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2023年10月20日

ホームタウンに愛されるクラブに!「実践キャリアプランニング」の授業で東京ヴェルディによる特別講義が行われました。

9月26日に「実践キャリアプランニング」(担当:高橋 裕樹特任教授)の授業で、東京ヴェルディ株式会社(以下、東京ウェルディ)の中島健吾氏をゲストにお招きした講義が日野キャンパスにて行われました。日野市は東京ヴェルディの「ホームタウン」。学生たちはホームタウンとは何か、どのように地域に関わっているのかを通し、地域貢献について学ぶ機会となりました。

東京ヴェルディはどんなチーム?

東京ヴェルディは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のクラブチームのひとつ。1969年に日本初のプロサッカークラブとして創設された「読売サッカークラブ」が前身で、リーグ、リーグカップ、天皇杯と国内の3大タイトルで優勝経験がある歴史と伝統を備えたチームです。現在はJ2リーグ(2部)に所属していますが、2023シーズンは3位と好調をキープしており、J1リーグ(1部)への昇格も狙える位置にいます。

サッカークラブチームを運営している会社ですが、講義をしてくださる中島健吾氏はホームタウン部の所属。日野市や稲城市、八王子市を担当しています。中島氏は日野市出身。大学ではスポーツビジネスを専攻しインターンシップで東京ヴェルディに関わり、その縁もあり2021年に入社されました。

ヴェルディは「先駆者」である

中島氏は東京ヴェルディのバリュー(中核的な価値観)を紹介しました。「仕事上で迷ったらこの価値観に立ち返って、本当にこれに沿って仕事ができているのか確認をする、一つの指標としてとても大事なものです」。一番は「パイオニア」であること。創設当時は野球が盛んで今ほどサッカー人気がない時代。そんな中プロチームを作った東京ヴェルディは、前例や常識にとらわれず先駆者であることを大事にしています。「サスティナビリティ」も大事な観点で、物事は挑戦するだけでなく続けていくことも大切。持続性を意識し成長していくことも重要な価値観です。

ミッションは「世界で輝く人材を育成する」こと。これまで日本代表選手を17名輩出し「まさに日本サッカーの土台を作ったと言っても過言ではないかなと思います」と誇らしげに中島氏は話します。ただ、輝かしい戦歴の裏で苦労も多くあります。2005年にはJ2に降格し、2009年には親会社が撤退し経営危機にも陥りました。現在は総合型クラブを目指し、サッカーだけでなくバレーボールやトライアスロンなどのチーム運営や、音楽などのエンターテイメント業界参入も視野に活動しています。これまでヴェルディが培ってきた人材育成のノウハウを生かし、スポーツスクールだけでなく様々なところで応用していけるように活動しています。

ホームタウンとは?

ホームタウンとはクラブの本拠地のこと。クラブはホームタウンに対し地域に根差したスポーツ文化の振興活動を行うことが求められます。これはJリーグ百年構想という理念に基づいて定められているもの。そのため株式会社という一企業でありながら、利益を追求するだけでなく公共性の高い活動をしていく必要もあるのです。

ただ東京ヴェルディは2001年に川崎市から東京へ本拠地を移転しています。それだけに東京ヴェルディが地域に受け入れてもらうためには「東京ヴェルディは、他のチームよりもホームタウンをより大事にしなくてはいけない」と考え活動していると中島氏は話しました。

ホームタウンから愛されるクラブになるために

「クラブがホームタウンになくてはならない存在にならなくてはいけない」と中島氏。スポーツ文化の現場はもちろん、防災や防犯や農業、観光の分野でも活動しています。例えば防犯対策、交通安全啓発の一環として、新一年生へのランドセルカバーを寄付しています。今まで市が担っていた公費の削減にもつながり自治体とクラブ、市民の全員がwinーwinの関係になりました。また、放置されていた田んぼで選手がコメ作りを行い、地域住民と米粉クッキーを作成し販売。クッキーは好評で田んぼの利用者も増えるなど良い循環が生まれています。

日野市で取り組まれている、市内におけるスポーツの推進に係る体制の整備を図るための日野市スポーツ推進委員「ひのスポ」の立ち上げにも貢献。学校や教育の場面では、部活動の先生の負担や部員数の減少が問題になっています。子どもたちが安心してスポーツを楽しめるよう、地域と連携して活動されています。

就活の準備は早すぎることはない

最後はアンケートフォームを利用して質疑応答が行われました。「就活前に持っておいた方が良い資格は?」という質問には中島氏は「資格ではないですが、英語は必須だと感じます。あと簿記はやっておいて損はない」と回答されました。またスポーツ系企業への就職を目指している学生から「スポーツが得意なことは必須ですか」と質問が。「自分もサッカーはやっていましたが得意ではなかったし、関係ないです。体育会系の企業と思われがちですが、女性も多く活躍しています」と語りました。中島氏は「就活を始めるのが遅かったことを、後悔しています。就活の準備は今からでも早くはない」と話し、講義を締めくくりました。学生たちにとって地域貢献と企業の活動について、身近に感じられる講演となりました。

2023年9月5日

新しいミュージアムグッズを考えよう!「実践キャリアプランニング」の印刷博物館とのコラボ授業で学生たちが課題発表を行いました。

共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月7日に印刷博物館とのコラボセッションが行われました。新しいミュージアムグッズを考えるという課題の後半6グループの発表です。プレゼンの時間は7分。印刷博物館から石橋氏、式氏、前原氏が見守る中、さまざまな視点から考案したグッズの発表を行いました。

若者向けにカプセルトイを

後半戦のトップバッターはグループ10。
若者をターゲットにカプセルトイで販売するアクリルキーホルダーを提案しました。アクリルアイテムは推し活の影響で需要が高まっているグッズです。
カプセルトイの需要も高いことをデータで示し、1回で1000円以上使う若者も多いと話しました。昔の広告や浮世絵などレトロなデザインの商品は若者にも人気で、外国人も購入するのではと考えました。聖書の細かい意匠を再現できれば印刷博物館の技術の高さも示せて話題性につながると提案しました。

発表後の講評では、
式氏から「プレゼン資料だけでは分からない熱意が伝わり印象的でした」
と感想がありました。

次のグループ3は、グッズから印刷博物館に興味を持ってもらえる商品を考えました。
1つ目は企画展の図録の豆本です。
企画展の図録は一番人気ですが、若者にとって手軽に買える値段ではありません。カプセルトイにして販売することで若者も手軽に購入できるとしました。

2つ目は日傘で、光があたるとホログラムが浮かび上がる技術を使うことを提案しました。企画展のポスターから図柄を採ることで実際に使用されることが宣伝につながるものを考えました。

式氏は
「実現性は少ないかもしれないが、それくらい突飛なアイデアが出てくることを期待していたのでとても面白かったです」
とコメントされました。

自分たちがほしいグッズはどんなもの?

