11月9日、10日に日野キャンパスで行われた学園祭「常磐祭」で、滝澤愛准教授(生活科学部 生活環境学科)のゼミ生たちがファッションショーを行いました。多摩都市モノレールの廃棄処分となる使用済みの制服などを素材に利用し、50年代ファッションに見事にアップサイクルを実現。多くのお客様に見守られながら、学生たちは堂々とランウェイを歩いていました。
50年代をテーマにアップサイクル
素材を提供してくださったのは瀧定名古屋株式会社、ひの市民リサイクルショップ回転市場の万願寺店、そして多摩都市モノレール株式会社です。廃棄予定の制服・作業着や生地などを使い、ファッションショーに向けて4月から取り組んできました。
今年のテーマは「50’sPOP We have more fun!」と題し、50年代ファッションをモチーフに服を制作。
オードリー・ヘプバーンやグレース・ケリーが有名なこの時代、ウエストをきゅっと絞りボリュームのあるスカートが生み出す「8ライン」が特徴のスタイルです。
50年代のデザインをコラージュしたイメージボードを作成し、それぞれデザイン画の案を作成しました。
ファッションショーに出すデザインは全員で意見を出し合いながら選抜。作りたい服のイメージを形にしていきます。本格的な服の制作は夏休み前から取り掛かり、約4ヵ月をかけて作り上げました。
ファッションショーでは学生自らモデルに
出来上がったデザインは、レトロでシックでありながら華やかさのある服たち。元が制服や作業着とは思えないものに生まれ変わりました。
ボリュームのあるスカートや膨らませた袖などはかわいらしく、落ち着いた色の組み合わせや体の沿ったラインの服は上品さも感じさせます。
服に合わせたヘアメイクも自分たちで行いました。大き目のリボンをつけ、髪も巻いてボリュームを出すなど50年代風にアレンジ。
いつもとは違う装いに、学生とは思えない大人っぽさを醸し出していました。
当日は何度も綿密にリハーサルを行いました。
ライトに当たりしっかりと前を向いて歩くモデルウォークは、滝澤准教授が自ら指導。
進行表は秒刻みで、プロのファッションショーさながらのリハーサルでした。
全身見てもらいたい!
ファッションショーに臨む学生に話を聞きました。
ゼミ長・矢島さん
「スケジュール管理やポスターの作成などを主導し、ゼミを引っ張ってきました。50年代をテーマにというのはゼミの全員で意見を出し合って決めました。シルエットがふわっとして今の時代でも可愛いと感じられるデザインだったからです。
使った布はすべてリサイクルのものです。私は多摩モノレールさんの制服のジャケットをアレンジし、回転市場さんのウェディングベールを使って華やかな服に仕立てました。アクセントのリボンはスカート一着丸々使っています。
今回はショルダーバッグなどの物販も行いますが、ひとつの商品ができるまでに素材を提供してくださる方、縫製を行ってくれる方、デザインを調整してくれる方などが関わってくださいました。多くの人が協力するからこそ、一つの商品が出来上がるんだと実感できたのは大きな学びだったと思っています」
多摩都市モノレールの制服をアレンジした学生
「多摩モノレールさんのズボンを裁断し、スカートにしました。制服なのでズボンの腰回りのサイズを調整できるようになっており、それを活かして服を作成しました。切ったズボンの足部分は、スカートの後ろの生地に足して変化を付けています。一番苦労しましたが、後ろを振り向いた時にふわっと可愛らしいシルエットになるようにしました。
膨らました袖も、中に芯となるボーンをつけ立体感のある仕上がりにしたので、そこがポイントです。生地によってデザイン画通りに作るのは難しいこともあるのですが、袖はデザイン通りにできたので良かったなと思っています。
ファッションショーはとても緊張しますが、アクセサリーも含めぎりぎりまで頑張って自分たちで作ったので、全身楽しめてもらえたらなという気持ちです」
アップサイクルを実感できるショーに
時間にはお客様であっという間に満席に。
学生たちは堂々とランウェイを歩き、大きな拍手に包まれ幕を下ろしました。
会場には多摩都市モノレールの社員の方々も駆けつけてくださいました。
多摩都市モノレール社員の方
「制服や作業服は日頃から破損などで交換をするため、廃棄が多く出ます。十分に使い古されていればよいのですが、人事異動などでまだまだ使えるものが返却されることもあります。もったいないと考えていたところに今回のお話をいただき、当社沿線地域にあります実践女子大学の学生の皆さんにも貢献でき嬉しい思いです。」
「提供したスラックスがスカートになっているなど大胆に変わっており、そういったアイデアはなかなか出てこないため、新鮮でした。アップサイクルと聞いても最初はイメージが沸かなかったですが、今日見て驚きました。形も全然違う、新たな付加価値がついた全く別の商品に変わるのだなと実感できました。」
バッグなどの物販も
ファッションショーの合間には商品も販売。
こちらも多摩都市モノレールの制服を使って、ポシェットやショルダーバッグなどを学生たちがデザインしました。
縫製は福祉施設「名古屋市身体障害者福祉連合会第一ワークス・第一デイサービス」に就労する障がい者の方たちが行いました。
ポシェットをデザインした学生
「肩ひもをネクタイで作成しました。ネクタイを切らずに1本分使ったのはポイントです。子どもでも使いやすく、ユニセックスで使えるようにと大きすぎず小さすぎないものを意識しました。
ファッションショーの服の制作と並行してデザインを作り、サンプルとデザイン画を送って縫製してもらいました。出来上がった商品を見たときはとても嬉しかったです。自分たちでサンプル1つ作るのにもとても時間がかかったので、感謝の気持ちがありました」
こちらの商品は11月16日に多摩都市モノレールが主催する「多摩モノまつり2024」でも展示販売されました。
担当教員よりメッセージ
環境汚染産業として全産業のワースト2位であるファッション産業。学生の皆さんは、ともするとファッションのキラキラとした表層の部分にしか目を向けてしかこなかったかもしれません。しかし世界中のファッション企業が、業界が抱えるその大きな問題に対して今や「マスト」として取り組んでいるサスティナブルやエシカル、そしてアップサイクルなファッションを、学生の内から企業の方々、福祉施設の利用者の皆様と連携して実践出来たことは大変いい経験と実学に繋がったのではないかと思います。今回の経験を踏まえ、更に実践の場を広げていけたら、と考えています。