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2024年9月25日

「スポーツ栄養学a」の授業で元朝日新聞記者によるスポーツとメディアの関係について特別講義が行われました。

7月2日に「スポーツ栄養学a」(担当:生活科学部食生活科学科 奈良典子准教授)の授業で、元株式会社朝日新聞社の記者の安藤嘉浩氏による特別講義が行われました。スポーツ記者として長く取材をしてきた経験から、スポーツとメディアの関係を詳しく紹介。学生たちにとって、これからのメディアの在り方や新しい気付きが多い講演でした

元球児が高校野球を取材

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安藤氏は朝日新聞で記者をやって33年。朝日新聞時代から主に野球を担当されており、高校野球を中心に取材。球児だった安藤氏にとって憧れの地であった甲子園に記者として関わることができ、「夢が叶った」と語りました。

その後、柔道も担当するようになり、2004年にはアテネ五輪の取材も行いました。「そのときに奈良先生とご一緒したんです」と、当時管理栄養士として選手団に参加していた奈良准教授との出会いを説明。自身のダイエットの助言ももらったと笑いを交えて話されました。

メディアとともに発展したスポーツ

「さて皆さん、ニュースって何でチェックされますか」と安藤氏は問いかけました。学生のほとんどはインターネットと回答。テレビや新聞に手を挙げた学生は少数でした。インターネットも新聞社のサイトなどではなく、yahooなどでチェックする人が多数でした。安藤氏は「それでも、大学生のなかでも信頼感という意味ではNHKの次に新聞という調査結果が出ています」と新聞は高い信頼を持っている情報源であることを確認しました。

安藤氏はメディアとスポーツの発達を並行して説明。新聞は印刷技術が発達して明治初期に誕生したメディアです。時を同じくして近代スポーツも日本に伝来してきました。1915年にはストックホルム五輪に日本初参加し、前後する時期にラジオが普及。戦後テレビが放送開始し、1964年の東京五輪では初の衛星放送が導入され、世界どこにいてもリアルタイムに見られるようになりました。そしてカラーテレビから時代はインターネット配信が主流になっています。「去年はネット配信で高校野球が地方予選からすべて中継を見られるようになった」と話されました。

新聞社が主催して高校野球は始まった

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話は高校野球の話題へ。高校野球は1915年に初開催されました。「実は朝日新聞が主催です」と安藤氏。当時野球人気は高まっていたものの、地方予選を開催したくとも競技団体が存在せず、まとまって大会を行うことが出来ずにいました。そこで全国に通信網がある新聞社がハブになることで開催が実現。新聞にはたくさんの記事が書かれ宣伝となり広まっていったのです。

「これには関係者たちの思惑があります」と安藤氏。野球の発展を目指す野球経験者を始め、沿線の開発を目指す阪急電鉄や、販路拡大したいスポーツ用品企業などが朝日新聞に主催を依頼したのです。朝日新聞自身も部数競争に勝つために大会主催を決断しました。それまで新聞は戦争の報道を知るためのメディアとして主に利用されていました。戦後になり、次に人気があるニュースがスポーツでした。スポーツを伝えることは新聞社にもメリットが大きいのです。Jリーグや2021年に開催された東京五輪なども多くの新聞社が支援しています。

ただ、メディアには大きな影響力があり、スポーツのルールを変えてしまうことも。バレーボールのラリーポイント制や、バスケットのクォーター制はテレビ中継の都合と言われており、「それがはたして正しいのか。スポーツの発展に寄与していればいいがそうとも言い切れないところもある」と安藤氏は語りました。さらに注目の大会の放映権料は年々高騰を続けています。2022年に開催されたサッカーワールドカップでは200億円とも。日本ではネット配信企業が放映権を取得しましたが、契約者しか見ることが出来ず、安藤氏は「見たい人しか見られなくなっているのも良いのかどうか、今後の課題です」と話されました。

新聞記者は「歴史を残す」仕事

安藤氏は「新聞記者は歴史を残す仕事」と先輩記者に言われたことを紹介。「昔の書物を見ることで、昔のことが分かります。歴史を残すと思って記事を書いている」と話し、同時に「報道は公平でなくてはいけない。はたしてちゃんと報道できているのは懸念があるまま今に至っている。僕らも注意しながら記事を書いています」と話しました。

とはいえ、うまく伝わらないことも。高校野球部の女子マネージャーを取材した際、毎日部員におにぎりを作るため進学コースを一般コースに変更したことを美談として取り上げたとき、それは正しい在り方なのかと「今でいう炎上」したと話しました。「いろんなことを理解し、勉強して記事を書かなくてはいけない」と真剣に語りました。

様々な一流アスリートを取材した経験から学んだことは、何事にも努力する姿勢やいつも前向きであることなど。そして、彼らに話を聞くときには食事に誘うのが定番だったと言い、「栄養や食事に関することは人々を豊かにすること。勉強したことを活かして頑張っていただきたいと思います」と、食生活科学科の学生たちにエールを送りました。

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2024年8月25日

自律的人材になるために!「実践キャリアプランニング」の授業でホリプロ取締役による特別講義が行われました。 

大学共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社ホリプロ・グループ・ホールディングス取締役である鈴木基之氏が特別講義を行いました。日本の芸能・エンタメ業界の最前線にいる鈴木氏から、華やかな世界の舞台裏の話がたくさん飛び出し学生たちは興味津々。世界で求められる人材になるヒントも多くいただきました。

エンタメを産業へ!

この日は7月12日。鈴木氏は「今日は何の日か知っていますか」と問いかけました。7月12日はマララデー。10年前に、16歳だったマララさんが国連で「すべての子どもたちに、すべての女性に教育を」と訴えた日です。鈴木氏は「まさに女子教育の先駆者である下田歌子先生が創設された実践女子大学で、今日、話が出来ることは運命だと思います」と語りました。そして「芸能エンターテイメント業界を生き抜く心の糧」と題し儒学者の言葉を引きながら、熱量高く話を始められました。

「皆さんにエンタメ業界に興味を持っていただきたい」と鈴木氏。
それは単に俳優などに興味を持つということではなく、「産業」として注目してもらいたいということ。
「IT業界や自動車業界などは産業と呼ばれますが、悲しいかなエンタメは産業と呼ばれていないんです」と話します。
しかし、鈴木氏はエンタメが単なる娯楽ではなく、強い産業として世界的に拡大していることを説明。国もようやくエンタメ・コンテンツを産業として伸ばすことを目指し始めています。
「日本経済をけん引する一つの成長分野として期待されている」と話しました。

芸能プロダクションの仕事とは?

