話足りないと対話が続いていました。
学生たちにとって多くの刺激となる貴重な機会となった授業でした。

担当教員からのメッセージ

私自身が企業勤務時代に労働組合専従の経験があったこともご縁で、毎年、「未来フォーラム様」に、この授業にお越しいただいています。
毎年感じることは、労組役員の皆さん、特に「未来フォーラム」に所属している皆さんの熱量の大きさです。誰よりも社員に寄り添い、そして会社の発展を望む、これからの労働組合の方向性を指し示しておられると思います。
多様性の時代の中で、労組役員の方のご苦労は大変なものがあると思いますが、こうした皆さんが活躍されている企業で働けることは幸せだと思います。
学生も名刺交換からスタートした社員の方との真剣勝負、企業の説明会ではなく、働き甲斐ややりがいなどを直接お聞き出来る貴重な時間となりました。
毎年、本当に多くの方にご支援いただいていること、心から感謝申し上げます。

2023年6月22日

外資と日本企業の違いは?「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。

5月25日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、本学卒業生であり、客員教授でもあるSBI金融経済研究所株式会社の政井貴子氏をお迎えし、講演が行われました。外資系、日本企業、公的機関などさまざまな組織に在籍されていた豊富な経験をお話下さいました。

なぜ「女性活躍推進」なの?

この授業は学生たちが司会となり進行します。
学生から紹介を受け、政井氏がはじめに話されたことは「なぜ女性活躍を推進するのか」ということでした。
「なぜこんなに女性活躍についてうるさく言うのか、疑問に思う人もいるかもしれません。まずは背景をご説明していきます」と講演は始まりました。

今回進行を担当したグループの学生

女性の社会進出は世界的な課題です。1940年代の世界大戦以後、男女差別をなくしていこうとする動きが起こっていきました。日本でも1970年代から女性の参政権や解放運動などの動きが起こります。
しかし現代も日本はジェンダーギャップ指数では低迷。性別による分担意識や慣行をどう変えるか、女性が仕事をしたときの平等性をどう保つか、課題はまだ山積しています。

ただ、教育面では男女差が少なくなってきており、男女の役割分担意識も年齢が若くなるにつれ薄れています。
政井氏は「問題意識を持つ人は増えています。世の中の向きは少しずつ変ってきている」と伝えました。

外資系企業で20年活躍

「皆さんに覚えていていただきたいのは、仕事とは毎日生きていくなかで、楽しい、良かったと思える日を一年に何回かでも作るためにするんです」
と政井氏。
仕事のために生きていくわけではなく、一人ひとりが豊かな人生を送るために仕事はあります。社会に出てつらいことや悩みがあったときは「不幸になるために仕事をするのではない」ということを思い出してもらいたいと政井氏は強調しました。

政井氏は本学を卒業後、外資系企業に就職します。カナダ系の企業で、社員はほぼ外国人。書類も会話もほぼ英語です。社員の国籍もさまざまで、仕事をするなかで多様性が身に付き「外国の方々との交渉はとても上手になりました」と話します。

次に勤めたのもフランス系の外資系企業。ただ、こちらは日本に昔から根付いている大企業だったため日本人も多く、日本語で仕事をしていたと言います。「一言で外資系といっても幅があるので、外資系の企業を視野に入れる場合は、実態をしっかりと調べるといいと思います」とアドバイスをされました。

女性役員としての意識変化

外資系で20年ほど勤め、英語力やコミュニケーション力が身についた反面、日本企業では、当然学ぶであろう慣習などを全く知らなかったと政井氏は話します。例えばメールの挨拶、書類の文面のマナーなど。指摘された政井氏はショックを受け、「日本人としてちゃんとした社会人にならなければ」と日本企業へ転職します。

現SBI新生銀行に部長職として就任するも「最初は全然うまくいかなかった」と話します。日本人同士の仕事は交渉の仕方も外資の時とは違いました。また「今振り返ると女性の扱いが全然違った」と言います。外資企業では男女格差の少ない社内環境でしたが、比べると日本企業ではやはりギャップがあったと話しました。

