10月22日(土)に「実践ウェルビーイングプロジェクト(JWP)研究会」の学生たちが、慶應義塾大学日吉キャンパスに訪問し、前野隆司教授の講演を伺いました。wellbeingの第一人者である前野氏の講演を聞き、学生たちは「幸せとはなにか」を改めて考える機会となりました。今回学んだことは今年2月に行われる「女子大生フォーラム」内の企画に活かされていきます。
幸せは科学できる!
「みなさんは幸せについて考えていますか」前野氏は学生たちに問いかけます。「幸せというと、スピリチュアルに結び付きやすく思われますが、科学的に解明されているんです」。1980年代から心理学の分野で研究が始まり、アンケートの結果を統計学で調査することで、幸せなひと・不幸せなひとには相関があることが分かってきました。
学生たちは事前に「wellbeing circle」という幸福度診断を行い、この日に臨みました。「ありがとう力」「やってみよう力」などそれぞれの指数が輪になって反映されます。前野氏は「円の大きさはあまり気にしないでください」と伝えます。指数に個人差があるのは当たり前のこと。他人と比べるものではありません。ただ、自分の指数はどこが高く何が低いのか、自分の特徴を知るための目安となります。自分の強みや弱みなど性格傾向を知り、コントロールすることで幸せに近づけます。また、個人差がある幸福度ですが、統計を取ると傾向が見えてくるのです。例えば飽きっぽい性格のひとは幸福度が低い傾向がある、など大勢の結果を集めることで分かってきます。
幸せってどんな状態?
「Wellbeing」とは、日本では「幸せな状態」という意味で広まっていますが、元々は「健康・精神・福祉が充実し良好な状態」を指す言葉です。「皆さんは、人類史上一番幸せに生きられる時代を生きています」と前野氏。医療は発展し寿命も伸び、福祉も広まっている現代社会は、古代や中世のひとたちからは考えられないくらい「幸福」な時代です。実際、幸福度は身体にも影響を与えます。ポジティブな感情は免疫、自律神経に影響するため、幸福度の高いひとたちは長寿という傾向も確認されています。幸福度とパフォーマンスの関係も研究されており、幸福度が高いひとはそうでないひとに比べ創造性が3倍、生産性も31%アップします。年収も高い傾向が確認されており「幸せで悪いことはない」と前野氏は言います。
幸せになるために必要な力は?
ではどうすれば幸せになれるのでしょうか。日本ではお金があれば幸せだと思う傾向が高いですが、「年収と幸福度は、最初は比例するが一定の年収を越えると幸福度は変わらない研究結果がある」と、地位や財産による幸せは長続きしないと話します。
指針となるのが「幸せの4つの因子」と呼ばれる4つの心的要因を伸ばすこと。
自己実現と成長「やってみよう力」、
他者とのつながりや感謝の気持ち「ありがとう力」、
前向きと楽観性「なんとかなる力」、
独立と自分らしさ「ありのままに力」です。
前野氏は、これらを伸ばすには「自分とは違う価値観を経験すると、寛容になり自分の枠が大きくなる」と話します。前野氏が留学して現地のひとたちの時間感覚に戸惑った話を交えつつ、新たな価値観が身についたという留学の良さを伝えました。
自分の行動で幸せは決まる
前野氏は学生たちに向け、「学外でこういった活動をすることは素晴らしいことです」と、JWP研究会に参加すること自体「学ぶ意識の高い」チャレンジ精神ある幸福度の高い行為だと伝えました。そして、主体性を持ち、諦めずに経験しつづけることが幸せになる一歩であると話します。「やるかやめようか迷ったら、やってください」と、行動するうちに苦手なことや弱みがなくなっていくと自身の体験を交えて語りました。
「皆さんが幸せに気を付けてどう行動したかで、幸福度は決まります。どんどん行動して自分の人生を幸せにしてください」とエールを送りました。
幸せについて考えるきっかけとなる講演
講義を受け、自分たちが今考えられるwellbeingについてディスカッションを行い、前野氏に質問する機会をいただきました。
ずっとひとと一緒にいると疲れてしまい一人行動するのが好きな学生から「ひととの繋がりが幸福度に関わると仰っていましたが、社交的になるべきでしょうか」と質問が。
前野氏は「自分の特徴を認識できているので無理する必要はありません。一人でいる時間になにか熱中できることを探してみましょう」とアドバイス。
「日本の幸福度ランキングはなぜ低いのでしょう」という質問には
「日本人は謙虚で集団主義なので、低めに答えてしまう傾向もあります。ただ、自己肯定感が低く心配症の面もある。自己肯定感を高めるには、喜びを誰かと分かち合うことも大切」と語りました。
また、「先生が幸せそうだなと思うひとはどんなひとですか」という質問には
「自分でこれをやると決めたひとは格好良い」と言い、「皆さんがこれからこうしていこう、と決意して前に向かって歩んでいく姿をみると、格好いいなと思い僕は幸せな気持ちになります」と伝えました。
学生からは「幸せについてあまり考える機会がなかったので、とても良いきっかけになりました」と感想も聞かれ、講義は和やかな雰囲気で終了しました。
深澤先生の話
今回ご縁をいただき、日本のウェルビーイング研究の一人者である前野先生のお時間を頂戴し、JWP(実践ウェルビーイングプロジェクト)のためだけにワークショップを開いていただいたことに対して、改めて心から感謝申し上げます。
ウェルビーイング研究の深さを知り、なぜ、今ウェルビーイングなのかという社会背景を知り、将来世代の若者の生き方の大切を知り、とても濃密な2時間の学びの機会をいただきました。
本学のキャンパスを飛び出してのプログラムも、こうしたプロジェクトならではの貴重な機会に繋がったと思います。
前野先生ありがとうございました。
そして、参加された学生の皆さん、一人一人がウェルビーイングを深く研究するきっかけになればと思います。
参加学生の声
・幸せは、工夫すれば伸びることを学びました。ウェルビーイングサークルの凹んでいる部分を見て、特徴を知りコントロールしながら生きていきたいと思いました。
こうしたコントロールが幸福度を上げることになり、SDGsのように国際目標を提示しなくとも幸福は自分でつかむことができる事を改めて実感しました。幸福度を上げていく為にも、自分と向き合いたいと思います!
ウェルビーイングの学びの初回として、前野教授のお話を聞けたことはとても良いスタートになったと思います!
・自分自身のwell-beingについて数値化することで、「幸せ」というものについてより深く考えるようになりました。
また、今まで幸福について曖昧に捉えていましたが、科学的に示されているということをお聞きでき、定義を知ることができてよかったです。
well-beingとは、人それぞれであり様々な形であるからこそ今後より重要になってくるのだと改めて感じました。