8月7日(火)に生活科学部 食生活科学科の専門教育科目である食生活オープン講座にて、丸紅プラックス株式会社(以下丸紅プラックス)から産業資材本部産業資材第二部主任の神谷裕美氏と管理本部総務人事部の先川祥弘氏をお招きし、課題に対する成果の発表が行われました。

発表の前に
食生活オープン講座は、生活科学部食生活科学科の学生を対象に開講されている専門教育科目です。企業から提示される課題に学生が取り組む課題解決(PBL)型の授業となっています。丸紅プラックスから提示された課題のテーマは「丸紅プラックスの容器を活用した弁当の提案」。学生が実際の店舗に足を運んだ市場調査と中間発表を経て、最終成果を発表しました。発表の後は学生間投票で優秀賞が決定し、賞状の授与が行われました。
1班:ベジっと!うどん
市場調査の結果、冷凍食品には選択肢が少ないこと、そして「野菜の豊富さ」を打ち出した商品が特に女性から支持されていることが分かりました。そこで1班は、野菜をたっぷり使った冷凍弁当「ベジっと!うどん」を提案しました。
ターゲットは、ヘルシーな食事への関心が高い女性層と、栄養バランスが課題とされる高齢者層です。蒸し野菜を中心に、鉄分・ビタミンなど不足しがちな栄養素を補えるように工夫し、消化の良いうどんと組み合わせることで、健康的で食べやすい弁当に仕上げました。
商品は透明なフタ付き耐熱容器で提供し、彩り豊かな見た目をそのまま楽しめる設計に。電子レンジで手軽に調理できる点もポイントです。冷凍・レンジ調理が可能な容器の特性を最大限に活かしています。パッケージは透明デザインを採用し、ロゴのみでシンプルに情報を伝える工夫がされています。


さらに「ベジっと!うどん」は主食やソース、トッピングを変えることで幅広いバリエーション展開が可能。実際に「ベジっと!ペンネ」などの試作も行われ、ソースによる味の違いが好評という結果が共有されました。
販売はコンビニやスーパーに加え、冷凍食品の強みを活かしたネット販売も想定。価格は700円以内に設定し、SNSでは「温活」「健康志向」といったキーワードを用いた発信を計画しています。学生が考案した商品である点もアピールポイントとしています。
2班:世界プチ旅行弁当
市場調査では、営業時間や店舗規模の異なるスーパーの弁当コーナーの比較を行いました。その結果、彩りや食体験を重視した弁当へのニーズが明らかに。これらを踏まえ、「目で楽しみ気分を変えられる世界を旅する弁当」をコンセプトに、世界各国の料理をブッフェ形式で選ぶことができる「世界プチ旅行弁当」を提案しました。
ターゲットは「海外旅行に行きたいけど行けない人」や「食による気分転換を求めている人」。購入者は、国ごとの代表的な料理を一品ずつ選び、区切りのある容器に盛り付けることで、異なる料理の味が混ざらない工夫を施しました。さらに、容器は多国籍認証であるFSC認証を受けたエコ素材容器を使用することで、環境への配慮もアピールします。
また、リピーター向けの仕掛けとして国旗ステッカーを取り入れました。料理に添えられている小さな国旗のピックを、耐久性のあるステッカー素材にすることで、コレクション性を高めました。加えて、展開例として各国のスイーツを集めたアフタヌーンティーボックスも紹介され、幅広い提案がされました。


価格は980円に設定し、プチ贅沢な特別感を演出しました。宣伝方法としては、店頭のPOPやSNS広告を活用するほか、ブッフェ形式ならではの特徴を活かし、購入者自身が「自分で選んだ弁当の内容」を発信することで話題性を広げる戦略としました。
3班:Salaporte(サラポルテ)
3班は、市場調査として訪れたデパート地下食品売り場で、サラダの需要の高さに着目しました。一方で、販売されている商品の多くは彩りが欠けていることを分析。これらを踏まえて、華やかな見た目と1日分の野菜の2分の1が摂取できるヘルシーさを兼ね備えたサラダボウル「Salaporte」を提案しました。この名称は、“サラダ”とフランス語で『運ぶ』を意味する“ポルテ”を組み合わせた造語です。
ターゲットは20~30代の健康志向の女性で、フルーツ・ナッツ・チーズを使用していることが大きな特徴です。近年SNSで華やかなサラダボウルが流行していることを背景に、彩り豊かなサラダを考案しました。
また、恒常メニューに加えて季節限定商品を展開し、旬のフルーツを楽しめる仕組みを提案。そして、容器は既存のものをベースに、ボタニカルなデザインとドレッシングを効率的に使用できる容器を提案し、フランス風のコンセプトと環境に配慮したエコ容器を組み合わせることで、脱プラスチックを意識した欧風イメージを打ち出しました。