しかしさまざまなチャレンジをすることでキャリアを積み、初の女性役員へ昇進。職務のかたわら、若い有能な女性役員候補たちと役員をつなげるパイプ役を、自分から積極的に担いました。役員になったことで自由度も上がり、やれることの幅も広がったと言います。
仕事を行うだけではなく「自分がどう価値を還元できるかを考えるようになりました」と話しました。

後悔のないように人生を豊かにしよう

2016年日本銀行へ。内閣府や省庁に就職された方と知り合いになる機会が増えました。女性問題や国際問題に関心がある人たちが多く圧倒されたと言います。学生時代は社会貢献意識が高いわけではなかったという政井氏は「皆さんの時点で、まだ目的がぼんやりしていても大丈夫です」と力強く仰いました。今の時点で目標がなくても落ち込まず、目の前のことをやってみることを勧めました。そうすると仕事が自分に向いている、向いていないということに気付いていけるようになると言います。
「ただ、努力は必要です」と言い、今でも英語は勉強していると話しました。

現在、政井氏は母親の介護で同居していると話し、
「プライベートも含めて選択を迫られる時、自分の優先度を決め、後悔しない選択をすることが重要」と語り掛けました。

「最悪だと思った出来事が、振り返ってみると転機になっていたこともあるので、常に前向きに考えて人生を豊かに過ごしてください」と講演を終えられました。

視野を広く持って前向きに

講演後、学生たちはグループごとに感想や質問などを話し合い、質疑応答が行われました。
「ポジティブになれるコツや活力は?」という質問には、
「気持ちが暗くなっているともったいない。人に話してみるなど気分転換は大事。人に話すと違う角度からの意見をもらえることもあります。聞いてくれる友人や家族に感謝することも重要ですね」と回答しました。

最後に司会進行をした学生からお礼と感謝の言葉がありました。
「日本企業だけでは分からないこともたくさんあり、もっと視野を広く持とうという気付きになりました。今つらいと思ったことも、あとで良いことにつながるかもと思えて心が軽くなりました」と伝えられ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。

女性活躍や将来の就職先などについて、学生たちも具体的にイメージできるようになった講演でした。

担当教員からのメッセージ

政井様は、この授業には第一回目からご登壇いただいています。本学の卒業生ということもあり、学生の姿は真剣そのもの、政井様も本当にフランクに学生の視点でお話し下さり、アットホームな雰囲気も含めて大変貴重な時間になっています。一方、政井様のキャリアは、変化の連続。金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた価値は、なかなか存在しないと思われます。なかなか先の見通せない時代を生きる学生たちにとっては、大きな勇気をいただくメッセージを沢山いただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年6月16日

「キャリアデザイン」の授業で日本経済新聞社の村山氏による今の日本経済や企業を学ぶ講演が行われました。

5月16日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の村山浩一氏をお迎えし、「今、働くこと」を考えるための講演が行われました。実際に日経新聞に掲載された記事を引用しながら、企業の昔と今の違いや経済に関することを、学生たちにも分かりやすく話されました。

これからの時代をどう乗り越える?

村山氏は新卒で日経新聞に入社して以来、経済や経営に関わる記事を1000本以上執筆してきました。実践女子大学の前理事長のインタビュー記事も書いたことがあるとのこと。学生向け討論番組「日経カレッジ・ラボ」の制作に携わっていたこともあり、番組には深澤教授も出演されています。現在は教育事業ユニットのシニア・コンテンツ・プロデューサーとして、教育研修コンテンツを開発されています。

村山氏の話は、AGC株式会社(以下、AGC)のCMから始まりました。AGCは歴史のある大手ガラス製造会社でしたが、ガラス以外も扱う素材ソリューション会社へ社名とともに変革を遂げました。これには「両利きの経営」への意志が感じられると言います。両利きの経営とは、既存の事業を深掘りするとともに新たな事業を開発すること。「日本企業は、新たな事業の開発をすることは苦手なのですが、これからの時代を生き残るためには必要とされています」

産業界をみる上で、世界情勢も注視する必要があります。「今の世界を象徴するキーワードは”分断”だと思います」と村山氏。ロシアのウクライナ侵攻などに象徴されるように、世界的に対立が大きくなっています。同時にグローバル化は急速に広がり、日本企業も対立の影響を受けています。分断は政治だけでなく、経済においても重要なポイントなのです。「この分断をどう乗り越えていくか、どう新しい世界を作っていくかが大きな課題です」

日本に会社はいくつある?

