2025年10月22日(水)社会学概論(担当:人間社会学部人間社会学科 原田 謙教授)にて、スマドリ株式会社 野溝氏、スマートドリンキングプロジェクトメンバー新藤氏をお招きし、お酒にまつわるあらたなライフスタイルである「スマートドリンキング」に関する講演と、マーケティングのセミナーが行われました。

授業と企業連携について
「社会学概論」は、人間社会学部の1年生を対象に開講されている専門必修科目です。学生は授業を通して社会学の基礎を学び、社会学的な発想を身につけながら、現代社会の仕組みや課題を正しく理解する力を養っていきます。
本学では「スマートドリンキング」に関するプロジェクトをテーマに、原田教授のゼミや講演などを通して3年間にわたりスマドリ社との連携を行っています。今回のコラボレーションでは、スマドリ社が提案するライフスタイルや飲酒に対する意識の変化についての講義に加え、マーケティングに関する解説やミニワークも実施されました。学生にとって、社会の動向を学び、自らの専門領域への理解をさらに深める貴重な機会となりました。
スマドリについて
講演の冒頭で、野溝氏から「スマートドリンキング(スマドリ)」について詳しい説明がありました。「スマドリ」とは、アルコールを「飲む」「飲まない」という選択の多様性を尊重し、体質や気分に合わせて“自分らしい飲み方”を提案する考え方です。テレビCMなどを通じて認知が広がっており、学生アンケートでは約50%がその名を知っていると回答。教室内では、二人に一人が「スマドリ」を認知していることが分かりました。

さらに、「スマドリ」の推進を目的として「スマドリ株式会社」が設立されたことも紹介されました。同社は「飲む人も飲まない人も共に楽しめる社会」を目指すマーケティング会社であり、飲酒にまつわる楽しみ方の多様性を広げる取り組みを行っています。
大学との産学連携プロジェクトにも積極的に取り組んでおり、スマドリ普及の主要ターゲットである大学生と共に、普及に向けたアイデア創出を行っています。これまでの連携授業では、学生の企画が実際にイベントとして実現したり、大学内でコラボブースを出店したりするなど、学びを出発点に社会へ広がる活動へと発展した事例が紹介されました。さらに、渋谷区主催のイベントでの社会提案型発表など、学生の発想をきっかけに企業や地域と連動した実践的な活動も生まれています。
お酒の適切な楽しみ方を知ろう!
適切な飲酒のための正しい知識を得ることを目的に、学生たちはアルコール体質を確認する「パッチテスト」を体験しました。これは、手の内側にシールを貼り、20分後の色の変化によって「アルコールを分解できる体質かどうか」を判断するものです。
新藤氏は、「アルコールを分解できるかどうかは、特定の分解酵素の働きによって決まります。分解酵素の働きが弱い人は、お酒に弱い体質ということになります」と説明。「日本人の約半数は、この分解酵素の働きが弱い、または働かない体質であるとされています。自分の体質を知ることは、安全にお酒を楽しむための第一歩です」と述べました。
このほかにも、飲酒によって引き起こされる健康被害や、不適切な飲酒によるさまざまなリスクについて解説があり、学生たちは適切にお酒を楽しむための正しい知識を学びました。



マーケティングセミナー
学科の学びと関連づけながら、マーケティングに関する講演も行われました。企業のマーケティングについて、「SNSの普及により、口コミを通じた購買行動が増加しています。消費者同士の交流によって評判が広がり、その結果メガヒット商品が生まれるケースも見られるようになりました」と紹介。さらに、「企業がマーケティング戦略を考える際には、受け手となるターゲットを深く理解することが非常に重要です」と述べ、実際の分析手法についても解説しました。
続いて、マーケティングのアイデアを具体的な施策へと落とし込む際のポイントを紹介。過去の事例をもとに、フレームワークの活用方法や施策立案の流れをわかりやすく解説し、学生たちは真剣な表情で耳を傾けていました。

実践!企画を考えよう

授業の最後にはワークが行われ、「世の中のZ世代にスマドリを広げるには?」または「渋谷区のZ世代にスマドリしてもらうには?」のいずれかをテーマに、学生たちはアイデアを考えました。
ワーク後は、野溝氏、新藤氏、原田教授の3名によるフィードバックが実施されました。特に「世の中のZ世代にスマドリを広げるには?」の提案に対しては、「スマートフォンを見る機会が増える中、『学食などで食事中によく見る』という大学生の日常動作をもとにスマドリの普及策を考えていた点が非常に参考になった」「提案の中で“推し”やキャラクターといった観点が多かった。身近に感じている存在と組み合わせることで、スマドリもより親しみやすく感じてもらえるのではと気づかされた」といったコメントが寄せられました。
質疑応答
「マーケティング的な商品開発を行ううえで、大学時代に勉強しておくとよいことはありますか?」という質問に対し、「業界に興味を持ったきっかけは、大学時代に履修した授業でした。履修登録の段階で気になる授業を選び、日常で触れるメディアや広告の中から『これを仕事にしたい』という興味の種を見つけることが大切です。そこから逆算して必要な学びを進めていくとよいと思います」と回答しました。
また、「数年前と比べてスマドリの認知度が高まっていますが、広報活動の方向性に変化はありますか?」という質問には、「TVCMによって40~50代の認知度が上昇しました。現在は、認知度をさらに高めたいターゲット層が若年層にシフトしており、SNSプロモーションやポップアップショップの開催など、若者のコミュニケーションスタイルに合わせたプロモーションを展開していきたいと考えています」と回答。今後の展望についても語られました。
今回の特別講義を通じて、学生たちはスマドリが提案する新たなライフスタイルや、マーケティングの考え方について理解を深めました。学びを通して社会とのつながりを意識し、今後の専門的な探究につながる貴重な時間となりました。
担当教員からのメッセージ
渋谷スマートドリンキングプロジェクトの皆様には、これまでも3年ゼミでのワークショップの実施などでお世話になってきました。今年度は、1年生向けに渋谷発のイノベーションである「スマドリ」をご紹介いただきました。前週にちょうど講義していたライフスタイル、ダイバーシティ、アンコンシャス・バイアスといったキーワードとも響き合うお話でした。
ご多忙の中ご講義頂いた野溝様、新藤様、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。


