共通科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、食生活科学科の学生が日本ロレアル株式会社のブランドであるロレアル パリとのコラボ授業を受けました。公共の場でのハラスメントに対しどう立ち向かうか、どう被害者に寄り添うべきかというセンシティブな内容に、学生たちも真剣に耳を傾けていました。学生たちは、企業が社会的責任に対しどう取り組んでいるか、企業の幅広い活動について学ぶ機会になりました。
女性を応援し続けるロレアル パリ
菊池裕貴氏は、2014年に日本ロレアルに入社。メイベリン ニューヨークというブランドでネイルやリップ、マスカラなどの開発、マーケティングに携わり2021年からはロレアル パリのブランドディレクターを務めています。ロレアル パリは、1909年発祥のブランドで、髪の毛を染めるヘアカラーから出発しました。日本ロレアルはイヴ・サンローラン・ボーテやシュウ ウエムラ、メイベリン ニューヨークなど数々の人気ブランドを抱えていますが、なかでもロレアル パリは100年以上変わらずヘアカラーやヘアオイルなどを取り扱っています。
掲げているスローガンは「あなたにはその価値があるから」。50年前から変わっていません。ブランドのマニフェストは時代に合わせ10年ほどで変わるのが一般的なところ、ずっと変わらずに女性の価値や自分らしい生き方を応援し続けています。
ストリートハラスメントって?
「日本は、残念ながら女性が生きにくいと正直思っています」と菊池氏。「これをどうにか変えていくために固定観念を打破し、女性の活躍をサポートするブランドになっていきたいと強く思っています」と語りました。
その一環として行われているのが「STAND UPプロジェクト」です。女性をとりまくストリートセクシャルハラスメントに対して立ち向かうためのプロジェクトで、世界各国で行われています。ストリートハラスメントとは公共の場でのハラスメントのこと。電車や飲み会の場、また家族のなかでの会話も該当します。こういった行為に立ち会った「傍観者」の立場に対しトレーニングを行い、ハラスメントを減らしていこうとするトレーニングをロレアルは一般社団法人Voice Up Japanと協力し行っています。
目をそらしてしまいがちなストリートハラスメント
続いてVoice Up Japanの佐野エレナ氏が登壇し「5Dアクション」についての講義が始まりました。ハラスメントを受けた人のなかで、誰かが介入したことで状況が改善したと答えたのは86%に上ります。「どんな形であれ誰かが介入してくれたら状況がよくなったと思えた人の割合は多いので、あまり不安にならずぜひ皆さん実践していただけたら」と佐野氏は語り掛けます。
不自然な身体の接触、お酌の強要、ストーキング行為…直接的な言葉をかけられるだけではなく、じっと見つめられるのもハラスメント行為にあたります。ハラスメントを受けた影響は、その場での不快感だけでなく長期的に残ります。自尊心を傷つけられ、うつやPTSDになったり、被害を受けた場所が怖くて近づけず行動制限を受けたり。日常生活が変えられてしまうのです。
「5Dアクション」を知りどう行動できるか考えよう
そういった場面に立ち会ったときにどう介入するか。学生たちはその方法として「5Dアクション」を学びました。物を落とすなどして気をそらす「Distract」、店員や責任者などに協力を求める「Delegate」、録画や録音して証拠を記録する「Document」、あとから被害者をケアする「Delay」、直接行動する「Direct」。「どんな行為ならできそうだなと思いますか」と佐野氏は学生に問いかけ、「Distract」や「Delay」なら行動できそうと学生も多く手を挙げました。
佐野氏は飲み会での先輩の発言や満員電車などさまざまなシチュエーションを想定し、自分に何ができるか学生たちに考えさせました。「自分の10分で、その人の一生が変わるかもしれません」と佐野氏。声を掛けるなど小さいと思える行動でも介入できると言います。また佐野氏は大切なこととして「ハラスメントは受けた人のせいではない」ということを強調します。自分がハラスメントの被害を受けた場合も「決してあなたのせいではありません」と伝えました。
学生たちも5Dアクションに前向きに
学生たちからは感想や意見がたくさん集まりました。「痴漢され自分も助けてほしいと思ったことがあるので、今後見かけたら見て見ぬふりはしたくない」「自分に何ができるか難しいが、どれかを実践してみたい」「一人では難しいが友達と一緒ならできるかも」といった前向きな意見が多数。実際に助けられた経験がある学生も。ストーカー被害に遭い、いまでも影響を受けていることを打ち明けてくれた学生もいました。
質問も多くありました。「お酒の場では自分もアルコールが入っていて行動は難しいのでは」「満員電車では自分も身動きできない」などの意見には「見てましたよという視線を送るだけでも有効です」と回答がありました。「自分がハラスメントを受けているときに助けてもらう方法は?」という質問には「アピールすることができればベストですが、一番は自分を守ることが最優先。あとから誰かに打ち明けてケアをする方法もあります」と伝えました。
学生たちの心に響く講義
ハラスメントは自分が加害者にもなりえます。例えば友達が誰かに付きまとわれた経験を話したとして「しょうがない」「可愛いからだよ」という言葉はその友達に原因があったことになり、二次加害につながってしまいます。またハラスメントは外見では嫌がっているか分からないことも。介入していいのか判断が難しいこともありますが「ちょっとしたことでも勇気を出してみるということは重要だと思います」と語られ、講義は終了しました。