次に村山氏は「日本の上場企業は何社あるでしょう」と問いかけました。学生たちは「100?」「1万社?」と答えるなか、正解は約4,000社。「では日本に会社は何社あるでしょうか」と再度問いかけが。「10万社?」「5万社?」と答えが出ましたが、正解はなんと400万社。99%以上が中小企業です。「皆さんの中にも、中小企業に就職する方もいると思います。たくさんの中小企業が活躍して、日本の経済が成り立っているんだなということを分かっていただければと思います」と村山氏は語りかけました。

「皆さんはどんな企業に就職したいですか」という問いかけには「メーカー系」や「金融」と答える学生がいました。ここで示されたのが、世界の時価総額上位企業の記事。1989年には世界上位20位のうち日本企業は14社ありましたが、2019年では41位でようやく出てきます。数十年経てば業績や世界の評価は大きく変わるのです。「皆さんが現役で働いている間にも、順位が大きく変わる可能性があります」と、大手企業だからといって、ずっと安泰だとは限らないことを伝えました。

お給料はどのくらい?

話は年収の話題へ。「皆さん社会人になったらどのくらいの年収がほしいですか?」と聞かれ、「500万円」「困らない程度に」「600万円くらい」という回答が出ました。日本の給与平均は443万円。ただ正社員では508万円ですが、非正規雇用だと197万円と大きな開きがあります。「学生で、希望の会社に入れなかったらアルバイトでもいいと言う方がいるけれど、私は、できれば正社員でどこかの企業に入ったほうが良いと思っています」と伝えました。

これから就活する学生たちに一番身近な話題として、採用の話も。採用側からの観点として、データサイエンスやAI、ITの知識を持っていることに期待が集まっているという記事には、「特に今の時代を反映している」と話されました。

メディアリテラシーを身に付けよう

最後はメディアとの付き合い方。「メディアリテラシーはどの業界で働いても重要です」。なぜならどんな情報もメディアを通して知ることになるからです。特にビジネスの話題には日経新聞は最適で、読者のうち課長クラス以上の役職に就いている人が45%を占めています。日経新聞で得た情報は、取引先との話題や企画案作りにも活用されています。

村山氏は「今日紹介したなかで、少し興味を持った記事もあるんじゃないかと思います」と語りかけ、「新聞は難しいというイメージがあるかもしれないけれど、興味を持ったものから読んでみると良いと思います」と話しました。

就活にも情報をうまく活用して

講演が終わると学生たちはグループで感想などを話し合い、質問をまとめました。質疑応答では就活やビジネスに関わる質問が飛び出しました。「中小企業やスタートアップの会社の情報をどうみつけていけば良いでしょうか」という質問には、「日経新聞を含む、メディアを見てみましょう。メディアに載るということは、取材したくなる企業ということ。そのなかで気になる企業を自分で調べるといい」と話し、「上場企業でも、今は社長の決算会見や株主総会の様子などの動画が無料で見られる時代です。こういった会見はとても貴重で、企業がどちらの方向を向いて動いているのかが分かる。ぜひ活用してほしいと思います」とアドバイスしました。

村山氏は「これからも勉強や就活に励んでください」と話し授業は終了しました。経済や経営者のニュースの最前線を知る村山氏のお話は、学生たちにも刺激になるものでした。

担当教員からのメッセージ

毎年ご支援をいただいている村山様には、極めて旬な経済や企業に関わるお話しをいただいています。グローバルレベルで日々変化を続けている経済界にアンテナを立てることは、就活のみならず、これからの社会を支える大学生にとっても極めて大切なことであることを気づかせて下さいます。情報をどこから集め、そして峻別する力がより求められる大学生にとって、大変学びの深いお話しをいただきました。この場を借りて心から感謝申し上げます。

