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2025年5月16日

Life Ship株式会社の田形正広氏が「キャリアデザイン」の授業で今年度も講演を行いました。

2025年度の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は「今、社会や企業が求める人材とは」をテーマに、キャリア形成を学びます。企業のトップなどゲストも多数招き、リアリティがあると評判の授業。2025年5月13日(火)のゲストは、Life Ship株式会社の田形正広氏。深澤教授との縁により実践女子大学で講演を行うのは10回目となります。世界にただ一つのコンテンツである「ワンピースキャリア論」に、学生たちも興味津々で耳を傾けていました。

漫画「ワンピース」でキャリアを学ぶ?

さまざまな経歴をお持ちな田形氏。大好きな漫画が「ワンピース」です。ワンピースは週刊少年ジャンプで連載中の、世界的にも人気の少年漫画。主人公のルフィを中心に海賊たちが大冒険を繰り広げる物語です。田形氏は「ワンピースには人生で起こることのほぼすべてが詰まっている」と言います。仕事のことやリーダーシップについても描かれているというのです。キャリアと漫画がどう結び付くのか学生たちも興味津々です。

講演は田形氏の自己紹介とキャリアの説明からスタート。経歴について説明があったのち、ライフログのグラフに沿って当時の経験を振り返りながら話が進みます。新卒入社の会社を半年でやめた話からはじまり、転職によって良い方向に進んだこと、任された大きな仕事に失敗したことなど、どのような状況に何を感じていたか語られました。

伝えたいことは「海賊になろう」?!

続いて、漫画「ワンピース」のあらすじと大まかなストーリーの解説があり、「伝えたいメッセージは二つだけ」とキャリア論の本題へ進んでいきます。

メッセージの一つ目は「人生は冒険だ!」。「就職はゴールではなく、大冒険の始まりであり、常に挑戦が求められる」「嫌なことや思い通りにいかないことがたくさん出てくるが、それが自分を強くしてくれる」と、自分の過去の経験とからめながら説明。「冒険には危険や勇気が必要な場面が伴うが、それを乗り越えた先には感動や成長が待っている」と述べました。「忘れがちですが自分の人生の主役は自分なんです。自分の人生に遠慮は無用」と田形氏。日本では自分が主役であることを忘れがちな制度や仕組みの中に生きているため、改めてこのことを伝えたいと述べました。

二つ目のメッセージは「海賊になろう!」です。海賊になるとはどういうことでしょうか。これはワンピースに出てくる海賊たちのように、楽しく、自由に、一生懸命に「今」を生きようということ。田形氏は、まず自由とは「何を信じてどの道を進むか自分で決めるということ」と定義しました。自由には責任が伴います。何をしてもいいですが、それを人のせいにはできません。何をどう行動するのか一つずつ自分で決断する必要があります。「大学生時代に自由は社会に出ることによって失われると思っていた」と話しながらも、「責任を負う部分が多くなっているが、それに伴い自由な部分も増え、より自由になっている」と述べました。

自由に必要なもの

自由の定義である「自分で決めること」に必要なものとして「自分の人生を生きる覚悟・判断基準(価値観)・判断材料(情報)」の三点をのべました。とくに「判断基準」と「判断材料」について、「情報だけ取ると溺れてしまうので、自分の価値観というものを同時に大事にする」とアドバイス。続いて、海賊の条件の一つにあがっていた「一生懸命」の定義に触れます。「謙遜も含め私このくらいの生き方で一生懸命かな?なんて思われる方も多いと思います。 なので、私が作った定義をまず言いますので、それに当てはまる方は、自分で自分は一生懸命なんだって認めていいですよ」と話し、その条件を「行動を起こしていること」「悩んだり迷ったりしていること」「失敗したり断られたりしていること」の三点と述べました。成功したかどうかは問題ではなく、まず行動できていることが一生懸命「今」を生きている証拠であると続けました。

クイズワーク

ここで田形氏から学生に向けて「海賊の反対は?」と質問が投げかけられました。グループで話し合う学生たち。「囚人」や「ニート」など様々な答えが出ましたが、田形氏の出した正解は「幽霊」。予想外ながらもどこか納得できる正解にうなずく学生。幽霊は過去や未来にとらわれ「今」を生きていない状態であると説明し、海賊と離れているイメージを認識することで軌道修正できると述べ、「今を一生懸命生きる」大切さを重ねて強調しました。

冒険と宝物(ワンピース)

冒険の先にある宝物(ワンピース)はどこにあるのかという問いに対し、仲間、愛情、仕事であると答え、どれか1つでも手に入れることができれば、ワンピースを見つけたのと同じくらい幸せであると述べました。また、仕事のワンピースとは?という問いに対しては「天職」とこたえ、「自分にしかできない仕事であり、昨年ついに天職を見つけ、現在それに向かって邁進している」と続けました。さらに、働くということは人や社会の役に立つことであり、より役に立てるように成長を重ねることで高い景色を見ることができると述べました。

冒険を楽しむために

宝物の次は、冒険を楽しむための武器と力として悪魔の実と覇気について説明。ワンピースの世界では、能力者と呼ばれる特殊な力を持つキャラクターが登場し、能力は「悪魔の実」という特別な果物を食べると身に付きます。しかし代わりに海賊ながらカナヅチになってしまうという犠牲を伴い、一長一短の力であることが示されました。悪魔の実を現実で例えると、これは時間を犠牲にして身に付ける専門的な技術や資格と説明し、漫画では悪魔の実を食べていないキャラクターも多数活躍していることを提示しながら「あると大きな力を発揮するが必ずしもマストではない」とも助言しました。

続いて覇気について説明。覇気とは、時間を犠牲にせずに得られる力であり、「見聞色」「武装色」「覇王色」の3種類が存在し、それぞれを「自己客観力と他者共感力」「自己コントロール力」「根拠のない自信」と解説します。前者二つは「相手の立場になって考える」「挨拶をする」など日常動作の中で訓練可能であることを提示。最後の「覇王色」の覇気についてはあってもなくてもいいとし、「自分に対する信頼」であると述べました。

「つながり」のキャリア論

今回の講義を通して田形氏が伝えたかったことは「自分の行動や経験と人の縁は繋がっていく」ことだと田形氏は実感を込めて言います。「どこでなにがどう繋がるかは分からない。ただ、勇気を出して行動すると願いは叶っていきます」。例として田形氏と深澤教授との繋がりが挙げられました。キャリアコンサルタントが大勢集まる会で深澤先生が講演をした際に、名刺交換をし、深澤教授の著作の感想を思いきってメールで送ったことから縁ができ、夢だった大学での講義が実現したと語りました。 「自信満々に見えるかも知れないけど軸がブレることもあるんです」と飾らない言葉で真摯に学生に語る田形氏。「自分の人生を生きるために行動しよう」としたことが今に繋がっていると強調しました。

担当教員からのメッセージ

早いもので10回目の特別講座「ワンピースキャリア論」が展開されました。
田形さんとは、キャリアコンサルタント仲間としてお会いしたことがきっかけで
この授業に、毎年駆けつけて下さいます。
仕事にも、家庭にも、とにかくポジティブ思考を貫かれている田形さんから、
私自身も、多くのことを学ばせていただきました。
ワンピースという作品を読んでいる人も、読んだことがない人も、あっという間に
この作品の世界に引き込んでいただき、キャリアデザインのために大切な考え方や
キーワードを沢山伝えて下さること、とても意義ある授業となっています。

先行き不透明に時代に大航海に出かける今の学生には、人との出会い、すなわち
“ご縁”を大切に、海賊として人生を謳歌として欲しいと願うばかりです。
この場を借りて、田形様に心からの感謝をお伝えしたいと思います。

