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2023年11月24日

大学生の今、考えよう!「グローバルキャリアデザイン」の授業でマイナビ顧問による「なぜ働くのか」を問う講演が行われました。

共通教育科目「グローバルキャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、10月13日に株式会社マイナビ(以下、マイナビ)顧問の浜田憲尚氏による講演が行われました。就職活動で利用必須のサービスを提供している企業の方のお話に学生たちも興味津々です。就職活動を前にした学生たちは改めて「働くとは何か」「なぜ働くのか」を考えるきっかけとなりました。

「働く」を考えるには今しかない!

浜田氏による講演はこの授業でも恒例となってきつつありますが「学生の皆さんの前で話すことはめったにないので、毎回緊張します」と、前置きをして話し始められました。
コロナ禍も終息しつつある現在、企業の採用意欲は急激に回復しつつあります。それは新卒に限らず、中途採用やアルバイトなどすべての雇用形態に言えること。どの業界も人手不足です。
そんな中、まさに就活を目の前にした学生たちに改めて考え直してもらいたいのが「なぜ働くのか」ということ。今働かなくてはならないのか、どこで、どんな仕事をするのか。
浜田氏は「それらについて深く考えるタイミングとしては今がとてもよい」と話し、「そのタイミングを活かさない手はない」と言います。
なぜなら日本は依然として新卒一括採用が主流のため、たくさんの企業が情報を提供し就活生たちを受け入れようとしているから。改めて働くとは何かを考える講演が始まりました。

企業と人をつなぐ仕事

マイナビは1973年創業。今年で50周年を迎える人材系の広告企業です。
主にインターネットなどのメディアを通して人と企業を繋ぐ事業をメインに行なっています。就活生はもちろん、アルバイトや転職、アスリートなどさまざまな人材と企業とのマッチングを行なっています。
マイナビの企業理念は「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」。ユーザーの人生に寄り添い、日常生活のあらゆる場面で使ってもらい、それによって前向きに人生が進んでいけるように支援することが目的です。

現在は海外展開事業のサポートを行なっている浜田氏ですが、なんと就職活動をせずにマイナビに入社したと言います。
面接の時間を間違えて行った会場で、当時の人事部長に声を掛けられ、とんとん拍子で最終面接まで進みそのまま入社されたそうです。そのため最初は「アルバイト感覚だった」と話します。
ただ「会社は楽しく、仕事も向いていると感じ打ち込めた」ため、こんなに長く勤められたと言います。この経験から、浜田氏は「深刻に考えすぎないこと」をアドバイスしました。
「一生懸命就活しても、一生勤められる企業かは分かりません。入ってからが勝負です。自分に合わないと感じたら、あるいはさらに新しいビジネスに挑戦したいと思ったら転職も考えていい」。
希望する企業が見つからないからと言って悩みすぎないようにと語りました。

たくさんの情報から何を目的に働くかを考える

就職活動を目前にした学生たちは不安も多いもの。ただ、ここで浜田氏はひとつのアンケート結果を見せました。
2023年8月に現4年生に行った「就職活動を漢字一文字で表すと?」の結果は、1位が「楽」。夢や将来が広がると前向きにとらえている学生も多いのです。
ただ2位は「苦」。「苦労したからこそ頑張れるという面もあります」と浜田氏。
「就職先を見つけることが目的になってはいけない。親や周りに言われたからと流されてしまわずに、自分の判断で見つけることも大事です」とアドバイスしました。

ではベストな就職とは何か。
何がベストなのかは人によって異なります。その答えを見つけるために働く目的を考えることが重要です。
「働く目的は人それぞれでいいと思います」、しかし仕事は糧(かて)を得るための手段であることは、誰にとっても共通しています。その「糧」を得る上で自分にとって何が重要か、自分の価値観や何にやりがいを感じるかを掘り下げ、それを企業が持つ理念やビジョンと照らし合わせる中で共感できる部分があるかどうかを確かめることが就職活動の第一歩として重要だと浜田氏はお話されました。