グループ9もカプセルトイで勝負。
学生たちが印刷博物館に行ったとき、手持ちの小さなバッグでも持ち帰れて手頃な金額のお土産がなかったことを指摘し、カプセルトイであれば条件をクリアしているとしました。
プロローグに展示されている「印刷する人」をフィギュアにすることを提案。フィギュアはコレクションとして集めやすく、「何より自分たちが欲しい」と訴えました。

もう1案は運気が上がる活字を活版印刷した「活字守り」で、財布にも入れておけるものを考えました。

前原氏からは
「フィギュアは自分たちでは見慣れてしまっていましたが、売れるのかもと思いました。活字守りはおみくじなどもいいかも」
と、提案に広がりを感じた感想がありました。

グループ5は推し活で使えるステッカーを提案。
うちわサイズとスマホサイズで、自分が使用したいフォントを選べるものを考えました。印刷博物館で推し活に使えるものがあれば話題性があり若者に知ってもらえると話しました。印刷博物館は立地として東京ドームが近いためイベントのある時に使えると宣伝し、スマホケースに入れたりうちわに貼ってライブに使えたりするようにします。

石橋氏は
「推し活を前面に出したというのが面白い視点」
と感想を話しました。

式氏からは
「プレゼン資料だけでは分かりづらかったので、話の内容をサポートするような資料をもう少し作りこんでもらえていたら良かった」
とアドバイスがありました。

プレゼントにもしやすいグッズ

グループ11は買って帰りたいと思ってもらえる商品として、クッキーを提案。
印刷博物館の外見のパッケージのものと印刷機を模したものを考えました。

また印刷博物館でしか買えないものとして、フィギュア型スタンプの案を出しました。手のひらサイズの印刷機などのミニチュアの底がスタンプ式で、インテリアとしても使えるものを例にあげました。どちらもプレゼントしやすく、お土産でもらうことで認知度アップにつながるとしました。

発表後は式氏から
「クッキーはオーソドックスなものだったので、自分たちも当たり前すぎて発想していなかったと気付かされました」
と、

前原氏からも
「スタンプは印刷と親和性があるがオリジナルのものはなかったなと思いました」
と気付きがあった提案と評価されました。

プレゼントにもしやすいグッズ

最後のグループ12は、ビーズアクセサリー&ストラップを考えました。
駿河版銅活字をモチーフにした文字を選べるもので、自分や恋人、推しのイニシャルなどを付けられるとしました。
オンラインでも販売しやすく、一年中身に付けられるため自分用の推し活や、プレゼントにも向いていると伝えました。

前原氏からは
「実際にアクセサリーにするには駿河版銅活字は合うのかなと思いましたが、提案は素敵でした」
と話されました。

社会に出てからも生かせる力を学べるプレゼン

授業の最後には優秀賞の発表があり、印刷博物館賞はグループ9が受賞しました。

石橋氏からは
「今回は全グループのプレゼン能力が高く非常に点数も競っていましたが、グループ9はプレゼンや資料作りも一つ一つ丁寧でした」
と評価されました。

グループ9の学生は「フィギュアができたら買うのでぜひ商品化してください」と嬉しそうにコメントしました。

最後に印刷博物館の皆様から総評をいただきました。

式氏からは
「チームで力を合わせてやり遂げたということで自分たちをねぎらってほしいと思います。また他人のプレゼンテーションを見ることも学びがあるなと自分も勉強になりました。皆さんも他のチームの良かったところも吸収してほしいと思います。いただいた提案は、館内で共有して次に繋げていきたいと思います」
と話されました。

担当教員からのメッセージ

包括連携協定を結ばせていただいたご縁からコラボ講座を実施させていただき今年が2回目となります。一見すると商品開発は比較的取り組みやすいテーマに見えますが、実は大変奥深いものがあります。とりわけ今回はアイデア勝負になることなく、徹底的に「なぜ」を考えて欲しいという印刷博物館様からのご指示もあり、現状分析や、印刷博物館らしさをどう盛り込むかなど、学生たちの白熱した議論が続いていたという印象を受けました。限られた時間の中で、考え抜いて提案するプロセスは、「プロジェクトマネジメント」を学ぶ一歩、学生たちにとっては貴重な経験をさせていただいたと振り返っております。昨年に引き続き、多大なるご支援をいただいた印刷博物館の皆さまに心から感謝申し上げます。

2023年9月5日

新人研修でどんな力を身に付ける?「実践プロジェクトa」でサントリーの新人研修企画を発表するプレゼンテーションが行われました。

1年生対象の「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)とのコラボ授業が行われました。会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人・社会人に求められるものは何かを考えます。またそれを踏まえ、サントリーの新入社員に対する具体的な研修計画を提案します。中間発表では、ピープル&カルチャー本部の斎藤氏と長政氏、下間氏から厳しい意見もいただきました。各班は議論を深め内容をさらに練り直し、7月14日に最終提案に臨みました。

中間プレゼンでは厳しいフィードバックも

6月末の中間発表では、グローバル力を身に付けるために英語でのプレゼンテーションやスポーツ大会、コミュニケーション能力を養うため商品企画やチームプレゼンなどが提案されていました。その際、斎藤氏から総評として「皆さんがサントリーという企業に接するのは商品と広告だけだと思います。そのため商品企画やプレゼンが案に盛り込まれていたように思います。しかしそれはあらゆる仕事の中のほんの一部です」と話されました。

「企画」を担当する人がいるわけではなく、すべての仕事に「企画」があり、業務改善のフレームワークである「PDCAサイクル」を回す必要があることを語りました。「皆さんの両親や先輩などはどんな仕事をしているのか、身の回りの生の情報を活かしてほしい。頑張ってください」と伝え、最終提案に期待をかけられました。
学生たちはそれぞれいただいたフィードバックを元にさらに検討し、内容を見直していました。

人材育成にはなにが大切?

トップバッターは4班。
中間発表では「スキルではなく個性」としていた内容をさらに深めました。PDCAのフレームワークをシートで導入し、毎日課題を設定。達成できているか、何に取り組むべきかを明確にします。

企画は講座式とフィールドワーク式の2種類を考え、講義形式で社会人としての基礎知識としてのマナーを学びます。フィールドワーク形式では、飲料水を得るための方法を考案するプレゼンテーションを最終地点とし、目標をやり遂げる経験をすることで、社会人に必要な総合的な能力を身に付けられるとしました。

発表後の講評では、下間氏は
「中間プレゼンからブラッシュアップされ、新人は何を身に付けるといいかがよく練られていた」
と評価されました。

人材育成にはなにが大切?

続いての5班は中間発表で
「Wantsからneedsを引き出す力」が大事と発表し、さらに深堀しました。
主体性、想像力、創造力、柔軟性を身に付けることで会社を取り巻く環境に対応できる人材になるとしました。

企画は、サントリーの企業理念を伝える「水育」を中心に考えました。国内・国外での水を育む森の大切さを伝える活動を通し、グローバルな視点を持つ人材を育成するとしました。また、国連によって定められたWorldWaterDay(3月22日)のイベントの企画を考える企画案を提案しました。

下間氏は
「会社に必要な能力が整理されていました。その分なぜその能力を紐づけたのか理由があればさらに良かったです」
と感想を述べられました。

斎藤氏も
「Wantsからneedsを引き出す力に注目したことが良かったですが、これは他の力の総合力でもありますね」
とコメントされました。

新人が身に付けるべきものとは

6班は
中間発表で出したサントリーの理念「グローカル」を深めた研修を考えました。

グローカルとは、地球規模の広い視点と地域規模の深い視点を両立すること。今社会人に求められるのはグローカルな人材として研修を計画しました。期間は2か月半と設定し、はじめはマナー講座を行います。日本にとどまらず世界のマナーを学ぶことで、世界で恥ずかしくない人材に。その後、中国やヨーロッパなど海外のグループ会社へ研修に行き、日本とは異なる環境の中で仕事に取組み、やりぬく力を身に付けます。