2025年5月8日

「女性とキャリア形成」の授業で実践女子学園理事長の木島葉子氏からこれまでのキャリアについてお話を伺いました。

本学卒業生を含む企業トップの方々をお招きし、ご自身のキャリアや仕事で人生を充実させるために必要なことを語っていただく全6回のリレー講座が今年度もスタートしました。最初の第一回目は、実践女子学園理事長の木島葉子氏です。 木島氏は講座で、アフラックでの39年間のキャリア、そして現在の学園理事長としての活動について語られました。特に、危機対応や日本法人化プロジェクトの経験で得たリーダーシップについて、働き方改革などに代表される組織の改革におけるダイバーシティ推進の重要性など、管理職として実際に経験を重ねられてきたからこそわかるお話が展開されました。進行は担当のグループの学生たちが行うなど、学生主体の組み立てとなっており、講座後も積極的に質疑応答が行われました。

学生生活とキャリアの歩みのスタート

はじめに、自己紹介として大学時代についてお話がありました。木島氏は実践女子大学の卒業生。学生時代はスキーに熱中し、花屋でのアルバイトを通じてフラワーアレンジメントの資格を取得するなど、興味を持ったことには徹底的に取り組む姿勢を持っていたと振り返ります。「手書きの卒業論文の清書が何よりきつかった」と、当時を振り返りながら語りました。

続いてこのリレー講座について触れ、ゲストとして招かれている方々を「もし皆さんが社会に出て講演会に参加しようと思ったら、参加費がかかるようなすごい人たち」と紹介しつつ、「すごい人の講演を聞くという気持ちは捨てて、この人の真似できるところはどこだろうか、どんなことを考えているんだろうかということを探しながら、質問したり事前課題に取り組んでほしい」と話しました。

今回進行を担当した学生

就職活動では、女子大生の就職が厳しかった時代にアフラックに入社し、管理職、役員を経て39年間勤務されました。アフラックでは、保険契約管理、コールセンター、コンプライアンス、日本法人化対応、ダイバーシティ推進など、多岐にわたる業務を経験されました。入社後からのキャリアについて順を追って説明する木島氏。ひとつひとつのステップで得た経験や知見を話します。

象徴的なエピソード

「自分のキャリアの話をするときは避けて通れない」と紹介されたことは、東日本大震災時の危機対応でした。具体的な対応業務に、お客様対応、安否確認、保険料支払いの猶予など、広範囲な対応が必要であったことを説明されました。震災当日は4.5時間かけて帰宅したこと、計画停電の影響を受けて業務が滞ってしまったことなど、通常通りにいかなかった当時の苦労を話します。

その中で「特に大変だった」と触れたことは、お客様の安否確認など、各種対応を実施するにあたり社長の事前承認を得ることでした。単にやることを説明するだけでなく、判断してもらうための情報を合わせてもっていかないと判断してもらえないということに気づかず、何度もやり直しに。最終的には20万人の方の安否確認は一年の月日をかけて終了させましたが、「この経験から、物事の進め方を学ぶことができました」と振り返りました。また、東日本大震災の前後にも大きな危機対応を経験したことに触れ、「はじめは不安が大きかったけど、経験を重ねることで自信がつきました」と話を結びました。

続いて、日本法人化プロジェクトにおいて、チームの力でプロジェクトを成功に導いた経験を共有されました。

プロジェクトの内容は、アメリカの保険会社の日本支店を日本の株式会社にするというもの。取り扱う内容がこれまで触れてきた業務とは全く違う専門分野外で「当時の社長からリーダーを任された際思わず『本当ですか』と聞いてしまうほど衝撃的だった」と話します。「仕事でつかえる英語力がないのに、アメリカとの電話会議が朝7時から始まり、英語でのやり取りが続くという大変なもの」と続け、困難な課題に対して「英語ができる人、プロジェクトマネジメントの経験がある人、税務や法務に詳しい人など、社内の人材を集めてチームを作り、関係者と対話を重ね、課題を一つ一つ解決していきました」と語り、リーダーシップを発揮した経験を話しました。

ダイバーシティ・インクルージョン推進

さらに、アフラックが経営戦略として掲げているダイバーシティ&インクルージョン推進についてもお話がありました。企業がダイバーシティを推進する理由として社会や顧客ニーズが多様化していることをあげ、対応する人材も多様性が求められていることを提示されました。「能力を最大限に発揮できる環境を整え、意思決定の場で多様な意見を聞けるようにする必要がある」と解説。

木島氏がダイバーシティ推進を担当されていたアフラックでは、「女性が比較的多い会社でしたが、上に行けば行くほど女性の割合が減っていくという課題があり、ライン長ポスト(部下がいる管理職)の女性割合を2024年末までに30%以上にすることを目標に掲げています」と実際に行われているダイバーシティ推進について説明。同時に「ダイバーシティ&インクルージョン推進は、変革案件のドライバーになっています」と語り、「働き方改革も、ダイバーシティ推進と一緒にやったことで、長時間労働が激減しました。また、DXやアジャイル型の働き方も導入しやすくなりました」と、変革を進める推進ドライバーとしての役割もあると話しました。

講義を聞く学生の様子

理事長就任

理事長就任の前置きとして、キャリアプランを「30歳の頃から、60歳ぐらいまではアフラックでの仕事を続けるものの、それ以降は家族との時間を増やしたいと考えていました」とお話されました。実践女子学園との再会は「120周年のイベントでお声がけいただいたのがきっかけ」と語ります。その後、理事に就任。さらにその数年後に理事長へのオファーがあり、それ自体に驚くとともに、抱いていたキャリアプランとのタイミングの一致に驚いたといいます。

理事長就任の決め手となったことは「女性が社会を変える、世界を変える」という建学の精神。「120周年のイベントで学校に来て、建学の精神を目にしたときに衝撃を受け、女性活躍推進の最終形態だと思いました。下田先生が100年以上前に考えられたことを言葉にしたもので、そんな人が創立した学校で働けば、少しでも女性の働きやすさという点で変えていけるのではないかと思いました」と決断の決め手となった出来事と、女性が働きやすい環境を整備するために貢献したいという想いを紹介していただきました。

最後に学生の皆さんに伝えたいことを「実践すること」「チームで取り組むこと」「主体的に行動すること」の3つのポイントをあげてお話しされました。それぞれ「気になったことがあれば、とにかく手をつけてみる。そういう習慣を学生のうちに身につけると、社会に出て仕事が忙しくなっても、いろんなことにチャレンジできるようになります」「1人でやることには限界がありますが、チームの成果は無限大です。チームで取り組むことを実行するためには、公私問わず相談できる人、話ができる人をたくさん持っておくことが大切。友達や家族、同僚など、様々な人に相談できる環境を作っておくといいと思います」「人に頼るべきところは頼りつつ、自分がどうしたいのかを自分で決めて行動することが大切。誰かが声をかけてくれるのを待つのではなく、自分から声をかけて、一緒にやってくれないかとお願いすることが、主体性だと思う」と、具体的かつ前向きなアドバイス。学園の後輩たちにエールを送られました。

担当教員からのメッセージ

「女性とキャリア形成」の授業がスタートしました。
6人のトップオブトップを迎えてのキャリア科目、今年は55名の学生とともに展開していきます。

最初のゲストは、本学園の木島理事長のお話しでした。
理事長は、前職時代には企業トップとして、昨年からは学園のトップとしてお話しを伺っています。学生にとっては、大学の先輩でもあり、いわばこの授業の基調講演という位置付けでした。主体性溢れる学生に向けて、大変貴重なご示唆をいただきました。

また、この授業の特徴は、錚々たるゲストの皆さんからのメッセージをお聞きできることは勿論ですが、それぞれのゲストに対し、プレセッション→オンタイムセッション→アフターセッションと続く一連の取り組みにポイントがあると考えています。また、ゲストがお越しになるコマについての授業進行は、学生が行います。学生自らが、授業の設計や運営に携わることにより、より主体的に授業に臨み、大きな成果を感じてもらう試みを続けています。