学生にとってベスト就職を実現するために、マイナビでは自己分析をサポートする機能や、インターンシップ情報、そして求人情報を質量の面から充実させています。できるだけ多くの選択肢からベストな1社を選んで頂くために、掲載企業数やその情報の質にこだわってサービス提供をしています。
浜田氏は「マイナビをフルに活用してぜひ悔いのない就職活動就活をしてください」と講義を締めくくりました。

OGからも貴重なアドバイス

実はこの授業を受講したことがきっかけで、2名の本学卒業生がマイナビに入社しています。
この日はOGである中嶋さんと渡辺さんも駆けつけてくれました。

授業の最後には質疑応答の時間が設けられ、浜田氏や先輩たちへたくさんの質問が飛び交いました。
「長く働き続けられたのは何が要因?」という質問に、浜田氏は「自分の成長と会社の成長を重ね合わせられたのが良かった。頑張ったらきちんと報われたのも大きい」と話しました。

先輩たちにも「就職活動前の今、やるべきことを教えてください」という質問が。
渡辺さんは「普段生活の中で目にする会社は本当にほんの一部。セミナーやインターンにたくさん参加してください。私も色んな会社を見たからこそ、いろんな会社に関われるマイナビに入社しました」と回答。
「就活の軸を決めたきっかけは?」という問いには、中嶋さんは「男女差のない仕事をしてしっかり稼ぎたいと思ったので、営業職を選びました。将来は転職することも視野に入れて自分の市場価値がさらに高まる会社を見つけていこうと思った、だからこそ、今の仕事に注力したい」と回答されました。

これから就職活動を行う学生たちにとってより就職活動について身近に、深く考えられるきっかけとなる授業でした。

担当教員からのメッセージ

私が企業の人事部時代に、採用業務を全面的にサポートいただいたマイナビ様、その時に浜田様と出会ってもう20年の歳月が流れます。こうして毎年、ゲストしてお招き出来ていることに、とても大切なご縁を感じています。

就職活動、採用活動も時代とともに様々な変化があることは肌で感じています。しかしながら、毎年、この時期に浜田様のお話しをお聞きして感じること、それは、「人と人とのご縁」だと思います。一期一会を大切にすることで、きっと素晴らしい会社が見つかり、長く長くお付き合いできる方との出会いが生まれると思います。学生たちの就職活動での健闘を祈り、改めて浜田様に心から感謝申し上げたいと思います。

2023年10月24日

問いを立てる力を養おう!高校生を対象にした探究学習サポートイベント「ナレッジ・スクランブル」が開催されました。

8月9日に高校生向け探究学習サポートイベント「ナレッジ・スクランブル」が開催されました。株式会社トモノカイ(以下、トモノカイ)のサポートを得て大学での学び方のヒントを伝えるワークショップや、講義形式の学部セッションが行われました。さらには日本航空株式会社(JAL)による特別コラボセッションも。高校生たちは学びの先に自分のやりたいことや関心ごとを結び付け、「問いを立てる」主体的な学習法を体験しました。

「どこ」に着目して「どのように」見る?

最初はトモノカイによるスタートワークショップから。「高校までの学びは答えのあるものでしたが、大学からは問いを作ることが重要になってくる。今回は問いを作る練習をしてみましょう」と始まりました。高校生たちは数人のグループに分かれ緊張した面持ち。本学学生も各グループに2名ほどが付き、サポートします。

大学の学部は自分が関心をもっている事柄の中の問題に対して「どこ」に着目して「どのように」見るかが大きな違いです。例えばゴミ問題を例にしてもゴミそのもの、収集する人、収集車のCO2排出など、何に着目するかで変わります。また、それを科学的に見る、文学的に研究するなどどのように分析するかで全く違った切り口での見方になります。自分なりにどういう見方をしたいかを知ることが、学部を選ぶときのヒントです。高校生たちは、さっそく問いを広げる練習ワークに挑戦しました。

国際学部セッション:AIを活用し英語学習を深めよう

ここからは希望の学部ごとに分かれ、それぞれ学部と企業の講義を体験します。

来年新設される国際学部からは三田薫教授が登壇し、英語学習にAIを取り入れることを提案しました。話題の文章生成AIであるChatGPTを実際に利用しながら講義は行われました。受験勉強としても必須である英語学習ですが「翻訳なら機械のほうが優秀な時代です」と三田教授。それでも英語を学ぶ理由はなにか、と問いかけました。必要なのは専門的な内容を話せて交渉できる英語力だと話します。学習にはインプットが重要と、リーディング量を大幅に増やすことが大切だと伝えました。