発表後は斎藤氏から
「グローカルに注目したのは素晴らしい。ただ、海外に行って具体的に何をして何が身に付くのかをもっと絞り込んでいたら良い発表になったと思います」
と感想をいただきました。

次の3班は
中間発表で指摘されていた「会社愛」の項目は思い切って削除。
AIやIoTを活用できる能力や、コミュニケーション能力が必要と結論づけました。

コミュニケーション能力の中でも対人調和力、意思伝達能力が大切とし、聞く力と伝える力を養う研修を考えました。課題を設定しプレゼンテーションを行うことで、個人で積極的に動きチーム力を高めることにもつながるとしました。それぞれの課題ごとにPDCAサイクルを回し、考えることで自分が何をすべきか、何ができるかを考える主体性を育てるとしました。

斎藤氏からは
「中間発表からかなり考えられていました」
と感嘆の言葉が。

下間氏も
「コミュニケーション能力が深堀して考えられているのが素晴らしかったです。その後の業務につながる研修内容で良かったと思います」
と話されました。

グローバルな人材とは?コミュニケーション能力とは?

2班はコミュニケーション能力を中心に企画。
中間発表で若者が身に付けたい力とした「営業で通用する力」をさらに深堀しました。社会人ではコミュニケーション能力に関係調整力が追加されるとし、リーダーシップが必要と提案。目標を設定しその目標を成し遂げるために行動できる人材が必要としました。

企画は「SUNSUNプロジェクト研修」と名付け、SUNSUNガーデンで花や野菜を育てたり地域住民を来場してもらい社会貢献を学んだりします。
研修を通し、リーダーシップや必要な柔軟性を身に付けるとしました。

下間氏からは
「前回の発表からコミュニケーション能力について深堀されていて良かったです」
と評価がありました。

斎藤氏は
「研修はイベントにせず、地味で地道でいいのでは」
とアイデア先行にならないよう視点をしっかりと持って欲しいとアドバイスされました。

最後の1班は
「グローバルな人材とは」を、中間発表からさらに考えて企画しました。
グローバルな人材とは視野を広く持ち、多様性に対応できる能力がある人と定義付けました。研修で育てたい力を主体性、実行力、多様性を受け入れる力として、自分の目標を立てる大切さを伝える研修を目指します。さらにサントリーが求める人材として、環境に配慮できるということも重視。

「私たちができる社会貢献とは」をテーマにグループでプレゼンテーションをし、社会貢献活動中心の企画を提案しました。

下間氏は
「社会貢献はサントリーも大事にしていることなのでフォーカスされていたのは良かったです」とコメント。その上で「研修から何が身に付くのかが見えづらかった」と指摘されました。

斎藤氏は
「何が必要なのかが中間プレゼン以降、しっかり議論されたことが良く伝わってきました」
と話されました。

時間ぎりぎりまで細かいフィードバックがあり、学生たちにとって社会人に必要なものを考える、特別な授業となりました。

授業の最後には社員の皆様からアイスクリーム券のプレゼントが。
難解な課題の取組をねぎらわれた学生たちからは歓声があがっていました。

担当教員からのメッセージ

実践プロジェクトaは今年で4年目、コロナ禍の2020年を除き、サントリーホールディングス様には毎年ご支援いただいています。大学生なったばかりの1年生が、社会人に求められているものを調べあげ、サントリーホールディングス様の新人研修を考えるというのはかなりハードルの高い課題ではありますが、このお題を提示いただいている大きな理由は、この講座が「1年生に対して大学での学び方を学ぶ」という目的があるからです。言い換えれば、この授業で考え、調べ抜いた社会人に求められることを理解し、これからの大学生活を送ることが、素晴らしいキャリア形成に繋がるからです。今のレベルと社会人に求められるレベルとのギャップを埋めていく事が大学での真の学びなのです。毎年、ご支援いただいているサントリーホールディングス様に心から感謝申し上げます。

2023年8月9日

印刷博物館の魅力を伝えるグッズとは?「実践キャリアプランニング」の印刷博物館とのコラボ授業で学生たちが課題発表を行いました。

共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月30日に印刷博物館とのコラボセッションが行われました。印刷の歴史を伝え、新しい顧客獲得のための新しいミュージアムグッズを考えるという課題に対する提案です。印刷博物館から石橋氏、式氏、前原氏が発表を見届けます。プレゼンの時間は7分です。全12グループ中、この日は前半の6グループがさまざまな視点から考案したグッズの発表を行いました。

若い女性が手に取りやすいものは?

最初の発表はグループ8。
若い女性をターゲットにオタクの間で流行っているグッズであるネームプレートを提案しました。色を選べることで推し活の一つに取り入れやすいことが特徴です。
東京ドームなどの施設に近い立地から、イベントまでの時間つぶしにも利用してもらうことを想定しました。
印刷博物館ならではのデザインやフォントを選べるようにして話題性を持たせました。
発表後の講評では、石橋氏からは「書体を選べるのがいい」と感想があり、式氏は「ネームプレートがどれくらい流行っているのかデータがあればさらに説得力が増した」とアドバイスされました。

続いてのグループ2は、現在販売している商品はお土産としての単価が高く感じると問題点を指摘。
手軽に手に取れる商品として、ステッカー、ハンコケース、お菓子を提案しました。
ハンコケースは、ハンムラビ法典の形がハンコケースに似ているところから発想し、ハンコは印刷にも親和性があるとアピールしました。名入れもできることで、話題性も担保しました。
式氏は「単価の高さや種類の少なさについて分析がしっかりされているんだなと聞いていて分かったので、その点を資料にももっと詳しく載せてもらえたらよかったです。ニッチなものに目を付けたのも面白く感じました」と評されました。

印刷博物館に来ない層にどうアピールする?

グループ1は来場者の中で10代の割合が少ないことに着目。
特に小中学生は電子機器から情報を集めることが当たり前で印刷技術に興味がないと考えました。
そこで若い世代に印刷技術を広められる、夏休みの自由研究キットを提案。
プロローグにあるジオラマを模した立体パズルです。組み立てることで印刷技術も理解でき、研究物として提出できるという商品です。
前原氏は「自由研究は需要がある。夏休みには多くの小学生が来るので着眼点が良いと思いました」と感想を述べました。石橋氏は「10代の中で、中高生に来てもらう需要はあるかもう少し深堀りがあってもよかった」と指摘されました。

グループ7は、来館者に女性が多いことからイニシャルアクセサリーを考案。
聖書で使われている飾り文字をモチーフにして、自分でパーツを選べるネックレスやイヤリングを提案しました。
印刷博物館にはまだアクセサリー商品はないので需要はあるとしました。
また、鍵付き聖書のデザインを模した手帳型スマホケースや、ページごとに異なる紙を使用した紙図鑑を提案。
オンラインでも販売しやすく実用的なものをメインに考えました。
石橋氏は「商品はどういうものなのか画像やイラストで伝えてもらい、分かりやすかったです。なぜこの商品がいいのかという裏付けがあるとさらに良かった」と感想を述べました。

具体的にどう販売すると効果的?

