2026年1月20日(火)、本学客員教授である株式会社リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏と、共同代表の鷲見健司氏をお招きし、キャリア開発実践論の最終授業が実施されました。キャリア開発実践論は、先行きが不透明な時代においても社会で主体的に活躍し、リーダーシップを発揮できる人材の育成を目的とした、本学のキャリア教育科目を代表する授業の一つです。授業前半ではチームごとにこれまでの経験を振り返りが実施され、後半には岩田氏によるミニ講演と質疑応答も行われました。
授業について
キャリア開発実践論は、3年生を対象に開講されている共通教育科目です。「将来のリーダーを育成する」ことを目的に、リーダーシップのスキルアップを図る授業として開講されており、社会人基礎力の中でも「ミッション」「リーダーシップ」「ファシリテーション」の三点を中心に、重点的に学びを深めます。
例年、夏休みに集中講座形式で実施されており、今年度も本大学で客員教授を務める株式会社リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏と、共同代表の鷲見健司氏をお招きし、企業研修レベルの内容でご講義いただきました。参加学生には、昨年8月に実施された合宿後から、自身が定めた“ミッション”を実践する約5か月間の期間が設けられました。
今回の授業では、その実践期間中の経験を振り返り、さまざまな経験を通して得た自身の変化や学びを言語化する、授業の総括が行われました。振り返りと発表は、合宿時に編成した5つのチームに分かれて実施され、それぞれが「合宿を経て変わった自分」や「大切にする価値観」について共有しました。
また本授業では、元スターバックスコーヒージャパンCEOでもある岩田氏による、“ミッション”に関するミニ講演と、学生からの質疑応答が授業後半に行われました。

学生の振り返り

8月の合宿で、リーダーシップに関するさまざまな内容を知識としてインプットした学生たち。
ファシリテーターの鷲見健司氏は、「合宿で皆さんが学んだことのその後の実践状況と、実践から得た気づきを共有し、互いに学びを深め合いましょう」と語り、8月に学んだリーダーシップやファシリテーション、宣言したアクション等の実践に関する具体的な振り返りが行われました。
学生は、手元の資料を見ながら個人の活動内容を報告し、その後、班ごとに用意されたホワイトボードに意見をまとめていきました。
メンバーの発表に対し、思わず納得した様子で椅子に背中を預けたり、深くうなずきながら共感したりする姿も見られ、各チームともリラックスした雰囲気の中で共有が進んでいきました。
その後はホワイトボードの前に集まり、お互いの意見を確認しながら、チームとしての振り返り内容を整理していきました。







全体での班発表では、チーム内でまとめた振り返りの内容に加え、話し合いの中で生まれた疑問点が共有されました。
全体共有では、自分で定めたミッションが、日常生活や将来の選択において「判断の軸」となっていたことが、多くの班から語られ、とくに就職活動において自分らしさを発揮することや、主体的な行動を起こすきっかけになったという声が紹介されました。
また、「ミッションを言語化したことで意欲が明確になった」と報告する班もあり、「その結果、リーダーシップの発揮やファシリテーションを自ら担うなど、主体的な行動につながった」「具体的な言葉として可視化することで、継続的な行動につながることを実感した」といった意見も述べられました。さらに、自ら行動を起こすことが周囲を巻き込むリーダーシップにつながったと紹介する班もありました。
疑問点としては、「ミッション達成へのモチベーションをどのように維持し続けるか」や、「リーダーという役割でない人が主導し始めた場合の対応方法」など、実践的な経験を重ねる中で生まれた問いが多く共有されました。
こうした学生の気づきを踏まえ、授業後半では岩田氏からのフィードバックとミニ講演が行われました。
”ミッション”のとらえ方
岩田氏は、学生の発表内容に対するフィードバックを交えながら、ミッション・ビジョン・バリューの定義について説明しました。
「ミッションは、『なんのために自分は生かされているのか?自分が、この世に生まれてきた理由です。仕事を通じて同世の中に役立っていくかです。学生の段階ですぐに見つかるものというよりは、これからキャリアを積み重ね、一生かけて見えてくるものです」と学生に説明しました。
その上で、学生が設定した多くの“ミッション”は、“バリュー(信条や行動指針)”に近い内容であることにも触れ、岩田氏自身もまた、長い時間をかけてミッションを見出してきたことを語りました。

その後、ミッション・ビジョン・バリューの違いについて、それぞれの役割を補足しながら詳しく説明しました。岩田氏は「ミッションは『なぜ自分が生かされていのかという、自分の存在理由』、ビジョンは『具体的にイメージできる、自分がなりたい将来像や目標』、バリューは「ビジョンを達成するために定める、日々の行動指針』である」と述べました。

