6月6日(金)に実践キャリアプランニング(担当:文学部英文学科 鹿島千穂 専任講師)にて、株式会社文化放送様とのコラボ授業が行われました。この授業では、「人生100年時代」を見据えたキャリア形成の一環として、企業との連携による疑似ビジネス体験を取り入れています。実社会に近い環境で課題に取り組むことで、学生が自らの生き方や働き方について考え、将来に向けた視点を養うことを目的としています。今回提示された文化放送からの課題をもとに、学生たちがグループで協力しながら疑似ビジネス体験に挑戦。授業内では、各グループが考えたアイデアをプレゼンテーション形式で発表します

課題発表に先駆けて
今回講演していただいたのは、文化放送の村田さん。「ラジオ・音声メディアの特性と伝え方」と題し、ラジオと音声メディアの特性やそれに基づいた伝え方のポイントをお話しいただきました。
冒頭では、文化放送についての紹介からスタート。1952年に開局した歴史あるラジオ局であり、関東一都六県に電波を届けています。時間帯ごとに変わる聴取者層に向けて、多様なジャンルの番組を放送しているとのことです。
特に、アニメ・ゲーム・声優関連番組が多い、アイドル番組に強い、プロ野球・大学駅伝中継にも注力といった特色が紹介されました。さらに、自社プラットフォーム「クローバー」での配信、落語のサブスクサービスやイベント企画、声優アワード、養成学校の運営など、ラジオ配信にとどまらない幅広い事業展開も紹介されました。

ラジオ・音声メディアの特徴とは?

村田さんは、ラジオが移動中や作業中に「ながら聞き」ができる身近なメディアである点を強調。さらに、スマホアプリ「radiko」の登場やワイヤレスイヤホンやスマートスピーカーの普及により、ラジオのリスナー数は増加傾向にあること、ポッドキャストの利用も若年層を中心に広がっていることを紹介しました。
音声メディアの特性としては、リスナーの行動を促す力があること、映像に比べて情報が少ない分、聞き手の「想像力」で補完されること、パーソナリティへの親近感や信頼感が生まれやすく、コミュニティのようなつながりが生まれることが挙げられました。
例として、野球の実況中継では「見えないものを言葉から想像する」体験があり、聞き手と送り手の“想像”が合わさって初めて情報が成立すると説明。また、村田さんが制作したラジオドキュメンタリーを例に、音声には情報の真偽にかかわらず人の心を動かす力があるとも語りました。さらに、イェール大学の実験結果を引用し、音声のみのコンテンツが情報理解に有効であることも紹介。「音声コンテンツとは、送り手と聞き手による共同作業である」と強調しました。

音声で伝える工夫

音声メディアでは、 効果音の順番や種類、言葉の選び方や話し方など、細かい部分が情報の伝わり方に大きな影響を与えるといいます。
情報があふれる現代では、「共感できる情報や自分に関係のある情報しか届かない」という前提のもと、具体的な話をする、 身近なたとえ話を使う、簡単な言葉を選ぶといった“共感を呼ぶための3つのポイント”が紹介されました。さらに、話の順番や構成など、「聞きやすさ」も大切な要素です。ラジオの特徴を活かし、リスナーとの距離が近いからこそ、“気持ちに訴える”表現が必要だということが再確認されました。
課題発表!
今回の課題は、20秒のラジオCMを考えるというもの。
テーマは「渋谷センター街の子ども食堂」と「実践女子大学」の2つです。課題にあたって、過去のコンテスト受賞作品の紹介もあり、優れた点や音声コンテンツを伝える工夫が共有されました。村田さんは「効果音や音楽、言葉づかいを工夫して、商品やサービスの魅力を伝えることが大切」とコメント。学生たちは、何をどう伝えるのか、目的設定から構成まで、すべてを自ら考えることになります。
質疑応答の時間には、課題のことのほかにもラジオや村田さんの社会人経験について質問が投げかけられ、音声メディアについて理解を深める貴重な機会となりました。
学生は、次の授業からグループに分かれて話し合い、いずれかのテーマでCM制作に挑戦します。

担当教員からのメッセージ
昨今、リスナーの減少が叫ばれているラジオですが、文化放送様はアニメ、声優、アイドル番組の先駆け的存在で、若者層にもよく聞かれているステーションです。実際に本授業の受講生の中にも文化放送様の番組リスナーが予想以上に多く、業界の深い話を聞けたことは貴重な経験となったようでした。
一方、講演内容は表現法にも及び、情報過多の社会において、音声のみで「伝える/伝わる」ための手法についてもお話がありました。私自身、ラジオパーソナリティーとして長年番組を担当し、メディアにおけるコミュニケーションの手法を教育や生活の場にどのように活かすことができるのか試行錯誤してきたため、村田様のお話に大変共鳴した次第です。
お題であるラジオCM制作はハードルの高いものですが、この経験を通して、学生たちが音声表現の本質に触れることを期待しています。