グループ4はガチャガチャで販売するエコバッグを提案。
現在印刷博物館でもエコバッグは販売していますが、少々高価です。
デザインも若者が惹かれるものがないと指摘しました。ターゲットは若者や外国人とし、実用的で安価なものであれば若者も購入しやすいと、ガチャガチャ式で販売することを提案しました。
講評では式氏からは「選んだ柄の理由を知りたかったなと思いましたが、価格設定やデザイン図などが細かく詰められ、具体的なイメージが湧くプレゼンで完成度が高かったです」と感嘆の言葉がありました。

最後のグループ6はZ世代に行ったアンケートで、ステッカーをスマホケースに挟む人が8割という結果をもとに、「活版いんさステッカー」を考案。
話題作りとして人気コンテンツや企業とコラボすることを提案しました。
例えばディズニーや有名映画など、限定のデザインのものを販売し、裏に印刷博物館の説明を記載します。ただデメリットとして、売れたとしても一過性になる可能性があることにも言及。
しかし販売後の展望としてSNSで拡散され印刷博物館の認知度アップになると結論付けました。
石橋氏は「商品名が具体的。デメリットも見せてくれ、販売後の展望も見せてくれたのは他のグループにはなかった視点でした」と感嘆されました。前原氏も「資料が可愛らしく、細かいところまで気が配られていました」と話しました。

分析力、プレゼン力にも優れたチームは?

一週目の最優秀賞はグループ6が受賞。
印刷博物館の皆様から記念品が贈呈されました。
学生たちは「みんなで考えて作ったものを評価してもらえて嬉しいです」と感想を話しました。

最後に式氏が「評価項目は分析力、提案、印刷博物館としてのミッション達成度、スライド、プレゼン力の5つでした。グループ4もかなり拮抗して悩んだのですが、持ち時間いっぱい使いきりアピールしてくれたグループ6を最優秀としました」と授賞理由を話されました。

来週は残りのグループが発表をします。
資料はすでに提出済みですが、今回のプレゼンでいろいろな提案や視点があることに気付いた他のグループの学生たちは、さらに良いものへブラッシュアップして発表に臨みます。

担当教員からのメッセージ

印刷博物館さまにご支援いただくのは昨年に続いて2回目となります。昨年は、来場者を増やすための集客方法が課題でしたが、今年は、具体的なミュージアムグッズの企画というお題をいただきました。しかも、印刷博物館様からは、単なるアイデアフラッシュでは要件を満たさない、なぜなのかをしっかりと分析して欲しいというリクエストがあり、この部分について、学生たちは最も頭を悩ませていました。本日は、前半の6グループの提案でしたが、限られた時間の中て、その「なぜ」について議論したことが伝わってきました。来週も期待したいと思います。

2023年8月8日

ディズニーに若者がたくさん行くには?「キャリアデザイン」の授業で学生たちが東京ディズニーランドのスペシャルイベントをプレゼンしました。

3年生対象の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月4日に株式会社オリエンタルランドの横山政司氏をお迎えし、コラボセッションが行われました。この日は閑散期(冬季・春季)の東京ディズニーランドへ若者たちに来場してもらえる有効なイベントを考える課題のプレゼンテーション。各グループ1ヵ月かけて考えた、想いのこもった提案が発表されました。

冬は温かみを感じられるイベントを

発表はグループ4から始まりました。
冬季は冬の舞踏会をイメージし、若い女性に人気が高いプリンセスキャラクターをモチーフにティアラや王冠のついたカチューシャも販売。春季は来場者も体を動かせるダンスイベントを企画し、梅雨の時期は雨の日限定イベントを提案しました。
横山氏からは「プレゼン資料の作り方や見せ方が上手」と評価がありました。

次のグループ6は寒い冬季に愛情や温かみを感じさせる晩餐会をテーマに、レストラン内でプロジェクションマッピングやキャラクターと会える体験型イベントを企画しました。
春季は写真映えや自然に興味がある若者をターゲットに、キャラクターがフラワートピアリーになるものを考えました。

グループ7は、若者は経済的に余裕がないと、パークに行かない理由を分析し、価値に見合った満足度や新規性が大切と主張しました。
そこで冬季は音楽フェスをモチーフに、ダンサーやキャラクターと一緒に盛り上がれるイベントを考案。派手なキャッスルショーを行い、サイリウムやタオルなどのフェスならではのグッズも販売します。春季は桜まつりで日本の春を押し出しました。
「冒頭の現状分析が良かった」と横山氏も評価されました。

春は出会いの季節!多様性?コスプレも?

グループ5は冬季にバレンタインとホワイトデーをモチーフに、プリンセス&プリンスたちによるイベントを企画しました。
期間中は割引のペアチケットを販売したり、昼と夜でパレードを2部構成としたり、ストーリー性のある内容を提案しました。春季は、2026年にはよりグローバル化が進むことから多様性をテーマにしました。

グループ8は冬季に期間限定で、キャラクターとのグリーティングイベントを提案。春季は映画「スターウォーズ」シリーズをモチーフに男性をターゲットにしたイベントを考えました。
春は出会いの季節。映画の名台詞をもじり「新たな出会いに幸運を」をコンセプトとしました。人型ロボットを導入したリアルショーを行うことも提案しました。
横山氏も「春の季節と映画のコンセプトを結び付けた切り口は面白い」と感想を仰っていました。

次のグループ2は、冬季は初雪のお祝いをテーマに、過去イベントの人気キャラクターの復活を提案。
春季には、参加型の体験にお金を使う若者をターゲットに、秋で人気なコスプレを導入することを提案しました。コスプレできるキャラを限定し、秋季イベントとの差別化を図ります。
横山氏は「若者がパークに戻ってこない一番の理由が分かりにくいので、このイベントで本当に来てくれるかの考察がもう少し欲しかったです」と講評されました。

どうしたら若者が東京ディズニーランドに来たくなる?

次のグループ1は、若者は東京ディズニーランドよりも大人の雰囲気が味わえる東京ディズニーシーを好むという分析から、冬季に悪役たちを中心にした大人向けイベントを考えました。
春季はプリンセスキャラクターたちによるキャッスルショーを開催し、温かみのあるものを提案しました。

グループ9のキーワードは「なつかしさ」と「お一人さま」。
ヤングアダルト層は懐かしいものに「エモさ」を感じるという観点から、冬季は以前あったアトラクション「シンデレラ城のミステリーツアー」をモチーフにしたイベントを開催。春季は祝祭をテーマに一人でもパーク内をゆっくり回って楽しめるイベントを提案しました。また、冬季と春季のイベントはストーリーとしてつながっていて、どちらのイベントにも来ることで満足感の高いものになるものを提案しました。
「終了したアトラクションをモチーフにする着眼点や、仮説の置き方が面白い」と横山氏も感想を述べられました。

最後のグループ3は、冬季は猫や犬のディズニーキャラクターを集めたイベントを提案。
若者に人気の高い動物カフェから発想しました。春季は運動会をテーマに、応援合戦で一体感を味わえるイベントを考えました。お弁当箱型のフードの提供やハチマキのグッズも考案。コロナ禍があけた2026年には体を動かす需要が高まると考えての提案です。

「木を見て森を見ず」にならずに全体を見よう

すべての発表が終わり、最後に横山氏の総評がありました。
「皆さんにお願いしたことは、我々が考えても頭を悩ませる本当に難しいこと」と学生たちをねぎらいました。
ただ、今回の提案の多くが、アンケート分析と提案がうまく結びついていないことを指摘。
「一個一個の分析や提案は良いが、全体を見ることが出来ていなかった」とアンケート結果から分析、提案まで全部が一本でつながっていることを確認する大事さを伝えました。
その上で「良い気付きがたくさんありました」と学生たちのアイデアを褒め、「もしかしたらこれからのイベントに皆さんの案が使われるかも」と話されました。

