実践女子大学と大妻女子大学、跡見学園女子大学の三女子大学の3年生による株式会社生活の木(以下、『生活の木』)との「産学連携プロジェクト」の最終発表会が、12月5日、大妻女子大学を会場に行われました。日本におけるハーブやアロマのパイオニアである『生活の木』との取り組みは、昨年度に引き続き2回目です。
秋の本格的な開始に先立ち、7月31日に同社の望月佳子氏(ブランディング本部・リーダー)から、二つの課題が提示されました。一つ目は、「フェムケア市場とアロマ・ハーブの可能性を考える」、二つ目は「ジョホリズム※の訴求方法:『生活の木』のフェムケアを多くの人に」という内容です。現在の『生活の木』の顧客は、40~50代の女性が中心。望月氏は、「『生活の木』の現状を分析し、どのようにすれば、20代にもフェムケアの重要性を周知し、その認知を高めることが出来るのか、忌憚のない自由な発想のアイディアを期待したい」とコメントされました。
※ジョホリズム(Joho-Rhythm):『生活の木』が展開するフェムケア商品のシリーズ。全ての女性が心地良いリズムで毎日過ごせるようにという願いが込められている。
今回、学生達が考えなければならない「フェムケア」については、その言葉の認知も進んでおらず、とても難しいテーマでしたが、実際に『生活の木』から提供いただいた商品を試したり、店舗視察の他、10月に開催された「Fem+:女性の健康と活躍を支援する展示会」を視察する等して、この領域の商品の特徴を理解し、市場の現状を把握した上で、二か月間のグループワークを進めました。
三女子大学の参加学生33名を、大学横断的に4つのグループに分け、ZOOMを活用してのグループワークを実施。学生全員が揃うミーティングを週に一回、その他、グループ毎のミーティングを週に一回と2ケ月の間に、こまめな情報交換を行いました。最終発表会には、望月氏の他、重永創氏(ブランディング本部・ゼネラルマネージャー)も同席されました。
グループ1:『ジョホリズム』ってなに?フェムケアを届けよう
提供商品の感想に始まり、「Fem+」の視察では、この市場の盛り上がりを実感する一方で、差別化の難しさや価格の高さを課題として挙げました。83名へのアンケートからも認知度の低さや、気軽に手を出しづらい価格に多くの声が集まりました。このことから、「どうしたら「フェムケア」アイテムを身近に感じてもらえるのか」を念頭に、「フェムケア」や『ジョホリズム』への関心を高めることを目標に据え、その訴求方法として、20代が利用する場所での様々な「試供品」提供案を提案しました。
<講評>
弊社だけでは、これだけの数の学生の方のアンケートの実施は難しいので貴重。率直な意見に加え、具体的な調査、アイディアの提案で大変参考になる。20代のみなさんに訴求しようと考える時に、企業側の視点として欠けていると感じたのが、「価格」。手に届き易い価格のサイズ、容量の見直し等、もう少しハードルを低くする努力も必要だと感じた。また、みなさんが一から考えたリーフレットは、素晴らしかったので、参考にさせていただきたい。
グループ2:私たちの「フェムケア」―10代からはじめよう―
47名へのアンケート結果から、少数の購入者の回答では、母親や友人等の身近な人に勧められた経験がある人がいましたが、興味があっても、知識の少なさや価格が理由で諦めた人もいるのではないかと推測。そこで『生活の木』のInstagramでも紹介されている「映える」取り入れ方を、もっと積極的に紹介すべきだと考え、ハーブティーで作るものの形をいくつか考案。また、販路として、敢えて業界大手ではない欧米型ドラッグストアを目指す企業を提案した上で、最後に、日常の一コマに商品を取り入れるようなリール動画を使った訴求も提案しました。
<講評>
「水出しハーブティー」という夏限定のアイテムに着目してもらったが、見た目にも可愛いいレシピが作れるので、現状でも若い方々の購入も多く、この発表からも、これは更に広げていけると感じた。販路のひとつとしてのドラッグストアについても、各社の戦略の違いを含めて、弊社にフィットする企業をよく調べていただいている。全体を通してキーになるポイントは、「映える」「日常に取り入れる」、そして、『生活の木』、及び商品を知らない方に、いかに「信頼」を以って情報を届ける、広げるかということが軸になると感じた。
グループ3:「フェムケア」を日常に―わがままに生きよう―
提供商品の感想、183名へのアンケート結果から提案を行ないます。購入のきっかけ作りが難しいですが、プレゼントしたくなる「フェムケア・グッズ」のNo.1を目指し、持ち運びやすい容量と、より高級感のあるパッケージ変更、また、季節限定「デリケートゾーン・シート」では、季節毎に異なる香りや個包装を提案します。訴求方法としては、ギフト用品選びに活用しているショップでの販売や、ファッション・フード・ミュージック・アート等と合わせて、ショッピングや体験ができる「クリスマスマーケット」の開催を通して、より多くの人に『ジョホリズム』と『生活の木』を知ってもらえる機会となると考えます。
<講評>
商品の企画案まで考えてもらい、社内のプレゼンを聴いているようだった。プレゼン資料のデザインが素晴らしいと感じた。完成度の高い資料だった。また、「わがままに生きよう」というコンセプトを、きちんと打ち出せているところもターゲットが明確で良かった。改めて自分たちも、そのような打ち出し方の大切さを実感した。また、商品を知る入口としての「プレゼント」として、パッケージや容量変更の提案や、「フェムケア」商品と季節を掛け合わせる発想は、持ち帰って商品開発の担当とも共有したい。「フェムケア」商品は自分用と考えていたが、「ギフト」で贈りたくなる仕様提案という新しい視点が良かった。
