11月3日に、共通教育科目「実践キャリアプランニング」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、ホスピタリティ業界を世界第1位でリードするマリオット・インターナショナル(以下、マリオット)との特別コラボが実現しました。この日は世界的ホテルチェーンの企業理念や価値観を学び、課題が発表されました。学生たちは「働き続けたいと思えるホテル」を考え、12月後半にプレゼンをします。
外資系ホテルのキャリアの積み上げ方
登壇されたのは、大野裕子氏。「採用担当部長みたいな役職です」といい、ご自身の仕事内容について人材をどのように集めるか、どうしたらマリオットで働きたいと思ってもらえるかを考え戦略を立てる仕事と紹介しました。
大野氏は学生の頃からホテル業界を志しました。飲食系の部門で14年ほど活躍しますが、出産子育てを機に一度仕事を辞め、派遣社員を経験。
しかし、「派遣なのであまり積極的なことや責任のある仕事はできなかった」と物足りなさを感じていました。
そんな時にかつての上司が声を掛けてくれ、ホテル業界に戻ることに。
人事としてキャリアをスタートさせました。
2017年にマリオット系列のホテルの新規立ち上げに関わり、現在は部長クラスまでキャリアを積み上げてきています。
「マリオットに在籍しているのはたった6年間ですが、沢山の昇進の機会があったことを皆さんに伝えたいです」と大野氏。特に外資系ホテル企業はキャリアを積み重ねるスピードが早いと言います。
現在最年少の部長は27歳とのこと。
日本企業だと年功序列になるところも、マリオットでは年齢性別に関わらず、仕事の成果を上げている人の能力に応じてキャリアの機会があると話しました。
マリオットってどんなホテルチェーン?
マリオットは世界で一番大きなホテルチェーンです。
138の国と地域に、8500を超えるホテルやリゾートを展開しています。
企業理念は「旅の魅力を通して世界中の人々をつなぎ、もっとも働きたい企業になる」ということ。
ホテルを使うシーンは「ビジネス、観光など旅行に関わらず様々な場面がある」と大野氏は言います。例えば、待ち合わせにマリオットを使ってもらうなど、マリオットを軸にして世界中の人々を繋げていきたいと考えています。
もうひとつ重要なのが従業員です。
従業員を大切にすることで、その従業員はお客様を大切にする。するとそのお客様はリピーターになってくれる、というのが創業当初から一貫している企業理念です。
大野氏は「働く従業員の心に余裕がないと、他人に思いやりをもって接することは難しくなってしまいます」と話しました。お客様ファーストではなく、まずは従業員を大事にすることが「ビジネスとして考えた時も、実は真の利益に結び付くんです」と大野氏は語りました。
キャリアをつなげやすい環境
マリオットは31のブランドを持っています。
クラシックとディステンクシブの2つのカテゴリーと、いわゆる5つ星と言われる「ラグジュアリー」、さまざまな客層にご利用いただけるファミリー向けの大きな「プレミアム」、お手頃な価格でご提供する価格帯の安い「セレクト」の3つレベルに分かれ、旅の目的に合わせてゲストに選んでもらえるようになっています。
大野氏は「これだけ多くのブランドがあるのは従業員のためでもあります」と話し、プレミアムレベルからスタートして数年後ラグジュアリークラスにチャレンジすることも可能と話しました。
通常ホテル業界はホテルごとで会社として経営しているため、ホテル間を動くと「転職」扱いになってしまうことが多いですが、マリオット系列では積み重ねたキャリアや勤続年数をそのままスライドして、さらにキャリアを繋げられるというメリットもあります。
日本でもマリオット直営のホテルは59あり日本各地に散らばっているため、引っ越しなどにより今のホテルを離れても新しい地域のホテルに転籍することも可能です。
またマリオットは毎年開業を続けており、それだけキャリアの席も増える可能性があるのも特徴。
もちろん海外にも沢山のキャリアの機会があります。
さらに大野氏は「マリオットは従業員に投資をして成長することが利益に繋がると考えているため、トレーニングに非常に力をいれています」と話しました。
8000以上のコースがあり、無料で自分のやりたい部署の指導を受けられたり、オンラインで学んだりできる環境が整っていると紹介されました。
働き続けたいホテルの条件とは?
いよいよ課題の発表です。
まず大野氏は日本の宿泊施設事情と人口について説明。
現在日本に宿泊施設は57,000を超える施設があり、稼働率もほぼコロナ禍前の状態に戻っています。しかし日本の人口は減っており、働き手不足は深刻です。「日本に泊まりたい人は増えているのに人手不足」が課題として挙げられました。
またホテル業界全体の問題として、入社は多いのに離職も多いことがあります。
そこで出された課題は「働きたい・定着したいと思える企業は?」です。
今回はホテルなど宿泊業の企業に絞って考えます。どんなことにやりがいを感じるか、ホテル業界はなぜ離職率が高いのかなど分析し、どんな企業であれば選ばれるかを考えます。今回、学生たちに出された課題は授業向けではなく、リアルな企業の課題です。
「皆さんの知恵を拝借したいと考えています」と言い、「ぜひ色んなご意見や声をいただければと思います」と学生たちの発表に期待を寄せました。
担当教員からのメッセージ
今年の英文学科の企業連携プログラムには、マリオット・インターナショナル様の大野様にお越しいただきました。本学の学生にとっては、関心の高い業界であり、講義の内容には、真剣に耳を傾けている学生が、とても多く見られました。
華やかなイメージとは違い、実際のお仕事は非常に厳しい面もお話しいただきました。しかしながら、大野様のお話しにとても共感し、ホテル業界への関心をさらに高めることに繋がる授業となりました。この場をお借りして、マリオット・インターナショナルの大野様に心から感謝申し上げたいと思います。
この後、学生たちは12のグループに分かれ、いただいたお題の解決に向けたグループワークが始まります。