最優秀賞は「なつかしさ」と「お一人さま」をキーワードにしたグループ9、優秀賞はグループ5が選ばれました。
受賞したグループには東京ディズニーランドのグッズが贈呈され、学生たちから歓声も上がり、和やかに写真撮影が行われました。

担当教員からのメッセージ

オリエンタルランドの横山様は、毎年、様々な切り口から、学生の関心が高いと思われるテーマをお題として提示いただいています。今回は、シーズンイベントの企画提案という壮大なテーマで、日頃から東京ディズニーリゾートをよく訪れている学生たちにとっては、身近でありながら、とても難しいテーマであったと振り返っています。アイデアは沢山浮かぶものの、オリエンタルランドの横山様が求められていることは、背景や環境などのしっかりとした分析であり、実際の仕事でも最も大切な「問いに対する理解度」を求めておられました。
授業時間では、事前の提案に対して、1グループ毎にフィードバックをいただけるなど、横山様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年8月8日

生き方を輝かせる考え方とは?「女性とキャリア形成」の授業で元資生堂役員がポジティブ思考の大切さを話されました。

共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、7月6日に株式会社資生堂(以下、資生堂)の元執行役員常務として活躍された関根近子氏をお迎えし講演が行われました。進行は担当グループの学生たちが行います。関根氏は自身の経験とともにポジティブシンキングの大切さを伝えられました。

美しさは見た目だけじゃない

進行担当の学生から紹介を受け、笑顔で「本日は大変楽しみにしてまいりました」とあいさつをされた関根氏。
背筋を伸ばし、ピンヒールを履いて話す姿は学生たちの目にも、美しく感じられたようです。姿勢や見た目の美しさを保つことも関根氏の信念と話します。
「いつか関根さんのようになりたいと思われるように、このような信念も大事だと思います」と講演を始められました。

関根氏が入社した当時から、資生堂は女性社員の比率が高い会社でしたが「バリバリの男性社会だった」と言います。
少ない男性たちが会社の方針を決めていたのです。関根氏が大阪の販売会社の支店長になった際には「女には務まらない」と言われ、役員になった時も女性の数はたった2人でした。
ただ、女性が多い会社だったためにその後役員登用の道が開けたとも言います。
現在は政府も女性役員3割以上とするよう後押しをしており、だんだんと女性の意見は通りやすくなっています。
「一つの基準としてその会社の女性役員の比率を見ておくといい」とアドバイスされました。

自分の強みを生かしたことで仕事に喜びを見出した

関根氏は学生時代、教師になりたいと大学進学を考えていた矢先、家族が事故に遭い就職を選択せざるを得ない状況になりました。生活のために仕事を探し、運よく入社したのが資生堂だったと言います。
最初は美容部員として接客する仕事でしたが、ある日プロモーションチームに配置換えに。仕事内容は、ノルマを与えられ推奨品を売ること。
ノルマはきつく、高い商品を売りつけるだけの仕事に気持ちがなえてしまった関根氏は、先輩に辞めたいと相談に行きました。

そこで言われたのは「あなたの強みは何?」でした。
「お客様の持っていないあなたの強みを、お客様にお届けするのが役目」と言われ、関根氏は一念発起。
美容知識を駆使して、一人ひとりに合わせたアプローチ方法に変更しました。すると、後日お客様が来店して関根氏を指名してくれたり、友人を連れてきてくれたりするように。さらにはお客様に「ありがとう」と言われるようになりました。
関根氏は「今までは商品を買ってくれたお客様に言う言葉だと思っていたのが、お客様から言われたことで、仕事に喜びを見出しました」と語ります。
そのときに「日本一の美容部員になる」というキャリアビジョンを、初めて描いたと言います。
環境は変わらずとも、考え方が変わったことでやりがいを見出すことができた経験だと語りました。

仕事もプライベートも輝くためのウェルビーイング

輝くための必要な生き方として、関根氏は「ウェルビーイング」を紹介しました。
身体的にも精神的にも良好な状態であることを示すウェルビーイング。ハピネスも幸せですが、ウェルビーイングは多面的な幸せを指します。

ウェルビーイングになるためにはポジティブなマインドがベースになります。
ただ、「ネガティブは否定しません」と関根氏。
「ネガティブだからこそ、ポジティブな考え方が必要なんです」と話します。そして「皆さん、自分を好きですか?」と問いかけました。
自分が一生離れられないのは、自分です。「自分のことを嫌いではとてもつらい。自分を好きになることで心底他人のことを愛せるし、喜びを感じることができます」と語りました。

自分の長所を言えますか?

ポジティブマインドのコツとして、関根氏は「毎日少しずつラッキーなこと、喜ぶことを見つけること」だと言います。
楽天家になれということではなく、「なにか問題が起こっても希望や解決策を探そうとする思考が本当のポジティブ思考」と話しました。

さらに関根氏は「自分の長所を10個書けますか」と問いかけます。
日本人は長所を言うことを傲慢だと思う傾向がありますが、「国際社会では負けますよ」と関根氏は断言。
自分を堂々とアピールすることが、国際社会では当たり前です。自分の意見を持ち発言する大切さを伝えました。
「私も役員になったとき、美容部員あがりと言われた。でも私は美容部員の経験は強みと思っています」と話し、誰かと比べるのではなく自分の経験を積み重ねることの大切さを伝えました。

ポジティブ思考でいこう

講演後、学生たちはグループごとに話し合い、質疑応答の時間に移りました。
「忙しい中どのように優先順位や時間を作っていますか」という質問には、「自分のなかで軸を作り、重要度や優先度を決めること。緩めるときは緩めることで、緊張感のある時間もできる。メリハリのある環境に身を置くことが大事です」と回答されました。
「海外で戦える人材として必要なマインドはなんですか」という問いには、「英語ができることが第一ではありません。自分の意見を考え、はっきり言えることが大事です」と回答されました。

最後に進行担当の学生から「これから社会に出て生きていく上で指針になる講演でした。まずはチャレンジし、失敗してもそこから学び成長し続けることが大切だと感じました」とお礼の言葉を述べました。
学生たちにとって、仕事もプライベートも輝いて生きるためのヒントを与えられた講演でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代から色々とご指導いただいた関根さん、いつお会いしても凛とされた佇まいには、憧れを感じています。企業時代には、お互いに厳しかった思い出も沢山あります。しかし、関根さんとお会いすると、どんな時も、決して後ろを向かず、ポジティブに前に進むことの大切さを思い出します。学生にとっても、素晴らしいロールモデルとして、心に刻まれることと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2023年8月8日

これからのオリンピックの形は?「国際理解とキャリア形成」の授業でオリンピックの将来についてのプレゼンテーションが行われました。

共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で7月11日にスポーツニッポン新聞社とのコラボ授業が行われました。「実践女子大生が考えるこれからのオリンピックの形」について学生たちがプレゼンテーションを行いました。授業の様子は7月12日のスポニチに記事として掲載され、貴重な発信の機会となりました。

メタバースも使って全員参加

最初の発表はグループ3から。
日本では開会式は視聴率がとても高い反面、各競技に対する視聴率は低く、関心がないことに着目。改善に向け、学生を対象にオリンピック関連の授業を実施することを提案しました。歴史や選手の講演を行ったりユニファイドスポーツを知ってもらうきっかけを増やしたりすることを考えました。また、ジェンダー面の解決策として、ユニフォームのデザイン案を選手自身に投票してもらうなども考案しました。

発表後には藤山氏から講評をいただきました。
「全員で参加するという姿勢を感じました。なぜ若者は競技を見ないのか、もう少し深堀してもらえたら更に良かったです」と話されました。

次のグループ1は「全世界に臨場感を届けたい!」をテーマに、メタバース空間を利用した観客参加を提案しました。VR技術を活用し、実際に競技を体験・参加できる場を作ります。エキシビションとして実際にゲームのようにメタバース空間で対戦できることで、親近感がわくシステムを考えました。

藤山氏からも「これからの時代メタバースなどの技術革新は避けては通れないでしょう」と同意のコメントをいただきました。ただ「IOCには厳しい肖像権がある。IOCも時代に合わせ変わって行かなくてはならない」と問題提起も重ねられました。

若者の意見を取り入れるには?