2024年8月5日

人とのつながりを大事に。「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会理事長が人生と企業の選択について講演を行いました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月20日に日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリアを持つ明石氏は、自身の経験を通して、人の繋がりや人生について幅広くお話されました。

企業をどう見極めるか

本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。司会の学生は「社会に出るとマナーが必要な場面が多いですが、マナーを学ぶ授業はあまりなく私自身もマナーに自信はありません」と話し、「今回の講演で何か一つでも就活や、社会人として役立つものを身に付けたいと思います」と、明石氏にマイクを渡しました。

明石氏も「私が学生のときは、キャリアやマナー教育はなかった」と話し、この授業が貴重な内容であることを強調され、これから就職活動が待っている学生たちに向けて、「就職は人生のターニングポイント」と話し始められました。
明石氏は45年前に日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社されました。しかしその少し前は「結婚したらCA職をやめなければならない時代もあったそうです」と話します。
また、明石氏が就活をした時は、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職活動に苦戦したそうです。最近ではコロナで就職が厳しかった時があったように、「就職活動は、世の中の経済状況に影響されることが多いんです」と明石氏。

今、社会は大きく変わっています。その上で、今後どのような企業が発展していくのかなどを見極めて、企業選びをしてほしいと話します。
また、学生の私たちにとっては知名度がなくても優良な企業があることや、女性活躍を推奨している企業などの調べ方なども紹介してくださいました。

自分はどんなキャリア志向だろう?

「今はいつでもキャリアチェンジできる時代です」と明石氏。転職のハードルは低くなったのは良いこととしつつも、「スタートはやっぱり大事」と強調されました。
明石氏自身も最初に就職した企業がJALで良かったと話しました。
「しっかり教育をする会社だったことが、きっと今につながっていると思います」と言います。

とはいえ「これからキャリアを考えると迷うことが多いですよね」と明石氏。
企業の数は多く、どういう会社が自分に合っているんだろう、と考えるとき、少しでも自分のことを知っているとある程度絞り込みやすいと話しました。
そのひとつとして、自分のキャリア志向を確認することが大事と紹介。
自分は、「チャレンジ志向型」なのか、人と人を結び付ける「プロデューサー型」か、一つのスキルを突き詰めてやっていきたい「専門職型」なのかなどなど。
「仕事も大事だけれど、家庭もしっかり大事にして働きたい人ももちろんいらっしゃるでしょう。自分の仕事に対する志向を知ったうえで、あなたにとっていい会社を見つけましょう」と話しました。

また、すぐにやりたい仕事ややりがいのある仕事ができるわけではないということも忠告。
つらい仕事や好きではない仕事をやらなくてはいけないこともありますが、「逃げない、折れない、継続することが大事」で、渡辺和子氏の「置かれた場所で咲きなさい」という本を紹介されて、まずは与えられた仕事をしっかりやってこそ自己成長に繋がると伝えました。

すべては人で決まる

「会社とは人の集団です」と明石氏は言い、人との関係を大切にすることを伝えました。
「チャンスをくれるのもあなたを評価するのも、相手や周囲の人」と話し、人から好かれ、人としての好感度を高めるポイントを話されました。
その秘訣は「明・元・素」。明るく、元気で、素直なことです。

また「主体的な思考をもつ」ことの大切さも伝えられました。
「なんでもマニュアルに基づいて答えを教えてもらいたいと思う人が多いようですが、正解は1つとは限りません」と言います。
そのためには、何が本質なのか、多角的に物事を見ることが大切だと語りました。
「マナーも時代とともに変わっています。しかしその本質は変わらないんですよ」と明石氏。
マナーの本質は、人と良い関係を築くためにどうしたらいいかを考えること。そのための配慮や心遣いがマナーです。
自分自身が大切にしていることは何なんだろうか、相手はどうして欲しいのだろうか、という判断の基準を持つことで惑わされないようになると話しました。

「みなさんは20歳前後で、結構生きてきた感じがしているかもしれないけれど、皆さんの人生はこれからです」と明石氏。
時間をどう過ごし、人とどう関わっていくかで、人生の輝きが決まると言い、「先が決まっていないという事は、未来は可能性に満ちて開けていると希望を持ってほしい」と講演を結びました。

目の前の仕事に一生懸命に

講演後は質疑応答の時間が設けられました。
学生から「時間の使い方で意識していることは?」という質問に対して、「集中すること。なにかに一生懸命になっていると時間が早く感じられるでしょう。そんな風に何事にも情熱を持って取り組んでみると良いと思います」と回答されました。
「明石氏はどんな基準で仕事をされていますか」という質問には
「一番大事にしているのは「信頼」。信頼を築くのは時間がかかるし大変。しかし頼られることは嬉しいし、信頼してもらえるかどうかが人として大切な基準になります」と答えました。

学生たちは「自分に合った企業をどう選ぶか」という、就職活動に向かう上で大きなヒントを得た講演になりました。

担当教員よりメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様に今年もご登壇いただきました。多くのご経験から導き出された明石さんからのメッセージの中に、チャンスをくれるのも評価してくれるのも周囲の人であり、そのためには、好感度プラス「明・元・素」、すなわち明るく、元気で、素直であるというお言葉が印象的でした。この場を借りて、明石様に心から感謝申し上げます。

2024年7月29日

ポジティブ思考で人生を輝かせる!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂執行役員の関根近子氏による講演が行われました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月4日に元資生堂執行役員常務の関根近子氏をお呼びしての特別講義が行われました。「仕事もプライベートも輝いて生きる」をテーマに、関根氏がどう壁を乗り越え、キャリアを形成していったかを語ってくださいました。学生たちにとって自己成長につながる多くのアイデアやヒントが盛り込まれた講演となりました。

輝いて生きるための指針とは

この授業では学生が司会進行を担当します。担当の学生に紹介された関根氏は「今日は美しく輝く女性になるためのヒントも話していきます」と笑顔で学生たちに語り始めました。

はじめに伝えたのは3つの仕事観。
「Job」「Career」「Calling」という言葉です。「Job」は、お金を稼ぐ手段としての仕事のこと。
「Career」は自分も成長していく仕事、「Calling」はやりがいがあり、することが喜びである仕事です。
「私も最初は、仕事はお金を得るための手段としか考えてなかったのですが、仕事を通してこんなことを実現したいという気持ちの変化があり、今はやりがいのある仕事になっています」と、自身の仕事への意識が変わった経緯を話されました。

「売らない」セールスで自分が変わった

大学進学を志していた高校時代、父親が事故に遭い、関根氏は家庭を支えるため就職を選択。
とにかくお給料の良いところ、と選んだのが資生堂でした。まさにお金を稼ぐ手段としての「Job」だったと言います。入社当時の仕事は、スーパーなどに設けられた特設会場で通りかかった人に化粧品を紹介し販売する、いわゆるキャッチセールス。
ノルマはきつく、客にも迷惑がられ、自分の仕事に誇りが持てなくなった関根氏は、先輩に辞めたいと相談します。

そこで言われたのが「辞めるなら、売らなくていい」という言葉。
その代わり、客一人ひとりに合わせ、プロとしてメイクの仕方を教えることをアドバイスされました。そこで言われたのが「私たちの仕事は単に化粧品というモノを売ることではなく、お客様の魅力を引き出すことなのよ」美容のプロとしての知識をお客さまのために使うことの大切さを気付かされました。
瞬時にその人に合わせたメイクを、自分の知識と技術のなかから選んで伝えること。そのことを意識して接客するようになると、徐々に売り上げにつながっていきました。
さらに客から「教えてくれてありがとう」と感謝されるように。
「もっとありがとうと言われたいと思うようになりました」と語りました。