ホリプロには現在約450名のタレントや俳優が所属しています。
文化人やスポーツ選手、音楽グループも多く在籍しています。
「ひとりのタレントが売れてくると、楽曲を制作する部署(音楽制作部)、コンサートをする部署が出来、コマーシャル、ドラマ、映画や舞台出演の依頼が増えて来るようになると、自らの所でCMやテレビ番組、映画制作をする部署(映像制作部)、そして舞台制作をする部署が・・・と様々な事業部が生まれてきました。これが基本的な芸能プロダクションの成り立ちです」と鈴木氏。
CMや映画、ドラマ製作部などは自社所属のタレント以外も多くキャスティングし、製作されています。
「自社のタレントを出すことが目的ではない。あくまでビジネスとして多くのお客さんに観てもらうことが大事」と芸能プロの方針を説明しました。

鈴木氏はホリプロに入って45年。ほとんどのエンタメ事業に関わって来られました。
入社当初はアイドルが苦手だったと言います。
しかし多くのファンレターを読み、考えが変わります。学校で友人関係に悩んでいたけれどアイドルの曲を聞いて頑張ろうと思った学生などを筆頭に、多くのエピソードがありました。
「アイドルが人の生き方まで変えることを知った」と言います。
音楽の力、タレントのすごさを身に染みて知ったと話しました。

先を見て長所を伸ばす

マネージャー時代には失敗もあったと語ったのは、タレントの方向性や戦略について。
「いまでは誰もが知る国民的女優も、最初から人気があったわけではないんです」と、当時目指していた方向性が間違っていたエピソードを披露くださいました。
「マネージャーは1年先、3年先を見据えて仕事を選んでいかなくてはなりません。さまざまな個性を持つタレントがいるなか、先を見据えてこの原石をどう磨いていくか」と長期的な目線を持つことが大事であると話されました。

鈴木氏は儒学者・佐藤一斎の「着眼高ければ則ち理を見て岐せず」の言葉を引きます。
先を見据えて戦略を立てる大切さを教える言葉です。
また「我は当に人の長所を視るべし」の言葉を引き、「ホリプロは長所を伸ばしていきます。欠点は自分でも分かっている。本人が見えていない長所を見て伸ばしてあげるのがマネージャーの役割」と隠れた、しかし重要な視点についても話されました。

人間力を鍛え自律的人材へ

ホリプロはグローバル戦略にも力を入れています。これからの芸能人に求められるものは、一芸だけではダメだと話します。
鈴木氏は「これまでは日本の中で売れていればよかったけれど、日本一になることがかっこいいことではなくなっている」と話しました。そしてそれは、芸能人に限りません。これからは「自律的人材が大事」だと語ります。

他の情報を信じすぎず、自分で信じること。指示がなくても自ら能動的に動き、問題解決に向かう力。
これは下田歌子が育てようと目指した人物像でもあると鈴木氏は言います。一人で行おうとせず、周りを巻き込む「人間力」を持つ人材です。「一人でも多くの人に下田歌子先生のようになってもらいたいと思っています」と講演を結びました。

熱量を持って作品を作る

授業の最後には学生からの質問を募集し、鈴木氏が回答くださる時間も。
「女性マネージャーに必要な力はなんですか」という質問には、
「幅広い知識を常に求め続けて、何にでも好奇心を持って取り組めること、そして、今はSNSをうまく扱えることが求められています。」と回答されました。
「映画化はどうやって決まるのでしょうか」という質問には
「プロデューサーの熱量が一番です。ホリプロには小説や漫画など、ホリプロでこの作品を作りたいという強い思いで入ってくる人が多い。映画化までいくつもの壁がありますがこだわりを持って作れる人間が、作品のファンからも受け入れられるものを作れる」と回答されました。

芸能界の裏側や経済効果など、知らなかった世界に触れることが出来、学生たちは多くの刺激を受けた講義となりました。

担当教員のメッセージ

昨年からご講演をいただいているホリプロ様からは、今年は役員であり、恵那市ともご縁の深い鈴木基之様にお越しいただきました。ホリプロ様の事業内容、そしてエンタメ業界のグローバル化の現状など、とても幅広い内容をお話しいただきました。
また、それぞれのお話しと本学創立者下田歌子先生の言葉を結び付けていただくなど、学生にとって、大変貴重な時間となりました。
この場を借りて鈴木様をはじめ、ホリプロの皆さまに心より感謝申し上げます。

2024年8月5日

人とのつながりを大事に。「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会理事長が人生と企業の選択について講演を行いました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月20日に日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えしての特別講演が行われました。大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリアを持つ明石氏は、自身の経験を通して、人の繋がりや人生について幅広くお話されました。

企業をどう見極めるか

本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。司会の学生は「社会に出るとマナーが必要な場面が多いですが、マナーを学ぶ授業はあまりなく私自身もマナーに自信はありません」と話し、「今回の講演で何か一つでも就活や、社会人として役立つものを身に付けたいと思います」と、明石氏にマイクを渡しました。

明石氏も「私が学生のときは、キャリアやマナー教育はなかった」と話し、この授業が貴重な内容であることを強調され、これから就職活動が待っている学生たちに向けて、「就職は人生のターニングポイント」と話し始められました。
明石氏は45年前に日本航空株式会社(JAL)に新卒のCA(客室乗務員)として入社されました。しかしその少し前は「結婚したらCA職をやめなければならない時代もあったそうです」と話します。
また、明石氏が就活をした時は、第2次オイルショックで4年制大学卒の女性は就職活動に苦戦したそうです。最近ではコロナで就職が厳しかった時があったように、「就職活動は、世の中の経済状況に影響されることが多いんです」と明石氏。

今、社会は大きく変わっています。その上で、今後どのような企業が発展していくのかなどを見極めて、企業選びをしてほしいと話します。
また、学生の私たちにとっては知名度がなくても優良な企業があることや、女性活躍を推奨している企業などの調べ方なども紹介してくださいました。

自分はどんなキャリア志向だろう?