グループ6はオリンピックを現代だけでなく後世に伝えるために「若者に身近であり続ける」ことを目標としました。組織委員会の高齢化を問題点とし、もっと若者の意見を入りやすくするべきと指摘しました。また、スポーツ観戦は時間がかかりタイムパフォーマンスが悪いと若者から嫌煙されている点にも注目。オンラインチケットの販売で、アーカイブ配信をする方法などを提案しました。

藤山氏も「取材していても高齢化は感じていた。オリンピックの組織自体も若返らないと。また、スポーツが生き返るためにも時間の問題は大切だと感じました」と感想を述べられました。

グループ2は多様性に注目。
ユニフォームに自由度がないことを課題に挙げました。ジェンダーや宗教性の違いに配慮するため、それぞれの選手が着たい形状を選択できるようにしたり、選手の意見を取り入れたデザインにしたりすることを提案。また、水泳などの競技では盗撮等の問題があることも挙げ、安心して競技に集中できるユニフォームなどの採用の必要性を伝えました。開会式も競技別の選手入場とするなど、選手が伸び伸びとできる環境へ変わることの大切さを訴えました。

「多様性とスポーツとしての統一性をどう保つかの問題は難しい」と藤山氏。「盗撮の問題も水泳だけでなく深刻。取り上げてもらって良かった」と着眼点の良さを褒められました。

サスティナブルなオリンピックの形

グループ4は「全人類参加型のオリンピック」を掲げました。
ジェンダーに関係ない競技の採用を提案しました。例えばダンスやチアリーディング、アカペラなど、表現力を競うものをあげました。「オリンピックに合わないと思われるかもしれませんが、これくらい大胆に体格差や性別に関係ないものを入れるべき」と主張。その他にもSNSの活用や映画館等でのライブビューイングの活用などを提案しました。

藤山氏は「見出しが良いですね」と感嘆。「全員が納得する条件は難しい。男女の区別がない競技は必要」と共感されました。

最後のグループ5は「持続可能なオリンピック」をテーマにしました。
施設建設時の違法伐採や、終了後の施設の廃墟化、グッズの大量在庫の問題に焦点を当てました。これらの解決策として分散開催を提案しました。アジア・ヨーロッパなどエリア開催や、メタバースを活用することを提案し、地域振興や環境保全と、経済の両立を目指します。

「これからのオリンピックでは分散開催は確実に行われます」と藤山氏。「いままで一つの都市でしか開催できなかったのですが、2019年に改訂されました。少しずつですがオリンピックも変わっています」と話されました。

若者の視点でオリンピックを考える

最後に藤山氏から総評をいただきました。
「ひとつのテーマにも、いろんな切り口がありどれも内容が濃くてびっくりしました。このままオリンピックの委員会に持っていって、若者の意見として伝えても通じるものでした。メタバースやSNSなどはこれからの時代、確実に使われるものだと感じ、オリンピックやオリンピック委員会も変わらないといけないと改めて気付きました」と学生たちの頑張りをねぎらいました。

この授業の模様は、翌日のスポニチに実際に記事として掲載されました。
学生たちにとって貴重な発信の機会となりました。

担当教員からのメッセージ

「東京2020」の開幕前からスポーツニッポン新聞社様にご支援をいただき、6年の歳月が流れたことになります。その間には、開催の延期、無観客開催、そして大会後の様々な問題など、日本社会を大きく揺るがすイベントになりました。一方、実践女子大学では、10,000人を超える学生が、様々な形で東京2020に関わり、きっと彼女たち一人ひとりの心の中には、様々な感情とともに深く刻まれたことと思います。早いもので、来年はパリ五輪が開催されます。平和の祭典として歴史が続くことを祈りたいと思います。この間、様々な形でご支援いただいたスポーツニッポン新聞社の皆様に、改めて感謝申し上げます。

2023年7月20日

人から好かれる要素は「明・元・素」!「女性とキャリア形成」の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子氏が人生とキャリアの選択について講演を行いました。

6月22日に、共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長をお迎えし、講演いただきました。本授業は、担当グループの学生たちが進行を行います。明石氏はご自身のキャリアと経験から、人生とキャリアの選択について、人とのつながりの大切さまで幅広く語ってくださいました。

大手企業からベンチャー、会社立ち上げまで幅広いキャリア経験

明石氏は1979年に日本航空株式会社(JAL)に就職。
当時は女性の就職は短大卒がほとんどの時代。4年制大学を卒業した明石氏は採用枠が限られていたため、特にCA(客室乗務員)になりたかったわけではないけれど応募したと言います。
当時は「キャリアを考えてバリバリ仕事をしようなんて全く考えていませんでした」と話します。
結婚をして退職し子どもも2人出産するも、その後離婚を経験されます。
その当時、女性の片親はハンディだったと言います。「これからどうしていこうと考えた時に初めて、仕事ができる人になろうと思いました」と語りました。

それまでいわゆるオフィスワークの経験は皆無だった明石氏は、当時ベンチャー企業だった株式会社パソナに入社。
自分で考えて動かなければいけない職場に、「業務は与えられたもの、仕事は自分で作り出すもの」ということを実感し、仕事をする楽しさを知ったと言います。
その後コンサルティング会社に転職し、自分で会社を設立。社会に役立つ仕事に関わりたいと思い、日本マナー・プロトコール協会を立ち上げました。
2015年には内閣府の委員を委嘱され、現在では大手企業の社外取締役も担っています。

企業の種類を知ろう

「みなさんの人生の大きなターニングポイントになりかねないのが就職です」と明石氏。
事前課題でもあった企業の見方や選び方を確認しました。上場企業のなかでもプライム・スタンダードなどレベルが分かれること、非上場の法人、行政も就職先としてありえること。
「何を基準に選ぶかは人それぞれですが、しっかり人を育ててくれるところがいいのではないかなと思います」と話されました。

「皆さんはどんな企業を知っていますか」と問われ、いくつか企業名が挙がりました。その多くは消費者に商品やサービスを提供するBtoC企業です。しかし多くは非上場だったり上場していてもレベルは下であったりします。
「企業規模と知名度があることは別問題」と明石氏。知っている企業が良い企業とは限りません。
BtoBやCtoCの企業など視野を広げることの大事さを伝えました。

