社会連携プログラム
SOCIAL COOPERATION PROGRAM
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2025年5月16日

Life Ship株式会社の田形正広氏が「キャリアデザイン」の授業で今年度も講演を行いました。

2025年度の共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は「今、社会や企業が求める人材とは」をテーマに、キャリア形成を学びます。企業のトップなどゲストも多数招き、リアリティがあると評判の授業。2025年5月13日(火)のゲストは、Life Ship株式会社の田形正広氏。深澤教授との縁により実践女子大学で講演を行うのは10回目となります。世界にただ一つのコンテンツである「ワンピースキャリア論」に、学生たちも興味津々で耳を傾けていました。

漫画「ワンピース」でキャリアを学ぶ?

さまざまな経歴をお持ちな田形氏。大好きな漫画が「ワンピース」です。ワンピースは週刊少年ジャンプで連載中の、世界的にも人気の少年漫画。主人公のルフィを中心に海賊たちが大冒険を繰り広げる物語です。田形氏は「ワンピースには人生で起こることのほぼすべてが詰まっている」と言います。仕事のことやリーダーシップについても描かれているというのです。キャリアと漫画がどう結び付くのか学生たちも興味津々です。

講演は田形氏の自己紹介とキャリアの説明からスタート。経歴について説明があったのち、ライフログのグラフに沿って当時の経験を振り返りながら話が進みます。新卒入社の会社を半年でやめた話からはじまり、転職によって良い方向に進んだこと、任された大きな仕事に失敗したことなど、どのような状況に何を感じていたか語られました。

伝えたいことは「海賊になろう」?!

続いて、漫画「ワンピース」のあらすじと大まかなストーリーの解説があり、「伝えたいメッセージは二つだけ」とキャリア論の本題へ進んでいきます。

メッセージの一つ目は「人生は冒険だ!」。「就職はゴールではなく、大冒険の始まりであり、常に挑戦が求められる」「嫌なことや思い通りにいかないことがたくさん出てくるが、それが自分を強くしてくれる」と、自分の過去の経験とからめながら説明。「冒険には危険や勇気が必要な場面が伴うが、それを乗り越えた先には感動や成長が待っている」と述べました。「忘れがちですが自分の人生の主役は自分なんです。自分の人生に遠慮は無用」と田形氏。日本では自分が主役であることを忘れがちな制度や仕組みの中に生きているため、改めてこのことを伝えたいと述べました。

二つ目のメッセージは「海賊になろう!」です。海賊になるとはどういうことでしょうか。これはワンピースに出てくる海賊たちのように、楽しく、自由に、一生懸命に「今」を生きようということ。田形氏は、まず自由とは「何を信じてどの道を進むか自分で決めるということ」と定義しました。自由には責任が伴います。何をしてもいいですが、それを人のせいにはできません。何をどう行動するのか一つずつ自分で決断する必要があります。「大学生時代に自由は社会に出ることによって失われると思っていた」と話しながらも、「責任を負う部分が多くなっているが、それに伴い自由な部分も増え、より自由になっている」と述べました。

自由に必要なもの

自由の定義である「自分で決めること」に必要なものとして「自分の人生を生きる覚悟・判断基準(価値観)・判断材料(情報)」の三点をのべました。とくに「判断基準」と「判断材料」について、「情報だけ取ると溺れてしまうので、自分の価値観というものを同時に大事にする」とアドバイス。続いて、海賊の条件の一つにあがっていた「一生懸命」の定義に触れます。「謙遜も含め私このくらいの生き方で一生懸命かな?なんて思われる方も多いと思います。 なので、私が作った定義をまず言いますので、それに当てはまる方は、自分で自分は一生懸命なんだって認めていいですよ」と話し、その条件を「行動を起こしていること」「悩んだり迷ったりしていること」「失敗したり断られたりしていること」の三点と述べました。成功したかどうかは問題ではなく、まず行動できていることが一生懸命「今」を生きている証拠であると続けました。