2023年6月16日

「国際理解とキャリア形成」の授業で元資生堂海外支社社長の海外キャリアと挑戦することの大切さについて講演が行われました。

5月9日に共通科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社タイキ営業本部長の藤井恵一氏をお招きし講演が行われました。株式会社資生堂(以下、資生堂)で勤務していた際の幅広い海外経験を中心にお話しされ、学生たちはグローバルキャリアを改めて考える授業となりました。

広告に惹かれて資生堂へ

大学時代は勉強にサークルにアルバイトにと学生生活を謳歌した藤井氏。今でもつながっている友人がおり、「振り返ると、ネットワークを作るという考えの土台になった時期でした」と語りました。就活の時には広告やエンターテイメントビジネスに興味があったと言います。資生堂には、当時の広告がとてもかっこよく、惹かれたので面接を受けたと話しました。

1983年に入社。最初の仕事は北九州や長岡の支社での営業でした。現場での仕事は充分経験した頃、自分のキャリアについて考えるように。本社での勤務や海外勤務に興味が出て、海外派遣制度や別部門へのジョブチャレンジ制度へ応募などを積極的に行ったといいます。結局その時に海外へ行くことは叶わなかったものの、「アクションを取ったことで色んな人が自分を見てくれてつながりができ、その後本社のマーケティング部門へ行くことができました」と経験を語りました。

憧れのフランス駐在!異文化に「浸る」こと

海外への憧れは残っていたものの、本社勤務はとにかく多忙。
海外勤務の夢は半ばあきらめていたとき、突然フランスへ異動の辞令が来ました。
ヨーロッパの薬事法規制に対応したり、子会社のフランス、イタリア、ドイツなどと本社の商品・マーケティング戦略について意見交換したり、どう売上や知名度を拡大するかを考える日々でした。加えて、フランスに設立した子会社の社長まで任されましたが、結果的に不採算事業からの撤退ということで会社清算を担当。最後の1年間は弁護士と打合わせ、取引先との契約打切り商談、従業員の解雇などつらい日々でしたが、後々この経験が活かせることになったと話しました。

憧れの海外生活でしたが、英語もフランス語もほぼできないまま始まったといいます。英語は大量の書類を読み慣れていき、ヨーロッパ人とも英語でコミュニケーション。英語だけに集中し、フランス語は結局できないままと話しました。

海外旅行と海外生活の違いは異文化に「触れる」ことと「浸る」ことだと言います。異文化のなかに入って生活することで行動の背景も理解できるようになっていきます。
「例えばフランスでは日照時間が短いため、晴れていれば冬でもテラス席に座ります。日焼け止めよりも焼けたい願望が強かった」と話し、身近な行動からも日本との違いを感じたと話しました。「それが分かることでコミュニケーションの内容や仕方も変わってくる」と言います。
また、「日本人なら、歴史や文化などもっと日本のことを勉強しておくべきだったと思いました」と反省点も語りました。

ついに海外支社の社長へ

その後本社へ戻り国際マーケティング部のグループリーダーを任されます。ヨーロッパやアジア、アメリカなど各現地の子会社と連携を取るなかで、海外販売会社のトップに興味を持つようになりました。海外の会社の社長という立場からは何が見えるのか、自分なら何が出来るのか考えるようになり、国際事業の役員へ思い切って直訴します。念願叶い、カナダの子会社の社長に就任しました。

赴任してすぐ取り組んだのは社長として何を考えているのか、何を目指しているのかビジョンを従業員にシェアすることでした。「製品ではなく夢を売る」というスローガンを共有し、次のステージを目指しトロントやバンクーバーなど大都市で大々的なプロモーションを展開し、売上拡大を図りました。また、SDGsの先駆けとなるCSR活動への取組や、東日本大震災の写真展をカナダで行うなどの活動も積極的に行いました。英語も再度学びなおし、週2回家庭教師に文法と会話を習ったり、初めてTOEICを受験しました。

社長を経験し、ポジションの難しさを改めて痛感したと言います。
日本と違い海外では部下の責任と権限が明快であるため、一度部下に業務を託したら、部下の責任と権限のもとで業務を遂行しており、ある程度の期間をみないと進捗状況を把握することができず、フラストレーションが溜まることもありました。しかし何かがあればすべて自分が責任を負うという重責もあります。一方で提案次第では会社全体を動かせるパワーがあることも実感。「日本では経験できないことができ、非常に楽しかったです」と話しました。

