観光ツアープランを学生が考える授業の最終プレゼンテーションが5月21日(金)、オンラインで開催されました。株式会社近畿日本ツーリスト首都圏(東京都新宿区)と本学の社会連携授業として具体化され、4チームが地域経済の活性化に貢献するプランを発表。埼玉県秩父市でのワーケーションや千葉県館山市のファスティングツアーなどユニークなアイデアが模擬提案されました。
最終プレゼンは、4チームに分けて行われ、各チームは7分間ずつ、ワーケーションプランを提案しました。各チームとも、ツアー目的地の課題解決に貢献するツアープランを企画するよう指示されており、発表順に4班は千葉県香取市、2班は埼玉県秩父市、1班は千葉県館山市、3班は神奈川県真鶴町をツアーの目的地に設定。それぞれ、ツアー企画の具体化を通して「香取市が直面する、人口の都市流出による少子高齢化」(4班)、「秩父市の地域活性化と新しい観光地づくり」(2班)、「館山市の地域活性化や知名度アップ」(1班)、「真鶴町に住む若年女性の人口減少を食い止める」(3班)などの課題解決を目指しました。
香取市の自然と伝統を楽しむ
このうち、4班は千葉県香取市の自然と伝統の歴史ある町並みを着物姿で楽しむ1泊2日のツアープランを提案しました。「なちゅーとリーズム佐原」です。香取市は、JR東京駅八重洲口から高速バスで1時間20分。初めて実測による日本地図を完成させた伊能忠敬が住んでいた旧宅で知られ、川越や栃木宿とともに「小江戸」3市の一つに数えられる町の風情を、旅の魅力として打ち出しました。
ツアーは、関東在住の20代後半から30代のカップルをターゲットに、秋に募集。それによると、1日目は、地元の呉服店で着物をレンタル後、美容室で髪を整えてもらい、市内の歴史スポットを散策。また、宿泊するニッポニア佐原では、サツマイモ、ネギ、ホウレンソウなどの地元野菜のほか、銚子漁港で水揚げされたマグロやカツオ、千葉の極上牛「かずさ和牛」などを食材に使う「地産地消フレンチ」を堪能します。
2日目は、ホテルから車で1時間のTheファームに移動。昼食のBBQのほか、芋ほりや野菜収穫などの非日常体験を楽しみます。
域内連携で、浦山口駅・影森駅周辺を活性化
また、2班が提案したワーケーションプランは、併せて、埼玉県秩父市内の秩父鉄道浦山口駅と同影森駅周辺の域内連携の実現を掲げ、心身のリラックスと地域活性化の一石二鳥を期待しています。大人のための癒し宿で知られる「竹取物語」で2泊3日のワーケーションを楽しむツアー客に対して、この間、2駅周辺の観光スポットを散策。季節を感じる自然豊かな景色、ゆったりと過ごす癒しの時間をツアー客に提供します。
また、旅館「竹取物語」では、日本の代表的な古典文学の世界観を味わうことができ、陶芸や着物などの日本文化に触れることが可能です。このため、埼玉県の新たな観光地として浦山口駅と影森駅周辺を売り出すとともに、日本の伝統に関心のある外国人に対するインバウンドも期待できるとしています。
ツアーのターゲット層は、20代~30代の新入社員の女性を想定しました。慣れない新生活に疲れた新入社員が、疲れを癒して参加者同士で親睦を深めてもらうのが狙いと言います。この結果、ツアーのコンセプトも、友人へのSNSアンケートも踏まえて、「星空をみながら、のんびりするプラン」と決定しました。仕事終わりに星空を見て癒されながら、ゆっくりするという、観光よりも仕事の疲れを癒すプランを目指しています。
館山市の自然の中で「ファスティング」
「ファスティング」という、斬新な切り口でツアープランを企画した班もあります。1班は、千葉県館山市の自然豊かな都心では味わえないリラックスした空間で、ヨガやファスティングを楽しむツアーを提案しました。
ファスティングは、水以外のものを口にしない断食と違い、一定期間を水と酵素だけで過ごします。体内から毒素を排出するデトックスと胃腸などの消化器官を休ませることで、デトックスによる代謝力アップ、腸内環境の改善による免疫力アップと美肌効果が期待できます。
ツアーは、20~30代の首都圏在住のキャリアウーマンに限定。7~8月に2人10組ペアを募集して行います。
それによると、1日目は館山市の沖ノ島の海岸で拾った貝殻でキーホルダーづくりに挑戦するほか、海中観光船で遊覧、北条海岸で夕日を見ながらヨガを行います。その際、ヨガのスペシャルゲストとして、ユーチューバーとしても有名な竹脇まりなさんがリモート出演します。