クイズワーク

ここで田形氏から学生に向けて「海賊の反対は?」と質問が投げかけられました。グループで話し合う学生たち。「囚人」や「ニート」など様々な答えが出ましたが、田形氏の出した正解は「幽霊」。予想外ながらもどこか納得できる正解にうなずく学生。幽霊は過去や未来にとらわれ「今」を生きていない状態であると説明し、海賊と離れているイメージを認識することで軌道修正できると述べ、「今を一生懸命生きる」大切さを重ねて強調しました。

冒険と宝物(ワンピース)

冒険の先にある宝物(ワンピース)はどこにあるのかという問いに対し、仲間、愛情、仕事であると答え、どれか1つでも手に入れることができれば、ワンピースを見つけたのと同じくらい幸せであると述べました。また、仕事のワンピースとは?という問いに対しては「天職」とこたえ、「自分にしかできない仕事であり、昨年ついに天職を見つけ、現在それに向かって邁進している」と続けました。さらに、働くということは人や社会の役に立つことであり、より役に立てるように成長を重ねることで高い景色を見ることができると述べました。

冒険を楽しむために

宝物の次は、冒険を楽しむための武器と力として悪魔の実と覇気について説明。ワンピースの世界では、能力者と呼ばれる特殊な力を持つキャラクターが登場し、能力は「悪魔の実」という特別な果物を食べると身に付きます。しかし代わりに海賊ながらカナヅチになってしまうという犠牲を伴い、一長一短の力であることが示されました。悪魔の実を現実で例えると、これは時間を犠牲にして身に付ける専門的な技術や資格と説明し、漫画では悪魔の実を食べていないキャラクターも多数活躍していることを提示しながら「あると大きな力を発揮するが必ずしもマストではない」とも助言しました。

続いて覇気について説明。覇気とは、時間を犠牲にせずに得られる力であり、「見聞色」「武装色」「覇王色」の3種類が存在し、それぞれを「自己客観力と他者共感力」「自己コントロール力」「根拠のない自信」と解説します。前者二つは「相手の立場になって考える」「挨拶をする」など日常動作の中で訓練可能であることを提示。最後の「覇王色」の覇気についてはあってもなくてもいいとし、「自分に対する信頼」であると述べました。

「つながり」のキャリア論

今回の講義を通して田形氏が伝えたかったことは「自分の行動や経験と人の縁は繋がっていく」ことだと田形氏は実感を込めて言います。「どこでなにがどう繋がるかは分からない。ただ、勇気を出して行動すると願いは叶っていきます」。例として田形氏と深澤教授との繋がりが挙げられました。キャリアコンサルタントが大勢集まる会で深澤先生が講演をした際に、名刺交換をし、深澤教授の著作の感想を思いきってメールで送ったことから縁ができ、夢だった大学での講義が実現したと語りました。 「自信満々に見えるかも知れないけど軸がブレることもあるんです」と飾らない言葉で真摯に学生に語る田形氏。「自分の人生を生きるために行動しよう」としたことが今に繋がっていると強調しました。

担当教員からのメッセージ

早いもので10回目の特別講座「ワンピースキャリア論」が展開されました。
田形さんとは、キャリアコンサルタント仲間としてお会いしたことがきっかけで
この授業に、毎年駆けつけて下さいます。
仕事にも、家庭にも、とにかくポジティブ思考を貫かれている田形さんから、
私自身も、多くのことを学ばせていただきました。
ワンピースという作品を読んでいる人も、読んだことがない人も、あっという間に
この作品の世界に引き込んでいただき、キャリアデザインのために大切な考え方や
キーワードを沢山伝えて下さること、とても意義ある授業となっています。

先行き不透明に時代に大航海に出かける今の学生には、人との出会い、すなわち
“ご縁”を大切に、海賊として人生を謳歌として欲しいと願うばかりです。
この場を借りて、田形様に心からの感謝をお伝えしたいと思います。

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