グループ4:はじめの一歩
「フェムケア」のことを知らない若者に広める、その「はじめの一歩」を、『生活の木』が担えたら良いと考え、『Fem+』での視察、アンケート結果を通して「カフェ」「試供品」「SNS」を切り口としました。食品は手軽に取り入れ易い為、「カフェ」ではハーブティーを始め、体の内側を気遣うことができる商品を提供し、「試供品」ではカフェや店舗利用者に日常でも取り入れ易い「ファブリックミスト」を配布。また、若年層向けの新たなSNS アカウント作成を行い、として、ライフスタイルに溶け込むお洒落な写真や統一感のあるデザインが効果的だと考えます。これからは「フェムケア」と意識せずに、気軽に使えるような未来を期待します。
<講評>
みなさんに指摘いただいたように、いろいろあり過ぎて分からないといった課題があり、その中で「カフェ業態」による訴求提案をいただき、内装の雰囲気、実際のメニュー、出店場所までよく検討いただいた。ただ、飲食は競争が激しい為、他社との差別化は課題だ。弊社でもSNSには取り組んでいるが、説明的で長い動画の為、媒体やアカウントを変えて短い動画の配信に取り組むのも一案だと思う。提案全体が、「フェムケア」の展開範囲を広く捉えていたのが印象的だった。また、「フェムケア」商品だと分からないパッケージに対する指摘等、改めてセンシティブな商品であることの認識を新たにした。
<全体の講評>
重永氏:『Fem+』や『生活の木』の店舗にも足を運んでいただいたり、大変だったと思うが、みなさんにいただいた貴重な意見を参考にして、『生活の木』のブランディングを進めていきたい。本課題に取り組んでいただく中で、「フェムケア」を日常に取り入れることをイメージしていただけたらと思う。今回みなさんが取ったアンケートは、大変貴重な生の情報の為、社内でも共有したい。全体のプレゼンのクオリティが高く、企業内で行われているものと変わらぬ内容で大変驚いた。今後の研究、及び進路でも今回の経験を活かしてもらえたらと思う。
望月氏:様々なリサーチ結果がとても参考になった。2020年が「フェムテック元年」とも呼ばれたが、そこから時間の経過と共に、「フェムテック」から「フェムケア」に変わりつつある。それは、女性の繊細な身体は、テクノロジーだけでは解決し切れないものだからだ。今回の課題が無ければ、みなさん、「フェムケア」について考えなかったかも知れない。今後もこのマーケットは変化し続ける為、今回の経験をきっかけに、引き続き広い視野で、いろいろなことを吸収していって欲しい。自分たちの揺れ動く心や、身体というフェミニンな部分というものを、大切に向き合っていっていただきたい。
『生活の木』が提供する商品群と、女性の集合体である「女子大学」の親和性が高く、確かに、今回の課題は大変難易度が高いものでしたが、課題を通して、先ず、学生のみなさんひとりひとりが、「女性としての自分を、大切に思う気持ち」に、改めて気づくことが出来ました。この2ケ月で様々な経験をし、また、議論に議論を重ねました。当初はチームビルディングに苦慮していましたが、最終的に何れのチームのレベルも高く、素晴らしい評価をいただくことが出来ました。この三女子大学連携は、この後、残りの2ケ月を掛けて、また、新たな課題に取り組みます。
<参加メンバー>
女子大学に在籍する3年生33名。
・跡見学園女子大学/深町 浩祥准教授(ファッションビジネス研究室)と学生12名
・大妻女子大学/須藤 良子准教授(プロダクトデザイン研究室)と学生12名
・実践女子大学/大川 知子教授「ファッションビジネス研究室」学生9名
株式会社生活の木について
私たち生活の木は、1976年より「自然」「健康」「楽しさ」のある生活を日本に提案・普及し続けてきた、原宿・表参道の地で生まれたライフスタイルカンパニーです。創業以来、40年以上もの歳月をかけ、国内外の提携農園(パートナーファーム)から、厳選したハーブや精油、植物油など、世界中の自然の恵みを調達。それら素材をもとに商品開発・製造・販売を行い、全国の直営ショップや、カルチャースクールなどを通じて、ハーブやアロマテラピーを普及・啓発してきました。
そして今、これまで培ってきたノウハウを活かし、ハーブやアロマテラピーのみならず、より多くの自然の恵みを採り入れることで、心身ともに健康で美しくあるためのWellness(ウェルネス)&Well-being(ウェルビーイング)なライフスタイルを提案していきます。
代表者:代表取締役 重永 忠
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 6丁目3番8号
URL:https://corp.treeoflife.co.jp/
大川先生からのメッセージ
今年度のテーマは、女性にとってはとても大切なテーマでありながら、まだ余り認知の進んでいない新しい領域。最初はどのように進められるか、伴走する我々教員も手探りの状態でしたが、全員で足を運んだ「Fem+」の展示会で、この市場の盛り上がりを実感し、そこから話し合いも進み出しました。皆で協力しながらアンケートを集めたり、学生のみなさんの実感から発想した数々のアイディア。今後の商品開発にも活用出来る内容が多数あったと、重永様、望月様からも高い評価をいただきました。ほんの2ケ月の成果とは思えない説得力ある提案は、最終学年に向けて、彼女達の更なる成長を予感させる素晴らしい内容でした。
【昨年の記事はこちらからご覧ください】
https://socialcooperation.jissen.ac.jp/topics/6587/