デパートの地下食品売り場での販売を想定し、価格は800円~1200円と設定。自分へのご褒美や気分転換にもぴったりな商品としました。
4班:まんぷくミニパレードBOX
4班は市場調査として、価格帯の異なる複数のコンビニエンスストアを比較・分析。その結果、共通して「健康志向」と「環境意識の高さ」が重視されている点に注目しました。また、近年人気のグルテンフリー食品については、「健康的ではあるものの満足感に欠ける」という課題を抽出しました。
この課題を踏まえ、ダイエット中の人や健康志向の人、アレルギーを持つ人をターゲットにした「まんぷくミニパレードBOX」を提案しました。コンセプトは「目でも楽しめて、しっかり満足できるヘルシー弁当」。パレードのように多彩な料理が並ぶ楽しい見た目にすることで、食の制限がある人にも食べる楽しさを感じてもらえる工夫をしています。
メニューにはパンケーキ・フルーツのコンポート・キッシュ・ナゲットを採用。料理はすべて米粉や豆腐など、低アレルゲンかつ健康的な素材を使用します。「ナゲットに使用する豆腐はきちんと水切りを行う」など、調理法や食感にもこだわり、満足感のある味わいを実現しました。容器は区切りのあるタイプを使用し、多種類の料理を美しく盛り付けられるように配慮しています。


販促方法としてSNSや店頭POPを活用し、価格は900円程度を想定。販売場所としては、キッチンカー・スーパー・コンビニなど幅広い展開を計画しました。
5班:夏野菜チーズカレードリア
5班は市場調査を通じて、弁当における「健康志向の高まり」「季節感の演出」「彩りの工夫」が重視されていることを発見。これらの要素を取り入れ、20代を中心に幅広い世代に人気のあるカレーをベースにした「夏野菜チーズカレードリア」を提案しました。
ターゲットは、健康や食生活に気を配りながらも満足感のある食事を求める若年層や社会人です。旬の夏野菜をふんだんに使用し、見た目にも華やかで季節感のある一品に仕上げました。ごはんには雑穀米を取り入れて、彩りと栄養価をプラス。さらにカレーのルーに刻んだ野菜を加えることで、1食で1日の野菜摂取量の半分を補えるよう工夫しました。チーズは低脂肪のものを使用し、ヘルシーさにも配慮しています。
容器には、耐水・耐油に加えて冷凍保存やオーブン加熱も可能な素材を採用。調理の流れとしては、製造後に冷凍保存し、販売店では冷蔵保存で管理。提供時にはオーブンでチーズに焼き目をつけることで、アツアツで香ばしい状態で販売できるようにしました。


冷凍保存が可能な点を活かし、販売数に応じた柔軟な調整が可能となり、フードロス削減にもつながります。さらに、テイクアウト販売にも対応可能なため、キッチンカーなど多様な販売形態の展開も可能です。
宣伝方法としてはSNS広告や店頭看板を活用し、弁当の価格は750円程度を想定。夏の暑さで食欲が落ちやすい時期にも、野菜たっぷりで満足感のあるヘルシーな一品として提案しました。
6班:夏バテ防止スープカレー弁当
6班は市場調査として、揚げ物弁当専門店や駅併設の商業施設の食品売り場を訪問。その結果、弁当における「見た目の美しさ」や「売り場のライスの選択肢の豊富さ」の2点に注目しました。この調査を踏まえ、旬の野菜に素揚げのひと手間を加えた彩り豊かな見た目と、選べるご飯で楽しみ方を広げられる「夏バテ防止スープカレー弁当」を考案しました。
食材には立川産の野菜を使用し、地産地消を意識することで地域とのつながりを大切にしながら、ヘルシーで満足感のある商品を目指します。ご飯は、白米・ターメリックライス・雑穀米の3種類から選べる形式とし、リピーター獲得を狙っています。
ターゲットは「立川に勤務する健康志向のオフィスワーカー」。通勤途中や昼休みに手軽に購入できるよう、キッチンカーでの販売を想定しています。価格は900円程度に設定し、ランチとして無理なく購入できる価格設定としました。


