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2026年6月1日

これからの女性のリーダーシップの秘訣は女子大!?「キャリア・ショーケース」の授業でSBI金融経済研究所の理事長が講演を行いました

5月14日に、共通教育科目「キャリア・ショーケース」 (担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、SBI金融経済研究所株式会社の取締役理事長である政井貴子氏による、特別講演が行われました。女性活躍が求められる時代、どうキャリアを重ねていくかを、自身の半生を振り返りながら話してくださいました。

キャリアは長い目で見て考えよう

政井氏は本学の英語科卒のOG。
「女子大って必ずしもポジティブな評価がされていない印象です。これはひとえに女子大の良さを知らない男性が書いているからだと思います」と笑いを交えながらコメント。
「今日は私が考える、女子校で育まれるリーダーシップについてお話したい」と、講演を始められました。

「そもそも私は経営者になることを目指していたわけではなく、学生の頃はやりたいことも決まっていませんでした」と話し始めました。
「キャリアなんて最初から決まっていないし、そのまま進むものでもない。ではどうするかと言えば一つずつ積み上げていくしかないんです」と、30~40年の長い目でキャリアを考えることの大事さを伝えました。
「人生は長いので、豊かに暮らすには選択肢が多い方が良い。選択肢を広げるためには経済力を持つことも大事。そのために、自分にフィットした働き方を選べるように考えていきましょう」と語りました。

ただ日本は、経済活動や政治参加の面ではまだまだ男女差があるのが現状。家事や育児、介護など仕事以外にやらなくてはいけないことを抱えている女性は多いです。
アンケートでも、女性は男性をサポートすべきという考えの人が、若い世代でも多いという結果が出ています。
政井氏は「社会に出ると、腹落ちできないできごとに出くわすことがあると思います」と、心構えを話されました。

その都度悩みながら自分の可能性を広げていく

続いて、写真を交えながらこれまでの歩みを紹介。
卒業後は外資系金融機関に就職し、「多様な価値観や背景を持つ人たちと働いた経験は大きな刺激になった」と振り返ります。
その後、日本企業の金融機関へ転職。日本銀行の役員として日本経済全体を見据えた金融政策にも携わりました。
さらに5年前にはSBI金融経済研究所の立ち上げに関わり、現在に至ります。

一見順調なキャリアに見えますが、「当時はその都度悩んでいた」と政井氏。
仕事を辞めようと考えたことや、別の仕事への誘いに迷ったこともあったそうです。「振り返ると一本の筋が通っているように見えるだけで、その時々で選択してきた結果が今につながっている」と語りました。

進路を選ぶ際に大切にしていたのは、「自分の可能性が広がるかどうか」。そのときできることを軸に、少しずつ挑戦の幅を広げてきたと言います。
「就職でも給料など目先の条件だけで決めるのではなく、長い視点で自分の軸を作っていってほしい」と学生たちにメッセージを送りました。

女子校で育むリーダーシップとは?

政井氏は、「社会に出て感じるのは、女子校出身者にはリーダーとして活躍している人が多いこと」と話しました。
共学ではリーダー役を男性が担う場面も多い一方、女子校では女性が中心となってまとめ役を経験する機会が多いことが理由ではないかと語ります。
また、「リーダーとは、ただ前に立って引っ張る人ではありません。さまざまな人の話を聞き自分の考えを伝え、周囲を巻き込める人です」と説明。
「女子同士の意見をまとめるのは難しいんですよ。学生時代からその経験ができるのは、とても貴重なこと」と笑いを交えて話しました。

さらに、多くの人を巻き込み行動した女性の例として、本学の学祖である下田歌子についても紹介。
当時は女性が自由に決定権を持ちにくい時代でしたが、「女性も能力を発揮できる」と信じ学校を設立した行動力に、管理職になってから改めてその偉大さを実感したそうです。
政井氏は、「その学校にいる皆さんも、キャリアを築くことだけを目的にするのではなく、自分自身が充実した人生だったと思える生き方をしてほしい」と学生たちへエールを送りました。

男性社会を、女性はどう変えていける?

