6月22日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えし、講演いただきました。本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。明石氏はご自身のキャリアと経験から、人生とキャリアの選択について、人とのつながりの大切さまで幅広く語ってくださいました。
大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリア経験
明石氏は1979年に日本航空株式会社(JAL)に就職。
当時は女性の就職は短大卒がほとんどの時代。4年制大学を卒業した明石氏は採用枠が限られていたため、特にCA(客室乗務員)になりたかったわけではないけれど応募したと言います。
当時は「キャリアを考えてバリバリ仕事をしようなんて全く考えていませんでした」と話します。
結婚をして退職し子どもも2人出産するも、その後離婚を経験されます。
その当時、女性の片親はハンディだったと言います。「これからどうしていこうと考えた時に初めて、仕事ができる人になろうと思いました」と語りました。
それまでいわゆるオフィスワークの経験は皆無だった明石氏は、当時ベンチャー企業だった株式会社パソナに入社。
自分で考えて動かなければいけない職場に、「業務は与えられたもの、仕事は自分で作り出すもの」ということを実感し、仕事をする楽しさを知ったと言います。
その後コンサルティング会社に転職し、自分で会社を設立。社会に役立つ仕事に関わりたいと思い、日本マナー・プロトコール協会を立ち上げました。
2015年には内閣府の委員を委嘱され、現在では大手企業の社外取締役も担っています。
企業の種類を知ろう
「みなさんの人生の大きなターニングポイントになりかねないのが就職です」と明石氏。
事前課題でもあった企業の見方や選び方を確認しました。上場企業のなかでもプライム・スタンダードなどレベルが分かれること、非上場の法人、行政も就職先としてありえること。
「何を基準に選ぶかは人それぞれですが、しっかり人を育ててくれるところがいいのではないかなと思います」と話されました。
「皆さんはどんな企業を知っていますか」と問われ、いくつか企業名が挙がりました。その多くは消費者に商品やサービスを提供するBtoC企業です。しかし多くは非上場だったり上場していてもレベルは下であったりします。
「企業規模と知名度があることは別問題」と明石氏。知っている企業が良い企業とは限りません。
BtoBやCtoCの企業など視野を広げることの大事さを伝えました。
自分のキャリア志向を確認する
「みなさん全員が仕事でバリバリ活躍したいわけではないですね。私は専業主婦もとっても素敵だなと思います」と明石氏。「自分を知ることで迷わないようにしてほしいし、いろんな意見に流されず後悔しないで欲しい」と話しました。
ただ「やりたい仕事やなりたい自分への道は遠いかもしれない」とも語ります。
まず与えられた仕事をしっかりやってみることが大事と話しました。渡辺和子氏の「雑用という仕事はありません」という言葉を引用し、どんな仕事も心を込めてやっていれば、それを見てくれる人もいると諭しました。
今はキャリアチェンジがしやすい時代ではありますが、次のチャンスがいいものとも限りません。まずは継続する勇気を持つことが大切です。
人との付き合い方が大切
「会社って何かというと単なる人の集団なんです」と明石氏は話します。ビジネスは人が協働して成果を出すこと。
しかし、人間同士で行うことなのでトラブルも起こります。「でも人がいることで頑張ったり励まされたりすることも確かです」と、明石氏は3つの言葉を紹介されました。
アドバイスや勇気をくれる「メンター」、人生の理想像である「モデラー」、どんなときも支援してくれる「サポーター」です。
この3つに該当する人たちを見つけ大事にすることを勧めました。
コミュニケーションのコツは「明・元・素」と明石氏。
明るい、元気、素直な人のことです。
また、他人のせいにしないこと。「他人のせいにすると何も解決しないのでストレスが溜まるんです」と伝えました。自分でどうしたら解決できるかを考えることが大切だと話しました。
2022年に発表された女性の平均寿命は87.6歳。
明石氏は「就職してからの人生の方が長いんです」と言い「充実した時間を過ごして欲しい」と話します。先が見えなくて不安ということは、どんな可能性もあるということ。
「皆さんは、これからなんです」と力強くエールを送られました。
あなたのキャリアと人生は?
質疑応答の時間では多くの学生から手が挙がりました。
「折れないようにするための心の持ちようは?」という質問には「苦手な人との距離感を知ることじゃないかなと思います。また、メンターに助けてもらうなど自分が立ち直る方法を探すこと。深く折れてしまう前の方法を見つけましょう」と回答。
「他人のせいにする方がストレスは軽くなると思っていたので驚きました。逆だと思ったきっかけはなんですか」という学生には「離婚の経験が大きかった。自分にも理由があったと思ったら変われる。成長のチャンスになりました」と話されました。
最後に進行担当グループの学生から「知っている企業が良い会社とは限らないことなど、事前課題も含めとても良い学びになりました。
明・元・素など、今後の人生の指針となることを教えていただきました」とお礼の言葉があり、大きな拍手が起こりました。
担当教員からのメッセージ
私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様にご登壇いただきました。とにかく終始笑顔を絶やさずお話しされる姿には、学生とともに感動いたしました。様々なご経験の中から培われたポジション思考は、明石様の生き方そのものだと思います。この場を借りて、明石様に、心から感謝申し上げます。