宿泊は、国民休暇村ホテル。夕食はファスティング用の特別メニューです。2日目は、朝食前にホテル前ビーチで朝ヨガ。スペシャルゲストとして、ayaさんにリモート出演をお願いしました。その後はバスで館山ファミリーパーク、アロハガーデンを訪問。夜は休暇村に戻り、天体観測を楽しみます。3日目は、「道の駅とみうら」でお土産などのショッピングを楽しみ、帰京します。
真鶴町に週末女子旅の「ヒーリングツーリズム」
3班は、「真鶴に癒しを求める週末女子旅 おかわりしたくなる真鶴時間を」と銘打ち、神奈川県真鶴町への「ヒーリングツーリズム」を提案しました。仕事で疲れた女性に、真鶴町でしか体験できない癒しの時間を提供します。真鶴町は、若年女子などの人口減少が響いて過疎化が進んでおり、若い女性にツアー参加を機会に将来の真鶴町への移住を考えてもらうことにしました。
このため、ツアーは将来Iターンを考えている20~30代女性で、都心で働く女性が対象にしました。冬の観光客が少ない1月下旬に、1泊2日のツアーを募集します。
プランによると、1日目は真鶴漁港の「魚座」で昼食の海鮮BBQを楽しむほか、貴船神社、真鶴半島自然公園をそれぞれ散策。地元農園でオレンジ狩りも行います。夜は「海辺のリゾート蒼海」に宿泊。2日目は、朝、真鶴岬で星空観測をした後、海釣りや地元住民で賑わう「なぶら市」などを体験します。
集客に工夫、割引サービスやクーポンなど
各チームとも、とりわけ宣伝やPRなど、ツアー客の集客には工夫を凝らしました。このうち、4班はLINEに公式アカウントを新設。ファン獲得やリピーターづくりに向け、公式アカウントを通じて香取市の魅力を定期的に発信します。加えて、口コミ宣伝を促す仕掛けとして、SNSのハッシュタグつき投稿に対し、飲食店や土産物店での割引サービスも実施することにしました。
一方、2班は「アナログとデジタルの融合」を目標に掲げ、ツアー内の実体験(アナログ)を、その後のPR動画作成(デジタル)で実現します。実際に訪れた人の目線でツアーの魅力を伝える試みです。チラシやWebで募集、ツアーが好評なら「ワーケーション特集ページ」に掲載するほか、パンフレットやインスタ、ツイッターなど幅広い手段で宣伝します。
1班は、若い女性向けの集客にSNSを活用。リピーター確保に向け、バスガイドの活用や次回以降使えるクーポンを配布します。
3班は、宿泊するホテルで実施する宣伝企画として、「リツイート限定、出張エステ」の特典を企画しました。真鶴町観光協会の一つリツイートしたツアー客を対象に、ホテルに呼ぶ出張エステをプレゼントします。
課題は「観光の力で地域経済の活性化を」
今回の社会連携授業で、学生らは近畿日本ツーリスト首都圏から与えられた課題について、議論を深めました。「『観光』の力で、神奈川県・埼玉県・千葉県の市町村を選び、観光需要の回復・地域経済の活性化を解決せよ!」という課題です。観光事業者と、交通、漁業、農業、地場産業などの多様な事業者が連携して、非日常の体験や特別感のあるツアーのプランを造成、観光庁の公募事業への提案を目指しました。
近畿日本ツーリスト首都圏と本学の社会連携授業は、1年生を対象に昨年度新設された前期カリキュラム「実践プロジェクトa」の中で実現しました。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)が指導教授となり、5月21日(金)の最終プレゼンは1年生17人が自宅からリモート参加しました。
近畿日本ツーリスト首都圏・橘清志次長の話
学生の皆さんには、「観光」の力で社会課題の解決をしている弊社の取組みを知り、実際に観光庁事業の課題をチームで考えて企画書を構築し、プレゼンテーションをして頂きました。今まで知っていた旅行業界とは違った世界、社会・地域・企業・顧客という視点を持ちながら、課題を解決する企画を企てる事の難しさと楽しさを体感してもらえたとのではないか、と思います。
授業後の感想の中からは、「時間を忘れてみんなで話し合った」「自分とは違う考え方や個性がある事で勉強になった」「新しい企画をするのが楽しい」など、多くの気づきと学びがあった様子が伺えました。ニューノーマル時代の新しい働き方を考えるきっかけになり、ビジネスにおいて重要な売り手、買い手、世間、さらに未来や将来のすべてが「良し」となる世界に変えていけるような人材になってほしいと期待しています。頑張ってください。
深澤晶久教授の話
昨年に引き続き、近畿日本ツーリスト様のご支援の中で進んだ授業、昨年の「ワーケーション」というテーマをさらにバージョンアップして、今年は観光需要の回復と地域活性にまで広げたテーマに、学生は苦労しながらも取り組んでくれました。今年の4チーム17名も精鋭揃い、1年生の前期にこの科目を履修してくれる学生の積極性はさすがでした。