「凡事徹底」と「最大の挑戦」を

57歳のとき「もうこの会社ではやりきった」という思いが出てきます。まだ貢献できる会社やワクワクできる仕事があるはずだという考えが湧き出て、転職を決意。縁があって化粧品OEMメーカーの株式会社タイキに入社しました。現在も自社ブランドの開発・マーケティング・販売や取引先のPB開発に携わっています。

最後に学生たちへ、人が真似できないほど物事を一生懸命にやること、挑戦することの大切さを伝えました。
「やり方を変えれば結果も変わってきますし、チャンスもでてきます。そのチャンスに向かってどれだけ高くジャンプできるか、出会いを大切にしながらぜひチャレンジしてください」とメッセージを伝えました。

ネットワークを作り好奇心を持って

講演が終わると、学生から質問が飛び交いました。
「自分から主体的にキャリアアップしていたように感じましたが、そのモチベーションは何ですか」という質問には、藤井氏は「新しいこと、面白いことにチャレンジしたい、次は何が出来るかという好奇心が根底にありました」と回答。
これからオーストラリアにワーキングホリデーに行くという学生には、今の会社でも資生堂時代のつながりが活きていることを伝え、「海外に行ったら向こうの人とネットワークを作っておきましょう。いつか思いがけないところでつながるかもしれません」と、アドバイスされました。

最後には藤井氏から化粧品の試供品が学生たちにプレゼントされ、和やかな雰囲気で写真撮影が行われました。学生たちにとって海外で活躍するための前向きな力を学ぶ、貴重な講演となりました。

担当教員からのメッセージ

今から約30年前に、同じ職場でお目にかかった藤井さん、その頃の仕事は国内のブランドマーケティングでした。その後、藤井さんは海外中心のお仕事に、私は労働組合と人事、全く畑は別になりましたが、ブランドマーケッター時代に苦楽を共にしたことが、今でも藤井さんとのご縁を繋いでくれているわけです。私の印象は、仕事ぶりも身のこなしも、“かっこいい人”、今でも化粧品業界で活躍されている姿は、素晴らしいと思います。毎年のご支援に心から感謝申し上げます。

2023年6月15日

ファーストペンギンになろう!「キャリアデザイン」の授業で元日経新聞の記者が講演を行い失敗を恐れず行動する大切さを話されました。

5月9日に3年生対象の共通科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、元株式会社日本経済新聞社(以下、日経新聞)の大村泰氏が招かれ講演が行われました。大村氏は在職中の多くのインタビューの中から学生たちへ伝えたい名言を集めてきてくださいました。講演の中でこれからの時代の情報の扱い方や、失敗を恐れず行動をしていくことの大切さを語られました。

深澤教授とは部活の友人

大村氏は、深澤教授の高校時代の同級生。二人は野球部で、共に白球を追った仲です。
大村氏は日本経済新聞社で数々の業務に就かれた後、日経メディアマーケティングの代表取締役社長を務められ、2023年3月に日経を退職したばかり。退職を機に、第二のキャリアデザインを考えているところと言います。
また、学生の前で講演をされるのは今回が初めて。「今日が第二のキャリアのデビュー戦です」と講演を始められました。

大村氏の子どもの頃の夢は小説家。書く仕事がしたくて新聞記者を目指し、日経新聞に入社しました。最初は記者ではなく記事の編集をする整理部に配属になりました。入社後は失敗と挫折の連続だったと言います。しかし最後は先輩が助けてくれたと感慨深く話されました。

「今日、新聞を読んだひとはいますか」大村氏の問いかけに手を挙げた学生はゼロ。学生たちは無料のニュースサイトやテレビ、SNSなどから情報を得ているという回答に。若い世代が新聞を読む機会が減っているのが新聞業界の課題です。

若者たちに贈る「名言集」

今回大村氏は、学生たちに伝えたい言葉として、インタビューした多くの成功者の言葉のなかから選りすぐりの「名言集」を持ってきてくださいました。最初は「ファーストペンギン」。財界の重鎮、小林喜光氏の言葉です。ファーストペンギンとは、群れの中から真っ先に海に飛び込んでいくペンギンのこと。転じて、勇気と主体性を持って行動する先導者のことを意味します。「企業文化もファーストペンギンが出ると変わっていく」と大村氏は語りました。