講演後は班ごとに意見交換を行い、その後、政井氏への質疑応答の時間が設けられました。
「社会に出て男女差を感じた経験は何でしたか」という質問に対し、政井氏は営業時代のエピソードを紹介。
「大きな取引先は男性社員が担当し、自分は小規模な会社ばかり任されていました。努力して大きな契約を取っても、担当を男性に替えられてしまった」と振り返りました。
「40年前の話なので変わっているかもしれないけれど、古い体質の企業には今も残っているかもしれません」と学生たちへ伝えました。

また、「少子化対策と女性活躍は両立できると思いますか」という質問には、「とても本質的な問いですね」と応じ、「女性が活躍すると子どもを持たなくなる、というのは男性側の発想ではないでしょうか」と指摘。
自身には子どもはいないものの、周囲には子育てをしながら働く女性も多く、海外では子どもを育てながら活躍する女性CEOも珍しくないと語りました。
さらに、「日本はどれだけ長く会社にいるかで評価されやすい。家事や育児で長時間働けない女性は、出世しにくいという空気が(未だ一部に)残っているように思います」と現状を説明。
「外資系ではすでに始まっていますが、時間や場所ではなく、その人ベースで評価する考え方へもっと変わっていく必要があるのだと思います」と話しました。

本学卒業生であり、女性リーダーのロールモデルでもある政井氏の講演は、学生たちにとって大きな刺激となる貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

政井様には、この授業に初回からご登壇いただいています。また、本学の卒業生ということもあり、学生との距離感が近いという印象を受けています。
一方、政井様のキャリアは特筆すべきものがあり、金融業界で、中央銀行、国内系、外資系とあらゆる組織でキャリアを積み重ねられた方は、なかなか存在しない、とても貴重なロールモデルであると思います。
今までは比較的遠い存在であった金融のフィールドでしたが、今の学生の今後のキャリア形成を考えた時、一人ひとりがみずから資産設計することが求められることになります。
政井様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2026年5月20日

自身が生かされている意味とは?「キャリア・ショーケース」の授業で元スターバックスCEOによる「ミッション」についての講義が行われました。

4月23日に「キャリア・ショーケース」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で元スターバックスコーヒージャパンCEOであり、株式会社リーダーシップコンサルティング代表の岩田松雄氏の特別講演が行われました。自らの半生を通し、「ミッション」を自覚することの大切さを学生たちに伝えてくださいました。

自分はなぜ「生かされている」?

この授業では学生が進行を担当します。CUBEと呼ばれる各班に分かれ自ら考え行動する力を養います。
まず語られたのは「生きていることの不思議」。宇宙の誕生や地球の形成、そこから生命が生まれ人間へと進化してきた流れは、すべて偶然の積み重ねです。その視点から岩田氏は「生きているというより、(何か大きな力に)生かされていると感じる」と話します。

では、なぜ自分は生かされているのか。岩田氏は「人それぞれにミッションがあるから」と説明します。
ミッションとは「存在理由」のこと。ミッションには、自分自身の役割を考える「個人のミッション」と、会社が存在する意味を考える「企業のミッション」があります。授業ではこの2つを軸に、自分の生き方や将来について考えていきます。

AI時代に必要な学びの本質とは

AIの進化によって、多くのことが簡単に答えを得られる時代になりました。では、なぜ大学で学ぶ必要があるのでしょうか。

岩田氏はその理由を「視座を高める、視野を広げる、視点を鍛えるため」と説明します。自分とは異なる立場で物事を考え、興味のある分野だけでなく幅広く知識を得ること。「それによってイノベーション(変革)が起こりやすくなる」と話しました。そして得た情報をどう受け止めるかを考える力(視点)こそが重要だといいます。「卒業のためではなく、自分の土台をつくるために学び続けることが大切」と学生に伝えました。

また、変化の激しい時代だからこそ「不易流行」という考え方が必要だと強調します。
岩田氏は「これは、変わらない本質(哲学)を大切にしながら、新しいもの(科学技術)も柔軟に取り入れるという考え方です。科学技術は加速度的に進歩しているが、人間の本質は何千年も変わっていないということ。今日お話しするミッションの大切さはいつの時代も変わらない。
AIが答えを出してくれる時代だからこそ、人間に求められるのは「問う力」です。」と話し、常識を疑い、問題意識を持ち、自分で問いを立てるためにも、学び続ける姿勢が大切だと語られました。