4グループいずれの提案も、私の期待をはるかに超えたレベルの高さでした。入学したばかりの1年生が、しかも初めての仲間同士で、4月こそ教室でスタートしてものの、あっという間にコロナ禍でオンラインでのミーティングを余儀なくされるという制約の中で、このテーマに対して、これだけの成果に繋げてくれたことに感激しました。
1年生にとって、この時期に、この授業を経験できたということは、とても貴重な学びの機会になったと思いますし、そして何より貴重な仲間と過ごせたことは、これからの支えにもなってくれると信じています。授業は後半戦に入っています。
履修した学生の声
・実際に企業に利益が出る、参加する方にも満足いただける、そんなプランを作るために4人で協力できたことは本当に楽しかったです。それぞれ性格が違うから同じテーマで資料に使えそうな情報を探しても、全然違う場所が出てきて自分にない視点から色んなことを考えられたのが良かったと思います。
感想を聞かれた時にも答えたように、個人の旅行プランを練るのとは全然違って域内連携やこのプランが他の地域の参考になるか、とかそういうのも考えるのも難しい分、やりがいがありました。また、ターゲット層が割と年代が近いこともあって私達の目線でどんなことをしたらリラックスしつつ楽しめるのか、など沢山話せました。週1〜2のペースで何度も電話をしたり、ZOOMを使って実際にスライドに合わせた練習したり、たくさん練習時間を設けることができたと思います。みんなの得意不得意をちゃんと理解し合って、積極的に補い合いながら活動できたので、本当に最高のグループだったと個人的には思っています。
(文学部国文学科1年 五十嵐千聖)
・今日で最後なのはすごく寂しかったです。けど、達成感がすごく強いです。私以外の3人にすごく助けられたし、みんな違う意見を毎回出してすごくいい提案ができました。授業時間外だけでも約30~40時間くらい取り組みました。この授業で身についた発想力だったり、コミュニケーション能力だったり、人に伝える力をこれからも活かしていきたいです。また、一次提案の時に橘さんから頂いたアドバイスを、みんな意識していて、それがすごくいい結果になりました。ありがとうございました。
(文学部国文学科1年 山森優衣)
・まずは、無事やり遂げる事が出来てホッとしています。授業時間外の活動ですが、何時間やったのか数え切れないです。一次提案までは毎日2〜3時間テレビ電話をして、パワポはその前に作って、みんなにアドバイスを貰い、修正していくという作業を続けました。パワポもギリギリまで、どうしたらより良くなるかを追求し、かなり使いこなせるようになりました。夜遅くまで3時間くらいずっと通しで作成していた事もあります。加えて、原稿は各自の分担場所を作成するという事だったので、電話でのミーティング、原稿作成、パワポ作りなどトータルの時間を合わせると何時間になるのか自分でも分かりません。
それでも、自分では思いつかないようなアイデアや指摘を皆がしてくれて、楽しく刺激的な時間になりました。「このグループ編成(でなくなると)悲しいね」と皆でずっと言っていた程、充実した時間でした。後期も頑張っていきます。ありがとうございました。
(人間社会学部1年 舞原有紗)
・最初はグループのみんなとうまく話し合いが進むのか、企画がちゃんと完成するのかなど不安しかありませんでした。でも、実際に始まると、そんな不安もすぐになくなって、グループのみんなとの話し合いが私にとり、とても楽しい時間になっていました。みんな目標があって、やる気がある人たちの集まりは、とてもやりやすくていいなと思いました。
私は、主に地域の課題や課題要因、御宿竹取物語のプラン、アナログとデジタルを利用した販路整備について、調べたり、アイデアを出したりしました。その他にも、積極的に意見を出すことができたではないかなと思います。最終プレゼンの日は、朝みんなでZOOMを開いて最終確認をしてから臨んで、本番もうまくいったので本当に良かったです。私たちのグループは比較的仲がいいグループだったと思うので、企画を考えるのも苦じゃなかったし、最終プレゼンまでの期間がとても短く感じました。このグループでの活動が終わってしまうと思うと、少し寂しいです。
このプレゼンを通して、自分の視野を広げることができたし、自分たちが調べた地域の魅力について詳しくなることができて、すごくいい機会でした。次回のプレゼンも頑張りたいです。
(人間社会学部1年 鈴木あい)