自分のキャリア志向を確認する

「みなさん全員が仕事でバリバリ活躍したいわけではないですね。私は専業主婦もとっても素敵だなと思います」と明石氏。「自分を知ることで迷わないようにしてほしいし、いろんな意見に流されず後悔しないで欲しい」と話しました。

ただ「やりたい仕事やなりたい自分への道は遠いかもしれない」とも語ります。
まず与えられた仕事をしっかりやってみることが大事と話しました。渡辺和子氏の「雑用という仕事はありません」という言葉を引用し、どんな仕事も心を込めてやっていれば、それを見てくれる人もいると諭しました。
今はキャリアチェンジがしやすい時代ではありますが、次のチャンスがいいものとも限りません。まずは継続する勇気を持つことが大切です。

人との付き合い方が大切

「会社って何かというと単なる人の集団なんです」と明石氏は話します。ビジネスは人が協働して成果を出すこと。
しかし、人間同士で行うことなのでトラブルも起こります。「でも人がいることで頑張ったり励まされたりすることも確かです」と、明石氏は3つの言葉を紹介されました。
アドバイスや勇気をくれる「メンター」、人生の理想像である「モデラー」、どんなときも支援してくれる「サポーター」です。
この3つに該当する人たちを見つけ大事にすることを勧めました。

コミュニケーションのコツは「明・元・素」と明石氏。
明るい、元気、素直な人のことです。
また、他人のせいにしないこと。「他人のせいにすると何も解決しないのでストレスが溜まるんです」と伝えました。自分でどうしたら解決できるかを考えることが大切だと話しました。

2022年に発表された女性の平均寿命は87.6歳。
明石氏は「就職してからの人生の方が長いんです」と言い「充実した時間を過ごして欲しい」と話します。先が見えなくて不安ということは、どんな可能性もあるということ。
「皆さんは、これからなんです」と力強くエールを送られました。

あなたのキャリアと人生は?

質疑応答の時間では多くの学生から手が挙がりました。
「折れないようにするための心の持ちようは?」という質問には「苦手な人との距離感を知ることじゃないかなと思います。また、メンターに助けてもらうなど自分が立ち直る方法を探すこと。深く折れてしまう前の方法を見つけましょう」と回答。

「他人のせいにする方がストレスは軽くなると思っていたので驚きました。逆だと思ったきっかけはなんですか」という学生には「離婚の経験が大きかった。自分にも理由があったと思ったら変われる。成長のチャンスになりました」と話されました。

最後に進行担当グループの学生から「知っている企業が良い会社とは限らないことなど、事前課題も含めとても良い学びになりました。
明・元・素など、今後の人生の指針となることを教えていただきました」とお礼の言葉があり、大きな拍手が起こりました。

担当教員からのメッセージ

私が企業(資生堂)に勤務していた頃からご縁をいただいていた明石様にご登壇いただきました。とにかく終始笑顔を絶やさずお話しされる姿には、学生とともに感動いたしました。様々なご経験の中から培われたポジション思考は、明石様の生き方そのものだと思います。この場を借りて、明石様に、心から感謝申し上げます。

2023年7月20日

現代の社会人に求められるものって?「実践プロジェクトa」でサントリーの新人研修を考えるコラボ授業が行われました。

6月16日に1年生対象の「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)で、サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)とのコラボ授業が行われました。ピープル&カルチャー本部の斎藤誠二氏と下間智美氏から「サントリーの新入社員に行う研修計画の提案」という課題が出され、グループワークを行います。ミッションを正確に理解し、社会人に求められるものを考える難しい課題に、学生たちは早速活発に議論していました。

やってみなはれ!サントリーの企業理念

サントリーは学生にもなじみ深い総合食品メーカー。主力の清涼飲料水や酒類のほか、サプリメントなどの健康食品、外食業や化粧品など幅広く展開しています。
現在売り上げの約半分が海外によるもので、世界に約4万人の従業員がいるグローバルな企業です。

下間氏は「サントリーは創業者の思いを継承し挑戦し続ける企業です」と話します。
「やってみなはれ」という創業者の口癖は今やサントリーのDNAとなっており、失敗を恐れずに未知の領域に挑戦し続ける、あきらめずに最後までやりきる、ということを大事にしています。下間氏は「サントリーはさまざまな挑戦の歴史があります」と語り、現在のペットボトルコーヒーの開発を例に挙げました。これまで缶がメインだったコーヒーを、現代の働き方に合ったスタイルで提案。新たな市場を開拓しました。
下間氏は「ただ売上を出したいということではなく、新しい生活文化を提供して生活を豊かにして欲しいという思いで開発しています」と語りました。

もう1つ大切にしている価値観が「利益三分主義」。
得た利益を事業への投資だけに回すのではなく、お客様へのサービスや社会への貢献にも活用することです。クラシックコンサートを行うサントリーホールや、サントリー美術館など芸術文化に触れる施設の運営を行ったり、スポーツチームやイベントへの出資をしたり。
また環境を守る「天然水の森」という森林活動や、子どもたちへ水の大切さを教える「水育」もその一環です。

人材育成に大切なこと

今回の課題は人事部門に関わる課題ということで、人材育成についても説明がありました。人材育成の役割は経営側と社員のそれぞれの考え・方向性を一致させることが第一です。
サントリーが求める社員は、グローバルな視野と開拓者精神を持った人。変化をチャンスと捉え、自ら一歩踏み出しチャレンジすることができる人材です。
「サントリーの中だけで活躍するのではなく、企業を飛び出して世の中でも通用する人材であって欲しいと思います」と下間氏は言います。

人の成長を決める要素とは7:2:1の割合で「経験:育成:研修」と言われます。
今回の課題は研修の部分。
下間氏は「たった1割かと思われるかもしれませんが、新人研修は社会人になって最初の、基礎になる重要な研修です」と話しました。

サントリーの新人研修を考えよう!

ここで改めて課題の発表が。「皆さんはサントリーの人事部の新入社員です」と下間氏。
課題は大きく2つです。
企業を取り巻く環境をふまえて、今の社会人に求められるものを考えること。
その上でサントリーに入社する社員に対する具体的な研修計画を提案することです。

「サントリーがどんな新人研修をしているのかという情報は、あえて提供しません」と下間氏。
提案された研修が、実際に行われている研修と合っているかということを問うている課題ではなく、学生たちの視点で自由にオリジナリティ豊かにに考えてほしいと話しました。

課題をどう進めていくかを、下間氏は3つのステップで伝えました。

ステップ1は「ニーズを把握する」。
どんな人材が企業から求められているのか、さまざまな情報を集めることが大切です。
ステップ2は「ニーズの背景を知り本質的な課題の考察をする」。
なぜそのニーズが求められるのか、その理由まで深堀すること。
ステップ3でようやく「具体的な研修計画を提案」です。

下間氏は「重要なのはステップ1と2をきちんと考えることです」と念押ししました。
研修計画を立てると「こんなことしたら楽しそう」とステップ3から考えたくなってしまいます。
しかし、いきなりステップ3から考えてしまうとなぜその研修が必要なのか、本質を見失い中身のないものになりかねません。ニーズを把握し、背景や課題を整理した上で「本質的な課題解決を前提にした、地に足のついた提案をまとめてもらえればと思います」と、学生たちの提案に期待を寄せました。

なにが本質?ロジカルに考えてみよう

早速学生たちはグループに分かれ作戦会議。
期間は?規模は?求められる人材は「自分で考える力じゃない?」「企業は個性を育てたいのかも」などさまざまな意見が飛び交っていました。
斎藤氏と下間氏に質問をしたり、昨年同じ課題に挑戦した先輩にアドバイスを受けたり、少しずつ案を固めていきました。