「今はいつでもキャリアチェンジできる時代です」と明石氏。転職のハードルは低くなったのは良いこととしつつも、「スタートはやっぱり大事」と強調されました。
明石氏自身も最初に就職した企業がJALで良かったと話しました。
「しっかり教育をする会社だったことが、きっと今につながっていると思います」と言います。

とはいえ「これからキャリアを考えると迷うことが多いですよね」と明石氏。
企業の数は多く、どういう会社が自分に合っているんだろう、と考えるとき、少しでも自分のことを知っているとある程度絞り込みやすいと話しました。
そのひとつとして、自分のキャリア志向を確認することが大事と紹介。
自分は、「チャレンジ志向型」なのか、人と人を結び付ける「プロデューサー型」か、一つのスキルを突き詰めてやっていきたい「専門職型」なのかなどなど。
「仕事も大事だけれど、家庭もしっかり大事にして働きたい人ももちろんいらっしゃるでしょう。自分の仕事に対する志向を知ったうえで、あなたにとっていい会社を見つけましょう」と話しました。

また、すぐにやりたい仕事ややりがいのある仕事ができるわけではないということも忠告。
つらい仕事や好きではない仕事をやらなくてはいけないこともありますが、「逃げない、折れない、継続することが大事」で、渡辺和子氏の「置かれた場所で咲きなさい」という本を紹介されて、まずは与えられた仕事をしっかりやってこそ自己成長に繋がると伝えました。

すべては人で決まる

「会社とは人の集団です」と明石氏は言い、人との関係を大切にすることを伝えました。
「チャンスをくれるのもあなたを評価するのも、相手や周囲の人」と話し、人から好かれ、人としての好感度を高めるポイントを話されました。
その秘訣は「明・元・素」。明るく、元気で、素直なことです。

また「主体的な思考をもつ」ことの大切さも伝えられました。
「なんでもマニュアルに基づいて答えを教えてもらいたいと思う人が多いようですが、正解は1つとは限りません」と言います。
そのためには、何が本質なのか、多角的に物事を見ることが大切だと語りました。
「マナーも時代とともに変わっています。しかしその本質は変わらないんですよ」と明石氏。
マナーの本質は、人と良い関係を築くためにどうしたらいいかを考えること。そのための配慮や心遣いがマナーです。
自分自身が大切にしていることは何なんだろうか、相手はどうして欲しいのだろうか、という判断の基準を持つことで惑わされないようになると話しました。

「みなさんは20歳前後で、結構生きてきた感じがしているかもしれないけれど、皆さんの人生はこれからです」と明石氏。
時間をどう過ごし、人とどう関わっていくかで、人生の輝きが決まると言い、「先が決まっていないという事は、未来は可能性に満ちて開けていると希望を持ってほしい」と講演を結びました。

目の前の仕事に一生懸命に

講演後は質疑応答の時間が設けられました。
学生から「時間の使い方で意識していることは?」という質問に対して、「集中すること。なにかに一生懸命になっていると時間が早く感じられるでしょう。そんな風に何事にも情熱を持って取り組んでみると良いと思います」と回答されました。
「明石氏はどんな基準で仕事をされていますか」という質問には
「一番大事にしているのは「信頼」。信頼を築くのは時間がかかるし大変。しかし頼られることは嬉しいし、信頼してもらえるかどうかが人として大切な基準になります」と答えました。

学生たちは「自分に合った企業をどう選ぶか」という、就職活動に向かう上で大きなヒントを得た講演になりました。

担当教員よりメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様に今年もご登壇いただきました。多くのご経験から導き出された明石さんからのメッセージの中に、チャンスをくれるのも評価してくれるのも周囲の人であり、そのためには、好感度プラス「明・元・素」、すなわち明るく、元気で、素直であるというお言葉が印象的でした。この場を借りて、明石様に心から感謝申し上げます。

2024年7月29日

ポジティブ思考で人生を輝かせる!「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂執行役員の関根近子氏による講演が行われました。 

大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月4日に元資生堂執行役員常務の関根近子氏をお呼びしての特別講義が行われました。「仕事もプライベートも輝いて生きる」をテーマに、関根氏がどう壁を乗り越え、キャリアを形成していったかを語ってくださいました。学生たちにとって自己成長につながる多くのアイデアやヒントが盛り込まれた講演となりました。

輝いて生きるための指針とは

この授業では学生が司会進行を担当します。担当の学生に紹介された関根氏は「今日は美しく輝く女性になるためのヒントも話していきます」と笑顔で学生たちに語り始めました。

はじめに伝えたのは3つの仕事観。
「Job」「Career」「Calling」という言葉です。「Job」は、お金を稼ぐ手段としての仕事のこと。
「Career」は自分も成長していく仕事、「Calling」はやりがいがあり、することが喜びである仕事です。
「私も最初は、仕事はお金を得るための手段としか考えてなかったのですが、仕事を通してこんなことを実現したいという気持ちの変化があり、今はやりがいのある仕事になっています」と、自身の仕事への意識が変わった経緯を話されました。

「売らない」セールスで自分が変わった

大学進学を志していた高校時代、父親が事故に遭い、関根氏は家庭を支えるため就職を選択。
とにかくお給料の良いところ、と選んだのが資生堂でした。まさにお金を稼ぐ手段としての「Job」だったと言います。入社当時の仕事は、スーパーなどに設けられた特設会場で通りかかった人に化粧品を紹介し販売する、いわゆるキャッチセールス。
ノルマはきつく、客にも迷惑がられ、自分の仕事に誇りが持てなくなった関根氏は、先輩に辞めたいと相談します。

そこで言われたのが「辞めるなら、売らなくていい」という言葉。
その代わり、客一人ひとりに合わせ、プロとしてメイクの仕方を教えることをアドバイスされました。そこで言われたのが「私たちの仕事は単に化粧品というモノを売ることではなく、お客様の魅力を引き出すことなのよ」美容のプロとしての知識をお客さまのために使うことの大切さを気付かされました。
瞬時にその人に合わせたメイクを、自分の知識と技術のなかから選んで伝えること。そのことを意識して接客するようになると、徐々に売り上げにつながっていきました。
さらに客から「教えてくれてありがとう」と感謝されるように。
「もっとありがとうと言われたいと思うようになりました」と語りました。

この経験から関根氏は「それまで自分を評価するのは上司だと思っていたのですが、自分を評価するのはお客様」と意識が変わります。
そこから礼儀作法や滑舌、お礼状を書くためのペン字などなど、お客様のため自分に足りないものを自ら学んでいったと話します。
「環境はまったく変わってないのに、仕事に行くのが楽しくなった。不思議ですね」と意識を変えることの大切さを伝えました。

自分に自信を持つことの大切さ

のちに国際事業部に異動になった関根氏は、自己肯定感を高めるように意識するようになったと話します。当時の上司はドイツ人。
英語はそれほど得意でなく、原稿にルビを振り必死で英語スピーチをしたこともあったそう。
なぜ自分がこの部署なのかと上司に尋ねると「大事なのは語学力じゃない。自分の意見をはっきり言うというところがいいんだ」と言われたのです。
物おじせずなんでも話すことがグローバルな人材に必要なことだと教えられ、自信を持つことの大事さに気付いたと言います。
現状、出世するのは男性が多いのが現実。しっかり競争意識を持ち自己アピールできる女性になってほしいと伝えました。