AIが答えを出してくれる時代だからこそ、人間に求められるのは「問う力」です。問題意識を持ち、自分で問いを立てるためにも、学び続ける姿勢が大切だと語られました。

自分のミッションを見つけよう

岩田氏は、自身がミッションに気づいた経験を語りました。

「新卒で日産自動車株式会社に入社し、新入社員あいさつで『社長を目指す』と宣言し、先輩方から失笑をかった。
しかし当時は社長の仕事は何も分からなかったが、高い目標が必要だと考えたからだといいます。ふと自社の企業理念を先輩達に尋ねても答えは得られませんでした。若い時から経営理念や社長に関心を持っていました。」

「経営に興味を持ったきっかけは、二つのハンバーガー店での気づき。
同じ業種でも、楽しそうに働く店とそうでない店があることに疑問を持ち、経営に興味を持つようになります。そこでビジネススクールに進み、経営を学びました。経営学の授業では『会社=利益を追うもの(株主価値の最大化)』と教えられましたが、腑に落ちませんでした。」

「その後、株式会社アトラスの社長に就任。
最初は社長就任挨拶で『株主価値の最大化が大切』と言っても社員には通じませんでした。その後ザ・ボディショップの社長をしている時に『企業は世の中を良くするためにある』と言う考えに至りました。ザ・ボディショップは、化粧品会社ですが、環境問題や人権問題に取り組む創業者のアニータ・ロディックの考えに共感しました。」

岩田氏は「企業は利益のためだけにあるのではない。世の中をよくするというミッションを実現する手段として利益が必要」と強調します。
社会をより良くするために企業が存在するという考えに至ったプロセスは、これから進路を考える学生にとって大きなヒントとなる内容でした。

ミッションをもつことで働き方は変わる

なぜ企業にもミッションが必要なのでしょうか。
岩田氏は「共通のゴールを持てるから」と説明します。会社にはさまざまな価値観を持つ人が集まるため、同じ方向を目指すための軸が欠かせません。
また、ミッションに共感した人が集まることで、組織としての一体感も生まれます。実際に岩田氏自身もスターバックスの理念に共鳴し、長い採用プロセスを経てスターバックスの社長に就任しました。

では個人のミッションはどう見つけるのか。
ヒントは「情熱を持てること」「世界一になれること」「経済的原動力になること」の重なりを探すこと。
つまり「好きで、得意で、人のためになること」です。「人にためになる」からその対価としてお金をいただけます。
岩田氏は「ミッションはすぐに見つかるものではなく、また成長とともに進化させてもいい」と語ります。大切なのは、自分がなぜ生かされているのかを考え続けること。
「働くとは、傍(はた)を楽にすること。自分の仕事が社会にどう役立つかを意識してほしいと思います」と講演を締めくくられました。

ミッションをどう見つけ、どう向き合う?

講演後は各グループで学びを共有し、質疑応答が行われました。


サークルでリーダーを務める学生からは「友人の関係性を越えて、組織の挑戦意欲を高めるにはどうすればよいか」と質問があり、岩田氏は「リーダーとは役割。自分のためではなく、チームのために何ができるかを考える“無私の心”が大切。だから時には厳しいことも言うべき」と答えました。
また、「好きで得意なことが人のためになっているか自信がない」という声には、「人に感謝されたり褒められたりすることは、すでに誰かの役に立っている証拠。まずは好きなもの得意なものをつきつめていきましょう」とアドバイス。

さらに就職の失敗への不安については「もし落ちても、相手の見る目がないなと思って、ご縁があるところで頑張ればいい」と笑いも交えつつ回答。
「就活面接で御社のミッションやビジョンに共鳴して~というのはだいたいの学生が言います。ただそれは相手起点で話している。自分起点で、自分はこういうミッションを持っていてこういう事をしたい、御社だったらそれが出来ると思った」と伝えれば良い。
学生にとって、自分の軸はなにかを考える大切さに気づく機会となりました。

担当教員からのメッセージ

岩田様には、本学客員教授として、この科目のみならず本学の多くの科目でご講演、ご指導をいただいています。
「ミッション」については、多くの学生の中に浸透しており、キャリア形成を考える上での軸となっており、学内の様々な活動は勿論、就活の際の「自分の強み」を考える上でも貴重な示唆をいただいています。
さらに社会人となってからも、生き方の支えにもなっています。
企業が社会で活動する意味、個人が社会で生きていく意味、まさにキャリアの本質に
迫る内容は、学生の大きな気づき、そして学びに繋がっていることを感じます。
改めて、この場を借りて、岩田様に心からお祈り申し上げたいと思います。

