3月17日に、東京きらぼしフィナンシャルグループのデジタル営業戦略部 部長 吳 尚燁(オ・サンヨウ)氏による特別講演が行われました。これからの時代に求められる新たなグローバル人材とはどのようなものかを、経験を交えながらお話しくださいました。多様性の時代における「メタ認知」の重要性について、学生たちの学ぶ機会となりました。
海外では予想外のことが起こるのは当たり前
吳 氏は登壇すると、「안녕하세요(アンニョンハセヨ)」と韓国語であいさつ。そのまま韓国語で話し始め、学生たちは突然のことに戸惑い気味です。
するとオ氏は「みなさん今、戸惑いましたよね」と日本語で話しだされました。
「海外旅行や留学では、予想外のことが起こります」と語り、言葉や常識が通じない中でどう準備し、どう対応するかを考える講義が始まりました。
吳氏は以前、韓国の新韓銀行に勤務し中国・アメリカ・インド・ベトナムなど8カ国を回りながらコンサルティングを行われてきました。
2022年には、インターネット銀行の設立を経験するためきらぼし銀行に入社。現在も韓国やベトナムなどを行き来し、海外進出を目指す日本企業や、日本進出を目指す海外企業の支援を行っています。

「海外に行けばグローバル人材」ではない!

忙しく海外を飛び回る吳氏は、周囲から「グローバル人材だね」と言われることがあるそうです。
「でも私はそうは思っていません。日本語も話せますが、小学生の頃に大阪に住んでいたこともあり、日本はローカル(故郷)の一つという感覚です」と語りました。
グローバル人材を取り巻く環境も大きく変化しています。
以前は、語学力が高く海外滞在の経験がある人がグローバル人材とされていました。
しかし現在はAIや通訳技術の発展により、現地に行かなくてもオンラインでコミュニケーションが可能に。かつては物理的に国境を越えることが「グローバル」でしたが、今は「認知や文化の境界を取り払うこと」だと吳氏は話します。
見た目で決めつけず背景を考える
「認知と文化の境界を取り払う」とはどういうことなのでしょうか。吳氏はさらに説明を続けました。
多様性の時代、人間のハードとソフトが一致しないケースが増えているといいます。
例えば、両親の国籍が違う人が、海外で幼少期を過ごし、現在日本で生活している場合、さまざまなルーツが混ざっています。見た目や国籍は日本人でも、思考や育った環境、文化は海外で形成されている人が多くなっているのです。
「社会は見た目や国籍で日本人と判断しますが、名前や言語だけではその人のアイデンティティは分からない時代です。そうした人と出会ったとき、あなたはどの国の人として向き合うべきでしょうか」と、学生たちに問いかけました。

また、AIの発展により「外国語を話せなくてもよい」と言われることもありますが、吳氏は「それ以上に、自分のアイデンティティをどう表現するかが重要」と話します。
対面であれば伝わるニュアンスも、ビデオ通話やAI翻訳では伝わりにくいことがあります。言語が話せること以上に自分をどう表現するかを考えることが、今後ますます重要になると語りました。
メタ認知を駆使して多文化を理解しよう

では、これからのグローバル人材にはどのような考え方が求められるのでしょうか。吳氏は「メタ認知」だと語ります。
メタ認知とは、自分の考えや感情を一歩引いてとらえ、客観的に見る力のことです。
「人は自分のことで精一杯で、相手の考えを想像するのは難しいものです。だからこそ一歩引いて、『あの発言の背景には何があるのか』と、感情ではなく構造で考えるトレーニングが大切です」と説明しました。
多文化に触れると戸惑うこともありますが、文化的な違いや背景を理解する大切さを伝えました。
また、自分の武器を考えることも重要です。自分の強みや自分らしさを見つめ直し、軸を持つことの大切さにも触れました。
「みなさんはこうした考えを持てる人材だと思っています」と学生たちにエールを送り、講演を締めくくりました。
メタ認知を実践するには
最後に質疑応答の時間が設けられました。
「ついイライラしてしまい、一歩引いて考えるのが難しい。メタ認知のために心がけていることは?」という質問に対し、「すべて一歩引いて考えられる人はいないと思います。感情が先走ってしまっても、あとで必ず振り返ることが大切。そのときの感情や状況を整理し、どう対応すべきだったかを考えてみましょう」と回答しました。
また、「自分の意見を言うべきときと、メタ認知すべきときの見極めは?」という質問には、「第一声を我慢すること。感情のまま話すと、自分の立場で言いたいことだけに偏りがちです。表現や言葉選びを工夫し、自分らしさをどう伝えるかも大切ですね」と話しました。

国際的な人材を目指す学生にとって、実体験に基づく実践的な話を伺えた、刺激ある機会となりました。