そこで活用できるのが生成AIです。自分の興味のあるテーマを打ち込めば、関連する文章を作成してくれ専門用語や知識も同時に身に付く質の高い教材が出来上がると紹介されました。専門用語だらけで難しいと感じた際は、易しい英文に直すことも可能。一語を切り取ってより詳しく深堀することもできます。

おすすめのテーマはSDGs。世界中の関心事のため、国内外どこでも話せる話題になります。今回は「航空燃料」を例に取って実際に三田教授が生成AIを使っていきました。自分専用のリーディング教材を作成し、音読することで、英語学習の幅や深さがレベルアップすると勧めました。

国際学部の企業セッション:航空会社の環境への取組とは

次はJALによる企業セッションです。JAL産学連携部人材開発グループの塩崎雅子氏による、JALのSDGsへの取組についての紹介がありました。最初に地球温暖化についての説明から。現在地球はCO2をはじめとする温室効果ガスにより、大気から熱が逃げにくい状態になり猛暑日の多発や台風、森林火災など多くの異常気象が起こっています。この問題に航空業界も真剣に取り組んでいるのです。

航空機のCO2排出量は全世界の2%を占めます。JALでは、燃費の良い高性能の機材に更新したり、エンジンの洗浄を定期的にして燃焼効率を高めたり、水の積載量を調節して機体重量を軽くしたりと様々な取り組みを行っています。
そのなかで特に重要なのが「SAF」の活用です。SAFとは持続可能な航空燃料のことで、原料は都市ごみや使用済の食用油、木材、海藻など。従来の燃料では、採掘する際にもCO2を出してしまいます。地上にある原料を使うSAFを活用することでCO2排出の総量を減らすことが目的です。しかしSAFはまだまだ供給量が少なく高価。国産で安定的にSAFを供給できるような体制をつくることを目指しています。2030年までに全体の10%をSAFに置き換える目標をかかげ、ライバル社である全日本空輸株式会社(ANA)とも協力し、共同で研究しています。

「周りを海に囲まれている日本にとって、飛行機は世界を身近に感じるためになくてはならない乗り物です。これからは未来の燃料を使い、人にも環境にも優しい旅の実現を目指します」と塩崎氏は講義を締めくくりました。

人間社会学部セッション:時間軸・空間軸で地域を見て課題を考えよう

人間社会学部からは原田謙教授が登壇し、社会学の視点から考える探究のコツを伝授しました。社会学とは地域をはじめとする社会の変化や課題を探究する学問です。社会を見るための方法の一つ目は時間軸で同じ地域や社会を考えるやり方です。今現在の東京と、50年前の課題は当然違います。もう一つは空間軸で考えること。都心エリアと郊外ではどう違うかを見ます。

ここで原田教授は高校生たちにQRコードを利用したアンケートを実施。「今の東京における地域の課題とはなんでしょうか?」学生たちはゴミのポイ捨て、ホームレス、満員電車、治安、猛暑などさまざまな課題を次々に挙げていきました。

原田教授は現在の課題のひとつとして都心の人口増加を上げました。しかし50年前は地方から来た人に対する住宅不足が問題でした。そのため1970年代には多摩地域など郊外のニュータウン開発が盛んになり、いったん都心人口は減りますが1990年代から再度人口が増え始めました。「この現象をジェントリフィケーション(都心回帰)と言います」と原田教授。時間軸で考えることで都心が常に人口増加しているわけではないことが分かります。

社会学の研究は「自分自身で社会を観察、アンケートやインタビューで調査して一次データを取ることが強み」と原田教授。統計を見る量的調査だけでなく、フィールドワークを通しデータを集める質的調査を行うことで、より自身が探究したい課題に取り組めると話しました。高校生たちは社会学のエッセンスを感じられる講義となりました。

人間社会学部企業セッション:航空会社が行う地域活性化の取組って?

