10月15日に行われた「キャリアプロジェクト演習」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、学生たちが企業の皆さまを前に発表を行いました。身近な社会課題の中から自分たちで取り上げたいテーマを選び、それを解決する策をプレゼンテーション。企業の方々のサポートを受けながら、この授業内での実現を目指し取り組んでいきます。
心強いメンターのサポートを受けられる
この日は緊張した空気が学生たちを包んでいました。
株式会社資生堂の渡部卓明氏、株式会社ベネッセi-キャリアの東山高久氏、株式会社オリエンタルランドの横山政司氏の3名がそろい、皆さんを前にプレゼンテーションを行うためです。
この授業では、企業側から課題をもらって受動的に取り組むのではありません。自分たちが取り上げたい社会課題を見つけるところからスタート。
そして解決案のプレゼンテーションで終わるのではなく、メンターの助力を得ながら、実際に解決策を実践するところまで目指していきます。
「メンター」とは取り組んでいる内容について指導・助言をしてくれる、信頼のおける相談相手のこと。内容を良い悪いと判断するのではなく、一緒になって良いものになるようサポートしてくれる役割です。
横山氏は「今日は、成長のために厳しいことを言われるかもしれません。
ただ、きっと今後の参考になる。自分の班だけではなく、他の班に言われたことも聞いておきましょう」とアドバイスをされました。
誰のための課題解決?
早速各班が取り組むテーマの発表です。
まずは3班から。
渋谷のオーバーツーリズムを取り上げました。渋谷のように観光場所が限られている場合、滞在時間は短く経済効果が少ないことや、一か所に人が集中することが課題と考えました。
そこでSNSを利用し観光客の流れを変えようと発想。
知られていない文化的な場所を発掘・紹介することで観光客の分散を図ります。
発表後はメンターからの講評をいただきました。
東山氏からは「誰のための解決策なのか明確に。困っているのは観光客なのか、地元住人なのか絞りましょう」と助言がありました。
次の4班はフードロスに着目。
身近なところで本学の食堂が使える時間が限られていることに、学生が不便を感じているのを聞きこみました。
そこで食堂の職員にアンケート調査を行い、食品の廃棄量や人員不足で長時間食堂を開けておけない実態を調査。
そこで食堂以外の場所でパンを販売し、稼働率を上げることで廃棄を減らす案を考えました。
渡部氏からは「なぜフードロスが起こるのか、パンを販売することでその根本的な問題解決につながるか調査が必要ですね」と話されました。
渋谷の過ごし方をよりよく
5班は本学のトイレにハンドドライヤーがないことを課題にあげました。
取り付けるには費用などハードルがありますが、学生たちの声として要望の強いハンドドライヤーを設置できないかを検討していきます。
東山氏からは「自分たちのやりたいことをやるだけでは人は協力してくれない。
設置することでどんな社会課題が解決に近づくか考えてみましょう」とアドバイスされました。
1班は渋谷がどこも混んでおり少しの時間つぶしも難しい点をあげ、過ごしやすい拠点づくりを提案。
学生向けに低価格で過ごせる場所を提供するため、企業や大学と連携していきたいと考えています。
発表後は「本当に渋谷にはそういう場所がないのでしょうか。同じような取り組みをしている場所がないか調査してみましょう」と渡部氏が助言されました。
当事者意識を持って取り組む
6班も渋谷での過ごし方に注目しました。
カフェの込み具合や待ち時間の分かるアプリを作成し、短い時間でも有効に過ごせる方法を提案。
リアルタイムで待ち時間を更新するにはお店側の負担となるため、客に入力してもらえるようなシステムを作りたいと考えています。
東山氏は「皆さんが過ごせる場所を探しているのはよく伝わりました。社会課題との関係性を明確にして、店側や協力者にもメリットになるか考えると良いと思います」と話しました。
最後の2班はこども食堂について。
子ども食堂という名前自体は知っていても、実際どこにあって何をしているのか知っている人は少ないことを課題として、必要な人に届くような工夫や補助金の案内を行いたいと考えました。
渡部氏からは「この活動を皆さんがやる意味は何かが大事。上辺でなく寄り添う活動を期待します」と応援の言葉も聞かれました。
人を巻き込む説得力を
全班の発表が終わった後は、もらった助言を踏まえてグループでディスカッション。
メンターの方々が各班を回り、どうすればさらに良くなるか、現在はなにが問題かを相談します。
社会にとってどんなメリットがあるのか、自分たちが取り組む意味は何か。どういう点を強調すれば協力者が見つかるのか。各班まだまだスタートに立ったばかりです。
来週から提案の実現に向け、メンターとの相談を通し、さらに企画を詰めていきます。
東山氏は「協力者となる企業が、学生たちとその企画をやろうと思えるような説得力が大切です。頑張っていきましょう」と声を掛けられました。
渡部氏は「社会に出たら実現できるかわからない話を聞いてくれる大人は少ない」と話します。「でも私たちは絶対に皆さんを見捨てません。相談しないと損です。ぜひたくさん聞いてきてください」と全面協力の気持ちを伝えてくださいました。
学校だけでなく企業、社会を巻き込んで動いていく他にはない授業スタイル。
12月の実現を目標に、学生たちは奮起しました。
担当教員のメッセージ
本科目は、文学部キャリア科目として、今年度から新しくスタートした講座です。
文学部の1年生を対象とした講座で、従来の社会連携から一つステップアップして、
「渋谷×社会課題」をテーマに、自ら課題をみつけ、課題解決に向けての実践までを
正課科目として行おうという試みです。一般社団法人フューチャースキルズプロジェクト研究会
(FSP)がオリジナルで企画した講座となっています。
コンセプトは、「主体性」と「人を巻き込む思考力」の2つを身につけることにあります。
年内までの授業については、3人の社会人メンターが伴走していきます。