5月12日、演習Ⅱa(担当:ビジネス社会学科 若林 宏保教授、井上 綾野准教授)にて、JALとコラボした航空機のアップサイクルに関する授業がスタートしました。JALから細野志麻氏をゲストにお招きし、JALが取り組むサステナビリティへの取り組みとアップサイクルの事例の講演と、学生が取り組む課題の発表が行われました。
授業と連携企業について
演習Ⅱaは、人間社会学部の学生を対象に開講されている専門科目です。授業を通じて、次年度以降のより専門的な学びに向けた具体的な根拠に基づく議論をする力や、正しい文献を選び必要な情報を正確に読み取る力などを身に付けていきます。
この授業では、企業から提示された課題に学生が取り組む「課題解決型」の授業として、旅客機や貨物機の運航を行うJALと連携しています。今回はコラボ授業の初回として、学生が取り組む課題が発表されました。また、課題に関連するJALの取り組みについて、客室乗務員の責任者や救難訓練の教官を経験した細野氏から解説が行われました。
細野氏は「JALではサステナビリティへの取り組みを強化しており、『社会価値創出を事業の中心・成長軸に据える』という価値観で様々な活動を行っています」と話し、その取り組みのひとつとして、アップサイクルについて解説しました

アップサイクルとJAL

細野氏ははじめに、「アップサイクルは“使われなくなった廃材を、新しい形に加工して活用すること”です」と紹介しました。
そして、JALにおける廃材について、「航空機そのものです」と説明。航空機には約300万点の部品が使用されており、座席に使われているレザーやシートベルトをはじめ、エンジンや窓などもアップサイクルの対象になっていると話しました。
細野氏は、アップサイクルの素材として活用されている例のひとつとして“救命胴衣”を紹介しました。機内で使用される部品や装備品には、安全を守るために厳格な使用期限が定められており、まだ使えそうに見えるものでも安全上の理由から廃棄されることがあるそうです。そのため、「年間約2000個の救命胴衣が、きれいなまま廃棄されていました」と説明しました。
アップサイクルがスタートしたきっかけ
JALでアップサイクルが始まったきっかけは、「救命胴衣のポーチ」だったと紹介しました。
定期交換する救命胴衣が年間2000個、故障も無いのに綺麗な状態のまま廃棄されるのを見た整備士が、「もったいない。何かできないか。」と声をあげたことがきっかけとなり、アップサイクルの取り組みが始まりました。


この取り組みをきっかけに、安全のための使用期限を過ぎてしまった救命胴衣やシートベルトなど、ほかの装備品や部品類のアップサイクルに活動が広がっていきました。現在では、家具メーカーなど他社とコラボした取り組みも行われており、社員が制作したアップサイクル商品は現在もJAL公式オンラインストアやJAL工場見学の売店、不定期の物販イベントで販売されています。
JAL公式オンラインストア→https://ec.jal.co.jp/shop/e/e00020394/
新たな価値を付加するアップサイクルとストーリー
細野氏は、JALが行う航空機のアップサイクルについて「使用期限が切れた装備品や経年劣化で使用できなくなったものでも、“実際に運航で使用されていた”というエピソードがあります。一度役目を終えた部品の役割を加工によって変化させることで、新たな価値を生み出しています」と説明しました。
さらに、「使われなくても、航空機としてたくさん空の旅を経験している装備品たちが、新たに生まれ変わって価値を発揮することは乗務員としてもうれしく感じます」と、アップサイクルへの思いを語りました。

実際の商品

JALのアップサイクルの事例が紹介されました。シートベルトや救命具など、実際に機内で使用されていた装備品は、キーホルダーやポーチにアップサイクル。さらに、航空機の車輪止めに使用されていた木材は、神社とコラボした”滑らない”合格祈願のお守りとして活用されています。
また、実際に機内で使用されていたシートレザーは、スツールや小銭入れ、バッグへと生まれ変わっているほか、エンジンの部品や燃料タンクの点検口の蓋を使用したインテリアオブジェ、アクリル製の窓を使ったキーホルダーなども紹介されました。
実際のアップサイクル商品のほか、加工前の廃材を学生に渡す細野氏。
学生は実物を間近で観察し、素材を確かめて「かわいい」「しっかりしていて頑丈そう」など、感想を交換しました。






課題の発表
今回学生が取り組む課題は「廃材の特性を活かし『Z世代から長く愛される』新商品を、社会や消費者にどう伝えるかも含めて企画・デザインする」です。
細野氏は「JAL社員になったつもりでアイデアを考えてください!優秀な企画は実際に採用させていただく可能性もあります」と学生に声掛け。「必要に応じて他社とのコラボOK」など、発表の要件が共有されました。また、今回の企画でアップサイクルの材料として使用する廃材の特徴も紹介されました。
学生は、今回の授業で確認した実際のアップサイクル商品や、素材の特性を参考にしながら、グループに分かれて企画の提案を行います。




担当教員からのメッセージ
ビジネス社会学科2年生約50名が、JAL航空みらいラボ様と共に航空機のアップサイクル・アイデアに挑みます。
教員として期待するのは、単なる思いつきに留まらない「社会課題の解決とビジネスを結ぶ」リアルな視点です。約50名の仲間と切磋琢磨しながらプロの現場に本気でぶつかり、未来の循環型社会を形にする力を養いましょう。学生たちの瑞々しい感性とJAL様のプロの知見が融合し、どんなワクワクするイノベーションが生まれるか楽しみです。〈井上 綾野准教授〉