2026年2月26日

音声メディアのリアル!キャリア・オープン講座の授業で、放送作家の高山佑子氏の特別講演が行われました。

2025年11月11日(火)キャリア・オープン講座(担当:文学部英文学科 鹿島千穂専任講師)にて、放送作家の高山佑子氏をお招きし、メディアを仕事にする女性から見た「リアルな音声メディア業界」についてご講演いただきました。

授業と企業連携について

「キャリア・オープン講座」は、文学部の学生を対象とした文学部キャリア科目です。学生は、「メディア」と「ことば」をキーワードにした講義と実践を通じ、キャリアを拓く力として必要不可欠なコミュニケーション能力を培っていきます。学生は講義を通じてメディアとそこで働く人たちがどのような方法で情報と言葉に向き合っているか理解を深め、授業の後半で行われるディベートの実践によって、論理的思考力や発信力を身に着けていきます。

今回の授業では、特別講演として放送作家の高山佑子氏が登壇。「メディアを仕事にする女性」としての経験を中心に、放送作家の業務についての説明と家庭と仕事の両立についてご講演いただきました。

キャリアの歩み

高山氏は自身のキャリアについて、「番組制作会社のAD(アシスタントディレクター)から始まりました」と紹介し、「TBSラジオを中心に、さまざまな番組制作を担当していました」と振り返りました。

その後、夫の九州転勤をきっかけに一度退職し、引っ越し先では子育てを中心にしながらWebライターとしての仕事を経験。再び夫の転勤で東京に戻った際、「番組制作時代にお世話になった方の紹介で、作家事務所に所属することになりました」と述べ、放送作家として再出発した経緯を語りました。

続いて、現在担当している番組と、これまで制作に携わってきたラジオ番組について紹介があり、一覧には学生にも馴染みのある番組名も並びました。中には学生が「両親が番組のファンで、私も聞いたことがあります」というものも。

「この番組には立ち上げ担当として参加し、初代ディレクターを務めました」「これはニュース番組の原稿を書く仕事です」「ドラマのポッドキャストの仕事にも携わりました」とそれぞれ説明し、多様な番組に携わってきたことを紹介しました。

放送作家のお仕事について

高山氏は放送作家の仕事について、「番組の中身を面白おかしくするためにアイディアを出すアイディアマン」であると説明し、放送作家には特定の決まりや資格がないこと、アイディアを出す過程で原稿や台本を書くこともあるが必ず行うわけではないことなど、業界外からは分かりにくい側面を紹介しました。また、働き方についても触れ、「放送作家はフリーランスの働き方が一般的で、企業に勤めるサラリーマンとは異なり、収入や仕事量は案件によって変わります。」と述べました。

続いて、現在担当している番組の映画紹介コーナーを例に、実際の業務内容を「放送前日までにやること」「放送当日にやること」「放送後にやること」「放送以外の日にやること」の4つに分けて説明されました。

放送前日までの業務では、「出演者との打ち合わせ」と「台本の制作」を挙げ、打ち合わせでは出演者が紹介する映画の名称や話したい内容を聞き出してメモに残すと説明。コーナーで扱う映画の配給会社への連絡など、細かな作業も一人で担当していると述べました。その後、打ち合わせ内容を整理し台本を執筆します。「台本は外せない要素を言語化したもので、すべての内容を書き込むわけではありません。この言葉を必ず言ってほしい、こういう流れで進むとおもしろい、といった構成を考えます。台本は生放送や収録の際に出演者の手元に置かれ、それをベースにゲストの方々と面白おかしく話を進めてもらいます」と説明し、「25分のコーナーの場合、A4用紙の縦書きで5~6枚程度を書きます」と具体的なボリュームも紹介しました。

放送当日は、「出演者と同じ机に座ってあらゆるサポートを行います」と役割を紹介。言い忘れや言い間違いをメモに取り、後から補足できるよう準備するほか、収録ブース外の音声スタッフなど技術陣とのやりとり・調整も担うと説明しました。また、「放送後はゲスト出演者へお礼のメール、出演者への来週の内容提案、映画配給会社への事後連絡のほか、細かい事務作業を行っています」と述べました。

放送日以外は、打ち合わせで話題に上がった映画の視聴や関連情報の調査を行うとのことで、担当コーナーに関する分野を深く調べることも業務のひとつであると紹介しました。

音声メディアの今

高山氏は、ラジオが直面している「聴取者の減少」という厳しい現実に触れつつも、「メディアミックスに成功してV字回復している番組もあります。東京ドームでイベントが開催されるなど、売り上げや反響の規模はこれまででは考えられないほどです」と述べ、ラジオにはまだ大きな可能性があることに言及しました。

