「情報セキュリティ」(担当:人間社会学部社会デザイン学科 板倉文彦教授)の授業で、6月25日にデジタルアーツ株式会社による特別講義が行われました。SNSが当たり前の現代、情報とどう付き合っていくかは学生にとっても身近な問題です。情報セキュリティの大切さを改めて学びました。

有害サイトから子どもを守る
登壇されたのは関萌緑氏。関氏は本学の卒業生です。
「今日は、”セキュリティ女子会”をしようと思います」と明るく学生たちに話しかけ、ざっくばらんに意見を出してほしいと授業が始まりました。
デジタルアーツは今年設立30周年を迎える、インターネットセキュリティ製品を製造・販売する情報セキュリティメーカーです。
ウェブはもちろん、ファイルの送信、メールなどインターネットを介して行われる情報のやりとりを守る国産のセキュリティソフトを提供しています。主な取引先は企業や役所、学校です。
「i-FILTERという製品は、みんなも使ったことがあるかもしれません」と関氏。
子どもたちが学校教育のなかでインターネットを使う際に、犯罪やアダルトなどの有害な情報に触れないよう、それらのウェブサイトをブロックする設計です。その他、インターネットの安全利用のための活動や利用の実態調査など、幅広く情報セキュリティに関する活動を行われています。

SNSのトラブルはすぐそばにある
関氏はまず「SNSやウェブ上でのトラブルってどういうものが思い浮かびますか?」と問いかけました。
「有名人へ誹謗中傷」「覚えのないメールが来る」と学生たちが回答すると、関氏も頷いて「みなさんにとっても身近な問題ですよね」と話しました。
SNSのトラブルはさまざま。いわゆるバイトテロと言われるような不適切投稿、プライベート情報の漏洩、誹謗中傷、闇バイト……。
関氏はそれぞれを詳しく解説しながら「気軽な気持ちでやってしまうと人生が大きく変わってしまいます。一度インターネット上に書いたものは消しても残ります。匿名のアカウントも特定される。マイナスの書き込みはしないようにしましょう」と注意喚起。

関氏は現在問題になっている、いわゆる闇バイトにも言及。
運転だけ、荷物を運ぶだけなど簡単な仕事で求人し犯罪に巻き込みます。実際、学生が車の送迎のリゾートバイトと思って応募したところ、闇バイトだったという例も。
関氏は「SNSでうかつな投稿は被害者にも加害者にもなる。知らなかった、悪気がなかったでは済まされない。身を守るために知識や意識、対策が必要です」と話しました。
どんな年代にもセキュリティは必要!
ここからは事前に行っていたアンケート結果をみながら進みます。
「ネガティブなことをSNSに書いたことがある」という質問の回答は29%。愚痴などを言いたくなったら親や友人に聞いてもらう学生が多数でした。なかにはchatGPTなどに書き込む学生も。
関氏は「今時ですね」と驚きつつ、「SNSを健全に使っているなという印象です」と感心されました。

「偽メールや詐欺などを自分で選別できるか」という質問には36%が「はい」と回答。約1/3の学生が自分で偽物を選別できると思っているようす。
しかし関氏は「いまの偽サイトなどは本当に精巧。セキュリティのプロでも引っ掛かることも。それぐらいいろいろな手口があります」と注意を促しました。
関氏はインターネット利用するにあたって、年代別に必要なセキュリティについての一覧を示しました。
高校生までは親が管理したり、学校側で対策をしたりなど有害情報からこどもを守るような対策が取られています。
「しかし大学生以上は誰かが守ったりしてくれない」と関氏。「脅威が多様化、巧妙化しているなか、前年代にセキュリティは必要です」と話しました。
ではどうしたら大学生から高齢者まで、大人たちにセキュリティを使ってもらえるでしょうか。
どうしたら大人たちにセキュリティを使ってもらえる?
いよいよ学生たちへの課題が発表されました。
テーマは「大人にセキュリティを使ってもらうための仕掛けを考えよう」。学生たちは、それぞれ班に分かれテーマにあった施策を考えます。
大学生・社会人・高齢者の3パターンを班ごとに企画することが課題です。
まずは現状分析として、全ての大人にセキュリティを使ってもらえていない理由を整理していきます。
そもそもセキュリティは大人にも必要だと認識していない層が一定数いるという現状があります。
セキュリティは子どもを守るもの、という認識で自分は大丈夫だと思っているひとたちが多いというのです。
また子供時代にセキュリティを入れた携帯などを使っていた記憶から、セキュリティを入れると自由度が下がったり制限されたりすると思っている人たちもいます。
こういったマイナスイメージと向き合い、幅広く付き合ってもらえるようにするためにはどうするべきか考えるのです。
1か月後にプレゼンテーション!

学生たちはさっそく班ごとにグループディスカッションを開始。
どうするべきか、今の自分たちの認識について話し合いました。
大学生向けの班では「製品について詳しくないのでセキュリティ製品を選ぶハードルが高い」という意見が。「セキュリティ製品は高いので選べない」という意見もありました。
社会人向けの班では「スマートフォンを多く使う層とパソコンを使う層では違うので、ターゲットをしぼったほうがいいかも」という観点で話し合い。
高齢者向けの施策を考える班では「高齢者に新しい知識を受け入れてもらうのは難しいのでは」と懸念を話していました。
学生たちはグループワークを通し、企画を作成。1か月後に発表を行います。
話し合いの段階で、たくさんの良い視点が出ていることに関氏や企業の皆さんは感心。発表を楽しみにしていました。
担当教員からのメッセージ
「情報セキュリティ」は基本的に座学中心の授業形態ですが、学んだ知識・スキルを生かすこととその定着を目的として、授業後半にPBLが組み込まれています。
PBLでは企業から課題が与えられ、それに対して学生達がプレゼンテーションを行うことが予定されています。
企業からのリアルな課題にいきなり取り組むことは困難ですが、今回は企業の方がファシリテーターとして学生の輪に加わっていただけたことで学生からも活発な意見が出ていました。
学生達の真剣な取り組み姿勢を見て、今から発表が楽しみです。
学生の皆さんには、授業で学んだ基礎的な知識・スキルが、実際の製品・サービスに転用されていくプロセスを実感することを期待しています。