この経験から関根氏は「それまで自分を評価するのは上司だと思っていたのですが、自分を評価するのはお客様」と意識が変わります。
そこから礼儀作法や滑舌、お礼状を書くためのペン字などなど、お客様のため自分に足りないものを自ら学んでいったと話します。
「環境はまったく変わってないのに、仕事に行くのが楽しくなった。不思議ですね」と意識を変えることの大切さを伝えました。

自分に自信を持つことの大切さ

のちに国際事業部に異動になった関根氏は、自己肯定感を高めるように意識するようになったと話します。当時の上司はドイツ人。
英語はそれほど得意でなく、原稿にルビを振り必死で英語スピーチをしたこともあったそう。
なぜ自分がこの部署なのかと上司に尋ねると「大事なのは語学力じゃない。自分の意見をはっきり言うというところがいいんだ」と言われたのです。
物おじせずなんでも話すことがグローバルな人材に必要なことだと教えられ、自信を持つことの大事さに気付いたと言います。
現状、出世するのは男性が多いのが現実。しっかり競争意識を持ち自己アピールできる女性になってほしいと伝えました。

「皆さんも自分に自信を持ってください」と語られました。

ポジティブ思考で困難に立ち向かう

自己肯定感を高めるために大事なのが「ポジティブ思考」だと関根氏は言います。
ただ、ネガティブな思考がだめだということではないと話しました。
「私も愚痴や不満を言っていた時期がある。ポジティブ思考とは、嫌なものは見ないということではありません。物事の見方や思考を変えてみることを意識してみることです」と語ります。
ポジティブとは、辛いことや課題があっても希望や解決策を探そうとする強い精神のこと。
「愚痴を言ったからって変わらない。じゃあ現実を受け止めて、自分がどう気持ちを切り替えるかが大事」と関根氏。
「自分の人生は自分が作るんです。過去と他人は変えられないが未来と自分は変えられる」と力強く語りかけました。

最後に関根氏は「歩いた後に一輪の花を咲かせたい」という托鉢者の言葉を紹介し「皆さんもどうぞ、これからの長い人生でいろんな花を咲かせていただければ」と講演を締めくくりました。

悔しい気持ちをポジティブに変換するコツは?

講演の後は質疑応答の時間となりました。
「様々なことに挑戦しすぎて中途半端になってしまうときは、一つに絞るべきでしょうか」という質問には「挑戦しなかったら分からなかった出会いもある。最初から一つに絞らないでいいと思います。そのなかで深めていきたいものをみつけていけるでしょう」と回答しました。
「人のいいところを真似したいと思う前に、自分と比較し悔しいと思ってしまうがどのようにポジティブに変換すればいいでしょうか」という質問には
「負けず嫌いなのはいいと思う。悔しいと思わせられたということはどういうことか考えてみましょう。自分もできるはずと思っているからかも」と回答されました。

キャリア形成のヒントになる多くの視点やアイデアを教えてくださり、学生たちの心にも多くの言葉が響いた講演となりました。

担当教員のメッセージ

本授業の最後のゲストとしてお迎えいたしました。毎年お会いするたびに、生き生きさが増していく関根さん、ご自身のお姿から、すでにポジティブさを感じますが、今年のお話しも、ポジティブ思考に繋がるものばかりでした。しかし、関根さんが語るポジティブ思考とは、単に「ものごとを良い方に考える」ということではなく、辛く、苦しい状況のなかでも希望や解決策の光を探そうとする思考とその光を信じて進んでいくという強い精神のことであります。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。関根様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

2024年7月18日

ハピネスの循環で世界一のホスピタリティを!「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。 

6月6日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。夢の世界を運営するスタッフのホスピタリティの高さはどう養われているのか、その秘訣は「ハピネスの循環」にあると語ってくださいました。

開園当初はキャストとして活躍

この日はまさに東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープン当日。記念すべき日に講演いただくことになりました。永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
最初はアトラクションのキャスト(スタッフ)としてコスチュームを着て活躍し、その後役員になりました。

開園当初の日本はまだコンビニエンスストアが出てきたばかりの時代。
ディズニーランドも遊園地という認識が強く、飲食物を持ち込むゲスト(来園者)も多かったと言います。
「今では考えられないですが、アトラクションにバナナを持ち込んで食べてる方もいたくらい、当時の日本人もマナーは悪かったんですよ」と話し、笑顔どころか、眉間にしわを寄せてゲストに飲食物の注意をしては謝っていたと、笑いを交えて話されました。

ハピネスを届けるためにはコミュニケーションが大事

開園当初からどのようにディズニーランドが成長していったかを語られる中で、キャストのホスピタリティが上がっていったことが大きいと永嶋氏は話します。
世界に6つあるディズニーリゾートのなかで一番のホスピタリティ高さと言われるようになり、本場アメリカからも視察にくるように。
「ホスピタリティとは人間力のことだと私は思います」と永嶋氏は語りました。

「キャストが目指すべきゴール、それはゲストにハピネスをお届けすることです」と永嶋氏。
「驚かれるかもしれませんが、キャストには接客マニュアルがないんです」と話します。
キャストが心掛けていることはあいさつだと言い、「ゲストと会話をするために、まずあいさつするんです」と話します。いかにゲストとコミュニケーションを取るか、どうやってゲストを喜ばせるかをそれぞれのキャストが考えて行動します。
今では有名になった水たまりや落ち葉でディズニーキャラクターを描く「カストーディアルアート」もキャスト発案です。

永嶋氏は印象的な出来事として東日本大震災のことを話されました。
約1か月パークが閉園している間に、どのようにゲストとコミュニケーションを取るか、どうサプライズを提供するか定期的に集まってディスカッションを繰り返したと語りました。

インクルージョンを広めていくために

永嶋氏は「接客のためのマニュアルはないですが行動基準がある」と話します。
安全・礼儀正しさ・ショー・効率、の4つの基準がこれまでありましたが、「そのなかに最近インクルージョン(多様性)が入りました」と紹介しました。

しかし、オリエンタルランドも昔は男社会で、ジェンダー問題への理解も十分ではなかったという永嶋氏が役員時代、キャストのリーダー育成プログラムに手を挙げたキャストに性別違和をカミングアウトされた人がいたのですが、広報の男性役員からその人をリーダーから落とすよう指示があったと語りました。
永嶋氏はこの決定に反対し猛抗議しましたが、結局その人は落選。
翌年再度プログラムを受け、ようやく合格されました。
「ディズニーは進歩的だとイメージされていましたが、内部の状況は大きく遅れていた」と、永嶋氏は当時の苦い経験を話されました。

キャスト同士でお互いを高め合う

キャストのホスピタリティの高さの秘訣は「キャストのコミュニケーション活動」にあると永嶋氏は言います。
開園前に各アトラクション対抗のカヌーレースを行ったり、年に一度のサンクスデーで役員たちがキャストをもてなしたり。
永嶋氏が「一番効果がある報奨活動」と言うのは、キャスト同士で褒めてたたえ合うスピリットオブ東京ディズニーリゾートの取組です。
お互いにサンクスカードを送り、カードの一番多いキャストは大々的に表彰されます。

なぜそこまでキャストをねぎらうのかと言えば、「キャストに、実際に感情を持ってハピネスを体感してもらい、同じようにゲストにハピネスをお届けしてほしいからです」と永嶋氏は話しました。
ハピネスをもらったキャストはパフォーマンスが向上し、その分ゲストにさらにハピネスを提供できる、という「ハピネスの循環」が行われるのです。
「ぜひパークに遊びにきてください」と永嶋氏は講演を締めくくりました。

管理職の試験を受けたときの気持ちは?