「皆さんも自分に自信を持ってください」と語られました。

ポジティブ思考で困難に立ち向かう

自己肯定感を高めるために大事なのが「ポジティブ思考」だと関根氏は言います。
ただ、ネガティブな思考がだめだということではないと話しました。
「私も愚痴や不満を言っていた時期がある。ポジティブ思考とは、嫌なものは見ないということではありません。物事の見方や思考を変えてみることを意識してみることです」と語ります。
ポジティブとは、辛いことや課題があっても希望や解決策を探そうとする強い精神のこと。
「愚痴を言ったからって変わらない。じゃあ現実を受け止めて、自分がどう気持ちを切り替えるかが大事」と関根氏。
「自分の人生は自分が作るんです。過去と他人は変えられないが未来と自分は変えられる」と力強く語りかけました。

最後に関根氏は「歩いた後に一輪の花を咲かせたい」という托鉢者の言葉を紹介し「皆さんもどうぞ、これからの長い人生でいろんな花を咲かせていただければ」と講演を締めくくりました。

悔しい気持ちをポジティブに変換するコツは?

講演の後は質疑応答の時間となりました。
「様々なことに挑戦しすぎて中途半端になってしまうときは、一つに絞るべきでしょうか」という質問には「挑戦しなかったら分からなかった出会いもある。最初から一つに絞らないでいいと思います。そのなかで深めていきたいものをみつけていけるでしょう」と回答しました。
「人のいいところを真似したいと思う前に、自分と比較し悔しいと思ってしまうがどのようにポジティブに変換すればいいでしょうか」という質問には
「負けず嫌いなのはいいと思う。悔しいと思わせられたということはどういうことか考えてみましょう。自分もできるはずと思っているからかも」と回答されました。

キャリア形成のヒントになる多くの視点やアイデアを教えてくださり、学生たちの心にも多くの言葉が響いた講演となりました。

担当教員のメッセージ

本授業の最後のゲストとしてお迎えいたしました。毎年お会いするたびに、生き生きさが増していく関根さん、ご自身のお姿から、すでにポジティブさを感じますが、今年のお話しも、ポジティブ思考に繋がるものばかりでした。しかし、関根さんが語るポジティブ思考とは、単に「ものごとを良い方に考える」ということではなく、辛く、苦しい状況のなかでも希望や解決策の光を探そうとする思考とその光を信じて進んでいくという強い精神のことであります。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。関根様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

2024年7月25日

自分の大事なことを軸に!「国際理解とキャリア形成」の授業で資生堂国際マーケティング部の岡野静佳氏の講演が行われました。

6月4日(火)に大学共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、株式会社資生堂の岡野静佳氏をお招きしての講演が行われました。今年の5月に育休から復帰したばかりの岡野氏は、キャリアの築き方や生活との両立など、女性としてのロールモデルを示してくださいました。

変わらないために時代に合わせて変わっていく

岡野氏も、京都の女子大学出身。「女子大学を卒業した女性として、そして今後出産を考えている人には働くママの参考としてもらいたいと思います」と講演を始められました。岡野氏は2007年に資生堂に入社。そのときの人事担当が深澤教授だったと言います。面接後、エレベーターが閉まるまで深々と頭を下げていたのを今でも覚えていると語り、「学生に対しても、真摯に向き合ってくれる会社なんだと実感しました」と話しました。

資生堂は1872年創業の150年以上の歴史を持つ日本を代表する企業です。現在の売上比率の73%は海外で達成している、立派なグローバル企業でもあります。
けれどもそんな大企業でもコロナ禍の打撃は大きかったと言います。
「コロナ禍でお客さんの購買の意識も、市場も変わりました。変わっていく環境にどう対応していくかが大事」と『ビジネストランスフォーメーション』という言葉を伝えました。
「ただ、変わりたくないところ、資生堂らしさはなにかということも考えていかなくてはいけません。大事な部分が変わらないために変わり続ける」と、企業の理念を伝えました。

化粧品ってどうやって作られる?

岡野氏はデパートの営業部からスタートしました。
しかし、いつかは海外で働きたいと思い続け、募集があった際に手を挙げ国際マーケティング部(SHISEIDO GLOBAL BRAND UNIT)に配属。以来ずっと商品開発に携わっています。
そのなかの一つ、2018年に大学生をターゲットにしたブランドを立ち上げた際の経験について詳しく語ってくださいました。

若年層のメイクポーチに資生堂のアイテムを入れてもらいたい、という思いから大学生たちへアンケート調査をすることからスタート。
そして資生堂らしさをどう表現するかを考えます。手をかけて心を込めて作られる、という共通点から日本伝統の和菓子をコンセプトとすることで、繊細な『手つむぎ』を表現し商品として届けようと考えました。
コンセプトが決まれば色作り。研究所で他のブランドのアイテムも参考にしつつ、若い世代に受け入れられそう、かつその時期に流行りそうな色を考えます。さまざまなものを混ぜ合わせて考え、ときには絵の具にジャムを混ぜたことも。
色を研究所に伝え製品ができると、話題化の仕掛けとして有名和菓子店とコラボレーションしてポップアップストアを展開。
その甲斐あってSNSで話題となり、2018年限定のブランド予定でしたが翌年以降も展開する大成功をおさめました。

働く女性として、ママとして

順風満帆に見える岡野氏の活躍ですが、表で示された人生はアップダウンの連続でした。
入社直後は営業の仕事がつらく落ち込みますが、徐々に仕事が楽しくなり上がっていきます。念願の国際マーケティング部に異動するも、やりたかった仕事とは違い理想と現実のギャップに悩みます。
仕事が認められるようになると自信が付き、「今は思い通りの商品が作れるようになってきた」と、「今は仕事がとても楽しいです」と語りました。

また、岡野氏のなかで大きな出来事として「母という新しいキャリアを始めた」こと」だと言います。
「育児は未知の世界で、仕事をしているほうが楽だと思ったくらい」と両立の大変さを話しましたが「家庭だけではない、仕事での顔があることは自分にとって、とても良かったと思います」と語りました。

いまもベースになっている留学中のあるできごと

ここで岡野氏は「自分の原点」という留学中のひとつの出来事を語りました。
空港で、全盲・難聴の男性に助けを求められ、なんとかコミュニケーションを取り手助けしたエピソードです。彼が飛行機に乗る間際、満面の笑みで手を振ってくれたのを見たとき、岡野氏は「今までにないものを感じました」と話します。
自分が人を助けられたという満足感や、喜ばせられたという嬉しさ。それらがとても印象的だったと言い、就活のときはこのエピソードをエントリーシートに書いたり面接で話したりしたと語りました。