続いてJAL産学連携部人材開発グループの田中優子氏が登壇され、地域活性化のためにJALが行っている取組についてお話しされました。JALは航空運送業で、各地に空港や支店、グループ会社があるため、日本中にネットワークがあります。それらを活かして、なにかJALも地域活性化に貢献できないか、と取組を行っているのです。なぜJALが地域活性化に取り組むかと言えば、背景に「ESG経営」があります。現在企業経営の在り方として重要視されている考えで「皆さんはまだ高校生ですが、今後、就活をされる際、企業の考え方を知るのに役立つと思います」と田中氏は解説しました。

JALグループの取組のひとつに「JALふるさとプロジェクト」があります。その一環として、地域産業を支援し特産物の商品開発やプロモーションを行っています。商品はふるさと納税やJALグループのネットワークを通じて販売し、販路・物流の活性化も促しています。CAが地域に移住し、より地域の課題に寄り添えるJALふるさとアンバサダーという制度も。他にも多くの取組が紹介されました。「地域との交流は以前からありました。繋がりの大切さを感じるプロジェクトです」と田中氏は講演を締めくくりました。

問いを立てることはやりたい仕事の選択につながる

2つのセッションを終えた高校生たちは再度一番最初のグループへ戻り、それぞれの学部や企業のセッションで学んだ視点を、自分が関心のある社会問題に組み合わせて問いを立ててみることを試みました。「どこ」を「どのように」扱うかを考えるということは、自分が何を目指すのか、なぜそう思うのかを考えることにつながり大学での学びや、ひいては企業や仕事の選択にもつながります。

最後にグループ内で発表し合い、それぞれの考えを聞いていた高校生たちは真剣ながらも笑顔を見せつつ、体験学習を楽しんでいました。

2023年10月20日

ホームタウンに愛されるクラブに!「実践キャリアプランニング」の授業で東京ヴェルディによる特別講義が行われました。

9月26日に「実践キャリアプランニング」(担当:高橋 裕樹特任教授)の授業で、東京ヴェルディ株式会社(以下、東京ウェルディ)の中島健吾氏をゲストにお招きした講義が日野キャンパスにて行われました。日野市は東京ヴェルディの「ホームタウン」。学生たちはホームタウンとは何か、どのように地域に関わっているのかを通し、地域貢献について学ぶ機会となりました。

東京ヴェルディはどんなチーム?

東京ヴェルディは、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のクラブチームのひとつ。1969年に日本初のプロサッカークラブとして創設された「読売サッカークラブ」が前身で、リーグ、リーグカップ、天皇杯と国内の3大タイトルで優勝経験がある歴史と伝統を備えたチームです。現在はJ2リーグ(2部)に所属していますが、2023シーズンは3位と好調をキープしており、J1リーグ(1部)への昇格も狙える位置にいます。

サッカークラブチームを運営している会社ですが、講義をしてくださる中島健吾氏はホームタウン部の所属。日野市や稲城市、八王子市を担当しています。中島氏は日野市出身。大学ではスポーツビジネスを専攻しインターンシップで東京ヴェルディに関わり、その縁もあり2021年に入社されました。

ヴェルディは「先駆者」である

中島氏は東京ヴェルディのバリュー(中核的な価値観)を紹介しました。「仕事上で迷ったらこの価値観に立ち返って、本当にこれに沿って仕事ができているのか確認をする、一つの指標としてとても大事なものです」。一番は「パイオニア」であること。創設当時は野球が盛んで今ほどサッカー人気がない時代。そんな中プロチームを作った東京ヴェルディは、前例や常識にとらわれず先駆者であることを大事にしています。「サスティナビリティ」も大事な観点で、物事は挑戦するだけでなく続けていくことも大切。持続性を意識し成長していくことも重要な価値観です。

ミッションは「世界で輝く人材を育成する」こと。これまで日本代表選手を17名輩出し「まさに日本サッカーの土台を作ったと言っても過言ではないかなと思います」と誇らしげに中島氏は話します。ただ、輝かしい戦歴の裏で苦労も多くあります。2005年にはJ2に降格し、2009年には親会社が撤退し経営危機にも陥りました。現在は総合型クラブを目指し、サッカーだけでなくバレーボールやトライアスロンなどのチーム運営や、音楽などのエンターテイメント業界参入も視野に活動しています。これまでヴェルディが培ってきた人材育成のノウハウを生かし、スポーツスクールだけでなく様々なところで応用していけるように活動しています。

ホームタウンとは?

