6月13日、「建築・インテリア構法」(担当:環境デザイン学部環境デザイン学科・内藤将俊教授)の授業で、株式会社奥村組による特別講義が開催されました。建築業界の最前線で活躍する企業から直接話を聞ける貴重な機会に、学生たちは熱心に耳を傾けていました。
建築を通して地域に貢献する会社
はじめに採用グループの坂本悠月氏が登壇し、奥村組について紹介しました。
奥村組は1907年創業の総合建設会社(ゼネコン)で、博物館や高層ビル、学校などの大規模建築を手掛けています。自治体や企業、国などから工事を受注し、多くの専門業者と連携します。
坂本氏は「一社だけで仕事が完結することはなく、多くの人と協力してつくり上げるところが建築の面白さです」と説明しました。
奥村組は「堅実経営」「誠実施工」を理念に掲げ、安全性と品質を重視した施工で高い信頼を獲得しています。
なかでも、トンネル工事に用いられるシールド工法やビルの免震技術など、高度な技術力に強みを持っています。
坂本氏は「施工を通して地域やまちづくりに貢献できることも、この仕事の大きな魅力です」と語り、建設業の社会的な役割についても紹介しました。

今が木材資源のつかいどき!?

続いて建築設計統括部の菅正和氏が登壇。
授業の前に学生たちの課題や提出物に目を通したことを明かし、「建築への情熱が伝わってきました」とコメント。
「建築を学び続けるうえで、何より大切なのは建築が好きだという気持ちです」と学生たちを激励しました。
ここからは「なぜ今、中大規模の木造建築が増えているのか」をテーマに講義がスタートしました。
木造建築が注目されている背景には、日本の森林資源の多くが資材に適した時期を迎えていることがあります。
さらに建築技術の進歩によって、これまで難しかった中大規模の木造建築も実現できるようになりました。
一方で、安価な海外産木材の流入により、国内の林業や木材産業は縮小傾向にあるのが現状です。こうした課題を受け、国は森林資源の有効活用や地域活性化を目的として木造建築の普及を後押ししているのです。
菅氏は、木造建築の広がりが環境面だけでなく、日本の林業や地域社会の未来にも深く関わっていることをわかりやすく説明されました。
社員寮で理想の木造建築を実現
奥村組でも積極的に木造建築の取り組みを進めています。
これまでに三重県の熊野古道センターや千葉県内の中学校など、中規模木造建築を手がけ、高い評価を得てきました。
しかし、建物を土台からすべて木材で造る場合、コストや工期が大きな課題となります。
そこで奥村組が採用しているのが、木材と鉄筋コンクリートを組み合わせる「ハイブリッド構法」です。木の温かみや環境性能と、鉄筋コンクリートの強度や施工性を両立させることで、合理的な建築を実現しています。
その代表例として紹介されたのが、西川口にある奥村組の社員寮です。
建物は8階建てで、1〜2階部分は鉄筋コンクリート造とし、免震システムも導入。上部の居住フロアは木造と鉄筋コンクリート造のハイブリットで構成されています。
さらに、木造ならではの快適さを活かす工夫も随所に施されています。
例えば耐火性能を確保するための壁紙で木材を覆ってしまうのではなく、石こうボードの上から木材を仕上げ材として使用することで、木の香りや質感を感じられる空間を実現。
「安全性と両立させながら、人に優しい木造の良さを活かすことも大切にしています」と菅氏は語りました。

実験や試験に裏打ちされた評価

奥村組の大きな強みの一つが、自社で研究や試験を行える体制です。
菅氏は、耐火性能や構造強度に関する実験を自社研究所で繰り返し実施していることを紹介しました。実験によって、安全性や性能が確認された技術だけを実際の建築に採用しているのです。
特に木材は鉄やコンクリートと比べてどうしても火に弱いもの。そのため、火災発生時に熱がどのように伝わるのか、どれくらいの時間で燃焼が進むのか、安全に避難できる時間を確保できるのかなど、さまざまな条件を想定した検証が行われています。
西川口の社員寮についても、木と鉄筋コンクリートを組み合わせたハイブリッド構法の採用が決まった後、実際に安全かつ確実に施工できるかを何度も試験したうえで建設が進められたと語られました。
こうして完成した社員寮は、その先進性やデザイン性が高く評価され、グッドデザイン賞やウッドデザイン賞など数々の賞を受賞しています。
また、設計に携わったメンバーの一人が女性設計者であることも紹介されました。
菅氏は「設計者や工事主任など、建築業界では女性の活躍が目覚ましい。弊社も意匠設計の新入社員の約半数が女性です。」と説明し、「皆さんもぜひ建築の世界で活躍してほしい」と学生たちへ力強いエールを送りました。
建築最前線のリアルを学べた講演
講演後には学生から寄せられた質問をもとに質疑応答が行われました。
「木造建築は今後どこまで高層化できるのでしょうか」という質問に対し、菅氏は「技術的には30階を超える建物も可能でしょう」と回答。
一方で、「需要に見合う木材の供給がまだ十分ではありません。今後の林業の発展が鍵になる」と説明されました。
また、「社員寮の写真では立面に設備機器が見当たらずとてもすっきりしていましたが、どのような工夫をしているのですか」という質問には、「プロのような鋭い質問ですね」と感心した様子。
菅氏は、居住空間を広く見せるため、配管などの設備を中廊下側にまとめて配置していることを紹介し、設計上の工夫について解説してくださいました。
さらに、「今後の建築業界で求められる人材とは」という質問には、人財戦略部の村松敬哲氏が回答。
「前向きに取り組める人です。仕事はやりたいことばかりではありません。大変なことや難しい課題にも前向きに挑戦する人は周囲から信頼され、チームにも良い影響を与えます」と語りました。
加えて、「皆さんの授業への取り組みも非常に前向きで、私たちも刺激を受けました」と学生たちへエールを送りました。

建築技術の最前線から業界が求める人物像まで、現場で活躍する社会人のリアルな声に触れることができ、学生たちにとって学びの多い貴重な機会となりました。
担当教員からのメッセージ
「建築・インテリア構法」は、一級建築士受験資格を取得するために修得すべき「建築一般構造分野・2科目」のうち、基礎的な役割を担う科目となっており、木構造から鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造、さらには、屋根や壁、設備などの構法まで、幅広く扱っています。
入学時には、建築やファッション、プロダクトなど、専攻する分野が決まっていた者ばかりではなく、また、高校時に文系クラスに所属していたり、美術を選択していなかったりした学生が多く見受けられる本学科ですが、ここ5年間で多くの建築卒業制作が、全国レベルの学外コンテストなどで20以上の賞を獲得してくれています。これは、まさに各々の学生が基礎的な授業に真摯に取り組み、「決して競わず、楽しむ」ことで着実に身に着けた実力の賜物です。
本講義は、そのような学生を対象としており、2年生の6~7割が受講しています。木構造と鉄骨構造が終わり、鉄筋コンクリート構造の中盤へと差し掛かったタイミングで特別講義が行われました。そこで、㈱奥村組の皆様に木と鉄筋コンクリートの高度なハイブリッド構造を主体的にご教授いただいたことで、各回の講義が面的につながり、受講生の興味がさらに広がったと強く感じております。そして、20分以上の質疑応答時間では足りないほどの多くの質問をだした学生たちが、「設計製図」などの演習科目で本講義の内容を柔軟に活用してくれることを期待せずにはいられません。
このような素晴らしい経験を受講生にもたらしてくださいました㈱奥村組の菅様、村松様、坂本様、さらに、調整に翻弄してくださいました事務局の皆様に担当教員として心より感謝申し上げます。