「ガクチカというと、学生時代に力をいれたことだけと思われがちですが、こういった日常の一コマでもいい。自分の言葉で、何が自分のなかで価値になったのかを伝えられること」が大事と力強く話します。
ドキドキしたりワクワクしたり、自分しか経験してないことを探すことが、就職活動でのヒントになると話しました。
心を重んじ、「自分が何をしたいのかを大事にしてくれる企業を選んでほしいと思います」と講演を終えられました。

企業に合わせず自分の軸を大事に

講演後に学生は班ごとで話し合いが行われました。
その後意見や感想をリアルタイムで掲示板に投稿し、読み上げる形で質疑応答がありました。就活について、女性として働くことについての質問が続々寄せられます。

「就活のときにやりたいことはありましたか」という質問には「なかったです。やりたいことではなく、自分が大事にしていたいことを忘れなくていい企業を選ぶことが大事」と回答しました。
「内定を取る秘訣は?」というものには。
「私はエントリーシートを企業に合わせて書き換えたりはしていなかったです。企業に合わせず、自分の大事なことを軸に勝負し伝えることで、共感してくれる企業と縁があると思います」と話しました。
岡野氏が働く女性の先輩としての姿を示してくださったことで、学生たちは自身のやりたいことや軸を考えるきっかけになる講演でした。

担当教員からのメッセージ

初めてお会いしたのは今から15年前、私が企業の採用を担当していた時でした。
きらきらと輝く姿は今でも強く印象に残っており、社員として成長を心から
期待していた人材です。今や、グローバル部門におけるブランドマーケティングの中核的存在として活躍されるとともに、出産の期間を経て、久しぶりに私の授業に帰ってきて下さいました。
仕事にも、育児にも、100%以上のスタンスで取り組む姿が、学生の心に強く響いたようです。
岡野さんの益々のご活躍を心からお祈り申し上げます。本当にありがとうございました。

2024年7月22日

社会に出るための知識を付けよう!「実践キャリアプランニング」の授業で「日本労働組合総連合会」の副事務局長による講演が行われました。 

5月24日に大学共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本労働組合総連合会(連合)の副事務局長である井上久美枝氏による講演が行われました。数回にわたって連合の皆さまがご協力くださり、働くことと女性の立場についてお話いただきました。その連続企画の最終回である今回は、現代のジェンダー平等について学ぶ機会となりました。

一人ひとり自立することが大切な時代

井上氏は独立行政法人の日本スポーツ振興センター出身。
国立競技場や国立代々木競技場の運営などを行う法人です。
連合に関わるようになってからは、男女雇用平等について本格的に携わり、男女雇用機会均等法などの改正にも関わりました。参考人として国会で意見陳述した経験も。

井上氏は「職場のなかだけでなく、社会にジェンダー平等を広めていきたい」と話します。
「これからは一人ひとりが自立して生きていく時代です。待っていても白馬の王子様はやってきません」と、女性が生きていくには一人ひとりの自立と、社会の理解が広まることが必要と語りました。

男女平等の現状は?

まず井上氏は戦前の女性の立場から話し始めました。
戦前の民法は「妻の無能力」と呼ばれる規定があったのです。夫の許可がなければ働くこともできませんでした。
この不平等に女性たちが立ち上がり、1945年に女性も参政権を獲得。
1946年には39名の女性議員が誕生しました。

しかし、その後の男女平等についての動きは遅々としており、現在の女性議員の数は46名。ほぼ増えていません。
井上氏は自身の経験として「技術家庭の男女共修」についても語りました。1990年まで中学生の授業は、男子は金属や電気技術を学ぶ技術科と、女子は料理や裁縫を学ぶ家庭科に分かれていました。
「もし、技術科の授業を受けていたら、私の職業人生は変わっていたかもしれません」と、最近まで性別役割が学業にも影響を与えていたことを伝えました。

とはいえ、世界全体を見れば少しずつジェンダー平等への流れは強まっています。
日本も国を挙げて取り組んでおり、2023年には上場企業は女性役員30%を目指すと方針を発表。この発表を受け、大手OA機器関連会社の株主総会で「役員候補に女性がいない」ことを理由に、社長再任に半数近く反対票が集まるなど、産業界にも少しずつ影響が及んでいます。

無意識の偏見に囚われないために

井上氏は、学生たちに知っておいてもらいたい言葉として「アンコンシャス・バイアス」を紹介しました。
アンコンシャス・バイアスとは無意識の偏見。男性は車の運転が上手い、女性は地図が読めないなど、いつの間にか感じてしまっている偏見のことです。
「こういう思い込みを言われたことはないか聞くと、多くの女性に経験があります」と井上氏。

合わせて「ステレオタイプ・スレット」についても説明しました。
「女子は数学が苦手だ」と言われたグループの女子の、数学テストの正答率が著しく下がったという研究を伝え、「自分に対して思い込みを入れないで進路選択してください」と語り掛けました。

女性が活躍する社会を目指して

続いて、雇用形態についてのグラフも提示。
正社員と非正規の割合をみると、一目瞭然で女性の方が非正規で働く割合が大きいのが分かります。
「働く女性は増えましたが、正社員ではないんです」と現代の問題点を話しました。さらに男女の賃金格差は国際的にみても、どの国も男性より女性は下回っています。
特に日本では、年金は給料がベースになっています。高齢の単身女性の貧困問題は深刻で、「きちんと国に取り組んでいただきたい問題です」と井上氏は話しました。

女性活躍のための壁は、「採用」「育成」「継続」「昇進」の4つあり、まだまだ男性ばかりの職場や、女性の採用率が低い職場も多くあることが問題です。
さらに育児と仕事の難しさはかなり深刻で、管理職などの役職を目指す女性も少ないのが現状。連合でも、地方連合会など100近い組織のうちトップが女性なのはわずか3つ。
井上氏は「これが現実。連合からも変えていきたい」と話しました。

けれど、「お茶汲みは女性の仕事でしたが今は違います。そうやって職場の規範や、社会の常識が変わってきています。それは時代の力。時代ってすごい」と井上氏。
「諦めず出来ることからしていかなければ」と語りました。

知るは力!知識を持って社会へ出よう

講演が終わると、学生は班ごとで話し合い意見や感想をリアルタイムで掲示板に投稿。
深澤教授が読み上げる形で質疑応答が行われました。
「女性は家事育児があるから非正規なのは仕方ないのかもしれないが…」という意見には「非正規でも仕方ないと思ってはいけません。家事育児は夫婦二人のこと。お互いが協力し合い、キャリアを築くことが大切」と思い込みを正しました。