ホームタウンとはクラブの本拠地のこと。クラブはホームタウンに対し地域に根差したスポーツ文化の振興活動を行うことが求められます。これはJリーグ百年構想という理念に基づいて定められているもの。そのため株式会社という一企業でありながら、利益を追求するだけでなく公共性の高い活動をしていく必要もあるのです。

ただ東京ヴェルディは2001年に川崎市から東京へ本拠地を移転しています。それだけに東京ヴェルディが地域に受け入れてもらうためには「東京ヴェルディは、他のチームよりもホームタウンをより大事にしなくてはいけない」と考え活動していると中島氏は話しました。

ホームタウンから愛されるクラブになるために

「クラブがホームタウンになくてはならない存在にならなくてはいけない」と中島氏。スポーツ文化の現場はもちろん、防災や防犯や農業、観光の分野でも活動しています。例えば防犯対策、交通安全啓発の一環として、新一年生へのランドセルカバーを寄付しています。今まで市が担っていた公費の削減にもつながり自治体とクラブ、市民の全員がwinーwinの関係になりました。また、放置されていた田んぼで選手がコメ作りを行い、地域住民と米粉クッキーを作成し販売。クッキーは好評で田んぼの利用者も増えるなど良い循環が生まれています。

日野市で取り組まれている、市内におけるスポーツの推進に係る体制の整備を図るための日野市スポーツ推進委員「ひのスポ」の立ち上げにも貢献。学校や教育の場面では、部活動の先生の負担や部員数の減少が問題になっています。子どもたちが安心してスポーツを楽しめるよう、地域と連携して活動されています。

就活の準備は早すぎることはない

最後はアンケートフォームを利用して質疑応答が行われました。「就活前に持っておいた方が良い資格は?」という質問には中島氏は「資格ではないですが、英語は必須だと感じます。あと簿記はやっておいて損はない」と回答されました。またスポーツ系企業への就職を目指している学生から「スポーツが得意なことは必須ですか」と質問が。「自分もサッカーはやっていましたが得意ではなかったし、関係ないです。体育会系の企業と思われがちですが、女性も多く活躍しています」と語りました。中島氏は「就活を始めるのが遅かったことを、後悔しています。就活の準備は今からでも早くはない」と話し、講義を締めくくりました。学生たちにとって地域貢献と企業の活動について、身近に感じられる講演となりました。

2023年6月2日

相手の立場になって考える!「実践プロジェクトa」の授業でJALのホスピタリティマインドを学び学生たちが発表を行いました。

3年生対象の「実践プロジェクトa」(担当:髙橋 裕樹特任教授)の授業で、5月8日に日本航空株式会社(JAL)の塩崎氏をお招きし「ホスピタリティとコミュニケーション」を学ぶ授業が行われました。全3回の内、この日は3回目。学生たちは授業を通して学んだホスピタリティマインドを1分間にまとめ、それぞれ発表しエールを送り合いました。

これからのホスピタリティとテクノロジーの付き合い方

これまでの授業で学生たちは、、ポジティブコミュニケーションやサービスの現場におけるホスピタリティなどについて学んできました。
今回は「AIとホスピタリティ」というトピックから授業は始まりました。AIとホスピタリティはなかなか結び付かないですが、実は「これからの時代、ホスピタリティとテクノロジーの関係を考えていくことは重要です」と塩崎氏。

AIは大量のデータを学習し、データの中にひそむ規則を見つけ出し、正確・迅速に処理をするのが得意。万能のように感じられますが、実はそうでもありません。2011年に国立情報学研究所が中心となって、AIが東京大学入試合格を目指すプロジェクトを開始しましたが、2016年にプロジェクトは凍結されました。AIは数学や世界史などは得意でしたが、国語や英語では、文脈や文章から意味を理解することができず点数を上げることができませんでした。AIは問題の意味を理解しているわけではなく、統計的な処理をして回答を導き出しているだけで、文中に書かれていない情報や空気を読んで判断することはできなかったのです。

