6月2日に1年生対象「実践プロジェクトa」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)の授業で、近畿日本ツーリスト株式会社の課題へ企画提案をする最終プレゼンが行われました。課題は「東京諸島を、若者が必ず一度は行きたくなる聖地にする」。グループごとに担当する島が割り振られ、30名の1年生が、それぞれの島の魅力を『宝』として探し出します。1年生で、プレゼンテーションが初めての学生も多い中、レベルの高い発表が行われました。
中間プレゼンで練り直し
今回の発表の前に、学生たちは5月19日にプレゼンに臨んでいました。
中間提案を行い、質疑応答やフィードバックをもらって最終プレゼンに向け再考するための機会です。それぞれのグループは、担当の島の宝として名産や景観を紹介、プレゼンしました。若者がどういうときに旅行に行きたくなるかも市場調査し、『癒し』や『SNS映え』をメインにするグループも多くありました。
6グループすべての中間プレゼンが終わった後、小宮氏と橘氏から全体講評がありました。
まず小宮氏からは「本当に担当の島が素敵だなと思っていますか?」と問い掛けが。
「その島でしかできないことや独自の仕掛けが必要」と言い、現在のプレゼンでは観光地の紹介に偏っているのではと厳しい指摘を受けていました。
4つの目で見てみよう!
続いて橘氏はまず、企画の立て方のコツとして、
「全体を見る『鳥の目』、注目する『虫の目』、時流を読む『魚の目』、疑ってみる『コウモリの目』」を紹介しました。
市場調査をしたうえで、ストロングポイントに注目し、トレンドに合っているかをみて、時には逆張りのアイデアをぶつけてみる。良い企画にはすべての視点が大切だと話します。
「6島とも自然があり海がきれいです。その中でその島にしかないものは何かを考えてみてください」と話しました。
「体験する人の感情が分かるような企画を楽しみにしています」と最終プレゼンに期待を寄せました。
講評後はさっそくグループで案を練り直します。
「リピーターを増やすにはどうしたらいいかな」「思い出になるものは?」など再度検討。
授業を見ていた過去にこの講座を受講していた先輩方も駆けつけてくれてアドバイスをします。橘氏と小宮氏も各チームを周り、細かくフィードバックしてくださいました。
“宝”を活かしてアピール!
2週間後の6月2日。
いよいよ最終プレゼンの日です。この日は東京諸島観光連盟の照沼氏もご参加下さいました。
最初の発表は新島グループ。
毎日の仕事に疲れた女性をターゲットに、新島の宝である海とガラスで癒しのツアーをプレゼンしました。
新島の周辺の海はサーフィンやシュノーケリングなどそれぞれに合ったスポットがあり、どの目的でも楽しめます。さらに新島一周クルージングの旅を用意。
船上で足湯なども楽しめ、参加者には新島ガラスのブレスレットをプレゼントし、思い出にしてもらう企画です。
橘氏からも「島一周クルージングはとても面白い、やってみたいですね」と感嘆の言葉がありました。
八丈島グループは人気コーヒーチェーンであるスターバックスコーヒーとのコラボを提案。
ターゲットを流行好きな大学生に定め、空港などで八丈島の特産品を使った新作フラペチーノを販売する企画です。
特産品は八丈レモン、ジャージー牛乳、明日葉、パッションフルーツを用意。SNSに写真を投稿してもらうことで宣伝効果も狙います。
小宮氏も「ツアーではなく企業コラボという提案は面白い切り口」と感心されていました。
本当に行きたくなるプレゼン
伊豆大島グループは、春に開催される「椿まつり」期間中に映画祭を開催することを提案。
屋外でも過ごしやすい伊豆大島の春に、映画を楽しんでもらうと同時に、伝統の祭りにも親しんでもらおうという企画です。
特産品が食べられる屋台なども出店し、地域住民と観光客がつながる仕掛けです。