「強制的に女性の役員を何割以上にするなどと決められないのでしょうか」という質問には「できます。実際にそうしている国もある。ただ日本では、実力に合わせてなるもので片方の性を優遇することは不公平ではという考えが根強い」と回答されました。
「女性も働く場が増えてきたと思っていたが、実際には非正規で働いていることが多いと知り残念な思い」という感想には、「そうですね。でも、知るは力です」と話しました。
知らずに社会に出るのと知ってから臨むのではまったく違います。
これから社会に出る学生たちに対しエールを送りました。

2024年7月22日

男女格差をなくすには?「実践キャリアプランニング」の授業で連合のジェンダー平等・多様性推進局長による講演が行われました。

5月17日に「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本労働組合総連合会(以下、連合)のジェンダー平等・多様性推進局長である菅村裕子氏による講演が行われました。社会で女性として活躍する上で知っておくべき法律やルールについて分かりやすく解説され、学生たちにとって学びの多い授業となりました。

法律で女性の地位向上を

菅村氏は神戸大学の大学院へ進学。
卒業前の就職活動において、とある企業の面接で「女性が大学院に行ってなにがいいの?」と言われたと話します。
女性というだけで、学びの機会を得ることを否定されるのかと憤った経験を話されました。

法的トラブルに対する支援を行う法テラスを経て、女性の地位向上の仕事がしたいと青年海外協力隊に参加し、シリアなどに派遣。活動に尽力されました。
中東における女性の人権問題はよくニュースになりますが、「日本の女性も本当に大変」と菅村氏。現在は連合に勤務しています。

連合とは各企業・業界の労働組合が加盟しているナショナルセンター(中央組織)です。労働者は労働基準法を含む労働関係法令で守られてはいますが、「法律で守られている部分は必要最低限」と菅村氏。
連合は労働者の権利を守るために活動しています。

法律だけでは男女平等には不十分?

労働条件の最低基準を定める労働基準法は1947年に制定され、第4条において「男女同一賃金の原則」が明記されました。女性であることを理由として賃金の差別的取扱いはしてはいけないというこの条文は一見男女平等のように思えます。
「しかし、募集や採用、配置、教育訓練、昇進や定年等における、男女の差別的取り扱いは禁止されませんでした。」と菅村氏は指摘しました。
性別による差別をなくすことが必要と、1986年に「男女雇用機会均等法」が制定。
2007年改正により、女性だけでなく男女双方に適用される法律となりました。

しかし、長時間労働の慣行が引き続き残った結果、均等法には、男性と同様に長時間働けることを前提とした「男性並み平等」の課題があります。家事や育児などの家族的責任と男性並み平等との葛藤による仕事と家事・育児・介護の両立の困難から、少なくない女性がパートや有期、派遣雇用という形で雇用形態を変えて働いてきました。こうした労働者を保護するため、派遣法やパートタイム・有期雇用労働法が制定されています。
少しずつ改善していますが、完全な平等を実現するにはまだ課題も残っています。

育休は労組が勝ち取った!

菅村氏は育児休暇についても言及。
育児休暇も労組の取組から始まりました。当時は、女性が結婚したり子どもを産んだりしたら退職を迫られることが横行していました。電電公社の組合が働きたい女性たちからの要望を会社に要求。育児休暇が導入されたのです。

今では浸透してきた「育休」ですが、それでも男性の取得率はなかなか上がらない現実があります。休暇を取りたくても言い出せない人はまだ多くいます。
さらに、育休を取得できたとしても数か月の空白期間や、時短勤務はキャリアに響き昇進が叶わない女性も多くいます。結果として、男女間の賃金の差異は大きくなっています。
「これでは子どもを持つ人が少なくなっているのは、当たり前のことです」とさみしそうな口調で菅村氏は付け加えました。

もちろん国や企業も性別の格差をなくし、育休取得率を上げようと取組をしています。「女性の活躍推進企業データベース」では、女性の活躍認定「えるぼし」や子育てサポート認定「くるみん」などを取得している企業を確認することができます。
菅村氏はただ認定があるかを調べるだけではなく、その企業の賃金格差の内訳や、差異を是正するために取り組んでいるかをきちんと確認することが重要と伝えました。
「まだ格差がある中で、どうやって縮めていこうとしているのか、その企業の姿勢を確認できます。しっかり見て自分の働き方に合うかを知りましょう」

立ち止まらず少しずつ良くしていこう

講演の終わりに、学生はグループごとで話し合い、意見や感想をリアルタイムで掲示板に投稿。
深澤教授が読み上げる形で質疑応答が行われました。
「日本の賃金の男女格差を減らすには?」という質問には、菅村氏は「日本の企業では休みに対するネガティブな考えがある。性別関係なく、同じように休めるように変えていくべき」と回答されました。

「男女格差は根深い問題だと知りました。法律を改正しても変わらないのでは?」と危惧する質問には、「結婚退職、女性の定年は35歳という時代から比べると、先輩たちの頑張りによって、特にこの10年ほどで女性の正規雇用率は上がり、良くなっている。自分たちも頑張って次に続けていきたい」と菅村氏。
そして、「北欧では男女の賃金格差が少ないと言われますが、女性の多くは保育士などの公務員。ドイツもジェンダーギャップが少ない国ですが、女性に偏った短時間勤務など、性別により働き方に違いがあると聞いており、日本だけではない問題です。しかし難しいことだと思考停止にならず、少しずつよくしていきたいと思います」と力強く話され、授業を締めくくりました。
知っておくべき法律や少しずつ変わっている現状を学び、女性として社会に出ていく上で厳しい現実を知り学生たちには指針となる授業となりました。

2024年7月22日

ワークルールを知って働く!「実践キャリアプランニング」の授業で連合のフェアワーク推進局長による講演が行われました。

5月10日に「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、日本労働組合総連合会(以下、連合)のフェアワーク推進局長である小林妙氏による講演が行われました。「働くことを考える」をテーマに、働く上で守るべきワークルールを教えていただきます。アルバイト中や就職活動中の学生にとって、安心安全に働くための基礎知識を知る機会となりました。

連合は働く人を守る組織

小林氏は教師を目指し教育学部を専攻するも、企業への就職に興味が湧き、証券会社へ入社。
その後転職した先が倒産の憂き目に遭うも、縁あって産業別労働組合(JAM)の仕事に関わるようになり、連合へ出向されました。

フェアワーク推進局では、非正規雇用などで働く人たちの声を集め、実態を把握し、課題解決につなげていく活動をしています。
その対象は非正規雇用者、パートやアルバイト、フリーランスや外国人労働者などさまざま。
またLGBTQといった性的少数者などの方々も対象です。性別・年齢・国籍・障がいの有無などに関わらず、一人ひとりが尊重され、公平で働きやすい職場環境を実現するために活動されています。

労働組合は、憲法28条で認められた「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」といった3つの労働者の権利を実行し、労働者を守るためにあります。また、労働基準法という法律も含め労働者が働く安全、安心は守られているのです。これらが守られていない場合や改善して欲しい場合は、労働組合は企業側と対話し、要望をすることができます。
労働組合は企業と対等の立場であり、企業側は対話を断ることはできません。労働組合と対話をすることも法律で決められているためです。

労働組合って必要?