ホスピタリティマインドを使ってAIと人間が「協働」する

塩崎氏は「AIの得意なことと人間の得意なことを組み合わせていくことが大切です」と語ります。
航空業界でも、AIは活用されはじめています。2030年までに訪日外国人数を6000万人にするという政府の目標が掲げられましたが、その人数に対応する空港の旅客処理能力は追いついていません。そこでAIによる顔認証システムや自動チェックインの導入などで手続きの効率化をはかっています。自動化できるところはAIに任せることで、人間はお手伝いの必要なお客さまのサポートに集中することができます。

ホテルでもAI の活用は進んできていますが、塩崎氏は、「ホテルでこれだけは人間に対応してほしいと思うのはどんなときですか?」と学生たちに問いかけました。「電話での対応」「レストランの接客」「困ったとき」などの回答があり、「挨拶してくれるのは人の方が嬉しい」という意見も。人間にしかできないこともまだまだ多く、人間だからできる「心を遣うこと」を磨き、ホスピタリティマインドを育んでいくことが必要なのです。

話はこれからの時代にますます進むダイバーシティについても触れられました。
日本に住む外国人は30年で3倍に増え、その国籍も多様化しています。生活のための日本語に関する調査によると、日常会話で日本語を使っている外国人は約8割に上り、また、「希望する情報発信言語」として「やさしい日本語」を選んだ人が76%と英語よりも多くなっています。そのため特に災害などの緊急時には、やさしい日本語を使って情報を伝えることが重要です。やさしい日本語を使うこともホスピタリティのひとつです。
塩崎氏は「外国の方を見つけたときは、こちらからやさしい日本語でアプローチしてみてください」と語り掛けました。

学んだことを日常にも活かして

授業の最後では、学生一人ひとりによる1分間スピーチが行われました。
授業を通して学んだことを自分の言葉にまとめ、決意表明の形で発表します。また、他の学生の発表を聞いてエールを送り、ポジティブコミュニケーションも実践しました。

最初の学生は「自分なりのホスピタリティ」と題し、自分の現時点の弱みとして相手の気持ちを読み取ることが苦手と分析。相手の立場に立ち、自分だったらどう思うかを考えることを実践していきたいと発表しました。

Kさんは、
「3割話し7割聞く」、を実践し「話しやすい、話していて楽しいと思われる人になりたいです」と発表。聞いていた学生からは「Kさんは、すでに話すのが上手で話していて楽しいです。でも、さらに向上できるよう一緒に頑張っていきましょう」とエールが送られました。


次の学生は、
「話すことがコミュニケーションだ」と思っていたと話し、相手の話を傾聴し相手に伝わるということを意識してコミュニケーションしたいと思います」と決意表明しました。自分は負けず嫌いで、自分の話ばかり意識しがちだったというGさんは「自分と違う意見も聞き、なぜそう思うのか伝える力を持った社会人になりたい」と語りました。

Yさんは
「思ったことをすぐに口にしてしまう」という癖を反省し、相手のことを考え言葉を選ぶことを大切にし、バイトでも活かしていきたいと発表しました。
「今回学んだことは社会に出てからだけでなく、大学内でも使えることだと気付きました」と語ったのはNさん。


最後の学生はディズニーランドでキャストの対応にホスピタリティを感じた経験を話し、それぞれのシーン、背景を考え快適な空間を提案することの大切さを話しました。

相手の立場に立って傾聴することの大切さ

最後に塩崎氏からコメントをいただきました。
「皆さんの決意表明は、授業での気づきをアルバイトやサークル活動などでのコミュニケーションに活かしていきたいという想いが溢れていて、とても素敵でした。また、自分が困った時に声をかけてもらえたことが心に残っているというエピソードもあったように、困っている人や弱い立場の人に積極的に寄り添って声を掛けるよう心掛けることで、人の心に残るホスピタリティを実践することができると思います」。

学生全員が自分を振り返り、コミュニケーションを前向きに捉えなおす良い機会になった授業となりました。