販促ではSNS広告を活用し、地域限定ターゲティングを実施。「地産地消」や「一食で手軽にたっぷり野菜」などのキーワードを軸に商品価値を発信します。
7班:からだ想いの彩り弁当
7班は市場調査において、店舗ごとの売り方の違いや共通点を比較しました。その結果、弁当選びにおいて「健康志向」「環境への関心」「見た目の美しさ」が重要な要素であることが明らかになりました。加えて、栄養の偏りやフードロスといった社会課題にも着目し、これらを解決する「からだ想いの彩り弁当」を提案しました。
ターゲットは健康志向の女性。旬の野菜を豊富に使用し、「季節のごはん」「豆腐入りつくね」「トマト入りだし巻き卵」や「だし茹でにんじん」など、彩り鮮やかでヘルシーな料理を盛り込んでいます。容器は多くの料理を美しく分けて盛り付けられる構造を採用しました。
食材には、規格外野菜を活用してフードロスを抑え、地元産野菜を使用することで地域経済の循環にも貢献します。さらに、販売エリアに合わせて中身をカスタマイズできる柔軟性も備えています。


販売場所はデパートの地下食品売り場を想定し、価格は1000円前後に設定。和食の持つヘルシーさと、美しさを兼ね備えた商品として、現代のライフスタイルに合った形で「和の食文化」を発信します。
授業の最後に
すべての班の発表が終了したあとは、最優秀賞を決める学生間投票が行われました。学生たちは事前に配布された評価シートをもとに、他班の発表を評価し投票を行います。
結果はなんと、1班と2班が同率一位という接戦に。最終的に神谷氏と先川氏の協議の結果、「容器について深堀していた」という観点から、最優秀賞は1班に決定!受賞した1班には賞状が授与されました。

授業の終わりに、企業担当者のお二人から授業の総括のコメントをいただきました。

神谷氏は「初回講義で容器の説明をさせていただきましたが、その特徴をしっかり理解していると感じました。商品の提案に至るまでの市場調査など、想像以上に熱心に取り組まれていて参加させていただいて本当によかったです。多くの班が宣伝方法にSNSの活用を挙げていましたが、SNSを使って世の中にどう広めていくかという点は、実際に今課題として抱えています。SNSを活用しようとする姿勢は今後社会に出てからも活きていくと思います」とコメントされました。
先川氏は「調査をしっかりしたうえでターゲットを明確にし、それに向かってアプローチしていく姿勢は、将来仕事をしていく上で大切な考え方だと思います。プレゼンテーションでは、ただ話せることに加えて、プレゼンツールの活用や相手の意図・気持ちを理解した提案が重要になっていきます。今回の経験を通して学んだことを、今後も継続していくことで、将来必ず役立つはずです」と発表をきいた感想を述べました。

担当教員のコメント
食品の流通・販売において「容器」は欠かせない存在です。丸紅プラックス株式会社様は、環境に配慮したエコ容器「EUCALP(ユーカルプ)」を開発されており、今回この容器を活用したお弁当のメニュー開発という貴重な課題を提案してくださいました。連携がスタートした5月、神谷様よりユーカルプの特徴をご説明いただき、これをもとに学生たちは7月の中間発表に向けて市場調査や試作を重ねました。私からは、「ユーカルプの特徴を最大限に活かすこと」と「丸紅プラックス様の容器だからこそ実現可能な提案であること」を強く意識して取り組むよう伝えました。
最終発表では、すべての班がこの視点を反映させ、学生らしい個性豊かな発表を行ってくれました。特に1・2年生が中心で調理実習の経験も浅い中、各班が何度も試作を重ね、自分たちのお弁当の写真を使って堂々とプレゼンテーションをしてくれたことは、とても頼もしく感じました。丸紅プラックス株式会社のお二人からいただいたご講評にもありましたように、この経験は今後の社会人生活において必ず活きるものと確信しています。
神谷様には各班の発表ごとに大変前向きなフィードバックをいただき、学生にとって商品提案を考えるうえで貴重な学びとなりました。今回の社会連携授業は、学生にとって非常に実り多い経験となったと感じております。改めまして、神谷様、先川様をはじめ丸紅プラックス株式会社の皆様に心より御礼申し上げます。