連合は、各企業・業界の労働組合が加盟するナショナルセンター(中央組織)です。労働組合とは働く人たちが自主的に組織するもの。職場の環境は安全か、法律違反はないか、ハラスメントはないかなど相談を受け、意見を取りまとめる窓口です。
労組は二人以上で作ることができ、現在連合には690万人以上が加入。非正規雇用者やパートなど正社員以外も加入でき、現在加入者の約2割が正社員以外の方です

「憲法や労働基準法があるなら、労働組合って必要?と思われる人もいるかもしれません」と小林氏。
「私も勤めている時は、労働組合のことをよくわかっておらず、時間外に色んなことを聞かれて正直邪魔だなと思っていました」と告白。
しかし、「今は必要だと思っています」と言います。

例えば週休2日が常識になっていることも労働組合の活動の結果。
労働基準法には「少なくとも毎週1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日」としか決められておらず、週6日働くことは違法ではありません。
これでは労働者が大変だと労働組合が活動を行い、週2日の休みを勝ち取ったのです。
小林氏は「労働基準法以上の環境や働きやすさをきちんと獲得するために、労働組合や連合は必要です」と話します。「皆さんもこれから就職の際、労働組合がある企業に勤めてほしいと思います」と、就職先を決める基準のひとつにして欲しいと話しました。

ワークルールを知ろう!

ここで小林氏は「ワークルール」についての問題を出しました。
ワークルールとは、簡単に言えば企業側が労働者に対して、してはいけないことです。「知ってるつもりで実は知らないルールです」と小林氏は問題を出していきました。

例えば「学生アルバイトでも法律で守ってもらえるか?」という問題。答えは「もちろん守られます。年齢によっては深夜に働くことは法律違反ですが、知らずに働かされることもある」と小林氏は注意を促しました。
また意外な問題では「採用面接で尊敬する人は?と聞くのは良い?」というもの。「働く能力とは関係ない思想に関わることは、個人の自由であるべき」と小林氏。
好きな言葉や宗教なども聞くことはよくないと言います。「ただ、まだあまり浸透しておらずエントリーシートなどに項目があるといった現状です。そういった会社があったら、疑問を持つことも大事」と小林氏は話しました。
その他にも「インターンシップは無給が当たり前ではない」「時給は1分単位で支払われるべき」などのワークルールが紹介され、学生たちも興味深く聞いていました。

働くこと上で必要な知識を身に付ける

講演後、学生たちは質問をリアルタイムで掲示板に投稿し、深澤教授が読み上げる形で質疑応答が行われました。
「最低賃金を上げるように国に言ってください」という投稿に小林氏が「了解しました。連合など労働組合も最低賃金を決める会議に参画しているので、その担当に伝えます」と答えると、笑い声が起きました。
「国としても最低賃金を上げようという動きがありますので頑張っていきたいですね」と話されました。

「アルバイトでも有給休暇があると知らなかった」という感想には「一定期間・一定時間を働いているなど条件はありますが取れますので、社員の方にアルバイトも有休が取れると法律で決まっていると話してみましょう」と助言されました。
その他にもアルバイトやお金のことなど、働くことへの身近な質問が多数投稿されました。
学生たちは働く上で知っておくべき知識を得た大切な講演となりました。

2024年7月22日

「実践キャリアプランニング」の授業で連合の前事務局長の相原康伸氏が「公益」についての講演を行いました。

大学共通教育科目である「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、4月26日に現公益社団法人教育文化協会(ILEC)理事長の相原康伸氏が講演を行いました

「公益」とは何か?

相原氏の話は「公益とはなにか」というところから始まりました。
公益とは自分のみならず、他者や社会全体の利益を考え、行動することです。
「今日一番のメッセージは、公益に対してどう行動を変容していくか」。
私たちが直面する様々な社会課題に対し、日々の行動をわずかにでも変えることが重要だと最初に語られました。

連合の役割とは

約700万人の加盟組合員を擁する連合は、日本の労働組合の中央組織として、職場の声をまとめ、企業との対話を通じて、労働条件の改善や待遇向上に貢献しています。

相原氏は、「働くということは、いつもピカピカな状態じゃないんです」と力強く語ります。仕事で精神的に追い詰められたり、人間関係で悩んだり、労働条件に不満を感じたり。こうした困りごとこそ、連合が解決に向けて共に歩む重要な役割を担っているのです。年間1万5千件から2万件寄せられる相談内容は、コロナ禍以降、特に女性、フリーランス、非正規雇用労働者からの声が目立つようになりました。相原氏は、「弱い立場の人たちにさらに負担がかかっている」とお話しされました。

国際社会の抱える問題をどのように変容させるか

社会に出る今の学生に求められるのは、単なる知識やスキルだけではありません。創造性、固定観念にとらわれない斬新な視点、そして多様な価値観を持つ人々と協働する能力こそが、これからの時代を生き抜く鍵となります。

「異なる文化を持つ人々への普遍的な敬愛の精神が持てるかどうか。」
国際社会が貧困と分断という深刻な課題に直面している今、日本も例外ではありません。世界の中でもいち早く労働力人口が減少していく中で、多様性やジェンダーの問題も浮き彫りになっています。それらをどのように変容させるべきか、相原氏は課題を改めて確認していきました。

行動変容するために

相原氏は「主要国の中でも、日本は若者世代の投票率が著しく低い。」と語られました。 政治は高齢者向けのものという「シルバー民主主義」と呼ばれ、投票率の高い高齢者に向けたものになります。しかし、相原氏は若者たちへの期待も忘れません。「皆さんこそが、未来を創造する力を持っているのです。政治に参加し、声を上げることによって、より良い社会を実現することができるのです。」

未来は不確実ですが、未来を形作るのは私たち自身の行動です。「私たち一人一人が、どのような行動を選択するかによって、社会全体の利益に貢献できるのです。」 相原氏は、若者たちが主体的に社会と関わり、未来を担っていくことを強く訴えます。

