社会連携プログラム
SOCIAL COOPERATION PROGRAM
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2023年2月14日

頭で考えるより手で考える!「グローバルキャリアデザイン」の授業でレゴ®︎シリアスプレイ®︎の体験が行われました。

全学部対象科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、1月17日(火)に「レゴ®︎シリアスプレイ®︎の技法と教材を活用したワークショップ」(以下、LSP)を体験する特別講義が行われました。今回の授業は3・4限の時間を続けてじっくり行われました。蓮沼孝氏をファシリテーターに、学生たちは実際にブロックで手を動かして作品を作り、視点を変えてみることの大切さを学びました。

おもちゃで戦略を考える?LSPとは

「なんで子どものおもちゃを使っているんだと思う人もいるので」と蓮沼氏は自己紹介を始めました。
蓮沼氏は商社の出身。経営人材の育成・ヘッドハントに携わり経営者の育成プログラムの開発をしてきました。コミュニケーション方法や関与の仕方を模索していた際に「LSP」に出会います。

LSPとは、デンマーク発祥のおもちゃブロックを使って行われる人材育成の手法のひとつです。2001年に教育理論に基づいて確立され、2003年にはNASAが導入したことで有名になりました。LSPは「全員が参加できる会議を作る」目的で作られました。
一般的な会議では2割の参加者が場を取り仕切り、8割の人が聞いているだけと言われます。
「でも残りの8割の人たちもちゃんとアイデアも持っており、その場に貢献したいと思っています」と蓮沼氏。その人たちも参加できる会議を行うための手法として、キャリアプランやアイデア創出の場でLSPが使われます。
LSPはファシリテーターの誘導によってレゴブロックを使うことで、人種も性別も年齢、地位も様々な人が関係なく一緒に行える特徴があります。

頭を使うより手を使う!

「今回のワークショップの目的は、視点を変えるということです」と蓮沼氏は話します。
自分を客観的に見たり他の人のことや全体を俯瞰してみたりすること。
同じ作品を見ていても、人はそれぞれ違う点に注目しています。他人が自分の作品を見た感想を聞くことで、新たな自分に気付くことも大切です。

基本の流れは、作品を作り、作品に意味を与え、他者へ語り、聞く。大切なのは「頭で考えず手で考える」ことです。
頭で考えて設計せず、触ったブロックを使って作り始めることが大事なのです。
作品が出来たら対話を行いますが、ここでも大事なことが。「その作品を通して語り、作品を通して問う」ことです。人の反応を見るのではなく、自分の感じたことを素直に伝えることが重要です。

ブロックで作品を作ってみよう

いよいよ演習が始まります。
学生たちに配られたケースのなかには50個のブロックが。
蓮沼氏から「このブロックを使って高いタワーを作ってください」とお題が出ました。

目の高さ、頭の高さを目指して、ブロックをつなげます。ブロックを縦にしたり横につなげたり。5分後には様々な形のタワーが出来上がりました。班でできたタワーを見て、作った人がこだわりを語り他の人が感想を言います。
安定を目指した人、最初に先端を作った人、色にこだわった人、作り方もさまざまです。
感想も「高くてすごい」「かわいい」などが飛び交っていました。

次はブロックを10個選びました。
周りの人と自分の選んだブロックを比べると「みんな違うものを選んでいますよね、これが個性なんです」と蓮沼氏は語りました。
そして、次のお題は選んだブロックで「ふしぎな生物作り」。
ブロックを組み合わせているときは、学生は皆真剣です。
作品ができたらまた班で対話します。
ケンタウルスみたいな神話の生き物、移動する植物などなど。
「どうやって動く?」「これは手?」など質問も活発です。「真ん中が黒いのは腹黒いってこと?」「そうかも」なんてやりとりも。

すると蓮沼氏から
「これは実は皆さんの3年後の自分なんです」と衝撃のお題が。
作った生き物を通じて、自分の将来について語ることに挑戦しました。
「皆に幸せを振りまく存在」「花を咲かせて世界平和を広める」など、不思議な生き物のプラスイメージを取り出し、なりたい自分を投影していました。

続いて蓮沼氏は
「ヒュッゲって知っていますか?」と5枚の写真を見せました。
ヒュッゲとは、レゴ発祥のデンマークの言葉。ハートマーク、暖かそうな部屋、笑顔の家族などが写されました。
「これらは全部、ヒュッゲです。皆さんがつかんだイメージを元に作品にしてください」と、蓮沼氏はヒュッゲとはなにかあえて説明しません。
学生たちが作った作品は「日常の何気ないしあわせ」「居心地の良い部屋」「花が咲いていて安らげるところ」など、ポジティブなイメージのものが多く出来ました。「あったかいイメージから連想して、太陽に近づけるタワー」を作った学生も。自分の思うヒュッゲが1つの班に4つできました。

「その4つのヒュッゲを1つのストーリーにしてください」と蓮沼氏。
異なる視点で作られたものを集合するとどうなるかを体験します。全員が参加し自分の思いや意見も反映されることが大切です。成長の物語や、癒しや尊さに気付くストーリーが作られました。

ウェルビーイングに貢献する事業とは

次はいよいよ大きな課題に挑みます。
テーマは「都心(恵比寿・渋谷・新宿)で生きる人々のウェルビーイングに貢献する新しい事業を作る」。
より充実した生き方ができるような事業を作品にします。ブロックは教室の真ん中に大量に広げられたものをすきなだけ使ってOK。時間は10分です。ブロック選びも頭を使わずに、手元にあるものから作っていきます。

出来た作品は多彩です。具体的なもの、抽象的なもの、大きいもの小さいもの、カラフルなものとさまざま。
「知らない人同士でも悩みを共有できるカフェ」「心に抱える意見を吸い上げられるタワー」などいろいろな作品がありました。
発表が終わると蓮沼氏は「他のメンバーの作品のなかで、あなたは何をしてみたいですか?」と問いかけます。
学生たちはこの人の作品のなから私はこういうことができる、もしくは自分のアイデアと組み合わせたら面白い、ということを話しあいました。

視点を変えることの大切さ

最後に、各班で今日の気付きを話し合い、発表しました。
「当たり前かもしれないけれど、同じパーツを使っても違うものが出来上がった」という気付きや、
「作品はそれぞれ違うけれど、公共性や多様性を大切にしたい思いは共通していた」という感想などが出るなか、
「自分は何がしたいのかを改めて考えるきっかけになりました」や
「就活で不安ななか、やりたいことを話し合える有意義な時間だった」という感想もありました。

蓮沼氏は「自分が持っているアイデアだけでなく、複数の意見を知ることは話し合いだけでは難しい。今まで皆さんが考えていたキャリアというものの見方が、今回で変わっていたらと思います」と語りました。
学生たちは視点を変えることや他者の意見を聞くことの大切さを学び、楽しい授業は終了しました。

深澤教授の話

グローバルキャリアデザインにおいて恒例となった「レゴ®︎シリアスプレイ®︎の技法と教材を活用したワークショップ」この授業のスタートで案内した時、学生の反応の多くは、ブロックを使ってのキャリアの授業が全くイメージ出来ないものでありました。
しかし、実際に講座がスタートすると、その表情が一変します。なかなか可視化出来なかった、これからのキャリアの道が見えてきたり、自分自身の興味関心がを改めて浮き彫りになったり、そしてグループの仲間からのメッセージで自分自身の強みが明確になったりと、このワークショップの深さに驚くことになります。
毎年、多くのサポーターのご配慮をはじめ、格別なるご尽力をいただいている蓮沼孝様に、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

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