これらの概念をキャリア形成の文脈で語る理由について、岩田氏は「自分の仕事がどのように世の中に役立っているのかを意識することで、同じ仕事であっても、やりがいが大きく変わる」と述べました。
続けて、自身がCEOを務めたスターバックスコーヒージャパンの“ミッション”を例に挙げ、「企業が掲げるミッションを、店舗で働く一人ひとりが胸に抱いて働くことで、単にコーヒーを提供するのではなく、コーヒーを通じて人々に活力と栄養を届け生き生きと働けることにつながっている」と紹介しました。
講演の終わりに
岩田氏はリーダーには指導力や洞察力などいろいろな特質を求められるが、一番大切なのは、「私心のなさ」を挙げました。「『チームのために』という思いが伝わると、自然と人がついていきます。自分のためではなく、チームのため、お客様のためという『無私』の気持ちが大切です」と語りました。
また、キャリア形成については、「例え希望した仕事ではなかったとしても、目の前のことに一所懸命取り組んでいれば、必ず後になって、役に立ちます。人生一所懸命に頑張っている限り無駄なことはありません」と学生にアドバイスしました。さらに、「今後色々と悩みが出てくると思いますが、それは自分が成長しようと努力している証拠です」と、学生にエールを送りました。

質疑応答の時間
講演後には、岩田氏が学生から寄せられた質問に答える質疑応答の時間が設けられました。
ミッション達成へのモチベーションをどう維持し続けるか
岩田氏は「モチベーションを常に保つことは難しい」と率直に語りました。ご自身も壁にぶつかる中で、家族や友人に支えられてきた。また「勇気づけられる言葉や本を読んだり、好きな音楽を聴くことでモチベーションを高めるためのルーティンを持っていることを紹介。「皆さんも、何か自分なりのお気に入りの儀式見つけてみてください」と学生に呼びかけました。
また、挫折したときについては、「無理に立ち上がらなくてもいい。寝そべったままでも、まずは指一本動かせたら十分。少しずつでいいから、やがて起き上がれるようになる」と、段階的に前に進むことと「悩んでいる自分に悩まない」ことの大切さを伝えました。
自己開示の難易度
「相手が自己開示してくれると、自分もしやすくなる」 そのため相手に関心を持ち、「いい質問」をすることが重要だと説明。相手の良いところに注目して話を広げることや、ユーモアや冗談な話題を交えることで相手がリラックスすると自分も自己開示しやすくなると、これまでの経験を踏まえてアドバイスしました。
ファシリテーターではない人が仕切り始めた場合の対応
「ファシリテーターの最終目的は『良い結果を生み出すこと』」と前置きし、「自分が詳しい分野であっても一歩引き、サポートに回ることも必要だが、自分の得意分野なら適当に自分の意見も織り交ぜながら、議論を前に進めることが大切」と答えました。
リーダーという立場でないときに、周囲の人をどう先導すべきか
「役職に関係なく、リーダーシップというスキルを持つことは必要」と回答。「リーダーシップの本質は『周囲に影響を与えること』であり、それは誰にでも発揮できるもの。難しいことだが、リーダーを立てながら、チームを良い方向に向かわしめることが大切」と学生に伝えました。
授業の終わりに
授業の締めくくりとして、岩田松雄氏の著書「リーダーに贈る言葉」が学生に配布されました。思いがけないプレゼントに、学生たちは笑顔を見せながら本を受け取り、教室には温かな空気が広がりました。
この授業を通して学生たちは、8月の合宿で得た知識を、実体験に基づく価値観として言語化するとともに、同じ向上心を持つ仲間との意見交換を重ねることで、リーダーシップとファシリテーションへの理解をより深めました。
また、企業でのリーダー経験を持つ岩田氏と直接意見を交わすこの時間は、学生にとって非常に貴重な学びの機会となりました。
担当教員のコメント
キャリア開発実践論も、過去からの履修者が200人を超える歴史を紡いで来ました。
これもひとえに、熱心にご指導いただきました岩田様と鷲見様のおかげであると思います。大学生ではなくあえて企業人レベルの内容に挑戦することで、大きく成長した多くの学生の姿を見てきました。お二人が、学生一人ひとりに寄り添っていただき、そのポテンシャルを開花させて下さったことを改めて感じます。「ミッション」「リーダーシップ」そして「ファシリテーション」いずれもキャリアを積む上できわめて貴重なものです。
この場を借りて、岩田様、鷲見様に、心から感謝申し上げます。