深澤教授の話

相原様には、毎年本学にお越しいただいていますが。本年からは4回シリーズの講座を企画いただき、本日から連合の方にご講演をいただきます。
トップバッターの相原様からは、労働組合の役割のみならず、高い視座広い視点から世の中を見つめることの大切さを教えていただいています。
激動の21世紀を生きる大学生の今後のキャリア形成に重要になると考えます。
今年も、大変に貴重なお話しをいただきありがとうございました。心から感謝申し上げます。

2024年7月18日

ハピネスの循環で世界一のホスピタリティを!「女性とキャリア形成」の授業で株式会社オリエンタルランドの元執行役員をお迎えし講演が行われました。 

6月6日に大学共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で株式会社オリエンタルランド(以下、オリエンタルランド)の元執行役員の永嶋悦子氏が講演を行いました。夢の世界を運営するスタッフのホスピタリティの高さはどう養われているのか、その秘訣は「ハピネスの循環」にあると語ってくださいました。

開園当初はキャストとして活躍

この日はまさに東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープン当日。記念すべき日に講演いただくことになりました。永嶋氏は1982年にオリエンタルランドに入社。
最初はアトラクションのキャスト(スタッフ)としてコスチュームを着て活躍し、その後役員になりました。

開園当初の日本はまだコンビニエンスストアが出てきたばかりの時代。
ディズニーランドも遊園地という認識が強く、飲食物を持ち込むゲスト(来園者)も多かったと言います。
「今では考えられないですが、アトラクションにバナナを持ち込んで食べてる方もいたくらい、当時の日本人もマナーは悪かったんですよ」と話し、笑顔どころか、眉間にしわを寄せてゲストに飲食物の注意をしては謝っていたと、笑いを交えて話されました。

ハピネスを届けるためにはコミュニケーションが大事

開園当初からどのようにディズニーランドが成長していったかを語られる中で、キャストのホスピタリティが上がっていったことが大きいと永嶋氏は話します。
世界に6つあるディズニーリゾートのなかで一番のホスピタリティ高さと言われるようになり、本場アメリカからも視察にくるように。
「ホスピタリティとは人間力のことだと私は思います」と永嶋氏は語りました。

「キャストが目指すべきゴール、それはゲストにハピネスをお届けすることです」と永嶋氏。
「驚かれるかもしれませんが、キャストには接客マニュアルがないんです」と話します。
キャストが心掛けていることはあいさつだと言い、「ゲストと会話をするために、まずあいさつするんです」と話します。いかにゲストとコミュニケーションを取るか、どうやってゲストを喜ばせるかをそれぞれのキャストが考えて行動します。
今では有名になった水たまりや落ち葉でディズニーキャラクターを描く「カストーディアルアート」もキャスト発案です。

永嶋氏は印象的な出来事として東日本大震災のことを話されました。
約1か月パークが閉園している間に、どのようにゲストとコミュニケーションを取るか、どうサプライズを提供するか定期的に集まってディスカッションを繰り返したと語りました。

インクルージョンを広めていくために

永嶋氏は「接客のためのマニュアルはないですが行動基準がある」と話します。
安全・礼儀正しさ・ショー・効率、の4つの基準がこれまでありましたが、「そのなかに最近インクルージョン(多様性)が入りました」と紹介しました。

しかし、オリエンタルランドも昔は男社会で、ジェンダー問題への理解も十分ではなかったという永嶋氏が役員時代、キャストのリーダー育成プログラムに手を挙げたキャストに性別違和をカミングアウトされた人がいたのですが、広報の男性役員からその人をリーダーから落とすよう指示があったと語りました。
永嶋氏はこの決定に反対し猛抗議しましたが、結局その人は落選。
翌年再度プログラムを受け、ようやく合格されました。
「ディズニーは進歩的だとイメージされていましたが、内部の状況は大きく遅れていた」と、永嶋氏は当時の苦い経験を話されました。

キャスト同士でお互いを高め合う

キャストのホスピタリティの高さの秘訣は「キャストのコミュニケーション活動」にあると永嶋氏は言います。
開園前に各アトラクション対抗のカヌーレースを行ったり、年に一度のサンクスデーで役員たちがキャストをもてなしたり。
永嶋氏が「一番効果がある報奨活動」と言うのは、キャスト同士で褒めてたたえ合うスピリットオブ東京ディズニーリゾートの取組です。
お互いにサンクスカードを送り、カードの一番多いキャストは大々的に表彰されます。

なぜそこまでキャストをねぎらうのかと言えば、「キャストに、実際に感情を持ってハピネスを体感してもらい、同じようにゲストにハピネスをお届けしてほしいからです」と永嶋氏は話しました。
ハピネスをもらったキャストはパフォーマンスが向上し、その分ゲストにさらにハピネスを提供できる、という「ハピネスの循環」が行われるのです。
「ぜひパークに遊びにきてください」と永嶋氏は講演を締めくくりました。

管理職の試験を受けたときの気持ちは?

講演後には質疑応答が行われました。
はじめに「男社会のなかで、なぜ管理職の試験を受けたのですか」という質問がありました。
永嶋氏は「差別というよりは、女性は弱いものだから守ってあげようという考えが当時はありました」と話しました。
初めて管理職の試験を受けたとき、永嶋氏は落ちてしまったのですが、自分よりもあまり仕事ができない男性が合格したのを見て「自分より仕事ができない人が上司になることが許せなかった」と笑いを交えて答えました。
また、「今までできなかった仕事にチャレンジできることは面白いことです」と管理職にチャレンジした気持ちも語りました。

「永嶋さんが思うインクルージョンを向上させるコツや考えを教えてください」という質問には、「いろんな身分、年齢の方が働けるということ。
これから定年という考えもなくなってくると思います。そういうこともひとつのインクルージョン」と回答されました。
「オリエンタルランドで働いたことで得た財産は?」という質問には「人。さまざまなつながりになったり、長い付き合いになったり、助けられています」と答えられました。

ディズニーリゾートに通底するホスピタリティの高さの秘訣に触れ、学生たちにも刺激になった講演でした。

担当教員からのメッセージ

永嶋様と初めてお会いしてから、もう20年以上になります。
いつもアグレッシブな永嶋様から色々なことを学ばせていただいています。
とりわけ確固たる信念をお持ちになり、メンバー一人ひとりのことに気を配りながら、先頭に立って組織を牽引されるリーダーシップについては、私の目標でもありました。
今回も、テーマパークのオープン当時のこと、管理職としてのご苦労など、
学生にとっては、極めて貴重な時間になったと思います。
この場を借りて、改めて感謝申し上げます。