「ラストマン」というのは最終責任者という意味で、最後の責任を取るリーダーのこと。どんな活動でもリーダーは必要です。そのなかで、ただ選ばれるのではなく自分で考え行動し責任を取れるリーダーになってほしいと大村氏は話しました。

中外製薬会長の言葉は「失敗を恐れるな」でした。「日本は失敗に厳しいですが、アメリカでは失敗すればヒーローになる」と言い、チャレンジ精神の大事さを伝えました。モルガン・スタンレー証券のアドバイザー、ロバート・フェルドマンの言葉は「いでよ異端児」。「チームワークを大切にするなかで、挑戦のためには異端児もいなくてはいけない」と話しました。

メディアをどう使い分けるか

ニュースの影響力の大きさを示す事件として、大村氏は2016年のアメリカ大統領選について触れました。当時世論はクリントン氏の圧倒的有利と思われていましたが、結果はトランプ氏の勝利。これには共和党寄りのメディアFOXTVの報道が大きく寄与していると言われています。また、AIはSNSなど含めビッグデータの解析からトランプ氏勝利を予想していたと言います。

これからの時代、情報をどう扱うかは大きな問題です。
そこで大村氏は「上手にメディアを使い分けることが大切」と言います。例えば物事について詳しく知りたいとき、ネットニュースだけではなく新聞がどう書いているかを読むことを勧めました。新聞各社がそれぞれどのように報じているか、それは本当なのかを疑う姿勢を持つことで「自分なりの立ち位置というのが分かるようになります」と話します。また、1対1の対話力を磨くことも大切。「名言は1対1で話しているときに出てきます」と話しました。

AIとどう付き合っていく?

現在話題の「chatGPT」に関しても話されました。「すごく大事な問題で、いろいろ考えなくてはいけない」と語りました。「インターネットのように、世の中を変えてきたものというのは必ず浸透します。間違いなく、10年後や20年後の将来には当たり前の技術になっている」と言います。AIに仕事が奪われるという未来予測もある中で、では何に気を付けていけばいいのでしょうか。

AIにできないことは、判断することや新しく何かを生み出すことです。「これからは自分たちに何が出来るかを考えていく時代になるでしょう」と、自分で考え判断する大切さを伝えました。

失敗を失敗のままにしない

講演後、学生たちはグループディスカッションを経て大村氏への質疑応答が行われました。「名言の中で失敗を恐れるなとあったが、どうしても失敗を怖がってしまう。どうしたら一歩進めますか」という質問には「失敗するかもと立ちすくむのではなく、失敗した場合のリスクをどう乗り越えていけるか考えることだと思います。経験者に聞いたり調べたり、失敗を失敗のままにせず、どう立ち上がるかだと思います」と回答しました。

「情報をどのように取捨選択すればいいでしょうか」という質問には、「新聞を読むのが良いと思います。新聞は記者が現場に行き、一次情報にあたって取材しています。裏付けが取れた情報しか載りません」と、新聞の情報の正確性を伝えました。また「週に1回でも新聞の1面だけでも読むと、今何が起こっているかが分かる」と、新聞を利用することを勧めていました。

最後に大村氏は「今回の授業で一番伝えたかった言葉はファーストペンギンです」と話しました。「最初に手を挙げて発言することや、一番に教室に入って準備することもそう」と、先陣を切る勇気を持つことの重要さを再度伝えました。

学生たちにとっても、失敗しても挑戦することの大切さを学んだ講演となりました。

担当教員からのメッセージ

大村氏と初めて会ったのは高校1年の時、以来約半世紀が経とうとしています。しかし、今でも時々会う大切な仲間の一人、やはり社会で大切なのは人脈であることを改めて感じています。大村さんが会社を離れると聞いてお目にかかった時に、私の夢は大学生に自分の経験や生き様を伝えることだと聞き、今回の舞台をご用意させていただきました。豊かな経験に基づく珠玉の言葉の数々に、大村さんのキャリアの年輪の厚さを感じました。