社会連携プログラム
SOCIAL COOPERATION PROGRAM
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2026年8月6日

自分と向き合い可能性を開く!〈国際理解とキャリア形成〉スポニチコラボ授業に有森裕子氏が登壇し、対談形式でご講演いただきました。

6月23日、実践女子大学共通教育科目「国際理解とキャリア形成(担当:国文学科 深澤 晶久教授)」にて、スポーツニッポン新聞社とのコラボ授業の一環で、五輪メダリストであり現日本陸上競技連盟会長の有森裕子氏をお招きし、アスリートとしてのご経験やキャリアの中で得た価値観について、編集委員の藤山健二氏との対談形式でご講演いただきました。

授業と社会連携について

国際理解とキャリア形成は、2年生以上を対象に開講されている共通教育科目です。国際情勢の学習や、グローバル業務を経験した外部講師による講演を通じて、国際的な視野と幅広い知識を身に付けます。

 また、この授業では〈オリンピックとパラリンピック〉をテーマにスポーツ新聞の発行を行っているスポーツニッポン新聞社と連携を行っています。今回の授業では、バルセロナオリンピックで銀メダル、アトランタオリンピックで銅メダルを獲得した元マラソン選手である有森裕子氏をお招きし、長年オリンピックの取材に取り組んできた編集委員の藤山健二氏との特別対談が実施されました。

陸上との出会い

陸上を始めたきっかけは、「小学校の頃に信頼していた先生が陸上クラブの担当だったから」という理由だけだったと話す有森氏。また、「中学校の運動会で参加した800m走で3年連続優勝したことが、自分の自信につながった」と話しました。有森氏は、結果を左右するのは自分自身だけという陸上競技の特性が、自分に合っていると感じたそうです。

藤山氏が「自信が持てるものが欲しかったということでしょうか」と質問すると、有森氏は「自分に自信が持てる、自分を認めることができるような機会がなかったため、自信満々に自分を表現できる友人たちがうらやましかったんです。何でもいいから『私はこれ』と言えるものが欲しいと思っていました」と話しました。

あきらめない気持ちとやる気

陸上が自分の自信につながることを実感し、高校進学と同時に陸上部への入部届を提出したという有森氏。しかし、「進学した学校が陸上の名門であることを知らず、中学校時代に陸上競技での入賞経験がなかった私は門前払いされました」と話しました。

「顧問の先生から入部を却下されたにもかかわらず、どうしても入部したくて、行く先々で先生を待ち伏せすることを1か月くらい続けました」と続け、最終的に仮入部という形で陸上部へ。有森氏は「そのまま高校卒業まで部活動を続けましたが、大会での受賞歴はありませんでした」と話しました。それでも大学で競技を続ける決断をしたといいます。

藤山氏は「高校3年間頑張って結果が出なければ、やめる人も多いと思います。どうして大学でも陸上を続けようと思ったのでしょうか」と質問しました。

有森氏は、あきらめずに進む自分を応援してくれる存在がいたことが大きかったと話し、進路に迷った際、陸上部の先生から「あきらめずに続けたら相手が先にあきらめるかもしれない。それまであきらめなかったら、自分が前に行けるかもしれない。俺はお前をずっと応援するから、それまで頑張れるか」と言われたことを紹介しました。

続けて「先生の『かもしれない』という言葉を聞いて、『自分が何かできる可能性があるということだな』と思ったんです。自分が可能性をあきらめなければ、その道を応援してくれる人がいる。そう思ったときに『やめる』という選択は頭に浮かびませんでした」と話しました。

大学進学後はけがの休養からの復帰を経て、卒業後は実業団に所属。実業団入団の経緯も「通常、実業団への入団は勧誘か紹介で決まるのですが、私はそれを知らなかったんです。直接アプローチを行い、面談にこぎつけました」と話しました。

有森氏は入団できた背景について「当時の企業の状況と私のやる気がかみ合ったから」と振り返り、「会社は不祥事を立て直していくために“やる気”のある人材を求めていました。私は実績がないものの、走ることに対する“やる気”はしっかりと持っていました」と説明。「監督との面談で『これから先、どうしたいか』を伝えました。その“やる気”が伝わり、『今会社が求めている力を持っている』という点が評価されて入団することができたんです」と話しました。

オリンピックに関する有森氏のキーフレーズ

藤山氏はオリンピックに関する話題として、インタビューで有森氏が語った『自分で自分をほめたい』という言葉を紹介し、「この言葉は有森氏を代表する言葉として知られています。この言葉に込めた思いについて聞かせてください」と質問しました。

有森氏は「銅メダルを獲得したアトランタオリンピックで、競技後に行われたインタビューの最後に出た言葉でした。アナウンサーからの質問に対し『なんでもっと頑張れなかったんだろうと思うレースはしたくなかった』と話した後、ふと自分の中で今回のレースを振り返ったんです。その時、何一つそう思う瞬間はなかった。そう思ったときに『自分で自分をほめたいと思います』という言葉が自然と出ました」と、当時どのような思いでその言葉が生まれたのか語りました。