講演後には質疑応答が行われました。
はじめに「男社会のなかで、なぜ管理職の試験を受けたのですか」という質問がありました。
永嶋氏は「差別というよりは、女性は弱いものだから守ってあげようという考えが当時はありました」と話しました。
初めて管理職の試験を受けたとき、永嶋氏は落ちてしまったのですが、自分よりもあまり仕事ができない男性が合格したのを見て「自分より仕事ができない人が上司になることが許せなかった」と笑いを交えて答えました。
また、「今までできなかった仕事にチャレンジできることは面白いことです」と管理職にチャレンジした気持ちも語りました。

「永嶋さんが思うインクルージョンを向上させるコツや考えを教えてください」という質問には、「いろんな身分、年齢の方が働けるということ。
これから定年という考えもなくなってくると思います。そういうこともひとつのインクルージョン」と回答されました。
「オリエンタルランドで働いたことで得た財産は?」という質問には「人。さまざまなつながりになったり、長い付き合いになったり、助けられています」と答えられました。

ディズニーリゾートに通底するホスピタリティの高さの秘訣に触れ、学生たちにも刺激になった講演でした。

担当教員からのメッセージ

永嶋様と初めてお会いしてから、もう20年以上になります。
いつもアグレッシブな永嶋様から色々なことを学ばせていただいています。
とりわけ確固たる信念をお持ちになり、メンバー一人ひとりのことに気を配りながら、先頭に立って組織を牽引されるリーダーシップについては、私の目標でもありました。
今回も、テーマパークのオープン当時のこと、管理職としてのご苦労など、
学生にとっては、極めて貴重な時間になったと思います。
この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

2024年7月17日

誇りを持ってキャリアを積み重ねる。「女性とキャリア形成」の授業で元日本銀行審議委員の政井貴子氏が講演を行いました。

5月16日に、大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、SBI金融経済研究所株式会社の取締役理事長である政井貴子氏をお迎えして講演が行われました。本学の卒業生でもある政井氏は、自身の経験から、学租の思いを受け継ぎ女性活躍の道を実現していく大切さについてお話くださいました。

男女差をなくすことは世界平和につながる?

この授業は学生たちが司会進行します。
学生に紹介されると、政井氏は「なぜこの授業があるのかについて、私なりに説明していきたいと思います。」と講演を始められました。

まずは「男女共同参画社会基本法」について。日本の男女差別を撤廃するおおもとです。
「もっと遡ると国連にたどり着きます」と政井氏。国連は二つの大戦を経て、戦争を二度としないために設立されました。
「戦争防止のための組織がなぜ差別撤廃に踏み込んでいるのかと言えば、過去の日本において、男性しか政治や経済などのものごとを決めていなかったことに気付いたからです」と政井氏は話します。
人類の半分は女性であり、人種もさまざま。国連は、いろんな立場の人たちが合同で話し合いをしていたら、戦争は起きなかったかもしれないという反省からできた組織なのです。
男女が平等に社会で活躍できることが、安定的な経済、そして平和につながるという考えが根底にあります。

完全な男女平等までは道半ば

日本も少しずつ法律を調え、1985年男女共同参画社会基本法を制定。
それまで男性に隠れていた女性が、各々自分が幸せだと思う、豊かだと思う生活を選べるように少しずつ変わって行ったのです。
ジェンダーギャップ指数を見ても、日本は健康と教育の分野ではほぼ男女格差のないところまできています。
「ところが、ここまで平等に育ててきておいて、経済や政治になるとまだまだ」と鋭い一言の通り、経済や政治の分野では男女平等とはいいづらい状況です。

今はあまりギャップを感じていなくても、「女子大を卒業して社会に出たとき、ひょっとしてこれは、と思うことがあるのだろうなと思います」と、政井氏は学生たちに心構えを促しました。
あるアンケート調査では、社会において『男性の方が優遇されていると思う』と回答した割合は8割。
「性差役割の思い込みギャップは若い世代では減ってきていますが、育休取っている男性同僚のことはあまり仕事をしていないように感じてしまうなど、意識が完全に変わっていない。今は過渡期です」と現状を伝えました。

外資系から公的機関まで

政井氏は本学の英文学科を卒業後、外資系の金融機関に就職。
英語を使うのではなく、英語で仕事をするのが当たり前の職場に行きたいと思い外資系に。約20年間外資系の企業で活躍してきました。

日本の慣習やビジネスでの立ち振る舞いが足らない部分と感じ、2007年に現SBI新生銀行に転職。
「当時、女性を中途採用で正当に評価してくれた会社は他になかった」と言い、前職から継続してキャリアを積み重ねられたと話しました。
2012年に役員に就任。役員になると自分が決められることの幅が広がり、会社や社会に対して一層働きかけることができる
ことを感じ、やりがいを覚えたと話しました。
その後、日本銀行の審議委員へ就任。世界に向け、日本を紹介したり政策を伝えたりする場面が増えていき、これからの日本について考えるようになったと言います。

2021年からは現職に。テレビ出演、講演の仕事も増えていきました。
「自分が出演するなんて、と思いますが長く仕事しているとそのことに詳しくなっていく。知識を共有することも大事な仕事」と話しました。

創設者の思いを引き継いで活躍して

最後に、本学の創設者・下田歌子の話題も。
当時から外国の留学生を受け入れていたことを上げ、「相当革新的なキャリアウーマン」と評します。
どうやって出資してもらって学校設立できたのか、どのように帝国婦人協会設立したのか、それがどんなに大変なことか「実際に女性として役員をやってしみじみ思う」と言い、改めてすごい人物だと知ったと話しました。

「彼女は国連ができる前に、国のことを決めるには女性も参画するべきと主張しています。男女差が相当ある時代に女性が自立することの大切さを知っていた。彼女が作った学校のもと学んでいることを誇りに思って、学租の思いを皆さんなりに実現していかれるといいなと思います」と講演を締められました。

極意は分からないことは素直に教えてもらう

授業の最後には質疑応答が行われました。
「人生を決める際に自分の軸になっている考えは?」という質問には、「モヤモヤしないかどうか。なんとなく気が進まない、すこしでも引っ掛かることがあると思ったら その直感を基準にしてみる」と回答。

次の質問は「女子大から経済界という男性が多い環境に飛び込んだとき、どのように関わっていったのか」というもの。
政井氏は「知らないことは取り繕わないこと。卒業当時は、経済も詳しくなかったので、分からないことは教えてくださいと言う質問魔だった。知らないことを隠さないで聞けることが重要」と話しました。

「女子大に入って良かったことは?」という質問もありました。
「共学だったら男子がやっているポジションも、女子大だと女子がやらなくてはいけない。共学だとどうしても女子はアシスト的になっているところも多いですが、女子大だと女子がリーダーシップを取らざるを得ない。そして学校とは失敗しても大丈夫な場所です」と回答しました。
女性として活躍するロールモデルの一人として、学生たちに多くの刺激を与えてくださった講演となりました。

担当教員からのメッセージ

本学卒業生として毎年ご登壇いただいている政井貴子様は、外資系の金融機関をご経験の後、日本銀行の政策委員会審議委員を務められた方であり、外資系、国内系、そして政府系と3つの金融機関でのキャリアを歴任されている方は、他に例をみない素晴らしいロールモデルです。
 
マクロな厳しい視点からのアドバイスもいただけた一方、仕事だけが人生ではないというご自身の経験からのお言葉は学生の心に深く届いたことと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2024年7月17日

企業は世の中を良くするためにある!「女性とキャリア形成」の授業で元スターバックスCEOによる「ミッション」についての講義が行われました。 

5月2日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業に、元スターバックス・コーヒー・ジャパン株式会社CEOの岩田松雄氏をお招きしました。現在は株式会社リーダーシップコンサルティング代表として、多くのリーダーを育成されている岩田氏。学生たちに向け自身の「ミッション」を考えるきっかけとなる講演を行っていただきました。