課題の評価基準はロジカルかどうか。
斎藤氏は「仕事はアイデア勝負ではない」と話し、筋道が立っていて納得できるものが大事と語ります。「今回の課題は何が正しいというわけではありません。世の中の情報に正解を探しに行かないでください」とアドバイス。
自分なりに考えて議論する大切さを伝えました。

学生たちはグループワークで提案を深め、中間発表を経て1か月後にプレゼンテーションに臨みます。

担当教員からのメッセージ

本授業について、サントリーホールディングス様にご支援いただくのは3回目となります。「大学での学び方を学ぶ」という本講座の狙いを実現する大切なテーマへの挑戦です。言い換えれば、このお題を通して、今社会は、どのような人材を求めているのか、そしてサントリー様ではどのような人材を育成しようとしているのかを考えることになりますが、このことを議論することは、1年生にとっては、ここからの4年間何を学ぶべきかを考えることに繋がるのです。果敢に挑戦してくれることを期待しています。この場を借りて、サントリーホールディングス様の斎藤様、下間様に心から感謝申し上げます。

2023年7月20日

「国際理解とキャリア形成」の授業で五輪メダリストの有森裕子氏をお招きしスポーツニッポン新聞社との特別コラボが行われました。

共通教育科目「国際理解とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、6月27日にスポーツニッポン新聞社との特別コラボセッションが行われました。スペシャルゲストは五輪女子マラソンメダリストの有森裕子氏。藤山健二編集委員との対談という形で、学生たちの前で講演を行って下さいました。世界の第一線で活躍された有森氏の貴重なお話に、学生たちも頷いたりメモを取ったりしながら真剣に耳を傾けていました。

諦めずに陸上部に入部

対談は、藤山氏が有森氏の生涯を振り返っていく形で進んでいきました。
有森氏はバルセロナ五輪で銀メダル、アトランタ五輪で銅メダルを獲得した、押しも押されもせぬオリンピアン。
しかし、子どもの頃は体が弱く、スポーツとは縁遠かったと話します。陸上と出会ったのは中学時代に運動会で800m走に出場したことがきっかけです。
「他の競技は得意な子がやりたがるんですが、800mは誰も出たがらなかったので空きがあったんです」と、有森氏は冗談交じりに話しました。その800m走で3年連続優勝。
「私はできるんだ!」と思った有森氏は高校で陸上をすることを目指します。

有森氏が進学した高校はスポーツ強豪で知られる名門校でした。陸上部の門をたたくも、実績のない有森氏は門前払いに合います。
しかし顧問の先生へ1ヵ月かけしつこく通い詰め直談判。とうとう顧問は折れ、陸上部に入部しました。
なぜそこまでして諦めなかったのかとよく聞かれるという有森氏は「諦める理由がなかった」と力強く仰います。
「できたことができなくなったわけではなく、まだ全部やりつくしていないだけだったので諦める必要がなかったんです」と語りました。

「根拠のないやる気」で小出監督に直談判

念願の陸上部に入部したものの、成績は振るいませんでした。大学でも大きな成績がないまま卒業。実業団を探していたときに、リクルート社にアプローチします。
そこで出会ったのが女子マラソンの名監督として名を馳せていた小出義雄監督でした。ここまできたら、と直談判し思いを伝えます。
すると「あなたは実績もなにも持っていない。けれどそれ以上にやりたいという気持ちを持っている。その根拠のないやる気に興味がある」と入社させてくれたのです。

晴れて入団するも自分は無名。
国体の岡山県大会に出場し最終予選で優勝するも、マネージャーが選手登録をしていなかったミスで失格扱いに。
そのときチームも監督もミスを棚に上げ実績がないからだと言われ、とにかく悔しかったと言います。
「それでも、この場所を選んだのは自分。この中で頑張るしかない」と怒りを自分の力に変えられたことが良かったと語り「今でもあの経験は活きています」と話しました。

人生で一番つらい時期は銀メダル獲得後

徐々に力をつけ、バルセロナ五輪に出場し銀メダルを獲得。その後状況は一変したと言います。
女子マラソンでメダルを取った人は有森氏が初めて。扱いに困られたり変に気を遣われたり。
次の五輪を目指し自分はもっと強くなりたかったのに、やりたいことの希望を出すと天狗になっているとか、わがままを言っているなどとねたまれたと言います。精神的につらくなり、成績も落ち込みます。
そんな時に両足のかかとに痛みも出て「人生で一番きつかった」と話しました。

もんもんとしていた日々を振り切るように有森氏は手術に踏み切ります。
手術は無事成功し再び走る意欲を取り戻しました。アトランタ五輪に出場し、銅メダルを獲得。
そのときのインタビューで出た名言はあまりにも有名です。
「自分で自分をほめたい」。
この言葉は「自分で決めたことを自分でできたことに対して出てきた」と話しました。

スペシャルオリンピックスって?

引退後は、国際オリンピック委員をはじめ、数多くのスポーツ振興に尽力されています。
その中で、今回有森氏が学生たちに知ってもらいたいと紹介したのが「スペシャルオリンピックス」です。
スペシャルオリンピックスは、知的障害のある人たちの自立や社会参加を目的とした競技会のこと。スポーツを通して全都道府県で年間を通して行われています。

「できるの?とつい考えてしまうけれど、知的障害の方は教えてもらえる機会があれば、できます」と有森氏。
今まで機会をもらえなかっただけと強調しました。障害を持った人はできないと思ってしまう固定観念を捨て、社会に出て一緒に生きていけることを知ってもらう機会になっています。
日本では健常者が担うパートナーの人材がなかなかいないのが課題。
「興味があるものがあれば参加してみて欲しいと思います」と学生たちに語り掛けました。

「将来のオリンピックの姿」のヒントになる講演

最後に、事前に学生たちから集めた質問の中からいくつかを、藤山氏が質問してくださいました。
「苦しいときのごほうびは?」という質問には「練習はつらかったが、苦しいのは強くなっている証拠なので、いやではなかったですね」と回答しました。
「アスリートの視点からみて、これからの五輪はどうなると思いますか」という問いには、「今はスポーツを通して自分を表現できるチャンスもある。五輪だけを見ている選手は少ないかも。個人的には、五輪を通じてもっと交流できる”祭典”に戻ってもらいたいです」と話しました。
オリンピアンの貴重な経験談は「将来のオリンピックの姿」を考えるヒントになりました。

担当教員からのメッセージ

有森さんにご登壇いただくのは、今回が4回目となります。最初にお越しいただいた時はオンライン授業の頃、学生はオンラインで授業に参加、教室にいたのは、有森さんと藤山さんと私の3人というシチュエーションでした。以来4年が経過、東京2020も延期がありながら開催され、1周年イベントも終わりましたが、早いもので来年はパリ五輪です。そんなタイミングで、もう一度、これからのオリンピックパラリンピックについて考えてみようという課題に挑戦しています。

有森さんの数々のエピソードからは、決してあきらめない心や、逆境の時にこそ「せっかくだから」という言葉を乗せることで、常に前向きに物事を考えること、そして挑戦する気持ちの大切さなど、数々のお言葉をいただきました。この場を借りて、有森さん、そしてスポニチの藤山様には、心から感謝申し上げます。