6月24日に「対人コミュニケーション論」(国際学部国際学科)の授業で、旭化成ホームズ株式会社のLONGLIFE総合研究所長である河合慎一郎氏による特別講演が行われました。河合氏は二世帯住宅を通して、人と人とのつながりや関係性について講演。親子や社会など「つながり方のデザイン」について考える機会となりました。
家を通して考える、人と人とのつながり方
河合氏は登壇すると、「私は住宅に関わる仕事をしています」と自己紹介されました。
「『なぜ国際学科の授業で住宅の話をするのだろう』と思った人もいるかもしれません。でも、住宅を通して考えることは、皆さんが学んでいる国際的な視点や人との関わりとも深くつながっています」と語り、講演が始まりました。
河合氏は、もともと住宅設計を手がける一級建築士として約450棟の戸建住宅を設計。その経験を生かし、現在は「人の暮らし方」を研究するLONGLIFE総合研究所で活動しています。
この研究所は、旭化成ホームズが「ALL for LONGLIFE」の理念のもと、住む人が長く快適に暮らせる住まいを実現するために設立した組織です。
「今日は家づくりの話ではなく、人とのつながり方について考えてみたいと思います」と切り出し、「皆さんは、人との距離感で悩んだことはありませんか」と学生たちに問いかけました。人との距離は、近すぎても遠すぎても良い関係を築くのは難しいものです。
河合氏は「人との距離感に正解はありません。文化や育った環境によって心地よい距離は異なります。それは海外で人と関わるときにも同じです」と話し、人との関わり方について考える大切さを伝えました。

自分は外交的?一人になりたいタイプ?

「まずは自分のタイプを知ってみましょう」と河合氏。
学生たちは、簡単な質問に答えて点数を集計し、自分にとって心地よい対人距離の傾向を知るワークに取り組みました。
結果からは、人とのつながりを大切にする外向的なタイプか、一人の時間を重視する慎重なタイプかなど、それぞれの特徴が分かります。
河合氏は「例えば外向性が高い人は、家族や友人が集まりやすいダイニングを重視する傾向があります。一方、一人の時間を大切にする人は、落ち着いて過ごせる個室を求めることが多く、こうした違いは住まいのデザインにも影響します」と説明。
「どのタイプが良いということではありません。一人ひとりの価値観や暮らし方に合わせて住まいを設計することが大切なのです」と話しました。
さらに、現在では広く知られる「二世帯住宅」についても紹介しました。
実は、この言葉を生み出したのはヘーベルハウスです。二世帯住宅とは、同じ建物に住みながらも、親世帯と子世帯がそれぞれの生活空間や家計を分けて暮らす住まいのこと。
1970年代以降、サラリーマン家庭の増加や地価の高騰を背景に、家族との適度な距離感を保ちながら経済的にも暮らしやすい住まいとして誕生しました。
住宅は、家族のつながり方や時代の変化に合わせて進化してきたことが紹介されました。
関係の3原則を意識しよう
続いて河合氏は、人間関係を築くうえで大切な「関係性の3原則」として、「距離」「接点」「配慮」の3つを紹介しました。
「距離」は、近すぎると干渉になり、遠すぎると孤立につながるものです。
「接点」は、人と会ったり会話をしたりする機会のこと。どれくらいコミュニケーションを取ると心地よいと感じるかは、人によって異なります。
そして「配慮」とは、立場の弱い人への思いやりです。
例えば家族であっても、嫁や婿のように血縁関係のない人は価値観の違いが生まれやすいもの。昔から嫁と姑の問題が語られてきた背景にも、こうした関係性があります。

河合氏は「人と人との関係は対等だと思いがちですが、実際には立場や役割によって力関係が生まれます」と説明しました。
そのうえで、「心地よい距離感は人それぞれです。世代や育った環境、文化の違いによって感じ方も変わります。人そのものが問題なのではなく、関係設計のミスマッチによって起こるのです」と語りました。
人と人との関係性に正解はない

講演の最後に河合氏は、「今日は親子関係を中心にお話ししましたが、『関係性の3原則』は家庭だけに当てはまるものではありません。人と人とのコミュニケーションを考えるための基本的なフレームです」と話しました。
「距離」「接点」「配慮」の3つは、異文化理解や国際交流にも欠かせない視点です。また、人と自然との関わり方を考えるSDGsにも通じる考え方だと説明。
「人との関係や物事との関係は、環境や状況によって変化します。国際関係を学ぶうえでも、この3つを意識しながら物事を見てほしいと思います」と学生たちにメッセージを送り、講演を締めくくりました。
講演後には質疑応答が行われました。
「建てた家が住み始めてから理想と違うと感じた場合、リフォームはできるのでしょうか」という質問に対し、河合氏は「長く暮らしていると家族構成や人間関係は変化します。その変化に合わせて住まいも柔軟に変えられるよう、リフォームしやすい設計が取り入れられています」と回答しました。
住宅をテーマにしながらも、人との関わり方や国際社会につながる視点を学ぶことができた今回の講義は、学生たちにとって新たな気づきを得る貴重な機会となりました。