人はだれでも人生においての「経営者」である

本授業の進行は担当のグループ(CUBE)が行いました。
担当CUBEの学生は「アルバイト先でチームリーダーを任されており、メンバーをどうまとめるかが悩み。本日は良いリーダーになるための考えを学びたい」と話し、岩田氏を紹介しました。

岩田氏が登壇されると「リーダーに一番必要なことは、その組織のミッションを明確にしメンバーに語ることです」と講演を始められました。
ミッションは一般的には使命と訳されますが、「なんのために企業や組織が存在するのか?それがミッションです。」と語ります。
「企業といわれてもまだ実感できないと思いますが、自分たちが所属する組織、例えばサークルやアルバイト先などにおいてもミッションはとても大切です」

また、「みなさんはご自身の人生においては、間違いなく経営者です。自分で意思決定をし、その結果責任を持つという意味で、全員が人生の経営者なのです」企業経営に限らず、自身の人生についてのミッションを考えてみることを勧めました。

情報に流されないために

現代は変化の激しいVUCAの時代です。
コロナ禍やウクライナ侵攻、ガザ侵攻など現在、世界中で大きな変化や危機が起こっています。
こういった問題は「遠い世界のことではなく、自分たちにも大きな影響があります。大きな変化の時代を生き延びるためには、高い視座と視野を持ち広い視点を鍛えることが大切です。」

「特にネットの使い方については注意が必要です。ネットには情報があふれていますが、実は自分が関心のあるトピックスしか見ていません。全然視野が広がっていないのです。企業や組織に常に求められるイノベーション(革新)というのは、ほとんどの場合既知と既知を新しく組み合わせることで起きます。イノベーションを起こすためには意識的にいろんなことを見て知る必要があります。広く社会、政治、世界情勢、環境、気候など興味を持つことがとても大切です。」

「現在は情報は洪水です。放っておいても多く情報が入ってきます。次から次に入ってくる情報に対し、自分はどう反応するか、対処するかは自分自身の問題です。自分自身の視点を鍛える必要があります。」

企業の目的は利益じゃない!

岩田氏が経営に興味を持ったきっかけは某ハンバーガーショップの例だと言います。
Aの店舗は従業員が楽しそうに生き生きと働いているのに、Bの店舗はつまらなそうに仕事をしているのがとても不思議に思ったそうです。同じような商品を売っていて、働いているアルバイトの時給もほぼ同じなのに、この差はなんだろうと考えました。
そして、それが経営・マネジメントの差だと気付き、経営の勉強を志すようになったと話しました。

日産自動車株式会社に入社し、製造・購買・財務など幅広く経験し、UCLAビジネススクールで経営を学び、帰国後日本コカ・コーラ株式会社や株式会社タカラ、株式会社アトラスなどの社長や役員を歴任しました。
2005年にはイオンフォレスト(THE BODY SHOP JAPAN(以下、ザ・ボディショップ))の社長に。
この時、企業理念について共鳴されたと言います。「ザ・ボディショップ」は英国の自然派化粧品ブランド。ボディソープや香水、乳液などを販売しています。
一般的に化粧品の安全性を確認するために動物実験をしていますが、「ザ・ボディショップ」は動物実験に反対しています。女性の美のために尊い動物の命が失われるのはおかしいという考え方です。その他、環境問題や人権問題、また30年以上前からフェアトレードにも取り組んでいます。
「ザ・ボディショップ」の創立者であるアニータ・ロディックの考えが企業理念となり、企業として世の中を変えていこうとする姿勢に岩田氏は感銘を受けたと話しました。

「どうしてミッションが大切なのか?ミッションを高く掲げると、それ共鳴した人が集まり、ゴールを共有でき、同じ方向を目指す仲間ができます。企業というのは世の中を良くするためにある。企業の目的は利益の最大化を図ること、という考えは間違い。利益はあくまでも手段であり、最終的な目的は世の中をよくすること(=ミッション)です」と強調されました。

自分のミッションに合わせて就活を

自分のミッションの見つけるためには、「好きで、得意で、人のための重なりを考えることです。とても難しいことですが、まずは自分が本当に夢中になれる好きなことを探しましょう。好きなことさえ分からない人は、まず目の前のことを一所懸命行ってください。頑張っていることを見てくれている人が必ずいます。目の前の仕事を一所懸命にやることで、新しい可能性が広がります。次の仕事やステージに繋がります」

「人は事故や災害、病気などでいつ死んでもおかしくありません。私は生きているのではなく、生かされているという感覚を持っています。その生かされている理由がミッション(=使命)です。」
これから就活に向かう学生たちに「会社のミッションありきではなく、自分のミッションを達成できそうな会社を見つけて欲しい」と話しました。その後ミッションに従って行動したスターバックスのパートナーの感動的な接客の事例紹介がありました。スターバックスでは、アルバイトの一人一人までに「人々に活力を与える」というミッションが浸透しているから、日々お店でのあの素晴らしい接客があるのです。

目の前のことを一所懸命やろう

講演のあと学生たちからの質疑応答が行われました。
「自分の好きなことと得意なことが重ならない時はどちらを選ぶべき?」という質問には、「まずは好きなことから始めれば良い。その好きを深めていけば、必ず得意になっていきます。得意なことを人に教えたり、人のために活用ができ、それでお金をいただける。また苦手だと思っても、それを一所懸命やっていれば得意になることもあります。意外と自分自身の得意なものは気付いていないものです。ですから、良いことも悪いことも人からのフィードバックを謙虚に受けましょう。」と励まされました。

「ミッションが見つかってきても、ビジョン(目標や最終地点)はどうやって決めていけばいいでしょうか」という質問には
「3年先、5年先の実現可能な目標を立てていくこと。まず目の前のことをやって経験を重ねることで、自分の実現可能な範囲も見えてくる」と回答されました。

最後にCUBEの学生から感謝の言葉が述べられ、「大学生活やアルバイトも含め、目の前のことを一生懸命全力で取組み、好きなこと得意なことを見つけていきたい」と学びと感想を話しました。
学生たちにとって、自分が人生で何を成し遂げたいのかを考える大切なきっかけとなりました。

担当教員からのメッセージ

岩田様には、この科目のみならず、本学の多くの科目でご講演をいただいています。
「ミッション」については、多くの学生の中に浸透しており、他の科目での学びと
結び付ける事例も出てきております。
企業が社会で活動する意味、個人が社会で生きていく意味、まさにキャリアの本質に
迫る内容は、学生の大きな気づき、そして学びに繋がっていることを感じます。
改めて、この場を借りて、岩田様に心からお祈り申し上げたいと思います。

2024年5月28日

「女性とキャリア形成」の授業で味の素社長による「志」を持って働くことについての特別講義が行われました。

4月18日に共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で味の素株式会社(以下、味の素)社長による特別講義が行われました。学生たちにとっても調味料やレトルト食品など、身近な製品を販売している企業です。学生たちは自分の「志」を問いかけられた刺激的な機会でした。

社会課題を解決するために創設された企業

この授業では進行を教授ではなく学生が行います。
担当のグループの学生から、本日の特別講師が紹介されました。
藤江太郎氏は味の素の代表執行役社長、最高経営責任者です。日本を代表する会社の社長として第一線で活躍される藤江氏。
ご多忙の中「今日を大変楽しみにしてきた」と本学に駆けつけてくださいました。

藤江氏は最初に「味の素の商品を知っていますか」と学生たちに問いかけました。
「冷凍餃子」と答えた学生に対し「嬉しいですね。あの商品は餃子がうまく焼けないというお客様相談センターに入った声がきっかけで改良したんですよ」と全国の家庭からフライパンを送ってもらい、使い古されたフライパンでも美味しく焼けるよう研究されたというエピソードを話されました。