また、音声だけのメディアには、得られる情報量が少ないからこそ聞き手の印象に残りやすい特性があると説明。コンテンツを継続的に聴取したり、過去の放送を繰り返し聞く“コアなファン”が多いことも特徴であると話しました。さらに、動画やSNSにはない「余白」が聞き手の想像力をかき立てる点にも触れ、「受け取り手が頭の中で情報を補うため、『一番きれいな海を見ることができるコンテンツがラジオ』と言われることもあります」と紹介しました。

加えて、ポッドキャスト(インターネット上に投稿される音声のみのメディア)についても、「盛り上がっているメディア」として紹介しました。音楽配信アプリなどを通じて気軽に聴取できる点を挙げ、「日本ではリスナーはまだ多くないものの、世界的にはポッドキャスト人口が増加している」と述べ、注目度の高まりを説明。特にアメリカでは6億人を超えるとも言われ、日本でも今後成長が期待される「ぜひ注目してほしい」コンテンツであるとまとめました。

メディア業界への就業と女性

高山氏は、「大手のマスメディアへの就職は、ご存じの通り相当難しいです。本気で目指すなら相応の準備が必要で、狭き門であることを覚悟したうえで就職活動を行う必要があります」と述べました。ご自身も大学時代にマスコミ研究室に所属し、メディアに就職した先輩たちからの指導を受けながら大手メディアへの就職を目指していたものの縁がなく、制作会社に就職したことを紹介。その中でもよかったこととして、制作会社で経験を積む中で「大手メディアと比べて業務の幅が制作に限定されているからこそ、一つのやりたい仕事に専念できた点が良かった」と説明しました。また、「これは業界を問わずどの会社にも言えることですが、入社後に必ず希望部署へ配属されるとは限りません。配属されたとしても、そこに至るまでに相当な年数がかかる場合もあります」と述べ、幅広いジャンルを扱う企業ほど入社前後のギャップが大きくなる可能性に言及しました。

続いて高山氏は、メディア業界で働いた自身の肌感覚として「正直、とても昭和的な部分もあります」と率直に語りました。制作ディレクター職から放送作家として再就職するまでの約12年間、業界を離れていた間に、パワーハラスメント・モラルハラスメントをめぐる問題が表面化するなど、「職場環境は大きく改善された」と感じた一方で、「女性が長く働き続けるには、まだ課題もあります」とも述べました。企業の管理職、特に部長やプロデューサーといったポジションに女性が少ない現状にも触れ、「制度上の背景もあるとは思いますが、企業の中核を担う部門で活躍する女性は、まだ多いとはいえない印象があります」と語りました。

最後に高山氏は、「私が皆さんの年代だった頃と比べると、働く環境は確実に良い方向に変化しています。これからさらに改善していくのではと期待しています」と述べ、講演を締めくくりました。

質疑応答

講演の後半では質疑応答の時間が設けられました。「なんでも聞いてください。なんでも答えます」と積極的に促す高山氏の言葉に後押しされ、学生たちから次々と質問が寄せられました。高山氏は、その一つひとつに丁寧に答えていきました。

家庭と仕事をどう両立している?

学生からの質問に対し、高山氏は「女性はできる限り仕事を続けたほうがよいと思います」と自身の考えを述べました。一方で、仕事と家庭の両立の大変さについても率直に語りました。

現在、小学生から高校生まで3人のお子さんを育てており、夫の出張が多いことから「ほとんど単身赴任のような状況です」と家庭の様子を紹介。そのうえで、「両立できているのは、放送作家というフリーランスの働き方だからこそ」と説明しました。仕事量やスケジュールを自分で調整できることが、大きな支えになっているといいます。

また、「家事や子育てをともに担ってくれるパートナーの理解は欠かせません。それでも大変なことは多く、毎日慌ただしいです」と、働く女性としての実感も語りました。

やったことのないジャンルの番組を担当するときは?