橘氏は具体的な交流方法について質問。学生は「椿まつりの中に地元の人が紹介や説明する交流イベントがあるので、映画祭きっかけで行った若者も気軽に参加できるようになると思います」と回答しました。
SNSでアンケートを実施したのは三宅島グループです。
若者が旅行先に島を選ばない理由は島自体を知らないこと、魅力が分からないことが理由と考え、知ってもらえるきっかけ作りに企画を特化。若者の目に留まるポスターやSNSでの宣伝方法を考えました。
島の方に直接連絡を取り、おすすめポイントや星空の写真を提供してもらって宣伝動画を作成しました。
小宮氏は実際に島の方に連絡を取った行動力を賞賛。「実際に島に行きたくなりましたか?」と問われた学生たちは、大きく頷いていました。
自分を見つめる旅
デジタルデトックスをテーマに選んだのは神津島グループ。
参加者はスマホの電源を切り、使い捨てのフィルムカメラを渡されます。
癒されたい人は星空保護区に認定された素晴らしい星空の下で星見ピラティスをしたり、アクティブに動きたい人は赤崎遊歩道で透明度の高い海を堪能したり。
思い出を写した写真は旅行後に特設サイトに投稿してもらい、参加者全員でアルバムを作れる仕組みも考えました。
「デジタルデトックスは良い視点。癒しと刺激という相反する価値観があるのも良かったです」と橘氏は感想を話されました。
最後の小笠原諸島グループは「自分探しの旅」と題し、将来に悩んでいる大学生をターゲットに、「遊び×インターンシップ」が融合したツアーを提案しました。
夏休み期間に2週間ほど滞在し、自分の興味を持った仕事を体験できる仕組みです。
ウェルカムイベントでは島内を巡る宝探しを行い、特産品や地元のことを学べる工夫も。
宝探しに必要なクイズは地元の小学生に考えてもらい、地元の人にも積極的に関わってもらう仕掛けを考えました。
小宮氏からも「地元の小学生に参加してもらうというのがいい。ロジックもとてもしっかりしていて聞きやすかったです」と感想をいただきました。
自分自身の“宝”を見つけて
発表後には照沼氏からも感想をいただきました。
「自分もいろいろな企画を作っていますが、頭が固かったなと。とても刺激になりました」と話し、島の魅力を再認識されたことを話しました。「プレゼンをきっかけに興味を持ち、島に行ってくれたら嬉しいです」と語りました。
最後は優秀賞と特別賞の発表です。
「どのグループも良い発表で、予想以上の出来でした。差はわずかです」と橘氏。
そのなかで優秀賞は小笠原諸島グループでした。「地元との交流とインターンというコラボの発想が素晴らしかった。若者がこのツアーに行ってどう変化するかが考えられていました」と授賞理由が述べられました。
特別賞は「企業との掛け算に可能性を感じた」と八丈島グループに贈られました。
橘氏は「今回の発表で、各島の特徴は全然違うんだと分かったと思う」と話し、「島は皆さん自身です」と語りました。
「皆さんの中にもそれぞれ違う宝がある。自分の強みって何だろうと問いかけ、自分自身にいろんな企画をぶつけてみてください」とエールを送りました。
担当教員からのメッセージ
1年生に対象を絞って行われている「実践プロジェクトa」も、今年は4年目を迎えます。コロナ禍で行われた2020年から近畿日本ツーリスト様には継続してご支援いただいています。毎年、テーマも変えていただき、1年生が真剣に取り組んでいる授業です。「大学生の学び方を変える」という狙いに向け、一般社団法人FSP研究会が構築した本プログラムは、全国約20大学で同時進行中の授業です。また、本学の講座には、過去履修してくれた学生たちがSAとして参加してくれており、自身の経験を通じて後輩へのアドバイスも行ってくれています。コラボいただいている企業、先輩、そして履修している学生が一体となって展開している講座は、年々グレードアップされており、本授業を履修している学生の成長には凄まじいものがあります。毎年ご支援いただいている近畿日本ツーリストの橘さん、小宮さんには、心から感謝申し上げます。