味の素は1909年に東京大学の教授と神奈川県の企業社長が始めた、産学共同で作られた会社です。
「当時は日本人の栄養状態が悪かったのでおいしく栄養を取れる食品を作ろうと、社会課題を解決することを目的に創設されたんです」と藤江氏。

現在は130カ国以上の国と地域で事業を展開している味の素。大きな柱のひとつはもちろん食品事業です。
「もうひとつはあまり知らないと思いますが、アミノ酸を利用した医薬品や製品開発です」と藤江氏。
半導体の基板に使われる絶縁フィルムもアミノ酸製造から派生した技術が生かされていて、そのフィルムのシェアも高いのだと話されました。

学びの多かった2つの挫折

藤江氏は「小学校の頃はコックさんになりたいと思っていました」と語ります。
小さい頃から料理番組を見ては自分で作り、家族などに振舞っていたと言います。なぜ自分は料理が好きなのかと考えた時、料理を振舞うと友人や家族が喜んでくれるからだと気付いたと話しました。
「自分が幸せを差し上げれば差し上げるほど自分も幸せになる」と語りました。

高校時代は牧場経営に憧れ、北海道の牧場に修行へ。しかし多額の費用が掛かることを知り挫折。
大学時代にはウィンドサーフィンに打ち込み五輪出場を目指すまでになりましたが、上には上がいることを知ったと言います。
2つの挫折の経験から、藤江氏は熱意だけではダメなことがあると学んだと話しました。

対話をして社員の「志」を大切に

2022年に社長に就任した時、意識したのはASV経営だと言います。
ASVとは「Ajinomoto Group Creating Shared Value」の略で、事業を通じて社会課題を解決することを重視した経営法です。「企業が成長する原動力は資産です。その中でも人材、技術、顧客、組織といった無形資産が大切」と藤江氏。
そこで、藤江氏が重視したのが社員との対話です。社員一人ひとりがリーダーや経営陣に意見を伝えられる環境を作りました。
その中でよく聞いているのが社員の「志」だと言います。
社員の人生の志と、味の素の人・社会・地球のwell-beingに貢献するという志の重なる部分はどこか、小さくても良いので見つけて欲しいと話している、と言います。

藤江氏は「働き続けたい、選んでもらえる会社になっていきたい」と言います。
特にジェンダーの壁をなくすことをあげ「味の素の女性社員の比率は3割なのですが、女性管理職は12%のため、その点は課題」としました。
藤江氏自身も、無意識の偏見をなくしていく「アンコンシャスバイアス」の研修にも参加していると話しました。

「みなさんの志はなんでしょうか。書き出してみましょう」と藤江氏。「私の人生の志は『幸せの素』で世界をWell beingで満たすことです」と言います。
「あなたの人生の志と、例えば地球の問題や社会課題、実践女子大学の志と重なるところはどこか、見つけていってはいかがでしょうか。志を明確にし、楽しみながら自発的にそれぞれの個性にあった挑戦をすることで、明るい未来を作っていって欲しいと思います」と語りました。

リーダーであるために大事にしていることは?

学生たちはグループごとに感想や意見を交換。
その後、藤江氏と質疑応答の時間が設けられました。
「社長というリーダーの立場にあたり大切にしていることは?」という学生の質問には「リーダーにもいろんなタイプがいます。私は率先して引っ張っていくより、チームをまとめたり後押ししたりすることができると思っている。サポートするリーダーでありたい」と回答し、「自分はどういうタイプか考えるといい」とアドバイスしました。

「対話をする際に重視していることはなんですか」という質問には「双方向、マルチ方向を重視しています。それぞれの人に意見があるので言ってもらう。一方通行にならないように」と回答した上で、「あなたはどういうことを注意していますか」と質問した学生へ逆質問。
学生が「全員が意見を出せるように促し、否定せず耳を傾けています」と答えると、藤江氏は大きく頷き「皆が話しやすくなるリーダーシップですね」と同意されました。

その他にも質問は多く出て、藤江氏は「いい質問ですね」とそれぞれに真摯に回答くださいました。
最後に、受講学生を代表して学生から「経営者と社員の距離が近く、対話を大事にしているのが印象的で学びが多かった」と感想を伝え、藤江氏に大きな拍手が送られました。
学生たち一人ひとりが自分の「志」を考えるきっかけとなる講義となりました。

担当教員からのメッセージ

4年目を迎えるキャリア教育科目「女性とキャリア形成」には6人のゲストをお招きします。2024年度のトップバッターは、味の素の藤江社長です。藤江社長とは、お互い企業時代に知り合った仲間であり、当時から人を大切に思うお気持ちが極めて強かったという思い出があります。本日のお話しも、一人ひとりの学生に語り掛けて下さるお姿に、藤江社長のリーダーシップの形を感じました。とりわけ“志”というお話しは、大変印象的であり、先行き不透明な社会を生き抜く学生にとって、とても大切な考え方をお示しいただいたものと思います。藤江社長には、この場を借りて、改めて心から感謝申し上げる次第です。

2023年8月8日

生き方を輝かせる考え方とは?「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員がポジティブ思考の大切さを話されました。

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月6日に株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えし講演が行われました。進行は担当グループの学生たちが行います。関根氏は自身の経験とともにポジティブシンキングの大切さを伝えられました。

美しさは見た目だけじゃない

進行担当の学生から紹介を受け、笑顔で「本日は大変楽しみにしてまいりました」とあいさつをされた関根氏。
背筋を伸ばし、ピンヒールを履いて話す姿は学生たちの目にも、美しく感じられたようです。姿勢や見た目の美しさを保つことも関根氏の信念と話します。
「いつか関根さんのようになりたいと思われるように、このような信念も大事だと思います」と講演を始められました。

関根氏が入社した当時から、資生堂は女性社員の比率が高い会社でしたが「バリバリの男性社会だった」と言います。
少ない男性たちが会社の方針を決めていたのです。関根氏が大阪の販売会社の支店長になった際には「女には務まらない」と言われ、役員になった時も女性の数はたった2人でした。
ただ、女性が多い会社だったためにその後役員登用の道が開けたとも言います。
現在は政府も女性役員3割以上とするよう後押しをしており、だんだんと女性の意見は通りやすくなっています。
「一つの基準としてその会社の女性役員の比率を見ておくといい」とアドバイスされました。

自分の強みを生かしたことで仕事に喜びを見出した

関根氏は学生時代、教師になりたいと大学進学を考えていた矢先、家族が事故に遭い就職を選択せざるを得ない状況になりました。生活のために仕事を探し、運よく入社したのが資生堂だったと言います。
最初は美容部員として接客する仕事でしたが、ある日プロモーションチームに配置換えに。仕事内容は、ノルマを与えられ推奨品を売ること。
ノルマはきつく、高い商品を売りつけるだけの仕事に気持ちがなえてしまった関根氏は、先輩に辞めたいと相談に行きました。

そこで言われたのは「あなたの強みは何?」でした。
「お客様の持っていないあなたの強みを、お客様にお届けするのが役目」と言われ、関根氏は一念発起。
美容知識を駆使して、一人ひとりに合わせたアプローチ方法に変更しました。すると、後日お客様が来店して関根氏を指名してくれたり、友人を連れてきてくれたりするように。さらにはお客様に「ありがとう」と言われるようになりました。
関根氏は「今までは商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたのが、お客様から言われたことで、仕事に喜びを見出しました」と語ります。
そのときに「日本一の美容部員になる」というキャリアビジョンを、初めて描いたと言います。
環境は変わらずとも、考え方が変わったことでやりがいを見出すことができた経験だと語りました。

仕事もプライベートも輝くためのウェルビーイング

輝くための必要な生き方として、関根氏は「ウェルビーイング」を紹介しました。
身体的にも精神的にも良好な状態であることを示すウェルビーイング。ハピネスも幸せですが、ウェルビーイングは多面的な幸せを指します。

ウェルビーイングになるためにはポジティブなマインドがベースになります。
ただ、「ネガティブは否定しません」と関根氏。
「ネガティブだからこそ、ポジティブな考え方が必要なんです」と話します。そして「皆さん、自分を好きですか?」と問いかけました。
自分が一生離れられないのは、自分です。「自分のことを嫌いではとてもつらい。自分を好きになることで心底他人のことを愛せるし、喜びを感じることができます」と語りました。

自分の長所を言えますか?