この質問に対し、高山氏は、かつて一度も経験のなかったゴルフ情報サイトを担当した際のエピソードを紹介しました。「ゴルフは完全未経験だったので、とにかく勉強を頑張りました。調べていく中で、選手が多くSNSを活用していることを知り、ゴルフ専用のアカウントを作って関連アカウントをひたすらフォロー。流れてくる投稿やニュースを毎日チェックし、そこからニュース化していました」と具体的なリサーチ方法を説明。

さらに学習のためにゴルフスクールにも通い、「初心者であることを企画に生かし、『初心者がスクールに通ってどう成長するか』という企画を提案したところ、採用されました」と、未経験を強みに変えた経験も共有しました。最後に「興味のないジャンルを担当することはよくあります。だからこそ、何事も好奇心を持って臨むことが大切です」と締めくくりました。

女性として働く中で、壁を感じた経験はありますか?

高山氏は「たくさんあります」と前置きし、「AD時代に立ち上げから関わっていた芸人さんの番組を外れたことがあります」と具体例を紹介しました。

当時担当していたラジオ番組は内容がかなり踏み込んだもので、現在とは制作環境も異なっていたといいます。そのため、別の先輩が担当を引き継ぐことになり、結果として担当が変更になったと説明しました。「理由の一つに“女性だから”という説明があり、当時はそうした判断が受け入れられる空気もありました」と振り返ります。

この経験を通して、「女性としてどの分野で力を発揮していくのかを考えるようになった」と語りました。

一番苦戦し、挫折しそうになった仕事は?

学生からの質問に、「考えたこともなかった!」と一つ一つの企画に向き合い続けてきたことを表す一言を返した高山氏。

「メンタル的につらいことは何とか乗り越えてきました」と前置きしたうえで、紹介したことがニュースデスクの夜勤の仕事でした。ニュースデスクは、常に新しい情報が入ってくるニュースを取捨選択し、定時放送の規定時間内に収まるよう原稿にまとめる役割です。更新され続ける情報を読み、放送に間に合わせて文章を構成する必要があります。夜勤は夕方16時から翌朝10時までの勤務で、「特につらかったのは速報対応です」と説明しました。速報とは、地震や大きな事件などが発生した際に通常の放送を中断して流す臨時ニュースのことです。「自分が書いた原稿を自分で読む場合もあり、通常業務の時間が圧迫されてしまうんです」と苦労を語り、「それでも放送時間に原稿を必ず間に合わせなければならないし、担当者は一人なので全て自分で判断する必要がある。責任感と緊張感が大きく、寝る時間が用意されていても寝れませんでした」と振り返りました。

放送作家をやっていてよかったことは?

高山氏は「いろんな人と仕事ができること」と答えました。役者、女優、芸人、政治家、スポーツ選手、評論家、料理家、インフルエンサーなど、多様な職業の人と関われる点を「この仕事ならではの魅力」と紹介。また、やりがいを感じる瞬間として「自分が関わった番組や企画にリアクションが返ってくること」を挙げ、「『届いている』と実感できたとき、本当に幸せを感じます」と話しました。

授業の最後に

高山氏は、ポッドキャストについて、書籍を紹介しながら「本当に注目度が高いメディアです」と述べ、学生に「メディアに興味があるならぜひ自分で取り組んでみてください」とエールを送りました。また、TBSラジオの番組表を配布し、「ラジコ(スマートフォンでラジオを聴けるアプリ)をダウンロードして、実際に番組を聴いてみてください」と呼びかけ、関心を具体的な行動へとつなげるメッセージを伝えました。

今回の講演は、学生にとって「音声メディアの今」と「情報を集め言葉にする仕事」について一歩進んだ理解を得る、貴重な機会となりました。

担当教員からのメッセージ

本科目は「メディア」と「ことば」をキーワードに、キャリア開拓に必要なコミュニケーション能⼒の向上を目指す授業です。新聞、ラジオ、テレビといったマス・メディアに⽬を向け、理解を深めてもらうために、放送作家として第一線で活躍されている高山様をお迎えしました。

当初、「放送作家」が番組制作においてどのような役割を果たす職業なのか、あまりピンときていなかった学生たちでしたが、制作現場の熱量が伝わってくる刺激的なお話を聞き、質疑応答では全ての受講生から質問が出るほど、興味を惹かれたようでした。また、仕事と子育てを両立しながら、ライフスタイルに合わせて働き方を柔軟に変えてきた高山様のキャリア開拓のあり方も、働く女性のロールモデルとして参考になったようでした。

メディアで「ことば」を生業としている方の実体験をうかがうとともに、女性のキャリア形成について考える貴重な機会となりました。