また、「アトランタオリンピックまでの道のりの中で、手術などさまざまなことがあり、周囲からは『有森は終わってしまったな』と言われることもありました。何とか自分を信じるしかない状況の中で、やっと戻ることができた4年後の舞台だったんです」と振り返りました。さらに、「誰も褒めてくれなくても、自分で『本当によくやった』と思えました。レースを振り返ったとき、あの言葉以外は出てこなかったんです。自分自身を最大限に見つめて出た言葉なので、周りの反応は関係ありません。たとえ歓声がブーイングに変わっていたとしても、同じ言葉を口にしていたと思います」と話しました。

有森氏の信条

藤山氏は「有森氏が現役時代の経験から導き出した、これからの人生にプラスになるような信条やモットーがあるということで、ご紹介します」と話しスライドに言葉を投影しました。有森氏は〈世の中にたった一人しかいない自分の生き方にこだわる〉について、次のように話しました。

有森氏は「たった一人しかいない自分であることに誇りや特別感を持つことは大切です。それと同時に、周囲の助けがあって自分が生きていけるとも感じますが、その助けを“頼ろう”と判断するのも自分だと思っています。しっかりとした自分自身を自覚していないと、何歳であろうが人にコントロールされるようになってしまいます」と話しました。また「私の場合、周囲と違うことがエネルギーになり楽しかったです。自分らしさをつくると面白いですよ」と学生へ伝えました。

藤山氏は有森氏の言葉を受け、「その根底にあるのは自己肯定感の高さだと感じます。誰しも自分自身の嫌なところを感じていると思いますが、自分を好きになるためにはどうしたらいいのでしょうか」と質問しました。

有森氏は「自分が決めたことを自分がやらないと、やりきれない自分が嫌になってくると思います」と回答。続けて、「私自身も自分の全部が好きなわけではありません。しかし、そういう部分を自覚して生きていくことと、無自覚に生きていくことには大きな違いがあると思っています。すぐに変えることはできなくても、自覚できていれば変わることができるタイミングや、変化のチャンスを逃すことが少なくなると思っています」と、自分の苦手な部分と向き合う考え方を共有しました。

さらに、学生へのアドバイスとして『嫉妬』という感情について説明。

有森氏は嫉妬を『嫌い』と別の感情であることに触れ、「他人に対して嫉妬するということは、『そうなりたい』という欲求が自分にあるということであり、伸びしろの部分です。人を貶めるために使わなければ自分にちゃんと関心を持っている証である、ものすごいエネルギーなんです」と解説しました。学生に「簡単なことではないけれど、自分が嫌だと感じている部分にもそういう視点があるんだと感じることで、自分を好きになれる瞬間が早く訪れると思います」と伝えました。

講演の最後に

藤山氏は、学生が取り組む〈オリンピックの開会式をプロデュースする〉という課題に関連し、「選手から見た理想の開会式とはどのようなものですか」と有森氏に質問しました。

有森氏は「実は現役時代、オリンピックの開会式には参加していません。マラソンはコンディションの調整が難しく、開会式に出る選手はあまりいないんですよ。ですが、開会式は単なるイベントではなく、選手と応援する人が一体感を感じられる場であってほしいなと思います」と回答しました。

さらに、スペシャルオリンピックス(知的障害のあるアスリートの競技大会)で行われたアスリートファーストの開会式や、世界陸上競技選手権大会で観客の視点に立ち、競技の見やすさを意識した大会運営を例に挙げながら、陸上競技大会の運営に対する考え方も変化していることを紹介。「競技に参加する選手が最高のパフォーマンスを出せることが大切」と話しました。

尽きることのない話題の中、予定の時間を迎え、対談は締めくくられました。

その後、学生からの質疑応答の時間が設けられ、「走っているときに心が折れそうなとき、どうしていましたか?」という質問に、「“苦しい”は頑張ろうとしているから出る感情です。ネガティブでは全くなく、苦しくなるくらい頑張っている証拠なのであきらめる理由にはならないです。逆に、“嫌になること”は自分の力になりません。嫌と感じていることは周りにも伝わりますし、進化を止めます。自分がどちらの感情であるかは見極めたほうがいいです。考えてみると案外嫌なことは少なかったりします」と回答。自分の感情を見失わずに進むことの大切さを伝えました。

講義の最後に有森氏は「けがの時、この言葉にずいぶん救われた」という『何で』と『せっかく』の話を学生に贈りました。

「何か想定外のことが起きたとき、『なんで』と考えることが多いですが、それを考えて良くなることはほとんどないです。『何で』を『せっかく』に変えるとポジティブになります。『せっかくなら』と、今しかできないことに目を向けることができ、嫌なことがあっても自分にとってプラスになることを考えることができるんです。『せっかく』をきっかけに自分をいい方向に持ち直し、その自分を通して周りも良くなる。たったこれだけのことですが、自分の心持ち1つ、使う言葉1つで、変えることができます。ぜひやってみてほしいなと思います」

担当教員のコメント

有森さんにご登壇いただくのは、今回が6回目となります。その間には、東京2020そしてパリ2024が開催され、早いもので再来年はロサンゼルス2028です。オリンピックパラリンピックを通して国際理解に繋げようとする試み、毎年スポニチ様にご支援いただいています。
有森さんの数々のエピソードからは、決してあきらめない心や、逆境の時にこそ「せっかくだから」という言葉を乗せることで、常に前向きに物事を考えること、そして挑戦する気持ちの大切さなど、数々のお言葉をいただきました。この場を借りて、有森さん、そしてスポニチの藤山様はじめ関係の皆様には、心から感謝申し上げます。

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