ポジティブマインドのコツとして、関根氏は「毎日少しずつラッキーなこと、喜ぶことを見つけること」だと言います。
楽天家になれということではなく、「なにか問題が起こっても希望や解決策を探そうとする思考が本当のポジティブ思考」と話しました。

さらに関根氏は「自分の長所を10個書けますか」と問いかけます。
日本人は長所を言うことを傲慢だと思う傾向がありますが、「国際社会では負けますよ」と関根氏は断言。
自分を堂々とアピールすることが、国際社会では当たり前です。自分の意見を持ち発言する大切さを伝えました。
「私も役員になったとき、美容部員あがりと言われた。でも私は美容部員の経験は強みと思っています」と話し、誰かと比べるのではなく自分の経験を積み重ねることの大切さを伝えました。

ポジティブ思考でいこう

講演後、学生たちはグループごとに話し合い、質疑応答の時間に移りました。
「忙しい中どのように優先順位や時間を作っていますか」という質問には、「自分のなかで軸を作り、重要度や優先度を決めること。緩めるときは緩めることで、緊張感のある時間もできる。メリハリのある環境に身を置くことが大事です」と回答されました。
「海外で戦える人材として必要なマインドはなんですか」という問いには、「英語ができることが第一ではありません。自分の意見を考え、はっきり言えることが大事です」と回答されました。

最後に進行担当の学生から「これから社会に出て生きていく上で指針になる講演でした。まずはチャレンジし、失敗してもそこから学び成長し続けることが大切だと感じました」とお礼の言葉を述べました。
学生たちにとって、仕事もプライベートも輝いて生きるためのヒントを与えられた講演でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいには、憧れを感じています。企業時代には、お互いに厳しかった思い出も沢山あります。しかし、関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年7月20日

人から好かれる要素は「明・元・素」!「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子氏が人生とキャリアの選択について講演を行いました。

6月22日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えし、講演いただきました。本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。明石氏はご自身のキャリアと経験から、人生とキャリアの選択について、人とのつながりの大切さまで幅広く語ってくださいました。

大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリア経験

明石氏は1979年に日本航空株式会社(JAL)に就職。
当時は女性の就職は短大卒がほとんどの時代。4年制大学を卒業した明石氏は採用枠が限られていたため、特にCA(客室乗務員)になりたかったわけではないけれど応募したと言います。
当時は「キャリアを考えてバリバリ仕事をしようなんて全く考えていませんでした」と話します。
結婚をして退職し子どもも2人出産するも、その後離婚を経験されます。
その当時、女性の片親はハンディだったと言います。「これからどうしていこうと考えた時に初めて、仕事ができる人になろうと思いました」と語りました。

それまでいわゆるオフィスワークの経験は皆無だった明石氏は、当時ベンチャー企業だった株式会社パソナに入社。
自分で考えて動かなければいけない職場に、「業務は与えられたもの、仕事は自分で作り出すもの」ということを実感し、仕事をする楽しさを知ったと言います。
その後コンサルティング会社に転職し、自分で会社を設立。社会に役立つ仕事に関わりたいと思い、日本マナー・プロトコール協会を立ち上げました。
2015年には内閣府の委員を委嘱され、現在では大手企業の社外取締役も担っています。

企業の種類を知ろう

「みなさんの人生の大きなターニングポイントになりかねないのが就職です」と明石氏。
事前課題でもあった企業の見方や選び方を確認しました。上場企業のなかでもプライム・スタンダードなどレベルが分かれること、非上場の法人、行政も就職先としてありえること。
「何を基準に選ぶかは人それぞれですが、しっかり人を育ててくれるところがいいのではないかなと思います」と話されました。

「皆さんはどんな企業を知っていますか」と問われ、いくつか企業名が挙がりました。その多くは消費者に商品やサービスを提供するBtoC企業です。しかし多くは非上場だったり上場していてもレベルは下であったりします。
「企業規模と知名度があることは別問題」と明石氏。知っている企業が良い企業とは限りません。
BtoBやCtoCの企業など視野を広げることの大事さを伝えました。

自分のキャリア志向を確認する

「みなさん全員が仕事でバリバリ活躍したいわけではないですね。私は専業主婦もとっても素敵だなと思います」と明石氏。「自分を知ることで迷わないようにしてほしいし、いろんな意見に流されず後悔しないで欲しい」と話しました。

ただ「やりたい仕事やなりたい自分への道は遠いかもしれない」とも語ります。
まず与えられた仕事をしっかりやってみることが大事と話しました。渡辺和子氏の「雑用という仕事はありません」という言葉を引用し、どんな仕事も心を込めてやっていれば、それを見てくれる人もいると諭しました。
今はキャリアチェンジがしやすい時代ではありますが、次のチャンスがいいものとも限りません。まずは継続する勇気を持つことが大切です。

人との付き合い方が大切

「会社って何かというと単なる人の集団なんです」と明石氏は話します。ビジネスは人が協働して成果を出すこと。
しかし、人間同士で行うことなのでトラブルも起こります。「でも人がいることで頑張ったり励まされたりすることも確かです」と、明石氏は3つの言葉を紹介されました。
アドバイスや勇気をくれる「メンター」、人生の理想像である「モデラー」、どんなときも支援してくれる「サポーター」です。
この3つに該当する人たちを見つけ大事にすることを勧めました。

コミュニケーションのコツは「明・元・素」と明石氏。
明るい、元気、素直な人のことです。
また、他人のせいにしないこと。「他人のせいにすると何も解決しないのでストレスが溜まるんです」と伝えました。自分でどうしたら解決できるかを考えることが大切だと話しました。

2022年に発表された女性の平均寿命は87.6歳。
明石氏は「就職してからの人生の方が長いんです」と言い「充実した時間を過ごして欲しい」と話します。先が見えなくて不安ということは、どんな可能性もあるということ。
「皆さんは、これからなんです」と力強くエールを送られました。

あなたのキャリアと人生は?

質疑応答の時間では多くの学生から手が挙がりました。
「折れないようにするための心の持ちようは?」という質問には「苦手な人との距離感を知ることじゃないかなと思います。また、メンターに助けてもらうなど自分が立ち直る方法を探すこと。深く折れてしまう前の方法を見つけましょう」と回答。

「他人のせいにする方がストレスは軽くなると思っていたので驚きました。逆だと思ったきっかけはなんですか」という学生には「離婚の経験が大きかった。自分にも理由があったと思ったら変われる。成長のチャンスになりました」と話されました。

最後に進行担当グループの学生から「知っている企業が良い会社とは限らないことなど、事前課題も含めとても良い学びになりました。
明・元・素など、今後の人生の指針となることを教えていただきました」とお礼の言葉があり、大きな拍手が起こりました。

担当教員からのメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様にご登壇いただきました。とにかく終始笑顔を絶やさずお話しされる姿には、学生とともに感動いたしました。様々なご経験の中から培われたポジション思考は、明石様の生き方そのものだと思います。この場を借りて、明石様に、心から感謝申し上げます。