「誰一人取り残さない 世界が目指す17の目標」をテーマに、学生のSDGsに対する理解を深めるイベントが12月12日(日)、渋谷キャンパスで行なわれました。「実践ウェルビーイング(JWP)プロジェクト」の一環として行われ、KPMGあずさサステナビリティ株式会社の鈴木ももこさんが講師として登壇。学生たちは、企業や学校、自治体などで導入が進むSDGsカードゲームを実際に体験しました。
学生が交流、トークの花咲かせ
講演に先立ち、参加者は互いを自己紹介。世界の諸問題やSDGsなどに関する意見交換を通じて交流を深めました。会場のあちこちで興味ある分野が共通する参加者同士で会話が弾み、人権問題や気候変動などを話題に取り上げては、トークの花を咲かせていました。
SDGsの背景や目標を学ぶ
講演では、講師の鈴木さんが、動画や資料を駆使し、SDGs誕生の背景や17の目標を詳述しました。鈴木さんは、難解な話題も噛み砕いて説明。SDGsになじみの薄い学生であっても、分かりやすい解説であると、好評でした。
ちなみに、鈴木さんは大手化粧品メーカーに勤務後、大学院に進学。その後、国際協力に関心を持ち、独立行政法人国際協力機構に就職しました。東南アジア・ラオスで3年間活動したのちに、現在はKPMGあずさサステナビリティ株式会社でコンサルタント業務を担当。企業のサステナビリティやESG経営の実現を支援しています。
SDGsカードゲームに実際に挑戦
その上で、学生たちは「SDGsの本質と可能性が学べる」と注目を集めるカードゲームに挑戦しました。SDGsの17目標の達成に向け、現在から2030年までの道のりをシミュレーション(体験)するゲームです。日本で開発された体験型ゲームであり、現在、研修やイベントに取り入れる企業や自治体、学校、NPOなどが相次いでいます。
学生たちは、1チーム3~4人の8チームに分かれ、計26人でカードゲームに挑戦しました。ルールは、いたってシンプル。プレーヤーは、目標(ゴール)を達成しながら、同時に、SDGsが17目標に掲げる持続可能な世界の実現を目指します。
プロジェクトで目標達成を追求
そのゲームの進め方を紹介すると、真っ先に行うのが個人・チームの目標(ゴール)の選択です。「大いなる富」「悠々自適」「貧困撲滅」「環境保護」「人間賛歌」の5種類が用意されており、例えば、お金が一番大事という「大いなる富」を目指すプレーヤーがゲームクリアするには、お金1200を集めることが必要となります。また、時間がゆったり、たっぷりある「悠々自適」を目指すプレーヤーは、ゲーム終了時に時間15を保持していなければなりません。
まるで現実世界の価値観を垣間見るかのような目標(ゴール)の達成を、プレーヤーは「プロジェクト」と呼ばれるカードの実行を通じて挑戦します。プロジェクトは実行に必要なお金や時間をあらかじめ決められており、例えば、プロジェクト「交通インフラの整備」を実行するには、お金500、時間3が必要です。そして、実行すれば、お金1000と時間1の対価を得られると同時に、次のプロジェクトカードがもらえる仕組みです。
目標追求と同時に、社会の状況も変化
翻って、ゲームの難しさは、個人・チームの目標だけ追求しても、ゲーム世界全体の状況が良くなるとは限らないことにあります。つまり、他のプロジェクトや世界全体の状況を考えることなしに、自分のプロジェクトを決められないということです。
プロジェクトの実行に応じてゲーム世界の状況も刻一刻と変化します。その変化は、事務局に設置されたホワイトボード「世界の状況メーター」で把握可能であり、ホワイトボード上の青色、緑色、黄色の三色のマグネットの数が、ゲーム世界の状況をそれぞれ「経済」「環境」「社会」の3つのパラメータに分けて表しています。
各プロジェクトは、「経済」「環境」「社会」の3つのパラメータに対してそれぞれ一長一短があり、例えば、先のプロジェクト「交通インフラの整備」であれば、実行すれば状況メーターは青の経済がプラス1、緑の環境がマイナス1だけ変化します。つまり、どのプロジェクトを行うかで世界の状況メーターが刻々と変化。参加者全員が行うプロジェクトの結果、2030年の世界が次第に姿を現す、という仕掛けです。
7チームが目標達成、ゲーム世界も好転
この結果、個人・チームがそれぞれの目標を達成出来ても、世界の状況バロメーターが好転するとは限りません。今回のカードゲームで、学生が目標達成に向け奮闘すること約2時間。目標をクリア出来たチームは、中間発表段階で8チームのうち4チーム、最終的に7チームという結果になりました。また、世界の現状を示す状況バロメーターも、開始時より「経済」「環境」「社会」のいずれも好転、参加者が満足できる好成績となりました。
では、なぜ多くのチームが目標を達成し、世界の現状も改善することができたのでしょうか。各チームに話を聞くと、「前半は自分達の目標に向かって行動していたが、自国の目標が達成された後は、世界の現状に目を向け行動する余裕が生まれた」など声が返ってきました。即ち、学生たちは本ゲームを通して、「自分たちの目標を追求するだけでなく、他チームの目標や世界の現状にも目を向けなければならない」と気付いたわけです。
「私も起点」という覚悟で
ゲーム終了後は、その振り返りの講義のため、鈴木さんが再び登壇。日本のSDGsの目標達成状況を、日本が抱える課題や国内企業の取り組みを交えて解説しました。その上で、鈴木さんは「世界はつながっている。《私も起点》を大切にしてほしい。世界の現状を知り、自分に何ができるかを考えよう。国や企業だけでなく『個人』で何ができるかが大切」と講義を総括。SDGsの未来を担う学生へのメッセージとして、鈴木さんが大学時代に教授から教わったという「Think Globally,Act Locally:グローバルに考えて身近なところから行動しよう」の言葉をはなむけに送りました。
3回目のイベント開催
実践ウェルビーイングプロジェクトは、サステナブル(持続可能)な社会は何かについてSDGsの理解を深めるとともに、その先にある“ウェルビーイング”という視点について学ぶことを目的としたプロジェクト。指導教授は文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)です。対象は、学年を問わず本学学生で、2021年後期に発足。今回で3回目のイベント開催となりました。
深澤晶久教授の話
実践ウェルビーイングプロジェクトは、昨年の9月にスタートしました。SDGsの動きが急加速していることを感じます。一方、SDGsのゴールは2030年、全てのゴールを達成したとしても、大学生たちはその時30歳前後、彼女たちが社会の中心となって活躍する世界は、まだまだそこから続きます。2050年責任世代といわれる彼女たちには、SDGsのその先、「SDGsプラス1」を考えて欲しい、その視野を身に付けて欲しいと願い立ち上げたプロジェクトです。
この日は、カードゲームを通じて、SDGsに対する理解を深めるとともに、講師の鈴木さんから学んで欲しかったことは、グローバルな視点からSDGsを見つめる視座を習得することです。参加した学生の姿からは、その意図を感じ、真摯に学んでくれる姿勢を感じました。まだまだプロジェクトは続きます。
取材メモ
世界の現状を自分事として捉え、行動していくことの大切さを改めて感じました。私は自分なりのSDGsの取り組みとして、フードロスを少しでも減らせるように献立を工夫、食品を無駄なく調理するようにします!自分の行動で世界に貢献できると思うと嬉しいですね。皆さんも「私も起点」を胸に、日頃の生活にSDGsを取り入れてみて下さい!